その演説が行われたのは、常識的には不可解なtimingだった。重要な国内行事が行われた訳ではなく、他国との会議や会談、軍事演習等々があった訳でもない。本当に唐突にUnited States大統領Sergeiは記者会見を開き、worldに向けてスピーチを始めた。
『私の声を聞いている全ての皆-san。あなた達に伝えたい事があります。今、神は戦っているのです』
Sergei大統領が言う『神』とは、最近world四大宗教の一つに加わったVandalieu教の主神、唯一存在が確認されたVandalieuの事だ。
彼はworldの守護者、alien、Giantな泡の如き存在、夢で仰ぎ見る者、背後に寄り添うもの……-sama々な名でこの『Origin』worldの人類に知られていた。
Adventした際の姿は今も動画サイトで拡散され、それを視聴した者達が次々にbelieverに加わっている。
『神は偉大です。ですが、同時に神でしかありません。神は寛容であり、我々に期待し、我々を信じています。
我々が倒れても立ち上がる事を期待し、過ちを犯しても正しい道へ進む事を信じているのです。
だからこそ神は我々が膝を折った時も、迷っている時も、寄り添い、肩を貸し、背を押してくれる。神は我々のmasterではなく、我々は神のSlaveではない』
Sergeiが語っているのは、Vandalieu教の解釈である。神が直接現れただけで、他の宗教における預言者や聖人と呼ばれる役割の存在がいないVandalieu教では、その教えをbelieverそれぞれが解釈する必要がある。
そして、「夢で行われた神との対話」の内容によってbelieverごとにその細部は異なる。だが、Sergeiが語った部分は多くの場合共通している。
『そして、我々の隣人である神は今この瞬間も戦っているのです』
「大統領、それはどういうことですか!?」
「どこかでまた、Rokudou Hijiriのような危険な存在がいるという事なのでしょうか!?」
「神はそれを防ぐために戦っているという事ですか!?」
記者達が我先にと質問を投げかけ、live performance映像を配信している動画サイトではコメントが嵐のように投稿されている。
それも無理はないだろう。Sergeiが言った、『神は戦っている』とは人々にとってそれだけ衝撃的な言葉だったからだ。
『皆-sanの疑問に答えるのに、私よりも相応しい人物がいます。mister Amemiya』
しかし、Sergeiは自分では記者達の質問に答えず、代わりに記者達や動画の視聴者達も知っている有Adeptが現れた。
「Amemiya Hirotoっ!?」
「【Braver】……あの事件後、彼がこんな公式な舞台に現れるなんて」
現れたのは、【Bravers】のleader、Amemiya Hirotoだった。
以前はworld的なHeroとして讃えられていたが、【Bravers】の幹部だった【Avalon】のRokudou Hijiriが興した大事件と裏で行っていた非人道的なdeath attribute研究にbarelyまで気が付かず、未然に防げなかったとして彼の責任を問う声が強く、その名声は今も陰っている。
ただ、それ以上にRokudou Hijiriに協力していた各国の大統領や政府高官、諜報organizationこそ責任を取るべきだという声の方が大きい事や、未然には防げなかったがRokudou Hijiriを倒すために裏切り者以外の【Bravers】と尽力した事もあり、彼に対する責任の追及は強くなかった。
もちろん、Sergei大統領が彼らを擁護していた事と、彼のchild達がVandalieuの寵愛を受けている事も大きい。
Vandalieuを信仰する人々にとってAmemiya HirotoはHiroshiと冥の父親で、他の【Bravers】にも神と親しい者達が含まれている。
Vandalieuを信仰しない人々も、彼がAdventした時の映像を見れば彼を怒らせるような事は避けようと考えるのは当然の事だった。実際にVandalieuが激怒するかは問題ではない。人々がVandalieuを怒らせそうだと思うか否かが問題なのだ。
「ごintroductionに与ったAmemiya Hirotoです。今日は、皆-sanに告白しなければならない事があり、大統領に時間を作っていただきました。
私は……いえ、我々【Bravers】と彼、Vandalieuは同じanother worldからこのworldにreincarnationした存在なのです」
『another worldっ!?』
『reincarnation……それは本当ですか!? magic的に証明できるのですか!?』
科学だけでなくmagicもdevelopmentしているこの『Origin』worldでは、魂の存在は概念的に証明されている。魂の標本が存在する訳でも、人体の何処に魂が宿っているのか判明した訳でもないが、魂が存在しないとmagic的におかしいので魂は存在すると信じられているのだ。
『Lambda』と比べると圧倒的に少数だが、GhostやZombie等のUndeadの存在も確認されている。
しかし、魂が何処から来て何処へ去るのか……死後のworldの存在や、人には前世や来世があるのか確かめた学者ははまだいない。
Amemiya Hirotoの言葉は、そんな『Origin』worldの人々に衝撃を与えるものだった。
「物証があるわけではありません。我々が前世を過ごしたanother worldについて証言する事は出来ますが、口裏を合わせただけだろうと言われれば、それまでです。
私はただ、この言葉は真実であると神に誓う事だけです」
(勝手に誓われても彼は迷惑だろうけれど)と、Amemiyaは思った。きっと、顰める顔がいくつあっても足りないに違いない。
だが、記者や配信されているlive performance映像を見ている者達は、Amemiyaの言葉に説得力を感じていた。
【Bravers】のmemberが持つ……memberしか持てない、magicとは異なる強力な力、Giftとも呼ばれる特殊Abilityを持っている理由。そして、突然出現しAmemiya Hirotoのchild達を守護する異形の、しかし人を理解し、Cardで買い物をするぐらい高い社会性を持つ神Vandalieu。
それらの特殊性と両者の関係を説明するには、another worldや前世といった彼らにとって未知の領域が関係していると考えた方が分かり易かったからだ。
Vandalieuが元Humanだという事も、あのGiantなeyeballやtentacleが生えたdome状の姿だけを見た者は信じなくても、彼と夢で遭遇した者にとっては納得できる話だ。……本人は元ではなく、今もHumanだと言いたいだろうが。
「しかし、それとSergei大統領の演説と何の関係があるのでしょうか?」
「神が、Vandalieuが戦っているのはこのworldではなく、another worldでだという事です」
Amemiya Hirotoは、当然だがVandalieuからblessingsを得ていない。夢で遭遇もしていない。しかし、『Lambda』から『Origin』へ避難している娘の冥に憑いているBandaから直接事情を説明されていた。『Lambda』で何が起きているのか、だいたい知っている。
「another world! それは、我々のworldの命運にかかわる戦いなのでしょうか!?」
「いいえ。直接は関わりません。戦いの結果がどうなろうと、このworldの人々に直接危害が及ぶことは無いでしょう」
Amemiyaの説明に、少なくない者が安堵した。彼らにとってAvalon事件はまだMemoryに新しく、その事件で明らかになった社会の暗部とそれによる混乱にまだ苦しめられている者も多い。これ以上の大事件は、もう今世紀中には起きてほしくないだろう。
「ですが、もしVandalieuが負ければ、我々は親しい隣人を失う事になるでしょう。寄り添う温もりが一つ、永遠に消えるのです」
だが、Amemiyaがそう語ると、安堵で緩んだ空気が再び引き締まった。
Vandalieuは、『Origin』worldの人々にもblessingsを与えている。それはSergei大統領が言うように数字で表せる直接的な助力ではなく、辛い時寄り添い、背中を押してくれる程度の助力だ。だからこそ、それが無くなるとどうなるか分からない。
そして、そうなれば寂しい。
「それを知った我々は、どうするべきでしょうか? 我々は彼のために何が出来ますか?」
そう質問したのは、Avalon事件後に起業した新聞社の記者だ。民衆から信用を失ったのは政府だけではない。Rokudou Hijiriに協力していたことが発覚した大手mass mediaも同罪と見なされた。
ジャーナリズムは地に堕ちたと評され、sponsorが離れ、視聴者や購読者が激減した。そして、このままではいけないと志を持った者達、もしくは大手mass mediaが低迷している状況にビジネスchanceを見出した者達が、新たな新聞社やnews配信会社を立ち上げた。この記者も、そんな一人だ。
だから、彼はVandalieuに恩義を感じていた。
Vandalieuのためなら命を捨てられるという程のLoyalty心や狂信はないし、自らWeapon Equipmentを手に取って戦いに参戦する事を願う程のblood気と力もない。
それでも出来ることは無いかと考え、尋ねるほどには恩義を感じている。
「祈りましょう。another worldには、私達のmagicも、兵器も、力も届かない。だが、我々に彼の応援が届くように、我々の応援も彼に届くはずです。
皆-san、五分……いえ、一分でいい。彼のために祈りましょう」
Heinzが振るうHoly Swordが当たる度に、Vandalieuは当たった部分の魂を分離した。そして分離した魂がsealedされる度に、Manaが削り取られていく。そうして魂の一部をsealedされた事で減ったManaは、magicやMartial ArtsをActivateして消費したManaと違って回復しない。
だから、Vandalieuの魂を削り切ればHeinzは……Aldaは彼に勝利できるはずだった。
『そんなBAKANAっ! 何故っ、何故魂が増える!?』
だが、Vandalieuの魂はHeinzがいくら彼のsoul fragmentをsealedしても、減らなかった。いや、Heinzがsealedするのを上回るpaceで大きさを増し続けている。
『また神の魂を喰らったのか!?』
「そう見えますか?」
Vandalieuのconditionは、魂を削り取られながらも『良好』と言えるものだった。Evil God (M) Evil God (P)やAlda's Factionの神の魂を喰らった時や、Guduranisのsoul fragmentをAbsorptionした時と比べると、格段に調子が良い。
魂を構成する何かが偏る事も無く、balance良く大きく成長していく感覚がある。それは魂を喰らう事で異物を自分自身の一部に変化させているのに対して、Vandalieu自身が直接大きくなっているからだ。
「お前が思っているよりも、そして俺が自覚しているよりも俺は神だった。そう言う事です」
神は人々の祈りを力とする。だから、祈る人々の数が増えれば増えるほど存在感を増し、強く成長する。
『そんなっ、信じられない……魂の大きさがまだ肥大……Growし続けている! 億を優に超えるmonstersを従えたDemon King Guduranisを超えている。何処にこれほどのbelieverが!?』
一向に消耗した-sama子の無いVandalieuの納得できない答えにAldaが苛立ち、困惑するが、Heinzは太刀筋を乱さず攻勢を緩めない。
「another worldに、良き隣人が数億人程」
だが、Vandalieuの魂が大きくなり続けている事で、Holy Swordに宿った【Pile of Law】が彼にとって脅威ではなくなりつつあった。
『another world……だと!?』
Heinzや彼に降りているAldaが驚くのも無理はない。本来、人々の信仰はworldを隔てる壁を超えないからだ。
もし仮に、異なるworldに存在する神をworshiperが居たとしても、その信仰はanother worldに届くことなくそのbelieverのいるworldに留まる。
そのworldに、その神と同じ名と同じ姿の新たな神が生まれるだけだ。
だが、Vandalieuは例外である。何故なら、『Origin』worldに誕生したGod of Originの一部である『Vandalieu』は、名と姿が同じだけの別の存在ではなく、Vandalieuの魂の一部。こうしている今も繋がっている。
そのため、『Lambda』worldの総人口を上回る『Origin』worldの人々の祈り……応援が『Origin』の神であるVandalieuを通して、Vandalieu main bodyに届いていた。
つまり、【Avalon】のRokudou Hijiriから『Origin』worldを守った結果、Vandalieuは『Lambda』worldの神であると同時に『Origin』worldの神でもある存在になっていたのだ。
『そんなところまでGuduranisと同じか!』
AdventしたAldaのimpactを受けているHeinzは、それをanother worldから『Lambda』worldを侵略するために現れたGuduranisと同一視しているようだが――。
「それはこじつけが過ぎる」
another worldから『Origin』worldの友達を助けに行ったVandalieuとしては、同じにされるのは甚だ遺憾だった。彼は細かい事情を知らないから仕方ないかもしれないが、教えてやる義理も無い。
『another worldの住人にまで自身への狂信を振りまいておいて何を言う! 【Evil Breaking Holy Radiant Extreme Flash】!』
端から削り続けても、もう勝てない。そう思ったのだろう。Heinzは一気に間合いを詰めてHoly Swordを上段から振り下ろす。
Vandalieuはその刃を複数の腕やtentacleで受けた。【Demon Kingのscale】や【exoskeleton】、【muscle】、【bone】で出来た腕や【tentacle】と【Arthropod Legs】を、HeinzのHoly Swordが切断していく。そのまま端で分離する隙を与えずに魂の大部分をsealedするつもりなのだろう。全力でHoly Swordをねじ込もうとする。
「お前のHoly Swordが、急に避けにくくなった」
VandalieuはHeinzの狙いを察しつつも、特に危機感を覚えた-sama子も無く口を開く。何故なら、Holy Swordに込められた【Pile of Law】が彼に及ぼす効果が弱くなっていたからだ。
「っ!?」
さっきまでは切りつければ分離した魂を即座にsealedしていたのに、切断したtentacleや腕に宿っている部分の魂がまだsealedされていない。それに気が付いて、息を呑むHeinzに、Vandalieuは続けた。
「【Danger Sense: Death】に、反応しなくなったからだ」
『Origin』worldの神としての側面が強くなったVandalieuは、『Lambda』worldの神のみが対象であるAldaの【Pile of Law】の効果範囲外になりつつあった。
Vandalieuの切断されたtentacleや、半ばまでHoly Swordの刃が食い込んだ腕にcountlessの【Demon King's Suckers】を生じ、別の生き物のように蠢いてHoly SwordごとHeinzの腕を掴んで動きを封じる。
「っ! 【Radiant Life光盾】!」
とっさに、防御magicをActivateさせるHeinzだったが――。
「【Absolute Death Flash】」
Vandalieuの必殺のmagicを、至近距離で受け止められるほどではなかった。だが、Heinzも二柱の神をその身に降ろしたことで【World Breaker Hollow Cannon】に一度は耐えた男。この一撃だけでは消し飛ばされはしない。
「ぐ……ごふっ!?」
だが、今度は無傷では済まなかった。至近距離で、しかも Holy Swordを拘束されたconditionでVandalieuのmagicの奥義を受けたHeinzはVitalityを大きく失っていた。
細胞が壊死してblood vesselが破れ、内臓に溢れたbloodが口から溢れる。『God of Law and Life』であるAldaの力でVitalityを回復させようとするが、うまくいかない。
そして、もちろんこれでVandalieuの攻勢は終わりではない。
「【神打】」
そのまま、【Demon Kingのtongue】を伸ばし、拘束したHeinzの腕を狙う。彼の腕を潰して、Holy Swordをもぎ取るつもりなのだ。
「【Holy Champion】! 【Radiant Life】っ!」
Heinzはそうはさせまいと、【-Transcend Limits-】skillのSuperior SkillでMuscular Strengthを含めたbody part Abilityの限界を超越して発揮し、脱出を試みる。
「【Overpowering Burst】」
しかし、Vandalieuも最大の脅威だった【Pile of Law】が効かなくなってきたとはいえ、Heinzを逃すつもりはなかった。【-Transcend Limits-】のSuperior SkillをActivateし、瞬間的にSemi Great GodのBellwoodとGreat GodであるAldaを降ろしたHeinzを上回るbody part Abilityを発揮する。
「ぐうっ!?」
結果、Heinzはうめき声をあげながら後ろに倒れ込んだ。その両腕にはHoly Swordは無く、それどころかRight Armの手首から先がなくなっていた。
「Gufadgarn」
「はっ!」
そしてVandalieuはHeinzに止めを刺す事を急ぐことなく、Gufadgarnが出した【Teleportation Gate】の先にHoly Swordを彼の右手首ごと放り投げた。
【Teleportation Gate】の先はVandalieuの【Body World】の一つで、countlessのDemon達が巣くっている場所だ。彼らは送られてきたHoly SwordをHeinzの手首ごとsealedするため、さっそく儀式に取り掛かっている。当然だが、Alda's FactionのGodsが介入できる場所ではない。
「ぐっ、がっ、うぐっ!」
その間、Heinzは立ち上がろうともがく事しかできなかった。BellwoodのHoly Swordという最大のWeapon Equipmentを失い、更に利き腕の手首から先を叩き潰されるように切断された事で受けたDamageは計り知れなかった。
それ故に、さっき受けた【Absolute Death Flash】でVitalityを大きく失った事が響いている。『God of Law and Life』Aldaでも、別々の個所に負った重傷を同時に回復させるのは難しい。
しかも、HeinzのBodyはただでさえ二柱の神をその身に降ろすという負荷に耐えているconditionだ。それまではAdventによって引き上げられたHeinzのbody part AbilityとMental力で耐えていたが、一度天秤の傾きが逆になると一気にDecayへと向かい始め、それを止める事は難しい。
「さあ、止めです」
そんなHeinzに対してVandalieuが止めを刺す手段として選んだのは、大量の【Blood Infection】だった。BellwoodとAldaを降ろして万全なconditionでは無理だったが、今はHoly Swordを失い、腹に穴が開いて立つ事もままならないconditionだ。今なら傷口から肉食性微生物と化した自分を送り込めば、体内から削り取るように食い殺す事が可能だ。
そして、この方法ならHeinzのBodyに降りているAldaの魂を上手く加工して人格等を削り、Light Attributeの管理だけを続ける存在に出来る可能性がある。少なくとも、【World Breaker Hollow Cannon】で吹き飛ばすよりはずっと。
「がああああっ!? な……なにをっ!? 何故……」
そんなtimingだったので、Heinzから眩い光が空に向かって立ち登ったのに反応するのが一瞬遅れた。
「っ! ファイエル」
逃がすくらいなら滅ぼそうと、急いで【Demon King's Horn】で作った弾丸を撃ち、眩い光……AldaやBellwoodの魂を打ちぬこうと試みたが……失敗したらしい。
当たりはしたが、魂を喰った感覚が小さかったからだ。眩い光はVandalieuがそのままにしていたMirg Shield Nation側の谷を通って、Divine Realmの外へ逃げていく。
同時に、残されたHeinzを【Blood Infection】が飲み込むが、そちらからは何の手ごたえも感じない。
「魂が無い? まさか……BellwoodとAldaが持っていった? まだ生きていたHeinzの魂を?」
自身もCloneを仲間に降魔させる事が出来るため、VandalieuはAlda達がした事がどれほど無茶な事か理解し、驚いた。しかし、彼らが何をするつもりなのかもすぐ察した。
敗色濃厚となったHeinzの魂をVandalieuに滅ぼされる前に取り出し、Rodcorteを利用して彼を再び地上にreincarnationさせて仕切り直すつもりなのだ。
それが実現できるか定かではないし、Heinzを無事reincarnationさせたところで聖戦に大負けしたAlda's FactionのGodsとそのbeliever達の力は既にボロボロであり、Vandalieuが回収したBellwoodのHoly Swordは替えが利かない……逆転の目は著しく低い。
むしろ、RodcorteのCircle of Reincarnation systemを利用してanother worldにreincarnationして逃がそうとする方が正常だ。しかし、あんな真似をする奴が正気のはずはないとVandalieuは確信する。
しかし、どうやって追いかけたものかと思った時、Vandalieuの前方のspaceが歪み、【Teleportation Gate】が開いた。
『ある意味、丁度良かった。そろそろ彼らの仕込みが終わるので、Aldaが行ったDivine Realmへ行こう』
【Teleportation Gate】の向こうには、四つの頭を持つ獅子の姿があった。
Aldaは敗走の屈辱も忘れるほど急いでRodcorteのDivine Realmに向かっていた。彼がやろうとしているのはVandalieuが予想した通り、Heinzのreincarnationだった。後のない彼が悪足掻きを続けるなら、それ以外の手はなかったからだ。
だが、自らがblessingsを与えたHeroの魂をBodyから強引に引きはがして殺すという愚行を行った結果、Aldaはより追い詰められてしまった。
『急がなければ、Bellwoodがもたない!』
何故ならHeinzの体から彼の魂を引きはがして離脱する際、Vandalieuが撃った弾丸が彼とHeinzの魂を庇ったBellwoodを直撃したからだ。
『私……よりも……ハ……イン……』
それまでもVandalieuの攻撃からHeinzの魂を守っていたBellwoodの魂は、それでほぼ限界を迎えた。whole bodyに細かなヒビが入り、それが徐々に広がっていく。今はまだ形を保っているが、何時countlessの光る粒子状の何かになって崩れ散ってもおかしくない。
『…………』
Heinzの魂のconditionも悪い。Aldaによって魂を無理やりBodyから引き剥がされたshockで思考が停止している。【Out-of-body Experience】ではなく、Bodyから完全に切り離された……殺された直後だからこうなるのも無理はない。
RodcorteにこのHeinzの魂にBellwoodのsoul fragmentを混ぜて再構成させ、reincarnationさせる。それしか彼らを助ける方法はないとAldaは考えていた。
Guduranisに砕かれたZakkart達四人のChampionのsoul fragmentを一つに纏め、Vandalieuになった魂をRodcorteは創り上げた。なら、同じ事がHeinzとBellwoodでもできるはずだと、Aldaは考えていた。
Rodcorteが口をきければ、「BAKANA事を言うな!」とAldaを罵倒しただろう。あれはChampionとはいえHumanのsoul fragmentだけだったから出来た事だ。まだ壊れていないHumanの魂に、Semi Great Godのsoul fragmentを移植して一つの魂に再構成するのは全く違う。
かなり控えめに例えても、複数のバラバラ死体から異なる部位を繋ぎ合わせて一人分の人体を創り上げるのと、五体が揃っている赤子に成人maleの臓器や四肢を移植して一つの生命体にすることくらい異なる。
だが、RodcorteのDivine Realmにたどり着いたAldaを迎えたのは、監視のために残した手の者ではなかった。
『久しいな、かつては兄にして弟だったAldaよ』
『Zuruwarn!? 裏切り者の貴-samaが何故ここに!?』
そこにいたのは、『God of Space and Creation』Zuruwarnだった。彼は裏切り者呼ばわりされた事に対して特に何も言い返さないまま、八つの瞳に憐れみを込めてAldaを見つめ返した。
Aldaは気が付かなかった。Zuruwarnが隠れ潜んでDivine Realmに侵入しなければならないほどの多くのGodsを有した彼の一大勢力は、既に機能していないという事に。
それを期待して、Ricklent達が自らを使ってAldaが放ったVida's FactionのGodsやDemon King Army Remnantsをsealedする中、Zuruwarnだけはそれをしなかったのは、何故なのか?
『そしてさらばだ、かつて兄にして弟だった神よ』
すっと横に退いたZuruwarnの背後には、黒いshadowがあった。そうAldaが思った次の瞬間には、黒いshadow……VandalieuはGrowして彼を圧倒していた。
『ヴァ、Vandalieuっ!? ま、待てっ! 私は、私の魂は構わないっ、だが、Bellwood、Bellwoodだけは……!』
怒りやprideを遥かに上回るhorrorとdespairがAldaを叫ばせていた。
このままではAldaが十万年以上もの間邁進し続けた理想が、夢が終わってしまう。今まで散ってきた者達の犠牲が無になってしまう。
Bellwoodが滅びれば、誰が迷えるものをGuidingのか。誰がこのworldの汚れを浄化し、monstersが存在しない美しい、あるべき姿に戻すのか。だから、なんとしてもBellwoodは……完全なconditionでなくなったとしても、Heinzの魂に混ぜる形になったとしても、未来へ残さなければならない! 未来のために!
『【冥崩惨滅魂撃】』
そう懇願しようとするAldaを無視して、Vandalieuはdeath attributeのManaに満ちた自らの魂でAldaごとBellwoodとHeinzの魂を圧殺した。
Vandalieuの異形の魂のclawsに抉られ、角で突かれ、fangsで食い千切られ、tentacleで削られ、crystalを叩きつけられ、HeinzとBellwoodの魂が砕け、Aldaが加工されていく。
『これで上手く動く……かもしれません?』
鑢で繰り返し研磨するような微調整を施して、VandalieuはAldaの加工を終えた。そこにあるのは理想もegoもemotionsも削り取られたAldaだった存在だ。
『…………』
それを見たZuruwarnは、『ああ、十分だ。手間をかけた』と四つの口でため息を吐く。
『かつて我が兄にして弟だったAldaよ、これは慈悲ではない。汝が背負うべき業であり、我らの無力と過ちの象徴だ。
この先、何十、何百万年もの先に汝に再びegoが宿るかもしれない。だが、そんな奇跡が起こったとしてもそれは汝のrevivalを意味しない。-kunではない-kunが生まれる事で、過去の-kunは生きながらに死ぬだろう』
そう告げると、Zuruwarnは何処かへspaceを繋げてAldaだった存在をそこへ送った。おそらく、Alda本来のDivine Realmだろう。
『あれで、細かい事は出来ないだろうけどLight Attributeの管理は可能なはず。細かい修正は、残ったAldaのFamiliar SpiritやLight Attributeの神がやるだろう』
『それならいいのですが』
神となったVandalieuだが、attributeの維持管理についてはよく分からなかった。自分の一部が『Origin』worldの神をしているが『Origin』と『Lambda』ではattributeの数も、種類も異なっているのでピンとこない。
Group Bodyである『God of Origin』と、それぞれが独立した存在である『Lambdaの神』では、attributeの維持管理のやり方も違うのかもしれない。
『それより、あれも滅ぼして構わないのですよね?』
『あ、あれはもうちょっと、いや、もう大丈夫』
『急に口調が変わりますね』
『我、もうすぐオフ』
『……後でColaをtempleに供えますね』
【Pile of Law】を打たれてから、Rodcorteは完全にsealedされる数歩手前のconditionのまま監視されていた。
動く事はもちろん、言葉を発する事も出来ない。完全にsealedされ意識が絶たれた方がマシだと思えるconditionのまま、生殺しにされている。
そのconditionで周囲を見る事しかできなかった。しかし、遠くない将来自分は解放されるはずだと、Rodcorteは信じていた。
何故なら、彼は『Lambda』を含む複数のworldのCircle of Reincarnationを司る神だ。sealedされる事で他のworldのCircle of Reincarnationに支障が出れば、他のworldのGodsが黙ってはいないはず。Aldaも、他のworldのGodsと争うのは避けるだろう。
そうなる前にAldaがVandalieuに勝てば、彼が治める国も滅亡し、Undeadは浄化され、Vida's New Racesの数も大幅に減る……そして、Rodcorteの名を知る者の数も減る。それによって、彼は『Lambda』worldの神ではなくなり、【Pile of Law】の対象から外れる事が出来るかもしれない。
逆に、Aldaがlose滅ぼされたとしても、それによって【Pile of Law】の効果がもし弱まれば脱出や、彼がCircle of Reincarnationを司っているいずれかのanother worldに救援を求めるchanceが出来るはずだ。
そう期待していたRodcorteだったが、自身のFamiliar SpiritとなったAran達が自分を助けてくれるとは全く考えていなかった。そもそも、彼らにGreat GodのDivine Authorityをどうにかできる力は無い。
だが、同時に自分が動けなくても彼等には何も出来ないだろうと思い込んでもいた。
『よしっ! 何とか間に合った! これでCircle of Reincarnation systemをworldごとに分離できる!』
複数のworldを一つのsystemで管理していたRodcorteのCircle of Reincarnation systemを、彼らがworldごとに別々のsystemに分離して管理できるように改造する事が出来るとは、思いもよらなかった。
『Zuruwarn、各worldのGodsへ合図を!』
泉の言葉に応えて、Zuruwarnが合図を送るとRodcorteにCircle of Reincarnationを管理されていたanother worldのGodsが、扉を開く。
Zuruwarnが泉達と手を組むことも、彼にとって予想外だった。一度『Lambda』worldをCircle of Reincarnation systemから切り離すために、『Earth』や『Origin』も切り離そうとした事で、彼らにどんなに難しくてもそうせざる得ない程の危機感を覚えさせていたことに気が付かなかったのだ。
そして、それぞれのworldごとに分割されたCircle of Reincarnation systemを受け取る、another worldのGods。彼らに泉達の提案を仲介したのはZuruwarnだ。今のLambdaでanother worldへ干渉できる神は、Rodcorteを除けばZuruwarnぐらいだから間違いない。
another worldのGodsがそのZuruwarnが仲介した提案を受ける事も……another worldのGodsが自分を見限りVida's Factionに着く事もRodcorteにとって予想外だった。
だが、another worldのGodsにとっては十分あり得る選択だった。
何故なら、Rodcorteは『Earth』や『Origin』をSelf保身のために切り捨てようとした。複数のworldのCircle of Reincarnationの運航を司るCircle of Reincarnation systemを維持するためだから、多くのworldのためと言えなくもない。
しかし、それは「もし、何れかのworldにCircle of Reincarnation systemの運航の障害になる存在が発生した場合、自分達のworldごと切り捨てられる」可能性がある事を意味している。
そして、その疑いを払拭できる程Rodcorteは信頼も信用もされていなかった。彼は『Lambda』や『Origin』に対してだけあのような態度で接していた訳ではない。全てのworldに対して、あの態度で接していたからだ。
Rodcorteに、本当の意味での仲間は存在しない。彼が一方的に仲間(同類)だと認識しているだけだった。
信頼の無い関係にRodcorteは不満を覚えなかったが、Godsの方はそうではなかった。ただ、それまではCircle of Reincarnationを握られている立場の弱さと、独自にCircle of Reincarnationを司るsystemを立ち上げる事によって発生する事故や不具合への恐れが、彼に対する不満より大きかったから表面上は平穏が保たれていた。
だが、事前に知らされる事もなくある日突然Circle of Reincarnation systemから切り離される危険性があると知れば、多少の事故や不具合を恐れている場合ではない。
それを各another worldのGodsに教えて回ったのが、Zuruwarnだ。彼が仲介した事で、RodcorteのFamiliar Spiritである泉達はanother worldのGodsの信用を得る事が出来た。
しかし、『Pile of Law』の効果で動く事が出来なかったRodcorteは、そうした経緯を知らない。ただただ、another worldのGodsが自分を見限った事に驚き、何故だと叫ぶ代わりに目を見開いていた。
『Rodcorte……二度目の人生を与えてくれた事には感謝している』
そして、Circle of Reincarnation systemの分割を終えたEndou Kouyaは、そう告げると他の二人とともにRodcorteから離れた。
(待てっ、何故私から離れる!? まさか……!!)
今までbeliever達の祈りの代わりに自身の糧となってきたenergyの供給が、途切れた事がRodcorteにも分かった。それは、Circle of Reincarnation systemが完全に離れた事を意味する。
それはつまり……もう彼が存在しなくても、何の不都合もないという事だ。
『こうして会うのは、十数年ぶりか』
それに気が付いた時には、VandalieuはRodcorteのすぐ近くにいた。
滅ぼしたかったが、『Lambda』以外のworldのCircle of Reincarnationも司っているため無理だと思っていた。だが、そうした障害が全て取り除かれたconditionで、Rodcorteが転がっている。
Vandalieuにとって、素晴らしいsurpriseだ。
『ま、待てっ……や、止めろっ、私を滅ぼせばっ、もし私を滅ぼしてしまったらっ!』
VandalieuがAldaを滅ぼしたか、地上のAlda believerの数が短い時間で激減したからか、『Pile of Law』の効果が弱まったのか、Rodcorteが声を発した。
しかし、「罪に対する刑罰」という性質のDivine Authorityであるため、裁判官が死亡しても下した判決がNullificationになるわけではないように、『Pile of Law』も完全には消えないようだ。
そのため、countlessの『Pile of Law』で滅多刺しにされたRodcorteに出来るのは口を利く事だけで、身動きする事もできないようだ。
『滅ぼせば、何か?』
ゆっくりと近づきながら、Divine RealmがDecayしかねない程Manaを高め、収束させるVandalieu。彼の問いに、Rodcorteは思わず叫んでいた。
『こ、今度こそっ、今度こそCheat Abilityとmagicの素質を、FortuneもDestinyも全て与える! だから――』
『【Absolute Death Flash】』
それが、Rodcorteにとって最期の言葉となった。Vandalieuが振るったdeath attributeのManaの刃が、刺さっていた『Pile of Law』ごと彼を砕き、喰らって滅ぼした。
glassが砕けるような澄んだ音が響き、Vandalieuは何とも表現しにくい味と食感を覚えた。不味いとも、美味とも言えない。しかし、深い満足感とさっぱりとした後味だけは確かだ。
『これで、もうHumanの魂を喰らう事も、砕く事も、しなくてよくなった』
Rodcorteが存在しなければ、殺した相手がそのままreincarnationして蘇ることは無い。『Origin』worldでまだ生きているReincarnatorがどうなるかは微妙だが、彼らとはもう敵対していないから構わない。
もっとも、Circle of Reincarnation systemがworldごとに分割されたため、another worldにreincarnationすることは無いかもしれないが。
『あー、それで、ダーはどうする?』
『どうとでも。それより、あなた方はこれからどうなります?』
話しかけてきたAranに、残っているRokudou Hijiriの部下の処遇を尋ねられたが、Vandalieuは彼に関心は無かった。もうRokudouは滅びたし、Rodcorteも存在しない今、ただの霊でしかない。
それよりも気になるのは、Aran達の今後だった。別に案じている訳ではないが。
『俺達はこれからも仕事さ。このDivine Realmの事なら、『Lambda』worldのVida's New Racesやmonsters以外の生物のCircle of Reincarnation systemがあるから、Rodcorteが滅びた後も消えないと思う』
彼らは、これから各another worldを巡ってCircle of Reincarnation systemの維持管理を手伝う仕事がある。
各worldのGodsが新しい体制に慣れるまで短くても何百年、長ければ何万年とかかるだろう。それほどGodsの時間感覚は長い。まだHumanの感覚のままであるEndou達にとって、気が遠くなるような年月だ。
そしてDivine Realmは、基本的に主である神が滅びれば消える。かつて存在したShizarionのDivine Realmのように。しかし、このRodcorteのDivine Realmには『Lambda』worldのCircle of Reincarnation systemがあるので、それが神の代わりとして機能するためDivine Realmは維持される。
ここにあるRodcorteのCircle of Reincarnation systemがVida式とintegrationされるか、どうにかなるまで。
『そうですか……このworldのCircle of Reincarnationもこれから色々変える事になると思うので、よろしく。
じゃあ、帰りましょうか、Zuruwarn。……ん?』
ふと、Vandalieuが視線を向けると、RodcorteのDivine Realmの隅にsoul fragmentが外に向かって飛んで行くのが見えた。
『あれは……Heinzのsoul fragmentか』
砕く際、Bellwoodが再び庇ったためか、Heinzの魂の断片が残っていた。輝く粒子状の何かを宙に撒きながら、Divine Realmの外……『Lambda』worldのspace (UCHUU)か、他のanother worldか、worldとworldの狭間か、そのどれでもない何処かへ流れていく。
Vandalieuはそれを滅ぼすために、とっさにmagicを放とうとしたが……吐き気を覚えてそれを止めた。
それまでは仇や敵の魂を喰らう事に爽快感すら覚えていたのに、急にそれが出来なくなった。何故だろうと考えるが、答えはすぐに出た。
必要なくなったからだ。
Rodcorteが存在しないから、Heinzはもう絶対に「Heinz」としてreincarnationしない。万……いや、兆分の一以下の確率でreincarnationできたとしても、それは前世のMemoryや人格を受け継がない、全く別の存在として生まれ変わる。生まれ変わる先がHumanか、動物か、植物か、虫かも分からない。
何らかの奇跡が起きて前世のMemoryや人格を受け継いだとしても……力は受け継げない。blessingsを与えていたAldaやそのSubordinate God、そしてBellwoodが滅びているし、そもそも前世で受けたblessingsは来世に持ち越せないようになっている。
それに、最も可能性が高いのは消滅だ。
だから、喰らう必要が無い。必要が無いなら、仇の魂を己の一部になんてしたくない。
『では、帰りましょう。やらなければならない事が山積みです』
かくして、Aldaが興した聖戦はAldaの消滅によって終結し、Vandalieuの復讐も終わった。
しかし、Vidal Magic EmpireのEmperorであり、神であるVandalieuの仕事は増える事はあっても終わる-sama子はないのだった。
《【Divinity:Heroic God】、【Divinity:God of the Circle of Reincarnation】を獲得しました!》
《【Divinity:Light God】は相性が悪かったので獲得できませんでした!》