夢現に、微睡むVidaは自分が瞼の裏に映る夢を見ているのか、それとも目を開いて妄想を見ているのか、分からなかった。
いくら全知全能ではないと言っても、本来なら神である彼女がこんな情けないconditionにあるのは、十万年前のAldaとの戦いが原因だった。
(十万年、もっと、前……)
このworldに誕生したVidaは、生命attributeの力をworld中に行き渡らせ、何時しかGoddess of Life and Loveと呼ばれ人々に称えられるようになった。
あの時は全てが平和だった。何もかもがとても緩やかで、穏やかだった。
しかしそれはDemon Kingの襲来と共に破られてしまう。Vidaはanother worldからの侵略者であるDemon King Armyと、他のGods同-samaに戦うしかなかった。
そんな時、Zuruwarnの提案でanother worldからChampionを召喚する事になった。彼女は賛成し、Aldaが反対したが、結局上手い具合に纏まり、七人のChampionを召喚する事になった。
そのanother worldの神にも了解を貰ったが、唯一Circle of Reincarnationを司るRodcorteだけは強硬に反対し続けた。だが口しか出さない神の言葉に耳を貸す者は居なかった。
そして彼女が選んだのは町工場で首を吊ろうとしていた青年、Sakato Keisuke。後のZakkartである。
「ああ、女Kami-samaがお迎えに来た。親父、お袋、今逝くよ」
『止めて逝かないでお願いだから!』
(あの時は慌てたわね、かなり)
何でも「ギンコウ」と言うorganizationに裏切られて経営していた工房が廃業に追いやられたため、自殺しようとしていたらしい。
それならこのworldに未練も無く、気持ち良くChampionになってくれるかなとVidaは思ったが、坂戸はそこから謎の拘りを発揮した。
「ええっと、じゃあ特別な力とかそう言うの、くれます?」
『certainlyよ』
Championに選んだHumanに力を与える事は、既に既定路線だった。寧ろ、何も与えずにanother worldから招くと、最悪死んでしまう。
worldが異なると言う事は当然物理法則が異なるし、空気の成分だって異なっている。Lambdaと坂戸達のworldは、それ程違いは無いが、何の調整もせず連れて来れば空気中に漂うManaのimpactで寿命が縮むか妙な怪生物に変異してしまう可能性があった。
それを防ぐために魂に調整を施すのだが、それが結果として俗にいう「Championの力」に成る。そして調整を施す事が出来る魂の『余白部分』がどれくらいあるかが「Championの素質」と呼ばれる。
……専門家であるRodcorteが協力してくれたならこの調整もかなり自由が効くのだが。
後、Zuruwarnが繋げたこの『EARTH』と言うworldはmagicが存在せず、住人は誰一人Manaを扱う事が出来ない。更に、剣や槍で戦う事が出来る者は極少数で、住人達の中に個人としての戦闘AbilityでDemon Kingやその軍勢と戦える水準にある者は存在しない事が既に解っていた。
まさか『EARTH』の兵器も持って行くわけにいかない(物理法則が異なるので、そのまま持って行くと確実に一度使っただけで壊れるか、暴発若しくは爆発する)ので、各Champion達に力を与える事になっていた。
だから求められなくてもaction映画の中のprotagonistを雑魚扱いできるbody part Abilityや、magicへの適性、Champion専用の強力な装備品などを渡す予定だったのだ。
しかも、Lambdaには既にRicklentが作ったJobやskillのsystemが実装されている。
経験を積めば、想像を絶する力を手に入れる事だろう。
「じゃあ、Production related Cheatでお願いします」
『……は? いや、今戦争中なんだけど』
何故か坂戸は『Production related』なるものに強い拘りを示した。普通、そこは剣でバッタバッタと敵を倒すような力とか、大magicを自在に行使できる力とかを望むものではないだろうか? 寧ろ、そういうChampionを私達は望んでいるのよ?
そうVidaが訴えても、坂戸は頑として譲らなかった。
「俺、ケンカweakんで」
『だから強くして上げるって!』
「でも、宝の持ち腐れになるような気がして……運動音痴だし」
『はぁ……Production Cheatって言っても、私は生命attributeのGoddessだからFarmingとか、畜産とか、林業とか、木工とかになるけど、それでいい?』
仕方ないので、Vidaは折れる事にした。流石に何日もかけている時間は無いし、他のCandidate者の当ても無かったし。
「ぜひお願いします、工業とかは、これでも頭に入ってるんで」
こうして坂戸は当初の予定とは違う、個人戦闘AbilityよりもProduction力や技術力に重きが置かれたChampionとしてLambdaに招かれた。
こんな妙なChampionを招いたのは自分だけだろうなと肩を落としたVidaだったが、意外な事にRicklent、Peria、Botinの三神が選んだChampionも「Production related Cheat」希望だったらしい。
七人中四人がProduction related希望とは、『EARTH』のChampion像は自分達が思い描いたものと根本的に異なるのだろうか? そう首を傾げたものだった。
AldaやZantarkは、もっと真面目に選べと怒っていたが。
その後は、激戦に次ぐ激戦だった。
幾つもの島が沈んだし、国が滅び、Shizarionは魂を砕かれてしまった。それでもVidaと坂戸を含めたChampion達は懸命に戦い、幾柱もEvil God (M)やEvil God (P)を倒しては封じ、何とか戦況は互角のconditionを維持していた。
そしてそこから坂戸……Champion達のleadershipを執るSuzuki Shouheiに勧められ、渋々Lambda風にnameを改めたZakkartは、頭角を現した。
「このworldの神やHumanがDemon King側に寝返るって事は、逆もあり得るはずだ!」
そうぶっ飛んだ事を言い出して、Demon Kingに従うEvil God (M)やEvil God (P)にHead huntingをかけたのだ。
「Zakkart、何を考えているんだ! 奴らは存在そのものが悪! 改心するなんてありえない。そもそも、奴らが今まで罪も無い人達に何をしてきたか忘れたのか!?」
『その通りだ。もし奴らがこちら側に寝返ったとしても、それはTrapか浅ましい命乞いに過ぎない。そもそも、罪を犯した存在に罰を与えず引き込むなど、考えられない暴挙だ』
『お願いだから正気に戻ってーっ!』
Bellwood、Alda、そしてVidaにまで止められてもZakkartはHead huntingを止めず、それどころかChampion達の内同じProduction relatedを望んだ者達が積極的に協力し始めた。
そして信じられない事に、Demon King Army全体の中では大した位置に居なかったものの、十柱以上のEvil God (M)やEvil God (P)を寝返らせる事に成功してしまった。
「いや、こう言うの戦争だとよくあるだろ?」
『うそぉおお!?』と驚くVidaに、Zakkartはけろりとした顔でそう言った。
寝返ったGodsは直接戦闘力に秀でている訳では無かったが、裏切り者が出た事によってDemon King Armyには予想以上の衝撃と動揺が走ったらしい。
Demon Kingはcharismaと言うよりも、圧倒的な力と魂を砕く事が出来る秘技によってReignしている存在だった。中にはその力を崇拝する者もいたが、多くの配下はDemon Kingを恐れて、若しくは自分の利益のために従っているだけに過ぎなかった。
そんな中出た裏切り者の存在は、Demon King Armyに「Demon Kingの力が弱まったのでは?」「奴らが寝返ったのは、Champion達にDemon King -samaを倒す事が出来る何かがあると確信したからではないのか?」と言う疑念を浸透させた。
そしてDemon Kingに対しては、他の部下も自分を裏切るのではないかと疑心暗鬼に陥らせる事に成功した。
鉄の結束を誇ったDemon King ArmyはCoordinationを乱し、更に寝返る者が出始め、互角だった戦況はChampion側に傾きつつあった。だがまだ油断は出来ない。Demon King Armyが結束を取り戻す前に攻めきる必要がある。
そんな状況でZakkartは「another worldの兵器」の製造を始めると宣言した。
「俺達の知識と技術、そしてmagicがあれば、『EARTH』の近代兵器をこのLambdaで作れるはずだ!」
そしてその兵器によって、Demon Kingを倒そうと唱えた。これにはDemon Kingが厄介な特殊Abilityの数々を持っていて、普通の手段では倒すのが難しいと言う理由があった。
あらゆるmagicをNullification化するBarrierとあらゆる物理攻撃をNullification化するBarrier、異なる二つのBarrierを同時に張ってIron Wallの防御を張り巡らせる。
そのせいでChampion達の中でも最も戦闘に優れたBellwoodの振るうHoly Swordも届かず、Godsの攻撃すら止められてしまう。
そのBarrierを貫き、Demon KingにDamageを与える方法をZakkartは思いついたのだ。
「Demon Kingはanother worldから来たと言っても、『EARTH』のような科学文明が発達したworldを知らなかった。そこを突けば行けるかもしれない」
Demon KingのBarrierを調べたZakkartはBarrierが『攻撃を弾く硬い壁』では無く、『energyをAbsorptionする膜』のような性質のものだと気がついた。
そして同時に張られた対物理、対magicのBarrierはお互いに何の作用もしない、独立したものだと言う事もthrust止めた。
つまり対物理のBarrierがAbsorptionしきれない程超強力な物理攻撃で破られると、対magicのBarrierはそれを全く止めず素通しにしてしまう。
Demon Kingに攻撃を届かせるにはBarrierの内どちらか一つ貫けばそれで十分。
だから『EARTH』の近代兵器と、「指定したWeapon Equipment一種類からのDamageをNullificationにする」Zakkartの力を、「同じChampionの力を一日に一度Copyする」Bellwoodの力でCopyし、「EARTHの近代兵器」を指定。
その後、兵器に対して無敵と化したBellwoodと、「EARTHの近代兵器」で同時に攻撃。
Demon Kingの対物理Barrierを貫き、そのままDemon Kingを倒す。そのtacticsを立案した。
しかし Bellwoodはそのtacticsに強硬に反対した。Zakkartが作ろうとした兵器が、『EARTH』では使用すると環境に取り返しがつかない傷跡を残すと問題になっていたからだ。
目に見えない毒が、広範囲に撒き散らされ何万年も残留する。恐ろしい兵器だ。
「Zakkart、-kunは正気か!? この美しいLambdaにDemon Kingに替わる災厄を残すだけだぞ!?」
「災厄を残すも何も、このままだとDemon Kingに全て奪われるんだぞ! それに、このworldにはEARTHと違ってmagicがあるし、別にworld全てが汚染される訳じゃない。Demon Kingが今居座っているContinentだけだし、もうあそこにはHumanは一人も居ないじゃないか」
「だが、あのContinentから避難してきた人達が居る! 僕達と一緒に戦う義勇軍に、彼らは加わっている! -kunは、故郷を取り戻すために命を懸けている彼らに言えるのか? Demon Kingを倒しても故郷は永遠に戻って来ないと!」
「……彼らには悪いとは思う。思うが、犠牲を覚悟しなければ勝てない。
それにSuzuki、お前は俺が『EARTH』の兵器を作るのが気に入らないだけじゃないのか?」
そして兵器の使用に賛成するZakkart達Production related Champion四人と、反対するBellwood達戦闘系Champion三人に別れてしまった。
originally両者は何かと衝突しがちで、譲らないBellwood達に不満を唱えるProduction related Champion達を「まあまあ、助けあわないと勝てないから」と宥めていたのがZakkartだった。
だが流石に彼も今回は堪りかねたらしい。
Godsの内AldaやZantarkはBellwood達の、そしてVidaやZuruwarn、RicklentはZakkartの意見に賛同した。
Vidaは兵器が及ぼす汚染も、自分達Godsが力を尽くせば数千年か、上手くすれば数年もかからずに消せる自信があった。
それに避難してきた者達には悪いが、既にあのContinentはDemon King Armyによって毒の湖や砂漠、monsters化した菌類の森等汚染されている。ある程度は諦めるしかないと思っていた。
しかし Alda達は「今までこのworldに存在しない毒を、本当に浄化できるのか? もしその毒とこのworldのManaが結び付き、新たな災いと化したらどうする? そんな危険な奇策を用いずとも、このまま行けば勝てるはずだ」と主張した。
戦況がこちら側に傾いていた事も、揉め事を起こす余裕を作る原因となっていた。
そんな中Zakkartは戦闘系Champion達と彼らに賛同したGodsの意見を変える為、『EARTHの近代兵器』を作り始めた。accurateには、その兵器がもたらす毒を作り始めた。
本来のそれよりもずっと少量で薄い毒を作り出し、このworldのmagicやGodsの力で浄化できるか否か、出来たとしてどれくらいの時間が必要かを計ろうとしていたのだ。
その作業には他のProduction related Champion達も協力し、Vida達はその間もAlda達の説得を続けた。
そんな時だ、Demon King Armyが突然攻勢に出たのは。
Demon Kingは軍を二つに分けて、犠牲を厭わない大攻勢をかけて来た。一つは、Bellwood達が居る義勇軍の拠点に突っ込んでくる、Demon Kingが直接Commandingする大軍勢。
もう一つは、Zakkart達が居た兵器製造工房に攻め込むDemon Kingの側近が率いる少数の軍。
Bellwood達は義勇軍と自分達に向かってくるDemon Kingを倒すために受けて立った。VidaはZakkart達の元に救援に向かおうとしたが、Alda達に引き止められた。
「Zakkart達もChampionだ。少々の軍勢ぐらいなら自分達で対処できるだろう。寧ろ、返り討ちにしてこちらの援軍に来るはずだ。
何より、Demon Kingを倒す事を優先すべきではないのか?」
(あの時は、Aldaの言葉が正しいと思った。だから……けど……)
そして、Bellwood達は大軍勢を退けた。ただ、その軍勢を構成していたのは数だけが頼りの雑魚か、耐久力とDefense Powerに特化した足止め用のmonstersで、率いていたDemon Kingは偽物だった。
そしてZakkart達は、下Classのmonstersに化けていたDemon Kingによって魂を砕かれ工房は破壊されてしまった。
「これで我に勝てるChampionは滅びた!」
Demon King GuduranisはZakkartの魂を砕いて高らかにそう宣言したと言う。
Demon Kingは、Bellwood達よりもZakkart達の事を評価し、恐れていたのだ。彼らの練った策が、何時か自らの命に届くのではないかと危惧していた。
だから、多数の犠牲を出してもZakkart達を倒す事に拘った。決して蘇る事が無いように、魂まで砕いて。
VidaやRicklent達は、何とかZakkart達を蘇らせようとした。砕けた魂を繋ぎ合わせて、どうにかrevivalさせようと試みようとした。
だがその時にはRodcorteが既にZakkart達のsoul fragmentを回収していた。
「私のCircle of Reincarnation systemに含まれない魂がLambdaで勝手に蘇る、それも砕かれたfragmentを継接ぎして出来た魂ではどんな不具合がsystemに発生するか分からない。
出来れば元のworldに戻したかったが私には管轄外のworldに干渉する力が無い。そのため私が四つ分のfragmentを使い一つの魂に修復後、私のsystemに流しておいた。これも中々boneだったが、予期せぬerrorやBug程ではない」
既にZakkart達の魂は、Vidaの手が届かない所に行ってしまった。
BellwoodはHoly Swordを掲げて、宣言した。
「彼らの事は残念だと思う。だが、彼らの為にも僕達は僕達の力でDemon King Guduranisを倒し、このworldを救って見せる!」
(それからの事は、思い出したくない事ばかりが続いたわね……)
結果から言えば、Bellwoodは勝利した。このLambdaは救われたのだ。
だが、犠牲が多すぎた。
Bellwood達戦闘系Champion三人は生き残った。しかし、GodsはAldaとVida以外の十一神は死に等しい程力を失った。
Bellwood率いる義勇軍は、誰も生き残らなかった。
Demon Kingが居城にしていたContinentを含め、幾つもの汚染された地域が残った。その多くは、十万年経った今でも浄化されず、汚染された地域は『Devil Nests』と呼ばれ広がっている。
そして生き残った人々はHuman、Elf、Dwarfの全てを合計しても三千を越えなかった。
「確かに犠牲は大きかった。でも、僕達は生きている。前に進まなくちゃいけない。どうか協力してください、未来のために」
その上でそう訴えるBellwoodの手を、Vidaは拒絶した。
(時間は巻き戻らない、失ったものは後悔しても戻って来ない。犠牲に報いるためにも、手を取り合うべきではないのか。
そう言うAldaの言葉自体は間違っていないと思う。でも、私はもう彼らが信じられなかった)
犠牲を出さないのではなかったのか?
確かにZakkartの策を実行していたとしても、それでDemon Kingを倒せた確証は無い。でもBellwoodは彼の意見に耳を貸すべきだったのではないのか?
『黒色火薬』や『火縄銃』の時も、『地雷』の時も、『蒸気機関』の時も、BellwoodはZakkartに反対し、彼の案を止めさせた。
確かにZakkartの考えていた事は、「危険」で使い方を間違えればこのworldにとって「災い」に成る。Vidaも彼のideaを聞いて、そのまま実行しては危険だと話し合った事は数え切れない。
だが、それでも話し合ったのだ。頭ごなしに否定はしていない。
それに、Demon Kingが攻め込んで来た時の事を思うとどうしても疑念が捨てられない。
(BellwoodやAldaは、Zakkart達を故意に見捨てたのではないの?)
Demon KingのTrapに故意に騙されたのではないだろうか?
証拠は無い。ただの妄想だと言われれはそれまでだし、Lambdaとは関わりの無いanother worldからやって来てこのworldのために命がけで戦い、そして遂にDemon Kingを倒したBellwoodに対して、あまりにも恩知らずだと彼女自身も思う。
しかし、彼らを信じる事は出来なかった。
それ以上にVidaはRodcorteが信じられなかった。あの神にとって重要なのは、自らが管轄するworldでCircle of Reincarnationする魂であって、それ以外は関心すら無いのだろう。今回の事も、「Demon Kingに勝って良かった」としか思っていないだろう。
もしDemon Kingが、「このworldにoriginallyいた神の代わりにお前が望むだけHumanを増やすから、手を貸せ」とdemandしたら応えたのではないだろうか。そう思えて仕方がない。
そしてZakkart達Production related ChampionのLostはVidaだけでは無く、Lambda全体にとって大きかった。
彼らがDemon Kingに滅ぼされた後、再びDemon King側に傾いた戦況で戦うためBellwood達は厳しい戦闘を繰り返す事になり、櫛の歯が欠けて行くように神や義勇軍、そして守っていた避難民からも多大な犠牲を出してしまった。
そして今も、Bellwood達は荒廃したworldを復興させるのに苦戦している。力が戦闘に特化しているため、Demon Kingが残したmonstersは退治出来ても、Farmingや製造業ではただの素人でしかないからだ。
だからこそ彼らはVidaの協力を必要としたのだろうが……。
(私は、彼らに協力するのとは別の決断をした)
Vidaはこのworld独自のCircle of Reincarnation systemを構築し、更に今のmonstersが跋扈するworldでも生き残れる新たな「Human」をCreationする事を考えた。
そしてworldを再建復興し、Alda達と合流しようと。
例によってAldaもBellwoodも反対したが、それはもう予想していた事だった。
(でも、私の試みが成果を出せば認めてくれる。私の言葉が届かない彼らを納得させるには、それしか無いと思ったのよね)
だから、Alda達の言葉に耳を貸さなかった。多少の意趣返しが無かったかと聞かれれば、否定できないが。
そしてVidaは数々の新raceを産み出した。そして、残っていたZakkartの遺体にVitalityを注ぎ込み、Undead Transformationに成功した。
完全な蘇生を目指したが、試みは尽く失敗したからだ。やはり魂が手元に存在するか、死そのものを司る存在が共に居なければ生死を逆転させる事は不可能だった。
だから僅かに残っていた残留思念で動く、ZakkartのMemoryと知識を断片的に持つ人形しか出来なかった。
(それでも彼は怒らないと思う。使えるものは何でも使うべきだって、口癖のように言っていたから)
そしてVidaは自分のSubordinate Godに加わった元Evil God (M)や元Evil God (P)の協力を得て、Demon Kingが残したCircle of Reincarnation systemを模倣して、独自のsystemを作り上げた。
だがこれはRodcorteのsystemを模倣したDemon Kingのsystemの模倣に過ぎない為、動きはするがerrorやBugが常に発生する、危なっかしくて目が離せない代物だった。
やはりどんなにいけ好かなくても、Rodcorteはその道の専門家なのだと思い知らされた。
(でも諦めたくはなかった。私は、協力者を募った。そして彼等との間に新たなraceを創り出し、そして生まれたchild達の魂をsystemに乗せた)
Vidaはsystemを改善するのに必要なのが、経験であると思った。そのためには最初は不自由をさせてしまうだろうが、実際に自ら生み出したchild達にこのsystemの環を潜らせ、そして新たに産まれて貰う事が必要不可欠だった。
だが幸いな事に、その時点では不完全なsystemは不完全也に順調に動いていた。
Vidaが新たに生み出したchild達も、順調に数を増やしていた。
(Demon Kingのsystemを模倣したせいか、予想を超えて寿命が長くなったり強かったりするし、Rank upして姿が大きく変わる子もいるけど、originally強い子を増やすつもりだったから、良いかなって思っていたのよね)
良くなかった。もっと早くAlda達と話し合いのtableに就くべきだったと気が付いたのは、AldaがChampion達と共に攻めてきた時だった。
本来ならとっくに寿命を迎えているはずのBellwood達を、Aldaは「worldの為に必要だ」と若さを維持させていた。
Aldaには、主神が滅び、若しくは眠りに着いた後彼を支持するSubordinate GodやFollowersが、Vidaには彼女の側に着いたGodsと彼女が産み出した子等が従い、それぞれの陣営に別れて戦った。
そして、負けた。やはり、Championがいるか居ないかが命運を分けたのだ。
そしてZakkartの知識を生かして作られた、Vidaのchild達の都は滅ぼされた。VidaはAldaにDivinityを奪われ……神としての権限を剥奪され、深い傷を負った。
それでも残された力を振り絞って生き残っていた子等を出来るだけ連れて、 Bahn Gaia continentの南部に高く険しいMountain Rangeを創り出し、子等のShelterにした。そして、倒れ眠りについた。
(あれから、どれくらい経ったのだろう?)
一万年か、二万年か、それとも百万年か。分からない。分からない程しか、力は戻って来ていない。
Aldaには同格のVidaに回復不可能な傷を与える力もAbilityも無いはずだが、どうやら彼らは神の力の源であるbelieverを……Vidaに祈りを捧げる人々が増えない-samaに、滅びる-samaに仕向けているようだ。
今、Vidaに協力したGodsは全てDivinityを奪われ眠りについているか、細々と潜むように信仰されている。Talos達が無事なのかは分からない。子等の中でも力のあるVampire達は、未だこのworldを苛む者達の誘惑にloseしまった者が少なくない。
(何故こんな事になったのだろう? 何故Aldaはこんなにも苛烈で、残酷な事をし続けるのだろう?)
もうDemon Kingは存在しないのに、彼らは彼らなりに償おうとしているのに、Demon Kingを裏切ってallyをしてくれた元Demon King Armyの神を、何故憎悪し続けるの? 償いの機会を引き裂いて無にしてしまったのはあなた自身なのに。罪人に償う事を、償い終った者は罪人ではないと教えているのは、貴方なのに。
何故そんなに『EARTH』の知識や技術を嫌うの? 他でもないこのworldは『EARTH』から私達が招いたChampion達のお蔭で今も存在しているのに。
何故私の試みを咎めるの? Rodcorteを誰よりも信じなかった、疑っていたのは貴方なのに。
何故私の子等を滅ぼそうとするの? その隙をついて真に邪悪なGodsが貴方の懐に巣食っている事に何故気がつかないの?
このままでは誰も彼も疲弊して、ただただ荒廃して行くだけなのに、何故?
分からない、分からない、分からない。
そんな時、Vidaの脳裏にある予知が過ぎった。隣でsleeps Zakkartの遺体のimpactか、ほんの少し彼女の力が回復したのか、それとも何処かで力を蓄えているRicklentやZuruwarnが力を貸してくれたのか、それは分からない。しかし、あれは予知だった。
(帰ってくる。このworldに、何故かは分からないけれど、このworldにZakkartが……啓介達が帰ってくる!)
砕かれた四人のChampionのsoul fragmentをRodcorteが無理矢理繋ぎ合わせ、systemに流した魂がこのLambdaに戻ってくる。
(でも……)
予知では、reincarnationした彼が悲惨な環境に産まれ、無力感に苛まれ自ら命を絶つ所までが見えた。それも、あのRodcorteの差し金で。
『それは、いけない』
とてもそのまま見過ごす事は出来なかった。
今の彼に当時のMemoryはfragmentも残っていない。人格も全く別のものだ。だけど、放置する事は出来なかった。
思えば、啓介達には何もしてやれなかった。何も報いる事が出来なかった。
だからその分を、ほんの少しでも報いよう。
そう思ったVidaは、幾つかOracleを下した。自分の声を聞いてくれる者が残っているか不安だったが、届いたようだ。
そして予知が現実になった時、Vidaは力を振り絞った。伸ばした手があまりに非力で情けなさに心が挫けそうになるが、それでも手を伸ばした。
このworldに降りてきた魂に手を添えて掬い上げる。その過程で、魂には厄介なCurseが三つも付いている事に気がついた。
『Rodcorte……!』
Curseを解く事はとてもできない。しかし Vidaは落胆を覚える前に、魂の特異性に気がついた。
Lambdaに無い、しかし妙に覚えのある特殊なattributeのManaを帯びている事、そして魂の余白部分が異常に多い事。
『そうか、Champion四人分の余白だものね。それにRodcorteが無理矢理継接ぎしたから、余計に余白が増えたのね。
それにしても余白が多すぎるけど、この余白の部分に彼がCurseに負けない-samaに力を……あら?』
最初は自身がかつて司っていた生命attributeの力を宿らせようとした。しかし、魂が既に帯びている特殊なManaがそれを飲み込み、一体化してしまった。
『お、おかしいわね? やっぱり力が落ちてるからかしら。じゃあ、私's Divine Protectionを……これもダメなの!?』
blessingsを与えようとしたら、やはりまたあっさり飲み込まれた。blessingsの類は与える対象がその神を信じていなければ、与えるのが難しいのは知っていたが、飲み込まれるとは一体どう言う事だろう?
『ええっと……じゃあ、どうしましょう?』
今Vidaが出来る事は少ない。以前なら特殊AbilityやらCheat Abilityやらを与えられたのだが、今はそれ程の力が無い。無理をすれば一つぐらい与えられるかもしれないが、それでまた飲み込まれたら目も当てられない。
『よし、こうしましょう!』
VidaはZakkartの遺体から僅かに残った残留思念を掬い上げた。そして、その残留思念に傷口から滲む自分のbloodを包む。
そしてそれを魂に加えた。すると、originally一つの魂だったからか、今度はManaに邪魔されずに一つになった。
『これでこの魂は私の祝福を受けた。不幸なDestinyが、少しは良く成る筈。それに彼の成長には、壁はあっても限界は無くなる。新しいJobが出やすくなるし、彼の周りの人達もimpactを受けるはず。
まあ、肝心のDestinyの方は悪運が強くなる程度だけれど。
でも、このMana何処かで……いえ、まさかね』
そしてVidaは魂を自身が作ったsystemに流す。彼は魂の相性の関係で、VampireかDhampirとして生まれる筈だ。そして、今のVampire達の殆どは普通にchildを作らないから、maybe Dhampirに生まれつく事だろう。
生まれついた環境は、もしかしたらVidaが手を出す前よりも過酷で、残酷なものになるかもしれない。
『後は、皆がOracleを聴いて行動に移してくれれば……ごめんなさい、こんな事しか出来なくて』
貴方達は縁も無いこのworldを救うために命を懸けて、魂まで砕かれてしまったのに。こんな事しか出来なくてごめんなさい。
出来れば、このworldを愛して欲しい。
空を、風を、大地を、緑を、動物を、人々を、愛して欲しい。
あれだけ頼っておいて、今もまた期待を背負わせて本当にごめんなさい。
そしてVidaの意識は微睡の中に沈んで行った。