七日間の行軍は、思っていたよりも順調だった。
丈夫な馬車馬を用意してきたお蔭で物資のtransportationも順調。途中出現したmonstersも、Riley達が出張るまでも無くSoldier達に処理される程度で、乾いていない新鮮な肉としてその日の食事を彩った。
天を突くMountain Rangeに挟まれているため日照時間が短かったが、照明用のmagicが使える者も少なくなく、やや高かったがランタン代わりのmagic itemも多く持ってきた。
七日間という予定通りの日程でTalosheimが見える位置まで来られたのは、やはり行軍が順調だったからだ。
しかし行軍が終わった瞬間順調でなくなった。
「どうやら、scout部隊の者が幻覚を見た訳ではないようだな」
Mauvid Generalが仮の陣を立てたのは、Talosheimの周辺に広がる草原だ。平地で障害物が腰程の高さに伸びた草しか無く、見通しが良い。戦争なら、まず本陣を建てるような真似はしない場所だ。
そこでMauvidは他の遠征軍幹部と揃って、Talosheimの異-samaを見ていた。
視線の先には、三十meter程の城壁がある。Mauvid達の基準ではImperial Capitalか重要拠点の要塞でなければそうない高さだが、Giant raceは長身の者なら小柄なHumanの倍ほども背が高い。それに周囲がほぼDevil Nestsという環境なのだから、これくらいの堅牢さは必要だったという事だろう。
二百年前のrecordよりもかなり高い気がするが、それも当時の軍師が目測で図っただけなので多少の誤差があってもおかしくない。
おかしいのは、城壁が見るからにボロボロで破城鎚で一回突けば崩れそうな有-samaだとしても、二百年前にHero Mikhailが穿った二カ所の大穴が何処にも見られない事だ。
「どういう事でしょうか? 二百年前のrecordが間違っていたのか……」
遠征軍副司令官のChezare Legstonが言うように、軍のrecordでも間違っている事が往々にしてある。過去のHeroやGeneralの活躍を喧伝するために、大袈裟に残してしまう時などだ。
しかし、唸るChezareにBormack Gordan High Priestが答えた。
「恐らく、奴……Balchesse Viscount領から数百匹のGhoulを率いて逃げ延びたDhampir、Vandalieuの仕業じゃろう」
「それはHigh Priestが常々口にしている、あの?」
「うむ。あのDhampirが配下のGhoul共に指図して城壁を修復させたのだろう」
自信満々に断言するGordanに、Chezareは逆に不信感を覚えたようだった。これまで遠征軍でGhoulの目撃証言は一回も出ていない。それなのに断言するGordanの意見に、Chezareは危うさを覚えたようだ。
「しかし。そんな事をするでしょうか? monstersが廃墟に住みつく例は聞いた事がありますが、廃墟を修復した例は聞いた事が有りません。Ghoulはmonstersの中でも頭が良い部類で、自力で小屋を建てる事も多いそうですが、城壁となると……」
「ふんっ、Chezare -dono、それは常識に囚われた見方じゃ。Ghoulを率いているのはDhampir、Human並みの知能を持つmonstersじゃ。
それに、あの城壁をよく見よ。二百年前からあのconditionだったとしたら、今頃とっくに崩れておるわ」
「た、確かに……」
Gordanの指摘通り、城壁を詳細に観察すれば所々全体の造りが荒く、拙いのが見て取れる。二百年どころか、数十年と持ちそうにない。
Hero Mikhailが参加するまで、当時のMirg Shield Nation軍一万を退け続けた堅牢な城塞とは、とても思えない。
「これはVandalieuが高度にorganization化されたGhoulの群れを従えてTalosheimに立て籠もっていると見てよいじゃろう」
「なるほど。High Priest -donoの意見も尤もだ」
そう重々しくnod Mauvidだったが、内心はGordan High Priestの意見を鬱陶しく思っていた。
何故この老いぼれはVampire達と通じている訳でも無いのに、真実を言い当てるのかと。この場に居るIslaがTransformしているmercenary隊長に視線を走らせても返事は無い事から、彼女達の裏工作とも思えないのだが。
MauvidとIsla達Vampireの算段では、VandalieuやEleonoraの事は最後まで自分達以外に教えるつもりは無かった。
何も教えないままTalosheimに遠征軍を進め、Vandalieuが率いているだろうGhoulや裏切り者のVampireの出方を窺う。
既にmagic itemで今もEleonoraがTalosheimに居る事ははっきりしているし、tunnel付近やこれまで進んできたDevil Nestsにも、こちらの動きを窺うSubordinate VampireやGhoulの姿は無かった。
だからVandalieu達は自分達遠征軍の存在に気が付いていないというのが、MauvidとIslaの共通認識だった。
だからまず遠征軍の兵隊やKnightを突入させ、それで逃げるようならRileyやIslaが追って始末する。magic itemがある限りEleonoraを見失う事は無いし、彼女はmagic itemの存在を知らないとIslaは断言した。
だからVandalieuも最大戦力であるはずの彼女を捨石にはせず、一緒に逃げようとするだろうと。
逆に言えば、Eleonoraと別れて逃げるならGhoulを何匹連れて行っても追う事は難しくない。
可能性は低いだろうが、逃げずに徹底抗戦するつもりならRiley達がそのまま討ち取る。
それらのどさくさに紛れて、邪魔なGordan High Priestも始末する。
それでMauvid達にとって目的は完遂だ。過程でMirg Shield Nationの精鋭が幾ら減っても知った事では無い。残ったTalosheimを占拠して、頃合いを見て「本国に戦果を報告する」とでも言って戻り、健康上の理由をでっち上げてMauvidは引退。Rileyも戻る時に生きていれば連れて行けばいい。
Islaはmercenaryに過ぎないので契約期間満了で遠征軍から離れて姿を消せばそれで十分。
後はVampire達がtunnelを崩落させて、哀れなChezare達はTalosheimに取り残され、Mauvid GeneralはVampireとなって永遠の命を、Rileyは新Mauvid Earlと俗世間の栄華を手に入れる。
その予定だったので、兵を進める前にVandalieu達の存在に気がつかれて慎重論が出ると困る。
折角 target達が遠征軍に気が付かず、今頃狼狽えているだろうに冷静さを取り戻す時間を与えたく無いからだ。
「じゃあどうすんだよ? あんなボロでも壁は壁だ、中を偵察するのは難しいぜ?」
そうRileyは言うが、実際にはIsla達Noble-born Vampireは空をFlightする事が出来るためどんなに壁が高くても内側を覗きこむ事は難しくない。
弓兵が配置されているとしても、所詮monstersの手作り。質の良い弓矢は無いだろうから、高くFlightすれば矢も届かないだろう。
しかし、彼女達がVampireである事はRileyやMauvidだけの秘密であるためそんなtacticsを取れるはずが無い。当然Islaは黙っている。
「無論、通常の戦争と同じく集団戦で攻める。まずはHeavy infantrymanで外側を固めて弓兵やmagic兵を警戒しつつ、破城鎚であの城門を破る。その後はGhoul共の動きを見てからじゃな。普通ならかかって来るじゃろうが、奴らはDhampirに率いられているだけあって狡猾じゃ。こちらの裏をかいて小規模な隊に別れ、廃墟に隠れて市街地戦の真似事をするかもしれん」
しかし Gordanも【Vampire Hunter】と言うsecondary nameで知られた男だ、出したのは慎重論では無く積極的に攻めていく好戦的な案だった。
「まず、都市を包囲すべきでは?」
「あの規模の城塞都市を包囲すれば兵が薄くなる。それにここは一見ただの草原じゃが、立派なDevil Nestsじゃ。薄く広く広がった所にmonstersが襲い掛かって来たら被害は大きくなるが、構わんのか?」
「……如何します、General?」
「うむ、ここはHigh Priest -donoの助言を採用しよう。破城鎚を用意し、突破部隊を編制せよ!」
慌ただしくSoldier達が動き始める。originally攻城戦をする予定は無かったが、Talosheimの廃墟を攻略する過程で必要かもしれないと念のために用意された破城鎚が持ち出され、重武装の守備兵が一番槍は我々だと部隊に志願する。
Gordanはその-sama子を見る事無く、太陽を気にしていた。既に、日は陰り始めている。
「間に合わなかったか」
まだ夕方には早かったが、Boundary Mountain RangeがSunlightを遮ってしまうのだ。Dhampirの殆どはSunlightに弱くは無いが、配下のGhoul以上にnight目が利く。
対してこちらはほぼHumanばかり。薄暗くなる前に勝負を決めたかったが、そう上手くは行かないかと眉間に皺を寄せる。
尤も、遠征軍のtopがVampireと繋がっている時点で上手く行くはずがないのだが。
第三城壁の城門の真上に隠れ、Golem達の目で遠征軍の姿を確認していたVandalieuは、破城鎚を守りながら近づいてくる重装兵を見ながら、timingを計っていた。
どうやら、向こうは何も知らないらしい。Riley達がtunnelから姿を現して以降、敵の偵察を、特にVampireが放つ使い魔を警戒していたのだが、Devil Nestsのmonsters達が排除してくれたのか秘密は守られたようだ。
「【Stone Wall】! 【岩体】!」
盾を掲げたHeavy infantryman達が、Shield TechniqueとArmor TechniqueのMartial ArtsをActivateしてDefense PowerをEnhanced (1)する。皮鎧に槍と盾の一般兵とは見るからにDefense Powerのdimensionが違う、金属鎧にタワーShieldで身を固めた、斧やMaceで武装したSoldier達だ。
maybe、最低でもそれぞれのskillは3……いや、精鋭らしいから4ぐらいか。並のSoldierは2程度で、Adventurer’s Guildに当てはめるならEClass程度だとEleonora達から聞いたが、精鋭連中はそれぞれがRank3ぐらいのmonstersなら倒せそうだ。何人かいればRank4でも行けるかもしれない。
他のSoldierも同じ練度なら、かなりの強敵だ。Earthのgameなら余程playerが高levelでなければ、無双するどころかされる側になりかねない。
そんな敵の程良い強さに、Vandalieuは満足した。これなら、後で十分すぎるほど使えるだろうと。
「よっこいしょ」
そして、Vandalieuは無造作に城壁の上に立った。近づいてくる突破部隊にはcertainly、本陣を含めた全ての敵軍に姿を晒したのだ。
「あれは……まさかDhampir!?」
「ほ、本当に居たとは驚きだっ」
Light-Attribute Mageが拡大して映す映像にChezareは目を剥き、Mauvidは声と顔を引きつらせた。まさかVandalieuが堂々と姿を現すとは思っていなかったので、理由は異なるが二人とも動揺していた。
「おおっ! これぞ我が主AldaのおGuidance! 全員儂に続け!」
「ま、待ってくださいHigh Priest! 奴は城壁の上に居るんですよ!?」
「そうだ待ちやがれ! 奴は俺の獲物だ!」
Gordan High Priestの補助に付いている若いCleric-warriorと、Rileyも理由は異なるが彼を止めにかかる。
一方、動揺する他の幹部達の間で一人沈黙を保つIslaは、Vandalieuの行動をいぶかしんでいた。
(何故一人で姿を見せた? この軍勢を見て自暴自棄にでもなったか? まさか自分を囮にGhoulやEleonoraを逃がすつもりか?)
TerneciaからGhoulの皮を持って来いと命令されているため、あまりGhoulを逃がす訳にもいかないのだがとIslaが思っていると、映像の中のVandalieuに動きがあった。
Vandalieuが一振りの槍を掲げて見せたのだ。
「あれは……Ice Ageっ! Ice Ageだっ!」
「我が国の国宝っ、Dhampirが手に入れていたのか!」
その槍は、Mirg Shield Nationの国宝Ice Ageに酷似していた。
「それは、それは俺のだ! クソっ、汚い手で触れるんじゃねぇっ!」
「おい、【Appraisal】を使えっ! あれは本当にIce Ageなのか!? 本物ならOrichalcumで出来ているはずだ!」
「この距離では無理です!」
遠征軍の本陣の-sama子を虫Undeadで見ているVandalieuは、予想していた通り彼らが動揺しているのが心地良い。態々Dataraに鉄で偽Ice Ageを作ってもらった甲斐がある。
そしてVandalieuは掲げ持った偽Ice Ageを、手で折った……-samaに見せながら【Golem Transmutation】で折り、地面に落とした。
その瞬間本陣はシンと静まり返り、暴発した。
「おのれ! よくも我が国の国宝を!」
「侮辱にも程がある! Knightの誇りにかけて奴を討ち取ってくれる!」
「クソッタレがあ! あのArtifactは俺の物になる筈だったんだぞ! それを、それを……ぶち殺してやる!」
そう、遠征軍の多くはVandalieuや裏切り者のEleonoraを処刑しに来た訳ではない。彼らは二百年前の、自国の苦いMemoryと屈辱を拭うために来たのだ。
Talosheimを占拠し、失った国宝を取り戻し、自国に繁栄をもたらすためにやって来たのだ。そうとしか聞かされていないのだから当然だ。
その前で国宝のMagic Spearを折られて捨てられれば、頭にbloodが上らないはずが無い。
「待てっ! Orichalcumで出来たMagic Spearが折れるはずが無い! あれは我々を動揺させるbluffだ!」
「そ、そうだ! 落ち着けっ、冷静に成れっ、隊列を崩すな!」
冷静さを保っているChezareやMauvidが激高する幹部達を鎮めようとするが、遠征軍の内情はVandalieuが考えている以上にガタガタだった。
まず総CommanderのLangil Mauvidは、遠征軍の殆どを構成するMirg Shield NationのKnightやSoldier達からしてみれば、尊敬に値する上官では無く、宗主国のNobleである事を笠に着た嫌な上官でしかない。
しかし副CommanderのChezare Legstonは、Mirg Shield Nationの出身で現Marshallの次男であり、Knight達も彼は敬っている。
「煩い! 邪魔するんじゃねぇ! あれほどidiotにされたのに大人しくしてろってのか!? 俺は出るぜ! Dhampirや数百匹のGhoulが怖いなら、そこで座ってな!」
だが狙い以上に激高したRileyが槍を持って、自身のSlaveを連れて前線に出ようとすると、それを止める役目の筈のKnightやNobleたちが、こぞって腰を上げてしまう。
「Riley -donoの言う通りだ!」
「これには我が国の誇りがかかっている! 申し訳ないがGeneral閣下の命令でも聞けん!」
彼らにとってRileyは国が煌びやかに喧伝した通りHeroである。全員がそっくりそのまま信じている訳ではないが、同時にRileyに魅力が無い訳でもない。
寧ろ今は見栄っ張りでSelf顕示欲が強いが、元は面倒見が良い性格だ。KnightやSoldier達には気前良く自分で狩ったmonstersの肉を振る舞ったし、遠征軍が通ったtunnelの砦では何度かDragonから砦を守り、その肉をSoldier全員に配っている。
それによりRileyはKnightやSoldier達から意外なほどの人望を集めていたのだ。
「ぬぅっ! やはりOracleはあのDhampir、Vandalieuの事を告げていたのか! 敬虔なるAldaの信徒達よ、奮起せよ!
これは聖戦である!」
更にVampire Hunterと名高いBormack Gordanが立ち上がり、聖戦を宣言した。
天幕に居るのはreligionに差はあっても国教であるAldaのbelieverばかりであり、HeroとClergymanが邪悪と立ち向かうという伝承歌のようなシチュエーションに、怒りで熱くなった頭が更に熱狂してしまう。
激高したKnightやNobleは、その姿に思わず我もと続いてしまったのだ。
「貴-sama等っ! 命令にっ、命令に従え! 軍規違反だぞ!」
「くっ……! Black Bull Knight団は突破部隊を追って出陣! 弓兵はrearguard! 軽騎兵隊は伝令に徹しろ!」
「Chezareっ!? 貴-sama何を言ってる!?」
「General、もう兵達を落ち着けるのは不可能です! ならせめて各隊のCoordinationを維持するしか――」
「Shut Up! 越権行為であるぞ!」
そして総Commanderと副Commanderの関係の悪さが露呈した。ChezareはMauvidを見切って補佐するのをやめ、Mauvidは動揺して兵達の頭を覚まさせる事よりも彼を罵倒する事を選んでしまう。
(既に半ば烏合の衆か……Humanの軍がここまで脆いとはな。かつてZakkartは人の力はお互いに助け合う事にあると語ったそうだが……)
表向きmercenary部隊の隊長でしかないIslaは、兜の奥で深々とため息をついた。槍一本折られただけでこの有-samaとは、この遠征軍に潜り込んで窮屈な思いをしている意味は何なのかと嘆きたくもなる。
「Isla -sama、我々だけで独自に動きますか?」
副官の微かな声に、しかしと思い直したIslaは小さく「いいえ、このまま続けるわ」と答えた。
「人の長所である数の力が損なわれた訳ではないのだし、問題無いわ」
Islaはそう副官に答えたのも、そして遠征軍の幹部達が能天気に激高していられるのも、同じ理由だった。
負ける事は無い。確実に自分達は勝てる。
そんな共通の認識があったからだ。
遠征軍のSoldier達はRank3程度なら一人で相手をして勝てる精鋭が、六千人。そこにAClass adventurerに、対Vampireの専門家までいる。
Eleonoraの-samaなNoble-born Vampireも敵に居るが、それを知っているのは遠征軍のごく一部。
そしてDhampir率いる敵の数は、Gordanが「Talosheimに巣食っているに違いない」と遠征の間に何度も訴えていた内容を、本陣に居る幹部達は全員が聞いていた。
【Spiritualist】のDhampirと、その配下のGhoulが多くても五百匹程度。新たに手下を増やしても、数でこちらを上回るはずが無い。Talosheimで発生したUndead Giantが混じるかもしれないが、それはただの乱入であって、organization立った動きでは無いだろう。
だから遠征軍の中にこの時点で本当の意味で危機感を覚えた者は、誰一人として居なかった。
「なんだか、予想以上に効果があったな……ダメだった時はまだ色々あったんだけど、まあいいか」
一応隊列を維持したままこちらに向かってくる遠征軍、突破部隊も城門に辿りつき意外と粘る城門相手に苦戦している。
「では、第三城壁……攻撃開始」
十分敵を引きつけてからそう呟き、Vandalieuはそのまま第二城壁へと【Flight】で移動。
「あのガキっ、逃げ――何だ!?」
Riley達が向かっている途中で、城壁が崩れ始めた。ボロボロだとは思っていたが、城壁全体が一度に崩れ始めるとは思っておらず、思わず足が止まる。
「ぬぅっ、Trapじゃったか! しかし早まったなっ、城壁を崩して儂らを下敷きにするつもりだったようじゃが、距離が離れすぎておるわい!」
突破部隊が若干被害を受けているが、Martial Artsを既にActivateさせていた。もしかしたらboneの一本くらいは折れているかもしれないが、死にはすまい。
後は城壁の残骸を乗り越えて進むだけ……だと思ったGordan達遠征軍の面々は思わず目を見張った。
崩れた城壁の向こうに、それよりもやや低いが見るからに堅牢そうな白い城壁が存在するのに気が付いたからだ。
「なっ!? 城壁がx2に建てられているなんて、軍のrecordには何処にも無かったはず!」
「ええいっ! だから兵を引けと言っているのだ!」
「確かに……弓兵っ、突破部隊の撤退を援護しろ! 各隊は一旦――あれ?」
Mauvidに急かされながら指示を出そうとしたChezareは、思わず間抜けな声を漏らした。
崩れたと思った城壁が、ムクリと立ち上がったからだ。
『う゛お゛ぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!』
『あ゛おおおおおおおおおおおおお!』
唸るような怨嗟の声を上げ、城壁だったStone GolemやRock Golem達が立ち上がった。その数、軽く千を超える。
そしてその石人形達は、動きを止めていた遠征軍の各部隊にノッシノッシと見た目よりずっと軽快に走り寄り、殴り掛かった。
「て、撤退っ! 撤退ぃっ!」
「うおおおおっ! 盾を構えろっ! 見せるのは背中じゃなくて正面だ!」
「陣形を保てっ、Heavy infantrymanの意地はどうした!」
城壁に向かっていた遠征軍の各部隊とStone Golemの間にはまだ若干距離があった。悲惨だったのは突破部隊のHeavy infantryman達だ。
突然崩れた城壁の下敷きになって圧死するのは免れたが、周り中囲まれたconditionで石giantにoctopus beatingりの目に合わされるのだ。
しかも彼らが叩いていた鉄の城門は、Rank6のIron Golemに変形を終えている。
士気を保ち最後まで諦めるつもりは無さそうだが、突破部隊の命運は風前の灯だ。
「突破部隊をrescueするぞ!」
「Black Bull Knight団前進! 足を緩めるなっ、命無きGolem如きの何を恐れる!」
雄々しく叫ぶ遠征軍は、Mirg Shield Nationが誇る精鋭達だ。当然修羅場を何度も潜って来ている。故に、彼らはKnightから一兵卒まで等しく戦友という強い絆で結ばれていた。
それに約千体のGolemでも、彼らにとって致命的な敵ではない。
故に驚愕にChezareやMauvid Generalが本陣で硬直している間も、遠征軍の面々は各自現場の判断で進み続けた。RileyやGordanに率いられた者達も同-samaだ。
そして彼らはGolemと接敵、唸りを上げて拳を振り上げる石giantを個人の武威やCoordinationの力で次々に倒して行く。
このまま行けばGolemを全て倒し、態勢を立て直す事が出来るだろう。
「放て」
そのtimingで、Vandalieuは第二城壁のcrossbowやTalosheimの建造物の屋上に設置された投石器型Cursed Weaponsに命令を出す。
「ぐあっ!?」
「ぎゃっ!」
「ひっ! 岩が飛んで……ぎっ!?」
crossbowの矢の内幾らかはRock Golemにthrust刺さるが、既にRock Golemの数が減っていたので三分の二程が遠征軍の者に向かう。
更に頭上から飛来する投石機の岩は、幾ら盾職の精鋭重装兵でも直撃したら戦闘不能は免れない。
そして軌道を見切って逃げようにも、Rock Golemやその残骸が邪魔をするし、そもそもnameの通り重装なので素早い動きが出来るはずも無い。
「そんなっ! 大量の弓兵に、投石機!? わ、私達は何と戦っているのだ!? Generalっ、どういう事です!? Empireは我々に何を隠している!?」
「し、知らん! 私は何も知らん!」
「この期に及んで口を閉じるつもりかっ!」
亜人Typeのmonstersが弓矢を使う事は珍しくないが、投石機を使うなんて話をChezareは知らなかった。そもそも投石機は簡単に作れるものではない。Empireや盾国はcertainly Elective Kingdomでも作れる技術者をguildに加入させて常に把握し、勝手に作られない-samaに監視しているのだ。
その投石機が何故Talosheimに存在し、自分達に対して岩の雨を降らせているのか。
二百年前のrecordでもGiant raceが投石機を使ったという記述は残っていないのに。
(まさか、あのDhampirが投石機を作ったと言うのか? そんなBAKANA!)
しかし、現実としてChezareの見ている前で、次々に岩が投じられSoldier達が逃げ惑い潰されている。
「くっ、撤――」
「僭越ながら、ここは全軍で攻め寄せるべきかと」
その時、沈黙を続けていたmercenary隊の隊長……Islaが口を挟んだ。
「貴-samaっ、mercenary如きが口を挟むな!」
「そうだっ、未だに本陣に残っているcoward者の癖に、我が軍に損耗を強いるつもりか!」
Chezareの補佐官達が無礼なmercenaryを叱責するが、当然Islaはteethにもかけない。
「見たところ、戦場で兵達は混乱している-sama子。このconditionで速やかな撤退など期待できないでしょう。それにHeavy infantrymanはいい的です。
ならば奥の城壁まで攻め上がってしまえば、投石機は自ずと脅威ではなくなります。何、敵は今のところ見かけ倒しの石人形が千程度。それさえ越えてしまえば隊列など如何-samaにも組めましょう」
Islaの言葉には、一理あった。Soldier達の損耗を無視する非情さがあったが、戦場では十の犠牲が千の命を救う事が珍しくない。
それに、軽装兵ならin any case VitalityとDefense Powerに優れたHeavy infantrymanが隊列を組めば、並の矢弾が何度か当たってもどうという事は無い。
「よ、よし! 全軍前進!」
「General!?」
しかし、その一理は敵がもう切り札を持っていない場合だけのもの。
もし奥の城壁もGolemになったら、投石機による攻撃は止まない。それに、まだGhoulが一匹も姿を現していない。
crossbowや投石機の操作にかかりきりなのかもしれないが、Chezareは嫌な予感しかしなかった。
「Shut Up! これは総司令官としての命令である!」
Chezareと同じ予感はMauvidも覚えていた。そもそも、彼はこれまで一貫して撤退を叫んでいたのだ。しかし、何故ここで意見を百八十度変えたのか。
それはIslaが発言したからだ。
口調こそ慇懃さを保っていたが、端々に苛立ちが見え隠れする。逆らえば、取引相手として不適格と見なされ消されかねない。
「お、お前達にも役に立ってもらうぞ!」
「certainlyです、General閣下。給金分は役に立たなくてはな」
このやり取りも、本音はMauvidがIslaに助けを求め、IslaがMauvidに対して役に立たなければ見限ると宣言しているのに等しい。
だが、実際この時点ではIslaの言葉に従ったのは間違いではなかった。
「ぬぅん! 【破山鎚】!」
「【大旋風thrust】ィ!!」
「…………っ!」
「【大治癒】! ほらほらっ、へばってないで頑張りなさいよ!」
「そうそう、しっかりしてくださいよ、旦那方!」
Gordan High Priestの戦棍が岩を砕き、Rileyの槍が穿ち、Flarkの盾が弾き飛ばす。Messaraも傷ついたSoldier達を戦線に復帰させ、Gennieはちょこまかと動き回って援護している。
Golemは殆ど倒され、投石機の衝撃からも彼らの活躍もあって遠征軍は立ち直ろうとしていた。Heavy infantrymanが盾を構えて【Martial Arts】をActivateさせて隊列を組めば、crossbowの矢は恐れるに足らない。
しかも GordanとRileyが砕いたのは、落下後Golemに変形する『Golem弾』だったため、遠征軍本陣を援護すると共にVandalieuにclicking tongueさせることに成功した。……やった当人達はそれに気がつかず、何故岩を砕いただけでExperience Pointが入ったのか内心首をかしげているのだが。
だが、彼らの活躍でmidairにある岩が砕かれるようになったせいで、遠征軍は彼らの活躍以外でも樽がmidairで勝手に割れている事に気が付くのが遅れた。
「ふん、Human共の軍もどうにか役に立ちそうですね」
「そうでなければTernecia -samaがboneを折った甲斐が無い。行くぞ、ただ奴らが城壁を破るまでは目立たない-samaにしろ」
「はっ!」
だが戦場にIsla達が着いた時、目立たない-samaにと言う命令を遂行する事は難しくなった。
「ゴホっ!」
誰かが咳をした。
・Mirg Shield Nation精鋭兵の平均的なStatus
・Name: Heavy infantryman
・Race: Human
・Age: 二十代~三十代
・Title: なし
・Job: Heavy infantryman
・Level: 50~70前後
・Job History: Apprentice Soldier、歩兵
・Passive skills
Ability Values Augmented (2):Under Command:2Lv
Metal Armor equipped, then Strengthened Attribute Values: 中
Shield equipped, then Strengthened Attribute Values: 小
・Active skills
武術系skill:3Lv
武術系skill:2Lv
Shield Technique:4Lv
Armor Technique:4Lv
Coordination:4Lv