ある日を境に、Orbaum Elective Kingdomの首都OrbaumのAdventurer’s Guildでは、どこかピリピリとした空気が……まるで大きな戦いを控えた砦のような緊張感が漂うようになった。
ある程度の腕がある者や、経験を積んだguild職員は全員それに気がついている。そうした者達は、緊急性を要する依頼でもあるのかと調べたり、特定のadventurer partyが険悪な関係になっているのかと見回した。
しかし、紙代わりの葉や"tree bark"などに書かれた依頼書が張り出されているボードはいつも通りで、近くに危険指定されているmonstersや、新しいDungeonの出現などは起きていない。
そしてadventurer達にも、激しい口論や取っ組み合いのけんかにdevelopmentしそうな-sama子の者達はいなかった。
だが、ここ数年の間に急激に力をつけた腕利きのadventurer達が、この妙な緊張感の中心にいる事に気がついた。
しかし、彼らに何かあるのかと尋ねてみてもはぐらかされるばかりで答えは返ってこない。きっと、仲間内で何かあったのだろうと、知り合いのadventurerやguild職員は深く立ち入らない事を選んだ。
そして、それは正解だった。何故なら、しつこく食い下がられても話せる内容ではないし……そもそも具体的に何が迫っているのか、彼ら……Hero Candidate達も知らされていなかったからである。
「危機に、それもOrbaumが壊滅しかねない危機に備えよ……か。その危機がいつ起こるのか、どのような危機なのか分からない。これはやはり、Oracleを正しく受け取る事が出来ない我が身の不徳か?」
どこか気品のある顔立ちをした青年は、憂いを吐き出すように溜息をつく。
「Hendricksen、それはあなたのせいではありません」
「そうです、Hendricksen -san。思いつめないでください」
青年と同じtableに集まっている者達が、そう言って彼を慰める。そう、青年の名はHendricksen・ヘーゼン。『Goddess of the Holy Spear』Elkに選ばれblessingsを与えられた、Hero Candidateだ。
彼はAlcrem Duchyから離れて、このOrbaumでadventurerとして活動していた。そして以前よりも多くの自分と同じ神に選ばれた者達と出会い、時に競い、時に協力して名を上げてきた。
Alcrem Duchyを離れた後、Alcremをrevived Evil God (P)が襲うという大事件が起きたと知った時はHendricksenも自身の行動を後悔した。しかし、Vida believerで今やHonorary EarlとなっているDark Elfの活躍で解決したと聞き、安堵した。
そして過去に過ちを犯したとはいえ、やはりVidaは『God of Law and Life』Aldaと肩を並べるGreat Godなのだと考えを改めた。
だが、悔しさを覚えなかったわけではない。Alcremで活動していた自分が、Alcremの危機の解決に、何の貢献も出来なかったことに。
だからこそ、もし同じような事があった時に役立てるようにと腕を磨き、力を蓄えてきた。そして今、その力を発揮すべき時が迫っている。
そのはずなのに、神は具体的にどうすればいいのか教えてくれない。ただ街で待機していればいいのか、それとも犯罪organizationの動きを探ればいいのか、それとも近くのDungeonがrunawayしないよう重点的に見まわるべきなのか。
大きな危険が迫っている以上、Oracleに逆らうわけにはいかない。しかし、どうすれば神の真意に沿えるのか分からない。
ただこうして街に留まり、何かあった時にすぐ対応できるようにしている事しかできないのか。危機を事前に回避、もしくは解決する事はできないのか。いくら考えても、実際に動いてみても、答えらしきものは得られない。
「何となく、何となくだが【Demon King Fragment】が関係している事は分かったが……それぐらいだからな」
「今、templeにコネのあるpartyが探りを入れている。その結果次第で、何か分かるだろう」
「いや、もしかしたらtempleではなく邪悪な神を信仰する教団や、VampireのRemnantsが何か企んでいるのかも」
tableに集っている者達……Hendricksenと同じHero Candidateのadventurer達は、そう言った。彼等も、そしておそらくHero Candidate達の全員が、Hendricksenと同じOracleを同時期に受けている。
だからこそ、彼らはOrbaumに大きな危機が迫っていると緊張感を高めていた。
彼等は一人一人が既にAClass adventurer相当の力を得ている。他のparty memberにも、この数年で自分と同-samaにblessingsを得た者も少なくない。
多少の危機なら、Hendricksen達の内一組が動けば解決できる。それなのに全員が同じOracleを受けたということは、全員で当たらなければならない程大きな危機が迫っているという事だ。
それがHendricksen達の共通認識だった。
「やはり、『Five-colored blades』と話してみるか? 噂ではAldaの試練を受け、『Heroic God』Bellwoodをrevivalさせそ's Divine Protectionを得たと聞いている。彼等なら、我々以上に詳細な情報をOracleから得ているかもしれない」
そしてOrbaum Elective KingdomのSClass adventurerである『Five-colored blades』の面々の動向は、既にOrbaumに知れ渡っている。Alda’s Divine Protectionを自分達が他の神's Divine Protectionを得るずっと前から得ているHeinzを、Hero Candidate達には自分達の先駆者とみなす者が多い。
ちなみに、Asagi達に関してHero Candidate達はあまり注目していなかった。彼等にとってAsagi達は、Birgit Duke 家に雇われているただのadventurerでしかない。もしかしたら自分達と同じように、何らかの神's Divine Protectionを得ているのかもしれないと思っている者もいるが、話を聞きに行くほどの確証を持っている者はいなかった。
「そうだな……話ぐらいは聞くべきかもしれない。このtimingで彼らがOrbaumに来たのも、ただの偶然ではないだろう。
だが、それならOracleで『Five-colored blades』と協力するようにと指示があってもいいと思わないか?」
「たしかにそうだが……それも俺達が聞き取れなかっただけじゃないか?」
「その可能性はあるな。-kunはどう思う、Miriam?」
「わ、私ですか!?」
急に話を振られた『[Heart Warriors]』のleader、最近guildで『Corps Leader』と呼ばれているfemale adventurer Miriamは、驚いた-sama子で自分を指さした。
彼女がHendricksen達の集まりに参加するようになったのは、ここ数か月の事だ。はっきり言えば、Darcia・Zakkart Honorary CountessがOrbaumに滞在して十日ほど過ぎてからだ。
当初Hendricksen達は、Miriam達『[Heart Warriors]』の事を警戒していた。nameからしてVida believerであるし、Darcia・Zakkartと縁が深い事を隠そうともしなかったからだ。
しかし、危険視する者はいなかった。何故ならHendricksen達はVida信仰を認めているOrbaum Elective Kingdomの国民で、Vida believerだから危険だと考える発想はなかったからだ。
……それでも警戒したのは、『[Heart Warriors]』のmemberのappearanceと、神からのOracleが大きな理由だった。一見するとleaderに見える巨漢のSwordsmanは、adventurerというよりもmountain banditの頭の方が似合いそうな尋常ではない強面。そのImoutoらしいClericの女は、美女なのにClergymanではなく悪女にしか見えない。DwarfのMageは、ただひたすら不気味で恐ろしい。
adventurer歴がもっとも長いらしい髭面で隻腕のSwordsmanと、四肢が全て義肢になっているBeast raceの女Unarmed Fighterはまだ普通に見えるが、Swordsmanはどこか言動がチンピラめいているし、女Unarmed Fighterは口調が荒々しい。
そして、本当のleaderであるMiriamはあまりに普通なので、何かのTrapのように見える。
そして神からも、『[Heart Warriors]』は危険だとOracleを受け取っている。
しかし、『[Heart Warriors]』をbluntに避け続けるのも具合が悪いし、複数のpartyがCoordinationする事を求められる依頼でそんな態度を取ったらguildから叱責を受けてしまう。
そのため同じAlcrem Duchy出身のHendricksenが、率先して『[Heart Warriors]』に接触した。そして、Hendricksenは自分達がいかに色眼鏡を通して彼女達を見ていたのか思い知ったのである。
「ああ、-kunの意見が聞きたい。見れば、-kunは我々の中でもっとも冷静さを保っているようだ。気がついている事があるなら、何でもいい。教えてくれ」
強面のSwordsman Arthurは、そこらのadventurerより礼儀正しく裏表のない好漢。そのImoutoのKariniaは、心の優しく美しいSaintessに相応しいfemale。そんなbrother and sisterの幼馴染であるMage Bolzofoyは、Dwarfらしからぬ痩身で体がweakのを押して友を助ける面倒見の良い賢人だった。
隻腕のSwordsman Simonと、四肢全てが義肢の女Unarmed Fighter Nataniaも、Adventureで負ったハンデを克服した強靭で気高いMentalの持ち主だった。
そんな彼らを纏めるMiriamも、尊敬に値する人物なのだとHendricksenは確信していた。どこが尊敬に値するのか、まだ言葉に出来ないが……それはまだ彼女の真価を理解できない己の不徳のせいだろうと彼は思っている。
しかも、Arthurは『Goddess of Rain Clouds』Bacias、Kariniaは『Goddess of the Dark Nights』Zelzeria、Bolzofoyは『God of Shadows』Hamul 's Divine Protectionを、SimonとNataniaはなんとVida’s Divine Protectionを、そしてMiriamはそれら四柱's Divine Protectionを全て得ているHendricksen達と同じ神に選ばれたHero達だったのだ。
そのためHendricksenは、もしかしてMiriamは『[Heart Warriors]』だけではなく、自分のような神's Divine Protectionを得たHero Candidate全体のleaderとしてGodsに選ばれた存在ではないかと、内心考えるようになった。それにしては『God of Law and Life』Alda’s Divine Protectionを得ていないのが不自然なので、まだこのconjectureは誰にも話していないが。
もちろん、そのHendricksenのconjectureは大外れだ。たしかにArthur達三人は、originally Hendricksen達と同じAlda's FactionのGodsのHero Candidateだったが、今はBaciasたちがVida側に転向したためVida's FactionのHero Candidateであり、Vandalieuの仲間となっている。
そしてMiriamやSimon、NataniaはただのVandalieuの仲間で、Vidaに見込まれただけだ。
そして、それを利用してHendricksen達Hero Candidateの中にspyとして入り込んでいた……という訳ではない。ただ依頼で一緒になったHendricksen達と交流しているうちに仲良くなり、そしてそのまま成り行きでHero Candidate達に仲間として認定されてしまっただけだ。
(激しく場違いなのを感じる。Hendricksen -san達を騙しているようで、すごく後ろめたい! しかし、本当の事を教えるわけにはいかないし。でも、分かりませんって答えるだけじゃ私が何も考えてないみたいだし、Hendricksen -san達に何も教えないのも悪いですし……)
そう色々考えたMiriamは、何とか捻りだした答えを口にした。
「私が感じたのは……ええっと、不愉快に感じるかもしれませんが、maybe Kami-samaにもどんな脅威が迫っているのか、分からないんじゃないでしょうか?」
religionが強固なbelieverが聞けば、神への不敬と取られかねない言葉だ。しかし、ここにいるのは神's Divine Protectionを得ていてもadventurerばかりだ。彼等はreligionが薄い訳ではないが、日々の現実も見ている。
「なるほど……たしかに、言われて見ればその通りだ」
「Godsは全能でも全知でもない。それを俺達は忘れていたようだな。まったく、blessingsを受けておきながら神に甘え切っていたとは情けない」
「blessingsを得て、その効果を知る我々だからこそ、Godsの力を妄信していたという事か。ありがとう、おかげで目が覚めたよ」
「え、あっはい。お役に立てて光栄です」
次々寄せられる素直な賞賛に、Miriamは逆に驚かされた。しかし、Hendricksen達にとって見れば、「神にも分からない事がある」というのは、もっともな指摘だった。
Godsが全知全能なら、そもそも人々にblessingsを与えてmonstersやDemon King Army Remnantsの邪悪なGods、【Demon King Fragment】の対処などさせるまでもない、Gods自身が軽く片付けるはずだ。
そもそも、another worldから現れたDemon King Guduranisも、Championを召喚するまでもなく撃退しているはずだ。
それが出来なかった時点で、Godsは全知全能ではない。人よりも遥かに広く深い知識を持ち、人を遥かに超える偉大な力の持ち主だが、全知全能には及ばない存在だ。
そもそも、Hendricksen達にblessingsを与えたGodsのいくつかは、偉業を成し遂げたHumanが神に至った存在だ。この世の全てを知っていると思うのは、無理がある。
「おそらく、Godsは我々よりも鋭いIntuitionや経験則でOrbaumに危機が迫っている事を知った。しかし、それが具体的に何なのか、何時起こるのかは知らない。
だからこそ、我々は危機に備えながらその正体は何なのか、調べなければならない。そういう事か」
「ええ、まあ、そういう事じゃないかなぁって……」
Miriamにとっては、神は全知全能ではないというのは最近になって知った事だ。彼女が良く知るKami-samaは、意外と何も考えていなかったり、普通に失敗したり、自分はHumanですと強硬に主張したりする。
Demon KingのContinentで戦ったDemi-God達も、人より優れていてもそれだけで、人を超越したというほどの存在ではなかった。
もちろん、ただ自身の経験に基づく意見を口にしただけではなく、Hendricksen達が『Five-colored blades』とあまり接触しないようにしたいという思いもあっての発言だ。
「では、【Five-colored blades】に情報提供を求めても無駄か……」
「いや、念のために話を聞くのも悪くない。それに、いざって時のために顔を繋いでおきたい」
しかし、Vandalieuと【Five-colored blades】の関係を語る事は出来ないため、結局Hendricksen達は『Five-colored blades』と接触を持つことにした。
「その役目は――」
「もちろん私達で行うさ、安心してくれ」
「ああ、Miriam達では気まずい事もあるだろうからな」
「ありがとうございます。助かります」
Heinz達との顔つなぎの役をしないで済んで、ほっとMiriamは息を吐いた。Hendricksen達は、彼女達の……というより、師や友人であるVandalieuが掲げるVida Fundamentalismと、Alda Reconciliation Factionの宗教的な問題に配慮したのだ。
「しかし、AldaとVida……宗教的な対立を抜きにして協力し合えればいいのだが。せめて、templeに所属していないadventurer同士だけでも」
そう嘆くHendricksenの肩に手を置いて、Arthurは語った。
「Hendricksen -san、あなたの言う事はもっともです。邪……Evil God (P) Forzajibarがrevived時、我々やDarcia -samaだけではなく、Alda templeの方々も共に立ち上がりました。
今回も、Orbaumに危機が迫っている事を知れば誰もが立ち上がってくれるはずです」
「俺が暮らしていた、Moksiって町がDungeonのrunawayで危なくなった時も、俺達adventurerもKnightもSoldierも、皆立ち上がったものさ」
「だから、今は備えましょう。いざという時のために」
「その通りだ。いざという時のために力を蓄え、何時でも動けるようにしよう!」
下がっていた士気が、ArthurとSimonの言葉に励まされたHendricksenの号令で戻っていく。
「い、良いんでしょうか? なんだか騙している気がするんですけど……」
ただ、Miriamはその仲間になれずにいた。ArthurもSimonも、嘘は言っていない。Hendricksen達を自分達に有利な方に誘導しているという訳でもない。
ただ、いざという時(Rokudouが動き出した時)に周囲の被害を抑えるために、協力してくれるよう根回しをしているだけである。
たしかに真実を全て話していないという点では、非はある。あるが、Reincarnator云々の話はHendricksen達にとっては荒唐無稽な話で、信じてもらえるか疑わしい。それに、自分達は陰謀を働いている側ではなく、防ごうとしている側である。
Reincarnator同士の戦いに巻き込もうとしている、という訳でもない。Rokudou HijiriがVandalieuだけを狙っているなら、その通りだ。しかし、Rokudou Hijiriが『Origin』で行ったことを考えれば、彼がVandalieuやその仲間だけを狙い、無関係な人々が巻き込まれないよう配慮するとは考えられない。
だから、無辜の人々が危険な目に遭わないよう、Hendricksen達に協力を頼むのは悪い事ではない。
「大丈夫よ。彼らが真実を知るのは……すべてが終わった後だわ」
「ヒヒヒッ、彼らにblessingsを与えたGodsも儂らの事をとやかく言っていないのじゃ、それは彼らがGodsから、『Orbaumの人々に危険が及ばないように動く』ことを期待されているからじゃ。Miriamが気にDiseaseむ事ではなかろう?」
「うん、別に『Five-colored blades』に関して何か吹き込んでいる訳じゃないし、オレも悪い事はしてないと思うよ」
「そ、それもそうですよね」
KariniaとBolzofoy、そしてNataniaにそう説かれたMiriamは、若干の後ろめたさ以外は納得したのだった。
なお、Hendricksen達にblessingsを与えた『Goddess of the Holy Spear』Elk達が彼らに『Five-colored blades』に協力するように、もしくはMiriamやその背後にいるVandalieuを警戒し、敵意を煽るようなOracleを出さないのは、今までVandalieu達がHero Candidateを狙っていないから、その小康conditionを維持する事を狙っているからだ。
Vandalieuとの対立は本来の目的だが、その結果もしTelkatanis Prime Ministerの背後にいるのがRokudou Hijiriだったら、fishermanの利を与える事になってしまう。
それを防ごうとした結果、OrbaumのHero Candidate達をただただ待機させる事になってしまっていた。
なお、この時すでに『Five-colored blades』とAsagi達はOrbaumに到着している。
しかし、『Five-colored blades』はAdventurer’s Guildに一度顔を見せに来ただけ、そしてAsagi達に至っては一度も訪れていない。
Heinz達『Five-colored blades』はAdventurer’s GuildよりもAlda templeやAlda Reconciliation FactionのNoble等と接触しての情報収集や、Reconciliation Factionの結束をたしかなものにするために時間を割いている。accurateには、割く事をReconciliation FactionのClergymanやNoble達に求められている。
Vida Fundamentalismが活発に活動してきたため、HeinzがDungeonから出たこの機会にAlda Reconciliation Factionは巻き返しに躍起になっている。そして、情報収集のためにも彼らの力が必要なHeinzは、それを抑える事ができない。
Asagi達は、OrbaumのAdventurer’s GuildでVandalieuやその仲間と不意に遭遇したら、troubleにdevelopmentする可能性があると考えたからだ。
結果として、皮肉な事にHero Candidate達は人々のために動くことができる状況が維持されていた。
その頃、VandalieuはNYORONYOROについて考え、思索していた。
NYORONYOROとは形容なのか、それとも動作なのか。適した太さや本数は? 表面はヌルヌルか、テラテラか? 議論を重ねるが、答えは一つしか出ない。
「NYORONYORO~ッ!」
きゃっきゃとはしゃいだ-sama子で波打つtentacleの海で遊ぶ冥に、VandalieuとBanda、そしてScyllaのPrivelやLamia nationのQueenのTanato、そしてMari、Yamataは頷きあった。
「Me-kunは、紐状でNYORONYORO動くなら、何でも嬉しいみたいですね」
『そういう意味での好みはないようです。ただ、最近NYORONYOROだけで誰か分かるようになったみたいですよ』
「うん、tentacleを見ただけで誰なのか言い当てるんだよ。suction cupsやscale、動きの癖で見分けをつけてるみたい」
「初めて当てられた時はマジで驚いたよ~」
「本当ですか?」
「本当よ。私がTransformしてもMamaの目は誤魔化せなかったわ」
『MariのNYORONYOROは、最初からぎこちない~』
『『『NYORONYOROじゃなくて、クネクネって感じ』』』
「くぅっ、だってHumanにはtentacleやtailが無いから……必ずMamaに満足してもらえるNYORONYOROを……!」
「なあ、Vandalieu、他に用件があって来たんじゃなかったっけ?」
Mariが【Metamorph】のTransform Abilityをさらに高めると決心した時、半眼になったHiroshiに声をかけられたことで、Vandalieuははっと我に返った。
「そうでした。Rokudouを探す手がかりを求めて、Mari達にRokudouの事を聞きに来たのでした」
「それで、なんでNYORONYOROについて話す事になるんだよ」
「面目ありません」
袖から複数のtentacle……表面にsuction cupsやscale、モフモフの毛などに覆われたTypeの異なるtentacleを伸ばしたままのVandalieuに、Hiroshiは溜息を吐いた。
「それでRokudouおじ……Rokudouの事の、何が聞きたいんだ? 俺はそんなに知らないけど……」
「隠れて悪い事をする時に、それをどのように隠すか、とかですね」
「ああ、うん、俺には無理っぽい」
Vandalieuの言葉に、Hiroshiは早々に白旗を上げた。何せBandaが現れるまではRokudou Hijiriにすっかり騙され、尊敬していたので、Rokudouの本当の性格や癖はほとんど何も知らない。
「それで考えたのですが、私もあまり知りません。ただ、完全主義というか、想定外の事が起こると一気に崩れそうですが、それがない限り完全な準備を行う奴でした」
「フフフ、『Origin』での準備は普通なら完璧でしたからねぇ、おかげで我が神やGoddessの元にはせ参じたのが、奴が事を起こしてからになってしまいました」
不器用に【Metamorph】で生やしたtentacleを動かすMariと、tentacleの海の底から這い出るようにして現れたBokorはそう答えた。
Mariは【Metamorph】のTransform Abilityを利用され、Rokudou Hijiriのshadow武者として使われていた。実は、Hiroshiが知っているRokudou HijiriのいくつかはRokudouにTransformしていた彼女だった。
そしてBokorは、RokudouのDeath-Attribute Magic研究の実験体の一人だ。個人的な付き合いはないが、Rokudouの狡猾さ、用意周到さを知っている。
「うわっ、なんでそんなところから出てくるんだっ!?」
「もちろん、我がGoddessと共に神の祝福を受けるために身を投じたからです。GabrielとYuki Joroは、まだ出てきていないようですね」
「うわーっ!? Gabrielッ!? Yuki Joro -sanっ!? って、Mashッ!? なんでお前までっ!?」
「いや、楽しそうに見えてつい……ところでこのsuction cupsをとってくれ……」
「あ、ごめーん、それボクのtentacleのsuction cupsだ」
tentacleの海は、色々な人を巻き込んでいたようだ。何故なら飛び込んできた者は、冥だけではなく誰でも受け入れる。海だけに。
「それで、Rokudouについてだけど……実はあまり知らないのよね。個人的な癖とか、口調とか、表情はいくらでも真似できるんだけど。
こんな感じに」
Mariはそう言いながら、両手をtentacle状にした姿からHumanだった時のRokudou Hijiriの姿に【Metamorph】でTransformした。
「私が重要な物や私自身を何処に隠すか……そのconjectureも難しい。『Origin』なら廃棄されたことになっている潜水艦や、南極Continentに在った小規模な隠れ家等見当も付けられるが、『Lambda』では-kun達より詳しい人はいないだろう……としか。それに、『Ark Avalon』とself-proclaimedしていた姿になった時には、性格が大きく変わったようだった」
そうHumanだった頃のRokudouの姿で語ったMariは、さらに『Ark Avalon』……身長三meter程の姿にTransformする。
「この姿になってからのRokudouの事は、-kun達と同じくらいしか知らない。本性がでたと言うべきか、それともscrewが外れたと評すべきか……」
「姿はもちろん、話し方まで似ていますが、Memoryや思考まで似せる事はできないので、それもそうでしょう。俺も神になろうとするRokudouの考えはさっぱりわかりません」
「……まあ、そうだろうね」
自分をHumanだと言い張る神、Vandalieuの言葉にMariはArk Avalonの姿のまま頷いた。
「やっぱり、今度も建設反対運動するの? ボクは諦めた方が良いと思うけど」
「世論には勝てないと思うしねー」
「もちろん、断固として抗議します。少数派だからと言って、声をあげず黙っているわけにはいきません」
PrivelとTanatoがそう諫めても、Vandalieuの決意は固かった。
Giant Idol Statue建設の時と同じ結果になるのは明らかだ。世論の支持の無い権力者の意志は蹂躙され、Vandalieuをthemeにしたtheme Park Grand Templeの建設が止まる事はないと分かっていても。
「というか、Scyllaが移り住んだ大湿地帯とLamia nationにも俺のGiantな像を建てたじゃないですか」
「「ばれたか~」」
「ひぃっ!? Rokudou!?」
「あっ、ごめんごめん、今Transform解くから」
-sama子を見に来た【Echo】のUlrikaが、Ark Avalonの姿を見て驚いてscreechをあげ、MariがTransformを解く。
「Mariだったのか、驚いた……それでなんで奴にTransformしていたんだ?」
「実は――」
かくかくしかじかと説明を受けたUlrikaは、なるほどと頷いた。しかし、彼女も当然Rokudouの潜伏場所や、工作方法について情報は持っていない。
「prideは高いままだったから、Mariがあの姿でKanakoから習ったdanceでも踊れば、すぐに出てくるんじゃないだろうか?」
「それは嫌ね。私にも羞恥心がある。あの姿でdanceを踊るなんて、さらし者じゃない。とても堪えられない」
Mariにとってはdanceではなく、Ark Avalonの姿で踊る事が屈辱であるらしい。
「じゃあ、私に分かるのは、Vandalieu達が絶対に見つけられない場所に、見つけられない方法で潜んでいるという事くらいか」
「Ulrikaおば-san、それってどうしようもないって事じゃない?」
「Hiroshi、私達はBandaに教えられるまでRokudouに騙されていると、全く気がつかなかったんだぞ」
「……あー、うん、そうだったね。俺もBandaに言われるまで、全然気がつかなかったし」
一同は、改めてRokudouの演技や偽装の完全さを思い知った。もっとも、childであるHiroshiが気づかなかったのは、無理もない事だが。
「……なるほど。もしかしたら、Rokudouが見つかるかもしれません。ありがとう、Ulrika」
しかし、Vandalieuは何か思いついたようだ。
「えっ!? どういう事、Bandaっ!?」
『Hiroshi、俺も常にmain bodyと思考が繋がっている訳じゃないから』
「別に妙案とかじゃありませんよ。ただの数任せです」
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Name: Tadano・mouse
Rank: 1
Race: Imp Mouse
Level: 5
・Passive skills
Night Vision
Sense of smell Enhanced (1):5Lv
Peerless Vigor:5Lv
Disease and Poison Resistance:5Lv
Enhanced Body Part:front teeth:3Lv
Intuition:2Lv
Rapid Healing:1Lv
Strengthened Attribute Values: Vandalieu:10Lv
Strengthened Attribute Values: Guidance:1Lv
・Active skills
Silent Steps:5Lv
Detect Presence:5Lv
-Surpass Limits-:1Lv
Coordination:1Lv
Commanding:1Lv
・Unique skill
Vandalieu’s Divine Protection
〇Monster explanation::Imp Mouse Luciliano著
Vandalieuのflesh and bloodを与えられ、Demon型のmonstersと化したmouse。小悪魔(インプ)のmouseという意味で、monstersとしては戦闘Abilityが低いが、知能はかなり高くなっている。
また、体の大きさはmouseだった時のままであるため、隠密Abilityがかなり高い。
毒を分泌するような特殊Abilityを持たないためadventurerどころか一般人に対しても致命傷を与えるのは至難の業だが、普通の猫には簡単に負けない程度のbody part Abilityがある。
また、【Strengthened Attribute Values: Vandalieu】のskillを高levelで持つため、Vandalieuのflesh and bloodを食せばbody part Abilityを爆発的に高める事が可能。Tadano・mouseの場合、中型の猟犬を上回る。
ただ、やはり隠密Abilityに特化したmonstersである。また、Breeding力もmouseと同じく旺盛。
なお、【Commanding】や【Vandalieu’s Divine Protection】を持っているのは、今のところImp Mouseの始祖であるTadano・mouseだけのようだ。