Guduranisの【Instinct】を解放したRokudouとの戦闘は、苛烈を極めた……『Five-colored blades』にとって。
「ぐぅっ!?」
Rokudouが生やした【Demon King's Arm】の攻撃を避けきれなかったJenniferは、腕を交差して何とか耐えたが動きが止まってしまった。
その隙にRokudouは攻勢を強める。
『死ねぇっ! 貴-samaを殺し、私がこのworld唯一の神となるのだ!』
背中からcountlessの腕を生やし、death attributeのManaを宿した拳をProjectile Fireする。ただし、Jenniferに向けてではない。
「唯一とは、いよいよ本音を隠すreasonも失いましたか」
迫りくる黒い拳に対して、Vandalieuは腕を【Demon Kingのfallopian tubes】に変化させて対処した。
「【Death Flame Prison】、卵連弾」
連続して放たれる【Demon King's Blubber】が詰まった卵弾は黒い拳に命中すると、小規模の爆発を起こして拳を消し炭にして撃ち落としていく。
なお、VandalieuにとってRokudouとの戦いは、苛烈ではないが慎重である事を強いられるものだった。Rokudouを倒したところで、Orbaumの街に出現するmonstersが消えるわけではない。Heinzごと殺そうとすると、Heinzが結果的にRokudouと協力して防いでしまう。
そして、JenniferとDaianaはVandalieuにとってHeinz達とは別の立場である。
「下がれっ、Jennifer!」
そのJenniferをカバーするため、HeinzとEdgarがRokudouへ切り込んでいく。Jenniferは二人の援護を得て、態勢を立て直すために距離を取ろうとしたがそれを邪魔する者がいた。
「【Snake's Restaint】! 【Single Flash】!」
泥でできた蛇がJenniferの体に素早く絡みつき、動きを封じた彼女に向かってheartや星の装飾が施された杖が振り下ろされる。
「くっ!? なんで、お前があたしを狙う!?」
「邪魔だからに決まっています!」
粘度の高い泥の蛇を【Heroic Spirit Advent】でincreaseしたbody part AbilityとManaで強引に振りほどき、振り下ろされた杖を籠手で受け止めたJenniferの言葉に、Kanakoはきっぱりと答えた。
「なっ……お前らの敵もRokudouだろ!?」
「そのRokudouを倒すのに、あなたとそこのElfの人が邪魔なんです! 【猛爪蹴り】!」
「あたしとDaianaが!? どういう意味だ!?」
脚を猛禽類のgrip talonに変化させたKanakoの蹴りを、Jenniferは身を捻って回避した。それを追って攻撃を続けようとしたKanakoだったが、突然放たれた【Death Bullet】を避ける為に後ろに下がる。
「……そういう事かよ」
【Death Bullet】を放ったのは、HeinzやEdgarの攻勢を掻い潜ったRokudouである事に気がついて、Jenniferは顔を悔しそうに歪めた。
彼女とDaianaはRokudouに、Vandalieuに対する盾として利用されているのだ。
Vandalieuは、Darciaの仇である『Five-colored blades』のHeinzとEdgar、そしてDelizahなら殺す事に躊躇はない。今はRokudouを倒す事を優先しているが、Rokudouを倒すためならHeinz達がどうなろうが知った事ではない。寧ろ、望むところだ。
しかし、JenniferとDaianaは違う。何故なら、彼女達が『Five-colored blades』に加入したのはHeinz達がOrbaum Elective Kingdomに活動の拠点を移した後だ。つまり二人は、Darciaの仇ではない。だから、Vandalieuは仇ではないJenniferとDaianaは、故意に殺さないようにしている。
Rokudouはそれに気がつき、JenniferとDaianaを先ほどのように利用しているのだ。
その証拠に、たった今RokudouはKanakoに【Death Bullet】を放ってJenniferを援護した。彼女を利用し続けるために。
『まだ気がついていない-sama子だったのに、余計な事を』
Rokudou自身もそれを隠さずKanakoに向かって毒づいた。
切りかかってきたHeinzやEdgarを【Demon King's Arm】であしらいながらもRokudouは苦い顔をしていた。だが、直ぐにKanakoを嘲り始める。
『しかし、意外だな。Tsuchiya -kun、-kunが非情になれない飼い主の代わりに、邪魔者の始末なんて汚れ仕事を率先して引き受けるなんて。
なかなかのLoyal Dogぶりじゃないか。Vandalieuは、飼い主としてはAmemiya Hirotoよりは有能だったようだね』
嘲りが零れんばかりに乗せられたRokudouの言葉に対して、犬呼ばわりされたKanakoとその飼い主と言われたVandalieuは口々に言い返した。
「えっ、急に誉めるなんてやめてくださいよ、反吐が出ちゃうじゃないですか。ねぇ、Van?」
「そうですね。率直に言って、気持ち悪い……いよいよ【Demon King Fragment】のせいで正気を失いましたか?」
IslaやEleonoraなど、進んで犬と名乗る者が多いので、最近は犬呼ばわりが悪口に聞こえないKanakoとVandalieuだった。
「それに、今のあたしを例えるなら鳥でしょう?」
Transformation EquipmentをActivateさせた姿は、美しい翼を広げた極楽鳥のようになっている。しかし、実際には翼とgrip talonは彼女自身のBodyが変化したもので、Transformation Equipment自体のdesignはsimpleである。
Leotard Typeの、しかし翼を出すために背中はほぼむき出しになっているmain body。腰回りには短いskirt状の装飾に、腿の半ばまであるニーhi-socks。腕も肘までの長手袋で隠されているので、【Chaos】で翼を生やしている今のconditionでは普通に思える。
『くっ、口の減らない連中だ。【Demon King Fragment】やDeath-Attribute Magicをくだらない事に使って……Vandalieu! 貴-samaは自身の行いが自身の力を貶めていると何故気がつかない!?』
「Instinctを目覚めさせたからか知りませんが、急に短気になりましたね。それと、お前の価値観は俺には理解しがたいものです。自分自身の力を広く有効活用するのが何故貶める事になるのか、俺にはさっぱりわかりません」
Death-Attribute Magicで液体金属を作り、【Demon King's Ink Sacs】で染料を作り、【Golem Creation】で液体金属を加工して服にする。装飾に使うビーズやラメも、【Demon King Fragment】から採った素材を加工したものだ。
そうして【Demon King Fragment】やDeath-Attribute Magicを使う事に、Vandalieuは抵抗を覚えない。自分自身が自分自身のやりたいことのために、『自分自身』を使っているだけだ。
それはVandalieuにとってSelfの存在意義の証明であり、他者と繋がるための手段であり、喜びである。そのため、Rokudouの価値観はVandalieuにとって想像する事はできても、理解して共感する事は不可能なものだった。
「俺が自由にできる素材で、仲間に高性能な装備を作る事を非難されるいわれはありません。むしろ、『Origin』での事を考えれば、Death-Attribute Magicを貶めたのはお前の方では?」
同じReincarnatorの仲間や何の罪もないchildまで使って人体実験を行い、最終的には『Origin』worldをめちゃくちゃにしたのだ。
おかげで『Origin』でDeath-Attribute Magicのimageはかなり悪化した。Vandalieuのお陰でRokudouの無差別大量殺戮は防がれたので、底をついてはいないが。『Origin』の神に加わったVandalieuの一部も、『この分ではMe-kunとHiroshiが帰れるのは何時になる事か』と溜め息を吐いている。
『貴-sama、いけしゃあしゃあと……!』
しかし、RokudouがSelfを顧みる事はなかった。それどころか、彼が自覚していたのは怒りがさらに高まっている事と同時に、Vandalieuの「短気になった」という指摘が図星である事だった。Vandalieuや、その手下達に対する怒りが、急速に抑えられなくなってきている。
前世では約十年もの間【Bravers】の裏で暗躍し続けてきた。Amemiya Hirotoの親友を演じてきた。そのpatience力とMental力はどこに消えたのか。自分でもそう疑問に思うほどだ。
(【そんな事より、奴らを殺すのが先決だ! 奴らを殺せば、それで終わる!】)
だが、際限なく湧いてくる怒りと、それに比例して高まるManaによる全能感、そして何よりもInstinctの叫びがくだらない困惑を掻き消す。
(そうだ、この闘争や生存を司るInstinctを全開にしながらも【reasonを保っている】今のconditionの私こそ最強だ! 私が負けるはずがない!)
『……なら、私のmagicがその装備とやらに通じるか、試させてもらおうか!』
湧いてくる怒りをKilling Intentに変えて、RokudouはManaを集中させ、新たなDeath-Attribute MagicをCreationしてみせた。
『【Slaughter Blade Cluster】、命を刈り取る刃を受けるがいい!!』
death attributeのManaがcountlessの刃となって、周囲の生命全てを刺殺、もしくは斬殺するためにRokudouから放たれた。
「くっ、手当たり次第か!」
「【Super Provocation】! ……だめっ、やっぱり反応しない!」
【Slaughter Blade Cluster】の刃は、術者であるRokudou以外の周囲の生命体全てを自動的に狙う性質を持つのか、VandalieuやKanakoだけではなく、Heinz達にもいくつかの刃が向かう。それを好機と見たのか、それとも単に彼らごと攻撃しようとしたのか、Vandalieuは【Slaughter Blade Cluster】に【Hollow Bullet】をぶつけて砕こうとした。
しかし、Rokudouが放った死の刃は【Hollow Bullet】を悉く切り裂いてしまった。
「おかしいですね、ManaはVanの方が圧倒的に多いのに」
「Manaを刃の形状にすることで収束させ、刃の面だけでなら偉大なるVandalieuのmagicを上回る術を創り出したのかと」
「なるほど、面の防御を線で破ったと。腐っても技巧派ですね。でも、刃の面だけに気を付ければいいだけですよね」
そう考察するKanakoとGufadgarnは、それぞれmagicで【Slaughter Blade Cluster】を迎撃している。Gufadgarnはspaceを歪めて刃をそらし、KanakoはEarth-Attribute Magicで作った岩を操って、刃の側面に当てて弾いている。
Heinz達も、Kanakoに攻撃と共に指摘された事実を噛みしめたJenniferとDaianaが下がって守りに専念した事で、なんとか【Slaughter Blade Cluster】に対処していた。
そして、集まったところをVandalieuが【Divine Spirit Magic】によって黒い炎の髑髏に姿を変えたGhost達が噛み砕いた。
「技巧が自慢なのは、前から知っていますよ。もっとも、対処できる程度ですが」
『たしかに、私の研鑽によって高められた技術は貴-samaに通用するが、同時に貴-samaの強大なManaは厄介だ。だが、私はこうしている間も【Avalon】のAbilityによってGuduranisの力を学び、Manaを伸ばし続けているのだ!
それに……私の駒が揃ったぞ!』
Rokudouがそう言うと同時に、瓦礫と化したOrbaumの街のいたるところからmonstersが飛び立った。自前の翼や特殊Ability、そしてmagicによって空を飛び、Rokudouの命令に従って集まろうとしている。
「いまさら格下のmonstersを集めて、何か意味があるとでも?」
『格下のmonstersでも、私の……Demon King GuduranisのManaによってEnhanced (1)すれば、-kunでもやすやすとは倒せまい』
【Bloodshed Enhancement】のmagicでmonsters達のAttack PowerをAugmented (2)し、【Death Delay】のmagicで致命傷を受けてもしばらくの間動き続けられるようにする。他にも、Rokudouなら即興で新しいmagicを開発してmonstersをEnhanced (1)できるかもしれない。
「たしかに、実現すればちょっと面倒な事になりますね」
そう考えたVandalieuは、Rokudouに対してそう答えた。そして二人の会話の蚊帳の外に置かれているHeinz達と、次の事態に備えているKanakoは顔を顰めた。彼等にとっては、「ちょっと面倒」では済まなくなりそうだからだ。
『さあ、monsters共っ! 我が力を――』
「「「――――!?」」」
Rokudouの声は、monsters達のあげる断末魔やhorrorの絶叫によって掻き消された。
人々の救出や避難を終えたCuatroの砲撃が、地上からmonsters達を追いかけたBorkusやGodwinの一撃が、次々にmonstersを叩き落としていく。
『ぐるおおおおおおおおおおおん!』
特に猛威を振るったのが、直立したDragonのような姿……【Dragon God Form】に変化したKnochenだ。adventurerやSoldierも含めて誰もいなくなった街の一角へ向けて、boneの翼を広げて【Dragon God VenomのBreath】を吐いている。
『GUOOOOOOOooooo……』
毒が効かないはずのMythrilやAdamantite製のDragon Golemすら蝕み、錆びさせて落としていく。恐ろしいAttack Powerだ。
『ぐるおん』
しかし、Knochenとしてはboneの無い獲物には興味がないのか、特に何の感慨もなく残骸を建物の無い方向へ蹴飛ばして、すぐに他のmonstersに向かっていく。
『くっ、monsters共っ! 【早くDungeonから出て来い!】』
magicがかけられる距離まで近づく前に倒され、見る見るうちに数を減らしていくmonsters達に向かって狼狽したRokudouは叫ぶ。だが、monstersがそれに応えている-sama子はない。
飛び立つことができない、もしくは飛び立つ余裕のないmonsters達と、それらと戦っているadventurerやKnight達以外は無人となった街に立ち並ぶ門から新たなmonstersが出現するpaceに、変化は殆どなかった。
『ぐぬぅ……っ!』
「実現すればちょっと面倒な事になりそうな策でしたが……実現できそうにありませんね」
悔し気に呻くRokudouに、Vandalieuはそう言った。彼の意識はRokudouが創ったDungeon内部で湧き続けるmonsters相手に戦っているDemon King Familiarともつながっている。そのため、新しいmonstersが街に出てくるpaceが上がらない事が分かっている。
『ギシャアアアアア』
「Van~、来たよ~!」
『Vandalieu -sama!』
「…………」
そして戦場にやってきたのはmonstersではなく、PeteやPainと彼に乗ったPauvina、LuvezfolにIsla。そしてSpirit MagicでFlightしてきたRandolphだった。
『Vandalieu -samaっ、Elected King共は無事Sam達に回収されました!』
「町の人達の避難はだいたい終わって、取りこぼしがないかSam -san達が探して回って、KnochenとCuatroは念のためにちょっと距離を取るって!
Simon達は邪魔が入らないように頑張ってるよ!」
「ああ、Asagiの足止めですね。Simonには、暴れるようならboneを何千回でもへし折って構わないと伝えておきましょう。PauvinaもIslaもありがとう。
それでDandolip sensei、学校の方はどうなりました……おや? 髪を染めてどうしたんです、sensei?」
Pauvinaから避難状況を聞いたVandalieuが視線を移すと、そこにはmagicで赤毛に染めていた髪を金髪に戻したRandolphがいる。
彼は数秒の間黙ったままだったが、意を決したように口を開いた。
「学校の方は問題ない。生徒も俺以外の教職員も、逃げてきた連中も全員Dungeonの中に避難した。入り口はMeorilith達が守っているから、まずmonstersは入ってこられないだろう。
それで、これは今のような緊迫した状況で打ち明ける事ではないとは思うが――」
「あなたは『True』Randolph!? あなたも駆けつけてくれたのか!? Demon King Guduranis revivalの危機にあなたの助力が望めるのは、私達のallyでないとしても心強い!」
「空気を読め、若造! 今、俺から名乗るところだったんだぞ!」
自らの正体を打ち明けようとした刹那、Heinzにreal nameを叫ばれたことで色々と台noneになってしまった。やはり、もっと早く打ち明けておけば良かったと後悔するRandolphだったが、後悔先に立たずだ。
「え、Randolph? Dandolip senseiじゃないの?」
Heinzの声は大きく響き、Pauvinaを含めたこの場にいる全員の耳に『True』Randolphの名は届いていた。
「待ってくださいっ、その人はRandolphじゃありません!」
だが、何故か異を唱える者がいた。彼が尊敬する人物であるKanakoだ。
「この声は間違いありません。彼はRudolf……旅のBardです!」
変装する際に声色や口調を変えていたRandolphだったが、Kanakoの耳を欺くことはできなかったようだ。
「なんと、Dandolip senseiと『True』Randolphの正体がRudolfだったなんて」
「すまん、Kanako sensei。RudolfもDandolipも俺が変装していた仮の姿だ。real nameはそこの若造が口走った通り、『True』Randolph。引退したはずのSClass adventurerだ」
Kanakoは、以前Alcrem DuchyのMoksiの街で定期的に公演を行っていた時、現地staffとして採用した青い髪のElfのBard、RudolfとRandolphが同一人物である事を、主に声で見破った。それはたいしたものだが……そもそもRudolfも仮の姿である。
「ええっ!? あんなに演奏が上手いのに本業じゃないんですか!?」
「ああ、本当にすまなかった。だが、あんたのmusicとそれを教えようとする姿勢に感銘を受けたのは本当だ。
……Vandalieu、お前に冷や冷やさせられたのも、本当だ。言いたいこともあるだろうが、この場では忘れてくれ」
以前会った旅のBardと、Hero Preparatory Schoolの恩師の一人がSClass adventurerだった。衝撃的だが、別に裏切られたという訳ではない。Kanakoも、驚いてはいるがそれだけだ。
「分かりました」
なので、VandalieuはDandolipがRandolphだったことに納得し、受け入れる事に抵抗はなかった。
「この場で色々話している場合ではないですからね。もっとも、RokudouはRokudouの方でそれどころではないようですが」
先ほどからRokudouは黙ったまま、一点を見つめていた。それは、RokudouにとってVandalieu達のふざけたやり取りの隙を衝く余裕も失うほどの存在だった。
『Vida……まさかGreat Godがその身を長時間降ろせる程のYorishiroを確保していたとは!』
Rokudouが見つめていたのは、一つに集合したLegionの上に立つGodsしい輝きを纏った黒い肌のElfの美女、Darciaだった。彼女がVidaを降ろせること自体はRodcorteから知らされていたRokudouだったが、彼女がそれを長時間可能だろうという事を見抜き、驚愕する。
「ええ、十万年ぶりと言うべきかしら? それとも初めまして? どちらにしても、私達とは相容れない存在のようだけど」
Vidaを体に降ろして一体となったDarciaは、崩した口調でRokudouであると同時にNemesisである存在に応じた。
「あと、主なのはこの体の持ち主のDarciaで、私はあくまでも力を貸しているだけなの。まあ、あなたにどっちのnameで呼ばれるかなんて、どうでもいい事だけど」
口調と態度はほぼDarciaのもので、その意思もほぼDarciaのものだ。だが、そのwhole bodyから放たれる存在感は絶大だ。そして、その力も。
かつてGuduranisは、Farmoun GoldとNineroadの援護を受け、Aldaをその身に降ろしたChampion Bellwoodに敗れた。そのGuduranisの【Memory】を持つRokudouは、Great Godを降ろした存在の強さを理解していた。
(くっ、Familiar SpiritやHeroic spiritならともかくVidaそのものを……しかもあの-sama子では私が予想していたよりも長時間、それも副作用もなく降ろし続ける事ができるようだな。想定外の事態だ……『Five-colored blades』達を生かしておいた意味がなくなる!)
RokudouはDarciaを、Vandalieuの仲間を侮っていた。VandalieuがOrbaumのHuman達を見捨てられず、戦力を分散させたのは計算通り。しかし、monstersをあらかた倒して人々の避難を終え、過剰になった戦力が集まってくるという展開は想定外だった。
このままではHeinzがBellwoodを降ろしても『Five-colored blades』はDarcia達によって戦場から排除され、RokudouはVandalieuと盾の無いconditionで戦う事を強いられる。
そうなれば、Demon Kingの【Instinct】と【Memory】を持つRokudouでも生き残るのは難しい。実際、【Instinct】が【このままでは危険だ!】と叫んでいるのを感じるし、【Danger Sense: Death】の反応が高まる一方だ。
だが、追い詰められているのはRokudouだけではない。実は『Five-colored blades』達も同-samaだった。
「……Heinz、引き際だよ。Selen達の所に戻ろう」
DarciaやVandalieuの仲間達に排除されるという、Rokudouと同じ未来をconjectureしたDelizahがそう訴えた。
『排除』といっても、Rokudouごと自分達を殺そうとするVandalieuの仲間である。特に、Darciaには以前『許さない』と言われ、当時は仮初のBodyだったがトドメを刺されている。穏当に追いやるだけ、という事にはならないだろう。
「たしかに、引き際か」
Vandalieuがもし負けたら、Rokudouを倒せるのはBellwoodを降ろせる自分と仲間達しかいない。だからこの場に駆けつけたHeinzだったが、共通の敵……それもOrbaumの街全てを存亡の危機に陥れ、Demon King Guduranisのsoul fragmentを宿す敵を前にしても、Vandalieuには共闘を認められなかった。
それでも戦い続けたのは、VandalieuならRokudouを絶対に倒せると信じる事ができなかったからだ。そして退こうにもRokudouが巧みに距離を詰め、位置関係を調整し、迂闊に退けないようにしていたからだ。
だが、Great GodであるVidaを降ろす事ができるDarciaや他の仲間達まで集まった今なら、確実にRokudouを……revivalしかけているGuduranisを倒す事ができると確信できる。
それに、そのRokudouも今なら自分達の撤退を邪魔する余裕はないだろう。問題はVandalieu達がHeinz達を見逃すかどうかだが……。
「-donoは――」
「俺が行く!」
私が、と言おうとしたHeinzの言葉を遮って、Edgarが飛び出した。【今こそ命を賭ける時だ】という内なる声に背中を押されて。
その声をEdgarは、三つ巴で不利な状況から脱するためにpartyで最も年長な自分が動くべきだと判断した、adventurerのIntuitionが叫んでいるのだと思い込んでいた。
「うおおおおお! 【ミリオン――」
自身の魂に混じっているHeroic spirit Lukeのsoul fragmentを起動して、【Heroic Spirit Advent】と同じconditionにしてMartial Artsを放ちながら前に飛び出る。
Rokudouに向かって。
「スラっ!?」
(っ!? なんで俺はこいつに向かって切りかかったんだ!?)
そして、EdgarはMartial ArtsのActivateに失敗する程動揺して動きを止めてしまった。仲間たちの-donoを務めるために、前に出るのは分かる。だが、何故わざわざVandalieuとその仲間達に半ば包囲されているRokudouに切りかかるのか。これではVandalieu達にRokudou諸共殺されてしまうだろうに。
Heinz達は、Edgarの突然の行動を止める事ができない。partyで最も素早いのは彼だからだ。
そしてVandalieu達は、Edgarの行動に驚きはしても止めたり排除したりすることはない。彼等にとってEdgarも敵だ。その敵が無謀な行動をして勝手に危機に陥ったとしても、咄嗟にどうこうしようとは思わない。
例外はRandolphぐらいだが、彼も心情的にはVandalieu側だ。反射的に体が動くほど、Edgarの事を助けようとは思わない。
それに彼らはRodcorteがEdgarに何をしたのか、知らない。
とっさに動いたのは、Rokudouだった。
(【殺せっ! そして触れるのだっ! その魂に!】)
【Instinct】の叫びのままに、動きを止めて無防備になったEdgarの胸板を殺傷力をEnhanced (1)した【Demon King's Arm】の指で貫いていた。
「あっ、しまった」
「エドガぁぁぁぁっ!?」
Vandalieuのついうっかりというような声と、Heinzの悲痛な叫びが木霊する。
『な、なん……だだだあ?』
Edgarと自身の行動に困惑するRokudouだったが、Edgarを絶命させたと同時に彼はその魂に触れた。もちろん、Rodcorteに施されたCurseによって魂を砕くことはできない。だが、魂に触れる事だけはできる。普通なら触れるだけで、魂に小指の爪の先ほどの傷をつける事もできない。しかし Edgarの魂にはほかならぬRodcorteによって、あるものが施されていた。
『こおれええええはああああああっ!?』
がくがくと、Rokudouの体が不気味な痙攣を始める。彼自身も何が起こったのか分からないのか、混乱した-sama子で叫びだすと同時に、Rokudouから放たれるDemon Kingのsignが大きくなっていく。
「【Hollow Cannon】、【Death Cannon】、【Crimson Ice Execution Circle】、【Hell Thunderbolt Spear】」
「っ! 動ける奴は全員攻撃しろ!」
嫌な予感を覚えて攻撃magicをBarrageするVandalieuに続いて、Randolphの号令に応える形でDarciaやIsla達がRokudouに向かって攻撃を行う。
それらの攻撃はRokudouの体を抉り、穿ち、Slash、焼いた。だが、その傷はすぐに塞がりDemon Kingのsignは大きくなる。逆にRokudouのsignは小さくなり、微かにしか感じなくなっていく。
『わっ、たしっわれれれれぇぇえええええはあ! ふっ、revivalっ! ついにrevivedぞ! 我こそは、『Demon King』Guduranis!』
そしてRokudouだった黒い巨体はそう宣言すると同時に、Vandalieuや冥とは違う荒々しい、しかし Vidaを降ろしたDarciaよりも強大なManaを放った。