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Chapter 346: 出だしで躓く大tactics

「な、なんだ? もう夏だというのに寒気が……気のせいかしら?」

「ひぃっ!? mouseッ、mouseよっ!」

mouseぐらいでそんなに騒ぐものでは――きゃああああああっ!?」


 どこからともなく現れたmouseの大群に、Orbaum Elective Kingdomの中心、Elected King城はpanicに陥った。

「この大量のmouseはなんだ!? magicか何かで操られているのか!?」

「落ち着け、たかがmouseだ! Maidは群れから離れろ、civil officialは書類を守れ! 誰か犬か猫を連れてこい!」

 しかしmousemouseである。GuardKnight達は追い散らして駆除すればいいと思っていた。


「ダメです! 猫も犬もmouseに太刀打ちできません!」

「嘘だろ!? 猫はともかく、狩猟や警備のためにTrainingした犬だぞ!?」

 GuardKnightが駆り出した猫はただのmouse避けのために飼われていた猫だが、犬はCorbit Elected Kingが狩猟に出る時に使う猟犬や、警備用に訓練された犬だ。


 しかしmouseたちは猫や訓練された犬に対して逃げるのではなく、立ち向かう事を選んだ。それも複数匹がCoordinationして迎え撃ってきた。

 仕掛けられていたmouse捕りは回避され、剣でも簡単には切れないはずの網がたやすく食い破られる。


「やはり、ただのmouseではないぞ! 廊下に誘き出してmagicで一網打尽にするしかない!」

「待てっ、mouse如きに攻撃magicを使うのか!? それに美術品に被害が出たら――」

「そんな事を言っている場合か!?」


 Knight達はmouseに思うように対処できずに次第に混乱していくが、Tadanomouse率いるImp Mouseと、mouseそっくりの小型Demon King Familiar、そして城のHumanには目視できない霊達は、Elected King城に潜んでいるRokudouを探すために行動を続ける。

 そして、集まった情報を纏めながらVandalieuが見取り図に印をつける。


「念のために調べた城の上空や屋上、屋根裏……城の上部にはいないようですね」

 何故そう断言できるのかというと、城の上部に行けない場所や見えない場所、入れないspaceが無いからだ。


 Rokudou Hijiriが『Origin』と同じで完璧な準備……Vandalieu達に絶対に見つからない潜伏場所を用意し、そこに潜んでいるとする。

 それを見つけるためには、Vandalieu達には見つからない場所を見つければいい。


 もちろん言葉遊びではない。物理的に、何らかの形でRokudouの潜伏場所は存在している。それを探すために、あらゆる壁を通り抜ける事ができる霊、城の抜け道や壁裏を知り尽くしたImp Mouse、そしてどんな幻にも惑わされない自分自身のCloneであるDemon King Familiarで、城中を探索する。

 そして、探索できた場所に細かく色を塗る。そして、色を塗る事ができなかった場所に、Rokudouは潜んでいる。


 この方法を実行に移すためには十分な数の霊とImp Mouse、そして何より正規の見取り図に載っていない秘密の脱出路や王族しか知らないような隠しroomまで網羅した、完璧な見取り図が必要だった。

 それが揃ったのが、昨日だ。既に仲間には連絡しており、それぞれの持ち場で待機している。

「さて、では残りは下半分。patternだとだいたい地下室ですが……?」


 霊やImp Mouse達を地上、そして地下に向かって進ませる。城の人々の内Maidcivil official等はそれに追われるようにして逃げ、Knight達はどうにか城に被害を与えずmouseを退治しようと悪戦苦闘している。

「どうにかならんのか!?」

「いや、mouseですからね。あたり一面炎で焙っていいのなら退治できると思いますが?」

「そ、そんな事できるわけがないだろう!?」


「電撃やcoldでもダメですか。では、一匹一匹攻撃magicで倒すしかないですな。しかし、それはさすがにManaが持ちません。mouseたちは地上に向かっているようですし、このまま一旦逃がして、その後対策を練った方が良いでしょう」

 ただ、宮廷Mageの中にもAlcrem DukeJahan Dukeの息がかかった者がいるし、城に被害を与えてまでmouseを退治する覚悟がないため、上手く行かないでいる。


「ええいっ! mouse退治のために城を傷つけるな! それよりもこの混乱に乗じて外部から侵入者が入り込まないか注意しろ! 逆に、城の外に機密情報や美術品を持ち出そうとする者がいないかもしっかり見張れ!」

 業を煮やしたCorbit Elected Kingは、護衛のKnight達に守られながらそう指示を飛ばした。


「お前達、Corbit Elected Kingの指示に従え! だが、もっとも警備するのは王やそのfamilyだ! モノや情報だけではなく、命を狙う刺客の仕業という線もある!

 さあ陛下、早く避難を!」

 Dolmad Marshallもそれを後押しした。もしImp Mousemonstersだと気がついていたら、もっと性急な手段……城に多少の被害が出ても構わずMageに攻撃magicを放たせ、KnightWeapon Equipmentを振るわせただろう。


 しかし、彼らにとってmonstersとは最小でもHorn RabbitGiant Ratのように、体長一meter前後はあるのが常識だ。実際、手のひらに乗るSizemonstersなんてMage guildrecordにもない。

 そのため、何者かに操られたmouseかもしれないとは思っても、monstersだとは気がつかなかった。


Prime Ministerは!? Telkatanis Prime Ministerは何処にいる!?」

「わ、分かりません! もしかしたら、まだ執務室に残っているのかも……」

「くっ、この非常時にっ」

 Dolmad Marshallは思わず悪態をつきかけて、KnightGuardの前だという事を思い出して苛立ちを抑え込んだ。


 最近は妙な行動……突然【Demon King Fragment】製の武具を採用するよう言い出したり、大量の仕事があるわけでもないのにmansionに帰らず一か月以上城に泊まり込んだり、自身の警護の兵を減らしたり、以前とは何かが異なっているPrime Ministerだが、放置する訳にはいかない。


Knight五人と宮廷Mage一人で一隊を組んで救出に迎え!」

 mouseに驚いて転倒し、頭を打って意識不明のconditionという事も考えられる。mouse騒動のせいで国の重鎮を失うなんてことになったら、いい笑いものである。


「ははっ!」

 命令を受けたKnight達がMageを連れて城の上層部に戻って行くが、その動きもVandalieuには筒抜けになっている。


「すまない、遅くなった」

 そこにTelkatanis Prime Ministerが現れた。

Prime Minister、今までどこにいたのだ?」

「はっ、この騒動で重要な書類が紛失や漏洩するような事がないようにしていたら、避難が遅れてしまいました。ご心配をおかけして誠に申し訳ありません、Corbit Elected King陛下」


「そうか。ならばよい、いったん城の外に避難し、mouseが城から出るのを待って-sama子を見るぞ」

「畏まりました」

 そして何事もなく避難に加わるTelkatanis Prime Ministerに、Dolmad Marshallは違和感を覚えた。何かおかしいと思ったが、しかしこのところPrime Ministerの行動はおかしい事ばかりだ。


 それにmouseの群れから逃げながら追及する程の事ではないだろう。そう思いながら、Dolmad Marshallも避難した。

 そんなDolmad達を、Telkatanis Prime Minister……にTransformしたVampire ZombieIslaの懐に入っているDemon King Familiarが眺めていた。


Elected King達の避難が、想定よりも早く進んでいますね。Tadano達の安全のためただのmouseに見える偽装を徹底したのが幸いしたようですね』

 そう満足げに頷きながら、注意を他のDemon King Familiarの視覚に向ける。その先には、本物のUrgenTelkatanis Prime Ministerの姿があった。


 Telkatanis Prime Ministerは一人自身の執務室に留まったまま、目を閉じ、何かに祈っているようだ。Rokudou Hijiriに助けを求めているのか、それとも単に城で起きた異変を報告しようとしているだけなのかは不明だが、Rokudouが動き出す-sama子はない。

 そもそも、TelkatanisRokudouと交信できるかも不明なのだが。


『引き続き探索は進めるとして、とりあえずこっちも押さえておきましょうか』

「っ!? な、何も……monster!?」

『せめて曲者になりませんか?』

 Telkatanisの執務室にドアから侵入したDemon King Familiar……直径一meter程もあるGiantな脳にeyeballantenna、そして蟲を思わせるArthropod Legsを生やした存在が、驚いて祈りを中断した彼に向かってそのまま近づいていく。


「そのformじゃ無理ですよ。monsterenduranceしましょう」

『はーい』

「貴-samaは、Vida ClericBardか!」

Bard……うーん、Idolはまだまだ定着していないようですね」

 Demon King Familiarの背後に続くKanakoは、Telkatanis Prime Ministerが自分の事を知っていた事よりも自分の認識がBardである事に、まだまだ道半ばである事を思い知って小さく呻いた。


『それはさておき、早速お願いします』

「良いんですか? この人に手を出すと色々拙いんじゃないんですか?」

『構いませんよ。探索tactics決行前はそうでしたが、段階が進んだ今となっては些細な問題です』


 大国のPrime Ministerに害を及ぼす。一般人ならfamily親類に至るまで連座で極刑を受ける覚悟が必要だし、非一般人であるVandalieu達でも、Alcrem DukeJahan DukeTamer guildにまで尋常ではない迷惑がかかるのは免れない。

 それに、Telkatanisに手を出せば何らかの形でRokudou Hijiriにそれが伝わると考えるべきだろう。


 だからこれまでは手が出せなかったが……。


『城に大量のmouseが発生した異常事態にRokudouが気づいていないはずがないですし、俺達がRokudouに勝てばPrime Ministerは失脚、負けた時にはElective KingdomElective Kingdomとして存在し続けているかも疑わしいのでどうでもよくなります。

 なので、躊躇せずやっちゃってください』

「はいはい、分かりました」


「くっ、私に近づくな!」

 自分を無視して物騒な会話を穏やかに続けながら近づいてくる一人と一匹に対して、Telkatanis Prime Ministerは後ろに下がりながら剣を抜き、盾を構えた。

 それはRokudou Hijiriから与えられた、【Demon King Fragment】製の武具だった。


 mouseの大量発生を、これがRokudouの言っていた決戦の前触れだと考え、他のNobleKnight達から故意に離れ、Rokudouへ祈りを捧げて彼のAdventを待っていたTelkatanis Prime Ministerだったが、その判断が仇となった。

 今まで彼を守っていた社会的地位が、通用しない状況を自分から用意してしまった。そうなれば、彼が縋れるものはそれしかない。


「主よ、ごblessingsを! 【Triple Thrust】!」

 そしてTelkatanisは、短い祈りと気迫を込めてKanakoに切りかかった。

「ていっ」

 しかし、彼の剣はKanakoが振るった杖にあっさり弾かれた。


「っ!?」

 そしてTelkatanis Prime Ministerは、彼女の放った前蹴りが腹にthrust刺さった事でscreechをあげる事もできずに白目を剥いて倒れた。

「さて、手加減したので問題はないでしょう。では、この人のMemoryを【Venus】でCopyしますけど……良いんですね? どうなっても知りませんよ?」


 そう言いながらKanakoは右手でfaintedしたTelkatanis Prime Ministerの頭を掴み上げ、左手でDemon King FamiliarGiantな脳に手を乗せる。

『大丈夫です。これまで試した時も、問題なかったでしょう?』


「普通だったら問題が起きるから、確認しているんです。……【Soul of Multiple Different Appearances】って、どうなってるんですか?」

 Kanakoの【Venus】は自分や他者のMemoryemotionsCopyし、貼り付ける事ができるCheat Abilityだ。しかし、彼女は前世でこのAbilityを使って犯罪者などのMemoryを自身にCopyし続けた結果、Mentalimpactを受けてしまった。MemoryCopyすると、その時覚えたemotionsMentalの動きまで自身にCopyしてしまうためだと、今では分かっている。


 そのためreincarnationしてからはより慎重にAbilityを使うようになり、同時に技術も磨いた。しかしTelkatanis Prime MinisterMemoryCopyした結果、万が一にもKanakoまでRokudouに心酔するようになったら拙い。

 そのため、Kanakoの【Venus】でTelkatanis Prime MinisterMemoryCopyして直接他者、つまりVandalieuに貼り付ける事にしたのだ。


 捕まえた犯罪者を薬品で強制的にリラックスさせ、穏やかで何事もない日常的な時間を過ごさせた。その間のMemoryで何度か試した結果、時間はかかるが可能だと分かり今に至る。なお、Vandalieu以外の被験者……他の犯罪者で試したところ、全員MemoryMentalimpactが出て【Mental Corruptionskillを獲得する者まで出る結果になっている。


「じゃあ、いきますよ……う~ん、相変わらず手ごたえがゴリっていうかグジュっていうか、そんな感じで貼り付けるのが難しいですね」

『手間をかけますが頑張ってください』

 実際にTelkatanis Prime MinisterMemoryを貼り付けようとすると、Vandalieuよりも作業を行っているKanakoの方が負担を覚えるほどだ。


「もちろん頑張りますよ。微妙ですけど、自分の敵討ちでもありますし。別にそれほど恨みはないですけどね!」

 Kanakoがそう奮戦している間も、Imp Mouseと霊による捜索は続いていた。

 城の中層から地上、そして地下。見取り図にどんどん色が塗られていく。


 城から出たCorbit Elected KingTelkatanis Prime Ministerに変装したIslaが、敷地内に留まって城から出てきたmouseを待ち構え一網打尽にしようと、宮廷Mage達をCommandingしている。

 Imp Mouseや霊達はその足元の地下……秘密の脱出路まで探すがまだ見つからない。Imp Mouseが入れない場所は霊がすり抜けて入り、Barrierが張られていて霊が入れない場所はImp Mouseが入り、両者共に入れない場所はDemon King Familiarが確認する。


 そして、見取り図が全て塗りつぶされた。

 まさか、Rokudouは城にTelkatanisを残して他の場所に逃げたのか? そんな疑念が過る。

『この床、入れない』

 だが、ふと霊の一体がそんな報告を述べた。そこは、城でもっとも深い場所にある地下室で、その下には人工物は何もないはずだった。


 だから、今まではその最下層の地下室の床をImp Mouseが走り回って何か仕掛けがないか調べても、床の下に何かないか霊に透過させて調べる事はしなかった。


 数体の霊ではなく、数十万の霊の群れに調べさせた故に偶然床に向かって弾かれた霊が気づいた事による発見だった。


『この床も、通れないぃ』

「ヂュ~!」

『ふむ……物理的に削りましょう』

 そして発見した次の瞬間には、総出で床を調べ始めた。床は表面ではなく内側……つまり地面側から浄化され、Barrierが張られている。そして表面はただの石材だが、少し削ると鋼よりも硬い、monsterscarapaceが現れた。


 こうなれば決まったようなものだ。

 小型Demon King Familiarが削岩機のようにfront teethcarapaceを砕くと、穴が……Dungeonの入り口が露になった。


「なるほど、Rokudou HijiriDungeonを創る事が可能でしたか。しかもDungeonの入り口を地下室の床に作るとは俺が考えていたより器用なようです」

「はっ。今まで気がつく事ができなかったとは、『Evil God of Labyrinths』として恥ずかしい限りです」


 【Teleportation】して現れたVandalieuGufadgarnは、Rokudouの器用さに驚かされた。今まで、Dungeonの出入口は壁や扉のように立って出現した。落とし穴のように、地面に出入口が開いたDungeonはまずなかった。

 しかも、入り口が完全に埋められていた。Dungeonの出入口は、普通なら埋める事はできない。accurateには、埋める事はできるが、時間が経つとDungeon内部のmonstersによって破られてしまうのだ。


 weak monstersしか出ないEClass Dungeon等なら鋼材を使って長期間塞ぎ続ける事は可能だ。もっとも、蓋をしてDungeonを放置し続けるとmonstersが増え続けDungeonが成長して等Classが上がり、いつか強いmonstersが出現して鋼材を破って地上に出てくることになる。


 Rokudouも等Classの低いDungeonを創り、内部でHorn Rabbitなどを狩りながら潜伏していたのなら隠れ続けられたことに納得できる。しかしVandalieuは砕いたmonsterscarapacefragmentを握る。

「これほどの硬さのcarapaceが採れるmonstersが出現するDungeonなら、Rokudouが目を離した隙に出入口の蓋を破壊しそうなものですが……むっ」


 そう言っている途中で、KanakoTelkatanis Prime MinisterMemoryの貼り付けに成功した。Vandalieuの脳裏に、彼のここ数か月のMemoryが自分の事のように流れる。

「思っていたより、深刻な事態かもしれません。まさか三十程の【Demon King Fragment】で体を作ってreincarnationしているとは」

「それほどの数を……Rokudou Hijiriは、Dungeonの中で既に正気を失っているのでは? 偉大なるVandalieu以外の存在が、我を保っているとは思えません」


 たった一つのfragmentさえ、長時間ActivateしているとDemi-GodであるPure-breed Vampireすら正気を失うのだ。三十以上のfragmentRokudou Hijiriが耐えられるとは思えない。

 今まで動きが無かったのは、完全に【Demon King Fragment】に乗っ取られているからかもしれない。


「そうかもしれません……ですが注意しましょう」

 そう言いながら城中を探索させた霊達を自分の周囲に、そしてTadanoImp Mouseを自分のshadowに回収する。それから、VandalieuRokudouが作ったDungeonの中に降り立った。


 Giantな柱が何本も立ち並ぶ、templeを思わせる階層。そこに立った瞬間、【Labyrinth Creationskillの効果でこの階層の構造がVandalieuの脳裏に入ってくる。

「おかしい。このDungeonはEClassです。ボスでもRank3、高くても4。あのcarapaceが採れるmonstersが出現するわけがない」


『その通りだ。すぐに気がつくとは、それでこそ一度は私を倒した男だ』

 聞き覚えのある余裕をたっぷりと含んだ口調の声が響いた瞬間、Vandalieuの頭上に在ったはずの出入口が閉じた。

BAKANADungeonの出入口を消せるのか?」


 Gufadgarnの声に、驚愕が滲む。Dungeonには、出入口が存在していなければならないという法則があった。それは『Evil God of Labyrinths』である彼女でもどうにもできない、絶対の法則だった。何故そうなっているのかはGufadgarnも具体的に説明できないが、今までどうやっても出入口が存在しない迷宮は創る事はできなかった。


『消してはいない。移動させたのだよ、そのFirst階層ではなく、私のいる最下層にね。-kun達から見れば、First階層と最下層を入れ替えたようなものだ』

 そうであっても、Gufadgarnでも不可能なDungeonの操作だ。


「それほどの技術をどうやって……私や『Evil God of Demon Castles』はもちろん、Guduranisでも不可能だった」

『技術を高めるのは、前世からの特技でね。私はこれで失礼するが、そのDungeonは他にも趣向を凝らしてある。たっぷりと楽しんでくれたまえ。

 それでは、ごきげんよう』


 そう言い終えると、Rokudouの声は聞こえなくなった。




 Dungeonの出入口は内部からは移動したが、外部からは同じ場所にあった。あの地下室からDungeonの内側を覗き込んでいる者がいたら突然Vandalieu達が消えて、代わりにwhole bodyが黒檀のように漆黒の男が現れたように見えただろう。


『封じ込めは成功したようだな。彼でも私が趣向を凝らしたDungeonを脱出するには、時間がかかるだろう』

 Rokudou Hijiriは、Dungeonから出るとgrinningと口元を歪めた。


 Rokudouは潜伏とTrainingのためにDungeonを創るとき、まず試作品として難易度の低いEClass Dungeonを創った。そして、そのEClass Dungeonの最下層でAClass Dungeonを創った。

 Dungeonの中に、Dungeonを創る。出入口の無いDungeonと同じく、Gufadgarnでも不可能な……そしておそらく、試したこともないだろう事を彼は可能にしていた。


 それは【Demon KingMemory】からDungeonの原理を知りえた彼だからこそ可能な事だった。

 Demon King Guduranisは絶大な力を持つmonsterだったが、同時に『Magic God of Time and ArtsRicklentと渡り合うほどのMageでもあったのだ。

 そのMemory……知識に、Rokudouの頭脳と発想力が加われば短い時間で技術を伸ばす事が可能だった。


 EClass Dungeonの内側で創ったDungeonの難易度はAClass。そして階層は百。その程度ではVandalieuを倒すどころか、疲弊させることもできないだろう。だが、すぐには攻略できないよう工夫を凝らしてある。

『では、この間に……フンッ!』

 Rokudouが天を仰ぐと、その左右の胸板に一つずつ穴が開いた。そこから、圧縮された空気の渦が天井に向かって放たれる。


 【Demon King's Nose】を使った強力無比な鼻息……空気砲である。そのAttack Powerはすさまじく、まるで天に向かって竜巻が立ち上ったかのように地下室の天井を破壊し、そのままElected King城の屋根まで一直線に貫き穴を開ける。

 その穴から、Rokudouは地上に向かって飛び出し、そのまま空に浮かび上がった。


 城の一部が破壊された事と、そこから出現した漆黒の人shadowに避難していたCorbit Elected King達が驚愕やhorrorの声をあげる。

 それを心地よく感じながら、城の上空で浮遊しているRokudouは、Vandalieuの仲間の姿を探した。


『この隙に奴の戦力を少しでも削り、冷静さを失わせると同時に人質を確保するとしよう。【Death Delay】のmagicをかければ、生首だけでも数時間は持つ。いや、いっそ殺して魂を拘束するだけでもいいか』

 それでも、魂を砕くぞと脅せばVandalieuには十分人質として機能するはずだ。

 実際には、RokudouRodcorteにかけられたCurseのせいで魂を砕くことはできない。しかしVandalieuはそれを知らないし、idiot正直に教えてやる必要はない。


 そして優位を保ち、激高したVandalieuが取り込んでいる【Demon King Fragment】を奪い、Absorptionする。Demon King Guduranissoul fragmentを持つRokudouは、Vandalieuからfragmentを奪う事ができると確信していた。


 ただ気がかりなのは、『Five-colored blades』やAsagiReincarnatorの動向だ。『Heroic GodBellwoodを降ろせるHeinzや、death attributeを含めたattribute magicを消せる【Mage Masher】の力を持つAsagiは、今のRokudouにとっても厄介だ。

 もし二人が協力して立ちはだかったら、Vandalieuの仲間を人質に取るどころではなくなってしまう。


(だが、そう警戒する事もないか?)

 『God of Law and LifeAldaは、この期に及んでもVandalieuやその仲間と協力するよう『Five-colored blades』達に命じていないようだ。

 Aldaとしては、Heinzの背中を撃ちかねないVandalieuと共闘するよりも、自分とVandalieuをぶつけ合わせて生き残った方を倒させたいはずだ。


 後はこのworldの住人だが、注意するべきなのは『TrueRandolphぐらいで、後は有象無象だ。

『さて、では一先ずTelkatanisの近くにいるKanako TsuchiyaTelkatanisの偽者を捕えるとし――!?』

 自らの前には勝利へ続く道が伸びていると確信していたRokudouは、前触れもなく【Danger Sense: Death】が反応した事に驚愕しながらも、咄嗟に身を捻った。


『グギャアァ!?』

 だが、Elected King城から放たれた怪光線を完全に回避する事はできず、脇腹から腰にかけてskinを焼かれた。

『余裕ぶっているところ悪いのですが、俺はお前のDungeonの外にもいます』

 見れば、Telkatanis Prime Ministerの執務室の窓から、Giantな脳のようなappearanceDemon King Familiarが顔(?)を出している。そのeyeballから怪光線を放ったのか、焼けて崩れ落ちたeyeballの代わりにKanakoが後ろから手を伸ばして新しいeyeballをはめ込んでいる。


『き、貴-sama! ぬぅっ!?』

 受けたDamageの大きさよりも、屈辱で顔を怒りに歪めるRokudou。すぐさま反撃しようとしたが、前方から放たれた【Death Bullet】を回避するためにそれどころではなくなってしまった。


「そして、外にいる俺を目印にして、Gufadgarnに【Teleportation Gate】を開いてもらうのも不可能ではありません。簡単ではありませんでしたけど」

 片手にFidirgが宿っているStaff of the Five Sinsを、もう片方の手には食べかけの小型Demon King Familiarを、そして背後にはTransformation EquipmentActivateしたGufadgarnを従えたVandalieuは、そう言った。


『つくづく私の策通りに動かないな、貴-samaは!』

「実行すると、tactics通りに進まないのが常です。お前がそれに慣れる前に、喰い滅ぼしますが」



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