会議が終わり、Duke達が退室した後もVandalieu達は残って話を続けていた。
「しかし、これでVandalieuとPauvinaもSClass adventurerか。Amidに四人、Orbaumに一人 そしてVidalに七人。もう圧倒的だな」
そう自分達をいつの間にかVidal Magic Empire所属のadventurerに数えているSchneiderは、機嫌よさそうにVandalieuの肩を叩く。……現在、Vidal Magic EmpireにAdventurer’s Guildは存在しないのだが。
Randolphはそれを指摘せずに、しかし逆に顔を顰めてみせた。
「人数だけ見れば俺一人だけが負け組のようだな」
「senseiは現役の内にもっと後進を育てるべきでしたね。そうすれば、引退も出来たかもしれません」
Vandalieuが言うように、Randolphが引退できなかったのは彼以外にSClass adventurerが存在しなかったからだ。もし彼にSuccessorや後を託せる仲間がいたら、当時のDuke達やAdventurer’s Guildも彼を強硬に引き留める事はしなかっただろう。
「まあ、口で言う程簡単な事ではないでしょうけれど」
「そうだ。俺はお前と違ってGuiderじゃないからな。それに、当時の俺はpupilsをとれるほどHumanが出来ていなかった。今でも、臨時講師がせいぜいだ」
そうため息を吐いて素直に認めるRandolph。今回はSchneiderと言い合うつもりはないようだ。
実際、Schneider達『Storm of Tyranny』はAmidのNobleからは恐れられているが、一般市民からは人望があり、彼等を慕う者の中にはpupils入りを志願した者達も多い。……そうした者達は殆ど隠れVida's Factionの一員となっているので、Amid EmpireやSacred Empireに貢献するどころか逆に損失になっているが。
そしてVandalieuも、『Storm of Tyranny』のmemberであるZodのpupilsの一人だ。
「それより、お前がGuild Masterの言う事を素直に聞くとは意外だった。私はてっきり、通常通り依頼をこなして審査を受けなければ昇Classに応じないと言い出すんじゃないかと、内心では冷や冷やしていたよ」
Meorilithが言ったように、VandalieuとPauvinaがSClass adventurerになったのは、Orbaum Elected King領のAdventurer’s GuildのtopであるGuild Masterからの要請によるものだ。その時に見せたGuild Masterの-sama子を見れば、要請ではなく懇願と評するべきかもしれない。
Hero Preparatory SchoolとはいえAdventurer's School校を卒業したばかりのEClass adventurerに、等Classごとの試験も受けさせずSClassへの昇Classを要請。調べるまでもなく、Adventurer’s Guild史上に前例のない偉業である。
歴史上、guildに登録した後一年でBClassに昇Classした者や、一気にCClass adventurerになった者は何人か存在する。しかし、SClassはない。
実際、RandolphとSchneiderもGからF、EDCBAと駆け足ではあったが下から一段ずつ等Classを登って、今のSClass adventurerの地位に至っている。
そもそもSClass adventurerに昇Classする目安が、「相応しい偉業を為す」という曖昧なものだ。そのため、昇Classの判断は時のGuild Masterの判断だけでなく世論の動向まで関係する。一概にどうすればSClassになれるという基準が存在しない。
しかし、VandalieuとPauvinaの場合は例外中の例外である。Vandalieuは、revived一部とはいえDemon King Guduranisを倒して『Goddess of Life and Love』Vidaに称えられている。そしてPauvinaは、『Raging Evil Dragon God』LuvezfolをTamerしてGuduranisとの戦いにも参加している。
Vandalieuはもとより、Pauvinaも文句なく「相応しい偉業を為した」adventurerである。……この二人の偉業が相応しくないのなら、何が相応しいのか分からなくなってしまう。
それに、Vandalieu達をEClass adventurerのままにしておくとNoble達がguildの制度を利用した政治工作を企みかねない。護衛依頼を利用して個人的なconnectionを築こうとする程度ならいいが、欲に目がくらんだidiot Nobleが裏取引を持ち掛けたり、正義に狂ったAlda believerのNobleが暗殺を試みたりしたら大問題にdevelopmentしかねない。
試みの成否は問題ではない。建前としてはだが、政治的に中立であるはずのAdventurer’s Guildが政治に利用されたという前例が、超大国の支配者やその親族のMemoryにはっきり残るのがまずいのだ。
しかし、Hero Preparatory Schoolで卒業を渋った事からSClassへの昇Classも渋られるのではないかという予想もされていた。それをどうにか説得しなければならないと、決死の覚悟でGuild Masterは懇願したのだが……彼らにとって意外な事に、Vandalieuはあっさりと昇Classに頷いた。
「俺達も当初の予定では、それなりに段階を踏んでAClassぐらいを目標に昇Classするつもりでした。mountain banditやGoblinを退治したり、予め見つけておいたDungeonを『未発見のDungeon』として報告して探検したり、Samに乗ってDemon's Skyを攻略したり、Demon continentやDemon KingのContinentに行ったり」
「真実を知ってから聞くとほぼでっち上げだが、何も知らなかったらたしかにA……いや、SClassへの昇Classは必至な偉業だな」
「自分でDungeonを作るとか、危険なmonstersをこっそり放して事件になってから自分で退治するようなマッチポンプでないだけ良心的だとは思うが」
Human社会に対して明かしていなかっただけで、Vandalieuが今まで行ってきたいくつかの事は、歴史に残すのに値する大偉業である。それを改めて行い、報告しただけでAClassへの昇Classは間違いないし、SClassへの昇進も狙えただろう。VandalieuはElizabeth達と、PauvinaはReinhardt達と、そうして昇Classしていくつもりだった。
もちろん、Elizabeth達の実力も等Classに相応しい水準に引き上げながらだが。だが、それも含めてVandalieuにとっては楽しい時間になるはずだった。
「でも、Guduranisがrevivedせいで色々と明らかにしなければならなくなりましたし、Elizabeth -samaもDukeになりましたからね。さすがに今は無理だろうと思いまして。
Heinzを取り逃がしたせいで、色々対処しないといけませんし」
しかし、Guduranisのrevivalとその後Heinzを殺し損ねた事から、予定を大きく変えなければならなくなった。色々と明らかにしなければならなくなったので、とてもadventurer活動を楽しむ事はできない。
なら、昇Class試験もつまらないだけだ。DClassへの試験で人を殺すことができるか、殺してもreasonを失わず倫理観を揺るがすことはないか試すまでもない。今まで何百人何千人ものmountain banditや犯罪者を殺し、bloodを啜り、生け捕りにして人体実験に利用してきた。そしてこれからも殺し、啜り、利用していくのだ。
それでもVandalieuのreasonや倫理観に変化はなかった。Pauvinaはあまり人相手の殺し合いの経験はないが、問題はないだろう。
BClassへ昇Classするための筆記試験や、上流階Classへの態度は考えるまでもない。二人に文句をつけられるOrbaumのNobleは存在しないだろう。むしろ、力関係を考えればOrbaumのNoble達が彼らをもてなさなければならないはずだ。
「Elizabeth -sama達の昇Classは、本人達に断られてしまいましたが」
しかし、Vandalieuのparty memberであるElizabeth達とPauvinaのparty memberであるReinhardt達は、昇Classを断った。accurateに言うなら、Guild Masterは彼女達の昇Classを提示しなかった。VandalieuがGuild Masterの要請を聞く見返りに頼みましょうかと尋ねたら、辞退されたのだ。
「-chanと実力を伴って追い付くから、安心して待ってなさい」、と言って。
「まあ、あいつらの実力も既にBClassに匹敵しているらしいが、AClassにはまだだろう。それに、NobleとしてはSauron Duke 家の事で既に頼っているからadventurerとしても頼るのは避けたいんだろう」
「話は変わるが、Vidal Magic EmpireへのAdventurer’s Guild本部とbranchの設置はどうするんだ? Mage guildも似たような事を言ってきていたはずだが?」
「それは今のところ要検討ですね。Explorers’ Guildと業務が被りますし、まずVida's New RacesだけでなくUndeadやmonstersの組合員の存在を認めてもらわないと、話になりません」
Guild Master達はVandalieu達の昇Classだけを求めてきたわけではない。Vidal Magic Empireへのguildの進出も重要な目的だった。
Boundary Mountain Rangeの向こうに国がある。Human社会では見た事もないようなmonstersや、存在を知られていないDungeonがある。それを聞いて興味を覚えるadventurerはcountlessに存在する。彼らが堪えられずにVidal Magic Empireに行き、Explorers’ Guildに鞍替えしてしまうとAdventurer’s Guildとしては痛い。
Mage guildの場合は、より深刻だ。組合員のMage達は、Vidal Magic Empireでしか取れない素材やMagic Empire内で生活しているUndeadを研究したくてウズウズしている。
VandalieuがMountain Rangeを動かせる以上、Sauron DuchyやHartner Duchy側のMountain Rangeに何時Vidal Magic Empireと繋がるtunnelができ、そこに研究熱心なMage達が殺到するか分かったものではない。
そのため人材流出によるimpactを最低限にしようと必死になっているのだ。
「まあ、Mage guildの方は受け入れ態勢を整え次第、TalosheimにVidal Magic Empire本部を設置する予定です。Mage guildの方は競合するorganizationがありませんし、我が国の法律を守るなら問題ありません」
なお、Tamer guildの方は既に受け入れが決まっている。もっとも、GhoulやVida's New Races、UndeadやDemonやmonstersの一般市民等、Tamed Monsterとして判定してはならない存在がいるので、規約や規則の改定を済ませてからだ。
これで近い未来、Vandalieuの仲間たちはTamer guildの首輪をしなくても街を歩く事が出来るようになるだろう。……もう既に首輪をしなくても文句を言う存在はOrbaum Elective Kingdomにはいないかもしれないが。
そして、そうなったとしてもEleonoraやIslaは首輪をし続けるだろう。
「じゃあ、Vandalieuそろそろ――」
そこにDarciaが息子に声をかけながら彼の肩に手を置いた。
「そろそろ、そのletterをどうするか考えましょうか」
そして、現実を直視させた。Vandalieuの前には、Adventurer’s GuildのGuild Masterから渡された簡素な封筒に入ったletterがある。
差出人はOrbaumに滞在しているBClass adventurer、Asagi・Minami。【Mage Masher】のCheat Abilityを持つReincarnatorである。
「……kaa-san、見なかったことにして皆でご飯でも食べに行きませんか?」
そして、Vandalieuにとって相手をするのも面倒な相手だ。
仲間の仇ではないし、Vandalieuの命を狙っているわけでもない。だから、殺すに足る理由がある敵ではない。
だがしかし、ウザくて面倒な相手なのである。Gerald・Birgit Dukeから【Demon King Fragment】を安全にsealedする研究に協力し、成果を出したとは聞いていた。そのままVandalieuに直接関わらない場所で、適当に暮らしてくれればいいなと思っていたのだが……まさかこのtimingでletterを出してくるとは思わなかった。
そのletterを無視してご飯を食べに行く。それは素晴らしいideaのように思えた。
Orbaum Elective Kingdomのtop陣を集めた会議で、きっと自分はとても疲れているに違いない。そんな時にさらなるstressをため込むことは、きっと内臓や頭皮や肌に……つまり健康に良くないはずだ。一国の為政者である自分の健康問題は重要なので、これはletterを無視するには十分な理由だろう。
だから美味しいご飯を皆で食べて忘れてしまった方が良いに違いない。最も美味しいのはVandalieu自身が作るCookingで、さらに言えば皆……何十人何百人といるVandalieuの仲間達が一度に集まって食べられる場所はこのKnochen城かSamのcarriageか、Vandalieu自身の【Body World】ぐらいだが、それでいいだろう。
疲れている時に皆が食べる分のCookingを作るのはさらに疲れる気もするが、Fatigue解消には適度な運動が効果的だった気がするので、大量のCookingを作るとFatigueが解消されるので無問題だ。
「Vandalieu。おkaa-sanはね、Asagiって人のsupportわけじゃないの。ただ、このletterを無視して何か悪い事が起きた時に、Vandalieuが嫌な気分になるのが嫌だから言っているのよ」
現実逃避しながら、何を作るか献立を考え始めたVandalieuの頭を左右の手で抱え込むようにして固定して、Darciaはそう続けた。
「letterを無視されて自棄になって、Asagiって人がDuke Farzon領やAmid Sacred Empireに行って、Orbaum Elective Kingdomの人達を傷つけるようなことになったら嫌でしょう?」
Darciaが言うように、Vandalieuは『Earth』ではclassmateだったAsagiがどうなっても、多少憐れむ程度で深くは気にしない。むしろ、Asagiの仲間のTendouやShoukoはどうなったのだろうかと気にするだろう。
しかし、自分が雑な対応をした事がきっかけでAsagiが他のHumanに迷惑をかけた場合は、彼に迷惑をかけられたHumanに対して罪悪感を覚える事になるはずだ。
それに、Asagiはdeath attributeを含めたattribute magicのActivateを止め、既にActivateしているmagicも消す事ができる【Mage Masher】のCheat Abilityを持っている。
attributeを帯びていないManaを使用するNo-Attribute Magicは消す事はできないし、物理攻撃に対しては何の効果も発揮しないので無敵には程遠い。そして【Mage Masher】にさえ注意すれば、VandalieuはもちろんRandolphやBone Man、Knochenなら瞬殺できる程度でしかない。
しかし、敵に回せば厄介な相手であるのは間違いない。それに、【Rodcorte’s Divine Protection】も与えられたままだろうから、成長速度も普通よりは速いはずだ。
今から『Five-colored blades』に匹敵する程実力を高められるかは分からないが、軽く考えるべきではないだろう。
それなのにVandalieuが彼からのletterを読むのを後回しにし続けているのは……。
「でもkaa-san、このletterにはきっと面倒なことが書いてあるはずです」
面倒で関わるのが嫌だからである。
「何なら、俺が処理してくるか?」
そこでRandolphがそう提案した。驚いたように見上げるVandalieuに対して、彼は真剣な顔で見つめ返して話を続けた。
「場合によっては汚れ仕事も請け負うのがadventurerだ。そのAsagiって男は犯罪者ではないが、自分を厭う大国の支配者に自分から関わりに行く身の程知らずで、礼儀知らずだ。国家運営の障害になるなら、少なくとも俺が知る業界では殺されるのには十分な理由になる」
その国のNobleどころか国民でも、そしてadventurerとして活動している訳でもない男が、お互いにAdventurer’s Guildに所属している事を利用して私的なletterを出す。これは当人同士が了解している場合ならともかく、そうでないならAdventurer’s Guildの情報伝達網と規則を利用した、mannerを無視した外交に当たる。
それにletterに書いてある内容次第だが、脅迫するような内容が少しでも書いてあればアウトだ。Orbaum Elective Kingdomなら、首に賞金を懸けられるだろう。
「Randolph sensei……汚れ仕事は嫌いでは?」
ただ、Vandalieuが驚いたのは彼が自分から進んで汚れ仕事を提案した事だ。
「ああ、嫌いだ。だから殺すつもりはない。奴の仲間のTendouって男に、『命は助ける』と約束して協力させて拉致して逃げられないよう処置をして監禁。その後一ヶ月か一年か十年かは知らないが、色々片付いた後に元通りにして解放する、というプランはどうだ?」
そして、Randolphとしても汚れ仕事はできるだけ避けたいので、提案するのは暗殺ではなく拉致監禁だった。……それでも十分汚れ仕事だが、殺すよりはマシだろう。
逃げられないよう施す処置の中には、四肢を切断して両目を潰す、というものまであるのはいちいち説明しない。
「なあ、いっそのことそのAsagiって奴を前世にいたっていう『Origin』に送り返したらどうだ? 前ならともかく、今のお前なら出来るだろう?」
そしてSchneiderが、Randolphとは別の方向で画期的なAsagi対策を提案した。
以前はworldの壁を越えて生きたHumanをanother worldに送るなど、『God of Space and Creation』Zuruwarn以外には不可能だった。しかし、今のVandalieuなら『Origin』限定だが可能だ。『Origin』のHumanである冥やHiroshi達をこのworldの物理法則に適応できるようにも出来たのだから、逆にこのworldのHumanを『Origin』worldの物理法則に適合させることもできるはずだ。
そこまでAsagiにしてやる義理はVandalieuにはないが、そこまですればAsagiは彼が再びこのworldへ連れてこない限り永遠に『Lambda』worldに戻ってくることはない。
『Origin』worldで再び死んでも、reincarnation後に前世に居たworldに生きたまま戻るなんてRodcorteにとっても予想外のはずなので、また『Lambda』にreincarnationする事はないだろう。……仮にあったとしても、その場合は普通の人と同じように生前のMemoryも人格も力も全て無くし、白紙のconditionのただの赤ん坊としてreincarnationするから、「Asagi・Minami」ではない。
そしてAsagiにもmeritはある。自分と同じReincarnatorしか仲間とみなさない男なので、仲間がいる『Origin』worldの方が彼にとって居心地は良いだろう。戸籍だとかそうした諸々の問題は、「死んだと思われていたが実はRokudou Hijiriの実験体として拉致されており、今までは治療に専念するためと彼自身の身の安全を確保するために情報を秘匿していた」とか、そんな風にSergei United States大統領に情報操作してもらえば解決だ。
「っ! すごいわ、Schneider -san! Vandalieu、ナイスideaだと思わない!?」
Darciaが手を叩いて喜ぶほど、画期的なideaだった。Vandalieuも思わず、それで行きましょうというところだった。
「kaa-san、Schneiderのideaに頷きたい誘惑に凄く駆られるのですが、大きな問題があります。今のAsagiは、『Origin』で死んだ時よりも大幅に強くなりすぎているという問題が」
Asagiはこのworldにreincarnationしてから数年、経験を積みlevelを上げてJob changeを何回か繰り返してBClass adventurerへとなっている。
Statusはreincarnationした当時と比べると数倍以上になっているはずだ。
以前のAsagiなら、【Bravers】の中でも有数の武闘派のReincarnator程度だったはずだ。しかし、今のAsagiは【Bravers】の他のReincarnatorを遥かに凌駕した超人である。
reincarnationする前のAsagiなら、全力で人を殴ってもせいぜいchinのboneが砕ける程度だったはずだ。だが、今のAsagiが『Origin』のHumanを全力で殴ったら、そのHumanの頭部は熟れた果物を殴った時と同じように潰れてboneと脳のfragmentとbloodをまき散らすだろう。
reincarnationする前のAsagiなら、無防備なconditionで銃弾を受ければ当たり所が良くない限りあっさり死んだはずだ。しかし、今のAsagiは小口径の銃から放たれた銃弾なら痣にもならないだろう。大口径の銃でも、せいぜい肋boneにヒビが入るくらいではないだろうか?
magicの腕もreincarnationする前より数段上がっているだろうし、【-Surpass Limits-】や-sama々なresistance skillを獲得しているかもしれない。さらに、Martial Artsを習得していたら『Origin』worldのHumanでは手が付けられなくなる。
Amemiya Hirotoでも今のAsagiを抑えるのは難しいかもしれない。
Asagiが仲間であるAmemiya Hirotoと衝突するようなことをするかどうかは……Vandalieuには予想できない。彼が今の、Rokudou Hijiriにかき回された『Origin』をAmemiya Hiroto達と協力して建て直そうとするのか、それとも他の【Bravers】のmemberを先導して自ら新しい秩序を建てようとさらなる混乱を巻き起こすのか。どちらもあり得そうだなとしか思えない。
VandalieuにとってAsagiは、自分より圧倒的にweak存在ばかりになったworldで以前と同じ自分を維持できると信じられる相手ではない。
そして、今のVandalieuは『Origin』をAsagiに滅茶苦茶にされる可能性を放置できない。
「俺の一部は『Origin』で神をしている以上、爆弾を投げ捨てる事は出来ません。Joseph達やSergeiやMe-kunとHiroshiの両親もいますし」
「うーん、じゃあ【Bravers】の人達をこっちのworldに呼んで、説得してもらうのはどうかしら?」
「その手もありますが、letterの内容次第ですね」
いろいろと勿体つけた挙句letterを開いたVandalieuだったが、その内容は彼が想像していたよりは真面目な内容だった。
会議の翌日の昼下がり、Asagi・Minamiは監禁されていた。
「……もう何度も言ったが、この扱いはあんまりじゃないか?」
首と利き腕と脚にそれぞれ枷を嵌められ、別々の場所に鎖で繋がれている。枷と鎖は分厚く太いObsidian Iron製で、Asagiでも素手では引きちぎる事はできない。
magicを使えば、もしくは自由な方の腕で鎖をどうにかできれば抜け出すこともできるが……
「そう言われる度に答えているが、妥当な扱いだ」
【Clairvoyance】のTatsuya・Tendouと【Ifritah】のShouko Akagiが見張っているため、不可能だった。
「妥当って、俺は――」
「あたし達に置きletterを残して、VandalieuにChargeしようとしたじゃないか。話を聞いてくれなければ、Duke Farzon領に研究資料を持っていくって脅すつもりだって書いてあったのを読んだときは、heartが止まるかと思ったよ」
AsagiはVandalieuと話をつけるため、事態を知ったら止めるだろうTendouとShoukoに置きletterを残して飛び出したのだ。
そして、二人はFortuneにもAsagiが飛び出した直後に置きletterを発見。【Clairvoyance】ですぐにAsagiの位置を捕捉して、Shoukoと共に捕縛。そのままこうして監禁しているのだ。Asagiを大人しくさせるために、Adventurer’s Guildのadventurer同士の連絡を仲介するというserviceを利用して、Vandalieuへ彼に書かせて二人が添削したletterを出させて。
「崖に向かって全力疾走するようなもんだよ。一国の支配者に脅しをかけるなんて、このworldじゃ殺されたって文句は言えない事だって分かるだろ?」
「このworldじゃなくても、時代と国によっては死刑だけどな。Birgit Dukeにも迷惑がかかると思わなかったのか?」
「いや、そんな大ごとじゃないだろ。俺とVandalieuは――」
「同じReincarnatorだけど、それだけ。仲間でも友達でもない」
「通っていた学校のclassが同じだけの他人だ」
自分の声を遮って言われた二人の言葉に、Asagiは短く呻くと押し黙った。その-sama子に、Tendouは深くため息を吐いた。
「Asagi……俺達は現在進行形で危ない橋を渡っている。Adventurer’s Guildを通じてletterを渡すのだって、本来なら危険なんだ。VandalieuがAdventurer’s Guildに登録しているから可能だったってだけで、このworldの外交ではかなりの無礼だからな」
そう語るTendouの言う通り、RandolphがAsagiの暗殺を提案する程三人は危険な状況に身を置いていた。
「Asagi、あんたはまだVandalieuは自分達と同じReincarnatorだって思っているかもしれないけど、立場が違い過ぎるし、その立場を超えられるような信頼や友情が全くないのにそろそろ気が付くべきだよ」
ShoukoとTendouも、このworldにreincarnationした当初はVandalieuと戦うつもりはなくても、彼の事を危ういと感じていたしKanako達を危険だと思っていた。
だから【Demon King Fragment】を安全にsealedするための研究を提案したAsagiに反対しなかった。これならVandalieuと直接争う事はなく、もしもの時は彼を穏便に止める手段になり得るだろうと。
Vandalieuも、自分の目の届かない場所……具体的には当時のBirgit Duchy等で、sealedが解けた【Demon King Fragment】がrunawayして罪のない人々が犠牲になるのを望んではいないだろうし、それを防ぐのに反対はしないだろう。
そしてVandalieuが不完全だがrevived Guduranisを倒した今も、二人は彼に危うさを覚えている。『Earth』……というよりも現代Japanの常識や倫理観を覚えている二人は、Vandalieuがしている事に対する忌避やhorrorを忘れる事が難しいのだろう。
だが、だからと言って自分達が口を挟むべき問題ではないと少し前から考えるようになった。しかし、Asagiはそう思ってはいないようだが。
「そうかもしれないが……二人だって見ただろ、あのZakkart街って名付けられた場所を。あれを見てもなんとも思わないのか?」
Orbaumに滞在している間、AsagiはBirgit Duke一行の護衛の合間を縫っていろいろと調べていた。彼はVidal Magic Empireの領土に入った事はない。Vandalieuが治める街を見た事もない。だが、OrbaumにはVandalieuが復興させ名付けたZakkart街という、彼が治めている国に雰囲気が極めて近いだろうdistrictがあった。
AsagiはそこでDemonやUndeadの住人から話を聞いて調べた結果、危機感を覚えた事で今回の行動に出ようとしたのだ。
「思うところは、正直に言えばあるよ。あるけど、それはあたし達の『Earth』や『Origin』での常識や価値観……another worldの物差しで測った結果に過ぎないんだよ」
「ともかく、letterの返事が来なくてもお前が考えを変えるまで、俺はお前を見張り続ける。分かっ――」
分かったな? そうTendouが続けようとした時、宿のroomのドアをノックする音が響いた。
「Vandalieuからの返事を持って来たわ」
「開けてくれる?」
聞こえてきたのが、聞き覚えのある声だったことに三人は驚いた。
「……Shouko、彼女達を中に入れてくれ」
「分かった」
言われた通りShoukoがドアを開けると、そこにはTendouが【Clairvoyance】で見た通りの人物が立っていた。
「さっき言った通り、Vandalieuの返事を持ってきたわ。私達がいるのは、返事に書かれている内容に対して質問がある場合、答えるためよ」
白いone pieceを着た黒い髪のShoujoに見えるLegionのPlutoが、letterを片手にそう告げる。
「私は元仲間のよしみで、これ以上関わらないように説得するために。久しぶりね、三人とも」
そして三人のMemoryにある姿よりもだいぶ幼い姿のMariが微笑んでいた。