Originの-sama子を見ていたRodcorteは、小さく呟いた。
『まずは一人』
Kaidou Kanataが死んだ。彼の死を皮切りに、Amemiya Hirotoが押さえ纏めていたReincarnator達は動揺し、これから彼の元を去る者も出て来るだろう。
そしてこれからReincarnator達も最低でも十数人は、多ければ半分程は命を落とす事だろう。
Rodcorteは彼らが簡単に死なない-samaに配慮したが、逆に彼らを無敵にも不死にもしなかった。Kanataのように同じReincarnatorに殺される場合もある。
少なくとも、Originの状況で天寿を全うできなかったのがAmamiya HirotoとKaidou Kanataの二人だけという事には成らないだろう。
「ん……? ここは……畜生っ! Mariめ、あいつ俺を本当に殺しやがったな!?」
Rodcorteの前にやって来たKanataが、気がついて叫び声を上げる。そう言えば彼もここに来た時は叫び声を上げていたなと、Rodcorteは思い出した。
「なぁっ、Kami-sama! 頼むよっ、もう一度俺にchanceをくれ! まだ三十にもなってなかったのに……幾らなんでも短すぎるだろ!?」
しかし、Kaidou Kanataの方がreason的だったようだ。彼はもう一度自分に命をくれと、Rodcorteに懇願を始めた。
二度の人生を合わせて四十年以上というのは、そう短くは無いとRodcorteは思うのだが。生まれた直後に死ぬ者や、そもそも生まれる前に死ぬ者もいるのだから。
それ以前に、KanataがOriginで殺したHumanの中には三十代未満の者も少なくなかったはずだが。死の直前に殺したterroristも含めて。
「頼むっ! 何でもするから!」
『それには及ばない。-kunには、既に三度目の人生を生きて貰う事が決まっている』
そう告げるとともに、RodcorteはVandalieuにしたように一瞬でLambdaとそこにreincarnationさせるに至った事情を伝える。
するとKanataは驚いて一瞬硬直したが、すぐにげんなりとした-sama子でこう言った。
「Kami-sama、確かにもう一度chanceをくれとは言ったけど、もうちょっと別のworldにしてくれないか?」
『Lambdaは気に入らないか? -kun達が好きな剣とmagicのworldだ。Dragonも存在する』
「いや、Kami-sama公認で劣等扱いのworldを気に入るはずないだろ。非日常はもうOriginで十分だよ。それにworldをdevelopmentとか、そんな苦労しそうな事したくないし」
『ふむ……-kunの力を活かせば、Royal Nobilityの-samaな暮らしもharemも手に入るはずだが、それでも?』
「Royal Nobilityの-samaな暮らしったって、電気もnetも無いんだろ? haremにも興味無いね。女遊びは一人につき何回かだけで十分だ」
Rodcorteの想像以上にKaidou Kanataは、Lambdaへのreincarnationに乗り気ではなかった。尤も、彼に選択権は無く、何をしても彼のreincarnationが覆る事は無いのだが。
「ん? 待てよ、MariもこのLambdaにreincarnationするのか?」
っと、突然声に張りが戻ったが、嫌な予感がする。
『……その通りだが』
「だったら今度は俺があの女を殺してやる! もう油断はしねぇっ、必ず俺の仇を取ってやる!」
やはりこうなるかと、Rodcorteは呆れた。前世のMemoryと人格を持ったままだと、どうしても前世の恨み辛みも付いてきてしまうようだ。
かと言って、Memoryか人格どちらか片方だけではreincarnation後にEmotionalに不stabilityに成るし、両方消してしまってはreincarnationさせる意味が無い。恨みに関するMemoryだけを消すなんて器用な事は、Rodcorteには難しい。彼は魂の専門家であって、Mentalの専門家ではない。Mentalは魂と密接な関係にあるが、似て非なる物なのだ。
originally、Earthで死んだ時に一連のreincarnationをprogramしたので、今から時間をかけてMemoryを換算して消去するような事は出来ないのだが。
しかし今回は丁度良いかもしれない。Vandalieuの時と違って対象が一人だけで、早急に対処しなければならない事案もある。それに、これくらいKilling Intentに溢れている方が依頼もし易いだろう。
『その前に、-kunには頼みたい事がある』
「何だよ、Kami-sama。このBraversで最初の死者Kanata -samaが、面倒な事以外は何だってしてやるぜ」
『いや、-kunはReincarnatorの中で最初の死者ではない。Amamiya Hirotoが最初の死者だ』
「Amemiya Hiroto? あいつ死んだのか!?」
『いや、彼では無い。雨ではなく、Amamiyaだ』
「……そんな奴居たのか?」
Kaidou Kanataにとって、Amamiya Hirotoはそんな程度の認識だった。高校ではclassも違っていたし、Amamiya Hiroto自身がBocchiで空気だったため、Memoryに全く残っていなかったのだ。
「あー……そう言えば、reincarnationするのを拒否した奴が二人いて、その内一人がAmemiya Hirotoと似たnameの奴だって話なら聞いた事あるな。あいつの女が暫く荒れてたっけ」
Naruse Narumi。classの人気者だった彼女は、他のclassのKanataのMemoryにも残っていた。彼女はAmemiyaをAmamiyaがreincarnationした人物だと思い込んで近づき、その後誤解だと分って一悶着あったようだが、色々あって交際して結婚していた。
その二人のなれ初めを思い出したKanataは、「似たnameの奴」がAmamiya Hirotoだと思い至った。
『彼に関する情報を渡そう』
「いや、別に欲しくないってうおわっ!? あいつあのUndeadだったのかよっ、ジーザス!」
『何かね?』
「いや、あんたじゃない!」
Rodcorteから再び情報を流し込まれたKanataは、Originで自分達が倒したDeath-Attribute Magicをworldで唯一使えるUndeadがAmamiya Hirotoであり、彼が既にLambdaにreincarnationしている事を知って思わずscreechを上げた。
このままでは自分の仇を取るどころか、自分が仇として殺されてしまうじゃないかと。
「おい、reincarnationを取り消してくれ! 俺一人であのmonsterに勝てる訳ないだろ!? せめて他の連中が死んでここに来るまで待てよ!」
あのUndeadは、Amamiya HirotoはKanataがexpressionを変えて前言を翻す程規格外の存在だった。
まず常にManaと物理energyをNullificationにするBarrierを張り巡らせていて、その内側から自分は自由に攻撃してくる。コミックなどでありがちな、自分が攻撃する瞬間はBarrierに穴が空くなんて事もnoneだ。
しかも周囲には致死性のDeadly PoisonやDisease原菌、カビが常に発生していて、space (UCHUU)服でも着なければ真面に近づけない。
それだけならKanataのCheat Abilityで透過出来るが、他にも逃げ出そうとした警備員が突然発狂して自分の指でeyeballを抉りながらゲラゲラ笑いだしたり、研究助手が突然ミイラになったり、命乞いをした女研究者がbody partの内側から虫のような物に食い破られたり、正体不明の攻撃手段を幾つも持っていた。何を透過すれば良いのか分からないのでは、KanataのAbilityではどうしようもない。
もう生物の天敵としか言いようがない危険な存在だった。
なのに自分と同じ実験体にされていたHumanが居ると、監禁されているroomの扉を蹴破りbody partに埋め込まれていた制御装置だけ壊して、逃走を助ける奇妙なrescue活動をしていたrecordも残っていた。
自分達に望んで殺されたようにしか見えなかったあの行動も合わせて、あのUndeadにはHuman性が残っていたのだと解釈されていたが、それは正解だが完全な真実では無かったのだ。
あのUndeadは、Kanata達と同じReincarnatorだったのだ。
『-kunにはそのAmamiya Hiroto、LambdaではVandalieuと名乗る存在を殺して欲しいのだが』
「だから無理だって!」
『今の彼はあのUndead Transformationした時よりも弱体化している。-kun一人でも倒せるはずだ』
「……マジか?」
そしてRodcorteはKanataに彼が持つ、Vandalieuの情報を話した。ただ、Circle of Reincarnation systemの事を定命の存在に明らかにする訳にはいかないので、彼が魂を砕く事が出来る事は黙っておいた。殺して欲しい理由は、Kanataやそれ以外のReincarnatorを皆殺しにされたら困ると言う事にする。
(それに、魂を砕かれると聞いて再び怖気づいたら困る)
そんな計算も働いていた。
一方、完全ではないが概ね事情を聞いてKanataは、そんなRodcorteに「こいつ、idiotじゃねぇの?」と印象を改めた。
Vandalieuを呪うとか、suicideに追い込むとかそんな面倒な事では無く、Originで死んだ時点で何故懐柔しようとしないのか。少なくとも、Kanataだったらそうする。
裕福な家に生まれ変わらせてやるとか、今度こそCheat Abilityを付けるとか、それこそ自分で言っていたharemを築けるようにしてやるとか、色々あるだろうに。
とりあえず、事情は理解した。あまりやる気は湧かないし、ちょっとはVandalieuに同情する。しかし、同時にこれはchanceだと、彼は考えた。
「なあ、そのVandalieuを俺が始末してやっても良いが、二つ条件がある」
『条件?』
「当たり前だろ、こっちはあんたのmissの尻拭いをしてやるんだぜ」
『……-kun自身の身を守る事にもつながるはずだが?』
「別に俺はあいつの前で命乞いしても良いんだぜ。あいつの靴でも足でも舐めながら、俺は何も知らなかったんです、皆あのAmemiya HirotoとEndou Kouyaの言う事に逆らえなかったんです、情報でもなんでもお渡しするのでどうか命だけはお助け下さいってさ。
そこまでやれば結構許してくれるんじゃねえかな? あいつ優しそうだし」
自分と同じ実験体のHumanは進んで助けていたし、どう考えてもお人好しだろう。そう考えたKanataがそう言うと、実際Rodcorteは暫く沈黙した後、先を促した。
『条件とは?』
「まず、報酬だ。俺がVandalieuを首尾良く始末したら、Earthかそれに近い科学文明がdevelopmentしている、magicもmonstersも無いworldにMemoryも人格もそのままでreincarnationさせてくれ。certainly Originはnoneで。
生まれ変わる先は大金持ちで、恵まれた家に。あと、今度は絶世の美男子で頼むぜ」
『四度目の人生を望むのか。そのためにはLambdaで死ななければならないが?』
「死ねばいいだけだろ。Vandalieuを始末したら、さっさと死ぬさ」
(劣等worldでの人生なんざ、全く興味ないね。仕事が終わったらスパッとsuicideして、後はEarthに近い快適なworldにreincarnationして、大金持ちの御曹司をしながら死ぬまで楽しく暮らしてやるよ。他の連中が糞みたいなworldで一生懸命生きてる間ずっとな)
そんなKanataの思考はRodcorteに筒抜けなのだが、Rodcorteは彼の思考にあまり興味は無いし、それを咎める必要も感じなかった。
百一人のReincarnatorの内でKanataはOriginのdevelopmentに寄与していない方で、Lambdaでもあまり期待出来ないだろうと考えていたからだ。
戦闘Abilityしかない捨て札一枚で、厄介な問題を解決できるなら安いものだ。
それにKanataの求める報酬も、Rodcorteにとっては簡単に叶えられる部類の物だった。
『いいだろう、その報酬を約束しよう。それで、もう一つの条件とは?』
「certainly Back upだ。まず俺を大人のbody partでLambdaにreincarnationさせろ」
『通常の生まれ変わりではなく?』
「当たり前だ。あんた、俺の仕事が終わるまで、何年待つつもりだよ」
いくらKanataが戦闘Ability、特に対人戦に優れていても体が赤ん坊や幼児では無理がある。動けるようになるまで、親から離れて自由に行動する事を考えると十数年、長ければ十五年から二十年はかかってしまう。
だが最初から大人のbody partならまだchildのVandalieuに対しても有利だ。面倒な保護者も居ないから、自由に動ける。
それに劣等worldで十何年も生活するなんて、Kanataにとっては避けたい事だった。
『いいだろう。多少力を使うが、不可能ではない』
上記の優位性を考えても、Rodcorteにとってはある問題があって本来ならやりたくない事だが今回は仕方ないだろう。
「じゃあ、他に毒とdisease、後death attributeに対するResistanceだ。それと、万が一俺がやられてもUndeadにされない-samaに俺の魂はすぐ回収してくれ」
『-kun達Reincarnatorの魂は、死後必ず私の元に来るようになっている。Amamiya HirotoのUndead Transformationは本人のmagicによる例外だ。
毒とdisease、death attributeについてはresistance skillを得られるようにしておこう。death attributeについてのresistance skillは本来Humanが習得不能であるため、授けられるのは5levelが限界だが』
「skill?」
『Lambdaには、skillやJobが存在し、それらはStatusで確認する事が出来るのだ』
「なんだそりゃ、まるでgameだな。そんな遊びみたいな事をしてるからdevelopmentしてないんじゃないの、そのworld?」
『……それで、他に必要な物はあるかね?』
「とりあえず、装備だな。銃とknifeと――」
『待て、Lambdaのworldに無い物を持ちこむ事は不許可だ』
「マジかよ、スナイパーRifleだけでもダメか?」
『何故許可すると思ったのかね?』
「チッ!」
遠距離からの狙撃でイージーmodeを考えていたKanataは、大きくclicking tongueした。しかし、これはRodcorteとしても断るしかない。
そもそも、そんな事が出来るならとっくに自分でanother worldの産物を大量に送り込んでいる。彼が司る力では不可能だから、やらないのだ。
あくまでもRodcorteはGod of Reincarnationでしかない。
「じゃあ、せめて服くらいは良いよな? まさか全裸でreincarnationしろって言うつもりか?」
『……通常なら誰でも生まれて来る時は裸なのだが。分かった、どうにかなる-samaに調整しよう。
では、後はVandalieuと遭遇する-samaにDestinyを――』
「待った! そのDestinyって奴も調整してくれ。なんて言うか、Radarとかそんな感じにして、思ってもみなかったtimingで遭遇するなんて事が無いようにしてほしい」
何と注文の多い事だろうか。そう思いつつも、「分かった」と了承するRodcorte。実際、その程度の調整なら難しくは無い。
『強いdeath attributeのManaの主を探査するRadarと、その持ち主に遭遇するDestiny。そう調整しよう』
「良し、なら後は問題無い」
そして、注文も出尽くしたらしい。
『では、これから-kunをLambdaにreincarnationさせる。reincarnation後はAdventurer’s Guildか他のguildに登録、Jobに就きlevelを上げてAbility Valuesを上げながら、skillの使い方を学ぶことを薦める』
「だから、そう言う遊びはいいんだって。そんな事しなくても、サクッと始末してやるよ」
そう言いながら、Kanataはreincarnationして行った。
第二cultivation villageの人達を前に、Vandalieuは用意した品々を前にCookingを始めようとしていた。気分は、某三分で出来るクッKingである。
「まず用意するのはGoblinの肉と、Gobubu Grassです。Goblinの肉の部位は胸肉でも腿肉でも、heartでもどこでもいいですが、最低でも一匹分あると良いですね。あ、レバーも大丈夫です。Gobubu Grassは、用意したGoblin肉の半分くらいの重さがあると丁度良いです」
用意したGoblin肉とGobubu Grassの山を指すと、村人達の何人かはうぇっと呻く。LambdaではOrc等の人型のmonstersの肉も食べるが、それでもGoblinとGobubu Grassはゲテモノどころか廃棄物扱いなのでこの反応は仕方ない。
「次に、Gobubu Grassを磨り潰します。この際臭くて服に着くとシミになる汁が出るので、汚れないように注意してください。
今回はこのGobubu Grassを磨り潰すため専用の石臼を用意しましたので、それを使います」
【Golem Transmutation】でnightの内に作って置いた石臼を陰になっていた場所から持ってくると、今度はどよめきが起こった。それは大人でも運ぶのに苦労する石臼を、Vandalieuの-samaなchildが軽々と持ち上げている事に対しての驚きだったが、Vandalieuは石臼がウケたのだと解釈していた。
ゴリゴリとGobubu Grassを磨り潰し、嫌な臭いのする汁が石臼の下に設置してある桶に溜まって行く。
「そしてGoblinの肉を適当な大きさに切り刻みます。俺は刃物を持っていないので自前の爪を使いますが、-chanと綺麗にしたのでご安心を」
そう言いながら、clawsで肉を切り刻む。再びどよめきが起こる。
「肉を切り終わったら、樽の中に肉と汁を入れます。この際、肉が汁に-chanと浸る-samaに気を付けましょう。入れ終わったら蓋をして、一日置けば完成です。
今回は完成した物をご用意しました」
「え? 何時の間に?」
「Familiar Spirit Powerで用意しました」
鋭いツッコミを入れて来る村人が居たが、実は【Inanimate Aging】のmagicで一日たったconditionにした物ですとは言えないので、強引に誤魔化す。
「これが完成したGobu-gobuです。どうぞ、食べてみてください」
樽を開けて、紫色に変色した肉っぽい物を取り出して皿の上に並べる。それを見た村人達は、思わず後ずさる。紫色の肉を食べろと言われた人の正常な反応である。
「ほ、本当にこれは食べられるのですか?」
「certainlyです。一緒に食べましょうか?」
「い、いえっ! 頂きますじゃっ」
意を決した村長がGobu-gobuを一つ掴むと、目をぎゅっと瞑って齧りついた。しかし何度か咀嚼するうちに、眉間の皺が無くなって行く。
「これは……美味くは無いですが、不味くも臭くもありませんのぅ」
村長がそう言うと、村人達は恐る恐ると言った手つきではあったが、Gobu-gobuを口に運ぶ。
「確かに、親父-donoの言う通り食べられなくはない味じゃ」
「いや、冬の間食べた木の皮の団子や草のsoupに比べればずっとマシじゃないか?」
「そうだな、あれと比べればずっと旨い」
(凄い食生活をしていたんだな)
Gobu-gobuを悪くない、それどころか旨いと言う村人達に、心底同情するVandalieu。しかし、彼らが実りの少ない冬の間に食べる代替食……栄養は無いが空腹を紛らわせるために食べる物は、本当にGobu-gobuよりも不味いのだ。
「ああ、Goblinの肉をただ食べるよりもずっと旨い」
中には、空腹のあまり退治したGoblinの肉を食べた村人もいたようだ。不作に喘ぐ彼らは、本当にbarelyの生活をしてきたのだろう。Slave商人が来ていたら、childを飢え死にさせるよりはと売っていたかもしれない。
そんな時に退治しても捨てるしかなかったGoblinの肉や、Gobubu Grassで保存食を作る方法が分かったのだ。栄養価も、肉である以上木の皮よりはずっと高いはず。
これを喜ばないはずがない。
「えー、今ならVidaの祠を建立するだけで、石臼と木の樽二十個に加え、Goblin肉を汁に漬ける前に塗しておくと出来上がった時に旨味が増す塩が手に入ります。どうでしょうか?」
「喜んで! 我々はGoddess Vidaに帰依いたします!」
「いや、帰依まではしなくて良いので――」
「貴重な塩まで頂けるなんて、本当にありがとうございます!」
「うう、領主さまやCleric -samaに遠慮して祠は建てなかったが、以前のようにお祈りはしていました。Vida -samaに届いていたんですねぇっ」
同情して、つい通行税代わりに持ち込んでいたTalosheim産の海塩も出してしまった。岩塩が残っているし、mountain banditから小銭も手に入れているので問題無いだろうけれど。
因みに、村人達の言葉が気になったので尋ねてみると、Sauron領ではAldaよりもVidaへの信仰が盛んだったらしい。実際cultivation villageの人達を見ても、一番多いのはHumanだしDark Elfは居ないが、BeastmenやGiant raceの村人がそれなりの割合で居る。
しかし、受け入れてくれたHartner DuchyではDukeを含めたNobleの殆どがAldaやそのSubordinate Godを信仰しており、栄えているのはAlda temple。そしてcultivation villageでSoldier達が建立したのはAldaの祠で、巡教に来るのは第七cultivation villageにも居たAldaのCleric。
はっきりと禁じられた訳ではないが、圧力を感じて失った故郷の村のようにVidaや他のGodsの祠を建立するのを止めていたらしい。
(また嫌な情報が手に入ってしまった)
少し気が重くなるが、それ以上に気がかりなのはTalosheimから避難してきたはずのFirst Princess Leviaと、彼女と一緒に避難したBorkusの娘を含む避難民達だ。
Alda教の力が強くなっているこのDuchyで今も生活しているのだろうか?
それとも、他のDuchyに移住したのか。やはり早く町まで行って調べた方が良いだろう。
(このcultivation villageの事も気になるけど……村の周りにLemureを配置しておくか。後、村の近くにStone Golemを何体か埋めておこう。胸にVidaの聖印を刻めば、村の人達はallyだと思ってくれる……かな?)
maybe大丈夫だろう、きっと。
「やっと追いついたぞ!」
そしてVandalieuがここ数日で大量ProductionしていたLemureを各cultivation villageに配置していたら、Kasim達とClericの男が駆けつけてきた。第七cultivation villageに居た彼らが、何故第二cultivation villageに来たのだろうか?
「まさか全部のcultivation villageを回るだなんて思わなかった……」
「一度戻ってこいよ、みんな心配してたんだぞ」
口々にそう言うKasimとFester。
「俺達、お前がCainを乗せて飛んで行った次の日の朝に第五cultivation villageに向かったんだよ」
同じ元Sauron Duchyの難民仲間の第五cultivation villageと、村の仲間の命の恩人は無事なのか。Kasim達はAlda Clericと四人で第五cultivation villageに急いだ。
そこで見たのは、Vidaの祠を村の何処に建立するか話し合っているCain達だった。
「その後お前は他のcultivation villageに飛んで行ったって聞いて、追いかけたら……本当にお前何者なんだ? 凄すぎるだろう」
「そうだ、村じゃお前とCainが途中で落っこちているんじゃないかって心配してたのに、結局全部のcultivation villageを回っちまった」
「しかも、全部の村で信じられない人助けをしているし。俺達は聖人の後でも追いかけているのかと思ったよ。ねぇ、Cleric -sama」
「全くです」
額に浮いた汗を袖で拭って見せるAlda Clericの顔は、Slightly引きつっていた。薄っぺらいSmiling FaceよりもHuman味が感じられた。
「一昨日は共に善行に励みましょうと言いましたが、寧ろ教えを請うた方が良いかもしれません。一体どうやって村人全員のdiseaseを癒し、専門のHealing Handでもなければ難しい火傷跡の治療を行い、井戸を瞬く間に掘ったのですか? 他にも、貴方の手から聖なる滴を賜ったお蔭でdiseaseが治ったと言う話も聞きました。どうか教えてください」
Clericにそう問われて、Vandalieuは(うわ、凄い事をしたもんだな、俺)と改めて思った。ただ、爪から分泌した点眼薬等の薬を聖なる滴とは話を盛りすぎだと内心思ったが。
しかし、どう答えたものだろう? 村人達のように「Familiar Spirit Powerです」で誤魔化されてくれるとは思えないし、だからと言って真実を話すつもりも無い。
では一部の真実だけ話して、それ以外は秘密のまま押し通そう。
「ちょっと特殊なskillを持っていまして」
そう答えると、ClericやKasim達が目を見張った。
「特殊なskillって、もしかしてUnique skill!?」
このworldには、Vandalieuが持つ【God Slayer】の-samaなUnique skillが存在する。所謂超Abilityや特殊なaptitudeのような物で、非常に珍しい。割合的には、一万人に一人程度。
ClericとKasim達は、Vandalieuの数々の行いはその固有skillによるものだと誤解した。
「そ、それはどのようなskillなのですか!?」
興奮した-sama子のClericが身を乗り出して尋ねるが、Vandalieuは首を横に振る。
「俺もこれからadventurerとして身を立てて行こうとしている身ですので、話す事は出来ません」
「そんな事を言わずに、教えてください! 秘密は守りますから」
「ダメだ、Cleric -sama!」
食い下がるClericを、Kasim達が止めた。
「俺達adventurerはbody partが資本だ。skillを無理に聞き出すのは、manner違反だぜ」
「そうだ、気になるのは分かるけど、皆を助けてくれたVandalieuから無理に聞き出すのは仁義に反するって」
そう、Kasim達が言うようにadventurerにとって自身のStatusに表示される情報は、そのまま自身の強みであり弱点である。自分から話すならin any case、Statusやskillを話すよう強要するのは、「お前の弱みを見せろ」とdemandしているのに等しい。
Vandalieuはこれからadventurerになる事を明言しているのだから、彼にとってもそれは同じだ。
「それも……そうですね。失礼しました」
Kasim達に制止されたClericも、渋々引き下がった。
「いえ、分かって頂ければ十分です」
「しかし、このような事が出来るのならadventurerに成らずとも、幾らでも仕官の道があると思いますが?」
……Slightly未練が見えるのは何故だろう? 巡教のClericが、仕官の斡旋が出来るコネがあるとも思えないのだが。
「そうかもしれませんが、俺はまだ若輩者です。仕官するにしても、まずadventurerになって見聞を広め、経験を積んでからにしようと思っています」
何処かのNobleや商家に仕えてしまうと、家臣やServantになってしまうのでpeerageを得にくいし、都合が悪くなっても簡単には辞められなくなる。
それは避けたいのだ。
「なるほど、確かに見聞を広めるのは大切ですな。お若いのに考えておられる……」
「ああ、少なくともFesterよりずっと将来について考えているな」
「何で俺が出て来るんだよ!?」
一応嘘は言わずに(【Death-Attribute Magic】もskillである事に違いは無い)済んだので、Vandalieuは気分良くKasim達と一緒に第七cultivation villageに一度戻るのだった。
Kaidou Kanataは、前触れも無く戻ってきたBodyの感覚に深い満足感と感動を覚えた。
あの時、まるで夢の中のように頼りなかった四肢には力が漲り、Vitalityに満ちた自身の鼓動を胸の奥に感じる。
そして瞼を開いた彼は「やったぜ!」と歓声を上げた直後、戦慄きながら叫んだ。
「やっぱり裸じゃねーか!」