数百の守備隊とLangil Mauvid GeneralやChezare Legstonが残る遠征軍本陣は、混乱conditionに陥っていた。
何故なら、Isla達が正体を隠すのを止めたからだ。
「General! あれはどう言う事です!?」
「き、決まっているだろうぅっ! 【Flight】のmagic itemだ!」
「ならば何故あのmercenary共はSunlightで焼かれているのですか!?」
「貴-samaの見間違いだっ! あれはDhampirが放った毒か何かのせいだ!」
「そもそもあのmercenaryたちは何故変装などしていたのです!?」
「そ、それはっ……私が知るか!」
Chezare達にとってVampireは邪悪なmonstersであり、そんなmonstersが我が物顔で本陣を出入りしていた事実は受け入れ難い。そしてそのVampire達は、Mauvid Generalが特別に参加させたmercenary隊と正体を偽っていたのだ。
しかも、MauvidはIslaを幹部同-samaに扱い、意見を幾つか聴いている。
「き、きっとVampire達が何処かで本物のmercenary達とすり替わったのだ! 私は無関係だっ!」
ここまで揃っていてMauvidの言葉を信じられるはずが無い。
「貴-sama、Vampireと繋がっていたのか!」
「目的は我々を全滅させる事だな! 先ほどmercenary達が全軍に進軍するよう言ったのも、そのためか!」
「貴-sama等っ、立場を弁えろ! 属国の軍人がEmpireのGeneralであるMauvid Earlに逆らうつもりか!?」
「Shut Up Shut Upぃっ! さては貴-samaもVampireと繋がるfake-believerだな!」
最早本陣に「遠征軍」としての形は残っていなかった。あるのは混乱したMauvidと彼がEmpireから連れてきた子飼いの部下と、Chezare達Mirg Shield Nationの軍人と言う二つの集団だ。
(きゅ、Vampire共め! 私を切り捨てるつもりか、だがそうはいかんぞ、私はこんな所で終わる男では無い!)
そしてMauvidは己が生き延びる事を優先して何とかこの場を納めようとし……。
「ええいっ! 今はGeneralの事等どうでもいい! 撤退をっ! 撤退を開始せよ! -dono部隊を編制、敵の脚を止めろ! このままでは皆殺しにされるぞ!」
一方Chezareは、Mauvidの事を脇に退けて遠征軍の撤退を命じた。こうして自分達が不毛な言い争いをしている間にも、敵はSoldier達の命を麦でも刈り取る-samaに奪い続けている。
Gordan High PriestやRileyがまだ持ち堪えているが、このままでは全滅は必至だ。
「本陣の兵を-donoに回せっ!」
「何だと!? Chezare、貴-sama何を言っている! そんな事をすれば我々を守る兵はどうする!?」
「Generalっ、貴方はこの期に及んで何を――」
「Shut Upぃっ! 私の兵は一兵たりとも動か-sanぞ!」
「くっ!」
このまま言い争いを続けていたら、本陣に残ったMirg Shield Nation兵とMauvid子飼いのKnightや兵が殺し合いを始めかねない。数の差で盾国側が勝つだろうが、そんな事をしている時間は無い。
こうなったらMirg Shield Nation兵だけで-dono部隊を編成したい所だが、幾らSoldierと言ってもHumanだ。自分達だけ死地に赴き、宗主国出身の兵は本陣に残るのでは不満が爆発しかねない。
普段ならin any case、今はMauvid Generalの権威がVampireとグルのfake-believerとして地に堕ちている。何故自分達がVampireと組むような奴が撤退するために死ななければならないのか。そう考えるはずだ。
せめてChezareとMauvidの立場が逆なら良かったのだが……。
「ああっ! Vampire共がやられたぞ!」
「Aldaの奇跡だ!」
Light-Attribute Mageが拡大して映しだす戦場の光景に、Islaが敵の女Swordsmanに首をSlash落とされる所が映し出されていた。
実際にはIslaを焼いたのはZadiris達Ghoulのmagicだし、女SwordsmanもNoble-born VampireのEleonoraなのだが、accurateな事情を知らない面々には、光がAldaの奇跡に見えたのだろう。
Chezareも、これで何とか混乱も収まるかと安堵した。
「あっ、Isla -dono……」
顔が蒼白になったのはMauvid Generalや、彼の子飼いの兵達の内腹心だった者達だ。彼らにとってIsla達は、この遠征の命綱だった。
何があっても、それこそ一人一人が一騎当千のVampire達が居れば、特にAClass adventurerでも無ければ相手取る事も難しいRank10のIslaが居れば、自分達の身は安全だ。勝利は約束されている。そう彼らは思い込んでいたのだ。
「も、もうダメだっ、撤退っ! 撤退だぁっ! 私の撤退を援護しろぉっ!」
「しょ、General!?」
Mauvidは何と、本陣から走り出しそのまま逃げようとした。今戦場で殺されているSoldier達も何もかも見捨てて、自分だけは助かろうとしたのだ。
General職に就くLangil Mauvidだったが、彼は勇猛な軍人でも無ければ冷静な戦術家でも無かった。軍事関連に詳しい政治屋TypeのGeneralだった。
Evil God (M)派のVampireから情報を手に入れ、彼らに便宜を図りながら成果を上げて、Finance Lordから-sama々な口実で予算を取って来る。
だから彼自身は碌な武威を持ち合わせていないし、そもそも殺し合いをする覚悟も無い。
戦場での命のやり取りをするのはSoldier共の役割で、武勲は本陣で椅子を温めていれば部下が勝手に持って帰ってくる。
だから普段なら遠征軍の司令官などにはならないのだが、Isla達の力や、彼女達にとっての自分の価値を過信するあまりにこの話に乗ってしまったのだ。
「総員撤退! 私を守れぇっ!」
「General……いや、最早Generalでは無い!」
口から泡を吹かんばかりの-sama子で走り出すMauvidの背に向かって、Chezareは矢を射させようとした。
逃亡罪で彼を処理するためだ。あんな化けの皮が剥がれた無能もそれに従う兵も居ない方が助かるが、あれでも名目上は総司令官だ。総司令官が逃げ出した事が広まれば、もう遠征軍は軍としての体裁を保てない。バラバラになって我先にと逃げだし、そして追っ手かmonstersに殺されるだろう。
それは避けなければ。
「弓へえ゛っ! Langilを敵前逃ぼげほっ! ごほっ、ごほほっ!」
だが、言い終える事が出来ずに咳き込んでしまった。喉が痛み、掠れ、とても声を出す事が出来ない。
霞む目で見ると、何時の間にかMauvidは倒れていた。いや、Mauvidだけでは無い、彼の子飼いのKnightも立っていられずに倒れている。他の遠征軍幹部達もstomachの中身をぶちまけるか、鼻水と涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら苦しみ悶えている。
(これは、まさかっ!)
『ここが本陣だっ!』
「幹部は皆殺すっ! Kingの命令っ、特にGeneralとNobleは顔が分かるように殺す!」
「俺達は逃げた奴らを追う!」
Chezareが咳き込みながら何とか立ち上がろうとした時、本陣の天幕を破って黒装束のUndead Giantや、口元を布で隠した黒いGoblin、RaptorにMountしたKoboldに似たmonstersが突入してきた。
彼らの内一人、Undead Giantが、まだ生きているが手足を落され息も絶え絶えのSoldierを片手に下げているのを見て、Chezareは何が起きたのかを理解した。
『早速一人ィ!』
妙な形の両刃のknife……Dataraに特注したクナイでChezareを刺殺したZranは、感染源にするために携帯性を向上させて持ってきたSoldierの首を圧し折ると、既に他の遠征軍幹部に止めを刺し終えたBraga達Black Goblinに指示を出した。
『行くぞお前等! これが俺達ninja部隊の初陣だ! 派手に戦功を上げろ! 手柄を上げた奴には、Mikoから褒美が出るぞ!』
「俺はハチミツ!」
「ワタシは天ぷら!」
Zombie ninjaにRank upしたZranを隊長に、Black Goblin ninjaのBragaを副隊長にしたninja部隊は、TamerしたmonstersにMountしたZemedo達Anubis Riderで構成された機動部隊に遅れる事無く、戦場を駆けるのだった。
……どうやら、Vandalieuはninjaとはendureぶものであると言う事を説明しなかったらしい。
本陣が蹂躙された事も知らない遠征軍のSoldier達は、各員がその場の判断で抵抗を続けていた。つまり、軍としてのCoordinationを維持できず、小隊規模の集団に分かれてバラバラに戦闘を続けていた。
伝令もDiseaseに倒れて動けず、本陣が混乱に陥り立ち直る事無く壊滅したので、現場の下士官以上のCommanding命令が届かないのだ。
それでも戦闘を続行しているのは、彼らが命を懸けて戦う誇り高い烈士だからでは無く、単にDiseaseでEnduranceを奪われて逃げられないのと、敵が彼らから見て降伏を受け入れてくれるような存在に思えなかったから。
「ガアアアアア!」
「フゴォオオオオオ!」
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!
Soldier達の背よりも大きな盾を構えて斧やモールを振り回して突進してくる黒いOrc、Giantな蜂のmonsters、UndeadにGhoul。
どれもこれもHumanから見れば恐ろしいmonstersだ。捕虜なんて非常食にするため以外に獲るとは思えない。
しかし、流石にここまで来ると盾国が誇る精鋭とは言え心が折れる者も出て来る。
「嫌だっ、死にたくない! もうすぐ俺は親に成るんだ!」
「そうか。ではもっと鍛えるべきだったな」
バガン! Basdia自身が唱えた付与magicによって風を帯びた斧が、国に身重の妻を残してきたらしいSoldierの頭を兜ごと叩き割る。
「こんな所で死んでたまるか! 俺は帰って、ミリーにプロポーズするんだ! そして彼女と――」
「おでも、この戦い終ったら告白する」
ドゴボギ! 必死の抵抗を見せたKnightらしい男に、OrcusのGorbaが棍棒を振るう。人からすると致命的なconditionになる音を立てながら、Knightの男は華麗に空を舞って地面に転がった。
「ま、待ってくれ、俺にはfamilyが――!」
『あ゛ぁっ!? 居ねぇ奴の方が少ないぜ!』
命乞いをするSoldierを次々にBorkusがSlash殺して行く。彼らはVandalieuから今回捕虜を取らない事を事前に説明されていたし、そもそも命乞いを受け入れる理由を持たなかった。
遠征軍は彼等にとって侵略軍で、そもそも数はこちらの三倍以上。今の内に手早く数を減らさなければならないのだ。
侵略者の都合に同情してなどいられない。
それに、死にたくなくて命乞いする者には、【Death-Attribute Charm】は効果が無い。
「テメェら! 気合を入れやがれ!」
そんな中、Rileyはまだ心が折れていなかった。念のために持って来ていた対Status Effect用のpotionでdiseaseから回復すると、愛槍でStone Golemを破壊し、【Intimidation】を使って飛び交うCemetery Beeを追い払い体勢を立て直す。
「で、ですが旦那……」
「ヒュゥー、ヒュゥー……」
「げほっ、わ、私達にもpotionを……」
しかし、それが出来たのはRiley一人だった。彼のparty memberである犯罪Slave三人組は、全員既に動く事もままならない。
Gennieは今にも倒れそうな程顔色が悪いし、Flarkは盾こそ構えているが既に息が上がっている。Messaraはもうすでに倒れて起き上がる事も出来そうにない。
Rileyは不甲斐無いSlave達にclicking tongueすると、周囲の状況を確認する。
遠征軍のSoldier達は既に数が半分以下に減り、抵抗している者よりも逃げ出そうとしている者が多い。唯一organization的に戦い続けているのはGordan High Priest率いるCleric-warrior団と、それに合流する事が出来た一握りのKnightやSoldierだ。
円陣を組み、自分達に治癒magicをかけながら撤退しようとしている。
彼らに合流できれば……いや、合流できなければ生き残る事は出来ないだろう。
「ちっ! 奴らと合流するぞ!」
『できねぇよ!』
豪快に、しかも鋭い【斬空】による遠距離攻撃。それをRileyはWeapon Equipmentを回転させて受け流す防御用Martial Arts、【円舞】で回避した。
「てめぇ……」
『ほう、今のを【円舞】で受けきるたぁ、流石AClassだな』
Rileyの【Intimidation】で誰も居なくなった筈の範囲に、Borkusが立っていた。その姿から、Rileyは彼が他のUndeadやGhoulからは、一線を画した存在であると瞬時に見抜いた。
adventurerとしての経験と、何より彼の【Intuition】が怒鳴り声を上げている。ヤバイと。
「何だ、テメェ? お前みたいなのが、何でDhampirのガキなんかに従ってやがる!?」
先ほど防いだ【斬空】も、明らかに手を抜いていた。Borkusは声と同時にではなく、Rileyに声をかけてから放ったのだ。
明らかに自分よりも格上の相手だ。そんな奴が、何故Dhampirの手下なんてやってんだ!?
『決まってんだろ? 依頼だよ、依頼。それに武官にされちまったからな』
だが、残っている方のlipsの端を釣り上げてBorkusは答えになっているか微妙な答えを寄越しただけで、Magic Swordを上段に構えた。
『お前-san、Mikhailの再来って呼ばれているらしいじゃねぇか。俺は二百年前奴に殺されたもんでよぉ、本当に奴の再来かどうか試してみてぇのよ』
「負け犬がventかよ。見っともないぜ」
物理的な圧迫感すら覚えるbloodthirstを向けられ、Rileyの生存Instinctがscreechを上げる。しかし、後ろを見せて逃げられる相手でも無い。
「テメェらっ! 立て! 俺の前に立て!」
Rileyの命令に、Subordinateの首輪で行動を制限されているFlarkがよろめきながら従う。
「Gennieっ! Messara! お前らもだ! さっさとしろ!」
そして続く命令にGennieとMessaraがscreechを上げる。
「そんなっ! 私はrearguardなのよっ!?」
「そ、そうですぜ、旦那っ、あっしみたいなscout職を盾にしてどうするんですかい!?」
Gennieはまだ皮鎧を着ているが、Messaraはmagic防御を重視した特殊なdressしか着ていない。BorkusのMagic Swordの前には、二人とも紙一枚と変わらない。
「うるせぇっ! お前等Slaveはmasterの装備品なんだよ! 俺が生き延びるために死ね!」
そう言いながら、RileyはMagic Spearを構えてMentalを集中させる。その穂の先には三人の背があり、明らかに彼らが犠牲に成る事を前提にしていた。
「そ、そんな! これまで旦那のために尽くしてきたじゃありやせんか!」
「待ってっ! Nobleになったら私を解放して妾にしてくれるって言ってくれたじゃない! あれは嘘だったの!?」
screechを上げるGennieとMessara、そして兜の隙間から諦めた目が見えるFlarkを、BorkusもただのRileyの装備品として見ていた。
犯罪Slaveとは本来なら処刑されるか一生牢獄に閉じ込められるのが相応の連中であるし、Undeadの彼には三人に憑いている犠牲者の霊が見えている。
とても同情の余地は無い。
『安心しろよ、テメェ等を殺したらその褒美で貰った酒を飲んで、供養してやるから……よぉっ!』
Rileyが覚えているかも定かではない事を言い返しながら、Borkusが疾駆する。
「……【Iron Wall】っ!」
最後の悪あがきとばかりに、FlarkがMartial ArtsをActivateさせる。
『【Triple Thrust】ィィィ!』
しかしそれをBorkusのMagic Swordが盾ごと彼の胴体を切断した。
「チクショォォォゲェ!?」
「いやああああああああ!」
泣きながらknifeを振りかぶったGennieと、杖を振り回すMessaraを二撃目三撃目で切り捨てる。
「おおおおっ! 【百裂Spiral thrust】ィィィ!」
そこをRileyが、自身の最大のMartial Artsで迎え撃つ。
だが、Rileyの【Spear Technique】skillは8level。対してBorkusは【Sword Technique】skillがmaxedしてSuperior Skillの【Sword King Technique】にAwakeningした、剣の超人だ。
いくら最大のMartial Artsでも、Borkusがそれを防ぐ事は難しい事では無い。Borkusは相手の攻撃を受け流すMartial Arts、【Flowing Willow】をActivateさせ……ざしゅっ!
『ん?』
Borkusの肩の肉が削り取られた。
Rileyの槍が、Borkusの【Flowing Willow】よりも速く鋭いのだ。
頭部への攻撃は確実に受け流しているが、Dragonの素材で作られた鎧ごと腕や足の肉が削られていく。
Rileyがにぃっとlipsを釣り上げるのを見ながら、Borkusは思い出した。ああ、そう言えば今こいつがやっている事と同じ事が、自分にもできたなと。
『確か、【Surpass Limits: Magic Sword】だったな。こうするんだったか?』
手にしているmagic itemの性能を限界以上に発揮させるskill。Magic Sword UserやMagic Spear Userと言ったJobに就いた者なら大抵獲得しているskillだ。それをRileyは起動して、Borkusの防御を掻い潜っている。
そして当然、【Sword King】の名で称えられた元AClass adventurerのBorkusもそのskillを使えた。
生きていた時は、こうしていたなと思い出しながらMagic Swordを振るう。
《Borkusは、【Surpass Limits: Magic Sword】skill:10Lvを取り戻しました!》
《【Surpass Limits: Magic Sword】skillが、【Transcend Limits – Magic Sword】skillにAwakeningしました!》
「あっ?」
Rileyの手から、【Flowing Willow】によって絡め取られたMagic Spearが飛んでいく。
『何だ、やっぱり大した事ねェな』
そして、空になった手の先にはManaに輝くMagic Swordを振りかぶるGiantなSwordsman。
「う、嘘だろっ? お、俺はこんなっ、こんな所で終わる男じゃないっ、俺は、Heroに……」
『成れねぇよ。【Pierce】』
ドシュ!
Magic Swordの切っ先でheartを貫かれたRileyは、口からbloodとtongueをだらりと垂らして動かなくなった。
『ついでに、これで終わりでも無いぜぇ』
寧ろこれからだ。Rileyの霊に、Borkusはそう告げた。
bloodと臓物の臭いが充満する草原の空気を、Vandalieuは思い切り吸って胸を満たした。
そして覚えた優越感や陶酔、喜びに達成感、appetiteを一緒に吐き出す。
冷静に成らなければいけないからだ、これから復讐をしに行くのだから冷静で居なくてはならない。
この戦争は、自軍の圧倒的完全勝利で終わる。それはもうVandalieuにとって揺るぎない事だった。
だから仮にも王自ら前線に出ようと言うのは、完全にVandalieuのselfishnessだった。一応tactics上の理由も無くは無いが、全体から見れば些細な事なのでやはりselfishnessでしかない。
しかし childはselfishnessを言うものだ。
「起きろ、起きろ、起きろ」
ぶつぶつと呟きながら地面を疾駆する。彼は内臓器官だけを【Spirit Form Transformation】してbody partを軽くし、Agility性を増す事でちょっとした獣並のSpeedを手に入れる方法を体得していた。
向かう先は、遠征軍で唯一organizationだって抵抗しているGordan High Priestの一団だ。
「Aldaは我らと共に在り!」
「諦めるなっ! 必ず希望はある!」
Cleric-warriorが叫び、Knightがallyを鼓舞する。
「Aldaよ、御照覧あれ! 【鋼潰】!」
その先頭で皺だらけの顔に鬼でも逃げ出しそうな形相のGordan High Priestが、戦棍をVigaroに叩きつける。
「ぬぐぅっ!」
ゴガンとOrichalcumの胴巻きで受けたVigaroが、呻いて後退する。
Orichalcumで出来たDefense Equipmentとは言え、あれはVandalieuが身に付けられる形にした物に職能班がbeltや留め金を付けただけの、言ってしまえば魔導金属で出来た鋳物のDefense Equipmentだ。それでも流石Orichalcumだけあって砕けはしなかったが、衝撃を防ぎきる事は出来なかったらしい。
「くっ! 一体どうした事じゃっ、Artifactを身に着けたGhoulやUndeadが大量に……!」
しかし、Vigaroを退けたGordanも余裕は無かった。DiseaseでEnduranceを奪われ、それから立ち直るために唱えた術でManaを使い、そのconditionで延々闘い続けている。
途中彼らがAldaの奇跡だと思い込んでいるSunlightに焼かれて、落ちて来たVampireを浄化する事には成功したが、 後は明らかに使い捨てらしいStone Golemを破壊した事以外戦果が無い。
Gordan達が唱える対Undead用magicも、Orichalcumのmagic防御に防がれて倒すまでには至っていない。
「このままでは、Oracleも果たせず儂も皆も……」
そう唸るGordanの視界に、まるで幻覚の-samaにsignも無く駆け寄ってくる白いshadowに気が付いた。
「あれはっ!」
「あれだ」
お互いに標的の顔を確認したGordanとVandalieuは、やはり同時に動き出した。
「食らえぃっ、【弾撃】!」
Gordanは戦棍で衝撃を飛ばすClub TechniqueのMartial ArtsでVandalieuを狙った。
「……【Death Bullet】」
Vandalieuは、【Death Bullet】をSustained Fireして、Gordan以外を狙った。
Gordanの【弾撃】はVandalieuにあっさりと避けられた。【Danger Sense: Death】で攻撃を感知できる彼にとっては、この距離での攻撃は避けられて当たり前だ。
Vandalieuの【Death Bullet】は、Gordanの周囲に居たCleric-warrior達の盾や鎧の装甲に当たった。円陣を組んでいた彼らが避けようとすると、内側に居るrearguardや反対側で円陣を作っている仲間に当たる可能性が高いので、避けなかったのだ。
指先程度の大きさの攻撃magic程度、残りのManaを絞ってActivateさせた【Stone Wall】や【岩体】のMartial Artsで耐える事が出来る。そう判断したのだが……。
「がはっ!?」
「かひゅっ……」
temple Warrior達は白目を剥いてガクリと崩れ落ちた。
「カウフマン!? エRick!?」
「そんなっ、二人が一撃で!?」
(うわ、貧弱)
Gordanが連れてきた、遠征軍のSoldierと比べても頭一つ以上抜きんでているはずの二人が即死した事に、Vandalieuも含めて驚く。
しかし、過去にRank6のRegenerative PowerとVitalityに優れた竜種のHydraを数発で倒した術を、あの時よりも更にManaを込めて使ったのだ。【Stone Wall】や【岩体】程度のMartial Artsしか使っていないCleric-warrior達が耐えられるはずはない。
だが驚きを無視したVandalieuは走りながら二人分の穴が空いた円陣に、【Death Bullet】を打ち続ける。
「ぐあっ!」
「ヒュッ……」
「Aldaよっ! 我にごぎゃひょぉ……」
ぱぱぱっと、足を狙って打つ。Vitalityを喰う【Death Bullet】は、胴体だろうと爪先だろうと当たれば等しく効くので、面白いようにMageや弓兵等のrearguardが倒れて行く。
「くっ、儂に任せろ!」
このままでは全滅すると判断したGordanが、向かってくるVandalieuに対して前に出る。
「全員下がれ! Vandalieuに任せろ!」
そしてVigaroからの号令が飛び、Ghoul達が引く。
その時に出来た僅かな時間で、Gordanは祈りをAldaに捧げた。
「主よ! 卑劣なるDhampirを滅ぼすために、汝の僕にFamiliar Spiritを遣わしたまえ!」
それはただの祈りでは無く、選ばれた聖者しか使う事が出来ない【Familiar Spirit Advent】のskillのActivate条件だった。
かっと空から光の柱が落ちてGordanを包むと、彼の頭の上に光の輪が発生し、背中に同じく光の翼が生じる。
本来Bodyの無い神のFamiliar Spiritを己のBodyに降ろし、あらゆるAbility ValuesをAugmented (2)するGordanの奥の手だ。
「【Iron Form】! 【Steel Wall】! 【Light Blade】!」
防御用のMartial Artsを連続Activateさせ、更にFamiliar Spiritを降ろした事で可能になった、Chant Revocationでのmagic Activate。giantすら断つ光の刃がVandalieuに迫る。
そして迫っただけで、【Magic Absorption Barrier】に阻まれて消える。
「砕けよっ! 【金剛棍】!」
しかし Gordanは一切動きを止めず、光り輝くMythrilの戦棍をVandalieuの頭部に向かってfullスイング。
そして音も無くVandalieuの頭部が首から千切れて吹っ飛んでいく。
「「「おおぉっ!」」」
Cleric-warrior達が歓声を上げ、Ghoul達が息を飲む。
「がはぁ!」
そしてGordanが苦痛に声を上げながら後ずさる。
首の無いVandalieuから放たれた、【Death Bullet】の直撃を受けたのだ。
『どうしました? まさか、首が無くなったから俺を殺せたとでも?』
自ら首を【Spirit Form Transformation】して、timingを合わせて分離したVandalieuがそう言うと、Gordanは「damn monster」と吐き捨てた。もし【Familiar Spirit Advent】やMartial Artsを使用していなければ、今の【Death Bullet】で即死していた可能性が高かった事に気がついているからだ。
しかも Vandalieuは【Soul Break】も【Death Bullet】に乗せていたので、GordanのManaを三分の一近く削っていた。
「どう言う手段で儂のManaを削り取ったのかは知らんが、【Familiar Spirit Advent】を使用した儂はFamiliar SpiritのVitalityとManaを借りる事が出来る。
今の儂のManaは十万! 貴-samaに削りきれるものではないわ!」
『……それっぽっちか』
いや、たった十万で啖呵を切られても。
そう思いながら、Vandalieuは胴体の方に二つ目のSpirit Formの首を生やす。
『それより、折角の一対一なんです。続きをしましょうよ』
「damn monster……何が一対一か!」
『……? 俺は一人ですよ、body partが分かれているだけで』
【Parallel Thought Processing】や【Long-distance Control】skillを使って複数のbody partを操っているが、魂は一つなので一人に決まっている。
「Shut Upい! 貴-samaの詭弁は聞くに堪えん!」
端的な事実を言ったつもりだったが、どうやらGordanには理解できないらしい。
まあ、あまり会話を続けて口から言葉の代わりに反吐が出たら嫌なので、続けよう。
『じゃあ、今度はこっちから』
clawsを伸ばして、腕を【Spirit Form Transformation】して鞭状に変形伸長分裂。
imageは、Earthに居た頃に美術の教科書に載っていた千手観音だ。たしか、あれは腕が左右合わせて二……何本だったけ? まあ、いいか。参考は参考でしかないのだし。
そして千手観音と言うよりもギリシャMythの百腕giant≪Hecatoncheir≫の-samaな姿に成ると、驚愕に顔を強張らせているGordanに腕を次々に振り下ろした。
『【Whip Attack】』
本来は腕が足より長いGhoulの男専用の【Unarmed Fighting Technique】のMartial Artsを放つ。しかし、その一撃目はGordanの盾にあっさり弾かれた。
「ふんっ! GhoulのMartial Artsを使うか! じゃがその程度、儂の【Steel Wall】の前には――」
『【Whip Attack】、【Whip Attack】、【Whip Attack】、【Whip Attack】、【Whip Attack】、【Whip Attack】』
がっ、がっ、ががっ、がががっ、ががががっ。
しかし、際限なく腕が振るわれる。その全てに、【Whip Attack】が載っている。
(BAKANAっ! 何故これ程Martial Artsを連続使用し続ける事が出来る!?)
常人なら……いや、超人でも頭が耐えきれない。なのにVandalieuは既に何十何百と【Whip Attack】を乗せた攻撃を行っている。
(まさかっ……ば、BAKANA!?)
Gordanは、Vandalieuのcountlessの腕の隙間から、先程彼が自分で切り離した方の頭を見た。
『【Whip Attack】』
『【Whip Attack】、【Whip Attack】』
『『『『『【Whip Attack】、【Whip Attack】、【Whip Attack】、【Whip Attack】、【Whip Attack】』』』』』
そこには一見するとGiantなブドウの房のように見える物が浮かんでいた。
ただ、全ての実が虚ろな瞳をしたchildの頭部で出来たブドウと言う、常軌を逸した存在だったが。
「ば、monster……!」
初めてGordanの声に、horrorが含まれた。
それをcountlessの目で見ながら、Vandalieuは笑いだしたくなった。
あの時、Darciaを火炙りにして殺されたのに、何も出来ずただ地虫のように隠れ潜んで生き延びる事しか出来なかった。その自分に、Gordanはhorrorを覚えている。
侮蔑では無くhorrorから「monster」と自分を呼び、恐れている。
ああ、素晴らしい。でも、流石にここまで手段を選んで全力を出すとManaの消費が激しい。
「来い」
頭の一つをMaterializationさせ、作って置いたGolemを呼び寄せる。
『う゛お゛ぼぉぉぉぉぉ』
地面から赤いGolem……遠征軍の将兵が流したblood溜まりから作ったBlood Golemが、自らVandalieuの口に飛び込んで行く。
鮮度はやや悪く、土と草の臭いがする上に時々Soldierの破片が混じっているが、今はそれが気に成らない程気分が良い。
そのVandalieuの食事を見て、GordanのMentalに決定的な亀裂が出来たようだ。このまま耐え続けても、Vandalieuが息切れもMana切れも起こさないという事を理解したようだ。
まあ、補給しなくてもManaは半分……一億以上残っていたのだが。
「ぐっ、おおおおおおおおおおおおお!?」
ガガガガガガガガガガ!
鞭そのままにしなるVandalieuの腕とclawsが、Gordanの盾に食い込み鎧のpartsを弾かせ、光に包まれた彼の肉を抉り取って行く。
certainly全ての攻撃に【Soul Break】が乗っているので、GordanのManaは瞬く間に尽きて【Familiar Spirit Advent】が強制解除される。
残ったのは、whole body blood塗れの老人ただ一人。
さあ、頂こう。
fangsを剥いてVandalieuは、全ての頭でGordanに襲い掛かった。
「High Priest -sama!? 皆、High Priestを助けろ!」
随分減ったCleric-warrior達が、碌に動けないGordanを守ろうと出て来る。どうやらVandalieuは気が付かなかったが、【Whip Attack】を撃っている間もちょっかいを出してきていたらしく、結構な数がVigaro達に始末されていた。
幾つかの頭が彼らに砕かれたが、あまり関係無い。増やした余剰分の頭は、あくまでも余剰分だ。いや、全部の頭を砕かれても、新しい頭を一つ作ればそれで良いので、彼らの抵抗はかなり無駄なのだが。
ザクリと、Gordanの首にVandalieuのfangsがthrust刺さった。