『GAAAAAAA……』
最後のmonsters、複数のpoison Zombieが組み合わさって巨体を成したRank7、poison Zombie GIANTを蒼く燃える炎を纏ったMagic Swordで断ち割ったHeinzは、新手の出現が無い事を確認してから息を吐いた。
中年から壮年程の女Zombieを核に纏まっていたこのmonstersは、他のmonstersよりも一際強かった。
「runawayは終わったようだ。皆、大丈夫か?」
「ああ、問題無い。疲れたけどな」
「こっちも無傷よ……疲れたけど」
Heinz達の消耗は激しかった。runawayで現れたmonstersは主にRank4から5で、Rank7のmonstersは先程止めを刺したpoison Zombie GIANT一体のみ。数も、monstersのrunawayとしては平均よりも少ない千数百匹程度。
AClass adventurer partyである【Five-colored blades】が苦戦するような相手では無く、それどころか雑魚として一方的に蹴散らすのが普通だ。それが千匹を超える大群でも。
それがAClass adventurerのpartyの力だ。
だが、Niarkiの町に迫ったmonstersは普通では無かった。
群はmonstersの七割以上がUndead、残り三割が植物と蟲型のmonstersで構成されていた。そして、言葉を紡ぐ器官をもつmonstersは、「Heinzを殺せ」と呪文のように唱えていた。
Kingの名を持つ強大な統率者に率いられたmonstersの群れは一つの生き物のように行動するが、これは異常事態だった。
尤も、それは幸いだったとも言える。monstersの群れはNiarkiの町に入る事に拘らなかったからだ。町に居た警備兵とKnight、そしてadventurer達が集まって急遽結成したDefense Corpsが出陣すると、monstersの群れは町を無視する-samaにDefense CorpsのForefrontに立っていたHeinzめがけてChargeしてきたのだ。
手の届く所に傷を負って動けないSoldierが倒れていようが、Fatigue困憊で隙だらけになっているadventurerが居ようが、構わずHeinzを狙おうとする。
だがmonsters全てがRank以上に強力な個体ばかりで、しかも倒されても倒されても、際限なく襲い掛かって来た。
倒された蟲型のmonstersはUndeadと化して、倒されたUndeadの残骸から菌やカビが生え、それがPoison MushやVenomモールド等の植物Typeのmonstersが発生し、更に植物Typeの残骸から蟲が発生してそれがmonstersと化す。
終わりの無いmonstersの連鎖によって、Heinz達は実際には万を超えるmonstersに立ち向かわなければならなかった。
「しかし……随分恨まれたものだな。何をやったんだ?」
「わたし達adventurerはmonstersを数え切れない程倒していますから、恨まれる理由は幾らでもありますが、尋常ではありませんでしたね」
Orbaum Elective KingdomにHeinz達が活動拠点を移してからpartyに加わった、HumanのUnarmed FighterのJenniferと『Goddess of Sleep』MillのPriest、ElfのDaiana。
問われたHeinzは二人に答える前に、Niarkiの町の在る方向を振り返る。
monsters達は【Five-colored blades】を、Heinzだけを狙っていたため、町の城壁は無傷で、Defense Corpsは流石に無傷ではなく重傷者は何人も出たが死者は運が悪かった数人しか出ていない。
「一つ心当たりがあるとすれば、あのDhampirの少年だ」
「Adventurer’s Guildで突然逃げだしたあの? 彼に恨まれるような覚えがあるのか?」
「いえ、そもそもあの少年とこのmonstersのrunawayは何の関係も無いじゃありませんか」
JenniferとDaianaに、どう言えば良いかとHeinzは迷ってから口を開いた。
「私もそう思う。だが……彼のnameはVandalieuと言うんだ」
二人はその答えを聞いても訳が解らず目を瞬かせる。Heinzも、確信は無かった。
だがMirg Shield Nationで彼が捕まえたDark Elfの「Witch」の名は、Darcia。それは今から約七年前の出来事だ。
そしてAdventurer’s GuildのCounterに残された、受理されないまま処分された登録希望の用紙には、Vandalieuと言う名と、ageは七ageと記入されていた。
「もしかしたら、彼は――」
「考え過ぎだ、Heinz」
「Edgar?」
「あのDhampirの子は、どう見ても片親がDark Elfじゃない。あんな真っ白い肌で、そんな訳があるはずないだろ?
Heinz、お前の罪の意識でそう思い込みかけてるだけだ」
「それは……そうかもしれないな」
Dhampirの目に見える特徴は片方がbloodの-samaに紅いオッドアイとfangsと出し入れ自由なclaws。それ以外は、必ず両親の特徴を受け継ぐ。片親がDark Elfなら、蠟のような白い肌に成る筈が無い。
それに生後一ageにも満たない赤子が、野外でたった一人生き延びられるはずが無い。しかも、Boundary Mountain Rangeを越えてOrbaum Elective Kingdomにまで逃げ延びて来るなんて。
「考え過ぎだな。それに、このmonstersのrunawayとの関連まで疑うなんて、どうやら自分で思っているよりも疲れているようだ。彼がSecond Coming of the Demon Kingじゃあるまいし」
最近Alda templeで囁かれている噂を口にして苦笑いを浮かべるHeinzに、「そうさ」と応えるEdgarだったが、言葉とは裏腹にVandalieuについて町に戻ったら調べてみるかと考えていた。
(確か、Niarkiの町で情報屋を纏めてるのは『Dark nightのfangs』ってorganizationだったな。聞いてみるか)
Edgarのこの行動が、首領と幹部全員がUndead Transformationした後もorganizationを運営し続けていた驚愕の『Dark nightのfangs』事件が発覚するきっかけになったのだった。
「それよりも、町に帰って休んだらこのmonstersが溢れ出て来たDungeonを探しに行くわよ。群は発見済みのDungeonとは全く別の方向から来たんだから、新しいDungeonが発生している筈よ。
もしかしたら、【Trial of Zakkart】かも」
百年ほど前から、このContinentの何処かに前触れもなく突然現れて一か月前後で消えてしまう、worldで唯一確認された移動する迷宮。等Class識別不能で、Heinz達【Five-colored blades】が仲間を一人犠牲にして撤退に成功した以外では生還者皆無のDungeon、【Trial of Zakkart】。迷宮の最深部にはZakkartが残した秘宝が眠っているとも、Undead TransformationしたZakkartが待ち受けていて、討伐したHeroはChampion Bellwood's Successorになれるとも伝わっている。
「だとしたら……今度こそ攻略してみせる。マルティの為にも。
だが、そうだな。まず、Selenを待たせている宿に戻らないとな」
「いや、その前にguildで報告が……はいはい、俺がやっておくよ。受付嬢の姉-san方の人気を俺が独占しても文句を言うなよ」
DhampirのShoujoの所に戻ろうとするleaderに、Edgarは苦笑いを浮かべた。
「はぁ……ほほぅ……それは酷い……赦せませんね。万死に値します」
「Vandalieu -sama、突然どうしたの?」
「adventurer party『Western Lull』の皆-sanや、受付嬢のAria -san、Hanna -sanとそのお父-sanです」
地面をGolem Transformationさせ、【Golem Transmutation】で形を変えて通路にする方法で、VandalieuはMage guildのGuild Masterのmansionから、Hartner Dukeの城の地下にtunnelを掘っている最中だった。
Braga達Black Goblinと彼らのlover達にはmansionに残ってもらい、廃人と化したGuild Master達は『置き土産』を準備している。
因みに、Guild Masterのmansionには価値がある上等な杖等もあったのだが、Vandalieuは相変わらず無手のままだ。Human用の杖をmonster染みたMana量の彼が使うと、細心の注意を払って術を行使しなければ爆ぜ割れたり、腐ったり、塵に成ったりするからだ。
magicの助けになる杖を使うためには、米粒に文字を書くような集中力が必要になるので、Vandalieuは杖を使わない。何処かに人以上の存在の為に作られた杖は無いだろうか?
それはin any case、通路を作っている途中で突然Vandalieuが独り言を言い出した。
ただ、UndeadであるZranの目には、無残な姿の霊に纏わり憑かれているのが映っている。
『Mikoがここに来てからcountlessに集まって来た霊の一部だな。今居るのは最近死んだ連中ばかりみたいだが』
Niarkiの町に来た時の-samaに、都に着いた途端Vandalieu目掛けて町中の霊が殺到してきたのだ。あまりに数が多いので、Zranは彼等が何を話しているのか聞き取れない。
ただ、今Vandalieuに何かを口々に訴えている霊達は他の霊とは少し-sama子が違った。
「Eleonora、Zran、これから黒い髪と瞳の、Kaidou Kanataと言う三十代前後の男が現れたら指示を出すまで俺に任せてください」
「Kaidou Kanata? ……まさか!?」
『前世でMikoを殺したクズ共の一人か!? bastard、良い機会だ、ぶち殺してZombieにして情報を吐かせようぜ!』
Vandalieuは、Kanataの犠牲者達の霊から彼の情報を既に得ていた。
彼女達によると、KanataはNinelandにもう入り込んでおり、何故こちらの場所が解るのかは不明だがVandalieuに近づいていると言う。
霊達によると何故か剣や槍、magicが通用せず、Kanataの攻撃は彼女達のbody partやDefense Equipmentを透過してしまうらしい。更に、【Unarmed Fighting Technique】や【Dagger Technique】の使い手で、高いFire-Attribute MagicやWind-Attribute Magicまで使うのだとか。
(透過は、Rodcorteから貰ったCheat Ability、Fire-AttributeとWind-Attributeは貰ったattributeの適性を、Originで伸ばした結果。後、【Unarmed Fighting Technique】や【Dagger Technique】は……Originでの経験かな? 全く、呪われてない奴はこれだから)
自分は全て一から努力し直したのに不平等だと内心では思いながら、Killing Intentを顔に出すZran達を宥めにかかる。Zran達は並のadventurerやKnightでは太刀打ちできない戦闘Abilityを持っているが、Cheat Abilityはそうした力量差をひっくり返す危険性がある。
だからCheatなんて呼ばれるのだ。
「だから俺に任せてください。彼を殺すなら……いや、まあ目に余る狼藉三昧なので確実に殺しますけど、俺がやりたいですし」
『相当な悪党だろうなとは、その霊を見れば分かるが……そんなに酷いのか?』
「かなり。正気を疑います」
Kanataの事を知ったVandalieuが覚えたのは、憎しみよりも困惑だった。短く纏めると、「こいつ何をやってんだ?」と思った。
人を人とも思わぬ残酷な行いだが、何よりもあまりに無思慮過ぎる。少しでも都合が悪かったり、その方が手っ取り早いと思ったら、すぐさま殺して犯して奪う。
そんな事をしていたら、幾らCheat Abilityを持っていても長生きできないだろうに。
Originで最初に死んだはずのVandalieuよりもずっと大人の姿をしている事や、何故Vandalieuの居場所が解るのかと行った事よりも、そちらの方が気になる。
どうせそれらはRodcorteが何かしたのだろうし。
「とりあえず、奴が俺を殺しに来るのは確定ではあるのですが……定期的に【Detect Life】を唱えるようにしましょう」
Kanataが口にしていたらしい「仕事」と言うのは、Vandalieuを殺す事を指していただろうし。
どうでも良いが、何故このtimingで邪魔に来るのだろうか? Vandalieuを直接狙いに来る分、Guild Masterのmansionで待機しているBraga達を狙われるよりは、良い展開だが。
「確か、その連中って正義のallyらしい事をしていたのよね?」
「正義のallyなんてそんなもんです。BellwoodもAlda believerからすればHeroですけど、俺達からすればそうじゃないのと同じで」
「確かに、そう言うものね」
そんな事を言いながら、Ninelandの最深部にVandalieu達は到達した。
暗い石造りの通路とその先には、【Detect Life】では人の反応は無い。ただ、【Danger Sense: Death】には反応がある。
『trapか?』
「いえ、この形はBarrierでしょう。Championが残したBarrierがあるらしいですし」
開通したtunnelから通路に出てすたすたと進み、Vandalieuはweak【Death Bullet】を通路の先に撃った。
すると、何も無かったはずの場所に光の壁が現れ、音と光を発して【Death Bullet】を弾けさせた。
「これが、Champion Nineroadの残したBarrier……っ!」
『Mikoの【Death Bullet】を弾きやがった!』
「では解除しますねー」
「『えっ?』」
いや、幾らなんでもそんなあっさり?
驚くEleonoraとZranの見ている前で、Vandalieuはdeath attributeのManaを使いChampionのBarrierを解いて行く。
難しい事は何もしていない。ただ単に、Barrierが耐えられない負荷を一気にかけてブチ破るだけだ。
数十秒ほどNineroadのBarrierは耐えたが、最後はglassが砕け散るような音を立てて砕け散った。
「ふぅ、Ice Ageの氷よりも硬かったな。Manaを三億も使いましたし。あ、お弁当下さい」
『お、おう』
Zranは驚いた顔のまま、荷物の中から水袋を取り出す。中に入っているのは、Mage guildのGuild Master子飼いの用心棒の新鮮なblood液である。
Pure-breed Vampireの協力者である雇い主から散々甘い汁を吸っていたらしいので、そのbloodも美味い。
「ふぅ、一仕事終えた後の一杯は格別ですね」
「Vandalieu -sama、ちょっと――」
「中年ぽかったですか?」
「いいえ、ちょっと背伸びしているchildみたいで可愛いらしいわ」
「そうですか……」
やや肩を落としつつ、Manaの回復を待たずに再び進む。Kanataがこちらに向かっている事は知っているのだが、【Automatic Mana Recovery】skillによって一秒毎にManaが一万以上回復するので問題無い。
Barrierを越えると、そこは通路からは想像できない程広い地下墓地になっていた。大小-sama々な窪みの中にboneや殻が転がっている。とても聖域と呼べる光景では無い。
漂う空気は不快な湿り気を帯びていて、何処か禍々しい。生命は存在しないはずなのに、何処からか呻き声の-samaな音が小さく響く。
「うーん、居ませんね、Princess -sama」
『おーいっ! Levia -samaっ! 俺だっ、Zranだっ、出て来てくれ!』
しかし怨霊や悪霊の姿は見えない。First PrincessのLeviaの姿もだ。
「まだBarrierが在るのかもしれないわ。何かを封じ込めるためのBarrierは、x2三重に仕掛ける事が多いのよ」
Eleonoraの言葉に従って探すと、それらしいものが見つかった。
鞭で縛られた銀の棺。これがBarrierの核だろう。
「……なんでしょうね、この趣味」
『あー、Nineroadは【Whip Technique】の使い手だったらしいぜ。だからじゃないか?』
「ところで、棺の中には何が入っているのかしら? Pure-breed Vampireだと頼もしいallyに……なるとは限らないわね。Evil God (M)やEvil God (P)に寝返ったVampireかもしれないし」
「確かに、sealedを解いた途端手に終えない存在が出てきたら大変ですね」
そう言いながらVandalieuはsealedを解こうとしてみせるが、特に【Danger Sense: Death】に反応は無い。
「中身は空なのかな? 大丈夫そうなので解きますね」
そして既に解いたBarrierと同-samaにVandalieuはBarrierを解きにかかる。
すると、まだBarrierを解き終える前に棺が鞭を引き千切って内側から勢いよく開いた。
「Vandalieu -samaっ!」
『ちぃっ!』
咄嗟にVandalieuを掴んで下がろうとするEleonoraとZranの前で、棺から飛び出した紅いアメーバ状の何かは鎌首をもたげる-samaにしてVandalieuを見下ろすと、Viperの-samaな素早さで近づく!
ごくごくごくごくごくごく……けぷ。
そしてVandalieuに飲まれた。
『「……えぇ?」』
あっけにとられる二人の前で、Vandalieuは棺の中身を飲み干すと、手を合わせて「ご馳走-sama」と頭を下げる。
「ヴァ、Vandalieu -sama? 今のは? それよりも何で飲むの!?」
「何でって……口に入って来ましたし」
『いやっ、普通は吐き出すだろ!?』
「でも、食べ物を残すのは良くないと思いますよ。まあ、十万年程Championにsealedされていたblood液を普通は食べ物とは呼びませんけど」
『分っているならって、今のはblood液なのか!?』
「じゃあ、もしかしてDemon Kingの一部!?」
Championによって倒されbody partをバラバラにされたDemon King Guduranisが、その一部毎にsealedされているのは有名な話だ。そのため、blood液だけがsealedされていたならその主はDemon Kingしか考えられない。
実際、脳内アナウンスでも『Demon King's Blood液をAbsorptionしました!』と流れた。ただ、二人があまりに驚くので言うかどうか迷ったのだ。
《【Bloodsucking】skillのlevelが10に上がりました! Superior Skill【Bloodwork】にAwakeningしました!》
《【Bloodwork】、【Death-Attribute Magic】、【Mysterious Strength】、【Rapid Healing】、【Automatic Mana Recovery】、【Magic Resistance】、【Venom Secretion:tongue fangs爪】、【Body Stretching:tongue】skillのlevelが上がりました!》
《secondary name、【Second Coming of the Demon King】を獲得しました!》
最後に獲得したsecondary nameに激しく抗議したいVandalieuだった。誰がSecond Coming of the Demon Kingかと。しかし――。
『吐けっ、吐くんだMiko!』
「Vandalieu -sama、ペッしてっ、ペっ!」
Zranに足を掴まれて逆さまにされ、上下に揺らされているのでその余裕は無かった。
「いや、なん、だか、もう、きゅう、しゅう、あ、どう、も」
上下に振られているVandalieuの目には、Championのsealedが解けたからか現れたcountlessのGhost達が映っていた。上下逆さに。
Ghost。VandalieuやUndead、【Spiritualist】にしか姿を見せる事が出来ない無力な霊とは違う、Bodyを持たないままmonstersと化した存在だ。
Rankは2で、物理攻撃が殆ど効かない代わりに自分も物理的な力を持たない。ただ多くの個体は生前の人格やMemoryを完全では無いが有している。
『誰だ? Hartner Duke 家の手先か? ……違う、この恐ろしくも心安らぐsignは一体……?』
『あのGiant raceを見ろ。あれはUndeadだ』
『何故Undeadが? Barrierは破られたのか……我々は解放されるのか?』
輪郭のぼやけた、膝から下が無い半透明なGhost達が囁き合っている。敵意は感じないが、何処か怯えている-samaな雰囲気を感じる。
『おおっ……Levia -samaっ、Levia -samaは居るかっ!? 俺はTalosheimのZranです!』
思わずVandalieuの脚から手を離したZranが、Ghost達に向かって叫ぶ。すかさずEleonoraにキャッチされたVandalieuは、Ghost達の中から腰よりも長く髪を伸ばしたfemaleのGhostが前に出るのを見た。
『Levia -samaっ!』
『Zran……覚えています。私達のraceの中では最も短剣の扱いに長けた、scout職のWarrior』
ZranはPrincess Leviaと親しかった訳でも傍仕えをしていた訳でもないが、そこは五千人程しか人口が無く、身分制度が緩かったTalosheimだ、優秀なWarriorなら普通にPrincessであるLeviaと顔を合わせる機会があった。
特にZranはGiant raceの中でも少ないscout職だったので、Memoryに残り易かったようだ。
『Zandia達とTalosheimに残り、最後まで戦ってくれた貴方が何故ここに? ああ、でもここにsealedされてしまった以上、貴方も私達と同じ虜囚。Goddessの元に還る事も出来ず、かと言って無念を晴らす事も出来ないまま、ここで彷徨うしか――』
「あ、Barrierは解きましたよ」
『そう、あのx2に施されたBarrierが解かれない限り……解かれたのですか?』
「はい。申し遅れました、現Talosheim国王のVandalieuと申します」
Eleonoraに上下逆さでキャッチされたまま、Vandalieuは挨拶したのだった。
Vandalieuから説明を聞き、Talosheimから持ってきた『Garan’s Valley』の岩塩を見たLeviaは、彼の言葉を全面的に信じた。
ここで信じて貰えなかったら大変なので、一安心だ。
『そうですか。Talosheimに残った皆は、最後まで勇猛でしたか。Borkus達をGuidance祖国を守ってくれた事、心から感謝します。
それなのに、私は皆を守る事が……』
『Levia -samaは悪くねぇ! 悪いのは裏切り者のHartner Duke 家だ!』
Princess LeviaがTalosheimから僅かな護衛とHartner Duchyに逃れて来た時、現在では廃墟になっている町の住人やHartner Dukeは温かく迎えてくれた。
だが、Hartner Dukeが彼女達のために催した晩餐には毒が盛られていた。
Hartner Duke 家を盟友だと信じていたPrincess達は、誰一人疑う事無く食事を口にして毒を飲み、それでも抵抗を試みたが彼女達はDukeのKnight達やお抱えMage達によって捕まり、護衛の者はその場で命を奪われ、Princess LeviaはDuke殺害を企てたと汚名を着せられ、火刑に処された。
そして遺体をこの地下のBarrierに葬られたのだ。
『それからの事は、私達と同じようにここに葬られた人達から聞いて、大体の事は分りました。私達を殺したKnightやMage達も、口封じされてここに葬られましたから』
関係者は生かしておかなかったようだ。当時のHartner Dukeは、陰謀家としては優秀だったらしい。Niarkiの町のMillan婆が話を聞いたのは、ここに囚われる前に逃げ出す事に成功し、彷徨っていた関係者の霊だったのかもしれない。
「それで、これからの事ですが」
『はい、既にこの世の者ではない身で言うまでも無い事ですが、Talosheimの王位は貴方の物です。どうか、皆を助け導いてください、よろしくお願いします』
そうLeviaは頭を下げた。その動作一つ一つに、実体が無いとは思えない気品がある。
それでいて高慢な雰囲気は無く、淑やかなお嬢-samaとは彼女の-samaな人だろうとVandalieuは思った。Giant raceである以上、脚が半ばで消えているPrincess Leviaも、二meterを超える長身なのだが。
今は輪郭がぼやけているが、きっと生前は見目麗しいOhime-samaだったのだろう。
『これで、皆とGoddessの元に還る事が出来ます』
だからという訳ではないが、Vandalieuは彼女を引き止めた。
「あ、ちょっと待ってください。Slave鉱山の皆を助けるのに、貴方の協力が必要です」
『私のですか? ですが、今の私に大した事は出来ません』
「大した事じゃなくて良いのよ。貴女がVandalieu -samaに協力して、その姿を見せる事が大事なの」
Slave鉱山に囚われているTalosheimのGiant race達は、当然だがVandalieuや今のTalosheimについて知らない。何より【Death-Attribute Charm】が効かないので、Vandalieuが「Talosheimから助けに来ました」と言っても、信じて貰えない可能性が高い。
ZranやBorkus達Undead Giantが説得しても、その効果は疑問が残る。彼らのfamilyや親族なら信じてくれるかもしれないが、縁の薄い者はUndeadに成った事で狂っているのだと信じないかも知れない。
Goddess Vidaの教えはUndeadに寛容だが、無条件に親しむ存在だと唱えている訳ではないはずだ。
certainly囚われたSlaveである彼らの心情を無視して強引に連れ去り、その後Talosheimで誤解を解くという手もあるが、予期せぬ抵抗に遭ってinjure人……死人を出したら後味が悪い。Undeadには出来るが、死なせないで済むなら済ませた方が良い。
そこでPrincess Leviaだ。二百年前彼らを率いてきた彼女の言葉なら、Ghostと化していてもきっと届くだろう。
「少なくとも、話は聞いてくれるはずよ」
『ですが、皆を守れなかった私の言葉なんて今更……それに、もうこの世に残るために必要な未練も、怨念も無いのです。私達の心は、もう救われました。
貴方の息子-sanなら、必ず皆をSlaveから解放して――』
「む、息子っ!? 違うわっ、私はVandalieu -samaの母親じゃなくて奴――」
DhampirであるVandalieuの母親だと勘違いされたEleonoraの慌てた声を遮って、VandalieuはPrincess Leviaに問いかけた。
「それで良いのですか?」
『それで……とは?』
「簡単に許していいのですか? あなたを殺し、護衛のWarrior達を殺し、二百年も閉じ込めた奴等を。あなたの民を不当に捕らえ、二百年搾取し続けている連中を。
怒りや憎しみ、憎悪は晴らさないでいいのですか?」
『そ、それはっ』
Leviaの声に動揺が混じった。彼女の背後に並ぶ、Giant raceのGhost達も動揺したように姿がぶれる。
二百年前殺された時、民がSlave鉱山に連れて行かれたと知った時、Vandalieuが言う-samaに怒り、憎しみ、Hartner Duke 家を憎悪した。
裏切ったなと罵り、この恨みは忘れないと叫び、怨念を滾らせた。それがsealedから僅かに漏れ出るDemon KingのManaと反応し合い、Ghostと化すほどに。
『ですが、復讐は――』
「正当な行為です。この場合は特に。別に俺は二百年前の恨みを今生きているHumanにぶつけろと言っている訳ではありません。今のHumanに今の恨みをぶつけるだけです」
Levia達を真っ直ぐ見つめて、Vandalieuは言葉を紡ぐ。自分が持つ怒りが、憎しみが、憎悪が、彼女達に伝わるように、それが彼女達の憎しみや憎悪、無念を呼び起こすようにと。
「怒るのも、憎むのも、恨むのも、当然です。人である以上、正常な事です。
信頼していた相手から裏切られ、命を奪われ、貶められた。大事な人達を不条理に捕え、二百年も搾取し続けている。そんな連中に何も思わない奴なんて、狂っているとしか言いようがない」
『当然……正常な……』
「毒を盛られたと気がついた時、護衛のWarrior達を殺された時、火で焼かれた時、貴方は何を感じました?」
『私は……ああっ! 私はっ、あの時っ!』
「あなたの中に憎しみが、怒りが、怨念がある筈です。それを再び燃やしましょう」
『私の、中に……』
『オレタチの怒り……』
『私の……恨みぃぃっ』
一部関係の無いGhostまで煽られているが、Vandalieuは気にせず続ける。
「そして俺に力を貸してください。奪われたものを、奪い返すために」
そう言い終った時、火花が散る音が小さくしたと思った時、闇に包まれていた地下墓地に光と熱が広がった。
『思い出したわ、私の怒りを、憎しみをっ! この怨念を晴らさずに逝く事なんて出来ない! そうでしょう、皆!』
Princess Leviaが燃えていた。比喩表現的な意味では無く、本当に燃えていた。
それまで頼りなかったSpirit Formのbody partが赤々と輝き、輪郭がはっきりして顔の細部まで見える。その姿はまるで炎の髪を伸ばしdressを纏った、火のGoddessの-samaだ。
《【Dead Spirit Magic】skillを獲得しました!》
『そうだっ、その通りだ!』
『今も我々を貶め苛むHartner Duke 家に、災いを成さなければ消えられぬ!』
『あたしを弄んだ挙句捨てた恨みを晴らしてやるっ! Maid舐めんじゃないわよ! キィィィィィ!』
一部、Giant race以外のHartner Duke 家の犠牲者が燃えているがVandalieuは気にしない。
地下墓地に存在したGhost達は、全員がまるで炎を纏ったように燃えていた。
『こいつは、Rank upか!? 一体どうして……? いや、まあ良いか。Levia -samaも皆も残ってくれるようだしな』
Zranが言ったように、Levia達はVandalieuの【Mind Encroachment】skillで共有した彼の負のemotionsをきっかけに、かつて自分が抱いた負のemotionsを思い出し、爆発させた。
それは火刑で処刑されたLeviaのimpactを受け、LeviaをRank4のFlame Ghostに、他のGhostはRank3のFire GhostにRank upさせたのだ。
Mage guildで研究しているMage達や学者が見たら、大騒ぎするような現象だ。
「Vandalieu -samaの偉大さが、また増えた。それで良いじゃない」
『だよな』
しかし、そう流されるのだった。
尤も、そのVandalieu自身はいきなり燃え出したPrincess Levia達に、大きく驚いていたが。身を焦がすような憎悪や怒りを共有したが、本当に燃えるとは思わなかったのだ。
全てを忘れるほど驚いた訳ではないが。
『さあ、早速皆を助けに行きましょう!』
「すみません、その前に片づけたい案件がありまして」
Leviaの燃える手を取らずに、Vandalieuは身を翻して自分がやって来た通路の方を見た。
すると、そこには何時の間にか何も持っていない両手を万ageの形に上げた、黒い髪と瞳の三十程の男が立っていた。
「待ってくれっ! 話を聞いてくれっ! あの時は悪かった、赦してくれっ!」
そう言いながら、Kaidou KanataはVandalieuの前で土下座し、額を埃だらけの床に着けた。
・Title explanation: 【Second Coming of the Demon King】
Second Coming of the Demon Kingである事を示す称号。ただそう認知されるだけでは無く、実際にDemon King Guduranisと同じ事が出来なければ、獲得できない。魂を砕く、新種のmonstersをCreationする、Dungeonを作り出す等。もしくは、Demon Kingの一部を取り込む、Absorptionする、取り込まれる等でも可能。
このsecondary nameを獲得した者は、上記した獲得条件を満たす行為に加え、-sama々な禁術や邪悪な知識の扱いに補正を受ける。
特にmonstersを新たに創り出す事、変化させる事に大きな補正を受ける。Princess Levia達がFlame GhostやFire GhostにRank upしたのもその一例。
ただ全てのmonstersを無条件に創り変化させられる訳では無く、細かな条件や相性等が存在する。