鳴り響く警告音を強引に無視しながら、円籐KouyaやMachida Aran、Shimada Izumiは作業を進めていた。
『これだけ煩いと、Aldaに聞こえないかと冷や冷やするな』
『どんなに煩くても、この音なら気にしないさ。ただのerror……HumanがUndeadやDemon、そしてVida's New Racesにされた時に出る音だって説明してあるから』
RodcorteのCircle of Reincarnation systemは、Rodcorteが直接動かさなくても働き続ける。しかし、問題が起きた場合はその程度によって手を加えなければならないため、RodcorteのFamiliar SpiritとなったAran達三人がそれを行っているのだ。
何故なら、本来systemを統括するべき立場のRodcorteは自身のDivine Realmの中心で数えきれないほどの杭を打たれて行動不能に陥っているからだ。
ただの杭ではない、Aldaの『Pile of Law』だ。神としての力の総量ではAldaを上回るRodcorteだが、『Lambda』worldの神として認知された事でAldaのGod of LawとしてのDivine Authorityが有効になってしまったため、逃れる事はできなかった。
どれだけ神としての力が上回っていても、Rodcorteに戦闘に関する経験やDivinityはない。例えるなら、莫大な権力と財力を誇るworld一の大富豪でも、リングの上で行われるデスマッチで勝てるとは限らない。そんなものだ。
そして、Rodcorteが『Lambda』worldの神となっている事がばれていない限り、Aldaが自分に杭を打とうとすることはないと油断しきっていた。
Rodcorteは神が怒るものであり、激怒した存在は我を忘れるものだという事を失念していたのである。
ともあれ、今のRodcorteは意識があっても動く事も話す事もできないconditionだ。神としての力を使うなんて、絶対に不可能。……『Evil God of Sinful Chains』Jyarodeepsはその不可能を可能にしたが、それはJyarodeepsが激痛と長い幽閉に耐える神としても凄まじいMental力の持ち主だったから可能になった事だ。Rodcorteが彼と同じことを成し遂げるのは不可能だろう。
『AldaはもうこのDivine Realmにはいないわ。残っているsealedされたGuduranisのsoul fragmentを持って、自分のDivine Realmに戻った。残っているのは、Rodcorteを監視するFamiliar Spiritだけよ』
しかも、Alda本人はRodcorteを監視するために自身のFamiliar Spiritを配置している。そのため、RodcorteはFamiliar Spiritである泉達の行動を見る事もできない。逆に、泉達もRodcorteに近づけない。……近づく理由がないのだが。
『Aldaが最も警戒しているのは私達がRodcorteを助けようとする事だろう。……人から昇華したFamiliar Spiritは、そういう存在らしいし』
『生きていた時はその神のbelieverだった連中だからな。俺達とは何もかも違うって』
KouyaやAran達は、Rodcorteのbelieverではない。それをAlda達は理解できないようだ。……獅子身中の虫になりかねない存在をFamiliar SpiritにしたRodcorteの行動が、Alda達にとってそれだけ異質だという事だろう。
『私達にとっては、監視されず作業ができて好都合だけど。でも、Circle of Reincarnation systemを私達に任せきりにしてどういうつもりかしら? 先の事を考えているなら、今の内から誰かにsystemに関する技術を学ばせるべきだと思うけど』
Rodcorteは信用できない。Aldaは、怒りで我を失って杭で滅多打ちにした後も、そう判断して杭を抜かなかった。なら仮にVandalieuを倒せたとしても、その後RodcorteにCircle of Reincarnation systemを任せるとは考えにくい。そして泉達三人はRodcorteのFamiliar Spiritである。やはり、Alda達にとって信頼を置ける存在ではない。
そしてAldaはVandalieu……Vidaとの戦いに勝つつもりだ。そうである以上、戦いの後もRodcorteのCircle of Reincarnation systemを運用し続ける必要がある。
Vida式やDemon King式のCircle of Reincarnation systemを奪うのは、悪手のはずだ。Vida式は管理者が打倒しようとしているVida本人、Demon King式に至っては今systemがどんなconditionになっているか分からないmonsters専用のsystem。転用ができるかも不明だ。
それに、RodcorteのCircle of Reincarnation systemは『Lambda』world以外のworldのCircle of Reincarnationの運行も行っている。それに支障をきたせば、そのanother worldのGodsがRodcorteを解放するために攻め込んでくるだろう。自身のworldの存亡がかかっているのだから、是非もない。
今そうなっていないのは、Circle of Reincarnation systemの運行が問題なく行われているから。そのため、another worldのGodsがRodcorteの今の状況に気がついていないからだ。
Circle of Reincarnationという重要な役目をRodcorteに依存しているのに、それで問題ないのかと考えるかもしれないが、実際に今まで問題が起きていないから構わないのだろう。
それにRodcorte自身、各worldと距離を置いていた。another worldのMythに巻き込まれ、それによってimpactを受け、systemの維持管理に支障が出る事を避ける為に。another worldのGodsは、そのRodcorteの意向を尊重しているだけに過ぎない。……ただ単に、Rodcorteに人望がないだけとも言えるが。
ともかく、Aldaは今後もRodcorte式Circle of Reincarnation systemを使い続ける必要がある。だから、今の内からsystemの維持管理を引き継ぐことができる人材(神材?)を育てる必要があるのに、何もしないのは何故かと泉はいぶかしく思っていた。
まさか自分達を自陣に引き抜くつもりなのだろうか? 他の神のFamiliar Spiritを自分のFamiliar Spiritにする事が可能なのか知らないが。と泉が考えていると、Kouyaが苦笑いを浮かべてconjectureを述べた。
『Aldaが今から他のFamiliar SpiritやSubordinate Godに技術を学ばせようとしないのは、それが今は不可能だからだと思う』
『不可能? どういう事?』
『だったら泉、今自分がしている事を他人に説明してみろよ』
『はあ? そんな事簡単よ。今私達はCircle of Reincarnation systemの■■■を■■■■――えっ!?』
Aranに言われた通り、泉はCircle of Reincarnation systemのmaintenanceについてざっと説明しようとしたが、途中から人が理解できない言語……いや、思念になってしまった。驚いて、何度か言い直そうとした泉だが、何度やっても言葉にできない。
『ほらな。俺も最近気が付いたけど、説明できないんだよ。RodcorteのFamiliar Spiritである俺達にはそれで通じるけど、他のHumanはもちろん神やFamiliar Spiritにも理解できないらしい』
『神やFamiliar Spiritにも?』
『おそらく、Circle of Reincarnationに関する事はCircle of Reincarnationに関する神……Divinityを持つ存在とそのFollowersにしか理解できないようになっているのだと思う。以前、RokudouがCircle of ReincarnationについてRodcorteに尋ねた事があったが、Rodcorteの答えを聞いてもその場に居合わせたMoriya達は理解できてない-sama子だった。Rokudouは理解できたし、Rokudouから同じことを繰り返し説明されてもそれは変わらなかった。
いわゆる、門外漢が専門家に難解な話を聞いても理解できないのと、似たようなものかな』
Godsとは……少なくとも『Lambda』worldのGodsは万能ではない。それぞれに得意分野があり、得意分野に基づいた役割を果たす。それが本来の姿だ。
『God of Space and Creation』Zuruwarnは、Light Attributeの管理はできない。そしてphysical battleができない訳ではないが、『War-God of Fire and Destruction』Zantarkとは比べものにならない程weak。
『Mother God of the Earth and Craftsmanship』Botinも、Wind-Attributeの管理はできない。そして、magicに関する技術や知識も全くない訳ではないが、『時間と術のMagic God』Ricklentと比べればGreat MageとApprentice程の差がある。
知識として学ぶ事は可能だろう。しかし、いわゆる神の御業と呼ばれる段階までその技術を高める事はできないのかもしれない。
Human同士でも、学べば誰もがその道のGeniusと同じことができる訳ではないのだから、神同士でも……いや、神同士だからこそ差が大きいのかもしれない。
『それじゃあ、ますますどうしようもないわね』
『maybe、数百年単位で時間をかけて解決するつもりなのだろう。Divinityというのは、余程突拍子がない場合以外は後付けする事ができる。それらしい逸話を広め、多くのbelieverが信じればAldaやそのSubordinate Godが『God of Reincarnation』になる事は可能だ』
『『Earth』でも神だった存在が後世では悪魔になったり、果物の神が菓子の神になったり、後世に変化したけれどそれと同じ?』
『然り然り、maybeそんな感じ。Aldaは本来Light Attributeの神なのに、既にGod of Life-AttributeとしてのDivinityも手に入れているし、Circle of Reincarnationに関しても同じことができると我は思う』
Aldaは既に、本来専門分野ではない生命attributeの管理を行っている。それは『God of Law and Life』として崇められたからだが……十万年経った今でも苦労している。そこにCircle of Reincarnation systemの運用にまで手を伸ばせば、Aldaは今度こそoverworkで致命的なmissを犯すかもしれない。
『だから、Circle of Reincarnationに関する逸話をでっちあげるか、believerの中から適当なのを神にして担当のSubordinate Godを創るつもりではないかと我は思う。Aldaが、我が思っている程度にはreason的だったらだけど。
-kun達に引き継ぎが要請されるのは、その後ではないかな』
そうRodcorteのDivine Realmを覗き見ている……しかも、Aran達に話しかけているZuruwarnは予想した。
『なるほど。そうなると、ダーはどうしましょうか?』
今は亡きRokudou Hijiriの部下の生き(?)残り、【Sahadeva】のDa LongはまだこのDivine Realmの中に存在していた。Rokudou Hijiriが再びの敗北、しかも今度は魂まで完全消滅した事に耐えられずfaintedし、そのまま外部からの刺激に一切反応しなくなったため泉達も放置している。
『ふ~む、そのまま放置でいいのでは? 積極的に助けたいわけでも、逆に滅ぼしたい訳でもないのなら』
ダーについて軽く話は聞いたが、Zuruwarnとしては『どうでもいいな』としか思わなかった。Vandalieuにとって脅威になりそうなら、Vandalieuが魂を喰らえる場所までダーの魂を持っていくという選択肢もあったが、そうではなさそうだからだ。
RodcorteのDivine Realmには、彼が管理していたGuduranisのsoul fragmentはAldaが持ち帰ったためもうない。だから、ダーが我に返ってRokudou Hijiriの復讐を決意したとしても、とち狂ってGuduranisのsoul fragmentを持ち出してそれを解き放つ恐れはない。
そもそも、今の彼は我に返ったとしてもRodcorteのDivine Realmを自力で出る事もできない。できたとしても、Divine Realmを出た途端ただの幽霊……Ghostでもない無力な存在になってしまうのだが。
このDivine Realmに残って、Aran達の妨害をしてCircle of Reincarnation systemの運行を妨げようと企てても、Humanの魂でしかないダーがFamiliar SpiritであるAran達に勝てるわけがない。Cheat Abilityによってはそうも言いきれなかっただろうが、幸いダーの【Sahadeva】はAttack Powerを持たないAbilityだ。
Alda達もダーの事を、忌々しいRokudouの手先の生き残りとしか見ていないようなので、spyとして使われる可能性も低い。
『そうだな。じゃあ、あいつは放置しようぜ』
『そうね。そんな暇ないし』
そして、Aranや泉にとっても裏切り者のダーは積極的に助けたい相手ではない。今のconditionの彼をVandalieuに差し出すのは若干の抵抗があるが、逆に言うとそれぐらいだ。
Vandalieuとしても、今のダーを差し出されても困るだろう。……彼が魂を喰らうのは、危険な対象を滅ぼすためであって、skillを手に入れる為ではないのだから。
『それより、Circle of Reincarnation systemの方は問題ないの? さすがにanother worldのGodsが徒党を組んで襲ってくる事は避けたい』
『このアラームの通り、問題だらけです。VandalieuがOrbaumで大量に人を導いてVida式Circle of Reincarnation systemに引き抜いているからでしょう。
でも、どうにかしています』
VandalieuはGuidanceによって、RodcorteのCircle of Reincarnation systemからVida式Circle of Reincarnation systemに魂を移動させる事ができる。その度にRodcorteのCircle of Reincarnation systemはerrorが起きるのだが、RodcorteのCircle of Reincarnation systemは優秀でいくつかのerrorなら運行にimpactはない。
Vandalieuが存在する以前から、HumanがVampire等のVida's New Racesに変化するなどしてVida式Circle of Reincarnation systemに移る事があった。それに対処するためである。
しかし、さすがに一日で何万、何十万もの大量の魂が移動する事は想定されていない。そのためKouya達はsystemにかかりきりになっていた。
ただ逆にいえば、かかりきりになればどうにかできる程度の問題だ。
RodcorteのCircle of Reincarnation systemはHumanだけではなく動植物も対象に入っている。それを利用して、来世で植物や虫になるはずだった魂を、Vida式に移ってしまった魂の代わりに当てているのだ。
時間稼ぎのための誤魔化しに過ぎないが、world全体で数えきれないほど存在する虫や植物が数十万減ったところで問題ないだろう。
魂のない体が出てきてしまいそれに霊が入り込んだとしても、虫や植物ではほぼ何もできない。
植物の場合は動けないし、虫はInstinct通りに動く生き物で多くの場合寿命も短い。悪さをするためにmonsters化しようとするかもしれないが……意志があっても普通の動植物が簡単にmonstersになれるはずがない。可能なのは、Vandalieuの周りぐらいだ。
ちなみに、『Lambda』worldで来世が設定されていなかったReincarnatorのMoriya達の魂はともかく、『Five-colored blades』の一人、Edgarの魂がVandalieuに滅ぼされた際には深刻な問題が起きた。しかし、一人だけだったのでCircle of Reincarnation systemの扱いに対して習熟しつつあるAran達によって既に対処されている。
『むしろ、Vida式Circle of Reincarnation systemの方がどうなっているか不安だ。一度に数十万の魂を受け入れて、問題なく動いているのか……』
『それは我も分からない。Vidaがsystemを創ったのは、我が眠りについた後だから。でもまあ、Vidaのsystemは動植物が含まれていないはずだから、その分余裕があるのかもしれない』
Ghoulの出生率の低さや、Vampireの自然妊娠のしにくさ等、Vida式Circle of Reincarnation systemには不具合と思われる問題も起きている。起きているが、本来の管理者であるVidaがDivine Realmに戻れないので今どんなconditionなのかVida本人にも分からない。
なので、Zuruwarnもその問題について考えるのは放棄していた。
問題が起きているかもしれないが、Vandalieuに他者をGuidingなというのも無理な話だ。どうしようもない。
『ともかく、Circle of Reincarnation systemはどうにかなりそうか、今回は、それを確かめに来た。無理そうなら、我がboneを数百本折ってどうにかしないといけないから』
Zuruwarnのboneを折るとは、Rodcorte式Circle of Reincarnation systemがCircle of Reincarnationを管理するanother worldに事情説明……いわゆるお詫び行脚をしに行く事だ。
どうにかするから、それまで不都合が起きてもenduranceしてほしい。そんな根拠も何もない話を面識のない相手にしに行くのだ。
行った先でGodsに激怒されて攻撃される可能性もあり、できればやりたくない。しかし、another worldのGodsVSAldaVSVandalieuの三つ巴も避けたい。
『another worldを含めたCircle of Reincarnationの運行は、Vida式Circle of Reincarnation systemに移動するだけなら一千万人でも一億人でも、どうにかなるといえばどうにかなります。来世までには時間があるので、その間誤魔化し続けながらmaintenanceを行えば』
Zuruwarnの質問に対するKouyaの答えは、つまりback-pedaling operationで何とかできる、というものだった。
『ただ、Vandalieuが一度に何十人、何百人も魂を滅ぼす事になれば一時的にsystemが停止するような事態になりかねないかも』
『今までのVandalieuの言動から考えると、そういう事は起きないだろうけれど。Reincarnatorも、もう『Lambda』worldにはreincarnationしないだろうし。でも、念のために言っておいてくれますか? Humanの魂を喰らう時は、一度に数人までにしてほしいって』
『んー……分かった。伝えておく』
Zuruwarnとしては、VandalieuにもCircle of Reincarnation systemに関する事はできるだけ教えたくなかった。それでAlda達に対する戦いにimpactが出るのは困るからだ。
それに、originally HumanにはRodcorteのCircle of Reincarnation systemについてを秘するのが決まりだった。それはRokudou Hijiriのように、自らの意志でCircle of Reincarnationを可能にして、他者からの信仰を受けずに神に至る存在を出さないようにするのも目的の一つだった。だが、そうでなくても「どんな聖人でも、そして極悪人でも来世は雑草や虫けらかもしれない」と知られるのは拙いのだ。
もちろん、Circle of Reincarnationする際人々は生前のMemoryや知識、技術をすべて失う。だから、来世はまったく別の存在になるのに等しい。しかし、「来世は雑草や虫けらかもしれない」という事実の方が人々の意識には残りやすいだろう。
死後のworldも、天国もHELLもない。人々の信仰を得て神に至るか、信仰する神のFamiliar SpiritやHeroic spiritに昇華しなければ、死後egoを保つことはできない。
それがHuman達に広まった場合、あまり愉快な事にはならないだろう。
(ただまあVandalieuはもうDemi-Godだし、口止めすれば別にいいかな?)
しかし Vandalieuは例外という事にして、ZuruwarnはRodcorteのDivine Realmから去って行った。
なお、Alda believer達の動向についてCircle of Reincarnation systemを使って調べる事は、Aran達がmaintenanceを優先しているためできなかった。
それに、だいたい予想はついているのでAran達からの情報提供がなくても問題はない。
一方、Aran達もZuruwarnを見送る余裕はない。彼等自身が言ったように、back-pedaling operationの最中だからだ。もちろん、Orbaumの人口にも限りがあるので一日でVandalieuに導かれる人の数は徐々にdecrease傾向にある。
『今やっている処置が終わったら、俺はJahan DuchyのHumanがVida式に移るときの準備に回る。Kanakoを含めたGuider三人でのlive performanceのAttack PowerがAlda believerに与えるimpactが未知数だからな。どうせVandalieuもいるんだろうし』
『じゃあ、私は他のDuchyで漂っている霊ね。これからDuchyと交流するでしょうし、その時Vandalieuが近づいただけで魅了されるだろうから……最近大規模な戦争がなくて、彷徨っている霊の数がそれほどじゃないのが救いだわ』
『……『Lambda』から普通の虫や植物が激減する、なんて事はさすがに起きないだろうけれど、不安になってくるな。
でも、もっと先の準備も必要だ。Rodcorteが動けない間に、私達が動けるだけ動くしかない。Body的なFatigueを感じない存在になっておいて本当に良かった』