Elected King城で大量のmouseが出現し、Corbit Elected King達が避難していた頃。Orbaumの街はその異変に気がついていなかった。城の近くにある重要施設やUpper Class Noble Distructでは、いつになく騒がしい-sama子から何かあったのかと気がついていた者もいたが、城からやや離れた下Class Noble街や商業区、住宅街では何も気がついていなかった。
例外は二つ。一つは、神's Divine Protectionを得ている者達である。
「城で何かが、何かが起ころうとしている!」
Adventurer’s Guildの敷地内にある訓練場で体をほぐしていたHendricksenは、『Goddess of the Holy Spear』ElkのOracleによってただならぬ事態が始まっている事を知った。
Orbaumで待機し、備え続けてきたのは今日の日のためだと彼は仲間や他のHero Candidate達と立ち上がった。だが、完全武装でguildを飛び出して人々をpanicに陥れる訳にはいかない。
マントをHaoriって武装が目立たないように工夫して、何事もないかのような態度でguildを出て城を目指す。
「ありがとう、Arthur。気が逸るあまり、思わず走り出すところだった」
「Nobleのmansionがあるdistrictを武装して走り抜けたら、Knightがすっ飛んでくるからな。おかげで無駄な揉め事をしなくてすむよ」
「気にしないでください、走り出したいのは私も同じです。ただ……我々が走り出すと、Guardの方々とMiriamに怒られてしまうので」
「はははっ! 相変わらず頼もしいな!」
恐縮している-sama子のArthur達に、こんな時でも普段通りの冷静さや視野を維持できる事と、MiriamのleadershipをHendricksen達は称賛した。
「そんなことありませんよ」
(走り出そうとする皆-sanを呼び止めた理由はそれだけじゃなくて……早く城に着きすぎると都合が悪いからなんですから、そんなに褒めないで!)
Miriam達がHendricksen達を呼び止め、落ち着かせてから出発したのは、Elected King城でのRokudou Hijiri捜索が終わるまでの時間を稼ぐためだった。
非常時とはいえ、mouse程度の騒動でHendricksen達が城に入れるとは思えない。寧ろ、Guard達に阻まれるだけだ。だからImp Mouse達の安全にimpactはない。
しかし、発見したRokudou Hijiriが城の外に出たら、Hendricksen達はその場に留まって戦おうとするだろう。ただ戦意を向ける相手がRokudou Hijiriなのか、Vandalieuなのか、それともその両方なのかは分からない。
Hendricksen達には街の人々の避難に協力して欲しいので、戦いに直接加わってほしくないのだ。
(Hendricksen -san達にとっては大きなお世話。命を懸けて戦う覚悟を決めている人達を勝手に戦いから遠ざけるのは、侮辱なんでしょうけど……Vandalieu -sanと敵対してほしくないんですよね)
神's Divine Protectionを得た時から……いや、adventurerとなった時から戦いの果てに死ぬ覚悟はできている。そう語っていたHendricksen達に罪悪感を覚えながら、Miriamは彼らを誘導していく。
その-sama子をDivine Realmで見ている『Goddess of the Holy Spear』Elk達は、苦々しさと感心が入り混じった目をMiriam達『[Heart Warriors]』に向けていた。
『むぅぅ、いったいどうすれば? 結局あの者達に主導権を握られたままだ』
『やはり、Oracleで警告するべきだったか? 我々とHero達なら、『Thunderclap』のSchneiderの時のような事にはなるまい』
『それは既に、悪手だと結論が出ているだろう』
『こんな事なら、最初から近づかないよう警告しておけば……』
『今になってそんな事を言ってもどうにもならんぞ』
Hero Candidateにblessingsを与えている彼らは、『Goddess of Rain Clouds』Bacias達の裏切りも、Miriam達がVandalieuと繋がっている事も知っている。
しかし、それをOracleでHendricksen達に伝えて警戒するように促すのをElk達は躊躇った。何故なら、MiriamはもちろんArthur達も邪悪ではないからだ。
『[Heart Warriors]』は邪悪な事はしていない。それっぽいのはappearanceくらいで、言動は至極まっとうだ。adventurerの中でも、善良な部類に入る。法律はもちろんguildの規則、mannerも破っていない。
怪しげな素振りや言動はあるが、怪しげなだけで無害だったりする。
それどころかVida's Factionや自身にblessingsを授けた神の布教活動もしないし、一部のVida's New RacesやUndeadをTamed MonsterにするVandalieuの思想を広めようと主導的に動いてもいない。
それは異教徒ながら信徒としてはどうなのかと思わなくもないが、そうした者は古き良きHeroには珍しくない。templeの権威とは距離を置き、自身の行動で神への信仰を表す。昨今のtempleで増えている、dialectのみで行動が伴っていないClergymanよりは、余程信徒として優れている。
(正直、裏切り者ながら良き者を選んだものだとBacias達に感心したぐらいだ)
War Godとしての性質もあるElkは、そう内心でArthur達を評価していた。
そうした事情もあり、OracleでHendricksenに[Heart Warriors]について警戒するよう指示を出す事はしなかった。
もちろん、まだ面識がないconditionで『[Heart Warriors]』の面々のnameや容姿を伝え、『警戒し、近づかないようにせよ』と指示を出す事は可能だった。
そうしていれば、神の言葉に絶対的に従い使命を達成する事に人生の全てを投げ打ってwhole body全霊を尽くす程のfanaticではないHendricksen達も、『[Heart Warriors]』を警戒して一定の距離を取り続けたかもしれない。そして、距離があればHendricksen達が見るのは『[Heart Warriors]』のappearanceだけで、人となりまで知る事はなかっただろう。
『だが、今の時点では問題ないのではないか? こちらもVandalieuに関する情報を『[Heart Warriors]』から得ているし。迫っている脅威に対して動く際に邪魔をされるどころか助言を受けている』
しかし、そうしなかったのは『[Heart Warriors]』からVandalieu達に関する情報を手に入れられるかもしれないという、狙いがあったからだ。
そして実際、いくつかの情報は手に入ったのだが……。
『何を言うっ! Vandalieuが毎朝danceの練習をしている事や、brushingのテクニックに優れている事を知ったところでなんの意味がある!?』
仲が良くなったのでちょっとした雑談や世間話をするようになったが、雑談や世間話では役立つ情報はほとんどはいらなかった。
『いや、それだけではない。我がHeroは、『[Heart Warriors]』と合同で行った依頼で危ないところを助けられた』
『Vandalieuはともかくとして、『[Heart Warriors]』までも敵視させるのは最初から無理だったのではないか? 奴ら、怪しげなくせに怪しいところが全くないぞ』
『……もういい』
ドンッとElkが槍の柄を床に叩きつけ、重い音を響かせるとGodsは口論を止めた。
『各々方、これまでの反省は後に回せ。これから大きな試練がOrbaumを襲う。まずは、それを凌がなければならない』
『Elkよ、Rokudou HijiriなるReincarnatorがreincarnationしているというVandalieuの言葉を信じるのか?』
『信じるつもりはないが、否定するつもりもない。
だが、城の騒ぎが何かの前触れである事は疑うまでもない。真偽を問う時期はもう逃している。今はこれから起こる事態に対処するのみだ。……できるのならだが。そこは、我々が育てたHero達を信じるしかあるまい』
『言われるまでもない! 新たに選んだ我がHeroは既に城に駆けつけている!』
『我々のHeroがHeinz達の力となり、Demon King討伐の一助となってくれるだろう』
Elkに対してそう言うのは、『God of Heat Haze』Rubicanteや『God of Administration』Millione達だ。Rubicanteは以前Hendricksenの友人のCarlosというHero Candidateにblessingsを与えていたが、彼がVandalieuに導かれるとblessingsを剥奪して、Orbaum Elective KingdomのあるKnightにblessingsを与えた。
新しくHeroを育て直す時間はないと考え、既に高い実力を持っていたKnightを選んだのだ。Millione達は、adventurerではなく宮廷MageやKnight、GuardをHero Candidateに選んだGodsだ。
『誰が一番槍だろうと、一番手柄だろうと、構わん。好きに競え。
重要なのは、これから起こる戦いの結果だ』
Alda's FactionのSubordinate God達が騒いでいる頃、Asagi達には何も知らされていなかった。
「はぁ、いつまで待機し続けなきゃならないんだろうな」
Zeanの護衛という名目で雇われている彼等だが、Asagi達三人はBirgit Duke 家がとった宿に滞在している。
それはVandalieuが滞在しているNoble街から距離を置くためだったが……実は物理的な距離だけではなく、情報的な意味でも彼らは離れていた。
Alda's FactionのGodsからAsagi、Tendou、Shoukoの三人はblessingsを得ていない。そのため、GodsがOracleを下す事はなかった。別に疎んでいた訳ではない……頼りにしていた訳でもないが。
ただ、彼ら三人の担当はRodcorteだと思っていたからだ。もし、AldaやNineroad、ElkがAsagiにOracleを下したとしても、Alda's FactionのGodsに対して信心の無いAsagi達には届かなかっただろう。
「だったらいっそ戻る……って言うのは無理なのよね。仕事だから」
「Birgit Dukeの依頼だからな」
「違うだろ! このOrbaumでRokudouが事件を起こすなら、俺達が止めずにどうするってんだ! Vandalieuに任せっきりではダメだろ!?」
「「いや、任せっきりでもいいような気もするけど」」
熱弁を振るうAsagiに対して、TendouとShoukoは声を揃えて言った。二人とも、Rokudouに対して言ってやりたいことはあるし、元【Bravers】として、そうでないVandalieuに尻ぬぐいをさせていいのかと思わなくもない。
元仲間の裏切り者を止めるのに、自分達も尽力するのが筋だろうと。
しかし、TendouとShoukoはVandalieuに信頼されていない事を理解していた。……前々世で同じ学校に通っていただけの他人なのだから当然だ。しかも、今の自分達はRodcorteの紐付きである。
協力に値する力を持っている自負はある。Tendouの【Clairvoyance】なら、Rokudou Hijiriが潜伏している場所も見抜けるかもしれない。Shoukoの【Ifritah】の高いAttack Powerも、決定的ではないが戦力になるはずだ。そしてAsagiの【Mage Masher】なら、Rokudouが習得したDeath-Attribute Magicを消す事ができる。
Ability以外にも、Birgit Duchyで経験を積んだ三人は以前よりもずっと強くなっている。自力だけでも、AClass adventurer相当の実力はある。……【Demon King Fragment】の研究に注力していたため、guildの依頼をあまり受けていないから実際の等ClassはBClass adventurerだが。
それに、【Demon King Fragment】に関する研究でも一定の成果があがっている。本当に一定だけの成果だが。
しかし、Vandalieu自身に共闘を拒否され、警告まで受けている。その時点で共闘は不可能だ。寧ろ、今すぐAsagiを引きずって去る事がVandalieuに対する最大の援護かもしれない。
「ただ、たしかに任せきりにするのが悪いとか、俺達にも何かできるはずだと思っていない訳じゃない」
「状況が深刻になった時、あたし達がいたら誰か一人でも助けられるかもしれないとは思うし。それに、世話になっているBirgit Duke 家の人達を見捨てるのは、不義理だし」
「だよなっ! じゃあ、Vandalieuに渡りをつけよう! とりあえずAdventurer’s Guildにいる、あいつの仲間にletterを渡して――」
「「それはやめろ!」」
行動力溢れるAsagiを、二人は慌ててひっつかんで止めた。
このようにやる気はある三人だが、Rodcorteは彼らにRokudouの情報を渡さず、そしてVandalieuが動きだした事を知らせるつもりはなかった。
Rodcorteは、TelkatanisがKanakoの前蹴りでfaintedした事に気がついている。それでもAsagi達に声をかけないのは、彼らがRokudou Hijiriの前に立ちはだかるつもりだからだ。
Rokudouを利用してVandalieuを倒し、Vandalieuの仲間や彼が治める国をそのまま滅ぼしたいRodcorteとしては、今のAsagi達は面倒な存在でしかない。
そのため、Oracleを下さなかった。しかも Noble街の外の宿に滞在しているので、彼らが異変に気がつくのはずっと後になるだろう。
そしてElected King城上空では、戦いが始まっていた。
『death attributeのManaを圧縮して放つ術……なるほど、【Death Bullet】!』
早速Vandalieuに放たれたのと、同じmagicを放つRokudou。
「【High-Speed Spiral Shot】」
Rokudouの放った【Death Bullet】を【Magic Absorption Barrier弾】で打ち消しながら、投げknifeのように手から生やした【Demon King's Horn】を【Grudge Throw Arts】skillで投擲するVandalieu。
Rokudouはそれを難なく回避するが……。
『むっ!?』
極細の糸が彼の体に絡みついた。回避した【Demon King's Horn】に、【Demon Kingのsilk gland】から作られた糸が巻き付けられていたのだ。
「【Grudge Throw】」
『させんっ!』
動きを封じているうちにと、別のMartial ArtsをActivateさせ【Demon King's Horn】を投擲するVandalieu。だが、Rokudouは絡みついた糸から素早く抜け出した。そのskinの表面は、ぬるぬるとした光沢を放っている。
そのまま反撃に移ろうとしたRokudouだったが、城から放たれた怪光線によって攻撃の中断を余儀なくされる。
「急にテカテカになりましたが、あれは【Demon KingのSebaceous glands】と言ったところでしょうか?」
「blubberを直接生じさせたようには見えなかったので、おそらくは」
Rokudouへの牽制や小手調べの攻撃を繰り返しながら、Vandalieuは彼を分析していた。
Rokudouが【Demon King Fragment】で作られたBodyにreincarnationした事は知っている。通常のfragmentの所有者のように自身のBodyに【Demon King Fragment】をInfestさせるのではなく、【Demon King Fragment】そのものがBodyなのだ。
その違いはあるのか、前例がないので分からない。
【Demon King Fragment】による攻撃は通用するのか否か、距離をとって探っているのだ。それに、戦いに熱中している時にShockwave of Deathを放たれたら、防ぐのに失敗するかもしれないという懸念もあった。
「Telkatanisが、集めたfragmentの詳細を知っていれば助かったのですが」
【Demon King Fragment】のsealedには、どんな部位のfragmentなのか記されてはいない事が多い。例外は、一度sealedが破られた後再sealedした際に、詳細なrecordを取る事ができたfragmentだけだ。
そのためTelkatanisも【Demon King's Nose】……数年前に『Five-colored blades』がsealedしたfragment以外は知らなかった。
「【fragment】へ呼びかけてはどうでしょうか?」
これまでの【Demon King Fragment】と同じなら、Vandalieuをmain bodyとみなして彼と合流しようと宿主を故意に破滅させようとする事があった。それを提案するGufadgarnに、Vandalieuは首を傾げて答えた。
「それなのですが、どうにも妙です。Rokudouの【Demon King Fragment】は、runawayしていないように感じます。何をもってrunawayしていると定義するかによりますが。
GufadgarnやFidirgは、何か気がついたことはありますか?」
『あ、あるッス! あいつ、めちゃくちゃGuduranisっぽいッス!』
Vandalieuが尋ねた途端、それまで無言だったStaff of the Five Sinsに宿った『Evil Dragon God of Five Sins』Fidirgがそう叫ぶように言った。
「それは姿かたちの事ですか?」
『違う。そうではなく、雰囲気というかsignというか……そうしたものがGuduranisと似すぎているというか、そのものなのだ』
『このsignは、十万年以上経っていても忘れはしない。boneの髄から震えあがるようなhorrorと圧力……!』
『とにかく恐ろしいッス! 杖を握っているのがVandalieuでなければ逃げ出したいくらいッス!』
FidirgはRokudou Hijiriから、Demon King Guduranisのsignを感じ取り怯えていた。気のせいだ、体全体が【Demon King Fragment】でできているから、そう感じるだけだ。そう自分に何度も言い聞かせたが、それでもInstinctが「あれはGuduranisだ」と訴えるのを止めないのだ。
「……私もそのように感じます。もっとも、なぜそのように感じるのかは分かりませんが」
Gufadgarnも、小規模の【Teleportation Gate】を繰り返し開いてRokudouの【Death Bullet】や【Demon King Fragment】を使った遠距離攻撃をTeleportationさせて跳ね返しながら、首を傾げていた。
(【fragment】に振り回されず、使いこなしている。だからといって、Guduranisと似ているとは感じない。実際、偉大なるVandalieuからGuduranisと同じsignを覚えた事はない。
では、何故だ? 体全体が【Demon King Fragment】でできているせいか? だとしても、Bodyを動かしている魂が別人の物なら、signも変わるのではないか?)
そう思案するが、答えは出ない。
「RokudouがReincarnatorである事が関係しているのかもしれませんね。でも、Cheat Abilityとは関係ないでしょうから……Rodcorteが何かしたのか?」
「そういえば……Guduranisを倒した時、Guduranisの魂も分断してsealedしたのですが、Aldaが幾つかのsealedと管理を魂の専門家であるRodcorteに依頼していました。このworldに全ての魂が無ければ、Guduranisが完全revivalする事はないだろうと」
『たしかにそうだったッスけど……いや、そんな、まさか!?』
「……あー、それでしょうね」
VandalieuがRokudouを見ると、距離や戦闘音にもかかわらず会話が耳に届いていたのか、彼はにやりと口の片端を釣り上げた。その笑みが、何よりも雄弁に答えを物語っていた。
『ヒィィィ!? 正気の沙汰じゃねぇッス!』
『-kun達に正気を疑われるとは、心外だな』
そう言いながら、Rokudouは胸部にActivateした【Demon King's Nose】から竜巻のような空気砲を放った。
「お前に心外だと言われる事が、心外です」
Vandalieuはその空気砲を黒い光線……【Hollow Cannon】で貫いて掻き消し、そのままRokudouを攻撃する。
『すべては貴-samaが原因だ。【Demon King Fragment】を多用して己の意志のまま力を振るう貴-samaを倒すには、同じDemon Kingの力が必要。そう考える事の何処がおかしい? まあ、Rodcorteが正気か否かなど、今の私にとってどうでもいい事だが』
Vandalieuの【Hollow Cannon】を軽々と回避して、Rokudouはそう言った。
『それよりも、私に先んじて神に至った-kunともあろう者が随分と不自由そうじゃないか。前世でも思ったが、-kunはphilanthropyの神でも目指しているのかね?』
そう言いながら、RokudouはVandalieuに向かって再度空気砲を放つ。Vandalieuはそれを回避せずに、やはりmagicをぶつけ打ち消した。
何故なら、Vandalieuの背後には街があるからだ。
「philanthropyとまではいきません。ただ、お前にない良識と分別があるだけです」
良識はともかく分別については、OrlockやCorbit Elected King達が異議を唱えてきそうだが、Vandalieuはあるつもりである。RokudouにDungeonに閉じ込められた時に、Dungeonを破壊して脱出しなかったのもその良識と分別故だ。
Dungeonの出入口が存在したのは、Elected King城の最下層。内部からDungeonを破壊して脱出した場合、Elected King城は最下層からVandalieuの攻撃の余波を受ける可能性があった。それを避けたかったのだ。
そのため、VandalieuはDemon King Familiarを食べて【Augmented Attribute Values: Cannibalism】の効果でAbility Valuesを上げ、GufadgarnはTransformation Equipmentを使ってmagicの効率を上げてDungeonの外に【Teleportation】する方法を選んだ。
戦いの結果Elected King城が全損しても、Vandalieuとしては被害者の数が抑えられるのなら別に構わない。だが、さすがにCorbit Elected King達の見ている前で、自分の攻撃によって城に大きな被害を出すのは嫌だったのである。
もちろん、最も大きな理由は城の中にKanakoが、そして敷地内にTelkatanisに化けたIslaがいるからだが。
『なるほど、神の座に至りながらbelieverでも何でもないHuman達のためにくだらない配慮を続け自分を縛っている。-kun自身が勝手に枷にかかっているのは、私にとっては都合の良い話だ。
だが、それが気に食わない!』
そして、Rokudouは【Demon King's Nose】から空気砲を三度放った。だが、Giantな二つの鼻孔から放たれた空気には、彼がmagicで作りだしたDiseaseとDeadly Poisonが含まれており毒々しい紫色に染まっている。
『己の存在がどれほどの価値があるのか自覚しない愚者めっ! 貴-samaほど腹立たしい存在はこの世に存在しない!』
自分自身が特別な存在になる事を狂おしいほど求めたRokudouにとって、Vandalieuの在り方は認める事ができないものだった。
だからVandalieuの姿を直接見た途端、脳髄が焼けるような激しい怒りを覚えたのも【当然の事であり、無理はない】とRokudouは思った。
「大きなお世話です。後、相互理解が不可能なのは分かり切っていた事でしょう」
VandalieuはRokudouが放ったvirus空気砲から、【Disinfect】のmagicで生命に害になるものを消し、【Hollow Cannon】を放って掻き消し、袖の内側から複数の【Demon Kingのfallopian tubes】を伸ばす。
「ファイエル」
そして【Demon Kingのfallopian tubes】から【horn】や【bone】で作った弾丸による連続射撃を行った。
Vandalieuにとっても、自分から神になりたがるRokudouの価値観は理解できないものだ。自身のGiant Idol StatueやGrand Templeを建設しようとする圧倒的な数の民に向かって、果敢にも反対運動を展開する彼とRokudouがお互いを理解する時は永遠にこないだろう。
『ふんっ!』
だが、RokudouはVandalieuが放った弾丸を体の表面の肉を膨らませて半球体を作り、その弾力で受け止め弾いてしまった。
「あれは……【Demon Kingのpaw】でしょうか?」
『一撃ではダメか。ならこれでどうだ!?』
RokudouはVandalieuが思わず発した言葉にあえて答えず、今度は胸部だけではなく両腕両脚、そして背中にそれぞれ【Demon King's Nose】を出現させ、空気砲を放つために唸り声のような音を響かせて息を吸った。
『四方八方に撃たれては手も足も――!?』
でないだろう。そう言い終える前に、目の前に【Teleportation】してきたVandalieuの杖にsolar plexusを突かれ、思わず息を吐きだしてしまう。
そのRokudouに向かって、Vandalieuは拳を構える。その背後にPrincess Leviaが現れ、次の瞬間Vandalieuの拳が炎に包まれる。
「【Death Flame Prison】」
『【Heat Removal】うううう!』
Vandalieuの拳ごと爆発した炎がRokudouを包み、Rokudouは赤黒い炎に対して熱を消す【Heat Removal】で炎を消そうとするが、消しきれずに高度を下げる。
「実験終了。奴は、魂を砕くことはできないようです」
先ほどの【Death Flame Prison】は、【Hell World God Magic】だった。Ghostの力を借りてActivateさせる【Divine Spirit Magic】ではない。なのに、Princess Leviaの姿をRokudouに見せつけた理由は、RokudouがVandalieuと同じように魂を砕き、喰らう事ができるのか試すためである。
しかし、Rokudouにはそうしようとする素振りもなかった。
「【Demon King Fragment】による攻撃も、Death-Attribute Magicも、Absorption等の手段でNullification化してくる-sama子はない。
では考慮するのは地上の被害だけにして、このまま攻め切りましょう。Gufadgarn、【Teleportation Gate】を」
「偉大なるVandalieuの意志のままに……Vandalieuよ、乱入者です」
【Body World】に待機している仲間を呼び出して、一気にRokudouを倒そうとしたVandalieu達だったが、乱入者によってそれは中断された。
Elected King城の上空という、目立つ場所で戦っていたVandalieu達だったが、それまで戦いに介入していたのはTelkatanis Prime Ministerの執務室にいるDemon King FamiliarとKanakoぐらいだった。Elective KingdomのKnight達は、RubicanteのHero Candidate達も含めてPrime Ministerに化けているIslaの誘導によってCorbit Elected King達の安全を確保するのを優先している。
だが、magic itemによってHigh-SpeedでFlightしてきた五人の人shadowがこの神対神、もしくはDemon King対Demon Kingの戦いに乱入した。
「【輝烈刃】!」
『ようやく来たか』
攻撃されたというのに、炎に包まれたままのRokudouは安堵した-sama子で態勢を立て直し、【Demon Kingのpaw】でLight-Attribute Magicを弾き散らす。
「全力ではなかったとはいえ、軽々と……奴がRokudou Hijiriか」
乱入者、『Five-colored blades』のleader、Heinzはそう言うと新たな剣……かつてBellwoodが振るったlegendのHoly Swordを構え直した。
「Vandalieu、遺憾だろうがここは人々のため、Rokudou Hijiriを倒すまでは共闘しよう!」
HeinzはRokudouを人々に対する脅威、そして共通の敵として認識してVandalieuにそう提案した。だが、Vandalieuも、背後のElfのShoujo(Gufadgarn)も口を開かない。だが、否定の言葉やbloodthirstが飛んでくることはなかったので、Heinz達は彼らの沈黙をもって肯定と解釈した。
「行くぞ、皆っ!」
Heinzの号令と同時にDaianaが付与魔法でAbility ValuesをAugmented (2)し、Delizahが【Shield Technique】のMartial Arts、【Super Provocation】をActivateしてRokudouの戦意を自分に強制的に引き付けようとする。
『フフフッ』
だが、Rokudouは炎を【Heat Removal】で消しきると、Delizahを無視して体の表面を変化させる。
「ダメッ、Provocation系はまったく効かない!」
「何をするつもりか知らないが、黙って見ていると思うな!」
Delizahの悔しげな声と同時にJenniferが飛び出し、Rokudouに挑みかかる。
「【千輝爆拳】!」
『ははは! 痒いなっ!』
High-Speedの輝く拳が黒い異形の巨漢のwhole bodyを撃つ。しかし、Rokudouは【Demon Kingのpaw】の弾力でJenniferの打撃を防ぐ。
『では、有象無象には消えてもらおうか! Catherine!』
Rokudouがそう叫ぶと女のGhostが……それまで姿を見せなかった彼の部下の一人、【Artemis】のCatherine Millerが現れる。そして、Rokudouの背中に生じた【Demon King's Nose】からvirus空気砲が、明後日の方向に放たれた。
「はぁっ? どこに向かって――嘘だろ!?」
virus空気砲は、Catherineの【Inevitable Target】のCheat Abilityによって生きているように軌道を変えてJenniferに向かってthrust進む。とっさに逃げようとしたJenniferだったが、Rokudouがそれを許さない。
「【Shining Slash】!」
だが、そこにEdgarが飛び込んできた。その瞬間、Rokudouは耐えがたい衝動を覚え、思わず彼に向かって全ての注意を向けていた。
しかし、Edgarの短剣による一撃はRokudouのskinを守る【Sebaceous glands】から分泌された皮脂によって滑らされてしまった。だが、その隙にJenniferはRokudouの間合いから離脱する事に成功し、virus空気砲はVandalieuによって毒性も含めて掻き消された。
「【Radiant Life】! 【Evil-destroying Radiant True Strike】!」
「【World Breaker Hollow Cannon】」
そこにHeinzの輝きを宿したHoly Swordの一撃、そして後方からのVandalieuのmagicがRokudouを狙う。
「なっ!?」
ただし、【World Breaker Hollow Cannon】はHeinzの背中ごとRokudouを狙っていた。Heinzは慌てて振り返り、切りかかるはずだったRokudouに背を向けて、【Evil-destroying Radiant True Strike】を自身に迫りくるmagicに向かってぶつける。
『Nanaya! 【Absorption Magic Shield】!』
そしてRokudouはHeinzの背ではなく、Vandalieuのmagicに向かって彼が開発したDeath-Attribute Magicを放つ。ManaをAbsorptionする【Magic Absorption Barrier】を盾状に展開し、それを部下の【Ares】のSugiura Nanayaの【Attack Power 2x Augment Multiplier】でAttack Power……つまり込められたManaを倍にする。
「……virusを消す方に気を取られすぎましたね」
『チッ、運の良い奴らッス』
【World Breaker Hollow Cannon】を何とか耐えきったHeinzとRokudouの姿を認めて、Vandalieuは息を吐いた。
「な、何のつもりですか!? 今は、あなたが訴えた脅威であるRokudouを倒すために協力するべきではないのですか!?」
「それに、さっきは――」
驚いて叫ぶような口調で問いただしてくるDaianaとJenniferに、Vandalieuはbloodthirstを向けながら答えた。
「俺は、共闘するとは一言も言っていません。お前達が誤解するのを期待して、黙っていただけです。
お前達と共闘する気も、必要性も、全くありません」
「っ!?」
静かな、しかし完全な拒絶。まさか、共通の敵が現れても手を組む事ができないとはと、思わずHeinz達は息を飲む。
『クハハハ! 想定通りだ! お前達が共闘できるはずがないという、私の考えは正しかった! さあ、どうするこのworldのChampionよっ! 私と組んでVandalieuを倒すかね!?』
「そんな事ができるはずがないだろう!」
「当たり前の事を偉そうに誇るのはどうかと思いますよ」
こうして、戦いは三つ巴の-sama相を呈したのだった。