『Avalon Disturbance』と名付けられたworld的な大事件が『Origin』worldで起きてから年が変わり、約半年が過ぎた。
今、worldはUnited States大統領に正式に就任したSergeiがリードする形で変わりつつある。
「Northern Europe FederationとChinese Republic (not-URSS)の内戦は、激しさを増す一方だ。Africaの紛争よりも終わりが見えない……」
「Europeも火薬庫に逆戻りだ。共同体は何年もつだろうか?」
ただ、『Avalon Disturbance』以前の平和が戻るsignは全くない。
むしろ、下手をしたらこのworldは二度目のworld大戦を迎えるかもしれない。……いや、本来ならとっくにworld大戦に突入していたのかもしれない。
【Avalon】のRokudou Hijiriは倒された。彼の部下や賛同者は全て死亡し、彼らが創り出した実験体は一人残らず行方不明。そしてRokudou Hijiriの研究資料や実験機材も残っていない。
しかし、Rokudou Hijiriに与した各国の大物政治家や軍人、犯罪organizationの大物の腹心や部下、organizationはそのまま残っていた。何故なら、Rokudou Hijiriの本拠地に招かれていたのは大統領など彼の協力者や賛同者の中でもtop classの一部だけだったからだ。
そのため、事件が終わった後もworld中で後始末に追われる事になった。それが最もスムーズに、そして早期に終わったのがCoup d'étatによってSergei大統領が政権を奪取する事に成功したUnited Statesである。
彼は強権を躊躇いなく振るい、Rokudouの協力者達をUnited Statesの政財界、そして諜報機関からも洗い出して次々に拘束していった。その手腕は神がかり的であり、元軍人で政治家でも諜報戦の専門家でもない彼の思わぬ活躍に誰もが驚いた。
それが可能だったのは、Sergeiが軍をほぼ完全に掌握していた事。軍人出身でCoup d'étatによって政権を奪取したのだから当然だが、それによってSergeiは非常事態宣言を躊躇いなく発令できたからだ。United States民の人権を制限し、平時では過激と非難されかねない強権によってRokudouの協力者や賛同者の配下を拘束した。
……Vandalieuが、Me-kunに魅了されている前大統領や諜報機関の長官の霊から聞き出した情報を提供したのも、公には出来ないが大きな要因の一つである。
そして次に正常な国家運営Abilityを取り戻したのは、Japanだった。それはJapan人が優秀だったからではなく、いくつかの理由があった。
まず、JapanはRokudouのinfluenceが及んでいた部分が他の国より限定的だった。何故なら二十世紀に第二次world大戦を経験していない『Origin』のJapanでも、二十一世紀の現在では首相や大臣達の権力はUnited Statesや欧米の為政者程大きくはない。そして、【Bravers】の多くのmemberがJapan出身であるため、Japanで多くの協力者や賛同者を得ると計画が露見する可能性が高まってしまう。
そう考えた当時のRokudouは与野党の一部議員、警察や司法、医療業界、そして官僚organizationの上層部の一部を手懐けるだけに留めたのだ。……それでも十分深刻な事態だが、他の国では諜報機関が丸ごと乗っ取られていた例もある。それに比べれば、まだ軽い方なのだ。
さらに、Japanは国民性のせいか『Origin』worldに現れたVandalieuのimpactを受けた者の割合が多かった。全体から見れば約〇・一percentと少数だが、十万人以上がVandalieuと夢で遭遇している。
そして、『Origin』でもJapanは米国の同盟国である。そのためSergeiは同盟国のstabilityは急務であるとして協力し、Japanを立ち直らせる事に成功した。
だが、いち早く国家運営Abilityを取り戻したUnited StatesやJapanと違い、Europeや南米は混乱が続いた。大統領が死に、側近の多くを逮捕拘束したのだから無理もない。各国は選挙によって新しい大統領を選び、新しい大臣を任命した。しかし、新しい政権はRokudou Hijiriの協力者以外の、非top classの政治家達で構成されている。知名度とcharisma性だけではなく、Abilityと経験も不足気味だ。
そのため政権はstabilityせず、既に二度目の大統領選挙を行っている国もある。治安は悪化し、以前は自由だった各国の往来が厳しく制限され、審査を通過しなければ出国できなくなった。
最早共同体とは名ばかりであり、あとは貿易に関税がかけられれば分裂するだろう。
しかし、混乱が国の内側で収まっているならまだマシだ。Chinese Republic (not-URSS)とNorthern Europe FederationはRokudouによって自分達が仕掛けていた爆弾をそれぞれの国の中枢に【Teleportation】で送り返され爆破された事もあり、『Avalon Disturbance』後に揉めに揉め、内乱から紛争にdevelopmentしてしまった。
国家ぐるみでRokudou Hijiriの野望に加担していた事、そして自国民の中でも身寄りのない孤児や邪魔なHumanを非人道的な実験に提供していた事、そして事態解決に当たっていた【Bravers】やRokudouの研究の被害者が内部にいるのを知っていながら、Rokudou Hijiriのhideoutに向けてMissileを発射した事。全てが明らかになり、国際的な批判を受けた。……EuropeやAfricaの一部の国は、Chinese Republic (not-URSS)とNorthern Europe Federationの責任を追及する事で自国の責任から目を逸らさせる目的があったと思われる。
批判を受けたChinese Republic (not-URSS)とNorthern Europe Federationは、それぞれの国で対策を話し合った。それぞれ失った人員の代わりの者で政府を再構成して。この辺りは選挙によらず国の指導者を決める事が出来る社会主義、共産主義の強みだろう。
しかし、再構成された両国の政府の力は弱まっている。国際世論を無視して無傷でいられるかというと、そうでもない。
しかも、両国はRokudou Hijiriのdeath attribute研究に莫大な援助を行っていた。それは資金や研究施設、人体実験に使うHumanだけではない。研究員や作業員、警備員等の正しい意味での人材、そして今まで図ってきた便宜、それらがRokudouの裏切りによって負債に変わったのだ。
Rokudouの裏切りが判明した後にとった行動も悪かった。VandalieuのAdventによって混乱したのは無理もないが、繰り返しMissileを放ち、受ける反撃の数を増やしてしまった。
それでも権力の座を離れたくない新top、この機会に今のtopを引きずり下ろして自分が頂点に立ちたいnumber2や3、自主独立のchanceだと動き出す民族……結果、Chinese Republic (not-URSS)とNorthern Europe Federationは分裂して争い始めた。
【Bravers】はUnited Statesからの依頼によって動き、共和国と連邦の生物兵器や核等の危険な兵器を奪取したり、紛争を煽る事を目的としたテロ行為を防いだり、忙しく動いていた。
その甲斐あって、今のところ『Origin』worldはstabilityしている。少なくとも、world大戦にはなっていないし、大規模な殺戮も起きていない。
「まさか、『紛争は好都合だ。あの国が分裂し争い続ける事は、我が国の利益になる』とはっきり言うとは……」
「広大過ぎる領土を、国の分裂によって分けさせる。えぐい事を考えるよな」
「Hiroshiと冥には聞かせられないわね」
「まあ、いくらなんでもUnited Statesの武力で平定しろとは言えんし、国際機関が力を失った今の状況ではどうしようもないのは分かるが」
「……ただ、間違っても今の中華や北欧には行きたくないな」
missionから帰ってきた【Braver】のAmemiya Hiroto、【Titan】のIwao、【Angel】のAmemiya Narumi、【Chiron】のDerrick Sander。そして【Druid】のJoseph Smithは理想だけではやっていけない大人の問題について愚痴を言い合っていた。
「いっそ、Vandalieuの魂がAdventした時の映像を連邦と共和国で流すのはどうだ? television局でも占拠して」
「Iwao、残念だがChinese Republic (not-URSS)とNorthern Europe Federationの情報統制は完璧に近い。あの時のVandalieuの映像を流した途端、警察か軍隊が雪崩れ込んでくるはずだ」
Ark Avalonのmagicから外のworldを守るため、またRokudouに裏切られたChinese Republic (not-URSS)とNorthern Europe Federationの報復からhideoutの中にいる仲間を守るためにAdventしたVandalieuの魂。
今ではその異-samaな姿を多くの人々が見ているが、情報統制が厳しい中華と北欧の人々はほとんど見ていない。そのため、両国でVandalieuのimpactを受けた人々はごく少数だった。
そしてVandalieuは基本的に寛大で、Amemiya達から見るとphilanthropyに近いMentalを持っている。しかし、自分達に関係の無いHumanが、自分達に関係なく殺し合う事にまで干渉しない。
中華や北欧が内乱で荒れようと、「対岸で会った事もないHumanとHumanが勝手に殺し合っている」という認識でしかない。そして、『Origin』worldでもっとも有名なVandalieu BelieverであるSergei大統領も、まず自国の利益、次に同盟国の利益を優先して動いている。
だから、Vandalieuのimpact……Guidanceを受けるHumanを増やす事は、両国を救う事に繋がるのだが……どうやら、両国の分裂したgroupの上層部は、誰も彼もVandalieuのGuidanceを受けない類のHumanらしい。
「『Earth』と同じで、このworldの中華と北欧も宗教は嫌いだからな」
「Amemiya、このworldの北欧はそうだが『Earth』のロシアはロシア正教って宗教があったはずだ」
「……そうだったか?」
「『Earth』の頃の知識はもう当てにならないわね」
「それと言っておくが、別にVandalieuにimpactされたHumanが増えてもVandalieuが直接助けている訳じゃない。導かれた奴らが自助努力をした結果、助かったってだけで」
Josephが言うように、Vandalieuは『Avalon Disturbance』事件以後『Origin』worldに直接的な干渉はしていない。ただ夢で出会ったり、映像などを見た人が一方的に導かれたりするだけだ。
しかし、導かれた者はStatus systemの存在しないこのworldでその効果を受ける。いや、systemが存在しない分文字や数字ではっきりと効果をたしかめる事はできないが、その分『Lambda』より広い範囲で効果を受けていると言えるだろう。
妙な例だと、導かれた結果eyesightがincreaseしたり、diseaseに対する免疫力が上がったり、生存Instinctだけで極限状況を生き延びたり等の例がある。
「Joseph、僕達はそれを期待している。中華や北欧でVandalieuのimpactを受けたHumanが増えれば、impactを受けた者同士で協力して内乱を終わらせようとするだろう」
そしてAmemiya達の期待も、Vandalieuによる直接介入ではなかった。Vandalieuにimpactを受けたHuman同士は、originally他国や異民族、異なる宗教を信仰していても、impactを受けた後はある種の親近感をお互いに覚える傾向が強い。
そんな人々が多数派とまではいかなくても一定数を超えれば大きな力を持つようになると。
なお、Vandalieuに期待せずに自分達でどうにかしろとAmemiya達【Bravers】に言うのは無理だ。彼等は『Origin』worldの人々から尊敬を集めるheroではあるが、『Avalon Disturbance』事件のimpactで大きくその信頼を落とした。首謀者が【Bravers】の主導的な幹部だったRokudou Hijiriだったのだから、無理もない。
ただ、事件を解決した主導的なHumanも【Bravers】のmemberだったので、社会的なバッシングはそこまで大きくない。各国政府の大統領やその側近もRokudou Hijiriに関与していたし、批判しやすいChinese Republic (not-URSS)やNorthern Europe Federationが分かりやすい悪役になってくれたおかげでもある。
しかし、バッシングがなくても彼らに国家を動かすのは不可能だ。なぜなら、彼らは政治家ではないしChinese Republic (not-URSS)やNorthern Europe Federationの人々に支持された、もしくは人々を支配する権力者でもない。そんな【Bravers】が両国の争いを止めるには、それこそ武力で黙らせるしかない。
そして、それを実行すれば両国の紛争に【Bravers】という勢力が新たに加わるだけだ。
もっと地道に、Chinese Republic (not-URSS)やNorthern Europe Federationに行き現地の勢力と協力関係を築き、紛争に勝利し新政府を樹立する事を目指す方法もあるが……それはもうやっている。
強大な大国である二国を紛争によって分裂させ、balanceを取る事を目標にUnited Statesと【Bravers】を動かしているのだ。
「あの二国もJapanとUnited Statesのようになれれば……いや、JapanとUnited Statesはimpactを受けすぎている気がする」
「それに関しては、Vandalieuも同意見だと思う。この前夢で会ったが……萎んでいた」
「萎んでたのね。まあ、無理もないわね」
『Origin』worldでのVandalieuの扱いは、『Avalon Disturbance』事件直後は多岐にわたっていた。alien『Johnny Yamaoka』がGrowした姿、HELLから蘇った悪魔、Death-Attribute Magic研究のrunaway事故によってMaterializationした悪霊、Adventした神、magic実験で生み出されたGiant magic生物、Rokudou Hijiriが創り出した失敗作等々。
しかし、「あれこそ神である!」とSergei大統領が発信し、Vandalieuがworldを守っていた事が明らかになってからはAdventした神であると認識されるようになった。
その後起こったのが、『Origin』worldに存在する各宗教におけるVandalieuの扱いをどうするのかという議論である。
worldが大混乱している時に何をやっているのかと思うかもしれないが、それは政治家と企業の問題。宗教家には宗教家の問題があるのだ。
Vandalieuは『The 8th Guidance』のPluto達を救った『Undead』が神となった姿だという限りなく真実に近い主張をしたのは『The 8th Guidance』fan。既存の宗教や各国の政治家達からは、terroristを支持するcultと見られていた集団だ。
今は、『The 8th Guidance教』、略して『8th Religion』と呼ばれる一大宗教として勢力を築いている。もっとも有名なbelieverは、Sergei大統領だ。
彼の政権の主だった人物たちは全員Vandalieuに導かれた者達で構成され、諜報organizationを立て直すために集める人材の条件は「夢で神と遭遇した経験がある事」だ。
彼の最終目標は人類を全て『8th Religion』にすることで、そのためにも強権を振るってUnited Statesの-sama々な施設にVandalieuやPlutoを崇めるための像やmonument、アート作品を設置させた。そして『8th Religion』をthemeにしたtheme Parkや映画、アニメの制作を企画しようと試みている。
なお、その強引な姿勢に反発を覚える者も少なくないそうだ。
他の宗教での扱いは、Adventした天使、reincarnationした神等-sama々だが、自分達の既存のMyth体系に組み込もうと苦心しているようだ。……できれば無視したかっただろうが、映像としてはっきりと残っており、今も現在進行形で人々の夢に現れ、blessingsを授ける『神』を否定する事はできないようだ。
……仏教は「彼はspace (UCHUU)から飛来した隣人です」と、早々に宗教に取り込むのを諦めたようだが。
そして今では民俗学や宗教学、Occult研究家等が-sama々なlegendにVandalieuを結び付けて面白おかしくtelevisionや雑誌、netで配信している。
それを当人が知っているなら、萎んでも無理はない。……主にSergeiのせいで。
そんなに嫌なら人を導かなければ、夢に招かなければ、そしてblessingsを与えなければいいのだが……Guidanceに関してはどうしようもない。
なぜならVandalieuの姿がrecordされた動画を見たり、『8th Religion』の教えに触れたりした結果、勝手に導かれているのだ。Vandalieu自身が意識して導こうとしている訳ではない。
夢とblessingsに関しては、意識して招いているのではなく偶然波長が合って遭遇しているだけなのだが……遭遇した時点で追い返さず、話を聞くなどして時間を過ごし、気が合ったり気に入ったりしたらお土産にblessingsを渡しているので、自業自得と言えるが。
『God of Origin』の一部となったVandalieuには、『Origin』worldの人々を締め出す事が不可能なのだ。
「なんだ、みんな集まってmissionの愚痴を言い合っているのか?」
そこに新聞片手にやってきたのは、【Sandman】のYoudo Masakiだ。
「愚痴か……たしかに愚痴だな。いつになったら平和になるのか、終わりが見えない」
そうAmemiyaがYoudoに言い返すと、彼は不思議そうな顔をした。
「終わりが見えないって、それはいつもの事だろ」
それはいったいどういう意味かと尋ねようとしたAmemiyaが顔を上げると、その前にYoudoは答えた。
「争いは絶えないし、災害は起きたし、テロは企てられたし実行された。今も前と何も変わってない。Rokudouとその一派が消えた分、今はそれが表に出てきやすくなっただけだ」
「それは……そうだな」
Amemiya HirotoはYoudoの言葉に目からscaleが落ちた気分だった。彼の言った通り、以前から……それこそAmemiya達がこのworldにreincarnationする前から完全な平和なんてなかった。戦争、犯罪、そして災害が起きていた。
たしかに、今はRokudou Hijiriが唱えたUnaging不死や新worldの実現といった共通の目的が潰えた事で、各国や犯罪organizationの纏まりがなくなりChaosとしている。
だが、それだけなのだ。
(Rokudou……僕達Reincarnatorのせいでこのworldを大変なconditionにしてしまった。そう思っていたが……気負い過ぎなくていいのかもしれないな)
Rokudou Hijiriと彼の部下であるMoriya達は【Bravers】のmemberで、Amemiya達と同じReincarnatorでもある。だからRokudouがしたことにAmemiyaも責任を感じていない訳ではなかった。
だが、そう思い詰める事はないのではないか。Youdoの言葉を聞いてそう思ったのだ。
「なんだ、Amemiyaはworld平和でも目指してたのか? Neo国連をorganizationするとか」
「Youdo、Neoも何も国連はまだある! 存在感はかなり希薄になったが……」
「それに、以前と同じくらい平和に……せめて落ち着いてもらわないと困るわ。Hiroshiと冥にずっと会えないじゃない」
「あー、その問題があったな。悪かった」
【Bravers】は今、United Statesに本部を構えて活動している。United Statesが【Bravers】に強いinfluenceを持っている現状に、批難の声がない訳ではない。しかし、Derrickが言ったように国連の存在感も発言力も希薄になり、United Statesに文句を言える国が存在しない情勢が続いているため放置されている。
「そうだな、Hiroshiと冥のため……Rokudouの実験体にされた人々が暮らせるworldにしないとな」
「あなた……もしかして忘れていたの?」
「ち、違うっ! 決意を新たにしただけだよ!」
「意外でも何でもなく、向こうの方が住み心地は良いかもしれないぞ? 特に、実験体にされた連中はVandalieuがいないworldに戻ってくるとは思えない」
勃発しかけた夫婦喧嘩を無視して、Josephが話を続ける。
「たしかに……向こうにはnetもtelevisionもgameもないだろうが、Vandalieuがいるからな。冥とHiroshiのために、Amusement Parkを作ったぐらいだ、今も色々作っているかもしれん」
「Mariと、彼女と一緒にいたBokorやYuki Joro、Gabrielはまず戻ってこないだろうな」
「対してこっちのworldは、まだ冥達を狙っている連中がいる」
「ええ、いくら捕まえてもきりがない」
『Avalon Disturbance』事件後も、death attributeを求める犯罪organizationは後を絶たない。公にはされていないが、Ark Avalonという成功例が存在する事を知った者達が、Unaging不死や人類を滅ぼしかねない強大な力を求めて社会の裏で蠢いているのだ。
Rokudou Hijiriの研究資料や実験recordは残っていないが、Rokudou Hijiriの協力者達の内hideoutに集められなかった者達は残っている。彼等の内何人かは、【Metamorph】のShihouin MariにDeath-Attribute Magicを習得させるのに成功した事や、彼女以外にも限定的だがDeath-Attribute Magicが使える実験体が存在する事、そしてAmemiya 家の長女冥がdeath attributeのManaを持っている可能性が高い事を知らされていた。
それらの情報を元に、犯罪organizationや非合法活動をmissionにする軍の極秘部隊、金持ちの私兵等が冥達を狙っているのだ。そして冥達が隠れている場所の最有力Candidateだと彼らがconjectureしているのが、このUnited Statesである。
「Sergei大統領のtacticsが上手く行けば、それも下火になる……と思う。それまでの辛抱だ」
Josephが口にしたSergei大統領のtacticsとは、United Statesが独自に行ったDeath-Attribute Magicの研究成果の発表である。
もちろん、実際には研究を行ったわけではなく偽情報による欺瞞工作である。
「Death-Attribute Magicによるreincarnationは、九割以上の確率で失敗する。仮に成功したとしても、Mentalに変調をきたし制御不能のmonsterと化す」、「また成功してもUnaging不死にはなれず、短い時間で完全なUndeadへ変異してしまう」等の偽情報で、Unaging不死を目指す者達を騙そうというのだ。
Rokudou HijiriがArk Avalonにreincarnationした後にとった、以前の彼らしくない破滅的な行動を改めて明らかにして説明すれば偽情報にも説得力が生まれるはずだ。
同時に、United Statesがdeath attributeのmagic itemを市場に流す。United Statesが保護している開発協力者によって作られた、難Disease治療やInfertility治療、育毛剤、等のmagic itemであると発表して。
こうする事でdeath attributeの希少性が損なわれ、せいぜいUnited Statesの特産品に成り下がる。また、United Statesが行った発表の説得力をさらに高める事が期待される。
それでもUnaging不死に至れる可能性が僅かでもあるなら。そう考えて冥達を狙う事を止めない者もいるだろう。しかし、数は確実に減るはずだ。
「後はVandalieuが了解するかどうかだな。このworldでのmagic item制作には、いい思い出はないはずだ。意外と断るかも――」
「いや、それはさっき夢で会った時に話したけど、構わないって言っていたよ。近々こっちに行けるか試すから、その時にまた話そうって」
「さっきって、お前昼寝でもしてたのか!?」
「Derrick、それよりもVandalieuの協力が得られることの方が重要だろう?」
「それはそうだが……」
「ちょっと皆!」
そこに髪に寝癖がついたままの【Asclepius】のNanamori Misatoが駆け込んでいた。
「お前、もうageなんだから身だしなみぐらい-chanとしないと……」
「それどころじゃないの! Vandalieuが今からこっちに来るって!」
「「「今から!?」」」
Amemiya達が驚いて思わず声をあげた。
『はい、今来ました』
ぐにゅりと耳障りな音がした直後、虚空からVandalieuが生えた。
「ヴァッ……!?」
『そう、俺本人です。……体ごと来ると、物理法則が違うせいか動きにくいですね。声も出しにくい気がします』
虚空から上半身だけが生えているconditionのまま、Vandalieuは固まっているAmemiya達に話し続けた。
『another worldでRokudouをもう一度、今度は完全に倒したのですが、その後色々あってこのworldにCloneを設置して、もっと気軽に行き来できるようにしようと試みているところです。
これでMe-kunやHiroshiが親に頻繁に会えるようになりますし、Sergeiの行動を直接諫める事が……すみません、まだきついので一旦帰りますね』
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 向こうでいったい何が起きたんだ!?」
『今度夢でYoudoやJoseph達にあった時に説明するので、彼等から聞いてください。ああ、あとこれをSergei達に渡してください。
あと、Me-kunとHiroshiはこっちで友達もできて元気です』
手から生やした水晶のような物をその場に落として、Vandalieuは再び虚空に消えた。
Amemiyaがcrystalを拾い上げると、その中に大量のManaが込められているのを感じた。これがmagic itemを創るためのdeath attributeのManaだろう。
「僕も夢で-kunに会えれば話が早いのだろうけど……やはり無理だろうな」
VandalieuにとってAmemiya達はMe-kunとHiroshiの親でしかない。嫌悪感はあっても憎みはしないが、距離を縮めるつもりは毛頭ない。
「そういうものだ。俺も一向にあいつのimpactを受けるsignはない。だが、だからといってChinese Republic (not-URSS)やNorthern Europe Federationの連中と同じだとは誰も思わないし、実際その通りだろう?」
「そうだ、気にしなくていい。導かれるか否かで、善人と悪人が分かれる訳じゃない」
DerrickとJosephの慰めに「ありがとう」と頷いたAmemiyaは、Hiroshiと冥の親としてできる事を懸命にするために、crystalを託された事をSergeiに報告するのだった。
その後、「なぜ私を呼んでくれなかった!?」と神と遭遇する機会を逃した大統領やその側近達に絡まれる事になるのだが、それでもAmemiyaはめげなかった。