「やっぱり裸じゃねーか!?」
Lambdaに真裸でreincarnationしたKaidou Kanataは、一言叫ぶと直ぐに冷静に成った。望んではいなかったが、彼も一通り軍で訓練を受けた男なのだ。未知の状況に在るのにくだらない事で騒ぐ危険性を忘れはしなかった。
本当に出来る男なら、最初から冷静さを保つものだが。
in any case、Kanataは周囲の状況を確認する。
太陽の高さから今は正午少し前。周囲は、低木の茂みと草が生えた草原で、危険な生き物はHumanも含めて周囲にはいないようだ。
「このworldではHumanって呼ぶんだっけ? Human以外に知的raceが居るなんて、やっぱりgameかコミックだよな」
そう言いながら、もう一度自分のbody partを確認する。
鏡が無いため細かい個所は分からないが、solar plexusに在った致命傷が消えている事以外はOriginで死ぬ前と何も変わらない。鍛えられ引き締まったBodyは、ご丁寧に黒子の場所まで同じだ。
そして先程叫んだ通り、身一つの裸で立っている訳だが……周囲を見回した時に目に入った物があった。
バラバラに成った白bone死体と、転がっている荷物だ。
「もしかして、あの神-sanが言ってた『何とかする』って、これか?」
不潔そうで気に入らないが、まさかその辺りの植物で腰ミノと棍棒でも作ってVandalieuを殺しに行く気には成れないので仕方がない。
荷物を探ると、古そうだが一応衣服が幾つかと、錆が浮かんだknifeが一本。後、銀貨と銅貨が手に入った。この荷物の主を殺したのは、獣か何かだったのだろう。
「あー、肌触りが最悪だ。コットンじゃないのかよ……変な菌とか着いてないだろうな? さてと、それでVandalieuの場所は――」
【このmessageは、-kunがLambdaにreincarnationした後自動的に再生される-samaに設定されている】
「うわっ!? なんだ!?」
突然聞こえたRodcorteの声に驚いたKanataはその場を飛び退いてknifeを構えるが、あの神の姿は何処にもない。
その後、声が自分の頭の中から聞こえる事に気がついた彼は顔を顰めた。
「gameのチュートリアルか何かのつもりか?」
【では、まず衣服と当座の活動資金を近くに転がっている死体の荷物から――】
「いや、手に入れたよ、もう」
どうやらRodcorteの声は、あらかじめ録音された音声を再生しているのと同じらしく、Kanataの質問に答える事も、彼の行動によって内容を変える事も出来ないようだ。
【次に、自身のStatusを確認する事。確認の仕方は、Statusと念じればそれでいい】
「Status、ねぇ?」
自分がgameのCharacterにされたようで気に入らないが、Kanataは指示通りに自身のStatusを開いた。
・Name: Kaidou・Kanata
・Race: Human
・Age: 29(appearance)
・Title: none
・Job: none
・Level: 0
・Job History: none
Vitality: 650
Mana: 42,000
Strength: 95
Agility :157
Endurance :204
Intelligence :270
・Passive skills
Disease and Poison Resistance:10Lv
Death Attribute Resistance:5Lv
Fire-Atribute Resistance:4Lv
Augmented Stamina:5Lv
Augmented Mana:5Lv
Mental Corruption:5Lv
・Active skills
Fire-Attribute Magic:8Lv
Wind-Attribute Magic:4Lv
Mana Control:5Lv
Archery:5Lv
Dagger Technique:5Lv
Throwing Technique:5Lv
Unarmed Fighting Technique:5Lv
Coordination:5Lv
Survival:3Lv
Silent Steps:4Lv
Horse Riding:6Lv
lifesaving:4Lv
任意のActive skills:5Lv
・Unique skill
Gungnir:10Lv
Target Radar:death attributeの一億以上のMana所有者
God of Reincarnation’s fortune
「……ほほぅ、これが俺か」
自分のAbilityやskill、経験をここまで数字で表現されたのは学校の成績表以来だ。Originではアルファベットだったから、Earthで死んで以来か。
そしてStatusを見た感想は……Jobやその履歴が「none」になっているのは、まるでNEETにでもなったかのようで気に入らないが、secondary nameが空欄になっているのは気に入った。
Ability Valuesについては、まあこんな感じかとしか思わなかった。Manaはin any case、他のMuscular StrengthやAgilityさはOriginでは態々数字にする事は無かったからだ。
Earthと同じで、百meterを何秒で走れるか、腕立て伏せが何回出来るか、持ち上げられるバーベルの重さはどうかといった基準で優劣が決められていた。
だからManaがOriginで調べた時と同じ数字だから、同じなのだろうと思った程度だ。
skillについては、【Disease and Poison Resistance】や【Death Attribute Resistance】が頼んだ備えだろう。しかし、その後のActive skillsには疑問だらけだ。
「magic関係は良いとして……ArcheryやHorse Ridingってなんだよ? 弓なんて使った事無いし、馬に乗った事も無いぞ。Dagger TechniqueやUnarmed Fighting Techniqueは訓練で習ったknifeや軍隊式Unarmed Fighting Techniqueだろうけど。それに任意のActive skillsって何だ?」
【Lambdaには存在しない物、銃や自動車の運転等の経験や技術は、ArcheryやHorse Riding等のskillに置き換えた。任意のActive skillsは、その残りだ。-kunが必要だと思うskillに好きなtimingで振り分けるといいだろう】
「役に立たないskillよりは、使う機会もあるかもしれないが……」
あれだけ訓練して実戦でも使って来た銃や、自動車やヘリ、ボートの操縦等が勝手に変えられたのはやはり不愉快だった。
「さっさとVandalieuを殺して、Earthっぽい快適なworldに生まれ変わるとするか」
だが全ては仕事が終わるまでの、束の間だ。
Unique skillの項目にある【Gungnir】や【Target Radar】を使えば、そう時間はかからないだろう。頼りないが、【God of Reincarnation’s fortune】もあるし。
「えーっと、Target Radarの使い方は……ああ、念じればいいのか」
頭の中に、今Kanataの位置からVandalieuが居る方角と、そこまでの距離が表示される。それによるとあまり離れていないようだ。ヘリがあれば、いや車でも飛ばせば一日で――
「あ゛、ヘリどころか車も何も無いじゃーん。徒歩じゃ流石にきついな。馬でもStealか? Kami-samaよぉ、不意の遭遇は避けたいとは言ったが、こんなに離れた位置に飛ばさなくても良かったんじゃないか?」
移動手段が限られる事に気がついて、Kanataの眉間に皺が寄る。Wind-Attribute MagicならFlightも可能だが、それだと流石にManaが足りない。
それに、Flightにmagicを使っているconditionで敵に遭遇したら、Kanataの攻撃手段が限られる。銃でもあれば別なのだが。
【skillはin any case、-kunのAbility ValuesはLambdaで戦闘を生業にする者達の中ではさほど高くは無い。まずは町に行き、Adventurer’s Guildに登録してJobに就き、装備を整えながらMartial Artsについて学ぶと良いだろう】
そう頭に声が響くが、煩わしげにKanataは頭を振る。
「だから、そんな下らないgameみたいな真似するつもりは無いんだよ」
しかし、装備を整えるのには賛成だ。流石に数日中に仕事を終えるのは無理そうだし、それなら食料も必要だ。
【-kunがreincarnationした場所から東にまっすぐ行くと街道に出る。そのための手段がそこで見つかるはずだ】
「まあ、その指示には従っておくか」
流石にここで食べられる野草を探しながら狩をするつもりには成らなかったので、Kanataは言われた通り東に向かって歩き出した。
そしてすぐに、screechが聞こえた。
何事かと駆け出すと、街道で見るからに無法者らしい格好の武装した男達が、馬車を襲っていた。
「Hannaっ、Hannaぁぁっ!」
「お父-sanっ、逃げてぇっ!」
「オラァ! 雇い主の娘の命が欲しければ、全員Weapon Equipmentを捨てろぉ!」
どうやら、mountain banditがpeddlerの娘を人質に取り、護衛のadventurerに武装解除をdemandしているようだ。
「……うわ、ベタだな」
ここで町がある方向を聞き出して、移動手段、食料と金を手に入れろという事か。そう解釈したKanataは、素早く呪文を唱える。
「娘と、Humanが身に着けている物品。【大焼却】!」
Kanataの手前に発生した五芒星から噴き出した炎がmountain bandit達を全員、人質のShoujoを包んだ。
「ぎゃあああああっ!?」
「きゃあああああああああ!」
「は、Hannaァァァァ!?」
焼かれるmountain bandit達のscreechと、娘と商人のscreechが上がる。
「あ、あれ? 熱く、ない?」
しかし、娘は炎に包まれても何のDamageも負わなかった。彼女が身に着けている服も、更に言えばmountain banditの装備にも焦げ目一つない。
焼けているのは、mountain bandit達のBodyだけだ。
「Giftの、【Gungnir】の使い心地もOriginと同じらしいな」
KanataがRodcorteから受け取ったCheat Ability【Gungnir】。それは選択的透過Abilityだ。自分と、自分が触れている人や物に、物質やenergyを透過させる事が出来る。
具体的な使い方はKanataが指名した物だけを透過させる事だ。
彼がOriginで死ぬ前に使ったように、自身が撃った弾に建造物を透過させてterroristを狙撃し、銃弾やknifeから自分のBodyを透過させ無敵になった。
そして今は指定した娘や、彼女とmountain banditの装備をmagicから透過させmountain banditのBodyだけを黒焦げにした。
【Gungnir】は指定した物の範囲が広ければ広い程、Manaを消費する。それは四万を超えるManaのお蔭で、余程乱発しなければ問題無い。
だが問題のある弱点も存在する。物理的magic的な防御を全て潜り抜けて攻撃し、自身は攻撃を回避する事が出来る。しかし、Kanataの姿を見ればどんな物で攻撃すれば当たるのか分かるからだ。
当然だが、銃弾を透過するよう指定している時は彼も銃が扱えないし、knifeを指定している時は彼もknifeを持てない。
光を指定して透明に成っている間は、彼の目も光を捉える事が出来ないので盲目になる。熱を透過する時は、急速に体温を失う。
そして、人体を指定した場合は、Kanataも他人の人体に触れる事が出来ない。だから、囚われの大統領令嬢をrescueする瞬間等は、素手なら確実に攻撃を当てる事が出来る。
(実際、Metamorphには手……Bodyで攻撃されたしな)
思いっきり弱点を突かれた訳だ。今後は、手練れには格闘戦の間合いには入られないよう注意しよう。
「おお、まるで奇跡だ……Hanna、Hannaっ!」
「お父-sanっ!」
「娘を助けてくださり、ありがとうございます!」
前世の苦いMemoryに浸っていたKanataは、娘の無事を喜ぶ商人の声で我に返った。
「質問だけどさ、町ってどっち?」
そう言えばこれ、Japan語だなと思いながらKanataは質問した。すると、名乗りもしないKanataの態度に目を瞬かせた商人が、戸惑いながら答えた。
「町ですか? 一番近いのは、街道をあちらに進んだTia Cityですか……」
「あっち? この街道を進めばいいのか? 分かれ道もnone?」
「途中村に続く小さな分かれ道がありますが、大きな方の道に沿って進めば着けますが……道に迷われましたか?」
「いや、もう迷ってない。足と当座の金と飯と装備が手に入ったからな」
「それはどう言う――」
「まずは、そっちからな。男」
鈍い衝撃を商人は感じた。
「か……ごふっ?」
それが何か理解する前に、最愛の娘が目を見開いてbloodを吐いた。
「は……Hannaぁぁぁぁぁっ!?」
自分の腕の中に居たはずの娘の胸に、錆びたknifeが深々とthrust刺さっていた。
「おー、思いの外深く刺さったな。これがskillって奴か?」
「Hanna -san!?」
「お前、何をしやがる!? なんでこんな事を!?」
信じられないと目を見開いた顔のまま痙攣を始める娘と悲痛な叫びを上げる父親の-sama子を呑気に眺めるKanataに、adventurerの男達が驚愕に引きつった顔でWeapon Equipmentを向ける。
「なんでって……いやー、nameがHannaだったからな。あのMariが化けてた大統領令嬢と同じnameでさ、俺にとっては嫌なnameだったし、折角 Kami-samaがセッティングしてくれた訳だし、ちょっと憂さ晴らしに。
つまりventか。ハッハー、お気の毒~♪」
「お、お前何を言っているんだ?」
彼からすれば全く理解できないKanataの言葉に、adventurerの男はhorrorを覚えたようだ。一方、もう一人のadventurerはKanataをただの敵として処理する事を決めたらしい。
「死ねっ、狂人が!」
adventurerがthrustだす槍をKanataは最小限の動きで避けて逆に距離を詰めると、容易く懐に入り込んだ。
「何だ、これなら素手で十分じゃね? でも一応Weapon EquipmentとDefense Equipment」
「なっ!? がはぁ!」
adventurer達にとって不運だったのは、Kanataの軍隊仕込みの【Unarmed Fighting Technique】skillのlevelがCClass adventurer並に高かった事だ。DClassとEClass adventurerのペアだった彼らでは、技量をひっくり返せない。
しかも Kanataは大人気なく【Gungnir】を使い、Weapon Equipmentによるadventurer達の抵抗をすり抜けながら、Defense Equipmentを通り抜けて直接body partに届く拳と蹴りで一方的に攻撃している。
程なく、二人のadventurerは白目を剥いて倒れた。
「別にその子のnameがHannaじゃなくてベスとかハナコとかだったとしても、犯してから始末するかどうかの違いだったからさ、もし『自分がHannaとnameを付けたせいで娘は』なんて自分を責めてるなら、気にしなくていいぜ」
lungをknifeで貫かれて事切れた娘を抱いたまま、放心conditionの商人にそうKanataは告げた。certainly、商人はそんな事を考えてはいない。
「こ、こんな……こんな事が許されると思っているのか!? いつかっ、いつか必ず、貴-samaに裁きが下る日が来る!」
「いやいや、こんなgameみたいなworldのキャラの癖に、そんなマジに成るなよ。大丈夫だって、すぐにKami-samaのRodcorteがどっかの誰かとして生まれ変わらせるだろうしさ。俺も、裁きとやらが下る前に、そうする予定だし」
娘を喪った父親のsorrowと怒りを軽く笑うと、Kanataはmountain bandit達と同じように彼らのBodyだけを灰になるまで燃やし尽くした。
「馬は初めてだが、【Horse Riding】skillあるし、大丈夫だろ」
そう言いながら、Kanataは商人やadventurer達の物品や装備を馬車に詰め込むと、Couch Driving台に乗って町へ向かった。商人が持っていた、お守りらしい柄に雷っぽい意Artisanが彫られたknifeは腰に差して。
Rodcorteが犯した、最大の失敗。それは、Reincarnatorの無選別だ。
確かにRodcorteは爆破テロで死んだferryの乗客から、terrorist達悪人を除いた。だが、残りの乗員乗客からは拒否するかどうかを聞いただけで、選ぼうとはしなかった。
性格や性根、psychological強さ、倫理観。それらを審査しなかった。
Earthで死亡した当時に悪人であったかどうかなど、基本的過ぎて審査ですらない。
それなのに、多少考慮はしていたとしても複数回、それぞれ異なるanother worldにreincarnationさせるようなMentalに負荷がかかる事をさせたのだ。
結果、Amemiya Hirotoの-samaにOriginで目覚ましい成果を見せる者も出たが、Kanataの-samaな者も現れてしまった。
RodcorteもKanataがこれほどの狼藉を行うとは予想外だったが……既に彼はLambdaに生まれ変わっている。既に彼の行動を強制的に縛る事は出来ず、不確かなOracleしか彼に意思を伝える事は出来ない。
『そんなつもりで-kunをその場所にreincarnationさせた訳ではないのだが……いや、些末な問題か』
Kaidou KanataのAbilityでは、Vandalieuと違い巻き添えや途中で犯す狼藉で死ぬのは多くても千は超えないだろう。幾らLambdaでもその程度でworldの維持にimpactは出まい。
『しかし、本当にJobに就かずlevelも上げず、Martial Artsについても学ばないつもりか? Lambdaは文化や文明は劣っていても、個人の戦闘AbilityはEarthやOriginを上回るのだが……』
Frotoは自分の事を今まで運に恵まれなかったが、優秀だと思っている。だから、運にさえ恵まれれば今回の企ても全て上手く行き、望んだ通りの報酬を受け取り新Hartner Dukeのお抱えMageに加わるはずだと信じていた。
(だと言うのに、こいつは一体何なんだ!?)
FrotoとKasim達三人のadventurerと共に第七cultivation villageに向かうため歩く、Vandalieuに視線を走らせた。
今、Hartner Duke 家ではよくあるお家騒動が起きていた。当主はまだ存命だが、diseaseで倒れ寝たきりで公務にも支障をきたす-sama子。そして継承権を持つ二人の息子。
愛妾を母に持ちつつも武勇と軍才に優れ現役のKnight Delegation Leaderであると同時にDuke軍に絶大な支持を持つ長男、Lucas。
そして、本妻の息子で内政に才を持ちcivil officialに支持者が多く、Centerにもコネを持ちElected Kingに選ばれたらHartner Duchyは益々developmentするだろうと期待される次男、Belton。
通常なら、やはり本妻の息子であるBeltonがDuke 家を継ぎ、LucasはAmid EmpireとのForefrontと成った事で存在感を増したDuke軍で軍才を振るうのが理想だ。
しかし、このbrothersはとにかく考え方が合わなかった。
次男のBeltonはAmid Empireに対して防御を固めながら内政に力を入れ、Empireの鉾からDuchyを守る事こそが優先と考えた。そのために治安の悪化要因である煩わしい難民共を開拓と銘打った、実際は棄民政策すれすれの事業で町から開拓地と言う名の辺境に送り込み、都市の難民の数を激減させた。
そして開拓事業が失敗した村の住人はSlave鉱山に送り込んで先細る金属資源を搾る-samaにMiningさせ、砦の整備や守備隊のAugmented (2)を行うpolicyを示した。
長男のLucasは、Sauron領奪還の大義を掲げて軍に力を入れ、Amid Empireの盾を貫いてHartner Duchyの栄達を手に入れようと唱えた。そのために治安悪化要因である難民を徴兵して下Class兵として使い潰し、軍に予算を注ぎ込んで正規兵をAugmented (2)し、領の治安維持は守備兵とadventurerに任せるべきだと考えた。
どちらも正反対でありながら、どちらもHartner Duchyのために考えに考えた事なのでbrothersは揉めた。そして彼らを支持する者達と、彼らの政策が実現したら利益を得られる者達も派閥に別れる-samaになった。
Frotoは、Lucas派の末端である。Mage guildでの権力争いに敗れ、窓際部署で時代に忘れられながら惨めに過ごしていたらLucas派のKnight団の一人に声をかけられた。開拓事業にAlda Clericを装って潜り込める人材を探していると。
このBelton主導で行われている開拓事業は、実際には棄民政策なのだが思いの外上手く進んでいた。七つのcultivation villageの内廃村になったのは一つだけで、他の六つは豊かさに差はあっても五年以上持ちそうだった。
失敗前提の開拓事業が成功してしまったら、これでもかとBelton派の者達は彼の内政手腕を褒め称え、「rusticな兄-kunよりも、本妻のbloodを引くBelton -samaの方がこのDuchyを上手く治めてくださるに違いない」と唱えるだろう。
それだけでこのお家騒動の決着が着く訳ではないが、Lucas派としてはBeltonのachievementはどんな小さいものでも少なく、そして失敗は少しでも多い方が良い。
そこでFroto達の出番と言う訳だ。彼は何年も前から巡教のAlda Clericに成りすまし、peddlerに化けたLucas派のSpyとは別にcultivation villageを巡り、手に入れた情報をLucas派に流した。
村人から信頼を得るのは簡単だった。Clericにはadventurerの-samaなguild Cardは無く、流れのClericなんて幾らでも居るので、町のtempleでも把握していない。
そもそもPriestやHigh Priestならin any case、Cleric程度の低位のClergymanには資格も何も無いからtempleに務めでもしていない限りrecordに残らないからだ。
極論を言えば、それらしい格好をして聖典を持っているか説法が出来る程度に暗記していれば、誰でもClericを名乗れる。更にLight Attributeか生命attribute以外でもmagicが使え、教養と知識があれば完璧だ。
このLambdaでは【Clergyman】skillは存在するが、それは浄化等の儀式を行う手際や説法の上手さを表すskillだ。その辺りを誤魔化せれば、意外なほど簡単に成り済ませる。
他の真っ当なClergymanが複数存在する町では通じないだろうが、小さな村で巡回のClergymanに求められるのは薬の知識や読み書きを教えてくれる教育、そして説法やHeroや聖者の逸話等の娯楽の提供なのだから。
そしてFroto達の働きで集められた情報によって、いよいよ各cultivation villageを廃村にするべく策が実行された。下Class兵の成り手が減るが、Belton公子のachievementが少しでも減るなら十分収支はplusだ。
(だと言うのに……全てこいつのせいで邪魔されてしまった!)
策はどれもこれも荒く、周到と評価できない程度だった。そもそもFroto達も陰謀や破壊工作の専門家ではない。そうした専門家を動かせばBelton派に気が付かれてしまうから、動いているのはFrotoの-samaな専門外の者達だった。
だが、それでも小さな村に壊滅的な被害を与えるには十分なはずだった。
VandalieuはKasim達やIvanを助けた。それは別に良い。街道近くの第七cultivation villageを潰すのはまだ先の予定だからだ。
だがpeddlerに扮したSpyが毒を盛り、第五cultivation villageを全滅させる策でケチがついた。HunterのCainに毒を盛り損ねたのだ。猟に出る予定の無い日は伝えてあったのだが、Cainが予定を変えたのか単にSpyが間違えたのか……in any case CainはFrotoが居た第七cultivation villageまで助けを求めに来た。
それでもFrotoが村人の解毒に力を貸す訳がなく、そもそも時間的にも間に合わない。翌日、村人達が毒で死んだ頃に村に着き、「これはepidemic diseaseだ」とFrotoが言えば、大量毒殺事件は無事闇に葬られるはずだった。
なのにVandalieuはCainを背に乗せて飛んで行った。自分なら治せると。
Cainは疑わしげだったが、彼はIvanを既に治して見せている。そのため第七cultivation villageの面々が保証してしまい、Frotoも否定する訳にもいかず、止められなかった。
だがどうせ無駄足だ、もし助けられても数人程度。いや、常識で考えるなら村に着く前にMana切れで落ちているだろう。
そう思いつつ次の日、口ではCainやVandalieuを心配しつつ、第五cultivation villageでの首尾を確認しに向かったら……驚くべきことに全員生きていた。多少疲れた-sama子だったが、それだけだ。
信じられない悪夢を、何とか口先では「奇跡だ」と喜んで見せながら、他の村に向かったVandalieuを追うと、Frotoは自分が本当に悪夢を見ているのではないかと思わずにはいられない、Vandalieuの活躍劇を聞かされる事になった。
呪文も唱えず村人のDiseaseを治し、火傷の傷跡を治療し、指(実際は爪)から薬を出した。
Frotoの仲間のTamerが嗾けたOrcを空から舞い降りて一撃で倒し、奪われるはずだった少年の命を救った。更に、ふと目を離した間に滑車や桶を設置すればすぐに使える井戸を作った。
ついでに、そろそろmountain banditに襲われて壊滅している筈の村々が何故か健在だった。恐らく、これもVandalieuが絡んでいるに違いない。
そしてこの第二cultivation villageでは、前々からFrotoの上役が仕掛けていた毒入り肥料を浄化した挙句、Goblinを非常食にする方法まで授けたらしい。
既にもう神業と言うしかない。
(このDhampirは、一体何者だ? まさか、Belton派の回し者? いや、それならこいつはBelton派の切り札の筈。これ程の事を成す腕の持ち主が、私のような末端の、それも即席の工作員のはずが無い。なら、こんな場所に切り札を派遣するはずが無いのだが……では、本当に通りすがりか?)
恐る恐るVandalieuに視線を向けたFrotoだったが、彼はVandalieuの目を見てしまった。
(こいつっ、私を!? やはり、私を怪しんでいるのか!?)
「……どうかしましたか?」
まるですべてお見通しだと言うかのように、驚愕に目を見開く自分の顔が映る瞳で問いかけるVandalieuに、Frotoは冷や汗が噴き出るのを感じた。
「い、いえ、何でもありません」
引き攣りそうになる声を何とか抑えてそれだけ答えると、Vandalieuは「そうですか」と言って、視線を何処かに向けた。
(こ、こいつは危険すぎる! Karcan -donoに報告しなくては)
Karcanとは、Froto達の上役でこのtacticsのCommandingを執っているKnight団の男だった。
結果を見ずに村を後にしたpeddlerに扮したSpyはin any case、Tamerの男が既に報告しに向かっているだろうが、それではまだ足りない。第七cultivation villageに戻ったら、自分も報告するためにその日の内に町に向かわなければならない。
そうFrotoが警戒している相手であるVandalieuは、実は彼の事を全く怪しんでいなかった。
自分に対してKilling Intentや傷つけるつもりの無い思惑は【Danger Sense: Death】で感知できず、更に彼は他人の内心を見ただけで分かるほど鋭くない。
目線があったとFrotoが思ったのも、Vandalieuが漠然と空を眺めていたら視界に彼が偶然入ってしまっただけだ。
普通無表情は怒っているように見える事が多いのだが、Vandalieuのそれは人形のような虚ろさしか浮かんでいない。そのため、見る者によってどうとでも解釈できてしまう。
cultivation villageの人々のように友好的な目で見れば、友好的に。Frotoのように猜疑心で見つめれば、自分が疑われているように。
そのVandalieuが今何を考えているのかと言うと、誰もが一度は考える事だった。
(鳥になりたい、誰か俺に翼をください)
何故自分は【Flight】すれば一時間程の道のりを、えっちらおっちら歩いているのだろうか? certainly Kasim達やClericを置いて行く訳にはいかないと言う事情があるのは、分かる。
Cainの時のように彼らを持ち上げて【Flight】すると、流石にこの人数では重量オーバーだ。Manaを使い過ぎる。それに、四人を乗せていけるほどVandalieuは大きくない。急に強い風が吹くか、大鴉の-samaなmonstersが襲ってきたら誰か落してしまうかもしれない。
だから地上を歩くしかないのだが、もしVandalieuが複数のHumanを抱えてFlightできるような術が使えれば、こんな面倒も無いだろうにと、空を眺めていたのだ。
そしてふと、思う。
(あれ? 翼が欲しければ生やせばいいじゃないか)
そうだ、翼が欲しければ、生やせばいい。そう閃いたVandalieuは今すぐ試したくなったが、流石に自重した。
(流石にLife-Attribute Magicで誤魔化すのも無理がある。第七cultivation villageに着いた後、Eleonora達と町に向かう時に試そう)