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Chapter 380: Demon KingからMage殺しへの返事

 以前このworldで再会した時とは違い、『Origin』に居た時と同じ人の姿のPluto。そしてVandalieuの仲間に加わったと聞いていたが、実際に目で見るのは今回が初めてな、『Origin』では三十代だったのに十五ageほどにしか見えない姿になっている【Metamorph】のMari。二人をAsagi達は驚いた-sama子で迎えた。


「ああ、積もる話は返事について説明した後にして。私はないけど、Mariはあるでしょ?」

「分かってる。あ、でも最初に謝らないと。ごめんね、三人とも」

 そう言って、軽く頭を下げて謝罪するMariAsagiはもちろんTendouShoukoも困惑した。


「いや、なんでお前が謝るんだ?」

「ああ、謝るならRokudouに利用されている事に死ぬまで気が付かなかった俺達の方だろう」

「『Origin』の事じゃなくて、こっちでの事よ。三人がOrbaumに居るのを知っていたけれど、今まで連絡しなかったこと」


 すぐに頭をあげて、Mariはそう言って笑った。

「関心がなかったわけじゃないけど、あの時は連絡したら絶対面倒な事になるって思ったから連絡する気になれなかったのよね。ほら、『Vandalieuの仲間になったのならあいつを説得してくれ』とか、『なんでお前までKanako達の仲間になったんだ!?』とか、言われたら嫌だったし」


「あんた、本当は悪かったとは全く思ってないよね?」

 朗らかな口調で、【Metamorph】でVocal Cordsを変化させてAsagiの声と口調を真似て応えるMariに、Shoukoは苦笑いを浮かべた。


「まあね。前世での負い目はお互いに忘れて話を聞いてくれると助かるわ」

 Mari個人としては、TendouShouko、そしてAsagiにも含むところはなかった。【Bravers】だった頃は、何かと暑苦しいAsagiに対して面倒臭さを感じたり、呆れたりした事はあった。うんざりさせられたMemoryもある。しかし、それだけといえばそれだけだ。


 何かと暑苦しい奴だけど、仲間。もしくは同僚、または戦友。親友だとまで思ったことは一度もないが、憎んでいたわけではないのだ。

 現在進行形でVandalieuの悩みの種になっているのは、頂けないが。しかし、今回でそれが穏便に収まるならそれが最良だと思っている。

 そしてTendouShoukoに対しては、悪emotionsを覚える程深い付き合いをしたことはなかった。


 Rokudou Hijiri……Dark Avalonから助けてくれなかったことも、それは他の【Bravers】も同じだ。なので、思うところはない。


「ちなみに、ここにKanako達がいないのは、いたら確実に揉めるから。揉めなくても、後々になって『あの時納得したのは、Kanakoの【Venus】でMemoryemotionsを操られたからだ』ってAsagiが言い出したら、Vandalieuが本気で怒る。そうなるとTendouShouko、それにBirgit Dukeが気の毒だから、だって」


「お、おい、いくら俺でもそんな事は――」

Asagi、お前なら言い出しそうだと思われるほど信用が無いって意味だ」

「それで、letterの返事は?」


 Asagiが出したletterには彼が危機感を覚えた事について、何故危機感を覚えたのか、そしてどうするべきだと考えているのかをいくつか書き連ねてあった。


「じゃあ、本題に入るわね」

 それに対する返事であるVandalieuletterも、それなりの長さになっていた。封筒から取り出したそれを、Plutoが読み上げる。


AsagiMinami -donoへ。我が国の政策に関する質問、疑念、要望など-sama々ありましたが……我々にそれに応える義務は一切ありません」

「っ!?」

 しかし、初めからはっきりと拒絶され、Asagiが目を見開いて驚愕する。letterの返事だけでなく、それを説明するためにMari達まで来たので、もっと柔らかい返事を期待していたのだろう。


 しかしAsagiが書いたletterを何度も繰り返し添削したTendouShoukoは、半ば納得したような表情を浮かべていた。

「何故なら貴-donoは我が国に仕えるcivil officialでも、武官でも、ましてや国民ですらない。友好関係にあるとはいえ、他国民のadventurerでしかない。

 そのような人物に我が国が今後執る政策や施策、policyを説明する事はできません」


 何故なら、Plutoが読み上げたようにVidal Magic Empire EmperorであるVandalieuにとって、Asagiは他国民のadventurerだからだ。そんな相手に国機密に相当する情報を渡す義務はない。


Asagi、このworldの国には広報部も報道官も存在しないのよ。人権もしっかり定義されていないworldで、知る権利が保障される訳がない。

 こうした情報を知りたければ、今ならどこかのDuchyの外交官になるしかないだろうけど……まあ、無理よね。明らかに向いていないもの」


「いや、だけど、俺は同じ『Earth』や『Origin』からreincarnationしてきた、同じ境遇のReincarnatorとしてあいつに聞いて欲しい事があってだな――」

 Plutoから伝えられた伝言、そしてMariにそう説明されてもAsagiはこの拒絶に納得できない-sama子だった。しかし、それはVandalieuも予想していた。


しかし、無回答では貴-donoは納得しないと思われるので特別に回答します。なお、この情報はこの場で留めてください。貴-donoとその仲間が情報を流布したと判断した場合は、相応の処置を行います」

 そうPlutoが返事の続きを読み上げると、Asagiは顔を輝かせ、TendouShoukoは「知らない方が良いんじゃないか?」と顔を顰める。


「まず、world征服でも目指すのかという質問について。武力での征服も、経済的侵略も、宗教的な内部からの浸食も、どれもこれも目指しませんし、考えてもいません。……うん、これは私も保証する」

「私も。Asagiは疑っているようだけど、Vandalieuが超大国の為政者になったのはだいたい成り行きよ」


 AsagiVandalieuworld征服を狙っているのではないかと不安を抱いていたらしい。もっとも、これはAsagiだけではなく、Orbaum Elective KingdomNobleなら同-samaの不安を一度は覚えている。Amid Sacred Empireは、もっとはっきりと「Vandalieuworldをその闇で包むつもりだ」と民衆に繰り返し訴えている。


 しかしVandalieu本人にそのつもりはなかった。そもそも、Orbaum Elective Kingdomにこのtimingで正体を明かすことになったのも、Dark AvalonことRokudou Hijiriの陰謀が原因だ。彼にとって、予期せぬaccidentだったのである。


 それ以前の行動も、Vandalieuは別に支配者になろうとしたわけではないし、領土を増やすために行動してきたわけではない。彼の目的であるSelf幸福の追求のためには、ある程度のpropertyと社会的地位が必要だと求めたが、Honorary Nobleになれればそれでいいと考えていた。


「信じられないのなら、簡単にだけど経緯を説明してもいいわよ。聞いているし、話してもいいって了解はもらっているから」

「経緯が成り行きだったとしても、それが可能な力を手に入れた事まで成り行きな訳がないだろ! 成り行きでDemon Kingを倒せたら、誰も苦労しない!」


 そう訴えるAsagiの言葉も、一理ある。しかし……。

Vandalieuがその力を手に入れた原因なら、Rodcorteでしょ。Vandalieuが『Earth』から『Origin』にreincarnationする時、RodcorteAmemiya Hirotoに間違えて与えた彼の分のAbilityattribute magicへの適性、それにFortuneをしっかり彼に与えていたら、Vandalieuは今とは全く違った存在になっていたはずよ」


 Plutoの指摘に、Asagiは思わずうっと呻いて黙り込んでしまった。

 Vandalieuが『Lambdaworldreincarnationした後、赤子の内に母であるDarciaを殺されても生き残ったのは、Ghoulの集落でGhoul KingとなりNoble Orcと戦って勝利できたのは、Talosheimを復興できたのは……そしてその後に続く諸々の出来事を成し遂げ、勝利してきたのは、彼の努力もそうだがDeath-Attribute Magicと莫大なManaによるところが大きい。


 だから彼は狙わず成り行きで、そのお人よしさや善意で見捨てたくない者を見捨てず、守りたいものを守り、忌々しい存在を踏みにじって、今の立場に至ったのだ。

 それは成長限界を無くした【Vida’s Divine Protection】によるところも大きいが、やはり全てのきっかけになったRodcorteの手違いのお陰である事は否定できないだろう。


 もしRodcorteVandalieuにそれらを与えていれば、彼は軍事国の研究所に幼くして売られずに済んだ。そもそも他のattributeの適性があればdeath attributeに目覚める事もなく、AbilityFortuneが与えられていればその分Manaも抑えられていたはずだ。


「そもそも、Demon King Guduranisに砕かれたZakkart達のsoul fragmentを無理やり纏めて一つの魂にするなんて事をしなければ、存在もしていなかったんだけど……まあ、そこまで遡らなくても、あの時Rodcorteがしっかりしていれば、今の状況はなかった」


 『Origin』でDeath-Attribute Magicが発見されず、Pluto達は少なくともDeath-Attribute Magicの研究や実験には使われない。……他の実験に使われていたかもしれないが。

 Rokudou HijiriDeath-Attribute Magicの研究にのめり込むことはなかった。他の陰謀を企んでいただろうが。

 Mariも、Kaidou Kanataに復讐した結果特製の独房で残りの人生を過ごすことになったかもしれないが、Rokudouに利用される事はなかった。


 Vandalieu本人はAmamiya Hirotoとして、今も『Originworldで生きていたかもしれない。


 それはつまり、Darciarevivalせず別人の魂が宿っている彼女の息子も死に、ZadirisGhoulは寿命で死ぬかNoble OrcBugoganに敗れ、Talosheimは今も廃墟で、Princess Levia達は今もHartner DuchyNinelandの城の地下でGhostとして彷徨っている事を意味する。さらにいえば、『Evil God of Joyful LifeHihiryushukakaとそれを奉じるVampires serving Evil Godsorganizationも健在で、Boundary Mountain Rangeの内側は『Evil god of releaseRavovifardを奉じる勢力が牛耳っていたかもしれない。


 Sauron DuchyScyllaResistanceに利用され、Alcrem Duchyでは『Cannibalismと強奪の邪Evil God (P)Zeezoreginが潜み続けいつか災いを為していただろう。

 なので、Rodcortemissをきっかけに、worldに大きなimpactを与えたとも言える。


「といっても、私達はRodcorteに感謝しないけど。Rodcorteは意図して憎まれ役を買って出て、Vandalieuに試練を与えたわけでもない。ただ、missをしただけ。

 苦難を乗り越えたVandalieuが偉大なのよ」

 Vandalieuが好むので呼び捨てにしているPlutoだが、彼を信仰している事に変わりはない。そう断言する彼女の瞳には、はっきりと彼を讃える意思があった。


 Asagiにとってはそれが危険に思えるのだが、彼女とMariの指摘が間違っていないのは事実。そして、彼女の言う試練をVandalieuが乗り越えるのに、彼の仲間であると主張する自分自身が何の力にもなっていない事を無意識に理解しているため、言い返す言葉が思いつかなかった。


PlutoAsagiVandalieuが望んでworldで存在感を増している訳じゃないって納得したようだから、次に行きましょう」

「そうね。次は……Death-Attribute Magicや【Demon King Fragment】を使ったmagic itemをこのまま広めるつもりなのかという質問だけど、イエスよ」


「っ! 待てっ、Transformation Equipmentってお前達が呼んでいるitemや義肢は別にいい。だけどBlood potionやVCreamは、本当に人体に副作用はないのか!?」

「その害っていうのが、impactという意味ならあるわ。導かれた人の内Humanの場合はHell raceDwarfDvärgensBeastmenは冥Beastmenへと、raceが変化するの」


 MariHell raceなどに関してさらに詳しく説明するが、Asagiはより危機感を覚えたようだ。変化するとともにVandalieuに導かれ、彼を支持するようになる点が彼にはpotionCreamの効果に誘惑された人々を変異させ、洗脳しているように思えたのだろう。


Asagi、それは順序が逆だ。説明をよく聞けばわかるが、薬を使ったから変異して導かれる訳じゃない。導かれた人が、薬の効果で変異するんだ。

 Vandalieuに導かれない人には、ただの薬に過ぎないんだ」


「それに、raceが変わるといっても……このworld、特にVida's New Racesが多い社会ではそれほど問題になるとは思えないよ」

 だが、そのAsagiが口を開く前に宥めるような口調で説得に回ったのはTendouShoukoだった。


TendouShouko、二人とも本気か!? 寿命がなくなるんだぞ。大勢がUnaging不死になったら、今は良くても将来国や社会が――」

「たしかに、『Earth』や『Origin』でなら大問題だったな。『Earth』や『Origin』には、Humanしか存在しないから、Humanに適応した社会しか存在しない」


「でも、ここはanother worldなんだ。Humanはたしかに百年も生きないが、DwarfBeast raceの寿命は約二百年、GhoulGiant raceは約三百年、Elfは五百年で、Dark Elfは千年も生きるんだよ。Humanから見れば、Unagingとそんなに違わないじゃないか」


 Shoukoが言うように、この『Lambdaworldには『Earth』のHumanよりも寿命が長いraceが多い。そんなworldHumanの寿命がなくなり、数百年から数千年生きるようになったところで大きな変化とは言えないだろう。

 それに、Hell raceに変化すると生殖Abilityが落ちる傾向にある。一組の夫婦が何百年もの間childを何百人と生み続けられるわけではないのだ。


「それに、Majin RaceVampireoriginally寿命がないし」

「たしかに将来的に人口爆発なんて事も起こるかもしれないが、それは数百年後だ。今から起こり得る問題をconjectureして解決に取り組めば、数百年後には解決策が見つかっているかもしれない」


「それは問題を先延ばしにしているだけじゃないのか!?」

「先延ばしにするっていうのは、問題に取り組むことをせず放置する事だろう。解決を目指して取り組み続ける事を、先延ばしとは言わない」


 Plutoは、『Earth』や『Origin』で生きていたHumanの価値観からVandalieuの行動やそのimpactを問題視するAsagiを、TendouShoukoが積極的に言い聞かせて宥めている-sama子を意外そうに眺めていた。二人が宥め役になる事は予想していたが、意見をぶつけてまで止めるとは思っていなかったのだ。


 実際、寿命がなくなった未来で人口爆発が起きた場合どうするのか、Vandalieuは根本的な解決方法を持ってはいない。とりあえず、Demon KingContinentの地上部分やDemon continentのまだ人が住めない部分を開墾すれば、数十億人以上暮らせるはずだと考えている。

 Dungeonを創り居住区として利用すれば、二百憶でも三百億でも可能だろう。

 それ以上増えた場合は、まだ漠然と「じゃあ、space (UCHUU)でも開墾しましょうか」としか考えていない。


 ……ちょっと前にMountain Rangeを動かしたVandalieuなら、数百年後には惑星を入植可能に改造できるかもしれない。


 しかし、人口が増えるpaceが一定とは限らない。早まる可能性もあるが、逆に少子化が進む場合もある。

 実際、『Earth』ではJapan以外の先進国でもMariが生きていた時代から少子化が社会問題になっていた。


「じゃあ、Asagiも納得したようだから次の質問というか、要望に対する答えだけど……」

 Asagiが二人に諭されて何も言えなくなったのをしばらく眺めてから、Plutoletterを再び読み上げた。

Kanakoを危険視する質問や要望は、答える価値及び理由なしと判断します、以上。だって」

「やっぱりか! でも、あいつは都合が悪くなれば――」


「裏切るっていうんでしょ。Kanakoの都合が悪くなることは向こう千年ないだろうから、心配しないで。それに、仮にKanakoが裏切るとしても、裏切られるのはあなたじゃなくてVandalieuでしょ。あんたには関係ないから、口を挟まないで」

 そう言うPlutoには……他のLegionの人格たちも、KanakoVandalieuを裏切る局面が想像できないか、できたとしても酷く現実味のない状況になってしまう。


 しかし、それをどれだけ説明してもAsagiは信じないだろう。実際、Kanakoは一度彼らを裏切っていて、彼にとってはそれが全てだろうから。

 Kanako自身も『Asagiは絶対あたしの事を信用しないでしょうから、信用してもらう必要はないと思います。もし仮にあたしがVanを裏切っても、あんたには関係ないでしょ、って方向で言っておいてください』と言っていた。


 実際、Vidal Magic Empireの国民でもないAsagiKanakoVandalieuを裏切ったとしても、直接impactは受けない。『Origin』で彼女に裏切られたとしても、ここは『Lambda』である。another worldで、しかも前世で行った犯罪行為を罰する法はないし、裁く法廷も存在しない。Asagiも、彼女を訴えられる証拠を何も持っていない。

 Vandalieuに他人と定義されている限り、Asagiが口出しできる筋は無い。


「だったら、あのZakkart街はどうなんだ? あれはOrbaum Elective Kingdomの首都だ! 俺にだって口を出す権利があるはずだ!」

 なので、Asagiは自分がletterに書いた次の話題を出す。彼はoriginally Slum街だった場所が瞬く間に復興し、Zakkart街となった事自体は良い事だと思っている。


 しかし、新たな住民としてrevived DemonUndead達は、全員がVandalieuを称え、信仰し、templeを建立しようとし、像が建立されている。

 死者をVandalieuPseudo- reincarnationさせ、自身の支持者を増やしていく-sama子を見たAsagiは危機感を覚えたのだ。


「それに、Demon King Familiarの事だ。Rokudouが事件を起こした時に改めて気が付いたが、Demon King FamiliarCloneであってCloneじゃない。あれは、Vandalieuの端末だ。そうだろう?」


「ん? ええ、そうだけど、それがどうかしたの?」

「どうかしたの、じゃないだろう。あいつがDemon King Familiar中に放てば、それだけであいつは全てを監視できる! これを恐ろしいとは思わないのか!?」

「……悪いけど、あなたが何を言っているのか、理解できない」


 Asagiの主張を、Plutoは理解できなかった。

「皆は理解できる?」

「いいや」

「さっぱり」

「はっはっはっは! 不可解で気分が悪いな!」

「瞳は?」

「たしかに私は同じReincarnatorだけど、私にも理解できないわ」


 GhostBaba YagaValkyrieShade、瞳に目まぐるしく表に出る人格を変えるが、Asagiの主張を理解できる人格はいなかった。


 Vandalieuが監視する事の何に問題があるのか、彼女達は理解できない。人々は祈るではないか、『どうか見守っていてください』と。神仏や先祖や亡くなった親brothersloverに。なら、神であるVandalieuに見守られる事に何の問題があるのか。


 もちろんLegionを構成する人格達も、Vandalieuを神として信仰しない者がいる事を理解している。しかし、そうした者達がVandalieuに見守られる事を、問題があると考えた事はなかった。

 『Origin』では人々はあれだけ監視されていたが、自分達のような一部の例外以外は気にも留めていなかったではないかと。


 防犯camera、監視camera、個人が持つ携帯端末のcamera、ドlive performanceレコーダー、使い魔やGolemに搭載されたcamera、そして人工Satellite。おかげで『Originworldで生きていた頃は、どれだけ苦労させられたか。


 実際、Talosheim人々は誰もDemon King Familiarに見守られる事に抵抗やstressを覚えていない。慣れた人では、携帯やmediagame機代わりにしているほどだ。

 友達と連絡を取りたいときに、近くに居るDemon King Familiarに友達のnameと伝言を言う。すると、その友達の近くにいる別のDemon King Familiarmessageを伝えてくれる。


 おすすめの飲食店やその日にあった出来事が知りたければ、Demon King Familiarに聞けばいくらでも話してくれる。

 暇なときに話しかければ、簡単なgameに応じてくれる。ただ、Board Gameは何故かweakので簡単に勝ててしまうが。


 Legion達が、ちょっと甘えすぎではないかと思う程Talosheimの民はDemon King Familiarに親しんでいる。もし仮にAsagiTalosheimDemon King Familiar廃絶運動を展開した場合、民から総スカンを受け、場合によってはbloodの気の多い国民と暴力沙汰になりかねない。

 だというのに、何故危険だと訴えるのか。Legion達には理解できない。


 一方、Asagiは構成する人格に元【Bravers】のMinuma Hitomiも含めたLegionが理解できないでいる事に驚いていた。しかし、彼が何か言う前にMariが口を開いた。


「つまりAsagiは、Vandalieuがとってきた政策や言動に依らず常に自分を支持する絶対的な支持者を増やすことに危機感を覚えている。

 そして、『Earth』では防犯cameraや携帯のcamera毎に、別々の企業や団体、個人が管理している情報を、国を支配しているVandalieu個人が管理していることが、危険だと言いたい。そういう事よね?」


 Asagiと同じように『Earth』からreincarnationしてきた元ただの学生のMariには、彼が言いたい事が分かった。

 Vandalieuの行動から、彼は独裁者による強固な監視体制が敷かれたディストピアになるのではないかと危惧しているのだ。


 実際、MariDemon King FamiliarだらけのTalosheimを見た時、なんとなくディストピアっぽいなという思いが彼女の心によぎっていた。

 これはLegion達だけではなく、情報社会を経験した事がないこのworldの住人は殆ど思い至らない危険性だろう。そして、Vandalieu本人は問われても上手く説明できないだろう。


「そうだ。分かってくれたか、Mari

「ええ、でも大丈夫だから。Vandalieuに限って、それはない」

 しかし、分かったがそれは外から見た考えだとMariは思っていた。


Vandalieuならそんな事はしないっていうのか?」

「しない、じゃないわ。できないのよ。そもそも、経緯が違うのよ」

 Vandalieuは狂信的で絶対的な支持者を創り出そうとしている訳でも、国民を監視しようとしている訳でもない。


 支持者を増やすためにいろいろしているが、狂信や冷めない熱狂までは求めていないのだ。

 ただ、少し手間をかければ助けられる人達を、少しの手間を払って助けただけ。その結果、導かれて狂信的で熱狂的な支持者になってしまったのだ。


 監視についても、最初は侵入者から仲間を守るために設置した監視用GolemUndeadから始まっている。そしてVandalieuは、Talosheimの王になってからも国民と気軽に接し続けている。だから、【Perfect Recordingskillを手に入れた事で、国民のnameと顔を全てrecordしたのだ。

 そして、GolemUndeadよりもすぐに反応できるDemon King FamiliarTalosheimに配置するに至った。


「だから、独裁者にはならないっていうのか?」

「そもそも、そんな事をする必要がないから大丈夫」

 自分の説明を聞いてもまだ納得しきれていない-sama子のAsagiに、Mariはそう保証した。


 国民を監視しなくても、Vandalieuが反乱やCoup d'étatを起こされる事はない。Talosheimの都市機能は、Vandalieuにほぼ依存しているからだ。Death-Attribute Magicが使えるMariや冥でも同じ事はできるが、必要なManaを賄う事は到底できない。

 そもそも、Asagiが危惧する絶対的な支持者はVandalieu以外の支配者を認めない。彼らは、Asagiが考えているよりずっと狂信的なのだ。


letterの返事は、読み上げなくていいわね? Mariの説明の方が分かり易かったから。

 それで最後の質問の答えだけど……民主主義国を作るつもりはありません」


 『Earth』の平和なJapanの価値観を持つAsagiにとって、もっとも正しい国家 formは人権が保障された民主主義国だ。『Lambdaworldの国々でも、いずれそうなるのが正しいと彼は考えている。そして、Vandalieuのように力のある立場なら、そうするのが正しいと信じている。


「何故なら、独裁者に成るつもりはないからです。だって」

 しかしVandalieuが支配する国では民主主義こそ独裁国になり得る政治体制である。

 何故なら、国民はVandalieuが強固に反対しても彼のGiant Idol Statueを建造する程彼を支持している。そのため、Vandalieuが立Candidateする限り、無条件に彼に投票するだろう。そもそも、Vandalieu以外立Candidate者が出ないかもしれない。


 Vandalieuが立Candidateしなければ解決かというと、そうでもない。立Candidateする者達が国民に訴えるのは自分達がどれほどVandalieuの考えを理解し、彼が望んだ治世を行えるかになるだろう。

 もしくは、ただ単にVandalieuが立Candidateするまで国民全体で選挙をボイコットするだけかもしれない。


 いずれにしても、Vidal Magic EmpireをディストピアにしないためにはVandalieuが頂点に存在し続けなければならないのだ。


 そうPlutoから説明されたAsagi、そしてTendouShoukoもそこまでとは思っていなかったのか、思わず絶句していた。

「最後に、Vandalieuから伝言。俺に対して反対意見があるのは、別に構いません。誰もに賛成され支持されるとは考えていないので。ただ、俺にとってあなた達はそうした反対者の一人でしかありません。

 そして、反対運動はまっとうにこのworldに即した形で行ってください。……Duke Farzon領でAlda's Factionに加わった場合は、他の敵と区別しません」


 Vandalieuがしようとする事に反対する者は、Asagi以外にもいくらでもいる。彼らはKanakolive performancemusicと認めず、GhoulVida's New Racesと認める事に反発し、Zakkart街の存在を忌々しく思っている。

 Asagiは面倒な事以外はそうした者達の一人でしかなく、それだけなら殊更排除する理由にはならない。……Duke Farzon領に行って、敵に加わらない限り。


「……分かった。Vandalieuに伝えてくれ。俺はしばらく、このworldに即した形ってのを考える事にする」

 それがAsagiにどれほど伝わったかは不明だが、そう言って座り込んだ。その-sama子を見たTendouShoukoは安堵のため息を深々と吐いた。


 Asagiにとっての間違いは、『Earth』と『Origin』と比べて大きく異なるこの『Lambdaworldで、赤ん坊として両親の元に生まれて育つことを選ばず、少年の体を得てreincarnationした事だ。そのため、このworldの価値観を学ぶ機会を逃し、それ以後も同じReincarnatorであるTendouShoukoと行動を共にして二人以外を仲間と見なさなかった事で、このworldとの齟齬に気が付くのが遅れた。もしくは、気が付いてもそれはこのworldが間違っているのだと単純に思い込んだ。


 それを矯正する事ができれば、TendouShoukoの苦労が少しは減るかもしれない。


 しかしVandalieuにとっては自分に関わってこない限りこのworldcountlessにいる他人の中の一人の話である。



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