Mountain Rangeを三日かけて動かし終わったVandalieuは、その後も微調整を続けた。
「Boundary Mountain Rangeと違って、Ark Mountain Rangeの上空はDemon's Skyじゃないので、空を飛ぶ相手には無防備ですからね」
Demon's Skyとは、miasmaによってDevil Nestsと化した空の事だ。Demon's Skyでは地面のように歩く事ができる雲があったり、空気中に漂う塵が固まってできた島が浮かんでいたり、大気が全て有毒ガスに変わっていたり、環境の変化が著しい。
汚染がさらに深刻になると重力が働く向きがぐちゃぐちゃになる場合や、spaceが歪んで壁のない迷宮と化す場合など、足を踏み入れるだけでも危険なDevil Nestsになる。
発生するmonstersも地上のDevil Nestsとは違い、鳥型のmonstersやWyvernなどの竜種、Ground GIANT等のgiant、そしてガス等の気体の体を持つstalkerや、monsters化した雲であるギズモ、underwaterではなくmidairを漂うクラゲのようなmonstersに、そしてFlight可能なmonstersのSkeletonやZombieなどのUndead。
そしてmonsters達は多くの場合Demon's Skyの環境を熟知し、適応している。少し動いただけで重力が働く向きが下から上、右から左に変わる空を自在に舞うmonstersが襲い掛かってくるのだ。adventurerにとっては、危険極まりない。
さらに述べるなら、そもそも上空数千meter……低くても雲が浮かんでいる二千meter程の高さに存在するため、Demon's Skyに到達すること自体が困難だ。そのため、挑戦できるadventurerの数は少なく、Adventurer’s Guildが持つDemon's Skyに関する情報はさらに少ない。
それでもこのworldの空がDemon's Skyで覆われずに済んでいるのは、miasmaがmidairに留まるのはunderwater以上に難しく、Demon's Skyが発生し辛いからだ。
Demon continentやDemon KingのContinentのように地上がどうしようもないほどmiasmaに汚染されていて、miasmaの逃げ場が上空以外にない広大な土地。もしくは、Boundary Mountain Rangeのように雲に届くほどのDevil Nests化した高山が連なるMountain Rangeの上空。それ以外の空は、まずDemon's Skyにはならないはずだ。
そして、空は地上から離れているうえにmonstersが空に適応しすぎているために、runawayしても地上に被害が及ぶことは少ない。そのため、各国も多額の資金と研究機関を費やして無理やり討伐や探索のための部隊を空に送り込むことはなく、挑戦するのは名声やAdventureを求める命知らずのadventurerが少数だけという状況がHuman社会では何万年も続いている。
Demon continentでは『Giant of the Moon』Dianaが、地上よりは食料が調達しやすいからという理由で有志を連れて狩りをしている。
『Demon's SkyもMountain Rangeについて動いてくれれば楽でしたな』
Samの言うように、Ark Mountain RangeとなったBoundary Mountain Rangeの一部の上空のDemon's Skyは、今も同じ位置に存在している。Mountain Rangeと大気は一体ではないから仕方がない。
「でも、Demon's SkyがあってもVandalieuが警戒している『Five-colored blades』や『Fifteen Evil-Breaking Swords』なんかには、障害にもならないなんてことはないの?」
Katiaと交代してきたBildeにそう尋ねられたVandalieuは、「まあ、確かにそうかもしれません」と答えた。
「Demon's Skyがいくら普通のadventurerにとって攻略の難易度が高いとしても、AClass adventurer相当の者達にとってはたどり着く手段さえあれば通り過ぎるのは難しくないでしょう」
Demon's Skyでも発生するmonstersのRankは高くて10程度。それぐらいなら、Heinzや『Fifteen Evil-Breaking Swords』ならあっさり倒してしまうだろう。
「しかし、それが狙いです。monstersがHeinzや『Fifteen Evil-Breaking Swords』に倒されて霊になれば、その霊が俺に奴らの接近を知らせてくれます」
VandalieuはDemon King FamiliarなどのCloneを配置するなどして、Boundary Mountain Rangeで霊が発生すればすぐ彼に導かれる体制を構築している。そして、既にそれと同じ事をこのArk Mountain Rangeでも可能にしていた。
つまり、monsters自体が警報装置なのである。Heinz達でも、monstersを一匹も倒さずMountain Rangeを抜けるのは不可能なはずだ。
そして、上空はDemon's Skyが無いのでDemon's Skyの代わりにDemon King Familiarを浮遊させ、さらにmonstersの霊から作ったGhost等を大量に放ってある。
なお、【Demon King's Demon Eye】などでArk Mountain Range上空をDemon's Sky化させるのは、時間がかかる事が分かったので断念した。
「じゃあ、Mountain Range自体を破壊して攻め込んできた場合は?」
「Mountain Rangeを破壊するような派手な事をしたら、それ自体が警報代わりになります。……そもそも、Mountain Range自体をGolemにしていますし、Mountain Rangeを割るなり砕くなり大穴を開けるなりすれば、結局Mountain Rangeに生息しているmonstersを大量に殺すことになるので、必ず気が付きます」
Heinz達や『Fifteen Evil-Breaking Swords』の中でも上位の実力を持つ者達なら、山を破壊する事ができるだろう。しかし、それは軽々と山を破壊できるという訳ではない。【Familiar Spirit Advent】や【-Surpass Limits-】などのskillを使用して、それなりのEnduranceとManaを消費してやっと山を破壊する事ができるのだ。
Mountain RangeをGolem Transformationしているので、そうした準備をしている段階で必ず察知する事ができる。
「そして、【Teleportation】などでspaceを越えて侵入する場合はGufadgarnがいます。彼女以上のspace attributeのmagicの使い手は、人では存在しません」
「必ずや、偉大なるVandalieuの期待に応えて見せましょう」
そして【Teleportation】等の方法で攻め込んでくる場合でも、『Evil God of Labyrinths』であるGufadgarnの目を掻い潜る事が難しい。少なくとも、Aldaに与するGodsには彼女以上のspace attributeの神は存在しない。
「それじゃあ大丈夫なの?」
「ええ、大丈夫ですよ、Pauvina。とはいえ、それほど奇襲からの大攻勢を警戒してはいませんが」
Vandalieuの言葉に、前世ではKnightの一隊を率いていたJulianaが食いついた。
「それは何故ですか? 相手は名を変えてもAmid Empireです。油断は禁物であると考えます」
前世ではAlcrem Duke 家の末Imoutoだった彼女は、高度な教育を受けているため自国と敵国の戦争の歴史を知っている。
しかし、今はJulianaが学んだ歴史とは状況が異なり過ぎている。
「何故かというと、Amid Sacred Empireの狙いは俺の命だからです。武功でも領土でも財宝でも捕虜を得て身代金をdemandする事でもありません」
それは、今のAmidを動かしているのは人ではなく『God of Law and Life』Aldaだからだ。
神であるAldaは、人と違ってHuman同士の政治や利害関係、戦争の結果自国が負う損耗と、得る利益を秤にかける事もないはずだ。
「もちろん、Amid Sacred EmpireのHuman達はそれらも狙うでしょうし、Aldaとしても俺が治めるMagic Empireや今のOrbaum Elective Kingdomは邪魔でしょうから、攻撃目標ではあるでしょう。
でも、俺を殺せなければAldaにとっては勝利にならないはずです」
そんなAmid Sacred Empireが動く目的は、Vandalieuを殺すためだ。そのため、奇襲でVandalieuに察知される前にVidal Magic Empireに大きな被害を与える事を狙うとは考えにくい。
それでVandalieu側の戦力を削る事はできるが、決定打にはならない。それに、Vandalieuと戦う前に消耗してしまう。
『Five-colored blades』や『Fifteen Evil-Breaking Swords』のmemberなら山を割る事はできるが、彼らのEnduranceや気力、そしてManaは有限だ。VandalieuのManaのように早く回復する手段もない。
そんな消耗したconditionで、本来の目的であるVandalieu抹殺に挑戦するのは彼らも避けたいはずだ。
とはいえ、絶対やらないとも思えない。Alda's Faction……というより、Amid Sacred Empireには、あまり時間がないはずだからだ。
しかし、対策は-chanと練ってある。その一つとして、Talosheim以外のBoundary Mountain Rangeの国々、High Goblin nationやHigh Kobold nationのWarrior達にblessingsを与え、さらに【Familiar Spirit Demonic Advent】skillを習得してもらっている。
こうする事で、もし前触れもなくAmid Sacred Empireの襲撃を受けたとしても、Warrior達の一人でも【Familiar Spirit Demonic Advent】をActivateする事に成功すれば、何かあった事がVandalieuに伝わる。それに、防衛戦力自体も高くなる。
既に各国にDemon King Familiarを配置しているので、情報伝達の手段としてはそれほど重要ではないのだが。
「では他の質問なのですが……何故Bilde -sanのbloodは吸って、私達のbloodは吸ってもらえないのですか!?」
「そうだよ、Van。Rowen -sanだって色々覚悟してきたのに」
「いえ、私の事は気にしないでください」
Samのcarriageの中には、Bilde以外にもPauvinaとJuliana、それに何故かRyuujin nationの女Swordsman、Rowenもいた。
しかし、VandalieuはBildeのbloodしか吸っていない。それは実のImouto同然のPauvinaや、そのImouto同然のJuliana、そして面識はあっても友人以上の関係ではないRowenのbloodを吸うのは憚られたから、ではない。
「それは単にManaがほとんど減っていないからです。今しているのは微調整だけなので」
ただ必要かどうかの問題だった。大きな作業はBildeのbloodを吸い終わった直後に終わったので、Juliana達のbloodを吸う理由がなくなったのである。
実の母であるDarciaのbloodも吸うVandalieuには、そうした躊躇いは存在しない。
なお、退治したmountain banditのbloodもスナック感覚で吸うが、Vandalieuの中ではあれはJuliana達とは別のカテゴリーに分けられている。
「必要性はどうでも良いからついでに吸ってよ、Van。VanがManaを回復させるためにbloodを吸う機会を待ってたら、次が何年後になるか分からないし」
「私達の体の事を心配しているのなら、それは無用です! 私達の体はもう大人です!」
そう豊かな膨らみを振るわせて胸を張るJulianaに合わせて、Pauvinaも同じポーズをとる。
「それは見ればわかります。二人の成長を心から嬉しく思います」
ラフな格好の二人を見上げてVandalieuは、しみじみと頷いた。Talosheimに来た時はまだ生まれていなかったPauvinaに、約二年前にreincarnationしたばかりのJuliana。
Pauvinaは生まれてから四ヶ月でVandalieuより大きくなったし、Julianaもみるみる大きくなっていった。そして今はHumanと同じSizeだったら十五ageほどに見える身長約三meterの巨Shoujoと、身長約二meterのShoujoとなっている。
彼女達よりVandalieuの方が年上だと聞いても、事情を知らない者は信じないだろう。
「それにRowen -sanがこのままじゃ……」
「いいえ、本当に気にしないでください。国のElder達は、帰った後もう一度殴り倒してきますので」
そしてRyuujin nationのElder達が『我が国からもVandalieu -donoの傍に誰か派遣しなくてはならん!』と奮起した結果送り込まれてきたRowenは、そう言って拳を握った。
どうやら、送り込まれる前に一度殴り倒してきているらしい。
Pauvina達の説得を受けたVandalieuは頷きながらtongueを伸ばしつつ、言った。
「それもそうですね。【Bloodrule】のskillのlevel上げにもなりますし。では、順番に――」
tongueが枝分かれして、先端が注射needleのようなproboscis……蝶の口と同じような器官に変化する。
「え、ちょっと待ってください! 私は別に――あぁっ!」
そんな声を聞きながらBildeは呟いた。
「今日はレバニラ炒めかな?」
赤飯よりも鉄分が求められる初体験である。
その頃、Mirg Shield Nationでは、Ark Mountain Rangeと名付けられた部分から溢れ出したmonstersの群れの討伐を村や町に到達する前までに何とか成功し、差し迫った危機をやり過ごしていた。
国境近くの村や町で暮らす民はmonsters討伐の報せに喜び、離れた場所で暮らす民は安堵していた。それはMirg Shield Nationの上層部も同じだ。だが、理由が異なる。
それは、monstersの討伐に成功したのはAmid Sacred Empireから来た援軍によるものだったからだ。
Mirg Shield Nationの城砦や砦は堅牢で、精強な守備兵とKnightが守っている。しかし、想定している敵はOrbaum Elective Kingdom軍であって、Boundary Mountain Rangeのmonstersではない。
だが、それでもRank5や6、7のmonstersであったならKnightと守備兵達はmonstersに負けなかっただろう。Knightにもmonstersとの戦闘経験はある。
Alcrem Duchyで乗りこなしやすい品種であるLesser Wyvernが開発されたことで増えた竜Knightに備えるために、Wyvernを駆る竜Knightも詰めている。
だが、Rank10のストームDragonが動くMountain Rangeからこちら側に逃げて来るのは想定外だった。
多くの竜種で弱点になるはずの腹でさえObsidian Ironより硬いscaleに覆われ、掠っただけでWyvernを木の葉のように翻弄する嵐のBreathを吐く竜種の中でも最強classとされる存在。
そんなストームDragon相手にdespair的な防衛戦をしていた城砦に駆けつけたのが、Amid Sacred EmpireからやってきたHero達だ。
神's Divine Protectionを得ている彼らは、手練れの竜Knightですら手も足も出なかったストームDragonを瞬く間に倒し、他のmonstersも同-samaに掃討した。
おかげで砦や城塞の被害は抑えられ、街や村が壊滅する事は避けられた。
だが同時に、Amid Sacred Empireが保有する戦力の大きさを思い知らされたのだ。もしAmid Sacred Empireに弓を引けば、自分達が手も足も出なかったmonstersを容易く倒せるHero達を相手にしなければならないと。
そう、Mirg Shield Nationの上層部を形成する者達の何割かが、Amid Sacred Empireが近々Decayすると予想して、宗主国からの独立を企てていたのだ。
originallyはMirg Shield Nation内部では独立を考える者達は少数派だった。しかし、それは宗主国が盤石な支配体制を築いていたAmid Empireだったからの話だ。
だが上層部の残りは、今独立を企めば仮に成功してもAmid Sacred Empireと共倒れになると考えていた。
なにせ、Mirg Shield Nationは他の属国と違い、Orbaum Elective Kingdomと国境を接しているのだ。独立したからといって、Orbaum Elective Kingdomが今までの遺恨を忘れてくれるとは思えない。
かといって、Mirg Shield NationだけでOrbaum Elective Kingdomに勝てるとは思えない。なら、今まで通り宗主国の援助を受けながらOrbaumと戦うしかない。そう上層部は考えていたのだが……しかし、気が付けばその思惑も大きな軌道修正をしなければならなくなった。
Mirg Shield Nationは、Orbaum Elective Kingdomに対する盾である。それはAmid EmpireがSacred Empireとnameを変えても変わらないはずだった。Orbaum Elective Kingdomを占領し、国是である Bahn Gaia continent統一を成し遂げるその日まで。
だが、その未来はMountain Rangeが動くという驚天動地の出来事によって脆くも閉ざされてしまった。
これで独立派が不満を訴える根拠の一つ、「宗主国の都合のいい盾にされ、美味しいところは持っていかれる」が解決した。何故なら、Mountain Rangeが再び動かない限りMirg Shield Nationは敵国への盾として機能しないからだ。
だが、同時に属国としての存在意義を失ってしまった。いや、そもそもこの状況でOrbaum Elective Kingdomとの戦争は継続可能なのか? 城砦や砦の維持費は? 今からFarming国への転換を迫られるのか? それとも国家 Dismantlingか?
そうした疑問は尽きないが、Hero達によると宗主国であるSacred EmpireはMirg Shield Nationに何かを迫るつもりはないそうだ。代わりに信仰を促してきた。
それはそれでAmid Sacred Empireの先行きが心配になったが、Mirg Shield Nationの上層部はとりあえず-sama子を見る事にした。
あまりにも短期間に情勢が変わり過ぎた。恭順か独立か、どちらに舵を切るべきか決断を下す事に危惧を覚えたのだ。
「なにより、動くMountain Rangeの上空にいたという異形の龍とGiantなCentipede……それを従えるVidal Magic Empire Emperorとやらから、我が国を守るためだ」
Mirg Shield Nation国王はそう言ったという。
もちろん、彼等はAmid Sacred Empireと手を切ってVidal Magic Empireに降伏すればVandalieuと戦わずに済むとは考えていない。
Orbaum Elective Kingdom……特にSauron Duchyと深い遺恨があり、二百年前Talosheimに攻め込み、滅ぼした経緯がMirg Shield Nationにはあるためだ。
それに、近年では第二次Talosheim侵攻を行ってしまった。宗主国の意向であった事からMirg Shield Nationの立場では逆らう事が出来ない戦争だったが、当時の上層部も乗り気だった事は否定できない。さらに、Vidal Magic EmpireのEmperorが当時存在を囁かれていたGhoulを連れてTalosheimに逃げ込んだDhampirである事を、上層部は薄々察している。
侵攻tacticsから生還した者がいないので、彼らの手元に確かな情報はない。しかし、彼らにとっての最悪の事態を想像するのを止める事は出来なかった。
自分達がVidal Magic Empire EmperorやSauron Dukeの立場なら、絶対にその遺恨を忘れない。降伏は認められないか、蹂躙されるよりも酷い条件を迫られるに決まっている。
そう考えているからである。自分の物差しで物事を測る、Humanらしい考え方だった。
そしてそんなMirg Shield Nation上層部は、自国の将兵やadventurerの中でも優秀な者達が次々に神's Divine Protectionを得て祖国ではなくAmid Sacred EmpireにLoyaltyを誓っている事に、気が付いていなかった。
Divine Realmでは、Rodcorteが新たなHero Candidate達に次々にblessingsを与えていた。
『そうだ。貴-samaは言われた事だけをしていれば、それでいい』
その横には、杭を持ったAldaが佇んでいる。彼は戦力Augmented (2)のため、Rodcorteに大量に刺した杭を一部引き抜き最低限動くことができるようになった彼に、blessingsを与えるよう命じたのだ。
従わなければ、また杭を刺すと脅して。
『くっ、ま――』
『発声する事を許可した覚えはない』
何かを訴えようとしたRodcorteの額に、Aldaが杭の先端をthrust刺す。
『―――っ!!??』
Rodcorteが断末魔染みた叫び声を轟かせるが、Aldaは構わず杭をぐりぐりと動かして彼の額をえぐり続ける。
『またこの私を騙し、良からぬことを企んでいるのだろうがそうはさせん。貴-samaに許されているのは、私の言葉を聞き従う事のみだ。他は何もするな、何も言うな。私はもう騙されない』
AldaはRodcorteに発言させるつもりはなかった。それが媚びだろうが罵倒だろうが、なんであったとしても。
何もさせなければ、騙される事も陰謀を企まれる事もないからだ。
(Duke Farzon領にある我がDungeonの最下層、Divine Realmへの扉は閉じた。Vandalieuに間違ってもDivine Realmに侵入される事はない。
だがAmid Sacred Empire側にGodsのTrial's Dungeonをいくつか降ろさせるべきか。いくらblessingsを与えて伸び代を増しても、伸びるための経験が積めないのでは意味がない)
AldaはRodcorteのFamiliar Spirit達が独自に動いている事に気が付かないまま、彼にしか見えない理想のworldへ続く道を歩み続けていた。
Ark Mountain Rangeの微調整が終わったVandalieuは、次にElizabethの戴冠式に出席していた。
各種templeやhot spring都市の建設などは、Sauron Duchyの政策だ。Vandalieuは(表向きは)援助するだけなので、ElizabethがDukeにならなければ始まらないのだ。
「エリ-chan、あんなに立派になって……あなた、見てる?」
「見ていますよ、この目でばっちりと」
『右からも見ています』
『左からもしっかりと』
『天井からもです』
Sauron DuchyのChurch of Vida長が辞退したため、ElizabethはDarciaに誓いの言葉を述べ彼女から王冠を受け取った。
その-sama子を、涙ぐんでみているAmeliaと、彼女の横とVenueの左右と天井から見つめている複数のVandalieu。もちろん、Ameliaの横以外にいるVandalieuはDemon King Familiarである。
後でElizabethとDarciaの晴れ舞台である戴冠式の-sama子を上映するため、それぞれ異なる角度から見てrecordしているのだ。
「【Goddess Advent】」
小さくつぶやいたDarciaの意志に応えて、Vidaが光の柱となって彼女にAdventする。それだけでVida believerの多い出席者やVenueの外に集まっている民からは感嘆の声があがる。
『ここに、『Goddess of Life and Love』の名において新たなSauron Dukeの誕生を宣言し、祝福します』
Vidaを体にAdventさせたまま、Darciaはそう宣言すると、Elizabethの額に軽く口づけをする。すると、Elizabethのwhole bodyが淡く輝きだした。
「あ、ありがとうございます!」
これによってElizabethはなんと、Great Godに祝福されたDukeとなったのだ。Sauron Duchyの民の間ではあまり知られていなかった彼女だが、これで民の支持を一気に得る事が出来ただろう。
『お姉-chan、おめでとう』
『ギシャァア! ギシャアアアアアアア!』
その中でもっとも大きいのは、やはりBakunawaとPeteの歓声だった。街の建物のすぐ上を浮遊するように飛んでいる二人の存在が、Nobleや民の中にいるElizabethを快く思わない者達にこれでもかとプレッシャーをかける。
『えりざべす・さうろん-sama、Banzai!』
『Banzai! えりざべす-sama、Banzai!』
『永劫ノLoyaltyヲ捧ゲル事ヲ、偉大ナルヴぁんだるー-samaノ名二カケテ誓イマス!』
そしてVenueの外でElizabethを称えるUndeadの群れも、異-samaな存在感を放っていた。
先頭に居るのは、首が奇妙に傾いている仮面を被ったZombie……処刑された後Undead TransformationさせられたUrgen・Telkatanis。その後ろに続くのは、VandalieuがこれまでOrbaum Elective Kingdomで潰してきた悪人達から創ったZombieやSkeleton達だ。
mountain banditやチンピラならともかく、犯罪organizationとなると経理や事務仕事担当の構成員がいる。そうした者達をUndead Transformationさせて、研修を施してUndead civil officialとしたのである。
彼らはVandalieuから、「俺の命令よりElizabeth -samaを優先しなさい」という難題に応える事ができた、Elite Undead civil officialである。
Elizabethの命令なら、blood涙を流しEmotional苦痛に苛まれながらもCreatorであるVandalieuに逆らう事ができるよう調整されている。
……ここまでしないと、Undead達がVandalieuの意向を勝手に汲んで内政干渉をしてしまう危険性があるのだ。
ただ、ここまでできれば絶対に裏切らず、情報を漏らさず、汚職にも手を染めない不眠不休で働けるcivil officialになるので有用だが。
そして、Undead civil official達の存在は「裏切ればああなる」という警告になる。ElizabethをDukeとしては幼いと甘く見て汚職に手を出そうと考えていた者は、震えあがる事だろう。
こうしてElizabethのSauron Duchyの治世は、ほぼ盤石と言っていいconditionからスタートしたのだった。