Elizabeth Sauronにとって、腹違いの兄であるVeedal・Sauronはfamilyではない。寧ろ、敵として認識していた。
それはSauron Duke 家の家督争いのライバルであり、自分の命を狙っている相手としての敵だ。
家督争いでは今よりも幼かったElizabethはRudel派、そして目の前にいるVeedalの派閥にいいようにやられ惨敗してしまった。
母であるAmelia Sauronの根も葉もない不貞の噂を流され、そのせいで「ElizabethはSauron Dukeの遺児であるか怪しい」と、まことしやかに囁かれる事になった。
母がMentalをDiseaseんで長い間入院していたのは、後ろ盾だったRimsand EarlとPsychiatric clinicのDirectorの陰謀だった事は知っている。しかし、母がMentalを追い詰められEarlが陰謀を働くきっかけを作ったのは、間違いなく目の前の腹違いの兄達が流した噂が原因だ。
そうした流言飛語は政治的な戦いではよくある事で、いちいち深く恨んでいては社交界で敵を作りすぎてやっていけなくなる。ある程度……同程度に不Honoraryな噂を流す、何らかの形で埋め合わせをさせる等……やり返したら水に流すのが通例だ。
実際、Ameliaが長期の間入院し、今も若干正常とは言い難いconditionになっているのはRimsand EarlとPsychiatric clinicのDirectorの陰謀が主な原因で、そちらにはVandalieuが十分やり返してくれた。
しかし、それで過去の事を水に流すにはElizabethはまだ若すぎた。
(機会があれば土下座させて母-samaの事を謝罪させて、靴を舐めさせて、本当に舐めたらchinを蹴り上げて、『あたしは靴を綺麗にしろと言ったのよ、唾で汚せとは言ってないわ』なんて理不尽に痛めつけてやろうと思ってた。……でも)
「なんでも致します! 私と私の手の者がElizabeth -sama、Amelia -samaに行った全ての悪行を自供いたします! Rudel兄上に関する情報も全て差し出します! Sauron Duchyの機密情報も、私が知っている事は全て! ですからどうか、どうか私の顔を剥ぐことはお許しください!」
「あー、はいはい、ちょっと落ち着いて静かにしてくれますか」
そんな憎き相手の一人、VeedalがVandalieuの足元で縋りつくように土下座している。しかも、彼に少しずつ這い寄っている。
顔には苦渋の色はまったくなく、媚び諂っているようにしか見えない卑屈な表情だけがある。とてもあの美形ぶったすまし顔の兄と同一人物とは思えない。
その兄が、Vandalieuが戻ってくるまでElizabethの足元で同じように土下座していたのだ。maybe、その時彼女が「靴を舐めろ」とdemandすれば、ベロベロと靴が磨り減るまで舐め回した事だろう。
(なんだろう、気持ち悪い。それに、こんなのを見返すために戦ってきた日々が急にidiot idiotしく思えてきたような……。そうね、靴を舐めさせてchinを蹴り上げるのは止めよう)
Elizabethは、とりあえず練っていた主な復讐プランを止める事にした。主に、Veedalが気持ち悪いから。
「Sauron Duchyをどうするのか、具体的には現DukeのRudel・Sauronによりますが……Sauron Duchyの人達を無意味に苦しめたり、お前やRudelの顔の皮を剥いで攫ったりはしません」
「おおっ、本当ですか!? ありがとうございます! ありがとうございます!」
(それに、今直接手を下さなくても、あいつの望み通りにはならないだろうし)
Veedalは、Vandalieuの言葉を聞いて顔に希望を浮かべて何度も頭を下げている。しかし、Elizabethは彼とは逆の感想を覚えた。
Elizabethが知っている限りだが、Vandalieuは基本的に他人を呼ぶ時に「おまえ」とは言わない。あれは他人ではなく、敵意等の悪emotionsを持っている相手に使う言葉だ。nameがVidal Magic Empireの国名と似ていても、親しみはまったく覚えていないようだ。
それに、彼が言ったのは『無意味に苦しめたり』、『顔を剥いで攫ったり』はしない。それだけだ。
逆に言えば、Vandalieuは意味があるなら民を苦しめるし、VeedalやRudelを攫わず殺す事はあり得ると告げているのだ。
もっとも、前者については嘘にならないように言葉を選んだだけだろうとElizabethは思った。
Vandalieuは旧Scylla Autonomous Territoryを占領し、Rudel・Sauronが差し向けた討伐のための軍を何度か殲滅している。その結果Sauron Duchyが失った将兵の数は少なくなく、支払った戦費も多い。民は足りなくなった兵を補うための徴兵を受け、失った戦費を賄うために高くなった税金を払わせられている。
そもそも、旧Scylla Autonomous Territoryからの税収が無くなった時点でSauron Duchyの財政にimpactを与えているのだ。
そのため、VandalieuはSauron Duchyの民を苦しめていないとは言えないのである。……Nobleらしい普通のNobleなら「苦しめていない」と言い切るだろうが。
そしてVeedalとRudelに対しては、VandalieuはAmeliaにした事をしっかり根に持っている。特に、現Sauron DukeであるRudelはIris達Resistanceを切り捨てたため、Vandalieuが良いemotionsを持っているわけがないのだ。
そのため、Veedalを丁寧に追い返したVandalieuはElizabethに尋ねた。
「Elizabeth -sama、あいつらをどうしたいですか? Telkatanis元Prime Ministerのように公開処刑にするのは現段階ではやりすぎだと思いますが」
「面と向かって聞かれるとは思わなかったけど……公開処刑はやりすぎっていうのは同意よ」
なお、Urgen・Telkatanis元Prime Ministerは公開処刑にされた。OrbaumのOpen Plazaで罪状を発表され、設置された絞首台で吊るされている。
Prime Ministerという責任ある地位にありながら、国を裏切った。しかも、その際magicなどで操られる、もしくは毒を盛られていた等の痕跡はなかったのだから情状酌量の余地はない。
それにOrbaumの人々は、命は助かった(Demonにreincarnationした者も多いが)とはいえ貴重なpropertyを失った者は莫大な数に上る。そうした人々の処罰emotionsを納得させるために必要な措置だった。……これ以上国民の支持を喪ったら、Vandalieuが何もしなくてもCoup d'étatが起きかねないというCenterのNoble達の危惧もあった。
しかし Telkatanis元Prime Ministerの妻やchild、親類は事件とは無関係だった事が明らかであり、元Prime Ministerの事件前の行動から事前に察知して止める事は困難だったと判断されたために連座で罪に問われる事はなかった。
ただ、侯peerageは降爵されBaronになり、重い賠償金を支払わされることになったのでNobleとしては終わりかけているが。いっそ、残ったpropertyを全て売り払って平民になった方がまだ楽だろう。
その元Prime Ministerと同じ罰をVeedalとRudelにするのは、やりすぎだとVandalieuもElizabethも理解していた。
「これからSauron DuchyがVidal Magic Empireに宣戦布告するとかなら別だけど、そうでないならRudelはDuchy内でのreputationは良くもないけど悪くもないし、悪政を敷いている訳でもない。公開処刑でなくても、この時期に誰かに暗殺されるか急死したら、あんたが命じて殺させたに違いないとか勘繰る連中が出てくるわ。
それを国民が信じ込んだら後々面倒よ。あんたがSauron Duchyと穏当に付き合えるならだけど」
「そして、Veedalの方はあの態度でしたからね。さすがに土下座して全てを差し出すと言っている相手を処刑する程の理由はありません。しかし、なんであんなに卑屈になったのでしょう? 俺、あいつにはまだ何もやっていないのですが」
「あたしが知る訳ないじゃない」
『それはおそらく、我々が奴をrescueした際、Vandalieu -samaの力に気がついたからではないでしょうか?』
音もたてずroomに入ってきたSilkieの言葉に、二人は「なるほど」と納得した。
Sauron Duke 家のmansionにいたVeedalは、避難の際にVandalieuやその仲間の力を目のあたりにして心が折れ、今日にいたるまでそのままになっていたのだ。
『あの時は我々も余裕がなく、お客-samaのようにおもてなしをすることは難しかったので……やや雑に扱いましたし、なおさらかと』
「そういえば、Sauron Duchyには即刻降伏するようにって報せを送ったと言っていたわね」
「心が折れたとはいえ、Nobleとは思えない思い切りの良さと行動力ですね。若干ですが、見直しました。
それでElizabeth -sama、Sauron Duchyをどうしたいですか?」
若干Veedalを評価してから、VandalieuはElizabethにSauron Duchyに対する今後のpolicyを尋ねた。
「だから、それはあたしの手に余る話よ。そりゃあ、最終的にはSauron Dukeになるのを目指してはいたけど、最近はもうただのお題目と化していたし。
たしかに、あんたに頼めばDukeになれるとは思うけど……もう別にDukeになる事に拘らないって、Maheria達とも話し合って結論を出したの」
母であるAmeliaが、Sauron Duchyを遥かに超える国力と軍事力を持つMagic EmpireのEmperorの妻の一人になった。この時点でElizabethにとっては、十分やり返したことになっている。……想像していたより気持ちよくなかったが、Veedalに土下座させることもできたし。
もしElizabethが大勢の賛同者を率いる派閥の長だったら、彼女個人がそう納得しても止まる事はできなかっただろう。今まで尽力してくれた賛同者や援助者を無下にはできない。
しかし、主に援助していた後ろ盾は彼女のBodyを狙っていた現在入院生活中の前Rimsand Earlと、その彼の取り巻き。そして、Maheria以外に従っていたのはZohnaやMact達である。
彼女達も、当然Elizabethに異を唱える事はなかった。
「なるほど……では、後はRudelの出方次第ですね。Rudelが引退してDuchyの主権をElizabeth -samaに差し出すなら、Elizabeth -samaに名目上Dukeになってもらうというのが妥当だと思いますが」
「……Dukeって、名目だけで済むものなの?」
「大丈夫です、Head huntingした優秀なcivil officialに実務をさせますから。吊っただけで、首は繋がっていますけど。
あと、必要なら俺が手伝います」
『旦那-sama、言っても無駄なのは分かっていますが働きすぎです』
こうして、Sauron Duchyに対するVidal Magic Empireのpolicyは大まかに決定されたのだった。
その頃Veedalからの報告書を受け取り、発狂していたRudelは「そんなBAKANA事があるか!」と報告書を破り捨てていた。
そしてPolbork Generalや呼びつけたMage guildのGuild Masterに、Vidal Magic Empireという名の旧Scylla Autonomous Territory対策を練らせ、諜報organizationにOrbaumが現在どうなっているのか情報を探らせた。
Orbaumで起きた事を自分の目で見ていなかったRudelは、心が折れることもVeedalの報告書や、既に報告を行っている諜報organizationからの情報を信じる事ができなかったのだ。
ただそのままrunawayしてDuke Farzon領との協力体制や、本来敵国であるAmid Empireと独自に同盟を組む等という極端な手に出る事はなかった。
何故なら、Veedalの報告書を目にしてVidal Magic Empireに対して狂乱したのはRudelやその側近達だけ。そして怒りを覚えていたのは、旧Scylla Autonomous Territory奪還tacticsの時Alcrem Duchyが自分達を裏切っていた事を知った将やcivil official達だけだったからだ。
Sauron Duchyの多くの一般市民達は、Vidal Magic Empireの事を素直に歓迎していたのだ。そしてDemon King Guduranisを討伐したVandalieuを称えた。
なぜなら、Sauron Duchyは歴史的に『Goddess of Life and Love』Vidaへの信仰が盛んな土地だ。Vidaに祝福され、称えられたEmperorが治める国を敵対視する理由がない。
Vandalieuが従えるUndeadやDemonを見れば掌を返す者もいるだろうが、一般市民は伝聞でしか聞いていないため、あまり印象に残っていない。もしくは、Demon Kingを討伐する『Savior』に従うUndeadやDemonなのだから、特別なUndeadやDemonなのだろうと思い込んでいるのだ。
Vida's New Racesに関しても、実際に見ていないのでやはり印象が薄い。
いや、「Vidaがそれを認めたのなら」と逆の方向に掌を返しかねない。それだけSauron Duchyの人々にとって、Demon King Guduranis討伐という偉業とVidaからの賛辞を受けた『Savior』というimpactは大きい。
では、旧Scylla Autonomous Territoryを奪われ何年も争ってきた事を民は忘れたのかというと、そうではない。民たちはしっかり覚えている……Amid EmpireとRudel・Sauronの失政として。
旧Scylla Autonomous Territoryが最初に奪われたのは、Sauron Duchyを占領していたAmid Empireによるものだ。だからAmid Empireが悪い。
その後、何度攻めても取り戻す事ができなかったのはRudel・Sauron Dukeが悪い。税が上がったのも、息子やbrothersを徴兵に取られたのも、全てDukeが悪い。
『Earth』の現代Japanだったら、原因は勝手に旧Scylla Autonomous Territoryを実効支配しているVidal Magic Empire側にあると理解する人々も多いだろう。
しかし、このworldの多くの人々は政治に関心がない。Nobleに金を貸すような大商人や、templeでも上位の地位にある者、AClassやBClassの上位のadventurer、学者などの数少ない知識人等でなければ、政治に関わる機会がないのだから無理もない。
そして、そんな人々に情報を知らせるmediaもない。せいぜいBardの歌やpeddlerの雑談だ。街なら商業guild等が発行している新聞もあるが、その情報量も現代『Earth』のmediaには遠く及ばない。
そのため、多くの一般市民は経緯を考える事ができず誤解したままになる。
ElizabethはRudelの統治を「良くも悪くもない」と評したが、それはVandalieuと敵対しない場合での評価だ。敵対する事を選んだら、民の評価はマイナスに向かって一気に傾くだろう。
Rudel達は一般市民の誤解を解こうと考えたが、それも悪手である事にすぐ気がついた。誤解を解くという事は、『Savior』であるVandalieuを非難する事になるからだ。
こうなると八方塞がりである。『Lambda』worldの多くの国同-sama専制Monarch制を採っているSauron Duchyだが、軍が弱っているconditionで民にそっぽを向かれれば支配体制を維持できない。
そうしてRudel達が思案している間に、Veedalの報告書以外の信頼に足る情報が揃ってくるにつれて、RudelのMental conditionは発狂から諦観に似たdespairへと変化していった。
『Reaper of the Former Scylla Autonomous Territory』や、『Neck-Hunting Demon』等の連中だけでもSauron Duke軍は負け続きだった。それに加えて他者にTransformする個体を含む複数の強大なVampire、空を飛ぶ蛇体の龍、空を飛ぶGiant幽霊船にElected King城よりGiantなboneの群れに、拳でRank10前後のmonstersを殴り殺すMajin RaceやZombie……そして数百匹以上のDemonの群れ。
とても敵対してどうにかなる戦力ではない。長年の敵国であるAmid Empireと同盟を結ぶという歴史的偉業を成し遂げたとしても、Orbaum Elective Kingdomの他のDuchyと国境を接しているのがMirg Shield NationからSauron Duchyに移るだけ。
後は旧Scylla Autonomous TerritoryとAlcrem Duchyから挟撃されて磨り潰されるのみ。
「命からがらAmid Empire軍から逃亡し、必死に家督争いを勝ち抜き、懸命に統治してきた最後がこれとは……こうなると分かっていれば最初からElizabethにくれてやったものを!」
玉座に拳を叩きつけたRudel・Sauronは、その後力なくペンを握りSauron公peerageを辞し、Elizabeth Sauronに公peerageを譲る旨を書類に記したのだった。
十二のDuchyとElected King領と評されるCenterの十三の領で構成されるOrbaum Elective Kingdom。その中でVidal Magic Empireに対する態度を決めていないのは六。
Alda temple関係者が起こした騒動によって出遅れたAlsabah Duchy。
現Elected Kingを輩出したCorbit Duchy。
Jahan Duchyの南にあり、 Bahn Gaia continent東部の海に接しており、Peria信仰が強いDison Duchy。
Elected King領のすぐ東にあり、Dison Duchyの横にあるBotin信仰が比較的強いZectoir Duchy。
Elected King領の真南にある信仰よりも商業や芸術に熱心なPilchikov Duchy。
そして、Human社会ともVida's New Racesとも公平に付き合ってきた……逆に言えば日和見主義のRext Duchy。
まずCorbit Duchyは当主であるElected KingがDuchyを治めていたGeneral Officerの息子を説得し、Vidal Magic Empire側についた。そしてDison Duchy、Zectoir Duchyも地勢的な理由でVidal Magic Empire側に。
Alsabah Duchyは国内のAlda temple勢力の力が大きいため、Jahan Duchyと同じく中立を宣言した。……Jahan Duchyが中立でなくなった後も、中立の姿勢を保っているかは不明だが。
Pilchikov Duchyは、暫く中立的な立場で他のDuchyとDuke Farzon領の間に立ち、商業的な旨味を得ようと画策した。しかし、Duke Farzon領の反Vidal Magic Empire姿勢が想定していたよりも強硬で、中立的な立場であっても認めないと通告されその思惑は頓挫してしまう。そのため、遅れてVidal Magic Empire側に就く事を表明した。
そしてRext Duchyは、やはり日和見主義を続けようとしたがBirgit Duchyや領内のVida's New Racesにせっつかれ、世論に押される形で最後に親Vidal Magic Empireを表明した。
これにより、反Vidal Magic Empire派はDuke Farzon領のみ。中立派Alsabah Duchy、そして後に親Vidal Magic Empire派になる事が予定されている暫定的中立にJahan Duchy。残りのそれ以外のDuchyが親Vidal Magic Empire派となった。
各Duchyによって態度には温度差があり、Rext Duchyなど内心渋々なのが透けて見えるようだが……こうしてOrbaum Elective KingdomのAlda信仰が廃れ、Vida信仰が盛り返す環境が整い始めたのだった。
その頃、Orbaumの再建と復興やJahan Duchyへの布教活動と並行して、Demon KingのContinentやDemon continentでは【Demon KingのMemory】の有効利用が行われていた。
『意外な事に、Continentの形があまり変わっていませんね。多少端が欠けていたり、逆に海底が隆起していたりはしますが』
『Demon KingのContinentはBellwood達が一度更地にしたと聞いていたので、半島が消滅したり、Continentが割れたりしているかと思ったのですが』
『maybe、表面を更地にしただけだったのでしょう。地下深く掘り返して耕さなかったのではないかと』
『ああ、だからまたDevil Nestsだらけになったのか。地下深くにある洞窟等のmiasmaを見過ごしたのかも……』
『そしてDevil Nestsに覆われたため、結果的に何万年もの時間の流れのimpactをあまり受けなかったと。おかげで発掘作業がはかどりますね』
鋭いclawsの生えた腕を持つmole型やケラ型、Giantな鋏を生やしたカニ型やエビ型、太い角を持つRhinoceros Beetle型やstag beetle型、bulldozer代わりの牛型のDemon King Familiar達が話しながら発掘作業を進めている。
Vandalieuに喰われAbsorptionされた【Demon KingのMemory】は、既にVandalieuの魂とFusionしている。そのため、VandalieuはGuduranisのMemoryを自分のもののように思い出す事ができた。
それを利用して、VandalieuはMythの時代の遺物の発掘作業をDemon King Familiarに行わせていたのだ。ただDemon KingのContinentはまだまだmonstersだらけで、戦闘用ではないDemon King Familiarだけでは作業に支障が出る。
『Vandalieu、あまり作業範囲を広めないでくれないか? 目が届かなくなる』
そう言いながらGiantな矛でmonstersを貫いたのは、『Giant of the Moon』Dianaだ。彼女以外にも『Mountain Queen Dragon God』TiamatとBakunawaが護衛としてDemon KingのContinentに来ていた。
『ありがとうございます。気を付けますね』
『それと、Transformation Equipmentの使い心地はどうですか?』
この日Dianaは普段纏っている鎧ではなく、Vandalieuが作ったTrue giant用Transformation Equipmentを身につけていた。Leotard状のmain bodyに、深いslitの入ったskirtと見た目の露出度は高い。鎧部分は額を守るtiaraと、肘や膝上より上まである長手袋とニーhi-socksの上に拳や足を守る籠手やbootsくらいしかない軽装仕-samaだ。
おかげでDianaの、体のSizeがHumanと同じだったら整っているだろうproportionがEquipmentの上からでもよくわかる。白い艶やかな肌に、豊かな胸の膨らみ、腰は括れて脚は綺麗に伸びている。
『そうだな……軽装すぎやしないだろうか? 以前の戦装束も重装ではなかったが……これは少し薄すぎだと思う』
そう言って頬を赤らめ視線を逸らすDianaの顔を見上げながら、Demon King Familiar達は遠い目をして応えた。
『すみません、技術的限界です』
True giantは龍やBeast Kingと同じくGiantである。Dianaも約百meterの、Humanから見ればかなりの巨体であるため、Transformation Equipmentを作るのに必要な材料は莫大であった。そして、作るのに必要な手間はさらに莫大だった。
accurateに言うと、作る部分がGiantすぎて手間を惜しまなければいくらでも……何年でも作り続けられるconditionだった。
Defense Power Enhanced (1)、Barrier生成、Muscular Strength補助、瞬発力補助、耐刃、耐衝撃、耐寒、耐熱、耐電、耐毒、耐光、耐Disease、Self修復、変形速度increase、他の変形patternの追加、underwater活動可能化、Flight Ability付与……もう考えられる機能をできるだけ高性能に詰め込んでも、まだまだ余る。
なにせ、Human用の技術だ。True giant用Transformation Equipmentにはその何百倍、何千倍の容量があるのだ。
そのため、VandalieuはTransformation Equipmentの容量を減らして完成させることにしたのだ。……決してやましい理由ではない。
『兄や兄の子らは軽装を好むが、そのimpactか?』
『いえ、技術的限界です。ですが、装飾を増やす事はできます。どうしますか?』
重ねてそう答え、さらに露出度を減らす事を提案する。しかし、Dianaは『それよりも』と言って、Transformation Equipmentを纏った姿をよく見せるために、Demon King Familiar達の前でくるりと回って見せた。skirtが翻り、風が吹き、体長五meter程の重機代わりのDemon King Familiar達がちょっと揺れる。
『それよりも、お前から見て今の私はどう見える?』
『可愛いと思いますよ。それに脚線美が眩しいです』
新しい服を着てはしゃいでいる-sama子のDianaは、Humanの女の子と変わらないようにVandalieuには見えた。なお、脚線美を褒めたのはDemon King Familiarを通して彼女を見ているVandalieuが見えるのは彼女の脚だけだからだ。
『そ、そうか。やはり悪い気はしないな。お前もZernoのremainsをくれる事を了解してくれたのだし……』
『ん? いえ、別にTransformation Equipmentを受け取ってくれなくてもZernoのremainsは譲りましたよ?』
『Giant God』Zernoのremainsを、Dianaは先日Vandalieuに求めた。しかし、VandalieuはTransformation Equipmentを着る交換条件としてそれを提示したつもりはないので、そうcorrectionした。
『本当か!? ま、まあ、お前はGuduranisを倒す程のHeroだ。兄やTiamatも前から言っていたが、Heroならそういうものだな、うん』
『んん?』
何か大きな誤解が発生しているような気がする。Vandalieuはそう思って尋ねようとしたが、その前にBakunawaが地響きを立てながら駆け寄ってきた。
『Papa! Papaが動かなくなっちゃった!』
『おぶ』
『Bakunawa! 今、VandalieuのCloneを踏んだぞ!?』
『あ、ごめんね、Papa。踏んじゃった』
カニ型Demon King Familiarを踏み潰してしまったBakunawaの手には、ぴくぴくと小刻みに痙攣するだけになったRhinoceros Beetle型Demon King Familiarがいた。
『ああ、急に接続が切れたと思ったら握り潰してしまったのですね』
『Papa、このPapa治る?』
『うーん、無理ですね。脳が潰れています』
一応護衛としてTiamatとついてきていたBakunawaだが、彼はまだEmotionalに幼い(実際、生まれてから約一年)なので、仕事ではなくピクニック気分だった。そしてVandalieuも、Bakunawaを連れてきたのは、Orbaumに連れていけない息子を遊びに連れ出すためだった。
そして、Bakunawaが持っていたDemon King FamiliarはBakunawaの玩具用に創ったDemon King Familiarである。頑丈さを重視して作ったが、わんぱくな息子のやんちゃには耐えられなかったようだ。
『そっか……ごめんね、Papa』
Demon King Familiarが蘇らない事を知ったBakunawaは、悲しそうに俯きながらDemon King Familiarの亡骸を胸元に持っていき……首元から腹まで縦にある大きな口でペロリと食べた。踏みつぶしてしまったカニ型Demon King Familiarも、口から延ばしたtongueで殻の破片も残さず舐めとって食べてしまった。
『Bakunawa、命の尊さが分かりましたか?』
『うん、Papa。もうPapaを間違って壊さないようにするね』
『分かればよろしい』
『なんだか、見ていると不安を覚えるのだが……考え直そうかな?』
Pet(Demon King Familiar)の死を悲しみ、一歩大人になったBakunawaを見て何故か小声で呟くDiana。何十meterも上空の呟きはVandalieuの耳には届かなかった。
『では、代わりのDemon King Familiarを用意しますね』
『わ~いっ!』
『でも、まずは一度main bodyを呼ばないと……おや?』
「……おや?」
Demon King Familiarを創る事ができるのは、Vandalieuのmain bodyだけだ。Demon King Familiarが自力で新しいDemon King Familiarを創る事はできない。……最初から分離できるようにすれば数は増やせるが、それは新しく作ったわけではない。
そのため、main bodyをGufadgarnに頼んで【Teleportation】させてもらおうと思ったら、Demon King Familiarのshadowからmain bodyが生えてきた。
『もう【Teleportation】してきたのか?』
「いえ、移動しようと思ったらいつの間にか……conjectureしましたが、【Demon World Binding Technique】によるものですね。どうやら、Demon King Familiarも【Demon World Binding Technique】skillを使えるようになったようです」
『つまり、これからはDemon King Familiarがいる場所にmain bodyや人や物を【Demon World Binding Technique】で移動させ、逆にDemon King Familiarが人や物をmain bodyや別のDemon King Familiarの場所に送る事もできるという事です』
「すごく便利になりました。お手柄ですよ、Bakunawa」
『すごいや、Papa。ありがとう』
ボリボリとカニ型Demon King Familiarを咀嚼しているBakunawaを褒めるVandalieu。これで、ますますVandalieuのfoot workは軽くなった。originally Demon King Familiarとの接続に距離の制限がなくなっていたので、彼はその気になればworld中にDemon King Familiarを配置して、自由に……それも【Body World】に存在する者ごと……飛び回る事ができるようになった。
『すごいが、そのうちmain bodyの数も増やしてしまいそうだな』
「main bodyの数を増やす……試してみますか」
『……口を滑らせてしまったかもしれない』
『Vandalieuや、見つけたぞ!』
新たな禁忌にVandalieuが挑もうとした時、Bakunawaを追いかけてきたTiamatが何か小さなものを手にしてやってきた。
『Zernoのboneじゃ! 坊やが飲み干した沼の底の泥の中にあった!』
十万年以上前に途切れているDemon KingのMemoryを参考に発掘できるものは限られている。それは戦いで地中深く埋まっていたOrichalcum製の武具やその破片、そして『Giant God』Zernoや『Dragon-Emperor God』Marduke、『Beast God』Ganpaplioのboneである。
『妾の指先程もない程度の小さなfragmentじゃがな』
「ありがとうございます、Tiamat」
『うむ、ではこのboneにbloodを――』
『Tiamat!?』
「それはダメです。ZernoのboneはDianaが欲しがっていましたから」
そう言うと、Vandalieuは【Flight】でTiamatの手の上に飛び上がり、Zernoのbone片を両手で持ち上げてDianaのもとに持っていった。
『あ、ありがとう……Vandalieu、bone以外にも今すぐ必要な物があるのだが、良いか?』
「俺に用意できる物なら」
てっきり父親であるZernoを弔うために、もしくはお守りとしてboneが欲しいのだろうと思っていたVandalieuだったが、Dianaのdemandに特に深く考えず頷いた。
『bloodとboneと肉と内臓……できれば重要な臓器が欲しいのだが』
「それは俺のですよね? うーん、重要な臓器……【Demon Kingのheart】はまだないのですよね。脳でいいですか?」
そう言いながら、VandalieuはDianaの手にbloodを注ぎ、生やしたboneや肉を渡し、さらに【Demon King's Brain】で作った脳を乗せた。
(……あ、この光景は前にもありましたね)
そう気がついたVandalieuだったが、Dianaは『たしかに受け取った』というと、掌に乗ったVandalieuのbloodや諸々を口にすると、次いでZernoのboneを飲み込んでしまった。
『これで、暫く経てば私達のchildが生まれるはずだ。私はMother Godとしての権能はTiamat程ではないから必要な物が多くなってしまったが、【Demon King Fragment】が集まっていてよかった』
「ですねー」
どうやら、Vandalieuは二児の父になったようだ。満足げに下腹部を撫でるDianaに、(まあ、俺も今年で十三age。二年早まっただけだと考えましょう)とVandalieuは納得した。
『Papa、僕にImoutoか弟ができるの?』
「そうですよ、Bakunawa」
『もうすぐお兄-chanじゃな。Dianaは月を司るgiantじゃ、Talos程ではないが生命attributeとの関係も深い。きっと良い子が生まれるじゃろう』
Mythの時代から生きるDemi-Godたちの結婚観は、現代の人とはかけ離れており、Dianaもその例外ではないのだった。