『人権』と大きく書かれた紙を前に、男は思わず涙ぐんだ。
(人権……思えば、俺の人生はこの人権とやらに振り回された人生だったな)
男は貧しい生まれで、人としての権利なんて誰も……親brothersすら認めてくれなかった。生きたい、生物として当たり前なその願いを叶えるために、盗み、奪い、騙してきた。
そして男は、気が付けば犯罪organizationの一員として働くようになっていた。世の中には真面目な生き方をしているHumanがいる事は知っていたが、自分には関係のない話だと見向きもせずに男は他人の人権を蔑ろにし続けた。
その結果、気が付けば生け捕りにされてGuardの詰め所ではなく、ここ……Vandalieuの工房に連れてこられていた。
男はnameではなく割り当てられた番号で呼ばれ、実験動物として扱われた。待っていたのは縛り首や鉱山で死ぬまで重労働等ではなく、三食の精のつく食事や怪しげな薬を与えられての強制harem lifeだった。
八人の女が相手役に男を選んだため、男は彼女たちの相手を昼nightの区別なく励むことになった。
主に女達のために、男が監禁されているroomは広くて調度品も整えられており、寝台はGiant raceの夫婦が両手足を広げて楽に寝られるほど広くてフカフカ。
そこで男は抵抗しようが、情けないscreechをあげて懇願しようが、関係なく搾り取られ続けた。
男の待遇は、とても実験動物扱いされている人物のものとは思えないかもしれない。男の知り合いのチンピラ達も、「そんな牢屋があるなら一生入っていたいぐらいだ」と言うだろう。
しかし、搾り取る女達が全員Undeadであることを知ったら慌てて前言を翻すに違いない。
実際、男も最初は性的にではなく食物的な意味で食われる実験かと思った。それに、Undead……Zombie相手にそんな事をするなんて、正気なら……やや狂っていても考えられない事だ。
しかし、実験を主導しているLucilianoは男達の常識や貞操観念に等興味はなく、何度「無理だ!」と訴えても、「分かった、薬を処方しよう」とVigor剤を男の意志とは関係なく飲ませたり吸引させたり注射したりするだけだった。
一部のTamerはTamerしたOrcやOgre等をBreedingさせるために、女の犯罪Slaveを利用する事があると男は聞いていたが、自分がその立場になったのかとdespairした。
いや、相手がUndeadなのだからBreeding……childができるはずがない。自分は縛り首や死ぬまで続く重労働に従事させられる代わりに、狂ったMageの意味もない実験に腹上死するまで使われる事になるのだと思った。
しかし、そう観念してしまえば楽なものだった。
horrorがマヒしてからよく見ると、Undead達は特に醜いわけではなかった。むしろ、容姿が整っている傾向にあった。
それに、特殊なmagicでDecompositionを止められているため死臭はしない。肌にbloodの気がなくてひんやりと冷たく、瞳に光が無くどろりと濁っている。それを除けば、生きている女と変わらないように思えてきた。
それから男は、Undead達に話しかけてみた。すると、男にとって意外なことにUndead達は普通に応えてくれた。会話が成立したのである。
それから、男はUndead達と積極的にcommunicationをとるようになった。最初は、彼女達を利用してfrom here逃げ出せるかもしれないという期待もあったように思う。
男は悪人で、同じ悪人やそうでない他人を騙し、奪い、食い物にして生きてきた事に何の罪悪感も抱いていない。その過去は男の人格に根付いていた。
そして、Undead達のnameを聞き出し、Undead Transformationしてからの事、なぜ自分を相手に選んだのか、趣味などを聞き出していった。そのために男自身の事も話していた。
気が付くと男はUndead達を、『Undead達』ではなく『彼女達』と認識していた。
それからの生活は一変した。彼女達に勧められて座学で知識を学び、職業訓練を受けた。食事もDemonが持ってくるものから、彼女達の手Cookingになった。
そして驚くべきことに、彼女達の体内に命が宿ったのだ。……それに気がついたのは、彼女達の腹が目に見えて大きく膨らんでからだが。
Undeadが子を身籠る。男にとって信じられない奇跡だったが、身籠ること自体は研究を主導するLucilianoにとって予想通りだったらしい。
男は知らなかったが、VandalieuやLegionのIsisによってlife goldやspirit silverを体内に仕込まれたUndeadが生者との生殖活動によって妊娠出産できるのは動物実験で確認されていた。
男がモルモットにされた実験では、人との子がどう生まれてくるのか、そして-chanと成長する事ができるのか確かめるための物だった。
そして、男と彼女達のchild達が生まれると、LucilianoやVandalieu、そしてLegionのIsis達が一人ずつ入念に検査し、調べつくした。生者と不死者の混blood児だ。-chanと成長できるのかは、重要な問題である。
そうして調べている間に男のharemにGhostのfemaleが加わり、Ghostとのchildも生まれた。
実験の終了と、男達の卒業がLucilianoから言い渡されたのはその後だった。そして言葉では自分以外に実験体がいる事は聞かされていたが、実際には初めて会った同類達と共に工房の広間に集められて卒業式が行われる事になった。
「-kun達はこうして態々集まって儀式をする事の意味に疑問を覚えているかもしれないが、これは師Artisanのpolicyでね。無駄に思える儀式にも意味があり、参加する者の意識に効果を及ぼしているそうだ。
だとするなら、再び人に戻る-kun達は犯罪者から実験動物に堕ちた過去と区切りをつけるのに、この式が必要なはずだ」
Lucilianoの言葉に男達は内心首をかしげたが、彼の師……これから暮らす国の支配者のpolicyに逆らっても意味はない。学が足りないから分からないだけだろうと、自分を納得させる。
「ああ、念のために言っておくが、書類の一番上にある『人権』と書かれた紙は記念品の代わりだ。それをなくしたり傷つけたりしても、-kun達が手に入れた人としての権利が失われるわけではないから安心してくれ」
人権についてそう説明するLuciliano。男達の事をidiotにしているかのようだが、そうでもない。この『Lambda』worldでは人権という概念はまだ一般的ではないからだ。
Royal Nobilityと平民では、まるで別の生き物のように権利が異なる。それが当たり前だと多くの人々が認識しているのがこのworldだ。
概念としては人権を知っていても、具体的に人権が何を保証しているのか知っている者はまずいない。
男達が人権について知っているのは、Vidal Magic Empireに来た後受けた座学のお陰である。
「ここで師Artisanから-kun達への言葉だが……-kun達に良き親である事を期待するとの事だ」
実験体だった男達は、捕まえた国で例外なく罪を犯していた者達だ。犯した罪や人格を考慮してそれなりに選んだが、犯罪者である事には変わりない。
そんな者達を、achievementに報いるためとはいえ自由の身にしてしまっていいのか? そう疑問を覚えるかもしれない。
しかし、Vidal Magic EmpireではUndead Transformationした後とはいえPure-breed VampireのTerneciaの配下だったIslaやChipuras等の例があるし……そもそもほぼ無実の罪によって落とされたとはいえ、Lucilianoも元犯罪Slaveである。
それに、実験の結果生まれたchild達から親を奪うわけにはいかない。
実験のために彼らをこの世に生み出した以上、生み出された後の彼らの生をより良いものにする義務があると、Vandalieuは考えていた。……実験体の男達が座学や職業訓練を経験できたのは、それが理由である。
実際、男達は変わっていた。過去は変わらないがその償いのため、そして生まれてくる我が子達に誇れる親であろうと前向きにこれからの人生と向き合っている。
その肝心なchild達だが、彼らは卒業式の保護者席に座っているfemaleのUndead達の腕の中で大人しくしていた。
(師Artisanは、とりあえずの仮称として『Necroborn』と名付けたが、これからどんな成長を遂げるのか)
実験の結果Undeadのfemaleたちが出産したNecrobornは、見かけはただの赤子に近い。親の特徴によって、耳が尖っていたり、lower bodyが蛇やoctopus、クモ等の形をしていたりするが、それぞれ該当するraceの赤子と変わりがないように見える。
ただ肌のcomplexionが悪く、瞳は白目部分も瞳と同じ色をしている。瞳が黒なら白目の部分も黒、青なら白目の部分も青一色になっている。
そして驚くべき点はNecrobornは鼓動のオンオフを意識的に行えるということだ。普段はheartを動かさず、必要な時にheartを動かし、高いbody part Abilityを発揮する。Necrobornにとってheartは、生命活動に必須な重要な臓器ではなく、いざという時に動かす補助動力のようなものなのだろう。
おそらく呼吸も同-samaだと思われるが、声を出すためには空気を震わせる必要があるので呼吸は普段からしているようだ。眠っている時は、呼吸を止めるようだが。
そしてJobとRankを持っており、levelとRankを上げる事で成長する。生まれた時のRankは、なんと0。GoblinやHorn Rabbit、そしてただのmouseから変異したImp Mouseですら1だというのに。Lucilianoの知識はもちろん、Adventurer’s GuildやMage guildに残された文献、そして元Demon King ArmyのEvil God (M) Evil God (P)のMemoryにもRank0のmonstersは、Life-Attribute Magicで人為的に創り出すLife-dead以外存在しなかったのにだ。
しかし、childは泣くのが仕事という言葉の通り、泣いたり笑ったり寝返りを打ったりしながらExperience Pointをため、生後一か月から三か月ほどでRank upしてRank1になる。
「ぱぱ~?」
「Mama、Papaは何してるの?」
そして、新生児から幼児へ成長する。彼らのRankが0だったことも、Statusを見た彼ら自身から聞き出して判明した事だ。
おそらく、Necrobornは年月ではなくlevelとRankを上げる事を積み重ねて成長していくraceなのだろう。どのように成長するのか、いつ成人に達するのか、まだ確かめていない事は多くLucilianoとしては興味が尽きない。しかし、成長する事が分かれば実験の成果としては十分。後はこれから何年でも何十年でも、時間をかけて調べていけばいい。
『Papaはお仕事の途中なの。もう少し待っていましょうね』
「は~い」
『う゛ぅぅぅ、あ゛ぁぁぁ……』
「Mama、よだれ、よだれ」
NecrobornにExperience Pointを稼がせて短期間でRank upを重ねさせることは可能だが、その結果Bodyだけが急成長した幼子ができてしまう。Necroborn達を急成長させなければ国が亡びるとか、急成長させなければAlda's Factionに勝てない、という緊急性を要する事情もないのだ。なら、やる必要はない。
一部、既に母親よりしっかりしている子もいるが。
「では、書類を受け取ったら-kun達の新しい住居に案内しよう」
こうして男達は実験動物を卒業し、Vidal Magic Empire民となったのだった。
一方、OrbaumのHero Preparatory Schoolでも卒業式が行われていた。
「諸-kun、卒業おめでとう。本当に、卒業おめでとう!」
壇上では、Meorilithが感極まった-sama子で繰り返し卒業生達に祝いの言葉を贈っている。彼女にとってはとても大事な事なのだろう。
「では、今期の主席卒業者を発表する! Elizabeth Sauron、以下五名、壇上へ!」
そしてMeorilithが主席卒業者として発表したのは、AlexとそのpartyではなくElizabeth達だった。Alex達も奮闘したが、Vandalieuによって鍛えられ経験を積んだElizabeth達の快進撃から逃げ切る事はできなかったのだ。
「悔しくないわけじゃないが、仕方ない」
「ああ、さすがに『Demon King Slayer』には勝ちようがない。Elizabeth達だって、前とは別人のようになった」
「そうね。もうVandalieu抜きのconditionで勝負しても、勝てないと思う」
追い抜かれたAlex達だったが、Elizabeth達はVandalieu頼りのpartyではない。Vandalieuを抜きにしても、今のAlex達ではElizabeth達に勝つことは難しいだろう。
そんなElizabeth達の成長と実力は、既にHero Preparatory Schoolの生徒達の間に広まっている。彼女達がVandalieuに頼り切っていたなら陰口の十や二十は囁かれていただろう。しかし、いま彼女達に向けられているのは羨望の眼差しである。
「Vandalieu、Pauvina -chan……うれしいけど入学前から立派だったから、今はなんて言えば良いのかすぐには思い浮かばないわ」
「エリ-chan! あなたっ! Maheria! みんな素敵よ~っ!」
なお、普通のAdventurer's School校の卒業式には保護者の席等はないのだが、Hero Preparatory Schoolの場合は生徒の保護者であるNobleが見学を希望する事があるので、しっかり用意されている。
まさか隣国の太后と妃(?)が来るとは想定されていなかったため、他の生徒の保護者達の顔には緊張が浮かんでいた。
本来なら、これ幸いと国家的な重要人物であるDarciaとAmelia……特にEmotionalに問題を抱えているAmeliaにちょっかいを掛けようとする者が出てきていたかもしれないが……。
『Pauvinaの卒業は来年の春じゃなかったか?』
「早まったそうですよ。Pauvina -samaのparty memberにはとばっちりですが」
「それは可哀想かもしれないけど、仕方ないわね。端くれとはいえ龍がTamed Monsterじゃあ」
「ただ、Reinhardt達も実力的には卒業しても問題ないはずだ。なら、卒業が半年先でも今でも変わりはないだろう」
しかし BorkusやBellmond、EleonoraにBasdiaの姿があるため、不埒者達は借りてきた猫よりも大人しく彼らの視界に入らないよう静かにしている。
「卒業生の代表として、この学校で学んだ一人として、恥ずかしくないよう務めて参ります」
代表としてparty leaderのElizabethがそう挨拶し、Hero Preparatory Schoolの卒業式は終わった。卒業証書や記念品の贈呈などはない。adventurer Preparatory Schoolを卒業した事はAdventurer’s Guildのguild Cardに記載されるので、それで十分だからだ。
そしてこの卒業式では、涙を流すなど激しいemotionsを吐露する生徒はほぼいない。それはこのHero Preparatory Schoolに通う生徒たちにとって、この学校はただの通過点に過ぎないからだ。
「ううっ、senseiぃ! senseiに教えられた事は、一生忘れません!」
止めどなく溢れ出る涙を何度も袖で拭いながら、自分にそう言う彼に『sensei』は応えた。
「Eisam sensei、もう卒業したのでこう言うのも最後になりますが、俺は生徒です」
「はい、Vandalieu sensei! ありがとうございます! でも、私も講師を止めてadventurer活動を再開するので、もうsenseiではありません!」
「これは一本取られましたね。これからはライバルとして、改めてよろしくお願いします」
生徒は泣いていないのに、豪快に泣いているEisam元senseiにVandalieuは手を焼いていた。
「ライバルって……adventurerとして活動する気なのですか、sensei?」
未だにVandalieuをsenseiと呼び続けるのは、やはりHero Preparatory Schoolの教官であるHarvinjarだった。
「ええ、一国の支配者はAdventurer’s Guildに登録してはならない、なんて規則はないはずですし」
「そ、そうですか。頑張ってください」
Harvinjarはそう言いながら、心の片隅でこれからMeorilithに代わって気苦労を背負う事になるだろうAdventurer’s Guildに深く同情した。
そして檀上から降りたElizabethは深くため息を吐いていた。
「卒業したくない」
主席になれたのは、素直にうれしい。入学した時から目指していた目標を達成したのだから、達成感もある。
そして、後ろ盾だったRimsand Earlからの要望や、それに応えられなかったときは援助の完全停止か体を差し出すかを選ばなくてはならない、という重圧からもとっくに解放されている。
それどころか、「母のために腹違いの兄達の鼻を明かす」という目的も達成している。なので、Elizabethの中から当初あったadventurerを続ける理由は無くなっていた。
しかし Elizabethがadventurer Preparatory Schoolを卒業したくない理由は、重大な目標を達成した直後に発症する燃えつき症候群ではない。
「お嬢-sama、ダイジョウブです。ダイジョウブと言ったらきっとmaybe絶対にダイジョウブです。私は常にお嬢-samaの元にいます」
「そうですよ、Vandalieuも切れ者の元civil officialのUndeadを派遣すると言っていますし」
「我々も微力ながら……本当に微力ですがお手伝いしますから!」
「自信は全くありませんけど!」
そんなElizabethに、彼女とsisters同然に育った最も信頼できる親友であり侍女であるMaheriaが緊張で固くなった口調でダイジョウブですと繰り返し励ます。さらに、waist purseのMact HamiltonやTaurus Zets、Jozéf Catalonisも続く。
そんな四人に、Elizabethは涙の浮かんだ瞳を向けて叫んだ。
「あんたたち……気持ちはうれしいけど逆に不安になるようなことを言わないで!」
「すみません、お嬢-sama!」
「でも、我々も不安でいっぱいです!」
Elizabethが卒業したくなかった理由は、彼女は卒業後Sauron公peerageを継がなくてはならないからだ。……Sauron Duke 家の跡取り争いに加わり、惨敗した経緯を考えれば野望が叶ったと言える。しかし、Elizabethとしては今更叶ってもうれしくない。むしろ、迷惑である。
今は母であるAmeliaが正気に返っていない事以外は良い方向に進んでいる。目標だった主席にもなれたし、bloodはつながっていないが弟とImoutoができfamilyも増えた。これからは、信頼できる仲間と未来に向かって生きていくのだ。
その矢先に、結果的に一矢以上報いて気が済んだ古巣から家督を差し出されても困ると言うしかない。
しかも、これがちょっとしたNoble 家や商家ならまだしも公peerageである。必要とされる知識や経験と、のしかかってくる重圧の大きさが違い過ぎる。
それを支えるべきMaheria達もそれは同-samaで、ただの侍女や最初から家督を継ぐことを期待されていなかったおBocchan達が、いきなりDukeの側近として十分な活躍ができるはずがない。
「そんな悲観することないって。なるようになるわよ、Vandalieuが力を貸してくれるっていうし」
唯一、Zohnaだけは楽天的にしか見えない態度で笑っている。
「それじゃあ頼りっぱなしになるじゃない!」
Elizabethはprideの問題からVandalieuに頼りきりになる事が許せず、そう反論した。
「もうお家騒動も終わって継承も終わっているのに……なんでこうなるのよ!?」
Hero Preparatory Schoolに入学する前から、Dukeになる目はないと思っていたのにとElizabethは思わず叫んだ。
「まあまあ、人生は嵐の海を往くが如くです。何があるかわかりませんが、自棄にならずに一歩一歩進みましょう」
そしてその元凶であるVandalieuは、説得力のあるセリフを言いながらElizabeth達を励ましている。
「……むぐぅっ!」
元凶ではあるが、Vandalieuがもうすぐ前DukeになるElizabethの腹違いの兄に直接、彼女に家督を譲るよう祟った……働きかけたわけではない。
腹違いの兄やその周囲のHumanがVandalieuを勝手に恐れ、勝手に家督を差し出してきただけだ。しかもその原因はDemon King Guduranisがrevived一連の事件と、それを討伐したachievementによってVandalieu達の圧倒的な力が明らかになったからだ。これでは責める事はできない。
「だから、しょうがないって。あたし達、首席でHero Preparatory Schoolを卒業しただけの小娘と小僧よ。Duchyの運営に関わるなんて、無理な話よ。素直に、Vanを頼りましょ」
そう言いながら、Vandalieuを人形のように持ち上げてElizabethに近づけるZohna。だが、Elizabethは視線を逸らす。
「でも、それじゃあ傀儡じゃない。もう一度言うけど、私にもprideがあるわ」
「……お嬢-sama、お嬢-samaのお気持ちはわかります。ですがお嬢-sama、私達の今の力ではDuchyの運営に主導的な形で加わる事は不可能です」
その逃げ道を塞ぐように、正気に返ったMaheriaが立ちはだかり諭す。
「だから、どのみち誰かを頼らなきゃならないのよ。前DukeのRudelの部下だった連中か、Vanか。だったら、Vanの方がいいじゃない。
頼り切って、その間に勉強して頼らなくても自分達でDuchyを回せるようにして、それから頼りきりだった分の借りをVanに返せばいいじゃない」
そして、Zohnaの言葉はもっともだった。どうやっても、Elizabethが短期間でSauron Dukeに相応しい知識と経験を手に入れる事はできない。なら、今はprideを棚の上に置いてVandalieuを頼り、後でその分の借りを返すしかない。
これはもちろん、頼る相手に対して絶大な信頼が無ければ成り立たない考え方だ。並み程度に頭が回る者なら、頼り切っている間にSauron Duchyを乗っ取られる、もしくは後から取り返すのが難しい利権を奪われる危険性に思い至るだろう。
しかし、Elizabethは既に知っていた。Vandalieuにとって、自分達を裏切ってまで手に入れる価値のあるものはSauron Duchyに存在しないという事を。
「Elizabeth -sama、一応言っておきますがSauron Duke 家を継ぎたくなければ継がなくても良いと思いますよ」
そして、そのVandalieuはそんな事を言い出した。
「い、今更何を言い出すの!? Sauron Duchyはどうするのよ!?」
「どうとでも、なるようになればいいと思います」
そして、Zohnaに持たれたまま瞬きもせず言い切るVandalieuを見て、それを改めて意識した。
「……そう言う訳にはいかないでしょ」
自分が投げだしたら、Vandalieuは本当にSauron Duchyに対して「どうとでもなればいい」という態度で接しかねない。実際には何かしら働きかけるのかもしれないが、あまりいい手段ではないのは確実だ。
「分かったわ。頼っていいなら頼るけど、音をあげるんじゃないわよ。その代わり、後で借りはどんな事をしてでも返してみせるから!」
覚悟を決めたElizabethは、そうVandalieuの顔に指をthrust付けて宣言した。
「分かりました。では、さっそく地形を変えましょう」
しかし、覚悟を決めてもVandalieuの行動には驚かされる事になった。
「Elizabeth -samaがどんなことをしてでも借りを返してくれるのなら、俺も頼られ甲斐があるというものです」
「げ、限度があるわよ……」
そんなVandalieuに対して、Elizabethは指をthrust付けた姿勢のまま、消え入りそうな声で言うしかなかったのだった。
●Job解説:Change Guider Luciliano著
reincarnationを経た存在をGuiding Job……だと、monstersや虫、草花を含めたこのworldに生きとし生ける全ての生命が対象になってしまうので、違うと思われる。
おそらく、何らかの要因で意識やMemory……いわゆる同一性が維持されたconditionでreincarnationを経験した者をGuiding Jobであると思われる。
例をあげると、Pseudo- reincarnationしたPauvinaや、another worldから魂のconditionでTeleportationしてreincarnationしたLegion、同じくanother worldからreincarnationしたKanako達、そしてDemon達。さらに師Artisanが創るUndeadやGolem全般が効果対象だ。
ただ、reincarnationではなくanother worldからやってきた……TeleportationしただけのAmemiya Meiも、師ArtisanがこのJobに就いて以降受けているGuidanceの効果が向上している節がある。
そのため、このJobの転とはreincarnationだけを意味しているのではなく、「自身が置かれている環境が大きく変わった者」を指しているのかもしれない。さすがに転勤や配置転換、転職や転居程度の変化では関係ないと思うが。
●race解説:Necroborn Luciliano著
Undeadと実験体の男達、つまり不死者と生者の混bloodによって生まれたrace。appearanceや特徴、そして体内の構造(師ArtisanがSpirit Form Transformationして調べた)は、両親が生者だった場合の赤子と同-sama。ただheartによる鼓動が生存に不可欠なものではなく、呼吸も同-sama。おそらく、通常の毒は効かず、diseaseにもかからないだろう。
誕生した時のRankはなんと0で、level upに比例して成長し、Rank upするごとに次の段階へ進むと思われる。Rank0で乳幼児、Rank1で幼児(一ageから三age程)。Rank2以上は現在のところ未確認。
ただ、conjectureではRank5程で成人(十五age過ぎ)になる、その後はMajin RaceなどのUnaging raceと同-samaに、成長はしてもAgingはしないのではないかと思われる。
なお、母親がGhost系のUndeadである場合は、BodyがSpirit Formで出来たconditionで生まれてくる。その場合の特徴も物理的なBodyがある場合と同じである。
母親がSkeleton系やLiving Armor系のUndeadの場合はまだ確認していないが……妊娠が可能になったら、やはりNecrobornが生まれてくるのではないだろうか?