三百六十以上のbone、腱、軟bone、nerve、blood vessel、muscle、blubber、脳、eyeball、鼻、耳、lips、heart、lung、stomach、liver、kidney、膵臓、小腸、大腸、ovary、uterus……。
それら必要なpartsを全て組み立てたconditionで一度に作るのは、【Metamorph】の力を使っても楽な事ではない。
物理的に不自由だし、大量の栄養を継続的に必要とするし、食事をし続けなければならないからstomachもたれするし。
おかげでまだ三分の二ぐらいしか進んでいない。
「私としても初めての試みだったから、これで上手くいくなら今後も続けようと思ったけど……もう暫くはごめんだわ」
そう本音を吐露するMariの背後から、不健康な青白い肌をした腕が二本伸びてきて彼女を抱きしめる。
「本当にありがとう……この恩は永遠に忘れないわ」
そうMariの耳元で囁くのは、十代半ばのShoujoのappearanceになった彼女より幾分年上に見える女だった。緩くウェーブのかかった髪を伸ばしっぱなしにした、青白い肌の女。髪の間から見える片方の目や鼻、lipsなどの造作は整っており、美しいと言える。
しかし、ぼそぼそとした口調や纏っている暗くじっとりと湿ったような雰囲気、そして何より瞳が彼女の印象を決定づけている。何かを煮詰めたように暗いのに、炯々と怪しげな光が隠れることなく灯っているのだ。
そのため、femaleを見た者は美しさやAllure、可憐さなどよりも近づきがたい危うさを……それも抜き身の刃ではなく毒のある花のような印象を持つだろう。
そして、背後から彼女達を見た者は、何も知らなければ自分の感性が正しかった事を確信するだろう。何故なら、Mariに背後から抱き着いている女にはlower bodyが無かった。女の腰から上はMariの背中から直接生えていたのだ!
「うん、まあ私もblessingsをもらうのと他のKami-samaへの口利きを約束してもらったからやってることだしね。blessingsはもう先払いでもらったし。
気にしないで、Bacias」
だが、femaleの正体は恐ろしい怪異ではなく『Goddess of Rain Clouds』Baciasだった。腰から上がMariの背中から生えているのは、Mariの【Metamorph】によってBodyを創っている途中だったからだ。
BaciasはれっきとしたGoddessだ。天候を予想する事でachievementを残したfemaleが死後、魂を昇華された事で生まれた善神である。現代では主にAlcrem Duchyの一部でしか信仰されていなかったり、大雨による水害等の凶兆を報せる神であるため不吉がられたりするが、慈悲深いGoddessであるとされている。
「それとも女Kami-samaって呼んだ方がいい?」
「そんな、呼び捨てでいいのよ。私とあなたの仲じゃない」
「えっ? いや、仲って言われても……?」
「bloodや肉を分けたsistersだって言ってくれたの、覚えているわ。私、Humanだった頃は友達が少なかったから、心の友とか真の友とかに憧れていたの」
しかし、慈悲深いGoddessであるとされている事と彼女が現代Japanでいわゆる地雷とか重いとか評される、ヤバイ性格の持ち主である事は矛盾しないのだ。
「いや、そんなArthurみたいな事を急に言われても戸惑うんだけど?」
BaciasがHero Candidateに選んだ強面だが純粋な好青年であるArthurは、Imoutoと幼馴染もそろってすぐ人に対する好意がRank upする性格の持ち主だった事を、Mariは思い出した。
もしかして、ArthurがAlcrem Duchyでもbelieverの少ないBaciasを信仰していたのは、自分に似た部分があると感じたからだろうかと思ったが、それはMariの勘違いだった。
「そうよね、ごめんなさい、私ったらつい嬉しくて。慌てちゃダメよね、まずはお友達になって、お互いの事を良く知る事から始めないと!
……でもあなたは私の事をすごく信頼してくれているし、私もあなたをblessingsするくらい信頼して愛している。これはもう、友達以上の関係だと思うの」
数少ないbelieverの中でもaptitudeに恵まれ、純粋な好青年であり、さらに自分と似た部分があるArthurをBaciasが見込んでblessingsを与えたのだ。
考えてみればblessingsを得る前は、強いだけのHunterであったArthurに神の性格を感じ取るなんてできる訳がないのだ。
このBaciasの言動を見聞きすれば、Goddessがこんな性格でいいのかと考える者もいるだろう。
Mariも一瞬だがそう考えた。しかし、彼女がMamaと慕う幼女の守護者であり彼女が神と奉じる少年の事を思い出し、すぐに考えを改めた。
(それに、Arthurに似ているなら実害があるようには見えないのよね。Goddessだし、言っている事も……まあ、Goddessだし)
MariはそれほどArthurと面識はない。初めて会話らしい会話をしたのも、彼から「BaciasのYorishiroを作ってほしい」という依頼を聞いた時、つまり最近だ。しかし人伝に彼の人柄を聞いていたし、裏表のない人物なので短い出会いでも分かり易かった。
それに、こうして【Metamorph】で体を作る相手なのでBaciasについてMari自身も聞き込みを行った。
Darciaによれば「Vidaがいうには寂しがり屋だけど良い娘みたい」、そしてTalosによれば『あれはなかなかいい女だと思うぞ!』という評価だった。Luvezfolはほぼ会った事が無いそうなので、参考にはならなかったが……概ね、気をつけろとか近づかない方がいい等の警告を含まないplus評価だけだった。
すぐに好意がRank upするのも、考えてみればMariは既に彼女's Divine Protectionを得ているのだから当然かもしれない。
そう、背中で彼女と繋がっているので逃げられないconditionで考えていると、不意にドアがノックされた。
「Mari、お代わりを持ってきましたよ。Bacias、具合はどうですか?」
扉から、Cookingが載ったwagonを押してVandalieuが現れた。
「ありがとうっ、頂きまーす!」
「ええ、beloved Mariが作ってくれたYorishiroは素晴らしいわ」
本来ならMari一人でBaciasのBodyを完成させ、Vandalieuを驚かせる予定だったのだが……人一人分のBodyを作るのが想定していたよりも難しかったため、打ち明けて協力してもらったのだ。
ただ、Mariの背中からBaciasの上半身が生えている光景を見たVandalieuは、驚いてはいたのでsurpriseには成功したと言える。
「しかし、驚きました。MariがBaciasと親しいとは思いませんでした」
意図していたのとは違う方向の驚きだったが。
「まあ、色々考えるところがあって。このworldは複数のKami-samaを信仰しても問題ないみたいだし」
『Lambda』は複数の神が協力してworldの維持管理に当たっているworldだ。そのため、templeに勤めるClergyman以外の人が複数の神に祈るのは普通の事として扱われる。
ただMariの場合は普通とは順序が逆で、Yorishiroになる体を作る依頼を受けたからblessingsを受けられるよう信仰するようになったのだが。
「……Bacias本人にも、それにVidaやTalosにも何も言われなかったけど、信仰ってこんなのでいいの?」
『Earth』や『Origin』の常識を知るMariとしては、若干自分の『信仰』の在り方が不純ではないかと気になったらしい。他の神ならともかく、本命の信仰対象であるVandalieuの前であるし。
「問題ないと思いますよ。templeに勤めて信仰の道に生きるのならともかく、Mariは違いますし」
VandalieuはそんなMariに、友人兼保護者のような感覚で答えた。
神が存在しbelieverにblessingsを与えFamiliar Spiritを派遣するこのworldの信仰には、現世での利益を得るという目的が含まれている。
もちろん、厳しい修行をして心身を鍛えて人々の心の支えになるべく活動する道もあるし、それに進むことを選ぶ者も少なくない。しかし、そうでなかったとしても恥じる必要はない。
「それに、俺だって神を信仰するのはSelf幸福の追求の一環という不純な理由です。その俺が認められているのですから、大丈夫です」
「Vandalieuの言う通りだから大丈夫。気にしないで、beloved Mari」
「ありがとう、でも人前でbeloved Mariって言われるのはちょっと。あと抱きつかれるのもちょっと……」
「そう言えば、服がまだですね。とりあえず編みますね」
Baciasがまだ何も着ていない事に遅ればせながら気が付いたVandalieuは、口から糸を吐いて彼女の服を編み始める。
「ところで、そろそろOrbaumで大事な話があるんじゃなかったの? だから、てっきり私達のところに来てくれるのはCloneかDemon King Familiarだと思ってたんだけど」
「ふしゅるるる。俺にとってはこちらの方が重要なので、こちらを優先しました。ふしゅるるるる」
口から糸を吐き、服を編みながら質問に答えるVandalieu。蚕もびっくりの器用さである。
「ああぁ、とっても嬉しい。でも、Elected King達も出席する会議でしかも主役はVandalieuなんだから、Demon King Familiarじゃなくて本人が出席してあげないと気の毒だわ」
「分かっています。Cookingを運んで二人の容態も確認したので、Baciasに服を編んだらすぐに行きます。……念のために確認しますが、これはプロポーズの類ではなく、ただのプレゼントです。良いですね?」
Vandalieuとしては、そう言ってDianaと同じ展開にならないように予防線を張ったつもりだった。
childができたのは喜ばしいが、無計画に増やすべきではない。まだBeast God Ganpaplioのboneがある。
「ぷ、プロポーズだなんて……ふ、ふふ、ふふふふふ」
しかし、Baciasは頬を赤く染めると、Mariの髪に顔を埋めて笑い声をあげ始めたのだった。
「Bacias、足、もうできたから離れていいからね。それとVan、藪蛇だと思う」
「俺もそんな気がしました。ふしゅるるるる」
Orbaum Elective Kingdomの首都、Orbaumは今年の六月に未曽有の危機に襲われ、人的被害は抑えられたものの殆どの建造物が被害にあう等、民が元通りの生活を取り戻すのに何年かかるか分からない程の被害を被った。
本来ならOrbaumを放棄して、遷都していただろう。
それが僅か三か月足らずでほとんどの建造物が……城や城壁、各guildや大規模Chamber of Commerceの建物だけでなく、一般市民が暮らす住宅まで、全て修復され、建て直されている。
そして六月まで社会問題となっていたSlum街は、-sama々な商店のテナントが入る商業区画、Zakkart街として再生した。
Orbaumは元通りに再興されたのではない。以前よりもずっと栄え、都市としてのVitalityに溢れている。
「お祖母-chan、すっかり元気になったね!」
『ああ、今じゃお前達を抱えて空を飛ぶ事だってできるんだ。もう年寄り扱いはさせないよ』
「お、おkaa-san、無茶はしないでくださいね!」
「おう、てめぇ肩がぶつ……かってしまってすみませんでしたぁ! 以後気を付けますぅ!」
『こちらこそすみませんでした。角、痛くありませんでしたか? カバーをしているのですが』
「お気遣いなくぅっ! だから言ったでしょう兄貴! もうその手口は通用しないって!」
その代償に、住民にDemonやUndeadが混じる事になったが。彼らは事件で不運にも命を落とした者達で、VandalieuによってDemonにPseudo- reincarnationした者達である。
娘と孫をそれぞれ左右の肩に乗せた有翼のDemonは、事件の前までは腰の曲がった老婆だった。当たり屋のチンピラを気づかず撃退した頭部や肩や肘、膝から角を生やしているDemonも、事件の前までは気のweak青年だった。
他にもSkeletonの群れに見えるKnochenのFission達が『おぉぉん』と鳴きながら通りを横切り、Vida's New Racesとして正式に認められたGhoulがFood Stallで軽食を購入し、外との出入りが自由になったAutonomous Territoryから来たばかりらしいCentaurのキャラバンがOrbaumの-sama子に驚いている。
これが事件から復興した事による代償だというのなら、甘んじて受けるべきだろう。
「そう言えばおkaa-san、Boundary Mountain Rangeが動いてSauron DuchyとMirg Shield Nationの国境を閉じてしまったって噂になっていたけど、本当かしら?」
『何を言ってんだい。Mountain Rangeを動かすぐらい、あのお方にとっては簡単な事だよ』
そしてDemon達は、VandalieuがMountain Rangeを動かしたのは当然の事として解釈していた。
だが、Knochen城に会議のために集まったCorbit Elected King達にとっては当然の事とはいかなかった。
「Mountain Rangeが動いた。そう聞いた時はついにButlerの頭がどうにかしてしまったかと思ったが……まさか本当だとは思わなかった」
「せめて事前に根回しをしてもらいたかった」
「いや、されたとしてもそれはそれで困ったと思うが」
「はっはっは、儂としては引退の日が近くなったようでめでたい事ですがね」
Boundary Mountain Rangeが動いたことに対してCorbit Elected King達は悩み、愚痴り、Dolmad Marshallのように笑い出す者までいる。
「事前に根回しをと言っても、仮にされたとしても意味はないだろう?」
「何を言われるか、Meorilith -dono!?」
そして会議には、Honorary NobleですらないMeorilithが何故か出席していた。Hero Preparatory Schoolの校長を辞した今の彼女の身分はただの一般人だが、職を辞したからと言って元AClass adventurerの実力とconnectionが無くなるわけではない。
集まっているNoble達は彼女を無下に扱う事はできなかった。
「そうだな、意味がないとは言い過ぎだった。政治的な意味が山ほどあるな。
事前に根回しをする事で、Vidal Magic Empireがお前達に気を遣っているというポーズになる。そしてお前達はVidal Magic Empireに気を遣わせたという実績を得る」
そうMeorilithが言うと、Meorilithに言い返したNobleは悔しそうに呻きつつも押し黙った。
「なるほど。書類としては残らないけれど、担当者や外交員同士ではそうした慣習の積み重ねが信用になると。勉強になります」
そして、Vandalieuは彼女の言葉に繰り返し頷いている。
「やはり事前の根回しは大切ですね、sensei」
「もうsenseiではない。今の私はただの雇われadventurerだ。お前達に借りた分を返すまでは」
Meorilithがこの場に居るのは、Vandalieu達に対する借りを返すためだ。その借りとは、本来なら最低でも在学期間が一年であるHero Preparatory Schoolを、半年程で卒業させた事だ。それもPauvinaやReinhardt達まで。
Meorilithはその借りを返すために、Hero Preparatory Schoolの校長の職を辞してadventurerに戻り、協力を申し出たのだ。
もちろん、Vandalieu達がそれを理由にdemandした訳ではない。彼女自身の意志である。
「そんなに気を遣わなくてもいいですよ。Pauvina達も、今の情勢を考えれば妥当な時期だったと納得していますし」
「いや、教育者の端くれだった者としてそれではケジメが付かない。それに、私が必要なはずだ」
そういうMeorilithは元AClass adventurerだが、戦力としてみればVandalieuにとって有用ではあるが必要という程ではない。AClass adventurer相当の戦力なら彼女以外にもいくらでもいるからだ。
「Vandalieu、お前自身も自覚があると思うが……お前は政治に疎い。Mountain Rangeを動かす前に根回しをするのを忘れていたのが、その証拠だ」
しかし、政治力が圧倒的に不足していた。
特に、時にはVandalieuに反対意見を言える常識的でfanaticではない政治のブレーンが不足している。
Chezareはいるが、Undeadである彼はVandalieuの意向に従う事が多く、さらに言えば生前はMirg Shield Nationの武官であってcivil officialではない。弟のKurtも元武官であるため、どうしても専門家には一歩至らない。
Hadros・Jahan DukeやTakkard・Alcrem Duke達から助言も得ているが、彼らは友人であると同時にOrbaum Elective KingdomのDukeである。国政に関する相談を気軽に受けていい立場ではない。
そんなVandalieuにとってcivil officialではないがHero Preparatory Schoolの校長として昔からOrbaumのNobleとconnectionを持ち、-sama々な交渉を纏めtroubleを解決してきたMeorilithは、必要な存在なのである。
「ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします、sensei」
「いやだから、senseiと呼ぶのはやめてくれ」
その-sama子を見て、ほっと胸をなでおろすNoble達。本来、政治の知識に欠ける者は彼らにとっては良いカモ……騙して利用するなり、助言して貸しを作るなり、色々する事ができる。
しかし、それが自国の軍事力を圧倒的に上回る強国の支配者なら話が別だ。
慣習をあまりにも知らないために、予期せぬtroubleが起こりかねない。そして、troubleが致命的な事態……戦争にでもdevelopmentしたら終わりだ。
Vandalieuが寛大だろうが、DarciaがVida’s Incarnationだろうが、そうなる事を心配せずにはいられないのだ。
さらに、Noble達はMeorilithがこの場でもう一つの役割を果たしてくれることを期待している。
「しっかりした良い女だな。あんな良い女を放っておくたぁ、本当に枯れたんじゃねぇか、senpai -samaよ」
「お前のような万年発情期で女たらしのクソガキと違って、俺も彼女も大人なんだ」
怒気がぶつかり合い、ギシギシとspaceが歪んでいるような錯覚を周囲に覚えさせながら、二人の男が睨み合っていた。
「誰がクソガキだ、こちとらあと十年もせず七十だ。Humanの年の取り方がElfと違うってことを忘れちまったか? それに俺は女を垂らした覚えはない! しっかり囲ってるだろうが!」
「いい加減現実を直視しろ、貴-samaのようなHumanの年寄りがいるか。それとも若いのはlower bodyだけで、頭の中は色ボケに染まり切ったのか? それと他人の色恋に口出しするな、野菜でも齧っていろ」
まるでチンピラのいがみ合いだが、それをしているのはAmid Empire出身のSClass adventurer『Thunderclap』のSchneider。そしてOrbaum Elective KingdomのSClass adventurer、『True』RandolphだったのでNoble達は誰も止める事ができなかった。
Randolphはまだ良い。大Nobleはconnectionを持っているし、癇癪を起こして暴れるような人物ではないと誰もが知っている。
しかし、Schneiderは違う。Orbaum Elective KingdomのNoble達は彼と会うのは初めてだし、噂では激怒してNobleを真っ昼間の大通りで撲殺し、それ以後もムカつく者はNobleだろうが何だろうが胸倉をつかみ上げて空に向かって投げ飛ばすという傍若無人さで知られている。そして、その噂は根も葉もないわけではなく厳然たる事実に基づいている。
そんな危険人物を制止する覚悟は、まだOrbaum Elective KingdomのNoble達にはなかった。静かに二人からできるだけ距離を取り、嵐が過ぎ去るのを待っていたが中々終わらない。
originally敵国を代表するSClass adventurer同士、浅くない因縁があるのだろう。
実際、Mirg Shield NationとSauron Duchyの間に数日前まで存在した国境沿いや、その内外でお互いに受けた依頼で間接的に衝突している。
安全圏まで護衛するはずだった亡命希望者を捕獲されたり、護送するはずだった戦争捕虜を依頼開始前に救出されたり。
直接対決した事がないので、お互いに「やられた!」という悔しさが燻ぶっていたのだろう。しかし、だからと言ってSchneiderが名実ともにAmid側から抜けた今になって直接対決されては堪らない。
だからどうにかしてくれと、Schneiderをこの会議に出席させた人物……Vandalieuに視線で頼むが、彼は目配せに気が付かなかった。
「二人とも仲が良いのは分かりますが、もうすぐ会議が始まるので少し静かにしましょう」
そして、VandalieuはRandolphとSchneiderの口論を深刻に見ていなかった。何故なら、睨み合う二人からbloodthirstが全く感じられないからだ。
そのため、Vandalieuは二人のにらみ合いをただの口喧嘩と解釈してのほほんとしていた。
「Randolph、彼を子ども扱いするなら大人気ない姿を見せるな。私は仕事中なんだ、手間を掛けさせないでくれ」
「Schneider、自分を年寄りだって言うなら、少しは落ち着きってものを身に着けてちょうだい」
そこでMeorilithとLissanaの出番である。MeorilithがRandolphを、そしてLissanaがSchneiderをそれぞれ止めると、二人は顔をしかめて顔を逸らすと口論を中断した。
「では、出席希望者も集まったようなので、Vidal Magic EmpireとOrbaum Elective Kingdomの合同会議を始めてもらえるか?」
『そうしましょう。では、これより会議を執り行います』
その間に、SchneiderとRandolphの怒気に当てられて会議室に入ってくることができなかった者達が席に着いたため、Corbit Elected KingとChezareはこれ以上troubleが起きないうちにと会議を始める。
とはいっても、実はこれは普通の会議ではない。何故なら会議の趣旨はVandalieu達を含めたVidal Magic Empireへの質問と提案だからだ。
……本来ならAlda Sacred EmpireやDuke Farzon領に対する対策を話し合うべきなのだろうが、Mountain Rangeで遮られた敵国や敵対的だが今のところ鎖国conditionのまま閉じこもっている自国のDuchyよりも、Vidal Magic Empireとの関係を深めるべきだというのが、Orbaum Elective Kingdomの主だったNobleの認識であった。
「最初に俺から発表する事がいくつかあります。新しいMountain RangeはArk Mountain Rangeと命名しました。Elizabeth Sauron Dukeと協力し、Mountain Range沿いに都市の開発とtempleの建立を行う予定です」
Vandalieuの発表を聞いた他のDukeやその名代達の羨むような視線が、緊張した-sama子で座っているElizabethに集中する。
これまでSauron Duchyは敵国と唯一国境を接している土地……敵国へ向けられた鉾であり、盾だった。しかし、これからは超大国であるVidal Magic EmpireとOrbaum Elective Kingdomとの出入り口……貿易の中継点となるのだ。
その利益は計り知れない。
「次に、我が国と貴国の大使館の設置ですが、ある条件を満たしてくれれば認めます」
「ま、誠ですか!?」
「おおっ! 条件とはいったい!?」
浮足立つDukeとその名代達。大使館の設置は、信頼関係の構築と同時に情報収集のための公的な拠点ができる事を意味する。
そこで得られた情報は、突然現れたVidal Magic Empireとの付き合い方を考えるのに必要不可欠だ。
しかし、浮足立った者達はVandalieuが告げた条件の内容を聞いて二の足を踏んだ。
「もしAmid Sacred Empire、そしてDuke Farzon領が、我が国と戦争になった場合、我が国の同盟国として参加する事です」
それはDuke Farzon領……ほんの数か月前まで自Duchyで活躍していた精鋭や腕利きのadventurerと、戦争で戦うという意思確認だった。
すかさずKnochenのFissionが書類を配る。そこにDukeの名でsignし、Duke 家の紋章が彫られた判を押せば正式な書類となる。
magicやCurseで縛られるわけではないが、この誓いを反故にする事は決定的な裏切りであり……Vidal Magic Empire相手にやっていい事ではない。
「こ、この場での返答は――」
当然のように名代達は「この件は持ち帰って検討します」と返事しようとする。しかし、それを遮るように、鈍い音が四つ響いた。
「これでいいかね?」
「signしたわよ、確認してっ」
「あー、そこのKnochen -san、持って行ってくれ」
「やれやれ」
Hadros、Elizabeth、Birgit Duke、そしてTakkardが躊躇わずsignをして判を押したのだ。
それを見た瞬間、他のDukeや名代達はしてやられたとIntuitionした。
通常、top同士が顔を合わせて行う会談で話し合う内容は、始まる前にある程度決まっている。事前にcivil officialや外交員同士が繰り返し話し合い、検討しているからだ。
だから今回のような場合は、通常なら事前に根回しをしておくのだ。
そのため、これは通常の事態ではない。Vandalieu……Vidal Magic Empireは各DuchyにAllegiance testを迫ったのである。土壇場でAlda側に寝返られないように。
(この場で全てのDukeが返事をできないのは織り込み済み。最初から一度持ち帰らせて、返事を迫るつもりだったが……Birgit Dukeまでこの場で返事をするとは思わなかった。もしや、予想していたのか?)
そう発案者であるTakkardは思っていた。
「ま、待ってくれっ、今、判を押すっ!」
「慌てなくていいですよ。返事はこの場でなくても、会議が終わってからでも構いません。もちろん、戦争になる前には出してもらわないと困りますが」
「いいやっ! 今受け取ってくれ!」
「Corbit Duke 家も約束する。これが証拠だ!」
Lucas Hartner DukeとCorbit Elected Kingが慌てて書類に判を押している。彼を合わせて書類を提出したのは六Duke 家。他のDuke 家も、すぐに書類を提出する事になるだろう。
これでAllegiance testは踏まれた。
「では、俺からは最後になりますが……宗派の名称をVida FundamentalismからVida信仰に改めます」
「それは、普通のVida believerになるという事ですか?」
「いいえ、名称を変えるだけです。主義主張は、一切変えるつもりはありません」
VandalieuはVida Fundamentalismを掲げていたが、それはVandalieuがFundamentalism者だからではない。単に、Reconciliation Factionとか共存派などと名乗ると、Heinzが掲げるAlda Reconciliation Factionと似てしまうからだ。
似たようなnameだから似たような趣旨の信仰だろうとか、そんな風に思われては堪らない。
しかし、もうHeinzはAmid Sacred Empireへ戻った後だ。Alda Reconciliation FactionはDuke Farzon領以外では、急速に存在感を失いつつある。
それに、もう自分達の力を示した後だ。なら、自分達こそ正当なVida believerであると主張するのに遠慮もなにもいらないだろう。
Vandalieu達Boundary Mountain Rangeの内側でのVida信仰こそ正当なものであるという、Human社会のVida believerにとってはarroganceに思える言葉だった。しかし……
「私達の主張はStageで説明した通りですから、よろしくお願いしますね」
そう微笑みながら言う『Vida’s Incarnation』であるDarciaがVandalieuのすぐ後ろにいる。Vidaを体に降ろす事ができる彼女がいる宗派に対して、「自分達の方が正しい」と言えるVida believerはいないだろう。
こうしてnameだけだったVida Fundamentalismは解散したのだった。
●Monster explanation::Hell's Divine EmperorのSkeleton Knight Luciliano著
Rank15に至ったBone Manのrace。appearanceは普通のSkeletonとそう変わらないが、そのboneの硬さと柔軟さはOrichalcumを上回っている。
Hell's Divine Emperorを師Artisanとするなら、今のBone Manは師ArtisanのHeroic spiritと呼べる存在になっているらしい。
通常のUndeadという枠からはみ出した事を証明するようにLight Attributeの対Undead用攻撃magicが以前よりも効きにくくなっている。
そのため、accurateに分類するならBodyがある事も考慮してUndead系Demi-God族、もしくはDemi-God族系亜Undeadと評するべきかもしれない。
とはいえ、まだBone Man一人なので分類名を決めるのは時期尚早だろう。今後Bone Manと同-samaの存在が現れるだろうから、それを待ってからでも遅くはない。