Lambdaに存在する国や町には、当然だが犯罪organizationが存在する。
盗品の売買や、麻薬や呪われたitem等の御禁制の品の密輸、違法Slaveの取引に、殺しの請負。Earthのfantasy作品に出て来るThief guildよりもずっと凶悪で、必要悪だなんてとても口に出来ない連中もいる。
Niarkiの町にも、それは存在する。
構成員数十人程のorganization、『Dark nightのfangs』。最近のHartner Duchyの不景気を利用して、Slave売買や麻薬で儲ける犯罪organizationだった。
その頭、『耳裂き』のザギは、若い頃敵対organizationのTortureを受けて耳を引き千切られてもscreech一つ上げなかったと恐れられる男だ。
「テメェ……何が狙いだ?」
そのザギが睨みつけるのは、赤い髪と瞳をした美女だった。
彼は、bloodの匂いが漂うhideoutのソファに座らされていた。彼の正面には対になるソファに座っている白髪のchildと、その傍らに立つ美女がいる。
近くにいた連中は全員bloodを流して倒れているか、彼が酌をさせていた女達の-samaにroomの隅で震えあがって座り込んでいるかのどちらかだ。
「狙いは――」
「テメェには聞いてねぇ、黙ってろクソガキ。オイ、姉-chan、どう言う冗談か知らねェが、このガキをmasterだと思い込ませたいなら大失敗だぜ。こんなガキに、ウチの連中を瞬く間に始末するような女を使えるはずがっ!?」
大物ぶってペラペラと話していたザギは、赤毛の美女に胸ぐらを片腕で掴み上げられた。
(女の細腕で俺を持ち上げただと!?)
驚愕するザギを釣り上げた美女は、次の瞬間彼を背中から床に叩きつけた。
「げあっ!?」
床が破滅的な音を立てる中、背中を痛打したザギは呼吸が出来ずにその場で苦しみのたうつ。更に彼の腹部に美女の蹴りが加えられる。
「お゛げ……ぇ……っ!」
lungに残っていた空気を絞り出すようにscreechを上げるザギに、美女は更に攻撃を加えようとするがそこに待ったがかかった。
「Eleonora、落ち着いて」
「ですがVandalieu -sama、貴方に暴言を吐く下等生物に呼吸する権利は無いわ。一刻も早くじわじわと嬲り殺すべきよ」
「言っている事が矛盾していますよー。死なれるとまだ困るので、落ち着きましょう」
「……はい。Vandalieu -samaの温情に感謝するのね、Human」
「あ、そう言う『Human』って言葉の使い方は良くないです。俺もEleonoraもZranも皆も『Human』なんですから。ほら、皆Human」
「そ、そうだったわね。皆Human、皆Human……感謝するのね、匹夫が」
「そうそう、その調子」
呼吸がまだ出来ないザギは、頭上で手を握る二人の間で交わされる会話からどうやら本当に主導権はchildの方が持っている事に気が付いた。そして、自分を殺す気は無いようだと言う事に内心で安堵する。
先程見せられたEleonoraの腕前だと、この場に居ない『Dark nightのfangs』が使っている構成員や用心棒では太刀打ちが出来ない。実際、ザギの視界の中にはsolar plexusを剣で貫かれたorganizationの中で最も腕利きの元CClass adventurerのbody Guardの姿がある。
(こうなったら、旦那が来てくれるまで時間を稼ぐしかねぇ)
唯一の希望は、彼のorganizationの後ろ盾にしてNiarkiの暗部の真の支配者である『旦那』がこの異変に駆けつけてくれることだった。『旦那』の使い魔のsignがする事に気がついた彼は、必ずここにやって来ると確信していた。
問題は、それが自分の生きている間か、殺された後かだ。
「ぐっ……それで、目的は、何だ? 金で頼まれたのか? それとも薬か? まさか、誰かの仇討なんて言わねえだろうな?」
「最後の仇討です。ただし代行ですが」
仇討と言われて沈みかけたザギだったが、その代行という答えを聞いてchanceだと内心grinningと笑う。
仇討の場合、多くの復讐者は損得勘定が壊れている事が多い。金や女で転ぶような復讐者なら、最初から犯罪organizationのボス相手にここまでしない。
だが、復讐の代行なら話は別だ。
「なら、何で頼まれた? 金なら、幾らでも払う。俺達の側に寝返らないか?」
「いえ、金は貴方を殺した後根こそぎ頂きます」
「なぁっ!? ちょ、ちょっと待て、目的は仇討なんだよな!?」
「そうです。そのついでに金とorganizationを頂こうと思います」
そう事も無げに告げるVandalieuに、ザギは戦慄を覚えた。しかも、言っている事が本気なら、結局自分を殺す事は確定しているらしい。訳が解らない。
「待てっ、誰の仇討で来た? 何か誤解があるんじゃないか? 俺は確かに悪人だが、理由も無く人は殺さない。生き延びるために仕方なくだ。それに、殺した相手の方がとんでもない悪党だった事だってある。裏には裏の仁義ってもんが――」
「その言葉が嘘だったら酷い目に遭いますよ?」
そう言いつつも、Vandalieuはザギの言っている事は嘘だろうと確信していたが。殺したばかりの彼の部下から、既に色々聞いている。
「それで誰の仇を取りに来たのかですが……『緋色の夢』亭って酒場を覚えていますか?」
ザギは「……何の話だ?」と首を傾げた。『緋色の夢』という酒場に、全く覚えが無かったからだ。
「その酒場で十五年前に歌を歌っていた流れのBard兼詐欺師が誑し込んでいた女の人の仇です」
「は、はぁっ!? 何だそりゃ!? 十五年前!? 詐欺師の情婦!? 何だってそんな下らねぇ仇を取りに来てんだ!? そんなBAKANAはなげごお゛!?」
信じられないと目を剥いて喚くザギの脇腹を、再びEleonoraが蹴り上げた。
「暴言は控えなさい、匹夫」
bloodの混じった反吐を吐きながら転がるザギに、Vandalieuの言葉が届いた。
「何でと言われますと、実は今日の昼間――――」
何か大きな事が起こる。
Niarkiの町で長い事占いを生業にしてきた【Spiritualist】のMillan婆は、昨nightからそんな確信を持っていた。
それは彼女が就く【Spiritualist】Jobの基本的な力があれば、誰もが気づく程あからさまな予兆だった。
「来たかい。あんたのお蔭で商売あがったりだよ」
彼女の小さな店のドアを開ける途中の客に、そう声をかける。
「どう言う事ですか?」
ドアから入って来た白髪隻眼のchild、Vandalieuに問われたMillan婆は皺だらけの顔で笑った。
「それはあんたが来る事が前もって解っていたことかい? それとも、あたしの商売が上がったりなのがあんたのせいだって言った事かい? どっちも良く考えれば分かるだろうに。
町中の霊と言う霊を、それも鼠や蟲の霊まで持って行かれたら【Spiritualist】のあたしはどうすりゃいいんだい。それに、そんな大量の霊を引きつれていれば町の外からでも気が付くさ」
【Spiritualist】であるMillan婆の目には、Vandalieuの周囲に存在するcountlessの霊の姿が見えていた。百や千ではきかない数の霊が、Vandalieuの周囲をfeather虫のように群がっている。
正直、目の前の少年がどうやって正気を保っているのか不思議でならない。
「霊の何人かから、貴女が昔の情報に詳しいと聞きまして」
「まあね。一応アタシもElfだから、見た目通りに長生きさ」
Millan婆がhoodを降ろすと、長く先端が尖った耳が露わに成った。
「別に隠している訳じゃないんだけどね、ただのElfの婆よりも何十年も前から居る謎の婆の方が、客受けが良くてね」
占い師の商売に雰囲気や印象が重要なのは、fantasyなworldでも変わらないようだ。
「それで、何が聞きたいんだい? アタシは情報屋じゃないが、昔話ぐらいなら安くしておくよ」
【Spiritualist】Jobに出来る事は、ちょっとした占いや死者の声を聞く事、霊視。殺人事件の犯人や、雑な口封じをした諜報organizationの者以外には、大したことじゃない。
それは、古い霊程Memoryや人格が不確かに成るからだ。生前執着していた事柄や、憎い相手以外のMemoryが溶ける-samaに崩れ始め、最後には消えて無くなる。
短くて数日、長くても数十年と保たない。
それに生前のMemoryと人格を保っていても、霊が嘘を付かない訳じゃない。過去には【Spiritualist】の言葉を信用して行った犯罪捜査の結果、無実の者が処刑される悲劇が起きている。犯人が被害者の身内の場合、霊が犯人を庇う事が少なからずあるからだ。
ただMillan婆の場合は五百年の寿命を持つElfであるため、彼女本人が昔の事を覚えているし、当時死んで間もない霊から聞いた話もMemoryしている。
「約二百年前、TalosheimのPrincess Levia達がどうなったのか教えてください」
「何でそんな事を? あんた、あのGiant raceの国と関わりでもあるのかい? ……いや、聞かないでおこうかね」
「話しても構いませんが?」
「止めとくよ、あんたの周りの霊がおっかない顔をしているからね。
さて……あんたにとって不愉快な話になると思うが、あまり怒らずに聞いておくれよ」
二百数十年前、Boundary Mountain Rangeにtunnelが発見された当時Hartner Duke 家の当主は、武闘派でVidaの熱心なbelieverだった。そのため、Giant raceの国でありVidaを主に信仰していたTalosheimとの交易も積極的に行った。
交易はHartner Duchyに富をもたらし、それまでrusticなimageしかなかったDukeは経済政策でも優れていると高評価を得て、称えられるようになった。
しかし、その後を継いだ新当主はAldaの熱心なbelieverだった。過酷な戦場でblessingsを与えてくれるのは、敗者のVidaでは無く勝者のAldaだろうという考えだ。
それでもReconciliation Factionの教義ならTalosheimにとって何の問題も無かったのだが、新当主はReconciliation Factionであるように見せかけたFundamentalism者だった。
だが新当主はただ狂信的な男では無く、統治者としての判断力も持ち合わせていたので利益を出している間はTalosheimとの交易をそのまま維持した。内心苦々しく思いながら。
そんな時に起こったのがMirg Shield NationのTalosheim遠征だ。新当主は、遠征を利用した。Talosheimからの援軍の要請に対して理由を付けて返事を先延ばし、見殺しにした。助けを求めてきたFirst Princess Leviaと、彼女が連れてきた合計五百人の避難民達を受け入れると言って騙した。
護衛の兵を毒殺し、Princessに自分の殺害とDuchyを奪うCoup d'étatを企てた濡れ衣を着せ処刑。彼女達がMirg Shield Nationに渡らないよう持ちだしたTalosheimの国宝……無限に品物が入るitemボックス等の貴重なmagic itemを手に入れた。
そして残ったchildと老人ばかりだったTalosheimのGiant raceを犯罪SlaveとしてSlave鉱山に送り込んだ。
Talosheim交易の窓口であり、Talosheimの事を良く知る人々の町は放棄させた。既に交易が行えない以上、originally交易都市としてやっていけないため都合がいい。
tunnelも塞がったため、Mirg Shield Nationの追撃を心配する必要も無い。
結果、当時のHartner DuchyはMirg Shield Nation軍相手に一兵の損失も出さず、Talosheimの国宝を手に入れ、数百人の労働力を手に入れた。
Mirg Shield Nation軍相手に援軍を送り、loseいた場合を想定すれば破格の利益だ。
「二百年前のOrbaum Elective KingdomとAmid Empireの戦争では、Talosheimの事が大義名分に成ったはずですが?」
Millan婆の話が真実なら、幾つか辻褄が合わない。少なくとも、戦争の大義名分にするには問題があるだろう。しかし、問われたMillan婆は肩を竦めるだけだ。
「坊や、あたしはただの【Spiritualist】だ。死者の言葉を話すだけだよ、推理や調査は専門外、仕事じゃないね。
ただそうだね……事実を知っているのはDuke 家やその側近、後当時のElected King -sama達極一部だけ。世間にはPrincessの替え玉を仕立てて誤魔化す。そして戦争が終わって暫くしたらDisease死したって事にする」
婆でも思いつく簡単な話さと、Millan婆は言った。
Giant raceはHumanより少ないが、Elective Kingdomにはそれなりの数が暮らしているため替え玉を仕立てる事は手間だが難しくは無い。
それにPrincess LeviaはTalosheimでは誰もが知る姫-samaだったが、Orbaum Elective Kingdom全体では顔を知っている者は限られている。
華々しい戦争とその行方ばかり注目されて、哀れな避難民は「保護された」と誰かが言うだけで誰もが納得して、実際はどうなのか確かめようとは思わない。そして数年も経てば、Princessの行方も同-samaに誤魔化されてしまう。
複数の権力者が組めば、可能な陰謀だ。
「……それで、Talosheimの避難民は今も鉱山に?」
「だろうね。Giant raceは丈夫だし、犯罪Slaveとは言っても実際は違法Slaveみたいなもんだから、生かさず殺さずで働かせてるはずさ。老人はin any case、当時childだった連中は全員じゃないだろうが生きてると思うよ。何でも、軍に管理されたSlaveの村って形になっているらしい。
あんたの周りにいる霊の一人から聞いた事だよ」
「……Princess Leviaと護衛のGiant race達は何処に葬られましたか?」
「さてね。流石にこんな辺境の町まで機密を知っている霊が流れて来る事は滅多にないさ。でも、そう言う後ろ暗い過去を葬るなら、うってつけの地下墓地がある。
その昔、Championの一人がDemon Kingの一部を封じたってlegendがある。そのお蔭で、今も邪悪な存在は外に出る事が出来ないんだとか」
「それは何処です?」
「Dukeの城の地下の何処かさ。気を付けるんだね」
「気を付ける? まるで、俺がそこに行く事を知っている-samaな言い方ですね」
Millan婆はやれやれと息を吐いた。
「見た目通り長く商売をしてるんだ。アンタが怒り狂う寸前だってのは、周りの霊を見てれば分かるよ」
Millan婆が指摘した通り、Vandalieuは激高する寸前だった。周囲の霊も、それに当てられて恐れ戦いている。
今彼女から聞いた話が本当だとしたら、何故怒らずにいられるのだろうか? 呪わずにいられるだろうか?
今すぐにでも表に出て、目につく生き物を無差別に引き裂いてやりたい。そんな殺人衝動すら覚える。
しかし、そんな事は喜ばれないし無意味だとVandalieuの冷静な部分が説く。
確かにHartner Duchyの人々は、Talosheimの避難民が搾取されているのを放置している。助けるべきだと訴えるような事は、目の前のElfの老婆も含めてしていない。
だがOrbaum Elective Kingdomも封建国家だ。政治的な訴えを行う-samaな発想は中々一般市民からは出ない。そもそも、二百年前の顛末を知っている者も今ではほぼ居ないだろう。Lambdaにはnetも無ければjournalistも居ない。情報伝達の手段が少なく、人の行き来も限られる。
それにTalosheimの、NuazaやBorkus、Zran達の懲罰emotionsは『親の罪は子に問わず』だ。それはVandalieuも正しいと思う。
だから、今を生きている人々に二百年前の出来事の罪を問うのは間違っている。
そう、『二百年前の』罪は。
「ふぅ……質問ですが、Slave鉱山が襲撃されてSlaveが全員どこかに消えるような事になったら、あなたは事件を捜査をしている人達に情報を売りますか?」
だから罪を問うよりも、報復を行うよりも、先に行うべきはSlaveにされたGiant race達の解放だ。この領の法律なんて知った事では無い。
ただ解放するだけでは無い。Giant race達の心を動かし、Talosheimに来てもらわなければ。そのための力と助力を得て、過剰なまでの戦力で攻め込み、災禍でHartner Duke達の目を欺くのだ。
「……いいや。小銭よりも命が惜しいからね。ただ老婆心で言っておくけど、復讐は……いや、止めておこう。あたしも、この言葉が綺麗事だってのは霊が見える-samaになってすぐ分かったからね」
死者は何も望まないとか、生きている人の幸せだけを願っているとか、そんな事は酷く愚かな妄想でしかない。
綺麗事通りの霊も存在するが、生前恨みを抱いていた者の破滅を心から喜び、嗤う。そんな霊も当たり前の-samaに存在する事をMillan婆は知っているからだ。
特にVandalieuに対してその手の綺麗事を口にする事は、失笑に値する。
「明日中には俺はこの町を出ますが、何か希望する報酬は在りますか?」
そして怒りを押し込んで何事も無かったようにMillan婆に質問する。
「情報料かい? これでも蓄えはあるからね。引退しても寿命で逝くまで十分暮らせるんだが……そうだね、一つ頼まれちゃくれないかい?」
町中の霊がVandalieuの周囲にいる以上、【Spiritualist】としての商売は上がったりだ。だからMillan婆は暫く休業するつもりだった。場合によっては、この町から他の町に行く事も考えていた。
だからMemoryの片隅に残っていた心残りを口に出す事にした。
「実は、十五年前の事なんだけどね、あたしの客の一人が『緋色の夢』って酒場で歌っていたBardに入れ込んでね。あの男は詐欺師だから止めときなってあたしは忠告して、その子も別れるって言っていたんだけどね――」
「三日後その女の人の悲しそうな顔をした霊が現れ、すぐに消えてしまったそうです。その真相を知りたいと。
それで、ある確かな筋から情報を手に入れましてあなたがやったのだろうなと」
淡々としたVandalieuの説明に、ザギは冷や汗が止まらなかった。
(つまり、目の前の正体不明のガキはこれからこのDuchyでとんでもない事をやらかす。そのついでに俺達を皆殺しにしようってのか!?)
「いや、結構生きていますよ。貴方のbody Guard以外死んでるのは数人だけで、他はちょっとbloodが出ているだけで、heartは動いてますし」
(こいつ心を読んだのか!?)
驚愕に声も出ないザギだが、実は彼のbody Guardだった男の霊が、『こいつ、今こんなこと考えてるぜ。バカだよな~』と陽気に説明してくれているだけだ。
「それで、覚えはありますか?」
問われたザギは答えなかったが、実際には身に覚えがあった。accurateに言えば、話を聞かされている内に思い出したのだ。
あれは十五年前、まだザギがorganizationの下端でしか無かった頃だ。その頃から彼は凶悪さと犯罪の上手さと運に恵まれ、当時のボスの覚えも良かった。
そのザギが任された仕事の一つが、上納金も納めず詐欺で稼いでいる流れのBard気取りの男への制裁だった。
しかし、ザギは詐欺師をもう少しの差で逃がしてしまった。その失態を隠すために、当時詐欺師がカモにしていた女を攫い、惨たらしい方法で殺して死体を詐欺師が使っていたroomに捨てた。
彼が女を殺し、詐欺師の男がそれに怯えて逃げた-samaに偽装したのだ。
他の仲間は買収した。詐欺師が持ち逃げし損ねた女の金を、詐欺師が差し出した詫び料と偽ってボスに上納して、その件は終わったはずだった。
(そ、そんな事正直に話そうもんなら殺されちまうっ! 畜生、あんなどうでもいい女如きのために死んでたまるか!)
「知らねェ、maybe俺以外の……そこで死んでる俺のbody Guardの仕業だろ。あいつは女を殺すのが大好きな、Squidれたbastardだったからな」
『嘘だね~! 俺は五人くらい殺してるけど、全員男だったぜ!』
ザギは生き残るために色々と努力していたが、霊が見えるVandalieuには無駄で滑稽な試みでしかなかった。
(クソっ、まだか、旦那はまだなのかよ!? はっ!)
バンっと音を立てて扉が外から開いた。そこから赤い瞳に青白い肌の男が、黒い覆面で顔を隠したGiant raceと数人の小柄な者達を引きつれて入って来た。
「旦那! 良く来てくれたっ」
先頭に立つVampireの男、【Evil God of Joyful Life】Hihiryushukakaを奉じるPure-breed Vampireから派遣された常駐の工作員。それこそがザギの後ろ盾だった。
Vampireの走狗と成る事で、ザギは他のorganizationの台頭を許さずこの一万人の小都市で裏の大物ぶる事が出来たのだ。
後ろに連れているGiant raceや小男達は見た事が無かったが、Subordinate Vampireだろう。ザギはそう思った。
「さぁ、旦那! このクソガキとクソ女を殺してくれっ! この恩は必ず返すからよぉっ!」
『ザギぃぃ……お前は私によく仕えてくれる忠実な男だ。私はお前を評価していたよぉ……』
Vampireはザギの求めに応じる-samaに、彼に向かって足を進める。そのままVandalieuの横もEleonoraの横も素通りして、彼を見下ろす。
『だと言うのにこのクソ駄犬がぁぁぁぁっ! この方々に暴言を吐くなぁぁぁ!』
そして硬い踵でザギの胸を蹴ると、そのまま踏み躙る!
「ぐあああっ!? だ、旦那、何を!?」
自分の肋boneが軋む音を聞きながら叫ぶザギは気がついた、彼が旦那と呼ぶ男の服が赤黒く汚れている事に。
「まだ用があるのでその辺で」
『はい……ごmaster -sama』
恭しくVandalieuに頭を下げ、そのまま足に口づけするVampireの男を見て、ザギは全てを察した。
先ほどVandalieuが口にした確かな筋とは、このVampireだったUndeadの事なのだと。
ザギの頼みの綱は、彼が襲撃を受ける前に始末されていたのだ。
「こ、こんな、こんな事が……あんな、どうでもいい、何処にでもいる女を殺したからって、それだけで、俺のorganizationが、俺が……」
希望が潰え、死人よりも死人らしい顔で呟くザギに対して、Vandalieuは首を傾げて言った。
「あなたにとって彼女が、何処にでもいる殺しても別に構わない女であるように、俺にとっては何処にでもいる、殺しても別に構わない悪党があなただった。それだけじゃないですか」
こうして『Dark nightのfangs』のボス、ザギは死んだ。だが、翌日には傷一つない姿で何時も通り手下に指図する姿が見られた。
妙に陽気になったザギは、今までと違いとても穏健に裏社会を支配した。その彼が実はUndeadである事が、あるadventurerの活躍で判明するのは暫く後の事だ。
「Kingっ、遂にloverが出来た!」
「えっ、何時の間に?」