『そんな……Delizahに何をしたのですか!?』
DelizahのBodyを奪い取ったVandalieuは、自分の物になったBodyが保持している盾から響くNineroadの声を一旦無視して、Weapon Equipmentを捨てて『Pile of Law』で串刺しになったままのGufadgarnのYorishiroを掴み、自身が吹っ飛ばしたHeinzから距離を取った。
「おおおおっ!! があっ!」
何故なら、HeinzはWorld Breaker Hollow Cannonを受けても耐えられるほどPower upしたからだ。とはいえ、無傷ではなく耐えられなくなる前にHoly Swordを振るってWorld Breaker Hollow CannonをSlash割って体から逸らしただけなので、効かないわけではない。
だが、それはStatusではVandalieuに及ばないHeinzが数々の装備やskill、そしてBellwoodに加えてAldaをその身にAdventさせたことでVandalieuと正面から戦えるようになったことを示している。
もっとも、そのために払った犠牲は大きかった。
「Delizah!?」
「だから、これはもう俺です」
叫ぶHeinzに思わずそう返しながら、Delizahの体を乗っ取ったVandalieuはBasdia達と合流して、YupeonとNiltarkを牽制する。半ば我を失う程激高している彼らも、Nineroadが宿っている盾に攻撃する事を反射的に思い留まった。
『うわぁ。なんていうか、表情がないこと以外Van -kunじゃないみたい』
『bloodの匂いは陛下なのは分かりますけど。あと、目が死んでいますね』
「俺としても、正直やりたくはなかったのですけどね。仇のBodyを動かすなんて、気持ち悪い」
おかげで、仇を倒した事で覚えた達成感や清涼感も今一つだ。もっとも、戦っている最中に感慨に浸っている余裕は最初からないのだが。
『ただ、効果的だったので致し方ありません』
Vandalieuが何時Delizahを攻撃してBodyを奪い取ったのかと言うと、NineroadのAdventが解けた瞬間だ。
Delizahは、Vandalieuの返りbloodを浴びていた。bloodもまた、【Blood Infection】と同じくVandalieuの一部だ。両者の違いは液体か、気体と一緒に宙を舞っているかの違いしかない。
Delizahが限界に達してNineroadのAdventを解いた瞬間、そのVandalieuのbloodが彼女の耳や鼻から体内に侵入し、脳を直接攻撃して魂を喰らって抹殺したのだ。
こうしてBodyを奪ったのは、GufadgarnのYorishiroとNineroadが宿った盾をスムーズに回収するため、そしてHeinzの不意を打つため……そして何より、あの状況ではOrichalcum製のDefense Equipmentに守られたRobust Healthで強靭なBodyを攻撃して普通に殺すより、鼻や耳の穴から侵入し直接脳を攻撃して食って殺す方が簡単だったのだ。
「NineroadをAdventさせたのが運の尽きでしたね。体にかかる負荷が大きすぎて、『Heroic Spirit Advent』まで解けたので、その隙を突く事が出来た」
『おのれっ、よくも!』
DelizahはただBodyを乗っ取られたのではなく、もう死亡……消滅している。それを理解したHeroic spiritが、宿っていたpendantからMaterializationしてVandalieuに一矢報いようとするが……。
『無駄だ』
だが、攻撃がVandalieuに届く前にGufadgarnのmain bodyがAlda派の神やDemon King Army Remnantsの邪悪な神をsealedするために用意していたmagic itemに、sealedした。
『無念……!!』
Heroic spiritも神のFollowersである事に変わりはないので、神用のsealedは有効だ。大型魚用の水槽に、中型魚を入れられない道理もない。
『私ごと滅ぼそうと思えば、出来たはず。それなのに、敢えて私を滅ぼすのを避けるのですか……』
「ええ、お前の言い分も分からなくはないですが」
Nineroadを打ち取った武功は、Vidal Magic Empire中で讃えられるだろう。そして、今回戦ったVandalieuの仲間達はVida's FactionのHeroとして讃えられ、死後は新たな神として信仰されるはずだ。
が、Nineroadの誇りや意地を考慮するつもりがあまりないVandalieuとしては、Nineroadにそのまま神としてworldの維持管理を続けさせた方が都合がいいのだ。
信仰を失い、templeが廃れ、惨めに消滅する百年後か二百年後か、それとも千年後かは分からないが、それまで働き続けてもらって一向にかまわない。
Vandalieu達が勝てば、今後Alda's FactionのGodsのbelieverの数は大幅に減る。Nineroadが完全に力を取り戻す日は永遠に来ないだろう。誰かにblessingsを与える事ぐらいはできるだろうが、その程度だ。
「お前がどんなつもりだったとしても、それはお前の都合であって、俺達がそれに沿う理由はない」
そうNineroadに話して聞かせているのも、VandalieuにとってはGufadgarnのYorishiroに刺さった『Pile of Law』を引き抜く時間を稼ぐためだ。
「偉大なるVandalieuよ、感謝します」
完全にsealedされていれば、壁画のようにされた『Evil God of Sinful Chains』Jyarodeepsのように物理的に動かせないconditionにされていたかもしれないが、AldaはGufadgarnのYorishiroを完全にsealedしなかった。単に完全にsealedする時間が無かったのか、凄惨な姿を見せる事でProvocationし、人質にする意図があったのかは謎だが、Vandalieuにとっては都合が良かった。
「そうか……Delizahは死んだのか」
Vandalieuの言葉やHeroic spiritの-sama子からDelizahの死と魂の消滅を悟ったHeinzは、それだけを言うと黙祷もせず、呼吸を整えて剣を構えなおした。
彼はDelizahの死にshockを受けていないわけでも、悲しみや怒りを覚えていないわけでもない。ただ、それを表に出す余裕が無いのだ。
「【冥盾衝波】」
実際、VandalieuはHeinzに盾からMartial Artsで衝撃波を放った。彼は難なく剣で弾いたが、少しでも意識が逸れていたら直撃を受けていただろう。
「冷静ですね」
Vandalieuは、想定していたよりもHeinzの動揺が少ない事に内心忌々しく思いながら、Nineroadが宿った盾をGufadgarnのmain bodyとYorishiroに向かって放り投げた。そして、Demon King Familiarと自分のBodyに宿るPrincess Levia達と共にHeinzに向かってPierceする。
「ああ、そうでなければ-kunに勝てない」
HeinzはNineroadを取り戻そうとするそぶりも見せず、DelizahのBodyを使ってPierceしてくるVandalieuを迎え撃った。
「【Divine Iron Ripper】、Nineroadは無視ですか?」
「【神鉄斬】! -kunこそ、いつまで使い慣れないDelizahの体を使うつもりだ?」
Delizahの手から生やした黒いclawsとHeinzが振るうHoly Swordがぶつかり合い、clawsが砕け散って赤黒いbloodが飛沫をあげて【Blood Infection】に変化し、Heinzに襲い掛かる。
それを合図に、KnochenやEleonoraとYupeonとNiltarkの戦いも再開された。
戦いの最中、Gufadgarnは手早くNineroadを放り出すために【Teleportation Gate】を開き、さっさと放り投げる。
【Teleportation Gate】の向こう側は、念のためにVandalieuと関係のない Bahn Gaia continentから離れた島を選んだが、Delizahという使い手を失ったNineroadが敵として戻ってくることは無いだろう。
(いっそ、戦場をDungeonに移せればよかったのだが……)
Pure-breed Vampire Birkyneや『Evil God of Joyful Life』Hihiryushukakaを倒した時のように、戦場をDungeonに移す事が出来ればHeinz達を閉じ込める事が出来る。
しかし、それはHeinzがBellwoodをその身にAdventさせる事が可能である事を考えて止める事になった。
何故なら、BellwoodはDungeonを浄化する事が出来るからだ。
本来、Dungeonを浄化して機能を停止させるのは、Devil Nestsを浄化するよりも手間と時間を要する。しかし、Bellwoodは旧Demon King Guduranisを倒した後、FarmounやKnight Lord、そしてGufadgarnも協力したとはいえ、彼が本拠地としたDemon KingのContinent全土を一度浄化しつくして草木一本生えない荒野に変えている。
Demon King Armyの本拠地として何十柱もの邪悪な神が存在し、monstersのProduction工場として大小合わせれば数えきれない程のDungeonが存在していたDemon KingのContinentを、短い時間で全て浄化して単なる荒野にするという偉業を成し遂げた。
その後、Alda's FactionのGodsがContinentを放置したため結局元通りContinent全土がDevil Nestsに覆われてしまったが……Bellwoodが一度浄化しきった事に違いはない。
一度浄化されたDungeonは、ただの建造物と化す。Dungeonとして機能していた時は、SClass adventurerやDemi-Godでも破壊する事が出来なかった壁や天井が、ただの石材と同じ程度の強度になってしまうのだ。
そうなってしまえば、HeinzはもちろんVandalieuの戦いの余波で崩落するのは避けられない。
もちろん、BellwoodでもDungeonの内部にVandalieuや自分達がいる状況で浄化できるのかは分からない。しかし、もし可能だった場合-sama々な危険性がある。例えば、Dungeonを浄化される事でGufadgarn、そして何よりVandalieuがDamageを受ける可能性等が。
そのため、Vandalieuは地上に造った偽のTalosheimからDungeonに移す策は取らなかった。
『なんと不甲斐ない……!』
いつか必ず、Great GodやHeroic Godであろうと浄化不能の、偉大なるVandalieuの聖域に相応しい迷宮を創り上げる事をGufadgarnは誓った。
「しかし、今は戦いに集中しなければならない」
『その通りだ』
Gufadgarnのmain bodyと、『Pile of Law』から解放されたYorishiroがそうしている間も、氷とboneのfragmentが撒き散らされている。
『おのれ、おのれっ! 汚らわしいUndeadが!』
『God of Ice』Yupeonが、Knochenを構成するboneを次々に凍らせていく。その激しいcoldは、極寒の吹雪を超えて生きとし生きる者の生命を一瞬で奪う危険なものだ。
『おおおおおおん? おおおおおおん!』
しかし、KnochenはUndeadで、しかも数えきれない程countlessのboneの集合体だ。凍り付かされ粉々にされても、boneがbone片やbone粉になるだけで、boneである事に変わりはない。
『ならばっ、氷の中に閉じ込めてくれる!』
Yupeonはboneを凍らせて砕くのではなく、Manaで生み出した氷の中にboneを閉じ込める戦法に出た。確かに、彼が作るOrichalcum並みに硬い氷の中に閉じ込められたboneは、流石のKnochenも動かすことはできない。
『ヂュオオオッ! 【瞬閃】!』
しかし、そのconditionを維持できるかは別問題だ。Knochenのboneの中に紛れ込んでいるBone Manの刃と化したboneが、氷を次々にバラバラに切断してKnochenのboneを解放してしまう。
『っ!? God of Iceである我の氷を……! Skeleton風情が!』
Yupeonは怒りに顔を歪め、ますます盛んに氷を生じさせKnochenだけではなくBone Manのboneも氷に閉じ込めようとする。その勢いは、Bone Manが氷を切り裂くSpeedをいくらか上回っていた。
『おおん、おおん!』
だが、全体の数percentのboneが氷に包まれただけだ。Knochenにとってこの程度はDamageという程ではなく、Gufadgarnも「援護する必要none。むしろ、手を出したら邪魔になる」と見做していた。
『くっ、貴-sama、Demi-Godだけではなく偉大なGreat GodのboneまでAbsorptionしているのか!?』
しかも、『Lightning Giant』Blateo等のDemi-Godや、『Dragon-Emperor God』Mardukeや『Giant God』Zerno、『Beast God』Ganpaplio等の一部のboneもKnochenは体に取り込んでいる。
寒さに強いだけのmonstersのboneならともかく、Bodyを持つ神であるTrue giant、そしてAldaと同格であるGreat Godのboneを凍らせるのは、Yupeonには不可能だった。
『おおおおおおお!』
『っ!?』
boneを組み換え、Giantな拳の形に変形したKnochenがYupeonを殴り飛ばす。Yupeonはscreechをあげる事も出来ず偽Talosheimの外の草原まで吹き飛び、墜落。衝撃で草原にはGiantなcraterが出来上がった。
『止めっ!』
そこに、黒い剣を構えたBone Manが、Yupeonに止めを刺そうと飛び掛かる。
『よくも……だがこれで終わりだと思うなよ!』
KnochenとBone Manは強く、Yupeonは彼等との相性がdespair的に悪かった。それゆえに、負けた。しかし、彼らはVandalieuではない。そうである以上、魂を砕く事は出来ない。
今はKnochenとBone Manをつかの間引き付ける事が出来ただけだが、Heinz……BellwoodとAldaは必ず勝利する。
その時こそ――
『がっ?』
Bone Manの剣は、辛うじて身を起こしたYupeonの右肩を深く切り裂いていた。肩がずれるほど深い傷は、Humanなら間違いなく致命傷。
しかし、神なら最悪でも行動不能になるだけで、信仰が維持している限り長くても数万年経てばrevivalする事が出来る。
しかし、Yupeonには自分の存在に関わるDamageを……魂を大きく傷つけられてしまったという、確信があった。
『な、何故っ?』
驚愕と怖気と共に強くなるdespairに目を見開いたYupeonに答えたのは、Bone Manではなく彼が持つ黒い剣だった。
『何か、疑問でも?』
装飾だとYupeonが思いこんでいた黒いMagic Swordの柄の目が動き、平坦で冷たい声が発せられたのだ。
『ま、まさか、Magic Sword型のClone……!?』
『いえ、お前を斬る瞬間は、main bodyです』
そう、今もHeinzと戦っているはずのVandalieuだが、彼は存在する全てのDemon King Familiarにmain bodyとCloneの役割を交代できる。
それを利用して、Bone ManにMagic Sword型のDemon King Familiarを持たせ、Yupeonを斬る瞬間だけそれをmain bodyにして【Soul Devour】で彼の魂を喰らったのだ。
『そ、んな……ば――』
『【千惨刃殺】』
Bone Manが振るったMartial Artsによって、Yupeonがcountlessのfragmentに切り刻まれる。glassが砕けるような澄んだ音とともに、神のBodyが光の粒子となって散っていく-sama子は、淡雪のようだった。
『散り-samaだけは美しい』
『おぉん……』
Bone Manの呟きに対して、KnochenはYupeonにboneが無い事をただただ残念がっていた。
『Yupeonっ!? 貴-samaら、またしても神を滅ぼすという大罪を犯すとはっ!』
「『God of Ice』はVan -samaの糧になったようね。お前もVan -samaに供してやるわ!」
『Shut Upっ、汚らわしいVampire……いやっ、Vida's New Racesよ!』
『God of Judgement』Niltarkは、偽Talosheimから吹っ飛ばされてしまったYupeonの存在が消滅したのを感じ取ると、臓腑が沸騰するほどの怒りを覚えた。邪悪なVandalieuとその配下達の大罪を、神として裁かねばならないと奮起し、大鎌を振るう。
もちろん、意気込みだけでは勝てない。Yorishiroに宿らず自力でAdventしているために、こうしている間も力は消費されていく。
『その罪を贖うがいい!』
だが、Niltarkの消費される力を人々の信仰が補っていた。
平時はbeliever達の信仰は、短時間で劇的な効果を表すようなことは無い。しかし、今はNiltark達神だけではなく、人々にとっても緊急事態だ。
今は亡きPope Eileekが、そしてDuke FarzonやOrbaumのAlda's FactionのGodsのbeliever達が聖戦だと吹聴した事、そしてOrbaum Elective Kingdomでは各地で邪悪なGodsやDemi-Godが現れた事で、人々の危機感がEnlarged (3)し、神への祈りが急激に増えたのだ。
『これが法と正義を信じる者達の祈りの力だ!』
Niltarkが振るう大鎌を剣で受け止めたEleonoraだったが、剣に大鎌が少しずつ食い込んでくるのに気が付いてclicking tongueをした。
「面の皮が厚いわね。マッチポンプの癖に!」
Alda's FactionのGodsの指示によって起こされた聖戦はまだしも、sealedから解放したDemon King Army RemnantsやVida's FactionのGodsにDemon Kingのsoul fragmentを埋め込んでばら撒いたのはAlda自身だ。何も知らないAlda's FactionのGodsのbeliever達はともかく、Eleonoraからすればマッチポンプにしか見えない。
『Shut Upっ! 無力な人々が縋ったのが我々である事は事実だ!』
しかし、NiltarkはEleonoraに図星を突かれても動揺せず、そのまま彼女のMagic Swordを切断する。大きく後ろに下がった彼女を追い、今度こそ命を絶とうと大鎌を振るう。
『まるで、自分達だけが選ばれたような物言いね』
だが、Niltarkの前に『Goddess of Life and Love』Vidaをその身に降ろしたDarciaが立ちはだかった。
『ぬうっ!?』
大鎌を杖で弾かれ、呻くNiltarkにDarciaはそのまま接近戦を挑んだ。神を罰するDivine Authorityを持つNiltarkは、Vidaを降ろしているDarciaにとって相性のいい相手ではないはずだ。
しかも、DarciaはByazecbyoctoと戦うために既に一度Vidaをその身に降ろしている。相応に消耗しているはずだが、彼女にその-sama子は見られない。それどころか、Energyに満ち溢れている。
『人々の祈りを背負っているのは、私達も同じなのよ』
そう、危機感を覚えたAlda's FactionのGodsのbelieverと同じように、Vida's FactionのGodsのbelieverも祈っているのだ。
しかも、Vida's FactionのGodsのbelieverの数はこの十数年で爆発的に増えている。Boundary Mountain Range内だけではなく、Demon continentやDemon KingのContinent、そしてHuman社会であるはずのOrbaum Elective Kingdomでもだ。
そのOrbaumの各Duchyでは、上空に出現したDemi-GodやDemon King Army Remnantsの邪悪な神が現れ、それらからVandalieuやその仲間達によって助けられている。
助けられた人々は、当然助けたVandalieuやその仲間達に、そして彼らが信仰するVida's FactionのGodsに感謝する。それがAlda believerだったとしてもだ。
突然強大な存在が現れ、それから救われるという体験は人の価値観が変わる十分な理由になる。それに、多くの普通のAlda believerは命や街の恩人に対して「異教徒だから」というだけの理由で感謝しない程、頑迷ではない。
『命惜しさに寝返るとはっ! もはやFarzon以外の信徒はfake-believerしかいないのか!?』
もっとも、そう嘆くNiltarkは分かっていなかったが。
『命は大切なものに決まっているでしょ!』
Vidaと同化しているDarciaは、生命attributeのGreat Godの前で命を惜しむ事を非難したNiltarkに向かって、鋭い前蹴りを放った。
『ぐおぉがぁっ!?』
Vidaの膝蹴りはNiltarkの股間にthrust刺さった。彼は男神であっても、Demi-GodではなくBodyの無い神であるために白目を剥いて悶絶する事は避けられたが、Emotionalにも大きなDamageを受けて後ろに下がった。
「【冥斧】!」
そこに、Darciaの陰から駆け出すようにしてBasdiaが黒い斧をNiltarkに向かって振るう。股間からの衝撃に耐えながら、懸命に回避して大鎌の石突を槍のように使って反撃しようとする彼だったが……。
「【輝姫乱舞】!」
Zadirisがmagicで輝くcountlessの球体を放ち、Niltarkの視界を眩ませる。
『ぬ……!』
反撃を諦めたNiltarkは、彼女達から距離を取る事を優先して後ろへさらに下がった。しかし、急にManaを失ったような脱力感を覚え、自分の腹を見ると浅いが切り傷があった。Basdiaの斧の先端が掠っていたのだ。
「浅かったか」
『でもManaは削ったので、十分です。焦らず、このまま足止めをお願いします』
Basdiaが普段使っている斧とは別の斧、斧型Demon King Familiarとそう言葉を交わす。
「Van -samaのWeapon Equipment型Demon King Familiarがまだ少ないのが悔やまれるわね」
「仕方あるまい。まさかDemon King Army RemnantsやAlda's Factionの神が次から次に降ってくるとは、誰も思わん」
EleonoraとZadirisがそう言いながら、Niltarkに向かって身構える。彼女達のWeapon Equipmentとmagicは神の魂を喰らう事は出来ないが、Adventし続けるための力を削る事は出来る。
彼女達の後ろでは、Darciaが杖を弓に変形させている。Niltarkが彼女達を倒せる可能性は、限りなくZeroに近かった。
《【Divinity:Ice God】を獲得しました》《【Divinity:Ice God】が【Demi-God】にintegrationされました!》
《Manaが回復しました!》
脳内アナウンスを聞き流しながら、VandalieuはBellwoodとAldaを同時にその身に降ろしたHeinzと戦っていた。
「また一柱、神を滅ぼしたのか。それがworldを危うくすると、分かっているだろうに!」
Heinzが振るうHoly Swordが、DelizahのBodyを真っ二つに切断する。
「それはそうですが、俺はNineroad程人が良くないので」
しかし、既にそれはただの抜け殻に過ぎず、shadowに隠れていた本来のBodyに戻ったVandalieuがclawsで反撃する。
しかも、DelizahのBodyに満ちていたblood液は全て【Blood Infection】に変化しており、それもHeinzを狙う。だが、今のHeinzにはそれも必殺の攻撃とは言えない。
お互いに牽制目的の攻撃を繰り返し、有効打を与える隙を狙い合う。Vandalieuは、【Soul Dressing Destruction Demon God Arts】を早々に解除し、魂を纏うのを止めていた。
Aldaをその身に降ろしたHeinzが振るうHoly Swordに、『Pile of Law』の効果が宿っている事に気が付いたからだ。『Pile of Law』には魂を傷つけ滅ぼす力は無いが、sealedする事は出来る。そのため、魂をBodyに纏うと的を大きくしてしまう。
【Blood Infection】を構成する肉食微生物程小さくなれば、流石に杭は打てないようだが。
「俺は、俺や俺にとって大切な存在がいないworldに、何の価値も見出せません」
大切な人達が存在するworldのためなら、Vandalieuは命を懸けられる。しかし、大切な存在が残っていない……大切な存在を害した者しかいないworldのためには指一本動かす気にはなれない。
だから、Vandalieuは自分達の生存を優先する。Yupeon、そしてまだ生き残っているNiltarkが消滅したとしても、即座にworldが滅びる訳ではないのだし。
もっとも――
「そんな事になるはずがありませんが」
「余裕だな!」
「お前よりは」
『Pile of Law』の効果が乗ったHoly Swordの攻撃を、激しく反応する【Danger Sense: Death】で回避し、【Barrier Bullets】でHeinzの脚を止めようと試みるVandalieuには、実はそれほどの余裕はないはずだ。
むしろ、攻撃を受けたらsealedされてしまう可能性が高いため、一撃も当たる事が出来ずEmotionalには追い詰められている。
しかし、それ以上にHeinzの消耗が著しいようにVandalieuには見えた。
『【流星thrust】!』
素早く繰り返されるthrustを、Vandalieuはbone格を変形させ内臓を瞬時に移動させて回避する。亀のように頭部を胴体に引っ込め、胴体をS字に曲げる。
そして、足の指から反撃の【Death Cannon】を放つ。
それをあっさり回避して激しい攻勢を続けるHeinzだが、その顔には汗が浮かんでいる。Aldaを降ろした事で、彼の心身に大きな負荷がかかっているのだ。
そのimpactか、言動にもBellwoodだけ降ろしていた時からやや攻撃的になっている。このまま時間がたてば、力尽きて倒れるだろう。
しかし、その時間を稼ぐのは難しい。
「【聖晃連弾】!」
「【Magic Absorption Barrier弾】」
Aldaを降ろした事でAll Ability Valuesが激増したHeinzは、Alda単体の時よりも脅威だ。AldaになかったWarriorとしての鋭い動きで、隙なく攻撃を繰り返してくる。
Heinzが放ったLight Attributeのmagicのcountlessの弾丸を、Death-Attribute Magicの【Barrier Bullets】をその倍以上放って打ち消したVandalieuだったが、【Danger Sense: Death】の強い反応を覚えて確信する。
(あ、避け切れない)
頭部を凹ませ、胴体を逸らし、左足を曲げて回避するが、Holy SwordがRight Armを掠る。
その瞬間、傷ついたRight Armが貫かれその場に縫い留められたような違和感を覚えた。このままでは動きが取れなくなり、次の一撃で確実にsealedされてしまう。
「ふん」
そうIntuitionしたVandalieuは、躊躇せずRight Armを分離する。ただ片腕を失っただけではないLost感と共に、Manaが数億削られた。
(魂の一部がsealedされた、か)
sealedは、BodyだけではなくVandalieuの魂の一部にも及んでいた。originally『Pile of Law』はBodyを持たない神を罰し、封じるためのDivine Authorityだから、当然と言えば当然の効果なのでVandalieuも驚きはしない。
「やはり魂を分離したか! だが、このまま削り切る!」
そしてHeinzも、VandalieuがBodyだけではなく魂を分離できる事に今更驚きはしない。やっと掴んだ勝機を離すまいと、攻勢を繰り返す。
「確かに、このまま魂をsealedされ続ければ俺でも危険だ。魂は本来ならBodyと違ってすぐに生えない」
Right Armを新たに生やし、Heinzの攻撃を回避しながら反撃を繰り返す。だが、伸ばしたtentacleの先端が、Arthropod Legsが、囮にしたDemon King Familiarが、避け切れずにHeinzのHoly Swordで斬られる。
その度に、Vandalieuの魂は欠けていき、Manaは減っていく。
「本来なら、だと!? 自分は例外だとでも? そんなはずはない!」
そう否定しながらHeinzが振るうHoly Swordが、Vandalieuの放ったHollow Cannonごと彼の足首をSlash飛ばす。また一fragment、彼の魂がsealedされた。
そして、sealedされたsoul fragmentを解放している暇は与えていない。そのはずだが……Vandalieuには追い込まれた-sama子はない。
Yupeonの魂を喰らったから魂の量が増えたとしても、あまりに不自然だ。
「俺の力ではありませんよ。皆のお陰です」
そう語るVandalieuの魂には、彼に祈るcountlessの声が届いていた。