春麦の作付けを終えて半月ほど経った頃、開拓地の農村の一つに住む村人達は行軍する遠征軍を見送っていた。
村人達の顔はどれも明るく、誰もが遠征軍の活躍を心から応援していた。
彼らはBalchesse Viscountの開拓事業に参加する事で、質素だがfamilyで暮らせる住宅とDevil Nestsのmiasmaが残り作付け一年目からある程度の収穫が期待できる土地を与えられ、更に税の優遇まで受けられた元農家の三男以下や小作人、slumsの住人達だ。
今回の遠征でもBalchesse Viscountは税金の優遇策を中断しなかったし、食料の徴発も無かった。遠征軍に参加するSoldierが精鋭に限られるため、当然徴兵もnone。
そして遠征が成功すればBoundary Mountain Rangeの向こうに新しいMirg Shield Nationの領地が出来、そこの開拓が始まる。そうなれば、今度は自分達の村で出来た作物が、開拓地で使うために売れる。
最初は微々たる儲けだろうが、子や孫の世代には自分達の村が新領地とMirg Shield Nationを繋ぐ中継地として、町にまでdevelopmentしているかもしれない。
certainly遠征が失敗すればMirg Shield Nationの経済は落ち込む。だが村人達は遠征の成功を疑っていなかった。
Soldier達はMirg Shield Nationの精鋭揃い。しかも【悲劇のHero Mikhailの再来】、AClass adventurerの【Green Wind Spear】のRiley、そしてAmid Empireに名を轟かせるVampire Hunter、Bormack Gordan High Priestが参加している。
そして遠征軍の目的は二百年前に一度多大な犠牲を出しながらも勝っている、Talosheimだ。そこでMikhailが残したArtifact、Ice Ageの回収を行い、Talosheimを今度こそ平定する。それが表向き発表された目的だ。
Boundary Mountain Rangeは危険な地だと聞いているが、Dragonも退治できるAClass adventurerやVampireを何匹も倒してきたHigh Priestが居るなら大丈夫さ。それにTalosheimは二百年前に一度攻略してるんだ。城塞はきっとボロボロで、敵は烏合の衆のUndeadやmonstersばかり。Alda -samaのCleric-warrior団の敵じゃない。
遠征軍は邪悪なUndeadを退治して、TalosheimにMirg Shield NationとAmid Empireの旗を立ててくれるに違いない。
それが開拓地の村人だけでは無く、Mirg Shield Nationの国民の多くが持っている思いだった。
「頑張ってー!」
「応援してるぞ!」
村人たちの見送りを受け、遠征軍はBoundary Mountain Rangeのtunnelに向かった。
遠征軍は王都Mirgから一か月と数日かけてBoundary Mountain RangeのMirg Shield Nation側のtunnel入り口に到着した。
そしてこれから三日かけてtunnelを抜け、一週間ほどかけてTalosheimに向かう予定だった。
今日はMirg Shield Nation側のtunnel入り口に作られた簡易的な砦兼関所で最後の補給を受け、兵を十分休ませる。この後進むtunnelは、monstersは全てRiley達によって退治されているが、閉塞感という見えない敵と戦いながらの行軍になる。
Lambdaでも経験則から長時間暗闇の中で過ごすと、Mentalに変調を来す事が知られている。certainly magic itemやランタンで照明を確保しながら行軍するが、無理をすれば士気が落ちるのは避けられない。
だから前日に体を休ませ、酒を振る舞い乾いていない肉を喰わせるのだ。
「それで、tunnelの向こうはどうなっておる?」
遠征軍の主だった面々が集まっている天幕で、Boundary Mountain Rangeを越える前の最後の軍議が行われていた。
tunnel入り口に作られた砦兼関所は小規模であるため、この天幕の方が快適に過ごせるのだ。
「地形は二百年前と同じだ。幾らDevil Nestsが広がっているとはいえ、突然火山や湖が出来る訳ではない。ただ、道は使えない」
遠征軍の副Commander、現Mirg Shield Nation Marshallの次男Chezare Legstonが古びたmapを指差してGordanの質問に答えた。
「二百年前の遠征ではMountain Rangeの比較的安全なルートを超えてTalosheimに向かったので、今回我々が進む道とは異なる。森を切り開きながら進まなくてはならない。ただ……」
「ただ、何だ? 報告はaccurateにしてもらわなければ困るな、Chezare -dono」
天幕の奥に腰かけ立派な外套を纏う中年と壮年の間程に見えるNoble、Langil Mauvid Earl。この遠征軍の総Commanderだ。
総Commanderと副Commanderという関係以上にMauvidの態度はChezareを随分下に見ているが、それが宗主国と属国の扱いの違いだ。
「……ただ、大規模なmonsters同士での争いがあったようで、その痕跡が残っていました。その割にtunnelの出口付近では強力なmonstersは少ないようです」
「ああ、俺が何匹か狩ったからな」
報告に口を挟んだRileyに、Chezareは不快そうに眉を潜めた。adventurer上がり風情がと言いたげだが、総Commanderが「彼は遠征軍に必要な中核戦力だ」と遠征軍の幹部と同格の扱いをするよう指示しているのだから、まさか抓み出す訳にもいかない。
それに、厳密にいえば世俗の地位は平民と変わらないGordan High Priestがこの場に居るのだから、Rileyだけ追い出すのも問題だ。
「ああ、-kun達のお蔭でCClass adventurer達が派遣されるまで持ちこたえる事が出来た。その調子でTalosheimでも活躍してくれ」
「任せてくれよ、General閣下。竜が来ようが何が来ようが俺の槍で屠ってやるぜ」
そう言って笑うMauvidとRileyを、ChezareやGordanは不快そうな目で見るのを抑えるのに苦労した。
AClass adventurerとなればそのinfluenceは下手なNobleを上回り、中にはただのconnection以上の信頼関係をNobleや大商人と築く場合も少なくない。しかし、この二人には妙な気味悪さが感じられたからだ。
「前人未到の大Devil Nestsだか何だか知らないが、危ないのはMountain Rangeでそれさえ越えちまえば大した事無いって事だろうぜ。Earl -samaがこのtunnelを見つけてくれたおかげで、この遠征が出来るって事だ」
Rileyがそう言ってMauvidを煽てるが、それはこの場にいる者には事実のように思えた。
実際、Mountain Rangeを越えた向こう側の砦では、何度か竜種に襲撃されたが全てRileyによって撃退されている。他に襲撃してくるmonstersの多くがRank3程度で、WyvernやRank5から6相当の見た事も無いGiant爬虫類型monsters(恐竜)が混じる程度だ。
その頻度は高く、並のadventurerやSoldierではあっさり蹴散らされかねないが、彼らが話しに聞いたBoundary Mountain Rangeの恐ろしさとはかけ離れたものだった。
実際には、Borkus達がtunnelを発見する過程でGoblin Kingの国や竜種を何匹も蹴散らしたからその程度で済んでいるのだが。
それに、そもそもtunnelの出口付近も含めてあの地域はTalosheimの領土近くだった。当時もDevil Nestsだった部分も多いが、Talosheimが健在だったころはcultivation villageを守るためにGiant raceのWarrior達がmonstersを間引いていた。
だから今も竜種が何匹か生息している程度で済んでいるのだ。Devil Nestsではmonstersが次から次に生まれるが、流石にRank10を超えるmonstersが二百年程度で大発生する事は滅多にない。
亜人Typeのmonstersは竜種等よりもBreedingと成長のサイクルが短いので、その限りでは無いのだがこの辺りではGoblin以外の亜人Typeのmonstersは数が少なくDungeon以外では滅多に増えないようだった。
「それでChezare -dono、Ghoulとは未だ遭遇しておらぬのですな?」
「はい。亜人Typeのmonstersで遭遇したのはGoblin程度で、後は一度Ogreと遭遇したと報告がある程度です」
「むぅ……」
AldaからのOracleによって遠征軍に参加したGordanは、tunnelを抜けてもDhampirの手がかりが無い事に低く唸ったが、きっと奴らはもっと奥に巣食っているのだろうと納得した。
Dhampirが遠征の目的地であるTalosheimを占拠している可能性は十分にあり得る。亜人Typeのmonstersは人のいない廃墟をそのまま集落に利用する事が頻繁にあるからだ。DhampirやGhoulもその例外ではあるまい。
「では、tunnelを抜けてからですが、先行部隊を出し危険の有無を確認しながら進む事になります。そのscout部隊にはRiley -dono、貴方も加わっていただきたい」
「ああ、certainly。Dragonなんかの大物が出たら、俺以外じゃきついだろうしな。なあ、爺-san?」
「フンっ。舐めるなよ、若造が」
その後は行軍の予定ルート、scout部隊の編制、後から補給物資を運んでくる補給部隊との連絡手段等を確認し、最後に目的地であるTalosheimの攻略について話し合われた。
しかし、これもGordanやRileyを中心にmonstersを退治しながら進軍し、Talosheimに着いたらまずKnight達が部隊をCommandingして有象無象のmonstersを倒して数を減らす。その後、王城やChurch of Vida跡等のmonstersが潜んでいそうな重要拠点を探索、そして上Classのmonstersの討伐という流れで最初から決まっている-samaな物だった。
遠征軍の殆どの面々にとってTalosheimで自分達が行うのは戦争では無く、Devil Nestsの浄化作業と失われた国宝の探索であるためだ。Gordanにしても、Oracleが本当だったとしても行われるのはmonstersの討伐であるため、「もっと綿密なtacticsを」等と訴えはしない。
そしてそれが済むと、さっさとGordanは天幕を退去した。Nobleに媚びるつもりが無い彼からしてみれば、軍議に参加する事は苦行の、それも単に苦しいだけで修行にならない類のものなので長々と残るつもりは元からなかった。
Chezareも「では、私はSoldierやKnight達の-sama子を確認してまいります」と言って天幕を出て行った。
「それでGeneral -sama、あの二人は何時始末するんだ?」
「困るな、Riley。老いぼれ坊主はin any case Chezareには私が健康上の理由で退いた後、総司令官を引き継いでもらわねばならんのだ。その前に死なれたら、この遠征の責任を取る者が居なくなるじゃないか」
GordanやChezare、そしてChezare子飼いの部下が天幕から居なくなると、RileyとMauvidは残った者達と本当の軍議を始めた。
彼らを含め、この天幕に残っている者達は全員が遠征の真の目的を知っており、そして【Evil God of Joyful Life】Hihiryushukakaを奉じるVampireと繋がる者達だった。例外はたった三人程。
「やれやれ、adventurer上がりの俺には面倒臭い話だぜ。なあ?」
「そうでもないさ、Riley -dono。これでも我々のworldも複雑でね」
そうRileyに答えたのは、金髪碧眼で顔に幾筋も傷跡が残っている歴戦のmercenaryといった風貌の男だった。
しかし、次の瞬間には三十代程の女になっていた。まるでmercenaryと女が【瞬間移動】で入れ替わったかのようだが、真実は女がmercenaryの男に化けていたのだった。
「場合によってはHuman社会よりも複雑よ。だから貴方達の事情も理解するわ、存分にやりなさいな」
姿だけでは無く声すら変わった女は、白いfangsを見せて笑った。
女はPure-breed Vampire Terneciaから派遣されたNoble-born Vampireであり、今はMauvid Generalが特別に雇い入れたmercenary部隊として遠征軍に参加していた。
「それで、問題のDhampirとVampireの裏切り者の始末、手を貸して頂けるのですな、Isla -dono」
「certainlyよ。まあ、裏切り者のEleonoraは【Charming Magic Eyes】にさえ注意すれば大した事無いし、Sercrentは死んでいる可能性が高いけど。
難しいようなら、手を貸してあげるわ。ばれない-samaに、こっそりとね」
Islaの役目は、Eleonora達裏切り者の始末だった。遠征軍の多くはTalosheimにVampireが居る事を知らないので、逃げられる可能性が高いからだ。そのため、bloodの主の居場所を探知するmagic itemを貸与されたIsla達が、裏切り者をどさくさに紛れて始末するのだ。
そして他に遠征中に邪魔なVampire Hunterを暗殺する事、そして何よりEvil God (M)がOracleを下してまで抹殺を命じるDhampirの始末を確実に行うための切り札でもあった。
「そのためにTernecia -samaは私を遣わしたのだからね。Ternecia -samaの配下の中でも五指に入るこのVampire Countの私を」
Vampire Count。伯peerageを名乗るVampireであり、Rankは10。
退治しようとすればAClass adventurerが必要であり、それもVampireが正面から受けて立った場合だ。これ程上位のNoble-born Vampireは当然のように多くのSubordinate Vampireを従えており、下手なDungeonより危険な居城に隠れ潜んでいる事が少なくない。
結果、AClass adventurerで組んだpartyですら返り討ちに合う事がある存在だ。Gordanとて、カウントのVampireを倒した事は無い。
しかも Islaの下にはBirkyneやGubamonから派遣されたVampireも含めて三十人のVampireが従っている。最低でもRankは7で、彼女より一段落ちるがRank9の子peerageのVampireも二名いる。
彼女達だけでこの遠征軍を壊滅conditionにする事が可能な、大戦力だ。
「へへっ、その必要はないぜ。あんた等が執心しているDhampirは俺が始末してやるからよ」
しかしAClass adventurerでありHeroの俺が畏れる相手じゃないと、RileyはIsla達に対して臆することなく口の端を釣り上げて見せる。手柄は俺のだと、牽制しているのだ。
それに対してIslaは特に気分を害した-sama子も無く、微笑で返した。
「期待しているよ、Hero -dono」
彼女にしてみれば使命を果たす事が最優先で、つまらない手柄に拘っても益が無いからだ。RileyがDhampirを殺してくれるのなら、それで十分だ。
「しかし、大丈夫なのですか? これが遠征である以上、昼間の戦いとなりますが?」
Vampireの弱点である太陽が空にある時間帯だ。当然彼女達も対策をしているし、相手にとっても同じ事だろうが攻め込む側である以上、こちらが不利だ。そう指摘したMauvidに、Islaは笑みを深くする。
「問題無いわ。それにTalosheimはMountain Rangeに挟まれた都市よ。既にZakkartの遺産であるMercury Mirrorも二百年前に貴方達が破壊してくれたし、すぐに日は陰るわ」
暖かくなり、春眠暁を覚えずと言った日々が続くTalosheimで、Vandalieuは目を見開いていた。無言のまま、瞬きもせず虚空を見つめている。
「来た、奴らが来た」
tunnel付近に設置した監視用GolemやUndeadの視界には、Mirg Shield Nationが立てた砦の賑やかな-sama子が見えていた。
派遣した使い魔、Lemureに視界を切り替えると砦の壁の内側に、このLambdaに来てからは見た事が無い程大量のHumanの姿がある。
その数は数千程か。一万は越えそうにないが、五千はいそうだ。
「Vampireはいるの?」
「見ただけでは判別できません。板金鎧を着こんだKnightも結構いますし」
Vampireは瞳とfangs、そして肌からbloodの気が失せるぐらいで、姿は元になったraceから大きく変わらない。ただSunlightにweak為、skinを焼かれない-sama厚い布やfurのマントや帽子、hoodを目深に被って外に出ると通常なら目立つ。
しかし、軍隊のように鎧や兜を被っているのが自然なconditionなら目立たない。
「maybe、Knightには居ないと思うわ。mercenaryかadventurerに紛れ込んでいるはずよ」
「Mirg Shield Nationはこういう時、出来るだけフリーのadventurerは雇わないって面倒な慣習があるのよ。だから、紛れ込むならmercenaryね」
Vampireの事情を知るEleonoraの言葉を、元Mirg Shield NationのadventurerだったKatiaが補足する。
「それなら、あの一団かな?」
他の兵とは異なる鎧や盾を持った一団に、Vandalieuは目を付けた。全員兜をかぶった重武装の一団だが、列を乱さず行軍している。
数は三十程。そしてcertainly、Sunlightに肌を晒していないので顔は分からない。
「まあ、居るらしい事が確実なら、儂は今日中に出た方がよかろうな。西と東、どちらに行くかの?」
「じゃあ、東側で。奴らが来るとしたら、昼過ぎでしょうから」
「うむ、任せておけ」
Zadirisを送り出し、Vandalieu達は動き出した。Dungeon攻略中の仲間を呼び戻し、準備を整える。
originally二年前からこうなる事を予想して準備していたので、慌てる事は無い。秘密兵器も切り札も幾つも用意してきた。それを表すように六千の、それも漏れ聞こえてくる話し声からconjectureすると精鋭揃いの遠征軍が迫って来ると聞いても、Vandalieuも含めて誰も悲壮感を抱かなかった。
遠征軍が倍の数に増えても、彼らの顔色は変わらないだろう。
「最終確認ですが、遠征軍を殺してもその場で食べるのは控えてくださいねー」
『分ってるぜ、King。代わりにmayonnaiseを多めにな!』
「ああ、人肉よりも恐竜の味噌炒めの方が旨いからな!」
『あたしは将棋ってのが欲しい!』
「はいはい、mayonnaiseに味噌に将棋に、戦勝祝いは張り切って出しますから、皆は死なない-samaに頑張って。あの世までは渡しに行かないから」
『Undeadに死ぬなってか! 分かったぜ、Eclipse King陛下!』
町の雰囲気も普段より明るい程だ。Pauvinaの-samaな非戦闘員の避難場所もしっかり用意してあるので、Earthのpanic映画によく在る、逃げ惑う一般人といった光景は一切ない。……Talosheimから逃げても行く場所は元から無いし。
当たり前だがBoundary Mountain Rangeに挟まれたContinent南部に、安全地帯はTalosheim以外に存在しない。
「常に背水の陣だから、自重しないで備えて戦って当たり前なんですよね」
Boundary Mountain Rangeをまた超えたとしても、GhoulやUndead Giant達はOrbaum Elective Kingdomでもmonsters扱いで狩られる立場だ。
だからあの遠征軍を撃退しなければならない。そして、捕虜はほぼ取れない。
いくら精鋭揃いとはいえ、普通なら自軍が三割ほど減れば撤退を考える。特に遠征軍にとってここは戦争には悪い条件が揃っている。
周囲に安全地帯が全く無いのは遠征軍も同じ事で、今は数千人が纏まって行軍しているからmonstersも警戒して、GoblinやNeedle Wolfのような考えnoneのmonstersか、防御が薄い所を狙って小規模の群れが襲い掛かって来るくらいで済んでいる。だが数を減らしバラバラになって逃げ出せば、monstersに殆どやられてしまうだろう。
軍の形を維持したまま撤退するにしても、Boundary Mountain Rangeのtunnelまで逃げ帰るのにも数日かかる。
だからVandalieu達が投降を呼びかければ、それがGhoulやUndeadだったとしても逃げられないと悟った者が数百、もしかしたら千ぐらいは投降して捕虜になろうとするかもしれない。
「でも、それで捕虜にしても……」
『どうしようも無いでしょうな』
SamがVandalieuの言葉の後半を代わりに言った。
『戦時での捕虜の扱いは、敵方から身代金を受け取って解放するか、Slaveとして連れ帰るかですが、Amid EmpireもMirg Shield Nationも我々と交渉する気は無いでしょうし、Slaveとして使う事も難しいですからな』
普通の戦争なら捕虜の扱いは大体Samが言った通りだが、Amid EmpireとMirg Shield Nationから見れば、Talosheimは国では無く、Vandalieuも王では無い。ただのmonstersだ。
交渉など絶対に成立しない。Vandalieu達が試みても。Empireも盾国も、Dhampirが王のGhoulとUndeadの国など絶対に認めないだろう。
『Slaveの方は数十人ならin any case、百や二百となると管理しきれません』
Nuazaが言う通り、そして捕虜をSlaveとする方法も難しい。世の中にはSlaveを強制的に従わせる首輪型magic itemが存在するが、Talosheimには無いのでEarthの刑務所のように監視しながら働かせる事になる。
ゴロツキやチンピラでは無く、厳しい訓練と実戦を経験してきた精鋭兵を。
投降した時心が折れていたとしても、時間が過ぎればfeeling of revengeやAldaへのreligionを取り戻すかもしれない。
「そもそも、俺達は数が少ない。二千人も居ないのに数百人も管理できるはずが無い」
現在のTalosheimの総人口は、Cemetery BeeやImmortal Entを抜くとUndead Giantが約千にGhoulがchildも含めても約七百、Braga達新種が二百。約千九百だ。
Golemに任せると捕虜に隙を突かれる未来しか見えないし、急造のZombieにやらせても同じだろう。Rank3のmonstersを一人で倒す精鋭兵だ。丸腰でもRank2程度ならどうとでもなるだろうし、何人かで協力すればRank3でも倒せるかもしれない。何せこのworldのUnarmed Fighting Techniqueは、Martial Artsを使えば岩くらい平気で砕く。
徒手Air FistでもBrown Bearくらいなら何とかしてしまう連中だ。
そもそも、捕虜をSlaveにしたとしてその後どうするのかという問題がある。
死ぬまでこき使うにしても、そもそもTalosheimには疲れ知らずのUndeadやGolemが居るので、労働力としても劣る。
懐柔してallyにするのは、奇跡を起こすよりもずっと難しいだろう。同じHuman同士なら敵国の出身であっても、根気良くやれば懐柔できるかもしれない。
しかし、Vandalieu達は遠征軍にとってHumanですらない。monstersだ。しかも捕虜にとって戦友を殺した仇で、国教のAlda教では倒すべき存在。
そして何より、その手のKnowkowを持っている者がVandalieu達には一人もいない。
『ですがMikoが【Death-Attribute Charm】skillを使えば、懐柔も可能では?』
「あのskillを前提に考えるのは、嬲り殺すのとほぼ同じです」
例え生きているHumanでも、【Death-Attribute Charm】のimpactを受ける事はKatia達で判明している。
しかし、そのためには心の底から生きる事にdespairし、死ぬ事に救いを求めるMental conditionにしなければならない。
だから捕虜を生かしたまま【Death-Attribute Charm】で寝返らせようと思えば、凄惨なTortureで捕虜の心を折って粉々に壊し、死んだ瞳で「殺してくれ」か「死にたい」と呟く事以外出来ないconditionにでもしないといけない。
「それぐらいならさっさと殺して、Undeadにしてからallyにした方が人道的じゃないですか」
『そうですな。情報に関しても、Bocchanなら殺してから聞き出した方が早いですし』
「しかし Mikoよ、何故今更敵兵の処遇で悩んでいるのですか? とっくに皆殺しにすると決めたはずでは?」
「それはそうなんですけどね、いざとなると……あいつ等、きっと面倒な事を言い出すんだろうなって」
『あいつ等?』
「ええ、俺以外のReincarnatorです」
遠征軍を皆殺し、Mirg Shield Nationを衰退させる。
Reincarnator達は恐らくこの所業を悪行だと見るだろう。そう思うとVandalieuの気分は憂鬱になるのだった。
「まあ、深く事情を説明すれば解ってくれる……かな? でも解ってくれなかった時の為にも強くならないと」
結局最後はこの結論か。このworldは強くなる動機が多すぎる。
・Name: Isla
・Rank: 10
・Age: 約三万age
・Title: 【Terneciaの猟犬】
・Race: Vampire Count(Noble-born Vampire Earl)
・Level: 79
・Job: Slaughtering Executioner
・Job Level: 88
・Job History: Apprentice Warrior、Apprentice Mage、Magic Warrior、Execution Warrior、Shapeshift Warrior
・Passive skills
Dark Vision
Abnormal Condition Resistance:9Lv
Mysterious Strength:9Lv
Rapid Regeneration:3Lv
Mental Corruption:3Lv
Slaughter Healing:7Lv
Intuition:5Lv
Strengthened Attribute Values: Loyalty:Ternecia:5Lv
・Active skills
Bloodsucking:4Lv
Water-Attribute Magic:5Lv
Fire-Attribute Magic:5Lv
No-Attribute Magic:1Lv
Mana Control:5Lv
Sword Technique:10Lv
Armor Technique:9Lv
-Surpass Limits-:7Lv
High-Speed Flight:5Lv
Pursuit:8Lv
Torture:5Lv
・Unique skill
Shape-Shift:7Lv