Slave鉱山の壁の内側に在るSlave達の居住区……Slave村では、Giant raceのSlave達の中でも纏め役など主だった者が集まっていた。
本来なら居住区でも監視の目があり、氾濫や暴動に繋がる事が無いようにGiant race達が命令以外で集まる事は無いのだが、今見張りについているSoldier達は皆人形の-samaにされている者ばかりだった。
「Levia -sama……Levia -samaじゃないかっ」
「おお、Memoryに在る姿と比べると少々違うが、間違いない。見間違うものか、Levia -samaだ」
「Levia -samaを連れて来たのと言うのは、本当だったのね……」
目を見開き、涙を流し、何処か呆然とするGiant race達にLeviaは嬉しそうに炎を揺らめかせるも、悲しげに胸に手を当てた。
『皆……今日まで生きていてくれて、ありがとう。私があなた達を守れなかったばかりに、苦労を掛けてしまったわね』
二百年と言う年月は、三百年の寿命を持つGiant raceにとっても長かった。当時老人だった者はとっくに、大人だった者も全員亡くなり、childだった者も大人になっている。
Giant raceは十五age程までHumanと同じ速さで成長し、それ以後はゆっくりとageを取って二百age前後でBodyのピークを迎え、二百五十前後から老けはじめる。そのため、appearanceが老け込んだ-sama子の者はあまり居ないが。
「良いんだよ、皆Hartner Dukeが悪いんだ。あたし達を裏切った奴らがね。Levia -samaは死んだ後もあたし達の事を気にかけてくれてるじゃないか、それだけで十分だよ」
「そして、こうして助けに来てくれた。それでもう十分だ。お袋も、爺-sanも、弟も、Levia -samaを責めるもんか」
Giant race達は一-samaに痩せ、complexionが悪かった。腕や脚、顔に鞭や火傷の痕が残っている者も多い。
Slave鉱山での扱いは通常の犯罪Slaveと比べてある程度加減されていたが、その扱いは「死ななければいい」「一人二人なら死んでも構わない」と言った過酷なものだった。
実際避難民の内老人は全て早死にし、女childの中には耐えきれずに死んだ者が少なくない。
ChampionのBarrierの-samaにmagic的に閉じ込められていた訳でもない彼らの霊の多くは、既に鉱山の何処にも残っていない。
「見張りのSoldierもどうやったのか知らないけど人形同然だし、こうしてLevia -samaも連れてきた。あんたの言った事は全て本当だった。最初はあんたみたいなチビが言う事、とても信じられなかったけど……。
じゃあ、この鉱山からあたし達を助けるっていうのも本当なんだね？ ヴァ……？」
「Vandalieuです、Gopher -san。Borkus同-samaに坊主、でも構いませんが」
普通にSlaveに混じってSoldierを【Mind Encroachment】skillで次々に廃人にしたVandalieuは、Borkusの娘Gopherに答えた。
「でもチビは止めてください、気にしているのです」
Giant raceやBeast race等は、大きければ強く小さければweakと言う価値観がある。femaleでも二meter半ばに達するGiant raceと同年代のchildと比べても小柄なVandalieuでは、そうでなくても頼りなく見えるのだろう。
やはり【Death-Attribute Charm】の効かない、生きている人とのcommunicationは難しい。
(本当にPrincess Leviaを連れてきて良かった)
そう内心思っているVandalieuに、Gopherは苦笑いを浮かべた。
「あの親父らしいね、死んでも元気なんて。坊主は止めておくよ、Levia -samaが陛下って呼んでるのに、あたしがそんな風に呼んだんじゃ変じゃないか」
「その辺りは気にしないで良いですよ。それでこれからですが、皆-sanをSlave鉱山から解放しようと思います」
「いや、でもそう簡単な話じゃないだろう。あたし達の首にはSlaveの首輪が嵌ってるからね」
Slaveの首輪、Subordinateの首輪、呼び方は-sama々あるがSlaveがmasterに逆らわない-samaに嵌めるmagic itemだ。
masterを害そうとしたり逃げ出そうとすると、首輪が絞まって窒息したり電撃が流れて感電したり、苦痛を味わう事になる。
外すには幾つかの方法があるが、masterの同意だけでは外せない。更に通常の解呪のmagicでは解除できず、特殊な術が必要だがその方法は秘匿されている。
「General Officerを脅しても外せないだろうからね。幾らあんたでも簡単には――」
「外せます」
えっとGopher達が聞き返す間もなく、Vandalieuは黒いdeath attributeのManaを出して彼女達が嵌められている首輪を包む。すると、かちりと音を立てて首輪は外れた。
「う、嘘……」
重い音を立てて床に落ちた首輪を見ながら呆然と呟くGopher達だったが、Championが施したsealedもManaによる力押しで解除したVandalieuの手にかかれば、これくらい簡単な事だ。
「い、今のを一日で何回出来る？ あたし達は全員で五百人以上居るんだよ」
「一人を解放するのにManaを千使うので、三十万人居ても余裕です」
「本当にできるのかっ！？」
「すみません、時間的な問題もあるので一万人までにしてくれると助かります」
「良し、分かったっ、一日で俺達全員を解放できるんだな！ これで戦えるぞ！」
『皆、陛下はちょっと人見知りするから。それに見張りのSoldier達は全員allyだけど、あまり声が大きいと……』
「解ってますよ、Levia -sama！ それであたし達は何をすればいい！？ 何時決起するんだい！」
「Weapon Equipmentは普段使ってる鶴嘴やスcup、何なら石でも構わねぇ！ きっと今までで一番工具や石を軽く感じるだろうぜ！」
「奴らめ、目に物見せてやる！」
理不尽な支配からの解放と報復の機会が訪れた事に沸き立つGiant race達に、見た目は無表情のまま泰然と、内心は話しかけるtimingが掴めず狼狽えていたVandalieuは、何とか口を開いた。
「えーと……tonight、真night中に」
「そうか、tonightか……って、ちょっと待っておくれよ。幾らなんでも早すぎるっ」
まだ真night中には早いが、既に日は完全に沈んでいる。これから全てのSlaveの首輪を外して蜂起を呼びかけるには時間が足りない。
tacticsも何も無く暴れれば、Soldierとしては二流以下の連中相手でも大きな犠牲が出る。それに、Slave全てがすぐ蜂起に加わろうとする訳ではない。
「あたし達はin any case、Slaveの中にはもう全て諦めちまっている奴等も居る。そいつらを説得する時間が必要だ。協力しないでも良いから、せめてその間隠れていて欲しいってね。
……まさか、あのSoldier達を人形にしたのと同じ方法を使うつもりじゃないだろうね？」
Gopherがそう言った瞬間、他のGiant raceの顔にも疑念が浮かぶ。それはそうだろう、人を一時間から数十分で廃人の人形にしてしまう事が出来るVandalieuを、恐れずにいられる方がおかしい。
とても健全な反応である。なので、気にしない。
「いえ、そんな事はしません。でも真night中に決行します。問題はありません」
「だから、それじゃあ時間が足りないんだよ」
「いえいえ、時間はもう十分です。明日の早朝には俺達がこのSlave鉱山を占拠しています。協力してくれない人が居ても関係無く、俺が呼んできた皆が実行し、完遂します」
「な、何だって！？」
Gopher達は驚いた。彼女達はVandalieuが、自分達を助けに来た事は信じている。だが、そのために自分達の協力を必要としていると思っていた。
しかし、Vandalieuは協力を必要とはしていない。Gopher達が何を考えていようと勝手に時間を決めて、独力でSlave鉱山を占拠すると告げたのだ。
じゃあ、何で前もって自分達を集めたのか？
そう困惑するGopher達にLeviaが告げた。
『皆には、tonightじっとしていて欲しいの。そして、その後選択して。新しいTalosheimの民と成るか否かを』
堅牢な要塞の-samaだったSlave鉱山は、朝日が昇りきるその時には静かに陥落し、占拠された。
Soldier達の夕食に毒が盛られていたのだ。無味無臭の毒にSoldier達は気がつかないまま夕食を口にして、ベッドで昏睡conditionに陥った。
極少数のresistance skillを持っていたSoldier達は異変に気が付き、自分達と同じように起きていた同僚のSoldier達に異変を訴えたが、その同僚に……Vandalieuの人形と化していた同僚に不意を突かれて次々に拘束された。
眠っていたBesser Viscountや、その護衛のKnight、Servantも全員生きたまま拘束された。
そして起きたまま城壁で見張りに着いているSoldier達は、本隊の異変に気が付いても対応する事が出来なかった。
「ぶ、武装集団が近付いてきます！」
「あれは、Giant race……ひぃっ！ Giant raceのUndeadだ！」
正面から恐ろしい咆哮を上げながら、Borkus達が巨体に不似合いな速度で走って近付いてくる。
見張りのSoldier達は笛を吹き、鐘を鳴らして緊急事態を知らせるが、応える者は無い。いや、彼らが望まない形で応える者達が迫る。
『どうせテメェ等は皆殺しだ！ だったら俺達の気晴らしに付き合って死ね！ 【鋼断ち】！』
『【鎧砕き】ィィィィ！』
『【鉄穿】！』
Borkus達が次々とMartial Artsを使用して城壁を攻撃する。すると城壁も城門もまるで豆腐か何かで出来ているかのように断たれ、砕かれ、貫かれた。
Soldier達が瓦礫に混じって吹っ飛ぶ-samaは、傍から見る分には滑稽にすら思えた。
そして翌朝、城壁と見張りのSoldierを残骸に変えたBorkus達は
『……物足りねぇ』
昏睡conditionで縛られているBesser Viscount以下Slave鉱山のSoldier達や非戦闘員百数十名の-sama子を見下ろしながら、Borkusは剥き出しの頬boneを掻いた。
「Borkusが心行くまで楽しんだら、ここが更地になるじゃないですか」
『そこまで暴れねぇよ。瓦礫ぐらいは残るぜ』
「Soldierは元から皆殺しにする予定ですけど、建物はまだ残してもらわないと困ります」
『ははは、そうだったな！』
恐ろしい事を言いながら笑うBorkusと頷いているVandalieu。二人の会話を聞いて、元Slave達の半分程は引き気味である。
「面は変わったのに、相変わらずchildみたいな事を言ってるね、親父」
引かずに話しかけたのはGopherだ。彼女は半分がboneだけになったBorkusを見て、苦笑いを浮かべた。逆に、Borkusは彼女の顔を見て笑い声を引っ込めた。
『すまねぇな、嘘を吐いちまって』
「Mirg Shield Nationの連中を追い返して迎えに行くって約束かい？ 誰も本気にしてないよ」
『だけどよ、死んだ後二百年もお前等の事を放っておいた』
「いいって。Levia -samaとそこの陛下から聞いてるよ、Zandia -sama達と、地下のGoddessの遺産を守ってたんだろ」
『そのつもりだったんだけどよ……』
実際にはZandiaの遺体は手首だけで、地下の遺産はBorkusが守らなくてもCurseの氷によってsealedされていた。だが「気にする事じゃないよ」とGopherは冷たい父親の背を叩いた。
「しょぼくれた顔を見せるんじゃないよ、親父らしくもない。孫にintroductionできないじゃないか」
『ま、孫？ 孫だとぉっ！？ 居るのか！？』
「ああ、三人ね。introductionできるのは二人だけだし、誰が父親かは言えないけどね……」
Slave鉱山ではSoldier達が女のSlaveを慰み者にしていた。このworldでは避妊薬は高価なので、Slaveに使えるものではない。
そう言う事だ。
『そうか……坊主？』
Vandalieuは首を横に振った。Slave鉱山で死んだ霊は、殆ど残っていなかったからだ。Undeadが発生するLambda worldでは、犯罪Slaveが次々に使い潰されていく鉱山にClericが居るのはSoldierや正規の労働者を治療するためだけではない。死者の霊を浄化するためでもある。
残っていた霊の中に、Gopherの子だと言う者は無い。
『そうか……いや、良いんだ。きっと、ロクデナシの神の所じゃなくて、女Kami-samaの所に逝ってるはずだ。あれだけ祈ったんだからよ』
「そうですね……」
周囲ではUndead GiantとTalosheim出身のSlave達の、再会を喜ぶ声と、この場に居ない者を悼む声が幾つも響いている。
(Heinzも殺せないし、Reincarnationの環に還った者を生き返す事も、Undeadにして取り戻す事も出来ない。相変わらず、無力な事だ)
前者は当然として、何時かは後者も何とかしたいものだ。そう思いながら、そろそろかなとLeviaに「お願いします」と促した。
『皆、私達は陛下と共にこれからTalosheimに戻ります。皆には、私達について来るかここで別れるか選んで貰います』
Gopher達Talosheimの避難民はBorkusやZran達の身内なので、当然連れて帰りたい。しかしそれはVandalieuが王として治める国に来ると言う事だ。-chanと意思確認はしないといけない。
『今のTalosheimは、Vandalieu陛下が治めるUndeadやGhoul、陛下がTamerしたmonstersの国です。昔と違う事も多いと思います。私も、生きていた時とは随分変わってしまいました。
敵も多いです。Hartner Dukeは私達の事を知れば許さないでしょうし、Mirg Shield Nationを初めとしたAmid Empireは変わらず私達の滅亡を望んでいます。陛下を狙うEvil God (M)を奉じるPure-breed Vampireも居ます。そしてこれからも敵は増えるでしょう』
「certainly、敵とは戦います。去年も六千人のMirg Shield Nationの遠征軍を迎撃しました。皆からの要望もあれば聞きます。
ですが、何でも出来る訳ではありません。何事にも限界があります。それでも良ければ俺の国に来てください」
今のTalosheimは敵が多く、法律は借り物。問題だらけの国だ。とても理想郷や楽園だと胸を張って言える場所ではない。
暫くは良いだろう。だが何時かDeath-Attribute Magicを知り尽くしたReincarnatorや、今よりもずっと強くなったHeinz達、そして『God of Law and Life』Aldaや『God of Ice』Yupeon等のAdventしたGodsに率いられた、一人一人が一騎当千の超人で構成された数千万単位の大軍勢が攻め寄せるかもしれない。
そんな国に来いと言うのだから、お願いするのが当然だ。
そうVandalieuは思うのだが、Gopher達は「何言ってんだい、付いて行くに決まってるだろ」と答えた。
「助けてもらった恩もあるし、親父にも会えたしね。それに、この鉱山を占拠した手並みがあれば大丈夫だろうさ」
「Undeadとmonstersの国って聞いて不安が無い訳じゃないが、親父-dono達が見た目以外は生きてた時と変わらないからな。あんたを信じるよ」
「それに、ここで別れてもこのDuchyに……いや、Elective Kingdomに生きていく場所が無いしな」
どうやら、元避難民組は全員ついて来てくれるらしい。
『皆、ありがとうっ』
喜ぶLeviaにこれからの予定の説明を任せて、Vandalieuは次のgroupに向かった。
Slave鉱山にはGopher達以外にも二種類のSlaveが存在する。普通の犯罪Slaveと、売れ残りここに送られたSlave、そして元First cultivation villageの者達だ。
(棄民政策すれすれじゃなくて、実質棄民政策だったのか。……もう少し城を傾ける角度をきつくしてやれば良かったかな？)
そんな事を考えながら、普通の犯罪Slaveのgroupに向かう。彼らのSlaveの首輪は外さず、更にSoldier達と同じように縛り上げ、人形Soldier達に見張らせている。元凶悪犯だった連中なので、油断できないからだ。
中にはつい先日Slave鉱山に連れて来られたばかりの者もいて、気力とEnduranceが残っている者も多い。
「話は聞いていましたね？ ではこれから選別を行います」
「……俺達には選ぶ権利は無いのか？」
顔に傷のある髭面のSlaveの周りを見ながら、Vandalieuは答えた。
「選ぶ権利はあります。でも、それを叶えるかどうか決める権利が俺にはあります。他国での犯行でも、凶悪犯を迎えるつもりはありません」
Talosheimに酷い事をしたHartner Duchyで酷使されていた犯罪者だから実は善人だなんて、そんなBAKANA事は無い。
余程の事情が無い限り、彼らを連れて行くつもりはVandalieuには無かった。
「そうかい。じゃあ俺はここでお別れさせてもらうぜ。餞別代わりにSoldier共の予備の装備と、cafeteriaの食料を幾つか分けてくれないか？」
「分りました。Hanna -san、彼はこの世とお別れです」
「なっ！？ ちょっと待て、そんな事俺は選んで――」
『はーい。分かりました♪』
「ぎやああああああああああ！？」
Flame GhostのHannaに引っ立てられた傷跡のある男が、火達磨と化す。そしてすぐに倒れて動かなくなった。
「じゃあ、次の人ー」
「ちょ、ちょっと待てっ！ お前何のつもりだ！？」
「何であいつを焼き殺したんだ！？ あいつは別にあんたに逆らった訳でも、金を寄越せってdemandした訳でもないだろ！？」
驚愕し怯える犯罪Slave達に、Vandalieuは瞬きを何度かした後答えた。
「貴方達の選択を叶えるかどうか決める権利が俺にはあると言ったじゃないですか。その権利に基づいて、あの人の選択を叶えないと決めました」
「だ、だから何で殺したんだ！？」
「だって、originally mountain banditだった人にWeapon Equipmentと食料を与えて解放なんてして、この後またmountain banditに戻って人を害したら被害者の人達に悪いですし」
Slave鉱山で死んだ霊はClericに浄化されてしまっているが、犯罪Slaveに憑いている霊はそのままだった。なので、凶悪犯の場合は、大体背後に憑いている人達の話を聞けば分かる。
VandalieuはHartner Duchyを諦めているが、悪人を野に解き放とうとは考えていなかった。それに、ここで悪人を解放すると一番近い人里のcultivation villageに迷惑がかかるかもしれない。
「で、でもあんたに助けられて改心したとか――」
「俺は貴方達犯罪Slaveを助けていません。Borkus達の身内を助けたら付いていた付着物を、一緒に連れて行くかこの場で捨てるか決めるだけです」
別にVandalieuは弱者の守護者やSlaveの解放者に成ろうと思っている訳ではない。目的はあくまでもTalosheimの避難民、Borkus達の身内だ。
そんな彼にとって、他の犯罪Slave達はあくまでも「ついで」に過ぎない。生かしておくと害に成りそうなら、Slave鉱山のSoldier共々殺して利用するだけだ。
「わ、分かった！ 俺はあんたに着いて行くよ、何でも言ってくれ！ 俺は役に立つぜぇっ！」
「じゃあ焼死してください。Aria -sanどうぞー」
『はいはい、こちらですよ～』
「ぎやああああああああああ！？ なんでぇええええええっ！？」
「いや、連続強盗強姦殺人犯に来られても困りますし」
Talosheimのfemale陣は性犯罪者の首くらい軽く捻るだろうけど、Pauvina達の教育に悪い。
「では、次の方ー」
「ま、待ってくれっ！ 俺はSlaveのままでいいっ、解放して欲しいなんて言わないっ、だから火炙りだけは勘弁してくれぇっ！」
三人目の男はそう言うなり縛られたまま器用に額を地面に擦りつけた。その背には霊は着いていない。凶悪犯では無いかもしれない。
「因みに、Slave落ちした罪状は？」
「ぬ、盗みだよ。宿に盗みに入って、金目の物を……それがたまたまNoble -sama縁の方の持ち物で……」
窃盗で鉱山行きとはやや罪に比べて罪状が重い気がするようにVandalieuには思えるが、相手がNobleの関係者ならあり得るかもしれない。
「じゃあ、暫くTalosheimで労役に励んでください。でも、Talosheimでまた盗みを働いたら酷いですよ」
一年かそれぐらい働かせて、問題が無ければ解放する。Hartner DuchyのNobleはTalosheimのNobleではないので、こんなものだろう。
「は……へへぇ～っ！ 謹んで務めさせていただきますっ！」
それで死ななくて済むならと、縛られたまま器用に平伏する男に頷いてから、次の犯罪Slaveに視線を向ける。
「俺はお前に着いて行くのは御免だぜ、薄気味悪い死体使いが。だが殺すならテメェの手で殺しやがれ、手下の手ばかり汚させやがって」
「えー」
「どうした、やっぱり出来ねえのか。おいっ、Giant race共！ こいつに着いて行ってもいいように使い潰されるだけだぜっ！ だから俺達と、な、なにやがう゛げぎょっ」
VandalieuはGopher達を扇動しようとしていた男の頭を両手で掴むと、そのまま【-Surpass Limits-】skillまで使用して一気に首を百八十度回転させ頸椎を破壊した。
Experience Pointが入らないから自分の手ではやりたくないのにと思いながら、男の顔と背中に溜め息を吐き、ぽいっと捨てる。
「では次の方ー」
その後、犯罪Slave達は「Slaveのまま連れて行って貰う」事が最善の選択肢だと認識したのか、全員それに倣った。
尤も、それでも凶悪犯はVandalieuにその場で始末されてしまった。
一方、Gopher達は犯罪Slaveの選別を終え、元First cultivation villageの者達の所に向かうVandalieuの-sama子を、顔を引きつらせて見ていた。
「み、見た目通りと言うか、普通じゃないみたいだね」
表情一つ変えずに人を焼き殺させたり、自分の手で首を捻って殺したり、尋常ではないVandalieuの-sama子に彼女達はVandalieuの印象を改めていた。
「別に、SlaveのSavior -samaとか、そんな風に思ってた訳じゃないけどね……」
『そうか？ あれでも結構お前らを怖がらせない-samaに配慮してる方だぜ』
「あれで！？」
『ああ、さっき首を捻ったのだってbloodをお前らに見せない-samaに気を使ったからだしな』
「……だったらこの臭いもどうにかして欲しいんだけどね」
当然だが、犯罪Slaveの肉が焼け焦げた臭いが周囲には漂っている。多少離れているので、マシではあるが。
『確かになぁ、腹が減って来るぜ』
そう答える父親に、Gopherは「全くだよ」と答えかけて硬直した。そしてBorkusの顔を二度見してから、Leviaを見る。
『？』
どうかしたの？ そんな表情のLeviaにGopherは思わず天を仰いだ。彼女が思っていた以上に、BorkusやLevia達は生前とは違う事に気がついたのだ。
「親父とLevia -sama達はちょっと違うraceに生まれ変わっただけだとでも考えて、慣れるしかないか。
しかし、あんたもとんでもない息子を産んだもんだね」
「……それは私に言っているの？」
急にGopherに話しかけられたEleonoraは目を瞬かせて振り返る。
「ああ、あんたが陛下の母親なんだろ？ やっぱりVampireって若いね、羨ましいよ」
その言葉で、Vampireの自分がDhampirのVandalieuの母親だと勘違いされている事に気がついたEleonoraはむっとして否定した。
「違うわっ！ 私はVandalieu -samaの僕であって、母親はDarcia -samaよっ！」
肉の焼ける良い匂いにappetiteを刺激され、(barbecue食べたい)と思いつつVandalieuはFirst cultivation villageの面々と話を終えた。
彼らはかなりVandalieuに引いていたが、結局Talosheimに来る事を選択した。Hartner Duchyに残っても、彼らに生きる居場所が無いからだ。
捕まれば悪くて処刑、良くても再びSlaveの身、他のDuchyまで逃げようにもfrom here長い旅に成る。なら、着いて行った方が生きられる可能性が高い。
「Slaveのままでも構いませんが、今より少しでも良いのでマシな扱いをして頂けますと……」
「いえいえ、身分は普通の人……自由市民で迎えますよ。犯罪者でもない貴方達を俺がSlaveにする理由は在りませんし」
Slave暮らしですっかり卑屈に成ってしまった村長の息子だと言う若い青年が頭を下げるのを止めて、そう約束する。
そのVandalieuに母親疑惑を解いて来たEleonoraが囁いた。
「このまま連れて行っていいの？ 彼らは将来Vandalieu -samaを裏切るかもしれないわ」
元First cultivation villageの面々の行動を強制的に縛る枷は無い。Vandalieu達にSlaveの首輪を解除する技術はあっても、新しく作る技術は無い。Sauron領生まれの難民で、originallyはVidaを信仰していたとしても、それがVandalieuにLoyaltyを尽くす保証には成らない。
彼らには【Death-Attribute Charm】が効かないのだから。
「少し、【Mind Encroachment】で縛っておいた方が……」
「いえいえ、そこまでしなくて良いですよ。Talosheimは国であって、秘密結社じゃないのですから」
だがVandalieuは別にそこまでのLoyaltyを彼らに求めるつもりは無かった。
「でも……もし将来裏切ったら……」
「もしもの時に裏切るかもしれない、それが人です。一応俺は王で、彼らはただの民。それならこんなものです」
Vandalieuの感覚では、犯罪者でもない一般人の意思を洗脳までして縛るのは異常だ。それにfamilyの命を人質に取られたり、法外な報酬を約束されたりすれば思わず揺れ、裏切る事がある。それが正常な人だろう。
その後本当に裏切るかはin any case。
もし裏切られたらその時はその時、ケースバイケースで対応すれば良いのだ。
しかしまだEleonoraは納得していないようなので、続ける。
「それにほら、Eleonoraは裏切らないでしょう？ なら大丈夫」
ぱあぁっと効果音が聞こえそうな程、Eleonoraの顔が輝いた。そしてすぐVandalieuを抱き上げる。
「Vandalieu -samaっ、もう一生離さないっ！」
「……だんだん俺を抱き上げるSpeedが上がって来ましたね」
RitaやSalireとは違う温かさのある柔らかさに抱きしめられながら、一連の動きに無駄も淀みも無いEleonoraにVandalieuは驚愕していた。彼も既にEarthなら達人Classの【Unarmed Fighting Technique】の使い手だが、Eleonoraの動きが見えなかった。
今も絶妙に腕を回して、Vandalieuが抜け出せない-samaにしている。
見事なものだ。抜け出せないので、そのまま最後のgroupの所に運んでもらった。
売れ残って、若しくは最初から売れないだろうと思われてSlave鉱山に叩き売られたSlave達だ。その多くは娼館も進んで買わない幼い年頃のShoujoや、Body労働に使えるまでに時間がかかりすぎる幼い少年。顔やbody partに大きな傷や欠損があるSlaveだ。
それらのSlave達は一-samaに目が死んでいて、何も考えていないようなぼんやりとした顔をしている。
通常なら、Slave達の意思を確認するのが良いのだろう。自分で考える判断Abilityが弱っているが、それを奮起させ自身の意思で選択させる事で、立ち直れるよう促すのが最良だ。
しかし、Slave達はVandalieuが近づくと一-samaに彼を見る。吐息を漏らし、呻き、待ち焦がれた何かの-samaに仰ぐ。
【Death-Attribute Charm】が効いているのだ。
「どうしてもやりたい事、戻りたい場所、殺したい相手が居るなら言ってください。善処します。
なければ俺に付いてきなさい。俺が与えるものを受け取って、やれと言われた事をやって、力を付けたら好きにしなさい」
【Death-Attribute Charm】が効いている以上、意思確認は形だけになってしまう。だから形だけ聞いて、後は命令にした。skillのimpact下にあっても、心身共に回復し読み書き算術が出来るようになれば、自分でも考えるようになるだろうと。
「はい……分かりました」
「ごmaster -sama……」
人形conditionのSoldierよりも生気が薄いSlave達がnod。from here移動する前に治せる傷は治療して、しっかり食べさせなければならないだろう。
その前に残った最後の一人の処遇が問題だ。
「……それで、何であなたがここに居るのですか？」
半眼になったVandalieuが見るのは、縛られて転がっている【Degenerate】のLucilianoだった。