火事場泥棒をしてから大体四か月。季節はすっかり夏になった。昼間から周囲の熱を奪う【Demon Fire】冷房が欠かせない季節である。
あれから六ageに成ったVandalieuは、Talosheimで忙しく過ごしていた。Farmingと繊維業の体制作りが大変だったからである。
まず、畑の土ごと略奪した作物は順調に育って……順調すぎるほど育っている。最初はMountain Range一つ越えただけで気候が大きく異なるので、Death-Attribute Magicで死ぬのを強制的に止めて、何世代かにかけて品種改良して行くつもりだった。
しかし、作物はTalosheimの土にあっさり適応した。maybe、元Devil Nestsの土で育っていた作物なので今も準Devil NestsであるTalosheimの土と相性が良かったのだろう。
麦は作付けから三カ月で収穫できるようになり、Talosheimで発生しかけていた穀物不足を一気に解消してくれた。
他の野菜も普通よりも早く収穫できるようになった。……何故か枯れずに次の花を咲かせたり、気がついたら根っこを足代わりにして歩き出したりしているが。どうも、肥料としてmonstersの使わない部分を【Fermentation】させて更にVandalieuのManaを注いだ物を撒いたのが原因らしい。
「まあ、良いか」
普通の農家のように付きっ切りで世話をしなくて良いのは助かる。出来る作物も良質なので、文句は無い。
ただ、見に行く度に「食ってくれ」とChargeして来るのは勘弁して欲しい。幾ら良質でも、玉葱の生はきついです。トマトを「食らえ」と投げつけるのも止めてください。うちの国ではそんな祭りはありません。
「全部受け止めるのはboneなんですよ」
そう訴えながら【Spirit Form Transformation】で増やし伸ばした腕で、monsters化した野菜が自らの実を捥ぎ取って投げつけて来るのをキャッチして収穫。
それを何度か繰り返して、やっと止めてくれた。
どうも、実を付けるTypeの野菜は危険らしい。麦や根菜、イモ類は現在monsters化していない。
一方、繊維の方は途中まで上手く行った。
「起きろ」
Wood Golemを作る時と同じ要領で、原料を【Golem Transmutation】で操る事が出来たのだ。
流石に植物のconditionから直接繊維だけを取り出す事は出来なかったが、煮て柔らかくした物から繊維を抜き取って糸にする事は出来た。
Borkus’s Sub-Dragon Savannahで取れる植物からは麻布が出来た。後Needle Wolfの腹側のfurから羊毛のようにフワフワで温かい毛糸が、更にCemetery Beeからは絹糸っぽい物が出来た。
Cemetery BeeはEarthのミツバチやスズメバチのように、蛹をすっぽり包むような繭を作らない。しかし、幼虫が蛹になると、蛹のいる巣のroomに蓋をする。
Cemetery Beeの場合は、その蓋が糸で出来ていたのだ。成虫になると体長三十センチmeterになる蜂の蛹が収まるroomの蓋だ。蚕の繭から採れるのよりも若干多い量が採れた。
certainly、蓋はCemetery Beeがgrown wingsする時に破いてしまう。しかし大鋸屑からでも板を作れるVandalieuにとって、破れた蓋をGolemにして、蓋の繊維を元通りにして糸にするのは難しい事では無かった。
うっすらと蜂蜜色をしたこの絹を、Vandalieuは蜜絹と名付けた。
「まあ、順調なのは糸や布にするまでなんですけどね」
Golem Transformationした糸車で、糸は作れる。同じくGolem Transformationした織り機で、布も問題無い。染料も、Immortal Entが落とした葉や枝を煮出して何色かは揃う。
それで作った布はEleonoraの目から見ても見事な品質で、商業guildに持ち込めば商人たちが我先に殺到する物だったが……やはり布は布である。
服では無い。
「Clothing Decorationって、難しいですよね」
「まあ、そうじゃな……」
「ふ、褌なら我も出来るぞ」
『いや、それ縫ってないじゃないですか』
『妻が居れば簡単な物なら仕立てられたのですが』
『娘なら何とかなぁ……』
布から服に仕立てるには、皆経験と知識が不足していたのだ。Ghoul達にとって布は滅多に手に入らない貴重品で衣類は主にfurや皮を使っていたし、TalosheimのUndead Giant達は長く外界に接してこなかった事もあり、Clothing Decorationに拘る余裕が無かった。
RitaやSalire等、簡単なSewingが出来る者はいても、服を一から作れるneedle子やClothing Decoration職人は居なかったのである。
Vandalieuも似たようなもので、精々学校の家庭科の授業で習った程度だ。当時を思い出せば、apronぐらいなら何とか行けるかもしれないが。
Originの繊維を研究していた学者も、作った繊維から服を作るのは専門では無かったし。
「まあ、skillが手に入れば色々作れるようになるでしょう」
skillが有れば、Earthで見たあの服はどうすれば作れるのか、何となく分かるかもしれない。
結局貫頭衣等の他は、皆で試行錯誤する事になった。
《【Farming】、【Clothing Decoration】skillを獲得しました!》
謁見の間の玉座に座るVandalieuの前に、多くの霊が並んでいた。
彼らはBalcheburgに攻め寄せた遠征軍のUndeadに入っていた霊だ。あれから四ヶ月以上かけて彼らは戻って来たのだ。
尤も、この場に居るのは二度の死と長時間の移動を経ても、人格が完全にDecayする事無く保っている百人程しかいない。やはり、VandalieuにFollowersとして認められず、body partがDecayした後Death-Attribute MagicでSpirit Formの保護もされずに四か月も経つと、大体の霊は唸り声をあげるだけのconditionになってしまうようだ。
「皆よくやってくれました。これで、Talosheimを攻めに来た罪は許しましょう」
そう告げると、霊達が歓声を上げた。彼らはこれから正式にVandalieuの旗下に加わる事が出来ると、心から喜んでいた。
「では、Chezare General。彼らを案内してください」
『はい……陛下ぁ』
そして誇らしげに勲章を胸に着けた軍服姿で現れたChezareが現れると、霊達の反応は二つに分かれた。
大多数の者はかつての上司との再会に歓声をますます大きくし、少数の者は驚愕にoriginally崩れ気味の顔をますます崩れさせる。
『ちぇ、Chezare! 貴-samaがGeneralだと!?』
少数の者の筆頭は、Langil Mauvid Generalだ。彼は生前属国出身であるため副司令官だったChezareの予期せぬ出世に、目玉が零れ落ちるほど目を見開く。
そんな彼に、Chezareはクククと含み笑いで答える。
『これはこれは、Mauvid元総Commander -dono。お久しぶりです』
『貴-samaがGeneralとは、どう言う事だChezare! 貴-samaは儂と同じVandalieu -samaの敵だったはず! それが何故Generalに!?』
『フフフ、Eclipse King -samaは懐の深きお方。私の働きを高く評価してくださり、勲章と共にGeneralの地位を頂いたのですよぉ』
『そんなBAKANA!?』
MauvidはそんなBAKANAと言うが、実際Chezareはとても役立ってくれている。
彼は超有能なCommanderでは無かったし、天下無双の武威も無い。しかし、Undead Transformationした後でも事務Abilityの高さを維持しており、軍の運営方法や物資の揃え方、更に盾国の各砦の構造や、各国が採る戦略等にも詳しい。
更に軍事以外にも法律や商業に関してもある程度詳しい、Vandalieuにとってこれから必要な人材……死材なのである。
Borkusは強いし頼りになるし信頼できるが、基本的にデスクworkが出来ないのだ。
『さあ、陛下の誇りある将兵達よ! 諸-kunには陛下から新しいbody partが与えられる! 私とBlack Bull Knight団と共に、Eclipse King陛下のために戦うのだ!』
Black Bull Knight団も、Vandalieuは使い捨ての軍団には加えなかった。彼らが持つ高い水準で集団戦を行える技術を、Giant raceやGhoul達に教える教官役をさせている。
それにKnightなので程度の差はあってもデスクworkが出来るため、何処に置いても使えると言う便利さがあるのでこれからも重宝するだろう。
因みに、RileyのSlaveだったFlark、Gennie、Messaraの三人もそれぞれ利用価値があるのでキープしてある。前歴が前歴なので注意が必要だが、今の所大人しい。
そして元遠征軍の霊達の盛り上がりはAccelerationした。ChezareがGeneralである事や、Black Bull Knight団がそのまま残っている事を聞いて、これからの人生(?)に希望を覚えたようだ。
『み、認めん! 儂は認めんぞ、貴-samaがGeneralなどと!』
逆にMauvidはそう叫ぶが、次の瞬間には声を引きつらせた。
「それは、俺に不満があると?」
謁見の間の空気が変わり、全ての霊がMauvidに怨敵を睨むような形相を向ける。
『ひっ! そ、そんな、儂はただ――』
「Chezareは俺がGeneralに任命し、勲章を与えました。全て、俺の権限と意思によるものです。それに不満があるなら、俺に不満があるのと同じでしょう?」
『そ、それは――も、申し訳ございません! 過ぎた物言いをお許しください!』
頭を下げるMauvidに、Vandalieuは「許す」とは言わない、冷淡な態度を取る。そこにChezareが助け船を出す。
『申し訳ありません、陛下。部下の無礼をお許しください』
ニタリと哂うChezareの声に、Mauvidの霊が震えるが無視される。
「部下にしていいんですか? 苦労しそうですけど」
『certainlyです。使えない者を使うのも、上に立つ者の務めですので』
「……分かりました。人事はChezareに一任しましょう」
『はは、ありがたき幸せ。
さぁ、立て! 貴-samaは一兵卒からやり直しだ!』
Chezareと彼の部下にMauvid元Generalの霊が連れて行かれる。本音を隠せない霊のconditionなので、凄い形相になっているが、滑稽さしか感じられない。
その後に大勢のChezareと同じMirg Shield Nation出身の霊と、少数の悲壮な顔つきをしたAmid Empire出身の霊が続く。彼らの多くはLiving Armorか、Curse Carriageに成る予定だ。
因みに、残りの人格がDecayした霊はGolemかCursed Weapons行きだ。
どちらにしても、霊にbody partを用意せずそのままAstral系と呼ばれる、Ghostやレイスの-samaなSpirit FormのみのUndeadには出来ない。
以前は単純にVandalieuの【Death-Attribute Magic】のlevelが低い事が原因だったが、今は技量的な問題はclearしている。問題は材料にする霊だ。
霊がAstral系のUndead Transformationするには、霊main bodyに尋常ではない負のemotionsが必要だからだ。怒りや憎しみ、無念やsorrowが無ければ、Undead Transformation出来ない。
Vandalieuに殺された者達は【Death-Attribute Charm】の効果で殺された事に喜びを覚え、恨みを口にするどころか「殺された御恩返しをさせてください」と言って頭を垂れるくらいだ。
とてもSpirit FormのみでMaterializationできるUndeadには成れないだろう。
それはin any case。
「……茶番も疲れるなぁ」
必要な事だが、あまり面白くない。
先ほどのやり取りは、Chezareが霊達を纏めるのに必要な事だった。序列を全員の目に明らかにしなければ、Vandalieuが居る間はいいが、Elective Kingdomに行っている間に何かあってはいけない。少数だがEmpire出身の霊にchain of commandを分からせなければならない。
Demon Kingとかそう言う集団でありがちな派閥争いとか、足の引っ張り合いは邪魔なだけだ。いっそMauvidの魂を砕けばいいのかもしれないが、いきなり最終手段を実行するとその次に何かが起きた時どうするか困ってしまう。
最終手段は、彼が何か見過ごせない程良からぬ事を企んだ時だ。……不満は余暇に上司の愚痴を言うぐらいで抑える賢明さを、彼が発揮する事を祈るばかりだ。
「では、RileyとGordanは前に」
そして残っていた二人の霊を呼びつける。
『お呼びですか、神よ』
『へへ、へへへっ』
Gordanの霊が狂人の顔つきで、Rileyの霊がヘラヘラと緩んだ顔で近づいてくる。その姿を見ると、込み上がって来るものがある。
「コフっ……二人に、頼みがあります」
小さく咳き込んで、唾液に混じるbloodの味を強引に無視しながらそう告げると、二人は恭しく一礼する。
『何なりとお申し付けください。この身は、全てあなたに捧げております』
『何でも言ってくれよぉ、ヒヒッ、槍さえ、槍さえあれば誰だって殺してやるぜぇ』
ああ、もう本当に無理。
「滅びろ」
【Spirit Form Transformation】した両腕を、それぞれRileyとGordanの霊にthrust入れた。二人は驚愕に固まった後、絶叫を上げた。
『ぎゃひああああああっ!? な、何をっ、何で!?』
『お゛ぐあああああ! か、神よっ! 何故ですっ、儂の罪は、罪を許すとおおおぉがぎゃがががっ!』
「……ええ、【今回の】罪は許しました。でも、kaa-sanにした事は許していない」
despairと苦痛に顔を歪める二人を見ながら、Vandalieuはbloodの混じった唾を飲み込んでから続けた。
「一応、考えた。耐えようかと思った。努力もしてみた。でもね、ダメなんですよ」
『あああああっ、おっ、俺は、俺は悪くないいいぃぃぃぃっ!』
『わ、わ゛じはあ゛、ただ、教えに、従ってえ゛っ!』
「そんな事は解ってますよ。お前らが悪くない事は、とっくに」
Rileyは悪くない。彼はただadventurerだっただけだ。密林Devil NestsのGhoulを討伐するための隊に参加したのも、今回の遠征軍に参加したのも、犯罪Slaveを盾にしたのも、Dhampirを産んだ女を捕まえてfanatic共に引き渡したのも、何一つ悪くない。
どれもこれも、彼が居た社会では犯罪ではない。法の下で裁かれない行為だ。
Vampireと取引した事だけは極刑に値する重罪だが、Empireや盾国の代わりにVandalieuが執行する義務も謂れも無い。
Gordanも悪くない。彼はAldaの教義に従ってVampireやそれに従う者を退治していただけだ。
Dhampirを殺そうとしたのも、Dhampirを産んだ女に鞭や焼き鏝で惨たらしいTortureにかけたのも、晒し者にして火炙りの刑で焼き殺したのも、何一つ悪くない。
寧ろ、Empireとその属国では人々に称えられるべき善行だ。
そう、Vandalieuとは属する社会が、立場が異なるだけなのだ。
それにUndead TransformationしたGordanとRileyは役に立つだろう。body partは無いが、新しく用意してやれば戦力になるはずだ。
だからこの四ヶ月、色々考え耐えようとしてきたのだが……無理だった。
「stressで【Abnormal Condition Resistance】skillのlevelが上がるくらい無理なんですよ。お前らを許す事を考えただけで、stomachに穴が空くし、さっきもちょっとbloodを吐きましたし」
『ぞ、ぞんな……!』
『あげがあがががががっ!』
そもそも考えてみれば、社会や立場が違えば善悪が異なるなんて当たり前の事だった。EarthでもOriginでも、属する社会と立場が異なる者同士が争い、殺し合うなんて日常的に行われている事だと思いだした。
ならVandalieuが耐える必要があるだろうか? もし彼がLambdaの人々に何か啓蒙する事を目的とするなら、耐えるべきかもしれない。二人を許すべきだろう。
だがVandalieuがしたいのは、Self幸福の追求だ。Self犠牲を前提にした啓蒙活動等に労力を払うつもりは無い。
では許すのも受け入れるのも無理なら、Golemにして何処かに埋めて放置するか適当に解放すると言う選択肢もある。しかし、それは考えれば考えるほどあり得ない選択だ。
RileyとGordanは、Evbejia近くの森の地下に放置しているDarciaを密告したHunterのOrbieとは危険度が全く異なる存在だ。適当に魂を放置してRodcorteやAldaやYupeonやHihiryushukakaに回収されたら、また自分の前に立ちはだかるかもしれない。
それならまだ良いが、自分の目が届かない所から皆に害をなすかもしれない。
神が何処まで出来るのかは分からない。しかし、Vandalieuは神の悪意を信じている。奴らがどれ程残酷で悪辣なのか知っている。
特にGordanはEarthで言う天使を自らのBodyにPossessionさせる、【Familiar Spirit Advent】と言うskillまで使っていたので、まず間違いなくAldaも注目している。
だからそんなriskは冒せない。
「そして何より、お前等が憎い」
『『ギャガがガアアアーーー』』
glassが擦れるような聞き苦しいGordanとRileyのscreechが、澄んだ破砕音と共に途切れる。
ドロリとSpirit Formが崩れ、光る粒子の-samaなsoul fragmentがサラサラと消えていく。
それを見た時、Vandalieuは心の底から晴れ晴れとした気持ちになった。Sercrentの魂を砕いた時にも感じた、worldが少し綺麗になったような清々しい清涼感に気分が高揚する。
「――さてと。後仇は五人か」
Heinzとその仲間、Thomas Palpapek Earl、Pure-breed VampireのGubamon。AldaやYupeon等神は殺せる所に居るかどうか不明だから省くにしても、錚々たる顔ぶれだ。
先は長そうだ。
「では、今回の戦争勝利を祝って乾杯」
『乾杯!』
既に火事場泥棒から帰った後一度祝っているのだが、全てが終わったと言う事で改めて戦勝会を開いた。
四か月前の目玉は、Giga Birdの卵と恐竜とOrcの合い挽肉、そして遠征軍の食料に山程あった固焼きbreadからのbread粉で作ったハンバーグだった。
当時はまだ玉葱の収穫前だったのでVandalieu的には物足りなかったが、皆からは高評価だった。このLambda worldでは、やはり肉を挽肉にするCookingが未発達か失伝したようだ。
そして今回の目玉は出席した全員が持っている丼の中身……ramenである。
「これはうどんやPastaとは似ているように見えるが、全く違うものじゃな」
『うめぇっ! 旨いぜぇっ!』
ramenの麺に独自の食感を出すために必要な「かん水」の開発についに成功したのだ。それさえできれば、後は製麺機を作り、タレや出汁を少し工夫するだけでとりあえずramenには出来る。
Earthにある行列のできる有名店の味には及ばないだろうが、Vandalieuが食べた事のあるインスタントやカップ麺よりは美味しく作れたと思う。
「麺も美味いが、soupが旨いな。Van、これはどうやって作ったんだ?」
「恐竜のboneからじっくり出汁を取りました」
豚boneならぬ恐bone ramen、鶏ガラにやや似ているがより濃厚な出汁が採れる。因みに、肉食恐竜のboneだと独特の癖があり、草食恐竜のboneだと後味があっさりしている。首長竜だとSlightly魚っぽい。
『Bocchan、何年も研究を重ねた努力が報われましたね!』
『えーっと、もうすぐ三年になりますか。かん水って、diseaseよりも作るの難しいんですね』
「Rita、その言い方はどうなんでしょう?」
『Bocchan、このramenにはketchupが足りないと思います!』
「……善処しますね、Salire」
「King、豆腐は?」
「Braga、ramenに豆腐はちょっと挑戦ですよ」
「ふごご、ずばばばばっばぶっごごっ!」
「Gorba、何を言っているのかさっぱりわかりません」
お代わりは沢山あるのだが、不安になって来る食べっぷりである。
「あの、Van -sama。そんな事しなくても私達が――」
「まあまあ、これも訓練です」
Cooking場の方では、数人のVandalieuがmidairを浮遊しながらramenをせっせと作っていた。
【Out-of-body Experience】でBodyから出たVandalieuのSpirit Formがそのまま分裂。そして【Materialization】skillで両手をMaterializationしながら【Parallel Thought Processing】や【Long-distance Control】skillを使って数人分のCookingをしているのだ。
「仕込みも終わっていますから、実質的に麺を茹でるだけなんですよね」
「後は丼に盛り付けるだけですし」
「dessertのシャーベットも、もう盛り付けるだけですから」
「……あのぅ、話す時は一人だけにしてもらえると、助かるのだけど」
「「「ん? Eleonora、俺は一人ですよ?」」」
どうもこうやって作業していると、傍から見ると俺が沢山いる-samaに見えるらしいとVandalieuは今気がついたのだった。
本人の感覚としては、頭を増やすのとあまり変わらないのだが。どのVandalieuもVandalieuであって、Memoryも意思も統一されている。
独自の意思とかegoとか、自分同士で会話等も無い。
「Van -samaがこんなに沢山……これだけ居れば、一人連れて行っても大丈夫ですわね」
「いや、距離的な制限があるので勘弁してください、Tarea」
今の所、魂のあるmain bodyから大体数十meterまでがCloneを維持する限界距離だ。【Long-distance Control】skillのlevelが上がれば、もっと距離を伸ばせるだろう。
殺人事件のalibi作りも完璧だ。……役立てる前に、「こんな事が出来るお前なら、犯行も可能だろう」と強面の刑事に決めつけられる未来しか見えないのは、Vandalieuがマイナス思考だからだろうか。
「そろそろシャーベットを配りましょうか」
「わーい、シャーベット!」
「わーいっ」
「あ゛ぁぁい゛」
PauvinaやBildeの娘のVahbi、Basdiaの娘のJadal達年少組がdessertの登場にtensionを上げる。
Rapiéçageもそこに含めて良いか、ちょっと微妙だが。
何はともあれ、Vandalieuにとって六ageの夏、Talosheimでは平和な時間が流れていた。
《【Abnormal Condition Resistance】、【Strengthen Follower】、【Soul Break】、【God Slayer】、【Cooking】、【Long-distance Control】、【Spirit Form】、【Parallel Thought Processing】、【Materialization】skillのlevelが上がりました!》
Rodcorteは自分専用のDivine Realmで、Circle of Reincarnation systemのmaintenanceを終えたところだった。maintenanceと言っても、実際は問題が起きていないかどうか見る程度でしかない。
彼のsystemは、少々の問題なら自動的に解決できる程高度な完成度を誇っているからだ。
ふと、そろそろOriginでReincarnatorの一人でも死ぬ頃だろうかとか、LambdaでVandalieuに接触した者が居ないかどうか念のために視てみるかとか、そんな事を思った時だった。
Circle of Reincarnation systemから警報が鳴り響いたのは。
「何だと? BAKANA、先程まで何の問題も無く……魂が消滅したのか!?」
十万年以上起きなかった大事件に、Rodcorteは驚愕しながらも素早くsystemを調整して行く。
魂の消滅とは、それがたとえ一つだとしても大きなimpactをsystemに与える。なんといっても、死後にreincarnationするはずの魂が消滅すると言う事は、そのまま放置すれば魂の無い赤子が産まれる事になるからだ。
単なる死産とは違う。魂が無いだけで、脳は通常通り動くしheartは動いている。そして成長するのだが、その過程でReincarnationの環を潜っていない霊がbody partに入り込んでFusion、勝手にreincarnationしてしまう等、予期せぬ事態が起こりかねない。
systemはそれを防ぐために消滅して空白に成ったreincarnation先に、他の魂を代わりに配する。だが、それをするとまたreincarnationする魂の無い赤子が出来てしまう。
それを繰り返す内に深刻なsystem errorやBugが発生するのだ。
放置しておけば、前世のMemoryを持ったままの赤子や妙な特殊Ability者が増産される事になりかねない。
「むぅ、消滅した魂は二つか」
応急処置をしながら、Rodcorteは消滅した魂を調べる。
Bormack Gordanと言うHumanの魂は、まだ良い。既にAldaから死後Heroic spiritや神として迎え入れたいとの申請があったので、既にsystemから外してあるからだ。Aldaはご愁傷-samaだろうが、消滅してもsystemには直接的なimpactは無い。
しかし、RileyというHumanの魂の消滅はsystemにDamageを与えていた。
「一体どうした事だ? Demon Kingがrevivalでもしたのか?」
魂が消滅したため、RileyとGordanのrecordを見る事は出来ない。仕方がないので、Rodcorteは二人に近い者達のrecordを探った。
遠征軍に参加していた将兵やGordanが率いていたCleric-warrior達がUndead Transformationする前、そしてBalcheburgのSoldierやadventurer達のrecord。
そして、驚くべき事実に行きつく。
「これは……Undead Transformationしたのか。それも、あのAmamiya Hiroto、Vandalieuが原因で」
Death-Attribute MagicがUndeadを作れる事は知っていたが、Rodcorteが見たのは想定していたよりも大規模だった。それ自体は驚くには値しないのだが……。
「どう言う事だ? 私のCurseを受けて、何故これ程の力を? OriginでUndead Transformationした当時程ではないが、このままではそれに迫るかもしれん。それにこのManaの量は、定命の者に許された限界を超えているぞ」
Experience Pointはin any case、Jobには就けないはずと思っていたRodcorteは、自分のCurseに大きな穴が空いていた事に気がついた。
これは彼がLambdaのJobとskillのsystemについて、あまりに無関心だった故の穴だった。その上、そのCurseが大きな『マイナス点』と成り、結果Vandalieuの魂に更に大きな余白部分、『Empty Frame』を与えてしまい、Originに存在していた時よりも大量のManaを与えてしまっている。
だがJobやManaよりも問題なのは、魂が砕かれた事だ。
「まさかVandalieuがDemon Kingと同質の力を持っていたとは。これは拙い……」
このままVandalieuが魂を何十何百と砕き続ければ、それだけでsystemは甚大なDamageを被る。それでもDecayする事は無いが、数え切れない不具合が生じる事だろう。
もしVandalieuが自暴自棄になり、短期間で数万の魂を砕けばLambdaではCircle of Reincarnationが起こらず、新生児は産まれず死者だけのworldになってしまうかもしれない。
「早急に手を打たなければならないが……」
Rodcorteに打てる手は限られている。自らAdventするなんて危険な真似は出来ない。Alda達に頼むにしても、あのworldの現状から考えると、頼りになるか不安が大きい。それに、今進めているReincarnatorを送り込む試みを知られるのも、拙い。
systemに干渉し、優れた魂から直属の「Familiar Spirit」を作るにしても、その優れた魂と言うのはすぐに手に入る訳ではない。
やはりOriginのReincarnatorが死ぬのを待つしかないか?
「仕方ない……幸い、魂を砕く事に制限があるのか、それとも自らにruleを定めているようだ。そうでなければ、これまで砕かれた魂が二つだけと言う事は無い。
その間に、OriginのReincarnatorがここに来るのを待とう」
「kaa-san、Messaraが【Evil God of Bone Fangs】と【Evil God of Lewd Skin】、【Evil God of Decayed Flesh】、【Evil God of Viscera】と言う四柱の神と契約すると、色々出来るって教えてくれました」
『あのー、Vandalieu? そう言うKami-samaと契約するのって、危険じゃないかなーって、kaa-san思うのね』
「そうですね。まだbloodの担当の神に心当たりがないし。
じゃあ、やっぱりHomunculus Creationの禁呪にしますか? これはMage guildの禁書庫を探らないといけないからまだ手が出ませんけど」
『ええっと、それって実行するとAldaからDivine Punishmentが下るって言われてるけど……』
「んー、やっぱりResurrection Deviceか。まだ直せないんですよねー」
その頃Vandalieuは、藁半紙作りを試みながらDarciaと彼女のrevivalについて話し合っていた。
《【Taboo Name】のsecondary nameを獲得しました!》
「おや?」
何か増えたけど、意味が分からないので放置した。
・Name: Vandalieu
・Race: Dhampir(Dark Elf)
・Age: 6age
・Title: 【Ghoul King】 【Eclipse King】 【Taboo Name】(NEW!)
・Job: Venom Fist User
・Level: 9
・Job History: Death-Attribute Mage、Golem Transmuter、Undead Tamer、Soul Breaker
・Ability Values
Vitality: 168
Mana: 328,119,451
Strength: 117
Agility :114
Endurance :108
Intelligence :758
・Passive skills
Mysterious Strength:2Lv
Rapid Healing:3Lv
Death-Attribute Magic:5Lv
Abnormal Condition Resistance:7Lv(UP!)
Magic Resistance:1Lv
Dark Vision
Mental Corruption:10Lv
Death-Attribute Charm:6Lv
Chant Revocation:4Lv
Strengthen Follower:8Lv(UP!)
Automatic Mana Recovery:3Lv
Strengthen Subordinates:4Lv
Venom Secretion (Claws, Fangs, Tongue):1Lv
・Active skills
Bloodsucking:6Lv
-Surpass Limits-:5Lv
Golem Transmutation:6Lv
No-Attribute Magic:4Lv
Mana Control:4Lv
Spirit Form:6Lv(UP!)
Carpentry:4Lv
Engineering:3Lv
Cooking:4Lv(UP!)
Alchemy:3Lv
Unarmed Fighting Technique:4Lv
Soul Break:5Lv(UP!)
Multi-Cast:4Lv
Long-distance Control:5Lv(UP!)
Surgery:1Lv
Parallel Thought Processing:4Lv(UP!)
Materialization:3Lv(UP!)
Coordination:1Lv
High-speed Thought Processing:2Lv
Commanding:1Lv
Farming:2Lv(NEW!)
Clothing Decoration:1Lv(NEW!)
・Unique skill
God Slayer:2Lv(UP!)
・Curse
Experience gained in previous life not carried over
Cannot learn existing jobs
Unable to gain experience independently
・Title explanation::Taboo Name
複数の勢力の、一定以上の発言力を持つ存在に認知され、それでいながらsecondary nameを付けない-samaに注意された存在が獲得するsecondary name。
Vandalieuの場合God of Law and Life AldaやそのSubordinate God、Amid Empire Emperor Mashkzar、Pure-breed Vampire三名が彼にsecondary nameを付けないよう注意したために獲得した。
具体的な効果は無く、最低でも国家規模、最大でGodsに恐れられ、忌避されている事を表す。
そのためこのsecondary nameを獲得している事を知られると、超危険人物であると解釈される事が多い。
secondary nameを付けないよう注意していた存在がそれを止め、相応しいsecondary nameで呼ぶようになるとこのsecondary nameは消失する。