『Lambda』worldに侵攻したDemon King Armyの邪悪なGodsが存在するのに必要なものとは何か？　それは自身を奉じる存在だ。believerの祈りや畏怖が、その強大な異形の生命を維持する糧となる。

　そのためにはbelieverとなるmonstersを支配して数を維持し、殺戮と破壊によってHuman達を慄かせ自らの名を刻みつけるのが十万年前の常道であった。

　生贄等の儀式も捧げられる生贄そのものではなく、儀式を行うbeliever達の祈りとそれ以外のHumanから集める畏怖の方が彼らにとっての糧となるのだ。

　故に、Demon King Army Remnantsの邪悪なGodsの多くは自らに従うmonstersやHumanにblessingsを与え、己の代理として悪事を行わせ、力で他者を支配させるのだ。

　もちろん、ただ存在を維持するためではなく快楽を得るためという意味もある。生きるのに最低限のenergy……食料でenduranceするより、満腹になりたいと思うのは邪悪なGodsも生物も一緒だ。

『あ～、どうしようか悩んでいる間に終わったかな～』

　しかし、何事にも例外はある。特に、個体ごとに価値観も生態も異なる邪悪なGodsはそうだ。中には、食事よりも平穏をとる邪悪な神もいる。

　便宜上、彼と呼ぶが……LugornockもそんなEvil God (M)の一柱だった。

『まあ、いいか。どうせ私が介入したところで何が出来るという訳でもない。このままここで、何者にも脅かされず、何事も起きない空虚な日々を続けられればそれが一番』

　終わったらしい戦いの結果、どちらが勝ったとしてもここに目を向ける事は無いだろう。攻撃は届かないだろうし、ここに踏み込んでくることもあるまい。

　Lugornockはそう高をくくっていた。

　自分の悩みは退屈をどう紛らわせるかと、何時地上に星を落とすかだと思い込んでいた。

『ん？　んん？　何かが近づいてくる？　げ！　このsignは何だっ！？』

　この十万年一度も覚えていなかった寒気が背筋（に相当する部分）に走り、Lugornockは驚いて目を覚ました。

『いったい何故ここを目指している？　まさか私を……！？　そ、そんな、ただの偶然だ。そうに決まっている。そうであってくれ』

　Lugornockはそう祈りながら目を閉じた。

《【Vacuum Resistance】skillを獲得しました！》

《【Vacuum Resistance】skillが【Status Effect Immunity】にintegrationされました！》

　脳内アナウンスを聞きながら、Vandalieuはouter spaceを漂っていた。

　『Earth』や『Origin』ではなく、『Lambda』worldのouter spaceを。

『だいたい分かってはいましたが、『Lambda』worldもround事がはっきりしましたね』

『くおおおん』

『another worldだから、四角い平面だったとしてもおかしくないと思っていたけどね』

　VandalieuがKnochenやLegionと一緒にspace (UCHUU) Swimmingを行っているのは、ただの好奇心や遊興のためだけではない。-chanとした調査目的である。

　……別に、Vidal Magic EmpireのVandalieu templeが観光名所になり、各地のVandalieuを祭る施設が続々と完成しつつあることから逃避するためではない。

　人工SatelliteやSpace Station等が存在する『Earth』や『Origin』はともかく、『Lambda』worldのspace (UCHUU)がどうなっているか知られてはいなかった。

　accurateには、RicklentやZuruwarnなどのGodsは知っていたが、いちいち疑問を聞きに行くよりは、自分の目で確かめたい。

　もちろん、space (UCHUU)に行く前から分かっている事はある。空を飛ぶ幽霊船CuatroやSamに乗って飛び回った経験から、『Lambda』worldもround……つまり惑星である事はだいたい分かっている。

　worldは平面で、worldの端から海水が虚空に向かって落ちている訳でも、giantやGiantな亀に支えられている訳でもない。

　また、space (UCHUU)『人』も存在しない。判明したのはRodcorteのCircle of Reincarnation systemを各worldに分割したからだ。Aran達から聞いたが、systemによるとspace (UCHUU)にreincarnationする生物はHumanも含めて存在しなかったからだ。Vida式Circle of Reincarnation systemを管理するVidaにも同-samaの質問をしたが、答えは同じだった。

　しかし、Demon King式Circle of Reincarnation systemを調べてみるとspace (UCHUU)にreincarnationしている魂が少数だが存在するようなので、space (UCHUU) monstersは存在するらしい。

　そのspace (UCHUU) monstersがどんな存在なのか、確かめたい。

　他にも理由はある。

　『Lambda』worldにはまだ人が住める土地が多く、資源も十分。また、通信や気象のための人工Satelliteを飛ばす必要も薄い。通信はmagic、もしくはVandalieuのDemon King Familiarがいる。気象は、『Earth』や『Origin』とは物理法則が異なるうえに、各地にDevil NestsやDemon's Skyが点在しているせいで『Earth』や『Origin』の気象学が参考にならないため、Satelliteを浮かべる以前のconditionだ。

　しかし、聖戦が終わってから約一年。手も空いて来たので、そろそろ緊急性の薄い分野にも手を出してもいい時期だろうと思ったVandalieuは、余暇を利用してspace (UCHUU)に行く事にした。

　尚、行く方法は砲弾型Demon King Familiarを応用し、rocket型Demon King Familiarを造り、自分を打ち上げた。

　事故が起きても、Vandalieuならwhole bodyが燃え尽きてもmain bodyを他のBodyに移せば死なないので、気軽なものだ。

　そして、一度目はmidairで爆発して失敗。二度目は成功……したかと思ったが、成層圏を抜ける事が出来ず、失敗。三度目の正直でこうしてspace (UCHUU) Swimmingをしている。

『ここまで来るのに一日かかってしまいましたね』

　Vacuum conditionなので、VandalieuはTelepathyでそう評した。ちなみに、space (UCHUU)服の代わりにwhole bodyを【Demon King Fragment】で覆ってspace (UCHUU)服の代わりにしている。Demon King Guduranisはouter spaceにも適応していたようだ。

　また、酸素は自身の【Body World】から供給している。

『ところで、今更ですがPluto達は大丈夫ですか？　寒くありません？』

　Vacuum conditionは思いのほか寒い。Pluto達Legionはwhole bodyが肉の塊なので、lungは最初から存在しない。呼吸は声を出すためだけに行っている。

　しかし、肉が剥き出しであるためouter spaceでは凍り付くのではないか。そう思ったVandalieuが声をかけると……Legionは凍っていた。

『大丈夫さぁ。表面で凍っているのは、私が作ったYomotsuikusaやYomotsushikomeだからね』

『その内側では小刻みに肉を振るわせて熱を生み出し続けているのだ！』

『でも、次に来る機会があったら、もっと上手い方法を考えよう』

　どうやら、Izanamiが己の肉片から創った使い魔で表面を覆ってcoldを防ぎ、内部ではmuscleを振るわせて熱を生み出し続けているらしい。

『俺の中に入りますか？』

『大丈夫よ。それに、space (UCHUU) Swimmingなんて滅多に出来るものじゃないから、もう少し楽しませて』

　凍ったYomotsuikusaの層の下から届く思念は、とても楽しそうだった。Vandalieuと違い、『God of Origin』の一部となっているPlutoと彼女達は繋がっている訳ではないので、space (UCHUU)からworldを見たのは今回が初めてなのだ。

『きれいね、Jack』

『うん。でも瞳-chanの方がきれいだよ』

　『Gazer』のMinuma Hitomiと、Jackがさっそくイチャイチャしている。

『くおおおおん』

　そして、Knochenはboneの集合体のUndeadであるため、outer spaceでも平気だ。

　なお、他にも『Giant of the Sun』Talosや『Giant of the Moon』Diana、そしてBakunawaがspace (UCHUU)について行きたがったが、安全に行く方法が分からなかったので今回は留守番となっている。

　Bakunawaがぽつりとつぶやいた、『月って美味しそうだよね』という言葉に危機感を覚えたわけではない。

　なお、彼のnameの由来となった『Earth』のMythに記されているBakunawaは、originallyは複数あった月を残り一つになるまで食べている。

『分かりました。では、調査を済ませましょう』

　気を取り直したVandalieuは、Giantなeyeball型Demon King Familiarを創って『Lambda』の惑星としての動きや、太陽や他の惑星の観察を始める。

　さすがのVandalieuも天文学の知識はあまりなかったが、そこは【Perfect Recording】skillで補える。『Origin』で見て来た図鑑や、『Lambda』の地上で見上げたnight空に浮かぶ星の位置や星に関するMythやlegendを思い浮かべ、今見ている光景と照らし合わせる。

『やはり『Origin』、そして『Earth』とは全く違いますね』

　結果、『Lambda』のspace (UCHUU)はVandalieuが知るspace (UCHUU)とは大きく異なっている事が分かった。

　『Origin』はmagicが存在する事以外は『Earth』とよく似たworldだ。全く同じではないが、いわゆる太陽系の星々は同じである。

　しかし、『Lambda』はそこから異なっていた。

　まず、星系の中心に存在するのは太陽ではなく、『Lambda』だ。太陽は『Lambda』の周りを月や他の星と一緒に回っている。

　なんと、『Lambda』は地動説ではなく天動説のworldだったのである。

（まあ、world創成のMythを考えれば十分あり得る事だとは思いますが）

　『Lambda』worldのGenesis Mythでは、最初worldには何も存在せず、ただ『Black Great God』Diachmellと『White Great God』Arazanが争っていたとされている。永劫に続くかに見えた二柱の神の戦いが相打ちで終わり、二柱の神が残したものからworldとGreat God達が誕生したとされる。

　つまり、この『Lambda』worldの中心は、Great God達がいる惑星『Lambda』なのである。周りの太陽も、月も、星々も全て惑星『Lambda』よりも後にGreat God達が創ったものなのだ。

（細かい過程は違うかもしれませんけど、だいたいそうなんだろうとは思います）

『from here観察したところ、Satelliteの中で一番『Lambda』に近いのが月、次が太陽。後はその他って感じですね』

　『Lambda』よりずいぶん小さな月は、ぼんやりとLuminescenceしながら『Lambda』の一番近い軌道で回っている。『Earth』のそれと比べると圧倒的に小さな太陽は、月よりだいぶ外側を東から西へ回っていた。

　この位置関係ならEclipseも起こるのだろう。

　他の星は……『Earth』にある火星や水星、木星に相当する星がどれなのか、Vandalieuには分からなかった。この『Lambda』のspace (UCHUU)の中心は惑星『Lambda』なので、あらゆる星が『Lambda』のSatelliteだからだ。大きさも『Lambda』より小さな星しかない。

　なるほど、確かにこれではspace (UCHUU)人は存在しないだろう。そして、space (UCHUU) monstersが存在するのは、月であるらしい。

『十万年以上放置されていたら、Rank１３以上の強力なmonstersの群れが存在していてもおかしくないと思いますが……そんな-sama子もないですね』

『僕としては、月が自力でLuminescenceしているのが奇妙に思えて仕方ないんだけど』

　『Earth』や『Origin』では太陽の光を反射して光る月だが、『Lambda』の月は淡くだが自力で輝いている。それは特殊な鉱物が含まれているからではなく、実は月がDevil Nestsと化しているからだった。

　元Demon King ArmyのGufadgarnやFidirgによると、another worldからこのworldに侵入したDemon King Guduranisは、最初outer spaceから『Lambda』を見下ろし、近くにあった月に本拠地を置こうとした。

　しかし、すぐに取りやめて『Lambda』に邪悪なGodsを率いて降り立ち、そこを本拠地にした。何故なら……月の環境が存在の糧となるbeliever兼雑兵となるmonstersを増やすのに、全く向いていなかったからだ。

　ドポペゼパルオのようなEvil God (M)が存在した事からも想像できる通り、Demon Kingと邪悪なGodsがoriginallyいたworldの環境は非常に過酷だ。しかし、そのworldに存在したmonstersですらouter spaceで生息するのは容易い事ではなかったのだ。

　それに、Guduranisが思っていたより月と惑星Lambdaとの行き来が難しかった。敵から攻められにくいのは良いが、自分達も攻め込みにくいのはいけない。

　space attributeの配下に【Teleportation Gate】を開かせれば解決するが、それではspace attributeの配下を討ち取られたら動きが取れなくなってしまう。

　そのため、Guduranis率いるDemon King Armyが月に滞在したのは一日に満たない間だった。しかし、その短い時間でmiasmaは月に定着し、月はmiasmaに汚染され続けていたらしい。……Lambdaでは誰も、あのBellwoodですら注意を向けなかったようだが。

　ちなみに、『Lambda』には『Giant of the Sun』Talosや『Giant of the Moon』Diana等、太陽や月に関係する神やDemi-Godが存在する。しかし、彼らは太陽や月そのものがDivinityを得た存在ではない。あくまでも太陽や月に関係が深い神やDemi-Godなのだ。

　そうこうしている内に、月に到着した。

『さて、これで俺達は人類で初めて月に降り立ったHumanになりますね』

『Vandalieu、あなた、神になったって認めたんじゃなかったっけ？』

『……そうでした。人類で初めて月に到達したHumanはPluto達ですね』

　【Perfect Recording】skillを持っているのに、時々自分が神である事を忘れる神、Vandalieu。内心では、まだ神になってから一年過ぎたばかりだから、セーフではないだろうか？　と考えている。maybe、また忘れるだろう。

『おおん？』

『Knochenは月に到達した初Undeadです』

　Vandalieuのrequestで形状をspaceシャトルそっくりに変形したKnochenから月に降り立つと、そこは美しくも幻想的でややグロテスクな光景が広がっていた。

　彼方に見える青い惑星Lambdaと、その反対側で輝く太陽。一面に広がる砂漠の砂と石は淡く輝き、ぽつりぽつりと異形の何かが生えていて蠢いている。

　それらの大きさはVandalieuと同じくらいで、形状は-sama々。上半身だけのHuman、頭の無い獣、tentacleが生えた円柱等、まとまりがない。

『あれが月のmonstersですね』

『おおん』

　Knochenは月のmonstersに無関心なようだが、Vandalieuは試しに適当な一匹を選んで近づいてみた。

『…………』

　そして、近くで見て分かったが、月のmonstersはwhole bodyが砂と石で出来ていた。生物のような姿をしているが、月で最も多い月の鉱物で出来たGolemだったのである。

　boneも何もないので、Knochenが興味を覚えないのも当然だ。

『とりあえず、普通のSand Golemと区別するためにMoon Sand Golemと仮称しましょう』

『………』

　そして、無防備に近づいて来たVandalieuに向かって、仮称：Moon Sand Golemは殴りかかった。

『あまり強そうではありませんね』

　その動きは緩慢で、まさに「拳に蠅が止まりそうなpunch」だった。当たっても、砂が付くぐらいで痛くもかゆくもない。むしろ、殴ったMoon Sand Golemの腕の方がちょっと崩れている。

『originallyが砂だからね。石で出来たGolemなら、少しはマシかも』

　Plutoが言うように、Golemの強さは体を構成する鉱物と体の大きさによる。それは月の砂でも例外ではない。

『しかし、Golemなら月に居ても不思議はないな！』

『酸素も食べ物も必要としないからね。しかし、形が人型じゃないのは何故だろう？』

『maybe、重力が弱くて二足歩行だとstabilityしないからじゃないかしら。砂だと、転倒するだけで崩れてしまいそうだし。ほら』

　そう話していたLegionの人格の内、Isisが（おそらく）指した先では、丁度balanceを崩したGolemが転倒して崩れ、ただの砂になるところだった。

　ちなみに、weak Golemしか存在しないのは、月にGolemしか存在しないためだ。通常のDevil NestsならHumanがいなくてもmonsters同士の生存競争によって殺し合うためExperience Pointが入ってlevelが上がり、生き残ったmonstersは自然とRank upしていく。

　しかし、存在を維持するのに食料を必要としないGolemしかいないため、生存競争が起こらない。また、Golemは基本的に知能が低く、emotionsも持ち合わせていないため、無意味な同士討ちも起こらない。

　そのため、月のGolem達にはlevel upする機会が無いのだ。

『この-sama子なら、放っておいても脅威になる事はないな』

『そうですね。Devil Nestsの環境が変異する事も無いでしょうし』

　Devil Nestsは最初monstersが発生する以外は普通の土地だが、汚染されたManaが増え続けるとDungeonが発生したり、環境が大きく変わったりと、変異する。

　Deadly Poisonが湧く死の泉や、countlessの岩が空に浮いている荒野、葉の代わりに炎を枝につける火炎樹の森等のDevil Nestsも、originallyはただの泉や荒野、森だったのだ。

　月も例外ではなく、originallyは太陽の光を反射して光るただのSatelliteだったのが、淡くだが自力で光を放つSatelliteになっている。

　しかし、これ以上変化する事はないだろうとVandalieu達は思っていた。簡単に自然消滅するGolemしかmonstersが存在しないのなら、汚染が悪化しようがないからだ。

『もしかしたら、十万年後にはもっと強いmonstersが発生するようになっているかもしれませんが……『Lambda』にあるDevil Nestsの方がずっと脅威ですからね』

　何より、月は『Lambda』から離れている。Rank１のGolemが何かの奇跡でRank５や６になったとしても、遠く離れた『Lambda』に害を及ぼす事はまず不可能だろう。そもそも、Golemの知能では『Lambda』に人がいる事が分からないはずだ。

『じゃあ、お土産に月の砂や砂利を持って帰りましょうか。月から持ち帰っても光り続けるかは分かりませんが、Lucilianoに頼まれましたし』

『おおぉ～ん？』

　いい暇潰しになったが、そろそろ帰ろう。そう思って足元の砂や砂利を集めるVandalieuに、それまでGolemに対して無関心だったKnochenが不意に声を上げた。

『月の裏側ですか？』

　Knochenは、月の裏側を確かめなくていいのかと気にしているようだった。確かに、『Lambda』からspace (UCHUU)に出てそのまま月に向かって降り立ったVandalieu達は、月の裏側を見ていない。

　裏側に何かがある……という確証も予感も無い。しかし、確かめずに脅威は無いとして帰るのはどうかと思う。と考えたのだろう。

『たしかに。言われてみれば裏側も見ていくべきですね』

　Vandalieuもその通りだと考え直した。『Lambda』からnight空を見上げれば見る事が出来、望遠鏡を開発すれば観測できる表側と違い、裏側はこうしてspace (UCHUU)に来ていなければ調べる事は出来ない。

　この月が『Earth』のそれと同じように自転している場合、この月も惑星『Lambda』から裏側を観測する事は出来ない。なら、それを確かめるより先に、このまま裏側まで確認しに行く方が手間はかからないように思えた。

　Legionも特に異議がなかったので、そのまま月の裏側に向かった。

　月の裏側は太陽の光が届かないため、薄暗かった。月自体が淡く輝いていなければ、暗黒に包まれていただろう。

『ふむ……』

『……』

　裏側と言っても、月は月。薄暗いためGolem達がより不気味に見えるが、変化はそれだけに見えた。

　月、そのものの変化は。

『月の後ろに、こんな星があったのね』

　そう、表側からは見えなかったが、月の裏側から見るとすぐ近くに星が浮かんでいた。

『いや、ただの星ではないでしょう』

　その星の直径は百meter程。『Earth』の基準では、小惑星と評するべきだろう程度。そして表面は赤黒くて艶やかな光沢があり、真ん中にGiantな紫色のlipsがあった。

　そう、紫色のlipsである。端が星の直径いっぱいにある、Giantなlips。

『……うう、ついに見つかってしまったか』

　そして、lipsが僅かに開いたと思ったら、観念したような声が響いた。そして、そのままlipsが大きく開かれている。そこに現れたのは、Giantな目だ。

　口の内側からGiantな目が一つ現れ、Vandalieu達を見つめている。

『私の名は『Evil God of Deathly Dreams』Lugornock。見つかったからには……降参します』

　そして、素直に降参した。