主だったmemberの内Dungeon攻略等で留守にしている者を除いて、王城のホールにVandalieuは集めていた。
確実となったMirg Shield Nation軍とVampireの侵攻を報告し、これからどうするか相談するため。そしてmayonnaiseの試作品を味見してもらうためだ。
『うめぇっ! 滅茶苦茶旨い!』
「我はもう少し刺激を加えるべきだと思う。ワサビを入れてみたらどうだ?」
「そうか、儂はこのままでも行けると思うが……」
「これは……! こんな調味料食べた事ない、Vandalieu -sama、これはどんなCookingに使うの!?」
『お゛ぉぉぉぉぉおん!』
「れえろ……あ゛……あ゛あぁぁぁぁっ!」
「えっ? なっ……ひえええええっ!?」
『ああっ! RapiéçageがTarea -sanの口元に付いたmayonnaiseを狙って組みついた!』
「見てないで止めて下さいまし!」
『あは♪ 私達が食べられない美味しい物を試食するTarea -sanの言う事なんて聞こえません☆』
「いやあああああああっ! この人でなし!」
「仕方ないのぉ、ほれこれをやるから止め――」
「あ゛ぐうぅ。ぢゅずずずずず~っ」
「……坊や、このZombie娘、全力で儂の指を吸ってくるのじゃが」
「うーん、やっぱり本人の霊じゃないと知能がほぼ獣並に落ちるなぁ。Spirit Formを追加してもあまり意味が無かったし」
っと、軍の事はさて置いてmayonnaiseの試食の方が主題に成っていた。皆appetiteには勝てないのだ。
まあ、Rapiéçageは話し合うも何もそこまで頭が良くないのだが。彼女はVandalieuの言う事に従う以外は、まんまZombieで未だに言葉一つ話さない。
Bone Manの時のようにSpirit Formを新たに追加してみたが、効果は全く無かった。やはりあれはBone Manが特別だったのか、それとも相応の学習や人生(?)Experience Pointが必要なのだろうか? とりあえず後者だとconjectureして今は育つのをゆっくり待とう。
ZombieもSkeletonも、子育てと同じですぐには育たないのだ。
「Rapié、Zadirisの手から口を放して」
「……う゛ぅ」
紫色のlipsを開いて、ねっとりと糸を引く青いtongueをZadirisの細い灰褐色の指から離すRapiéçage。Zombieにした後、何故か彼女のlipsやtongueの色は変化してしまった。-chanと【Preservation】のmagicでDecompositionは止めているのだが。
「ぬぅ……おもいっきり儂の爪まで舐めおって。麻痺しても知らんぞ」
「彼女、Undeadですから」
「知っとるわい。思いっきり縫い目が見える」
「ふぅっ、危うくVan -samaの前で同性のZombieにlipsを奪われるところでしたわ」
「油断も隙も無いわね」
慌てて口元を拭うTareaとEleonora。EarthのZombie物では、Zombieは視覚が鈍い代わりにSense of smellが鋭いと言う設定の作品がよくあったが、LambdaのZombieではそうでもない。
特にRapiéçageは頭にHumanの物を使っているから、Undead Transformationで手に入れた【Dark Vision】以外はほぼHumanのfive sensesそのままだ。だから口元を拭っただけでもうmayonnaiseに気が付かない。
それを考えると、EarthのZombieって意外とハイスペックなのかもしれない。
「さて、じゃあそろそろMirg Shield Nation軍に付いて――」
『皆殺しで決まりだろ。そんな事よりmayonnaise無いのか?』
「試作品だからもう無いです」
『なにぃっ!? ならもっと作ろうぜ!』
「Vandalieuっ、どうやって作るんだ!?」
「待て、そもそも材料が足りなかったら無駄じゃろうが。坊や、何が必要なのじゃ?」
「……作るから話を聞いて」
とりあえず、Lambda産mayonnaiseは好評のようだ。
その後RapiéçageやKnochenを除き、Vandalieuも含めて全員がそれぞれmayonnaiseを作りながら情報の共有化と、Mirg Shield Nation軍に対する話し合いが行われたのだった。
これが後に伝わる新生Talosheimのmayonnaise会議である。
Vandalieuがmayonnaiseを作っている最中に、Mirg Shield Nation側に繋がるtunnelを塞ぐ岩が破壊され、中からadventurerとVampireが現れた。話している内容から判断すると――
・【Evil God of Joyful Life】Hihiryushukakaを奉じるVampire達は、Empireや盾国を利用して二百年前のTalosheim侵攻と同じ事をしようとしている。
・Vandalieuの居場所は、magic itemでEleonoraの居場所を調べて、そこからTalosheimに居るとconjectureしたようだ。
・ただ、Talosheimを今から偵察するつもりは今の所無いらしい。以前Vandalieu達が戦わずに密林Devil Nestsから逃げたので、同じ事が起こる事を警戒していると思われる。
後、偵察の過程でもし死者が出たら、その霊から情報が漏れる事を危険視しているようだ。
「確かに何度かbloodを取られた覚えはあるけど、まさかそんなmagic itemが有ったなんて……」
「まあ、気にせず。真っ直ぐこっちに来てくれる分には好都合です。
それで今はadventurer party四人と、Vampire一人が残ってtunnelの出口を守っています。Vampire側には戻ったVampireが。Mirg Shield Nation側には、magic itemで連絡したようです」
流石十万年以上生きるPure-breed Vampireがtopに居るcommunityだけあって、Eleonoraも知らない-sama々なmagic itemを所有しているようだ。とは言っても、あのitemは明らかに裏切り者の居場所を探り出すための物だから、【Evil God of Joyful Life】の教義やBirkyneの性格を考えると、似合いのitemと言えるだろう。
(Valen……父-sanの居場所もあのitemで探し出したのか? まあ、それはin any case……)
「それで、来るのは何時頃に成りそうなのじゃ?」
「具体的にはまだ決まってないようです」
adventurer達の話からconjectureすると……これからtunnelの安全の確認と出口を守るためのadventurerとKnightが来る。それと交代でadventurer達は帰還。それと同時にtunnelの発見とその後の侵攻に付いての軍議をAmid Empire主導で行う。
その軍議で予算やら動員する兵やKnightの数、何処から出すかを決める。
tunnelの方では「古代の悪霊を退ける為」とかなんとか口実を作って、Alda templeのCleric達が派遣され聖水を振りまきながら浄化作業を行う予定。実際には【Spiritualist】だとconjectureされているVandalieu対策だろう。
そしてAmid EmpireとMirg Shield Nation連名で今回の遠征について大々的に発表。式典やら祭典やら派手にやって、国民の士気を高める。そしてAmid EmpireでMauvid General主役の遠征勝利の前祝のpartyをして、それから子飼いのKnight団とEmpireを出発、mercenary団に扮したVampire達と途中で合流して、同時期にMirg Shield Nationの方でも参加するSoldierとKnightを国中から集めて、式典をして……。
「以上のプロセスを考えると、どんなに急いでも冬に成るかと」
「……Humanは急ぐと死ぬのか? 百年も生きないくせに何故我等より気が長いんだ?」
「うーむ、さっさと来ればいいものを」
GhoulのVigaroとZadirisには、やたらと途中で入る式典やらpartyやらが無駄に思えるのだろう。
Vandalieuも決起集会的な意味のpartyならまだしも、式典は無駄に思える。まあ、やらないとKnightやSoldierの士気が落ちるのだろうが。
「そういう儀式が好きなものなのですわ、Humanって」
「そんな習性と生態の生き物だと思うと楽よ」
っと、元人のTareaとEleonora。
『父-sanが、偉い人は偉いように見せないといけないんだって、昔教えてくれました』
まあ、そういう物だ。世襲不可とは言え、Nobleに成る事を目指すVandalieuも将来的にはそうしなくてはならない問題だが。
『なら、来るのは春だろうぜ。この辺りは冬でも雪が降る事はねぇが、冷えるからな』
Borkusの言う通り、Mountain Rangeに挟まれたTalosheimの冬は寒い。雪が降らないのに、滅茶苦茶寒い。
maybe東西どちらかのMountain Rangeで雪雲は止まるが、寒気はそのままMountain Rangeを越えて吹き降ろして来るのだろう。
そう言う訳で、冬は行軍するのが厳しい。あのtunnelからTalosheimまで、普通に歩いて五日ほどかかる。tunnelを抜けた後は、雪は無いが道が整備されている訳でもないし、向こうはTalosheimがある方向は二百年前のrecordで解っても、広がったDevil Nestsを避けて進む事は不可能なはず。
それを行軍しようと言うのだから、冬に実行したらTalosheimに来るまでに軍は大分弱るだろう。
『まあ、連中はこの辺りの気候に明るくねぇだろうが』
「しかし、明るくないからこそ慎重になると思います。Vampire達は冬の寒さも平気でしょうが、奴らは今回Humanの軍を利用するつもりです。無理矢理冬に動かそうとはしないはず」
「確かに、それをするぐらいなら、最初からHumanと組まずにVampireだけで来るわね」
真剣な顔で話しあう一同。ただし、全員片手にハンドミキサーGolem、もう片方の手には油が入った容器。それでボウルの中身を掻き混ぜたり加えたりしながらmayonnaiseを作っている。
とてもシュール。
「じゃあ、やっぱり春か。あっ、Borkus、油を入れるpaceが速い」
流石に夏までグズグズしてはいないだろうから、春だろう。
『う~ん、中々面倒だな』
「旨い物を作るのは面倒な物じゃよ。坊やが何時もやっておるじゃろ」
『まだ自分で食べられないのに私達が作っているんですから、弱音を吐かないでください』
「それで、そのtunnelを守っているadventurerとVampireはどうする? 始末しておくか?」
「それはとても魅力的ですけど、放置で」
放置する理由は幾つかある。まず採算が取れない。adventurerとVampireを数人始末するなり捕まえるなりしても、手に入る情報も意味は無い。
何故なら敵側はこれから遠征軍に投入する戦力を集めるからだ。今の段階でRileyやVampire達が知っているとは思えない。Vampire側の戦力も同-samaだ。見張りをしている-samaな奴が重要な位置にいるとも思えない。
そもそもRiley達のいるtunnelの入り口に行く事自体がかなり面倒だ。道も何も無い、Devil Nestsを幾つも横切らなければならないのはこっちも同じなのだから。
去年Borkus達が一度行って、その道中でかなりの数のmonstersを倒しているが一年も経てば他のmonstersが縄張りにしているはずだ。それと戦いながらこっそり近づいて襲撃してまた帰って来るのはかなり面倒だ。失敗する可能性も高い。
それに成功しても、敵の警戒心を煽るだけに成るかもしれない。
『魅力的って、誰か居たの?』
「【Green Wind Spear】のRileyってadventurerが。声に聴き覚えがある」
忘れもしない、Evbejiaで聞いたHeinzの仲間の声だ。Darciaを捕まえGordan High Priestに売り渡して手に入れた金で、彼女が火炙りで殺された日に酒を飲んで供養しようと言った奴の声だ。
それをVandalieuが説明すると、皆は顔を強張らせ、Darciaは心配そうに息子を見つめた。
『Vandalieu、今は……』
「はい、今は放置します。別に一人でこっそり殺しに行こうとか、そんな事しないから安心して、kaa-san」
仇を討ちたい。討たなければ、奴らは何時またこっちを殺しに来るか分からない。
そして可能なら自分の手で殺したいが、無理なら別に良い。
「どうやら奴も遠征に参加するそうなので、戦場で遭遇したらお願いします。でもAClass adventurerだから気を付けて」
『ほほぅ、AClassか』
「adventurerに我の力がどれくらい通じるか、試してみたい」
『ヂュウゥ、滾りますな』
「そうさな。今の状況でadventurerに遠慮する理由はあるまい」
っと、戦意の高い一同。向こうは明らかに敵で、Vampireとも組んでいる。そしてVandalieuの仇だ。慈悲も同情も湧く理由が無い。
「Mikhailの再来をself-proclaimedしているみたいですよ」
『マジか? AClassでSpear Userねぇ、そいつは益々面白れぇ』
Rileyは特にBorkusのKilling Intentを煽ったようだ。それに奴は遠征軍でも目立つ、際立った戦力に成るだろうから倒せばSoldierの士気が落ちるだろう。
是非首を持って帰って欲しいものだ。
『Borkus -sanも皆も、Vandalieuと私のためにありがとう。でも無理はしないでくださいね』
「うむ、もちろんじゃ。ところで坊や、そろそろ出来上がりかの?」
「私のも、そろそろだと思いますわ」
そしてmayonnaiseが出来上がり、皆で山菜に塗ったり、ワサビやニンニクや生姜を混ぜて肉にかけたりして、色々試しながら食べて行く。
Giga Birdの卵と敗戦花油のmayonnaiseは、Earthで食べた物よりも味が濃い気がした。
(お好み焼きやたこ焼に合う-samaな気が……でもドングリ粉のProductionが……)
Vandalieuにとって、前から準備していた対遠征軍問題よりも食糧関連の方がよっぽど悩ましい事だった。
幸い、Immortal Entから取れるドングリはFlowing Waterに晒さなくても灰汁が薄く、そのままドングリ粉に出来る。
しかし、Immortal Entの数の関係で一日に作れるドングリ粉の量は、Talosheimの現在の人口と比べると十分とは言えない。
(まあ、上手く行けば来年の初夏から夏までには解決の目途が立つか)
「っと、言う訳で当初の予定通り遠征軍を壊滅させ、その後使い捨て用新戦力を補充。その後、Mirg Shield Nationに大打撃を与えて国力を削り、その後tunnelを破壊します」
『おーっ!』
「……お゛ぉお?」
mayonnaiseを舐めていて遅れたRapiéçageも加わって、その場にいた全員で声を合わせたのだった。
何故遠征軍を壊滅させた上に、Mirg Shield Nationにも大打撃を与えて国力を削らなければならないのか? やはり恨みか? 二百年前の復讐なのか?
それが無いとは言わないが、意外な事に合理的な理由が-chanとある。
まず基本的に今のTalosheimと、Mirg Shield Nationとその宗主国であるAmid Empireの間には、互恵関係どころか和平が成り立たない。Human社会、それもAmid Empireにとって今のTalosheimは国ではない。廃墟に住みついただけの危険なmonstersの群だ。
規模と危険度が違うだけで、Goblinの群と変わりない。
Vida's New Racesの一種とは言え文明を持つGiant raceの国に、使者も送らず降伏勧告も無く攻め滅ぼし捕虜も獲らずに殺し尽くしたのだ。今更彼らにとってのGoblinの群と話し合いが成立するとは思えない。
自分達が劣勢に成れば撤退勧告ぐらいは受け入れるだろうが……その後更に数と戦力を増やした遠征軍が派遣されてくる可能性が高い。
-sama々な工夫や挑戦を続け、困難と挫折にめげずに、何年何十年とかければ現場levelの話し合いなら望みはあるかもしれない。
しかし、Alda templeが大人しくしていると思えないし、Ice Ageの言動からconjectureすると、Empireが奉じるAlda神そのものも話が通じるとは思えない。
更に、Amid EmpireとMirg Shield Nationには中枢のかなり深い所に【Evil God of Joyful Life】Hihiryushukakaを奉じるVampire達のシンパが居る。そう、遠征軍を派遣させる事が出来るほど中枢深くに。
友好を試みれば、それを利用されるのがオチだ。
そして遠征軍を撃退するだけではなく何故Mirg Shield Nation本国にまで打撃を与えるのかと言うと、それはこれまでの歴史に学んだからだ。
Amid Empireは、宗主国と属国の関係を維持する事を重視している。二百年前の侵略もそうだし、そして今回の遠征も、Empireの中枢ではMirg Shield Nationが最近増してきた国力を削るためのものとされているらしい。
つまり、遠征軍を撃退してもMirg Shield Nationの国力がまた増せば同じ事が起こる可能性が高いのだ。
逆に、国力が落ち込んでいる間はBoundary Mountain Rangeを越えて遠征を行おうなんて言いださない。Vampireのシンパが中枢に居ても、Alda temple関係者が金切り声を上げても。
Amid Empireの敵は隣国のOrbaum Elective Kingdomなのだから。それを無視して遠征を繰り返せば、いずれMirg Shield NationだけではなくAmid Empireその物の国力も落ち、Orbaum Elective Kingdomとの戦争にloseしまうだろう。
(まあ、Vampireはどうにもならないけどtunnelさえ潰せば暫く……今度は数年から長くて十年以上持たせられるだろうし)
Vandalieuが発見したMirg Shield Nation側のtunnelを破壊しなかったのは、あえて通り道を残す事でVampireやMirg Shield Nation軍が動いた時、すぐに察知するためという理由があった。
Vampire達が他にMountain Rangeを越えるルートを探し出してしまったら、事前に気が付く事が困難だからだ。
しかし、その理由が満たされた以上tunnelは潰してしまった方が良い。軍が来なくなっても、adventurerが個人的に入り込んで来たら困るからだ。人類未踏のContinent南部と言うフレーズに誘われてAClass adventurer partyがうろつき始めたら、厄介この上ない。
『っで、坊主。これから戦争に成る訳だよな?』
ボウル一杯のmayonnaiseを-sama々な食べ物に付けて食べて、一心地着いた-sama子のBorkusが不意に口を開いた。
「そりゃあ、そうですね」
向こうにしてみればmonstersの討伐だろうが、こちらから見れば防衛戦争と逆侵攻だ。戦争と言えば、戦争だろう。
『じゃあ、色々な物が必要に成るよな』
「そりゃあ……でも武具はTareaとDataraが十分作ってくれているし、それ以外にも肉や魚は春までの間に備蓄して、ドングリや胡桃、油はImmortal Entから収穫できるし、蜂蜜も大丈夫。水は運河が町の中を流れているし、井戸も幾つかあるし……何かあります?」
このTalosheimは周囲にDungeonがあるため、籠城戦に強い。二百年前もそうだったが、Giant raceがUndeadに成ってVandalieuが来てからは益々籠城戦に強くなった。
備蓄は半永久的に保存できるし、そもそも戦力の半数以上がUndeadとGolemだ。Ghoulは-chanと食べる必要があるが、最悪、敵兵をそのまま食料にしてしまえば問題無い。
運河に毒を流されてもすぐ【Disinfect】のmagicで毒性を消す事が出来る。今から慌てて集める必要のある物というのは、Vandalieuには思い浮かばなかった。
『決まってんだろ、旗頭だ。戦争するにはGeneralが必要だろうが!』
「えー、またその話ですか」
どうやらまだBorkusはVandalieuをTalosheimの王位に就ける事を諦めていなかったらしい。
国家的に破綻している今、Vandalieuが王位に就いても何も変わらないと思うのだが。
「Van -sama、そろそろ観念するべきだと思いますわ」
『そうですよBocchan、Open Plazaの石像も完成したじゃないですか!』
「あれに関しては色々言いたい事が無い訳は無いんですけど……」
王城前のOpen Plazaに飾られているVandalieu像について思い出し、Vandalieuは歯切れ悪く言った。
あの石像、出来は良い。流石Stonemason職人達がprideを持ってやってくれた仕事だと思う。
しかし……石像の方が表情豊かなのでSlightly Vandalieuに見えないのだった。
「だけどVandalieu -sama、Orbaum Elective KingdomのHuman達もTalosheimには来られないのでしょう? ならば懸念する事は無いのでは?」
Eleonoraの言う通り、Orbaum Elective Kingdom側のMountain Rangeにあったtunnelは普通の手段では修復する事は不可能な壊され方をしていた。
このworldのEngineering技術がどうなっているのかVandalieuは知らないが、一流のEarth-Attribute Mageが百人規模で働いてもきついのではないだろうか?
【Golem Transmutation】skillと二億越えのManaを持つVandalieuでも、修復するには数日はかかりきりになる必要がある。
いっそ、他の場所で一から掘り始めた方が早そうだが……数千年前にtunnelを掘ろうとしたら、地中に生息していたmonstersが出てきてtunnelどころか周囲の領地を蹂躙されて、それが切掛けで国が滅んだという逸話が残っている。
教訓は、Boundary Mountain Rangeには手を出すな。
「まあ、そうですけど……」
「それにじゃ、向こうから見たら坊やがもうここの王みたいなものじゃろう。坊や、戦争が始まるとしてtacticsをCommandingするのは誰じゃ?」
「ええっと、BorkusやVigaroやZadiris――」
「それは現場Commanderじゃ。全体をCommandingするのは誰じゃ?」
「……俺ですか?」
『それはそうですよ。皆Bocchanが言い出した事じゃないですか』
Ritaが言う通り、遠征軍とVampireへの備えから来年春の戦争の流れとtacticsは、Vandalieuが立てた物だ。certainly皆の意見を聞いたり間違いを指摘されて修正を加えたり、新しく加えたり、取りやめた事もある。しかし、tactics全体を発案したのはVandalieuだ。
「それに、Talosheimで『誰が長だ?』と聞かれてお前以外の名を出す奴がいるのか? 我はVandalieuと答えるぞ」
『ぢゅ。既にこのTalosheimは主の存在が不可欠、配給もPlace of Exchangeも主が居なくなれば業務が止まってしまいます』
既に……いや、以前からTalosheimで暮らす者達にとって、Vandalieuは長だった。GhoulやBraga達新種にはGhoul Kingであり、Undead Giant達にはOracleのMikoであり、それ以外のRitaやEleonoraやCemetery Beeにはmasterだ。
そしてBone Manが指摘した通り、Talosheimの日常はVandalieuが居なければ回らなくなっている。Golem工場はManaが切れるまで動き続けるし、鰹節を燻す施設は完成している。今作ったmayonnaiseも、手間はかかるが作れる。
しかし味噌や魚醤は彼が居ないと作れないし、昆布は作るのに年単位の時間が必要になる。
それにGolemだって数十年程度ならin any case、永久に動く訳じゃない。
どうやら、何時の間にか名乗りを上げた訳でも意思表明をした訳でも、どちらかと言えば拒否していたのに実際にはTalosheimの代表者に成っていたらしいと、Vandalieuは思い至った。
(気は進まないけど……まあ、secondary nameに成る可能性は『OracleのMiko』が何時まで経ってもsecondary nameに成らないから大丈夫か。
それに、成っても今更か)
将来adventurerに成って名を上げる予定があるので、guild登録時にStatusがばれる場合を考えていたのだが……ふと、今更遅い事に気が付いた。
【Death-Attribute Magic】や【Death-Attribute Charm】、【Mental Corruption】に【Strengthen Follower】はまだしも、secondary nameの【Ghoul King】にskillの【Soul Break】やUnique skillの【God Slayer】と言った、パッと見て異常だと分かるskillが既にある。
まあ、それを見るのはguildの受付の人だろう。Guild Masterといった偉い人が、態々childのguild登録をしてくれるとは思えないし。登録した後その町からダッシュで逃げて、活動するのは他の町にすればそう大事には成らないかもしれない。
そう自分を納得させて、Vandalieuは言った。
「分かりました。俺、王に成ります」
《【Cooking】、【Long-distance Control】、【Strengthen Subordinates】のlevelが上がりました!》