「そういう訳でUndeadが増えました」
『おめでとうございます! Bocchanが虫と恐竜Undead以外を作るのは、私達以来ですね』
『わぁ、後輩が出来ると思うと嬉しいです!』
『おぉぉぉおぉん?』
『Knochenは作られたと言うより、変化したので違うのでしょう』
因みに、Bone ChimeraのnameはKnochenにした。ドイツ語でboneと言う意味である。
『何はともあれ、おめでたいですな』
和やかにSalire達の前で新人(?)のお披露目だ。
Mikhailの仲間の死体のpartsを使って、VandalieuはUndeadを作る事にした。
本人の霊が無くとも、Heroの仲間の死体と大量のManaを材料にUndeadを作れば最初から強い仲間を作れるのではないかと思ったからだ。
まず、ベースに成るのは、一番損傷が少なかった女Mageの死体だ。そして頭は褐色の肌をした女Warriorの物を使用する。幸いSizeはそう違わない。
残っていた下chinを首から角度に気を付けて切断し、女Warriorの首をくっつける。
しかし女Mageの首から下も、見えない部分ではboneが砕け散っていたりskinとmuscleがズタズタだったりした。Zombieにする以上内臓は多少潰れていても問題無いだろうが、stomachはExperience Point取得に関わるし、できれば綺麗なconditionにしておきたい。
見えない所にも拘るのが、良い作品を作る秘訣だとEarthで耳にしたし。
ただ女WarriorのBodyもバラバラに成っているので頭部以外の内臓器官は無事な部位が無い。他の死体は言うまでもない。
なので、Adventurer’s Guild跡に行ってmonstersの内臓を幾つか調達する事にした。
boneは丈夫なTrihornの角を【Golem Transmutation】で加工して、liverやkidneyはHydraの物を、lungはDoran’s Aquatic Cavernで偶に出現する首長竜のlungを整形してSizeを整える。
そしてFlight Abilityを持つ仲間が欲しかったので、背中には翼竜の翼を付けた。これが地味に大変で、肩甲boneの形を変えたり、Ogreからmuscle繊維や筋を取って翼を動かすための器官を追加したりと大Surgeryに成ってしまった。
後尾骶boneからtailを生やす事にした。寿命を迎えて亡くなったCemetery Beeの"poisonous needle"とVenom glands、そこにVenom WyvernとHydra、鮫喰いSea AnemoneのVenom glandsも加えて注入する毒を毎回選べるようにする。
そして肘から先と膝から下をOgreの物にする。これでMysterious Strengthが期待できるのではないだろうか?
後は女MageのBodyはbody partを支えるmuscleが不足していたので女WarriorやOgreの物から必要な分を取って、肌も傷や火傷が多い部分は女Warriorから取って、最後に材料に使ったmonstersのMagic Stoneを体内に埋め込む。
「そして出来たのが彼女です」
『あ゛ぁ~……』
待機させていた物陰から出て来た女Zombie、名付けてRapiéçageだ。確か『継接ぎ』と言う意味だったと思う。Originで使われていた言葉だから、細かい意味は異なるかもしれないが。
大人とShoujoの間にある澄んだ美貌に、成熟したfemaleらしい曲線と鍛えられたWarriorの凛々しさを同居させた胴体。しかし肘から先と膝から下の四肢はHumanの頭蓋boneを軽く握り、踏み潰せるOgreの物。
背中にはepidermisの翼、腰には蜂の"poisonous needle"が先端にある蛇のようなtail、そしてwhole bodyの肌は縫い目を残し、蒼白と褐色とOgreの暗緑色が混じっていて異-samaな美しさ、異界の美と言えるものを表現していた。
一見して美しくも妖しい正体不明な女Zombieと言うしかない物に成っていた。
そしてStatusは以下の通り。
・Name: Rapiéçage
・Rank: 4
・Race: Patchwork Zombie
・Level: 0
・Passive skills
Dark Vision
Rapid Regeneration:5Lv
Deadly Poison Secretion: Tail:5Lv
Physical Resistance:3Lv
Magic Resistance:3Lv
Mysterious Strength:1Lv
・Active skills
Electrify:2Lv
High-Speed Flight:1Lv
中々のハイスペックだ。内臓にHydraの物を使ったからか高い再生Abilityを持ち、tailからは麻痺毒、neurotoxin、出blood毒をそれぞれ分泌して切り替える事が出来る。更に女Mageと女Warriorが持っていたのか、それとも他の要因かは知らないが物理とmagic両方のresistance skillを獲得。
更にOgre譲りの【Mysterious Strength】も1levelだが手に入った。
意外なのはTrihornが持っていただろう【Electrify】skillを持っている事だ。あの角をboneに使った事で手に入ったのだろう。迂闊に触れるとビリリと痺れる。
Ogreの四肢を一部使ったため、ベースにした女Mageの本来の身長よりも長身に成ってややbalanceも悪そうだが、悪くない出来だろう。
『やっぱり結構ムキムキしてますね。しかも MUCHI MUCHIしてます』
「これでほっそりしていたら、自重で動けなくなるじゃないですか。それにmuscleはPowerです」
『きっとGubamonとやらも悔しがるでしょうな。名は残っていなくてもHeroの仲間達の死体を、Bocchanに奪われてしまったのですから!』
「確かに、どんな顔をするか想像すると愉快だ。まだ見た事無いんですけどね、Gubamonの顔」
最初からRank4の即戦力で、多機能。武術系のskillを持っていないため、これから鍛える必要はあるが実験は大成功だった。
ついでに、将来仇にpsychological Damageを与える事が出来る。
「素晴らしいわ、Vandalieu -samaっ」
Eleonoraも目を感動に潤ませていた。
「既に複数の死体をただ組み合わせるだけでは無く、その機能を引き出せるなんて! 既にGubamonやTerneciaと同じ事が出来るのよ!」
「なるほど。まだ同じ事なのか……」
流石十万年も生きているだけあって、Undead作りでもPure-breed Vampireの方が一歩勝っているようだ。きっとVandalieuが知らない技法や秘訣を知っているのだろう。
何時に成るか分からないが、魂を砕く前にそれだけは聞き出しておこう。
『う゛ぅ……あ゛ぐ……んぎっ』
「き、貴-sama! Vandalieu -samaを食べるな!」
『あはは、RapiéçageったらBocchanに甘えて』
『甘噛みしていますな』
「甘噛みにしてはちょっと痛いような――」
『おぉぉぉおぉん』
「ちょ、Knochenは止めて」
あぐあぐとVandalieuの腕を甘噛みするRapiéçageに触発されたのか、Knochenまで猿や狼の頭で彼をコツコツし始める。
この出来事でVandalieuはZombieの大量Production計画は暫く控えようと思うのだった。Frankenstein Doctorの二の舞に成らないのは分かったが、量産してwhole body甘噛みされたら流石に痛い。
【Surgery skillを獲得しました!】
RapiéçageにはUnarmed Fighting Techniqueの実戦訓練をさせ、他の皆にはOrichalcum装備を配布して行く。
そして【Golem Transmutation】skillの経験を積むためと対Vampire戦に備えて、例の装置を修理する。Mirg Shield Nation軍の壊し方が雑だったのと、装置自体は二百年経ってもInanimate Aging劣化していなかった事だろう。
だから幸いlevelの上がった【Golem Transmutation】で直す事が出来た。これが修理されているなんてVampireは夢にも思わないだろうから、切り札に成る筈だ。
その途中で何度か竜種と戦って、BorkusがストームDragonと激戦を、Vigaroがwhole bodyから炎を撒き散らすOgreのVariant、バーストOgreと熱戦を、Zadirisがmagicを習得した木のmonsters、Great Treantとmagic戦を、それぞれ繰り広げた。
素材的にもExperience Point的にもとても美味しい。ストームDragonの刺身はワサビに良く合い、バーストOgreの皮は耐熱耐火に優れたDefense Equipmentに、Great Treantの木材は良い杖の材料に成った。
そして何よりの収穫はニンニクのPure-bornを発見した事だ。
Pure-bornなので臭く、栽培されているものよりもキツイが、そこはDeath-Attribute Magicで品種改良して行こう。
「口臭を消すためのitemも作っておいた方が良いかな。……ミントで口臭goodsを作るよりも【Deodorization】のmagicを込めたmagic itemを作った方が簡単な気がしてきた」
「口臭を消す為だけにmagic itemを作るのか?」
『流石にluxuryなんじゃねぇか?』
『Bocchan、Nobleでもそんなmagic item持っていませんよ』
「luxuryなのか……よし、是非作りましょう」
こうしてVandalieuはニンニクの栽培と口臭用magic itemの制作に取り組むのだった。
夏も本番に成った頃、幾つかの出来事があった。
まずニンニクの栽培が超絶好調。準Devil NestsであるTalosheimの土壌と、【Fermentation】で作った肥料が合ったらしく、ニンニクが凄い勢いで育っている。一週間に一回収穫できる程だ。
品種改良の結果、Earthで流通している大きさで臭いも抑えた物が出来るようになった。しかし栄養価や有効成分はmaybe変わらない……っと、思う。magicで調べた感覚ではそうなのだが、検査機器が無いので断言はできないが。
ニンニクは調味料の一つとしてAdventurer’s Guild跡の新商品に加わり、若干だが魚醤の需要も低くなった。
後、口臭用のmagic itemの開発も成功した。形は大きな樽型でそれに水を入れると【Deodorization】や【Sterilization】の効果がある、うがい用の水に変化すると言うitemだ。
これを町のOpen Plazaや各Public bathhouse、主だった建物に設置した。人々はfrom here汲んだ水で食前に手を洗い食後にうがいをするのだ。
次に、BragaがRank5のBlack Goblin ninjaにRank upした。
VandalieuからNinjaの事を聞いたBragaは、その話を元に修業をしてBlacksmith師のDataraにせがんで手裏剣やクナイ、Ninja刀っぽい刀を打ってもらい、levelを上げる事暫く、見事ninjaの名を持つmonstersにRank upしたのだ。
これにはVandalieuも驚いた。まさか自分のフィクションがmaybeに混じった知識を聞いたBragaが、Lambda初のninjaに成るとは思わなかったからだ。
body part Abilityの高さと、何より早熟なBlack Goblinの特性が合わさった結果だろう。
「King、こんなに跳べるぞ! ニンニン!」
楽しそうにピョンピョンと五meter以上跳躍するBraga。その内このworld初の【endure術】skillを獲得したり、Giantガマを召喚したり、特撮物のようにTransformしたりするのだろうか? ……話して聞かせたらどれもやってのけそうな気がする。
『俺も負けちゃいられねぇな!』
Bragaのscout職の師、Undead GiantのZranも何故か燃えている。彼もninja修業をしているそうなので、Lambdaで二人目のninjaが誕生する日も近いかもしれない。
ある日、AnubisのZemedoやGhoulに連れられて町の一角に行くと、そこには密林Devil Nestsで何度も見た赤ん坊の頭位の大きさの青いFruitが生っている木が生えていた。
「King、Kobolの木が生えて来たぞ!」
そう、Devil Nestsの中でもKoboldが生息している場所にだけ生えるKobolの木だ。
「この青いのがKobolの実か。初めて見た」
「本当に食べられるの? 凄い青よ」
周囲にKoboldが居らず、Kobolの実を初めて見るZemedoやMemedigaはその色に戸惑っているようだ。
しかし、明らかにKobolの木が生えたのはAnubis達が居るからだ。町の中にKoboldが一匹もいない以上、それ以外に考えられない。
まさかAnubisでもKobolの木が生えて来るとは思わなかった。
「逆に今まで生えてこなかったのは町に比べてAnubisの数が少なかったのか、偶々か。それとも誰かが遠くまで行ったときに食べたKobolの種が、偶然ここに落ちたからか。
まあ、考えても仕方ないか」
確かなのは、Devil Nests以外で育たないKobolの木がこのTalosheimでは育ち、実を食べる事が出来ると言う事だ。
「でもまだ小さいぞ、King」
「確かに」
しかし、Kobolの木はまだ高さ一meter半ば程で、生っているFruitの数も十に届かない程度だ。
これでは少なすぎる。
「うーん、とりあえずManaを供給してみよう」
Devil Nestsでmonstersばかりか普通の植物の成長まで早いのは、土壌がManaに汚染されているからだ。
なら、意図的にVandalieuが土壌にManaを供給すればKobolの木の成長が促進されるのではないだろうか?
そう考えてVandalieuはKobolの木の周りにManaを大量に垂れ流し、ついでに【Fermentation】で作った肥料を撒いて置いた。
次の日、Kobolの木は高さ三meterを超えていて何十個もFruitを実らせていた。
それだけでは無く、周囲にもKobolの木が生えていた。
これは良いと調子に乗ったVandalieuは、別の場所で別のFruitを付ける木を栽培する事にした。
First城壁と第二城壁の間、まだ建物が一つも無いここにドングリや胡桃を含めた幾つもの種子を植えて実験に取り掛かる。
「とりあえず、今日はもうManaを使わないので二億くらい行きましょうか」
【Out-of-body Experience】して腕をtentacle状に枝分かれさせて、Bodyの方と合わせて地面に【Mana Transfer】。自重せずに朝から昼食を挟んで、夕方までManaを注いだ。途中Manaが回復したので、最終的に三億程地面に注いだのではないだろうか。
【Long-distance Control】や【Multi-Cast】skillで一度に使えるmagicの数が増えたお蔭だ。
しかし次の日になっても何も変化が無い。
ただManaを注いでもダメなのかと思い、二日目は手製の肥料を撒いてからManaを注いだ。
「これが上手く行けば、毎日色々なfruitsが食べられる。Orbaum Elective Kingdomに行った時も、珍しい果物や木の種を持ち帰って……このTalosheimにfruitsのKingdomを……フフフフ……」
そして野望を滾らせながらこの日も三億程Manaを注ぐ。
そして次の日、今日こそ木が生えているかなと期待して足を運ぶと、期待以上に木が生えていた。
「おー、我ながら凄い事をしてしまった」
念のために木に生っているFruitに毒が無い事を確認したVandalieuは、町にとんぼ返りしてこの実験結果を報告した。
「おお、何と素晴らしい! Mikoよ、貴方は人々の為荒廃した荒れ地を豊かな森に変えたGoddess Vidaのlegendを、このTalosheimに再現したのです!
これぞ奇跡! これぞDivine Authority!」
「いやいや、奇跡はまだしもDivine Authorityじゃないから。俺は人だから」
『でも凄いのは確かね。Vandalieuが居れば、砂漠でもすぐに森に出来ちゃいそうだわ』
「kaa-san、林一つ作るのに二日くらいかかりましたよ」
『それで十分早いわよ。森が一つ出来るまで何百年、何千年とかかるんだから』
宗教的熱狂に猛り狂っているNuaza程では無かったが、皆に程よく褒めてもらってVandalieuは上機嫌だった。
「この花は何の役に立つんだ?」
「敗戦花じゃな。確か、前に坊やがこの木の種から油が取れると言っていたはずじゃ」
今まで纏まった数が無かった椿に似た、花が落ちる-samaが敗戦した将が首を落される-sama子を連想させる事から名付けられた敗戦花の木からは、油が取れる。
花が落ちた後に出来る実を蒸して絞ると、燃料や食用に出来る油が手に入るのだ。
住民の殆どが月明かりで十分読書が出来る【Night Vision】や、暗闇でも昼間と変わらず物が見える【Dark Vision】持ちのTalosheimでは照明の需要は無いが、Vandalieuは食用油を実は欲していた。
「これで天ぷらや素揚げが、後mayonnaiseも……」
ドングリからも油が取れない訳ではないが、気が付くとドングリ粉の方の需要が高くなっていたし、Orcやmonstersからラードを取るのは、植物から油を搾るよりも手間がかかる。だから今まで実行していなかったCookingや調味料の制作に、これからはかかる事が――。
『Bocchan、あの木動いてませんか?』
「え? そんな、木が動く訳が無いじゃないですか」
美味しい妄想の翼を広げていたVandalieuは、Ritaが指差した木を見てそう言った。
しかし、言い終ってからふと「あれ? 最初に来た時あんな所に木があったかな?」と首を傾げる。
そのVandalieuの前で、木が根を足のように動かしてのっそりと動いた。
「……動きましたね」
「動いたようじゃな」
『ほらっ、だから動いたって言ったじゃないですか!』
「どうやらEntの-samaじゃが……何処から紛れ込んだのじゃ?」
「まあ、一本ぐらい我にかかればすぐに木材にしてやろう」
念のために切り倒しておくかと、最近戦う木こりと化してきたVigaroが愛用の斧を構える。
すると、ずずずぅんっと音と立てて、林が蠢いた。
『……いま、見える限り全ての木が動きませんでしたか?』
「もしかして、この林の木、全部Ent?」
Katiaの言葉は大正解だった。
Ent、Rank3の植物系monstersだ。
根を足の代わりに動かし、幹にHumanに似た顔がある。力はbody partの大きさに比例して大きく、幹は鉄に匹敵する硬度を持つ。木であるため火に弱そうだが、【Fire-Atribute Resistance】skillを持っているため燃えにくい。
ただ動きは鈍重で、戦闘方法も枝や根を振り回す事しかしない。更に昔話の印象やHumanに似た顔がある事から頭が良いと言うimageがあるが、Entの知能はGoblinと大差ない。
しかし植物としての特性が色濃く残っているため、自衛以外では余程Dryingして枯れた土地以外では他者に襲い掛かる事は無い。Devil Nestsでも不用意に近づいたり、近くで火を焚いたりしない限り安全な、数少ないmonstersである。
その若葉は湿布薬の材料に成り、幹は高Class木材として取引される。討伐部位は、顔の部分。
因みにその発生原因は長く研究者達を悩ませてきた。主流な学説は『Entの種』が存在し、それが育って大木に成るとEntに成るという説。しかし、現在に至るまでその種の存在を証明できていない。
もう一つの説は、Devil Nestsで普通の樹木がManaに汚染されるとEnt化すると言う物だ。この説も今まで高名なMageが土壌にManaを注いで実験したが、遂にEnt化する木は無かった。
「それでVan、どれくらいManaを注いだの?」
「確か、昨日は回復しながら注いだので三億くらいです」
「……相変わらずManaに関しては凄い性能よね、Vanって」
前よりも打ち解けた-sama子で話すKatiaは、億と言う単位に溜め息を付いた。最近magicの修行もしているKatiaだが、そのManaはまだ百を超えたくらいだ。
その自分の三百万倍のManaを、目の前の五age児は一日で地面に注いだのだ。常識から外れすぎではないだろうか?
「ちょっと分けて欲しいぐらいよね。まあ、時々分けてもらってるけど」
「そうじゃな。高名なMageがどれ程の物だったとしても、億はあるまい」
どうやらVandalieuの大量のManaが土壌に注がれ続けた結果、極普通の植物の種が全てEnt化してしまったようだ。
これでEnt発生の真実が明らかに成った訳だ。
Human社会にそれが発表されるのは、何年も後の事に成りそうだが。
「ところでこれ、大丈夫かな?」
「我等を呼ぶ前に歩き回ったんだろう? なら大丈夫じゃないか?」
『普通に私達が近づいても攻撃してくる-sama子がありませんな』
「Mikoよ、【Death-Attribute Charm】は如何ですか?」
「うーん……効いているらしいです」
植物系のmonsters、それもnameに死とか墓地とか付かないEntに何故【Death-Attribute Charm】が効果を及ぼすのか。
不明だが効いているのは否定しようがない。
でも一応Appraisalしてみると……【Rank: 4 名称:Immortal Ent 解説:種子の段階からdeath attributeのManaを大量に浴びて変異したEnt。ただし邪悪な性質を持っている訳ではない。あらゆる環境、物理攻撃、magic攻撃にResistanceがあり、優れた復元Abilityを持つ】と言う結果が出た。
つまり、凄く死ににくいEntらしい。
「まあ、戦力と食料源が増えたと言う事で」
とりあえず、今やるべき事は敗戦花油のRefiningである。早速Golemを作って工業化しよう。
暗い、大きな通路を七人のgroupが進んで行く。
ランタンを灯し-sama々な武装に身を固めた男女の集団は、adventurerが遺跡かDungeonの攻略中と言った-sama子だと思うだろう。
それは半分正解だ。
「思った以上に手ごたえが無いな。十万年前に閉ざされたAge of Gods Eraの大遺跡って触れ込みの割には」
そう言いながら、槍を持った二十代半ばから後半の男がDemonを刺し殺す。汚染されたManaが凝り固まり、邪悪な意思を持ってmonsters化したDemon系のmonstersは、今男が倒した最下Classの黒山羊の頭と足を持つLesser Demonでも、Rank6の強敵なのだが……。
「雑魚ばかりだ、軽い運動にも成らねぇぜ」
「全くですね、Rileyの兄貴!」
軽装のscout職らしい小男の追従を受けて、【Green Wind Spear】のRileyは白けていた顔を小さく笑みの形に歪めた。
「仕方ないわ、だってsecondary name持ちで今やAClass adventurerの貴方に丁度良い相手がそう転がっているはず無いもの」
大きく開いた胸元から胸の谷間が見えている、杖を持っていなければMageでは無く情婦だと見られるだろう女の媚びた言葉で、Rileyは更に笑みを深くした。
「お前もそう思うか? Flark」
「………」
「ああ、そう言えば喋るなって首輪の設定を弄ったんだったか。まあ、いいや」
鉄よりも重く硬い黒鋼の板金鎧を着て兜を被り、小男よりも大きな盾を持った盾職の男、Flarkは話しかけられてもRileyに視線一つ向けなかった。しかし彼は気にした-sama子も無く、くくくと嗤う。
「まあ、仕方ないよなぁ。歴史に残るHeroも、常に派手な活躍をしてたわけじゃない。こんな地味な仕事もしないとな。
特に、Mauvid Earlからの依頼と成ればな」
「流石未来のHeroは言う事が違うぜ!」
「きゃーっ、素敵っ! 惚れ直しちゃうっ☆」
「……」
小さく短いため息を吐いたFlark以外の二人は、先程よりもあからさまな媚びを浮かべてRileyを賞賛する。
このやり取りだけを見ても彼等が対等なadventurer partyではないと分かるが、Flark達がしている首輪を見ればそれは確実に成る。
三人の首には、黒い硬質な首輪が嵌められていた。彼らはRileyが所有するSlaveなのだ。それも、首輪に刻まれた印から、犯罪Slaveである事が分かる。
借金を返せば解放され一般人に戻れる借金Slaveとは違い、どんな扱いをしても罪に問われず死ぬまで解放されないのが、犯罪Slaveだ。
対等な仲間の筈が無い。彼らは生殺与奪の権利をRileyに握られているのだ。そんなSlaveばかりでpartyを組めば、Rileyが調子に乗るのも不自然ではない。
しかし、一行にはRileyとそのSlave以外にも三人の人物がいた。彼らのやり取りに苦笑いを浮かべる、一-samaに紅い瞳と青白い肌を持つ三人のHumanが。
「あんた等もそう思うかい?」
Rileyに話しかけられ、三人の中の一人は苦笑いをやや大きくして答えた。
「……取引が出来てありがたいとは、思っているよ。Riley -dono」
その口元からは、fangsが覗いていた。