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Chapter 410: Duke Farzon領を巡るDuke達の政治的思惑

 Duke Farzon 家が降伏し、Duke Farzon領はOrbaum Elective Kingdomの他の十一のDuke 家が治める事となった。

 しばらくは合同で軍を駐留させ、治める事になる。もちろん、ただの兵卒ではなく腕利きの腹心と精鋭の兵達だ。


 この『Lambdaworldでは、千人の平均的なSoldierと一人のHeroが戦ったら、Heroが勝つのが常識だ。それほどでなくても、CClass adventurer相当の実力を持つKnightを、EClass adventurer相当の平均的なSoldier達だけで取り押さえるのは、力づくではほぼ不可能。


 Duke Farzon領には、そうした実力者がまだ潜伏しており反抗のfangsを研いでいる可能性がある。そのため、他のDuke 家もBClass adventurer以上の精鋭を派遣する必要がある。

 また、治安の悪化を防ぐためには少数の精鋭だけではなく数も必要であるため、多くの兵も送る必要がある。


 そして、『Five-colored blades』のRemnantsや、Heinzと親交があったAClass adventurer groupDhampirShoujoを連れて行方をくらませているのも不安材料だった。……各Duke 家の上層部は既に彼女達が Bahn Gaia continentから脱出した事を聞いているが、公に発表すると追っ手を差し向けるべきだと強硬に主張する者が出るので、「不安材料」と言う事になっている。


 各Duke達にとっても、彼女達を突いて噛みつかれるより、このまま行方不明になってくれた方が都合が良かったのだ。


 こうした中で各Duke 家が派遣したGeneral Officerは、利権を手に入れるために政治的な戦いを繰り広げるのだ。

「無理、とてもできない。私には荷が重いわ」

 そんな戦いが始まる前に、Elizabeth Sauron Duchessは白旗を揚げた。


Duke閣下、そのつもりが無くても形だけでも参加しておいた方が良いと進言いたします」

Veedal兄上、じゃあ、兄上が行ってきなさいよ」

Duke閣下、そのような重大な役目、私如き若輩者にはとても務まりません」

「はあ……人材がいるのに人材不足なんて、頭が痛いわ。Vandalieuに頼るのも問題があるし。どう思う、Maheria?」


「お嬢-sama、先代Dukeに適任者を推薦するよう依頼されてはどうでしょうか?」


 Sauron Duchyの自身の城……Elizabethはまだそう評すことに違和感を覚えている……で、Sauron DukeとなったElizabethとその腹心達、そしてオマケのVeedalは相談をしていた。

「先代……Rudel兄上ね。確かに、私が直接指名するより、兄上を通した方が無難ね」

「申し訳ありません、Elizabeth -sama。私達がお役に立てればよかったのですが」

「気にしないで、Jozéf。あなた達にはあなた達にしかできない事があるんだから」


 Elizabethの腹心とは、Sauron Duke 家に先祖代々仕えてきた臣ではない。実のsisters同然のMaheriaは、母方のに代々仕えていた系出身。Jozéf達は彼女がOrbaumに身を寄せてからの付き合いだ。

 一方、彼女が当主となったSauron Duke 家に代々仕えてきたNobleの多くは先代DukeRudel、彼女とDukeの座を争った腹違いの兄にLoyaltyを誓っていた者達だ。


 今は新DukeとなったElizabethLoyaltyを誓っているが、信頼関係を確立できる程の時間は経っていない。

 なお、Veedalがここにいるのは彼女の腹心であるMaheria達が全員未成年で、Weapon Equipmentを使った戦いならともかく政治的な戦力としては心もとないからだ。


 母のAmeliaが心をDiseaseむ原因の一つになった彼に思うところがないわけでもないが、彼は原因の一つでしかない。それに、侮っていた腹違いのImouto臣としてこき使われているのだから、十分な罰は受けているだろうと自身を納得させていた。……彼を兄上と呼ぶのにも深い意味は無く、本当に兄として敬っている訳でもない。


 ただ単に、あからさまに態度に出して嫌うと、義理の弟の情操と食の教育に悪いからだ。それに、実際政治に疎いElizabeth達は、Veedalの意見に助けられる事が少なくない。


 ついさっき彼が口にした形だけでも首を突っ込んでおくべきだという意見も、「Duke Farzon領の利権を手に入れる気が無くても、手を出すポーズ位は見せないと他のDuke 家から舐められる事になり、後々不利益を被る可能性がある」と指摘したものだ。


 なお、ポーズだけ見せても結局利権を手に入れられないなら、自領の臣や領民に失政と見なされるのではないかと思うかもしれないが、そう思わせないようにするのがElizabethと派遣された臣の仕事である。

 政敵に攻撃されない程度のachievementと利益を得たり、得たとでっち上げたりして、都合をつけるのだ。


「でも、そんなに気を遣わなくても良いんじゃない? 他のDuke 家の人達も気を遣ってくれると思うし」

Zohna -sama、本当の事でも言ってはダメです」

 そしてDwarfShoujoZohnaの言うように、他のDuke 家の面々はSauron Duke 家……というより、Elizabethとその母Ameliaにとても気を遣っている。


 何故なら、AmeliaVidal Magic Empire Emperor Vandalieu Zakkartの妻の一人で、Elizabethは彼の義理の娘なのだから。

 城にはDemon King Familiarがいて、領内には彼女の義理の弟のBakunawaが……体長約百meterGluttony Dragon Godが度々遊びに来る。


「今回の一件に限らずに、PilchikovとかZectoirとか、Van -kunとの繋がりが乏しいDuke 家は気を遣ってくると思う。あと、Rudel派の臣の反抗もそんなに気にしなくていいんじゃない? もっと肩の力を抜いて大丈夫だって」

Zohna、それは分かってるけど……なんだかVandalieuに依存するみたいでいやなのよ」

Elizabeth -samaのその気持ちも分かるけど、ある程度は仕方ないって。Mountain Rangeを動かして国境を変えちゃうんだもん。あれを無視するなんて無理無理」


「ううん、でもね~……」

 Elizabethも本当は分かっている。自分がどれほどVandalieuに依存したくないと考えていても、臣や一部のDuke 家Humanは自分の背後にVandalieuを意識せずにはいられない事に。


 実際、Royal Nobilityの社会で「自分だけの力」で栄光を手にしている者はいない。の力、親類の一族の力、後ろ盾となっている勢力の力、そうしたものを利用していない者は存在しない。また、人を見るときその背後をどんな力が支えているのかを意識しない者は、政治や社交のworldで長生きできない。


 Elizabeth自身も、以前はRimsand Earl 家を後ろ盾にして活動していた。……実際には、後ろ盾どころか最も身近な敵になっていたが。

 しかし、素直にVandalieuを利用できない。


(つまり、一種の甘えだ)

 にこやかな笑みを浮かべたまま控え続けるVeedalは、腹違いのImoutoの心理をそう分析していた。

 心からVandalieuVidal Magic Empireに依存するべきではないと思うなら、やるべきことはほどある。母親をさっさとVidal Magic Empireに嫁入りでもさせて、良好な関係を維持しながら統治では適度な距離を保たなければならない。


 しかし、そうした事もせずMagic EmpireFirst皇子……と言っていいかVeedalには分からなかったが……を領内に滞在させているのだから、Elizabethは本気ではないとしか考えられない。

 いつでも頼れるconditionのまま、そして実際に一部では頼っているのに、「頼りたくない」と述べる。つまり、甘えだ。


(尤も、そんな事を指摘したところで何の益も無いから黙っているが)

 本人も薄々自覚しているだろうし、Maheriaや取り巻き達は口にしていないだけで気が付いているだろう。Zohnaが自覚するよう促したが、はっきりとは指摘していない。

 そんな中、信頼されておらず信用もされていない自分が指摘しても、Elizabethの耳には残らないだろうとVeedalは考えていた。


nameだけなら私の方が関係は深そうなのに……やれやれ)

 もちろん、VeedalElizabethにとって代わろうなんて絶対に考えない。あの恐ろしい龍、Bakunawaの腹に収まるのは御免だ。いや、食い殺されるとしたらVandalieuの方か。

 彼は以前、BakunawaについてVandalieuに思わず尋ねた事があったのだ。「まさか、人は食べませんよね?」と。


 それに対してVandalieuは、何でもないように答えてくれた。「もちろん。Bakunawaは俺と違ってまだ人は食べた事はありません」と。

 あの魔Emperorは、人を喰った事があるのだ。


 実際には、死ぬまでmountain banditbloodを吸った事があるだけだが、それを聞いてもVeedalMentalは休まらないだろう。


「まあ、良いんじゃない」

 そしてVeedalが黙っている間も、話は進んでいた。

Elizabeth -sama、領民に人気あるし」

「それに、今のSauron Duchyには差し迫った問題もありませんからね」


 そして、Elizabethの甘えが許される理由は領民が彼女に対して不満を持っていない事と、差し迫った問題がない事だった。

 敵国との国境がVandalieuの造ったArk Mountain Rangeで隔てられた事で、Sauron DuchyはもうContinent西部を支配する国との戦場にならずに済む。


 また、VandalieuMountain Rangeを造る過程で地下水脈や気候が人にとって不便にならないよう気を使ったお陰で、災害や水不足に陥る心配も薄い。

 そして、数年前から旧Scylla Autonomous Territoryを通じてVidal Magic Empireとの交易も始まり、経済的にも先行きは明るい。


 そうした状況での領民達のElizabethに対する人気だが……普通なら、突然DukeShoujoに代替わりし、しかもそのShoujoは隣国のEmperorの義理の娘だなんて事になれば、社会的不安は激増し、政治不信は留まるところを知らない程深刻化するだろう。


 しかしMountain Rangeが動いたのを目にした領民達のMentalは、それでやられてしまった。何せ標高数千meter々が連なるMountain Rangeだ。天気が良ければSauron Duchyの端からでも見える。

 その上隣国の魔Emperorの母は、『Goddess of Life and LoveVida’s Incarnation。つまり、新Duke -samaGoddessの義理の孫。これにはVida believerが多いSauron Duchyの領民も大喜びだ。


 そして新Dukeの義理の弟が、体長百meterの龍。しかも、先日Sauron Duchyに現れたlegendDemon King Army幹部を封殺し、領に被害を出すのを防いだ。その-sama子はまさにMythGodsの戦いのようだった。

 そして、Elizabeth自身も活躍した。Artifactを携え、Bardが奏でる伝承歌の戦乙女の如くきらびやかな衣装を纏い、戦う-sama子はHeroそのもの。


 ここまで揃えば、よほどの悪政でもしなければ民の支持は向こう十年揺るがないだろうというのが、Veedal、そしてZohnaJozéf達の見立てだった。

「ありがとう。……人気って言うより、面白がられているだけじゃないかしら」

 もっとも、Elizabeth本人は自身の人気をあまり自覚してなかったが。


「話を戻すわよ。Duke Farzon領に関しては、Rudel兄上が推薦した人物と兵を送って任せる。これでいいわね」

「はい、問題ないかと」




Duke Farzon領か……いらないな。Rext Duke 家Pilchikov Duke 家が欲しがるだろうから、彼らに任せればいいだろう」

「政治の事に口を出すのは本来私の仕事ではありませんが、同感です」

 その頃、Duke Farzon領はSauron Duke 家だけではなくJahan Duke 家でもいらない子扱いされていた。


「海は魅力的だし、民もAlda believerが多く我がJahan Duke 家との相性も以前までは良かった。しかし、距離があり過ぎる」

 Hadrosが言う通り、Jahan DuchyOrbaum Elective Kingdomの北部の雪深い地を領土に持つ。対して、Duke Farzon領はOrbaum Elective Kingdomの南に位置する。


「それに、今後は民の相性も悪くなるはずです。Kanako -donoが相当頑張りましたし、先日はDarcia -samaZadiris -donoBasdia -donoに救われたばかり」

 Hadrosの腹心である『Fierce Mountain Shield General』のLudarioが言うように、敬虔なAlda believerが多く保守的で変化を嫌うJahan Duchyの領民達は、Kanakoが行ったlive performanceツアー……と、夢でのVandalieuとの遭遇。現DukeであるHadrosの働きかけで、Vida信仰へやや傾きつつあった。


 その流れを決定づけたのが、Aldaが放ったDemon King Army RemnantsVida's FactionGodsDarcia達との戦いである。

 Demon King Army Remnantsの『Evil God of Contaminated Light』ビByazecbyocto、そしてVida's FactionBeast KingMonster Elephant Evil Beast KingVaphovaldと『Walrus Beast KingToothold

 異形の邪悪な神に、体長百meterの巨体を誇るBeast King。それらに立ち向かうDarcia達三人の姿は、まさにMythの光景だった。


 むろん、Jahan Duchyの領民全てが目撃できたわけではない。しかし、のちのAlda templeClergymanや市井のbelieverが失神する事件が起きた。

 意識を取り戻した彼らによると、神のscreechを聞いたという。


 そして、各地のVida以外のGreat GodClergymanたちが受けたOracleを繋ぎ合わせると……Alda自らがDemon King Armyの邪悪なGodsVida's FactionGodssealedを解き、しかも Guduranissoul fragmentを埋め込んで各地に送り込んだことになる。政治的にDuke Farzon領やAmid Sacred Empireと敵対していたとはいえ、数多くのAlda believerがいるこのJahan Duchyにも。


 奉じていたAldaが自分達を見限った事。そして救ってくれたのがAldaと敵対関係にある『Vida’s Incarnation』、そしてAldaが新たなDemon KingだとしたVandalieuの仲間達である事。

 これでAlda templeClergymanの中で、特に敬虔……狂信でも妄信でもなく……とされる者達の心が折れた。


 罪悪感に耐えかねたClergyman達は、自分達が知る限りの真実をbeliever達に公表し、Alda以外のGreat God、特にVidaに膝を折り、Aldaの罪を代わって詫びた。

 それに対して『Vida’s Incarnation』であるDarciaは、Vidaをその身に降ろしてGoddessの意志を伝え、Clergyman達を許した。


 それによってJahan Duchyの領民達の心は決定的にVidaに傾いた。Hadrosはその場面とDarcia達の戦いをモChiefにしたstained glassの制作や聖歌の発注を依頼し、Alda templeChurch of Vidaに改装する事を決定した。

 Jahan Duchyの信仰の大転換は、もう覆る事はないだろう。


「俺のtempleは建立しなくてもいいと思いますけどね」

 それまで黙ってHadrosの肩に座っていたVandalieuが、そう言いながら肩を落とした。

「友よ、-kunachievementも大きい。Dukeとして無視する事は出来ないな」

「じゃあ、Church of Vidaの端に俺の像を置くだけで十分ですから」


「いやいや、それでは私はachievementを評価しない恩知らずとして後世に名が残ってしまう。友よ、-kunは友人のHonoraryを守ってはくれないのかね?」

「……Church of Vidaや他のGreat Godtempleよりは小さくしてくださいね」


 HadrosVandalieuLudarioといるのは、Jahan Duchyの北端…… Bahn Gaia continentの北端に立ち並ぶ岩の前だった。……他にも周りには護衛のKnightや兵、他のNobletempleguildの関係者等もいるが。

 彼等は、Vandalieuが【Golem CreationskillJahan Duchyの岩に海まで通じる大規模なtunnelを造るのを見に来たのだ。


「悠久の時から海を隔ててきたに穴が……!」

Boundary Mountain Range々程でなくても、危険なDevil Nestsと化しているため工事はもちろん、Hero達がを破壊する事も出来なかったというのに……」

 tunnelが開いた岩を眺めるJahan Duchyの要人達が、愕然とした-sama子で口を開く。


 これまでは、tunnelを空けるには地中のmonstersが障害となり、そして自体を崩して海までの道を通そうとする試みにはDevil Nests化したに住むmonsters達がrunawayして平野に降りてくるため、Jahan Duchyもその前身となったJahan国も試みる事は不可能とされていた。


 そのtunnelが僅か一時間もしないうちに開いたのだ。しかし、これで終わりでない。

「高さは十meter。行きと帰りの二本通しました。出た残土は圧縮して柱や床にしてあります。

 後は、空調設備と行き交う人達のための休憩所や、Guardの詰め所、もしもの時の避難通路やShelter、そして俺の一部を一定距離ごとに埋め込んで、最後にtunnelの強度を確認すれば完成です」


 ただ馬車が通れる穴を空けるだけでは、安全なtunnelとは呼べない事をVandalieuは知っている。万が一にも事故が起こらないように、事故が起こってもtunnel内の人達が安全に避難し、脱出できるようにしなければならない。

 ……Vandalieuの一部を一定距離ごとに埋め込むのは、monsterstunnelに地中から近づかないようにするためである。


「随分手間をかけますが、そこまで必要なのですか?」

「必要です」

「まあまあ、良いじゃないか。我が友の心のままに任せよう」

 そして、工程が増えれば増えるほどVandalieuが滞在する時間が伸びるので、Hadrosの機嫌は上がるばかりだ。


 そして、tunnelを完成させた後は繋がった海の環境次第で、港の建設も手伝う予定だ。Jahan DuchyEngineering技術で建設できるなら任せるが、難しそうならやはりVandalieuの出番となる。

しかし、これでまた我々にとってDuke Farzon領の価値が暴落しましたね」

Orbaum Elective Kingdomで唯一大々的な交易が出来る港があるDuchy、という優位性が失われますからね。まあ、Continentの北と南ではFishing場や取れる海産物、そして航路と行き来できる貿易先に違いがでますが」


 Duke Farzon領の港では、これまでと同じFishingと貿易が出来る。

 一方、Jahan Duchyでは海でのFishingも航海も、Zeroから始めなくてはならない。そして、貿易相手として最も近いのがそのDuke Farzon領という有-samaだ。


 だから、Duke Farzon領の優位性が完全になくなった訳ではない。しかし、海を手に入れたJahan Duchyが喉から手が出るほど欲しいと思う事はもうないだろう。




 その頃、Duke Farzon領の西隣のBirgit Duchyを治めるWolf-species Beast raceGeraldBirgitは、Duke Farzon領を制圧するための兵を派遣するための書類のに判を押していた。

「めんどくさい……めんどくさいが、隣だから放置するともっとめんどくさい事になる。美味く利権だけ手に入らないだろうか?」


「お館-sama。そのめんどくさい所に赴任しているBombarde -samaの方が大変なのですから、判子くらい黙って押してください。

 お気持ちは重々承知しておりますが」


 Vida's New Racesの一種であるBeast raceDukeを務めるBirgit Duchyにとって、Alda信仰が盛んなDuke Farzon領は腐れ縁の関係だった。

 政治闘争では常に敵対してきた。派閥や主義主張が合わないのではなく、Birgit Duke 家は常にDuke Farzon 家の敵に、そしてDuke Farzon 家は常にBirgit Duke 家の敵になる事を選んで来たのだ。


 しかし、同じElective Kingdomを構成するDuchyの一つだったので、戦争(内乱)をするわけにはいかないので、争うのは政治の舞台だけ。

 敵対していない時期が無いわけではないが、それは敵対していないだけで関係が良好になった訳ではない。


 そんなわけで、Duke Farzon 家Dukeの位を失ったのは彼らにとって良い事ではある。しかし、治める者が変わったからと言って、治められていた者達の主義主張が急に変わるわけではない。

 自身に対してrebel心旺盛な領民を増やしたいとはGeraldは思わないため、Duke Farzon領を手に入れようとは考えていない。


 ……Duke Farzon領の領民の反感が自分の代までなら、少しは考える。しかし、子の世代になっても変わらないだろうからいらないのだ。

 しかし、隣の領で境界線も触れ合っているため、治安が悪化すると面倒な事になる。


 難民の発生、犯罪者の流入、治安悪化による街道でのmountain bandit被害のEnlarged (3)……想像するだけでもうんざりする。

 そのためGeraldは他のDuchyに丸投げする事も出来ず、結局側近であるBombardeを代理として派遣することになってしまった。


「うちには小さいが港もあるし、Vandalieu -donoとはBoundary Mountain Rangeの方にtunnelを掘ってくれると約束を交わしているし、利益的には必須という程ではないのに。距離が近いというだけで、厄介な事だ」

 Birgit Duchyには、祖先が悪戦苦闘して岩tunnelを掘って海までつなげ、小さいが港も整備している。交易は無理だが、近海でのFishingは出来ている。


 また、Vidal Magic Empireとのtunnelが開通すれば、Magic Empireとの交易が始められるし、純粋に陸路で移動できる場所が増える。

 そのため、苦労やriskもなく利権が手に入るならともかく、そうでなければ何もいらないというのが、Geraldの考えだった。


PilchikovRextZectoirが信頼できればなぁ。SauronHartner、そして新たな盟友のJahanは動かないだろうし。Alcremが動いてくれればいいのだが」


 Pilchikov Duke 家Rext Duke 家、そしてZectoir Duke 家は、Birgit Duke 家にとって特別仲がいいわけでも悪いわけでもない、「普通の隣人」である。

特定のtempleが大きな勢力を持たず宗教的中立地帯であるPilchikov Duchyや、日和見主義のRext Duchyには、過去にはDuke Farzon 家との揉め事を仲裁してもらった事もあるが、「信頼して任せられる」と考えられるほど強い信頼関係はない。


 また、同じVida信仰が根強いSauron Duchyとは昔から続けられている交流があるが、新Dukeに就任したばかりのElizabethの事情を考えると、この件では期待できない。二百年前から関係が悪化しつつあったBirgit Duchyの真北にあるHartner Duchyも、同-samaだ。


 新しく交流を深めようとしているJahan Duchyは、距離があるのと北海へ続くtunnelVandalieuに掘ってもらうそうなので、やはり期待できない。


 そしてGeraldnameを出さなかったDisonZectoirCorbitもそれぞれ任せるには不安が残る。Dison Duchyは一応 Bahn Gaia continent東部の海に接しているが、遠洋に出るにはDevil Nests化した海であるDemon Seasに囲まれているためFishingは出来ても交易は出来無いから、Duke Farzon領を欲しがるかもしれないが、うまく付き合えるかは分からない。Zectoirは、あまり付き合いが無い。年に一度しか会わない知人みたいな関係なので、信頼にはたらない。


 そして現Elected Kingを輩出したCorbit Duchyは……新たな利権に手を伸ばす余裕があるかどうかも疑わしい。


 経済的に潤っているAlcrem Duchyが動く事を期待したいが……独り勝ちしすぎると後々妬まれ、厄介ごとの度に頼られる事になると考えて敢えて静観するかもしれない。


「やはり、とりあえずBombardeに頑張ってもらうしかないか」

 そう言いながら、ゲラルトはまた一枚、書類に判を押した。




 その頃、Birgit Duchyとの間に岩を挟んだHartner Duchyでは、Lucas Hartnerが忙しく動いていた。

「今年の社交Seasonには、Elected King領のmansionで各Duke 家を招待したpartyを開き、そこで正式に旧Talosheimの遺産の返還に協力してもらえるよう頭を下げなければ……」


 何故なら、約二百年前に当時のHartner DukeMirg Shield Nationに祖国を滅ぼされて亡命してきたPrincess Levia達を陥れて謀殺し、彼女達が侵略者の手に渡らぬよう持ち出してきたTalosheimの宝物をVidal Magic Empireに返還しなければならないからだ。


 まだTalosheimの宝物がHartner Duke 家の宝物庫にあれば、そんなに忙しくなることはなかった。しかし、先祖は奪った宝物の中でも特に価値がある物を当時のElected Kingに献上したり、CenterNoble達に賄賂として贈ったり、各Duke 家Elected King選挙の折にHartner Duke 家を支持する見返りにするなどしたため、散逸してしまっている。


 筋を通さなければならないので、密書を送って内密に済ます、と言う事は出来ない。動機はともあれ、こちらから贈った物を返してもらうので、それなりの詫びをしなければならないから予算も用意する必要がある。


 相手も事情を知っているから、返さないとごねる事はないだろう。もしかしたら、Hartner Duke 家越しにVidal Magic Empireへ媚びを売るために、無償で返してくれる可能性もあるが、それを最初から期待するは拙い。

 世の中、ただ程恐いものは無いのだ。主な目的がVidal Magic Empireへ媚びを売る事だとしても、ついでにHartner Duke 家に貸しを作る事を考えていないはずが無い。


 Vidal Magic Empireへの正式な謝罪は、TalosheimChurch of Vidaで行う事が決まっている。……Magic EmpireOrbaum Elective Kingdomの要人を招いたpartyでないだけ、温情をかけられているとLucasは考えていた。

 実際には、この『Lambdaworldにはいわゆる謝罪会見というものが一般的ではないため、困ったVandalieuがどうするかPrincess Levia達と話し合った結果、そうなっただけなのだが……殊更Hartner Duke 家を貶めようとしている訳ではないので、祖先が彼女達にやった事と比べれば、温情をかけられたと言っても差し支えないだろう。


 近々、前世は『Urðr​』のKei Mackenzieだった一人娘のKatie督を譲り、彼女の後見人になる予定のLucasだが、この仕事だけはやり遂げなくてはならない。

 娘にこの役目をやらせるわけにはいかない。負債は自分の代で終わらせておきたい。


 当然、こんな時期にDuke Farzon領の利権に手を伸ばしている暇はない。

「いや、見せかけだけでも手を伸ばせば、『Duke Farzon領の利権から手を引く事』というCardになるか? ……いやいや、他のDuke 家も我がの状況は既に知っているはず。見透かされて終わりか」




 一方、PilchikovRextDisonZectoirVidal Magic Empireと強い結びつきが無いDuke 家は、Duke Farzon領に対してどうするか決断を下せずにいた。

 彼らも利権は欲しい。欲しいが、Alda believerの多いDuke Farzon領を上手く統治しながら、Vidal Magic Empireと良好な関係を維持できるか、自信が無かった。


 よりaccurateに述べるなら、Vidal Magic Empireに対して反感を持つDuke Farzon領の利権を手に入れる事で、反Vidal Magic Empire勢力を自領に取り込み、将来的に敵対するつもりではないかとVandalieuに疑われる事を恐れたのだ。

 もちろん、VandalieuPilchikov Duke達がDuke Farzon領をAbsorptionして反Vidal Magic Empire勢力になったとしても、さほど脅威とは見なさない。


 ついでに言えば、政治や経済の問題内に留まるなら、敵対されても気にしない。逆らう事を許さず絶対服従を強いるなら、そもそもOrbaum Elective Kingdomを征服なり滅ぼすなりしている。そして、全ての死体をUndeadにすれば永遠に絶対服従の属国を造る事が出来るのだから。


 とはいえ、必要以上にVandalieuを恐れるのも仕方のない事だ。突然現れた今までの常識が通用しない、自分達を容易く攻め滅ぼす事が出来る存在なのだから。しかも、強いconnectionが無い。

 Vidal Magic Empire内にはそれぞれのDuke 家の大使館があるが、まだ大使を派遣してから日が浅く、日々驚かされるだけのconditionだ。


 Pilchikov Duke 家等は、これから時間をかけてVidal Magic Empireとの適度な距離感と関係を学ぶことになる。

 それがまだできていないため、Duke Farzon領に手を伸ばすべきか迷っていた。


「仕方ないから、我がAlcrem Duke 家Duke Farzon領の暫定統治に手を挙げよう」

 そして、結局Alcrem Dukeが手を挙げる事になった。

「仕方がない、という程の必要があるとは思えませんが?」

 Isaac Moksi Earlが首を傾げると、Dukeはため息を吐いて答えた。


Duke Farzon領を、Duke Farzon 家亡き後も反Vida、反Vidal Magic Empireの急先鋒にしたまま放置するのは拙いだろう」

 今のDuke Farzon領の戦力は惨憺たる有-samaだ。しかし、先の戦争では市街地戦は行われていないため、非戦闘員にはほぼ被害は出ていない。そして、十年も経てば非戦闘員だったchild達が育ち新たな兵になる。二十年も経てば、新しいKnightや将が育つ。


 そして、三十年も経てば先の戦争で味わった敗北感や無力感は忘れられ、憎悪が残る。後はきっかけさえあれば再び戦争が起こる。


「正直、その頃には儂等は引退しているし、この世にいないかもしれん。次代の元Duke Farzon領の領民達にまで責任は感じない。しかし、他のDuchyに余裕が無いのなら、同盟国にいらぬ迷惑をかけないよう動くのがOrbaum Elective KingdomDukeとしての責任だろう」


 いわゆる、高貴なる者の義務。それを果たす必要があるとAlcrem Dukeは語った。


「それに、放置しておくとTamaGyokuが何時までもDuke Farzon領沖から帰ってこられないだろう」

「確かに、それは由々しき問題ですな」

 MoksiMascotTamaGyokuはまだDuke Farzon領沖で海軍のRemnantsを見張っており、Alcrem Duke達は彼らの帰還を待ちわびているのだった。


 なお、Alcrem Duke以外にも現Elected KingCorbit Dukeも元Duke Farzon領の暫定統治に協力する旨を発表し、領民を反Vidaから転換させるために両Duke 家は手を尽くすのだった。


 この時のOrbaum Elective Kingdomの政治は、複雑怪奇ではあっても、Vandalieuが思っているほど汚いものではなかったかもしれない。



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