『ん? ここは……空?』
ふと意識を取り戻した彼は、自分の下に雲が浮かんでいる事に気が付いて、首を傾げた。
地上にいたはずの自分が、何故雲海を見下ろす事が出来るような高い空に浮かんでいるのか。さっぱり覚えがない。
彼の名は『God of Concealing』Wyzwarn。『God of Space and Creation』ZuruwarnのSubordinate Godであり、隠……隠されて見えない場所を司る神である。
その姿は猫の頭部にural owlの翼、ヤモリの体に蛇の長い尾を生やしている。四頭獅子の姿をしているZuruwarnのSubordinate Godに相応しい異形である。
しかし紛れもなく『Lambda』worldの神だ。そして、眠りにつく前にZuruwarnが残した指示通りVida's Factionに付いた神である。
Demon King Armyとの戦いでは、彼が司る隠しroomや隠し通路を使い大いにChampion軍を助けた。しかし、その後に起きたAldaとの戦いでは手の内が知られていたため、Light AttributeのGodsに見破られて追い立てられたところをsealedされてしまった。
『そうだ、我はsealedされたはず。それが何故空に? 何故sealedが解かれた?』
sealedされた後に救出されたのなら、何故戦場だった地上から遠く離れた空に居るのか? そしてsealedを解いた存在は何処へ行ったのか? そう疑問を覚えたが、心当たりはない。しかし、このまま長々と考え込んでいる余裕もない。
ここは一応下界で、こうしている今もWyzwarnはAdventしているconditionであるためenergyが消費されているからだ。
しかし、どこへ行けばいいのか?
(事の経緯をconjectureすれば、我はsealedされた後、Aldaかその手の者に囚われた。そして何らかの原因でsealedが解けた結果、ここに居るはず。なら、我のsealedを管理していた存在……Alda's Factionが牛耳っているだろうDivine Realmに戻るのは自殺行為。
だが地上では何故かあのGuduranisのsignがいくつかの場所に……我々だけではなく、Guduranisのsealedまで解けているのか?)
Wyzwarn達Godsは、同じGodsやDemon King Armyの邪悪な神の位置をaccurateに把握するRadarのようなAbilityはもっていない。だから、signを消して隠れている神の居場所は発見するまで分からない。そのため十万年以上前、Zakkart達Production related Champion達を殺すためのmonstersに紛れて侵攻してきたGuduranisに気がつけなかった。
Demon King Army Remnantsの邪悪なGodsがAldaやBellwoodに位置を把握されるまで隠れ潜み続けられたのも、それが理由だ。
しかし、大きなManaの流れに気が付かない程鈍感なわけでもない。
今AldaによってGuduranisの魂を埋め込まれたVida's FactionのGodsやDemon King Army Remnantsの邪悪なGodsは、強制的にAdventさせられているため莫大な力を消費し続けている。さらに、絶叫を轟かせ狂乱しながら全力で暴れまわっているconditionだ。
これほど大騒ぎされれば、同じように狂乱でもしていなければ存在に気が付く事が出来て当たり前である。
『このsignは……Zantark -samaのsignは途絶えた。Farmounのsignも途絶えたが……Lafazが倒したのか?Vida -samaのsignは……人を通しているようだが感じ取れる。Guduranisに似た強大なsignからも離れている。まずは事態を把握するためにも、そこに向かおう』
Wyzwarnは、Guduranisに似た強大なsign(Vandalieu)から距離を取り、Vidaのsignの元へと急いだ。何者かが、自分にInfestしていたsoul fragmentを抜き取った事に思い至らないまま。
Hartner Duchyの主都、NinelandではGodsによる三つ巴の激戦が繰り広げられていた。
Ninelandは約六年前に城が傾き宝物庫から財宝が奪われる悲劇に見舞われたが、近年はどうにか持ち直しつつあった。
だが、空の彼方から人知を超えた強大な存在が現れた時、多くの人々はそれも終わりだとInstinct的に察した。
『GYUOOOO! 下等生物の巣か! まずはこのあたりの生きとし生けるものを殺しつくす! まずは貴-samaだぁ!』
先端が鋏やclawsになっている脚をcountlessに生やした甲殻類のような姿のDemon King Army大幹部、『Evil God of Mad Slaughter』Gidragudraが、隣に現れた異形の神に向かって攻撃を繰り出す。
『BOOOOOO!? BURORORORO!?』
その神は、一見すると不気味な形をしているだけのGiantな雲に見えた。しかし、Gidragudraの攻撃を受けると、奇怪な叫び声を轟かせながらその正体を現した。
Giantな口以外は体の形を変えて生やしたtentacleのみで、whole bodyが黒に近い灰色の雲で出来た『Evil God of Ceasing Clouds and Demon Rain』Basbarulu。彼は同じDemon King Armyであるはずの自分を何故攻撃するのかと、Gidragudraを非難したようだ。
『何故だと!? 殺すのに理由があるとでも思っているのか!? 理由がなければ同士討ちもできないのか!? そんな軟弱な存在は我々Demon King Armyには不要だ! だからこれは同士討ちではない!』
だが、残念なことにGidragudraは『Evil God of Mad Slaughter』。believerからの祈りではなく、自らが殺した存在と彼に殺される事を恐れる者達の嘆きとhorrorを糧に存在する狂神である。
Demon King Armyの大幹部でありながらGuduranisですら扱いに困った彼のInsanityは、Guduranisのsoul fragmentを埋め込まれた事でAccelerationしていた。
『HOOOO!』
叫びながらGidragudraの攻撃から逃げ回るBasbaruluだったが、このままではジリ貧だと判断したのか、攻勢に出ようと試みた。態勢を立て直すため、雲で出来た体から雨を降らせ、Gidragudraから距離を取ろうとする。
『Shut Up、Demon King ArmyのRemnants共!』
だが、そう叫ぶgiantがBasbaruluの雨が地上に落ちる前に吹き飛ばした。
Sunlightを跳ね返す水晶の鎧を身に付けた美しく凛々しい姿に、地上の人々はAldaが遣わした救いの神が現れたと期待したが、当然だがそれは見当はずれだ。
『貴-samaらも、我自身も、そしてAldaもBellwoodもNineroadも、Farmounも奴らに祈る者共も許-san!我が叩き潰す!』
だが、怒りと憎悪に満ちた宣言にそれは間違った思い込みであると気づかされた。
彼女の名は『Crystal Giant』Nadia。VidaとAldaの戦いで敗れ、sealedされたVida's FactionのTrue giantである。
『その水晶、見覚えがある! 貴-samaの前の『Crystal Giant』とやらを殺したのは、おそらく我だな! 貴-samaが殺し甲斐があるかどうか、試してやる!』
『BUOOOOOOO!』
『父祖の仇! 死ねぇ!』
三柱の神がぶつかり合い、その衝撃は地上にまで及び、人々は転倒しないよう身を伏せ、templeのstained glassは砕け散った。
そして、路地裏や物陰から蟲や鼠、蛇やlizardが這い出てきて、countlessのカラスが空を飛び、人々はscreechを挙げた。
『次はここですかー』
『まさか、また来ることになるとは思いませんでしたね』
それらの小動物……にCamouflageしたDemon King Familiar達はやれやれと呟くと、集合して一つのGiantな群れとなり……そのまま一体化して大小countlessの腕をこね合わせて作った球状のような姿になった。
「政治的な意図を勘繰られそうだから、さっさと倒してしまいましょう。Ricklentによると、まだまだ行くところがあるようですし」
その玉の真ん中に、Vandalieuが生えていた。
だが、彼は他のDemi-God達と同じく城の尖塔よりもずっと高い、上空数百meterにいるため地上の人々はVandalieuの姿に気が付かなかった。
「お、終わりだ……俺達はもう死ぬんだ……」
「なんでよ! なんで私達の頭の上にあんなのが四匹も現れるのよ!」
それはVandalieuと縁のある街で、Boundary Mountain Rangeに接しているDuchyだったため、Aldaに目を付けられたからだが……それを人々が理解できるはずもない。
(KatieとLucasの代理には現在進行形で説明をしているので、何とかなるでしょう)
そしてVandalieuも、今は悪emotionsと言う程ではないが親しみがあるとは言えないNinelandの人々に、これ以上丁寧に対応するつもりはなかった。
『このsignはGuduranis -sama!? いや、違う!?』
『BOOOO!?』
Guduranisに似たsignを発するVandalieuの出現に、彼が健在の頃にsealedされた二柱の邪悪な神が動きを止め、困惑を露わにする。
『【World Breaker Hollow Cannon】』
その隙だらけの二柱の内、『Evil God of Ceasing Clouds and Demon Rain』BasbaruluをVandalieuが放った黒い光線、【World Breaker Hollow Cannon】が貫いた。
『BROOOOOOOooooo……』
体が雲で出来ているため物理攻撃に強いはずだったBasbaruluだったが、Vandalieuによって魂を喰われてはひとたまりもなかった。
「良し、ここに来た目的の内一つは無事達成できましたね」
Vandalieuが『Goddess of Regeneration』Luzmazelaを助けた次にHartner Duchyに来た理由の内一つが、Basbaruluを滅ぼすためだった。
Demon King Armyとの戦いにおいて、Basbaruluは『Evil God of Cursed Poison』の配下の一柱だった。彼は汚染されたManaが凝縮された液体を雨にして降らせ、地上にDevil Nestsを瞬く間にEnlarged (3)させ、人々の生存域を奪った恐るべきEvil God (M)だ。
もしBasbaruluを放置していたら、Ninelandは早々にDevil Nestsと化して普通のHumanが生活するのは困難な環境へと変わっていただろう。
《【Demon Kingのappetite】を獲得しました!》
そして、AldaがBasbaruluに埋め込んでいたのは【appetite】だったようだ。雲で出来た体を持つEvil God (M)に何故appetiteを埋め込んだのか? Power upするどころか、Basbarulu本来の生態とぶつかり合って双方ともに力が発揮できなくなる組み合わせだと思うのだが。
(いや、AldaもBasbaruluがPower upしてDevil Nestsを短期間で2x Augment Multiplierさせたら困るから、俺に直ぐやられるよう故意に相性の悪い fragmentを埋め込んだとかでしょうか? いや、どうでもいいか)
そんな事を考えながら、次にGidragudraとNadiaに意識を向ける。それと同時に、Vandalieuは二柱から攻撃を受けた。
『貴-samaっ! よくもBasbaruluを! この我の獲物をっ! 嬲りもせず一撃で倒すような手抜きを!』
「うーん、理解が難しい理由でKilling Intentを向けられるとつい冷静になってしまいますね」
『死ねっ、Guduranisモドキめ!』
「いえ、生きます。俺もあなたも」
Gidragudraが繰り出す鋏を腕で弾き、絡めとって関節を破壊しようと試み、Counterで殴りつける。
Nadiaが振るう剣を腕で受け止め、他の腕を伸ばして【Barrier Bullets】を放ち、彼女の四肢を絡めとって拘束しようと試みる。
そして飛び散る水晶のfragmentや、Gidragudraがたまに街に向かって放つmagicを、やはり腕を伸ばして防ぐ。
「手が足りないとはまさにこの事ですね」
Vandalieuがここに来たもう一つの理由は、今猛り狂って水晶の剣を振り回すNadiaを助けるためだ。True giantであるNadiaは、Luzmazelaと違って地上で活動するだけで莫大なenergyを消費するようなことはない。
しかし、Demon King Familiarの眼を通して-sama子を見ていたVandalieuの前で、Nadiaは自分と同じようにGuduranisのsoul fragmentを埋め込まれた邪悪な神と争いだした。
このままではNadiaが返り討ちにされてしまう。彼女はただのTrue giantの一柱だが、相手はDemon King Armyで大幹部だった『Evil God of Mad Slaughter』だ。彼女が勝てる道理がない。
それに、NinelandにDemon King Familiar以外の戦力を配置していなかったのも大きかった。
(まさか、Aldaがここに三柱も、それも一つはDemon King Armyの大幹部のEvil God (P)を放つなんて思いませんでしたからね)
Hartner DuchyはBoundary Mountain Rangeに沿っているが、Barrierを直接超える事は出来ず、tunnelの位置は既に把握している。
そして、NinelandにVandalieuと親しい存在は、強いてあげればReincarnatorのKatie一人だけだ。
そんな場所にこれ程の戦力を投じて来るとはVandalieuも想定していなかった。
『ガ! ギィ! ククク! 貴-samaも命を奪う快楽が分かってきたようだな!』
Vandalieuが伸ばすcountlessの【Demon King's Arm】を鋏で弾き、thrust刺し、切断するGidragudraだったが、Vandalieuは鋏で弾かれる前に棘を生やし、刺されれば傷口を【Demon King's Jaws】にして鋏を噛み砕こうとし、切断されればその部分を【Death Flame Prison】のmagicで爆発させる。
しかも他の【Demon King's Arm】で同時に【Death Cannon】や【Hollow Cannon】を放ち、幾度もGidragudraの体に穴を開けた。
「まあ、倒した相手を糧にして来たので、分かっていないとは言いませんけどね」
だが、それはGidragudraを嬲っている訳ではない。
『何故だ! 何故我を攻撃してこない、Guduranisモドキ! 我は敵ではないとでも言いたいのか!?』
思っていた以上にNadiaの抵抗が激しいため、大技を放てないのである。
『Crystal Giant』Nadiaの力自体は、以前戦った『Lightning Giant』Blateoよりも数段下だ。彼の息子の『Thunder Giant』Radatelより一段上程度だろうか。
『うわああああああ!』
だが、その暴れっぷりが厄介だった。Vandalieuが彼女の脚を腕でつかむと脚を、腕を掴めば腕を、彼女はなんと躊躇いもなく切り落として拘束から脱しようとするのだ。
「いや、敵じゃないからこそここまで苦戦しているのですが」
仕方ないので、慌てて手を放すしかない。
敵だったら自滅を待てばいいのだが、助けようとしている対象に自滅されては堪らないため、中々拘束できない。
『なら我が殺して良いな!? 殺して良いのだな!?』
しかも、それに気が付いたのかGidragudraがVandalieuだけではなくNadiaも同時に狙いだしたので厄介さが増している。
……しかも、同時にNinelandの人々に被害が出ないようにしなければならない。さらに言えば、こうしている今も各地でCloneであるDemon King Familiar達がAldaの放ったGodsに応戦中である。
Basbaruluの綿菓子のように甘いがさっと溶けるように消えてしまう魂を喰らった事で回復した分のManaは、すぐに消費されてしまう。
正直言って手が足りない。援軍を期待したいところだが、FidirgとZozogante、Randolph達はPauvinaの所に向かってもらった後だ。
しかも、NinelandではKnight団やadventurerが街を守るため上空にいる「三柱」の邪悪な神を……つまりVandalieuに対しても攻撃しようとしている。Katieや彼女から正しい状況を聞いた城のcivil official達が必死に止めてくれているが。
『アヒヒヒヒィ! どちらも殺す!』
『我をどこまで愚弄すれば気が済むのだっ! 我が誇りと命をかけてどちらもこの場で倒す!』
「……もうなりふり構うのは止めましょう」
もはや限界だと判断したVandalieuは、【Body World】に待機させていたDemon達を解き放った。
『ハッハァ! 偉大なるVandalieu -samaからのご命令だ! 死守せよ!』
『地を這うHuman共を守るのだ!』
彼らは主戦力として運用するには実力が足らないため、【Body World】に待機していたDemon達だ。しかし、その数は千を超える。
馬車ほどもある水晶や甲殻のfragmentから街を守る程度なら、彼等でも可能だ。今までは地上のHumanがpanicに陥る可能性を重く見て出さないでいたが、もう構っていられるconditionではない。
「な、なんだ!? どこからこんなDemonが!?」
『地を這っていないHumanだ! どうする!?』
『ならばこいつにもHuman共を守らせるぞ! 来い、Human!』
「う、うわあああああ!?」
決死の覚悟で暴れる「三柱の邪悪な神」を攻撃しようとmagicで空を飛んだadventurerが、Demon達に巻き込まれていった。
『手が足りないか? 何なら我が地上の猫と言う獣の手を持って来てやろうか!?』
そう言いながら、一際大きい鋏をHammerのように振り下ろすGidragudra。
「いえ、足りてます」
だが、それをVandalieuは掲げた腕の一本で受け止めた。そして、鋏が大きく弾かれGidragudraはそれに引っ張られるようにして体勢を崩してしまった。
『な、なにぃっ!?』
なんとVandalieuが掲げた【Demon King's Arm】には、【Demon Kingのpaw】が生えており、Gidragudraの鋏は【paw】の弾力によって跳ね返されてしまったのだ。
『今だ!』
その瞬間、NadiaがVandalieuごとGidragudraを水晶の剣で串刺しにしようとPierceを試みる。Vandalieuはそれをあえて受けた。深々とthrust刺さる水晶の剣、迸るドス黒いblood。
『うわあああああっ!?』
だが、screechを挙げたのはNadiaの方だった。彼女が浴びたのはただの返りbloodではない。ぬるぬるとした高粘度の【Demon Kingのmucus】を【Demon King's Ink Sacs】で染めたものだったのである。
そこに、新たなshadowが。今度こそ終わりだと、Ninelandの人々はdespairした。
『KUOOO!』
「Lafaz、来てくれたのですか」
だが、現れたのはappearanceは邪悪な神とFusionしたimpactでやや禍々しくなったものの、Vida's Factionである事は変わらない『Bird Beast King』Lafazだった。
『KUOOOO!』
Lafazはその場でfeatherばたき、体勢を崩したGidragudraに衝撃波や風の刃を叩きつけて牽制しながら、咥えていたオーブをVandalieuに投げ渡した。
「ナイスパス。では、二日後と言わず今この場でsealedを解きますね」
そしてVandalieuはオーブ……Farmoun Goldが自らを使って施したsealedを解き、そのまま『God of Purification』Darmatarkに埋め込まれたGuduranisのsoul fragmentを噛み砕いた。
《【Demon Kingのevil】を獲得しました!》
『っ! わ、我はどうしたのだ? ここはぁぁぁぁ?』
そして、Darmatarkは【Body World】に飲み込み、再度強制sealed。Demon KingのContinentとは違いNinelandの近くにはPseudo-Divine Realmがないので、仕方のない措置である。
『貴-samaぁ! Farmounっ、今度こそ殺してくれる!』
『お前には加減も遠慮もnoneだ!』
そして、解放されたFarmounは咄嗟に状況を判断して、GidragudraにSlashかかる。その間に、VandalieuはDarmatarkに続いてNadiaに処置を行う。
《【Demon Kingのfeeling of revenge】を獲得しました!》
どうやら、Nadiaが自分を含め他のGuduranisのsoul fragmentが埋め込まれた神を攻撃したのは、埋め込まれた【feeling of revenge】と彼女自身のfeeling of revengeが合わさった結果だったらしい。
『かっ……はっ……』
mucus塗れのまま動く気力を失ったNadiaを【Demon King's Arm】で掴んだまま、この場所に残る最後の敵に向き直る。
「では、手を貸しましょう」
そして、適当に千切った【Demon King's Arm】をGidragudraに向かって放り投げる。
『チィ! また爆発する腕か!』
Gidragudraはそれを見もせず、自分の鋏の一本を切り飛ばして迎撃する。そして彼の予想通り【Demon King's Arm】は爆発したが……噴き出たのは爆炎ではなく赤黒い霧だった。
『なにっ!? ……ギャアアアアアアア!?』
Vandalieuは、【Demon King's Arm】を神をも喰らう肉食性微生物、【Blood Infection】に変えたのだ。それは既にwhole body傷だらけになっていたGidragudraの傷口から入り、彼の望み取り嬲るようにゆっくりと、しかし確実に貪り喰らっていく。
【Blood Infection】の事を知っていたFarmounとLafazは、自分も食われる事を覚悟して身を固くしたが……痛みはなかった。
『……? 【Blood Infection】は無差別攻撃じゃなかったのか?』
そう呟くFarmounを無視するように、赤黒い霧はGidragudraへ向けて群がっていく。
「制御できるようになりましたからね」
肉食のバクテリアと化したbloodも、Vandalieuの一部である。つまり【Blood Infection】は彼であり、彼は【Blood Infection】である。
そして伝染Diseaseをもたらす【Pale Rider】Jobなどの力で、Vandalieuは【Blood Infection】の制御に成功していたのだ。
「助けに来てくれてありがとうございます、Farmoun、Lafaz。二人はDarmatarkを安全な場所に連れて行ってください。それとも、まだやれますか?」
ゆっくりと貪り食われていくGidragudraに、Manaを節約して【Demon King's Horn】を打ち込んで止めを刺した後、Vandalieuは二柱にそう尋ねた。
『……まだ一か所ぐらいならどうにかなるが、力の問題よりも俺がVida's Factionとして活躍するのは筋が通らないだろう』
それに対してFarmounは、Human社会ではAlda's Factionと見なされている自分が活躍しては、将来に禍根を残すと自分の考えを口にして理解を求めた。
「じゃあ、一旦Borgadonの聖域で待機していてください。それで手が足りない場所があったら、声がかかると思いますから」
しかし、猫の手も欲しいVandalieuは意見を拒否した。
『いや、だが……』
「Lafazはあなたに活躍してほしいそうですよ。accurateには、『後々の事を考える余裕があったら、さっさと動け。非常時だ』と言いたいそうですが」
『うっ、それもそうだが……』
「あなたのbelieverは主にadventurerで、religionを高めるために厳しい修行に打ち込むようなbelieverか、それこそAldaやBellwoodの仲間として信仰しているbeliever以外ほぼいない、という事情があり、Oracleを下して自分の意見を述べる事が出来なかった、と言う事情は理解しています」
なおも渋るFarmounに、Vandalieuは説得を続けた。
Human社会でAlda's Factionと見なされているFarmounが、Vida's Factionに転向した事をbeliever達に周知するには、Human社会のbelieverにOracleを下すなどしなければならない。
だが、縁起を担ぐためにお守りとして聖印を携帯し、気軽に祈る。そんなreligionにそれほど厚くないbelieverが大多数であるため、Oracleを下しても受け取れる者がいなかった。
それに、Farmounは積極的に自分がVida's Factionに転向した事を広めるのにためらいがあった。今更どんな顔をして「自分はVida's Factionに転向した」などと言えば良いのか、分からなかったからだ。
「ですが、それはそれとしてお願いだから羞恥心に耐えて力を貸してください」
それを理解しているが、Vandalieuは空いている全ての【Demon King's Arm】を合わせてFarmounに祈った。
『……こんなに拝まれちゃ、仕方ないか。分かった、とりあえず『God of Mountains』の聖域で待機だな』
神の端くれである以上、祈られては仕方ない。そう答えるFarmounに、Lafazは「やっとか」と言うように小さく鳴いた。
「じゃあ、俺は別の場所に行きますね」
そしてVandalieu main bodyはmucus塗れで放心conditionのNadiaを【Body World】に収納し、展開していたDemon達を回収するとcountlessのDemon King Familiarに戻って去ったのだった。
《【Demon KingのKilling Intent】を獲得しました!》