Vandalieuによって、appearanceと大きさはそのままだがmonstersに変化したmouse、Imp MouseがBraga達に加わった事でOrbaum Elected King城の探索は進んだ。
Imp Mouse達は城内部のあらゆる屋根裏や床下に精通し、敵国などに攻められた時のために用意された隠し通路や隠しroomの在りかも探り出してくれた。
monstersとなった事で知能がincreaseし、恐ろしいTrap(mouse捕り)や致死毒(猫いらず等)も掻い潜った彼らはTelkatanis Prime Ministerが隠していた【Demon King Fragment】のsealedや【Equipment】……その抜け殻も発見した。
筒状のOrichalcumはその復元力によって、appearanceは傷一つ残さず元通りになっていた。しかし、内部に【Demon King Fragment】が残っていないのは、Vandalieuにとっては明らかだった。
これでUrgen・Telkatanis Prime Ministerが【Demon King Fragment】を使って何かしようとしている事は、決定的になった。彼が独自にtemple等から【Demon King Fragment】を集めていたのは、確かな事実だ。この空になったsealedを他のNoble達の眼の前で彼にthrustつけ、事情の説明を求めればUrgen・Telkatanisは失脚。Prime Ministerの地位を追われ、即座に牢へ繋がれ場合によっては首を刎ねられる事になるだろう。
しかし、そのTelkatanisを背後で操っている黒幕の居場所がまだ分からない。
黒幕……『God of Law and Life』Aldaの手の者は、【Demon King Fragment】を集めて隠すだけならともかく、sealedを解くのは考え難いので、やはりRokudou Hijiriだろう。だが、そのRokudouがどこにいるのか分からないのだ。
既に城を抜け出ている可能性も考えて、Orbaumの街とその周辺地域全てを捜索しているが、現時点で当たりはない。
あまりに手掛かりが無いので、Orbaumから離れた町やElected King領以外のDuchyに潜伏しているのではないかとも思ったが、さすがにそれは考えづらい。
現時点でRokudouが利用している『Lambda』worldのHumanは、Telkatanisただ一人。痕跡を残さず潜伏し続ける事は難しいだろう。【Demon King Fragment】を何らかの形で利用しているのなら、尚更。
それに、彼はTelkatanisに【Demon King Fragment】製の武具を渡したはずだから、その前までは確実にElected King城に存在したはずだ。
それ以後はVandalieuがElected King城を探っているし、その時にはOrbaumの街中に霊による監視網が敷き詰められている。通常の手段では脱出できるはずがない。
だが、手掛かりが得られないまま時は過ぎて六月になっていた。
「こうなっては、俺の誕生日partyは延期するしかないでしょう」
六月生まれのVandalieuは、Silkie Zakkart Mansionの一室で重々しく言った。
『どことなく嬉しそうですな、Bocchan』
「Vandalieu、Nuaza -sanが誕生日に合わせてtheme Park計画を発表したいって言っていたからって……」
「kaa-san、あれはtheme Parkではありません。theme Parkの皮を被った、俺を褒め殺すための殺戮施設です」
TalosheimのGrand Templeを、Church of VidaのTemple HeadのNuazaが企画し、建設計画が進んでいる。
Grand Templeと銘打っただけあって、Vida's FactionのGodsや新しくVida's Factionに加わったGartlandのPovaz達、Alcrem Duchyの『God of Mountains』BorgadonのIdol Statueも祭られ、introductionされている。
更に、Orbaum Elective KingdomやDemon continent、Demon KingのContinent、Gartlandのintroduction cornerもあって、教養を深め、今後の交流の促進にも役立つことが期待できる。
さらに売店やFood Stall、restaurantやfood courtも併設してshoppingや食事を楽しむこともできる。しかも、施設内にはStageを併設。Concertやhero show等のeventも行う事ができる。
それだけならVandalieuを褒め殺す要素は無いのだが……。
「Vandalieu coasterは面白そうだと思うぞ。乗り物に乗って、今までのVandalieuとVidal Magic Empireの歴史を現す模型を順番に見て回れるのだろう?」
『私達も出てくるらしいしねぇ』
「うむ。まあ、確かに照れ臭いが」
OniwakaことYuuma、Eisen、そしてZadirisが期待するVandalieu coaster(仮称)とは、乗り物に乗って進むTypeのattractionだ。
通路の左右にVidal Magic Empire……と言うよりも、Vandalieuの激動の人生の場面を現した模型を見ながら知る事ができるattractionである。
そして、それこそがVandalieuが恐れる、彼を誉め殺すための殺戮施設である。
「Vandalieu -sama、それに褒め殺しとまでは言えないと思うわ。事実をそのまま脚色しないで説明しているのだし」
「もっとも、多少の簡略化は行う予定のようですが、それは仕方がないかと。旦那-samaの人生は濃度が高いので」
EleonoraとBellmondも、Grand Temple projectに賛成派のようだ。
「確かにそうですが……それでも十分褒め殺しです」
Nuazaの企画書には、Vandalieuの人生が詳しく書かれていた。それを説明するための模型や音声(朗読)による説明の台本も、よく考えられている。
Vandalieu本人や関係者への取材を行い、模型を作る職人達との相談も密に行ったのだろう。
しかし、Vandalieuが今まで行った事が克明に語られすぎて、Vandalieu本人からすると褒め殺されているとしか思えないのだった。
『Bocchan、それは仕方ありません。真実です』
『因果応報、自業自得。諦めてください、Bocchan』
『それにBocchan、私個人としては乗り物の形状が馬車のcarriageを模している点を評価したいのですが』
「あと、私からも一言よろしいでしょうか?」
そこですっと手を上げたのは、黙っていると怒っているようにしか見えない強面の巨漢、『Goddess of Rain Clouds』Baciasからblessingsを受けている『[Heart Warriors]』のArthurだった。
彼はVandalieuを見つめて、言った。
「褒め殺しにされる対象があなた一人の場合は、殺戮施設ではなく殺人施設なのではないでしょうか?」
何を言うつもりなのかと見守っていた周囲の者達は、彼の発言に思わずよろめいた。
「なるほど、確かにその通りですね。ありがとう、Arthur」
そしてVandalieuの返答に、更によろめいた。
彼にとって、Arthurが殺「人」施設と評したところが高pointだったらしい。
「あたしとしては、event spaceがあるのは評価できますけど……このMascotキャラ案は全部没にするべきだと思いますね。Vagubi -kunとかVancer -kunは、絶対に没です。Vanのfanatic以外泣いて逃げます」
Kanakoはそう言いながら、企画書に書かれたGrand TempleのMascotキャラ案……VandalieuのGiant生首の切断面から蟲の脚を何本も生やした形状のVagubi -kunや、やはりVandalieuの頭部の側面に蟹のscissorや脚を生やしたVancer -kunを指して渋い顔をする。
ちなみにVagubi -kunは、Vandalieuの生首の略であり、Bug(蟲)をもじったものである。そして、VancerはやはりVandalieuと蟹(Cancer)をもじったものだ。
どちらも蟲や蟹のmonstersにVandalieuの頭部の着ぐるみを被せるだけでできると、企画書には書かれている。
「そうですか? よくこういう姿の俺を夢で見たという話を聞いたので、仕方ないかなと思っていたのですが」
「なんでそこはSlightly賛成なんですか!? 最近Humanとしての感覚が薄れていますよ!」
「その一言は心を抉るのでやめてください」
べちゃりと、力なく倒れ伏すVandalieu。こうして時々Vandalieuが倒れるので、Silkie Zakkart Mansionの床は常に磨かれている。
「Vandalieu」
そのVandalieuの両肩を掴んで立たせたElizabethは、彼を問いただした。
「誕生日partyで、お母さまの事を発表するって予定は、まだ有効よね?」
Vandalieuを夫だと思い込んでいるElizabethの母親、Amelia Sauronとの婚約をVandalieuは正式に発表する予定を組んでいた。
ただこの正式発表をきっかけに、他の婚約者との結婚や、新たな婚約者Candidateの出現などが予想される。そのため、ElizabethはVandalieuがうやむやにするつもりではないかと不安を覚えたようだ。
「もちろんです。既に主だった人物への根回しは済んでいますし、台本もできていますし、記念品として飾るAmeliaの肖像画、式典で着て貰うdress、万が一戦闘に巻き込まれた時のためのTransformation Equipment、そしてlevellingの計画書も完成しています」
「……後半二つはともかく、まあそれならいいわ。じゃあ、TelkatanisとRokudouって奴らへの対応は十分なの? 延期にするってことは、そっちに集中するって事なんでしょう?」
「ええ、情報収集以外にも色々しています。戦場にするためのOrbaumの街に似たDungeonや、逆にいざという時避難するためのDungeonを創るとか」
以前Alcrem Duchyの交易都市、Moksiの街でPure-breed Vampire Birkyneやその手下と戦う時に行った戦法……GufadgarnのSpace-Attribute Magicで町を模したDungeonに【Teleportation】させ、街の人々に絶対犠牲が出ないように戦闘を行った。それと大体同じ事ができるよう、Vandalieuは準備していた。MoksiとOrbaumでは規模が異なるため、精度はかなり落ちるが。
そしていざという時にShelterに使うためのDungeonは、敵ではなくOrbaumの人々を避難させるためのDungeonだ。もちろん、事前の避難訓練どころか存在の周知すらしていないDungeonに人々が逃げ込むはずがない。……というか、Dungeonをいざという時のShelterになんて発想を、Human社会で生きる人々は普通しない。
人々にとってDungeonは危険地帯という認識だからだ。
Boundary Mountain Range内部のようにShelterや食料供給のための手段、そして居住spaceとしてDungeonを利用していないため、その発想がないのだ。
Vandalieuも、Ghoul nationやZanalpadna等の国々に行かなければ思いつかなかっただろう。
なので、もしもの時はGufadgarnとJane DoeがSpace-Attribute Magicで、LegionがLimited Death-Attribute Magicで逃げ惑う人々を【Teleportation】させる予定だ。Alcrem Duke 家やJahan Duke 家等の協力者の力を借りて。
協力者たちに『Shelter』を開いてもらい人々をそこに誘導し、その『Shelter』の入り口に【Teleportation Gate】を開いてDungeonの内部と繋げてしまうtacticsである。
もちろん、避難誘導を行っている余裕や時間が無い可能性も考えられるが……その場合はRokudouをなんとしてもDungeonやVandalieuの【Body World】に取り込むか、街の外に戦場を移すしかない。
「Dandolip senseiにも話して、協力を求めるのはどう? あと、Meorilith校長も。校長senseiは並みのNobleより顔が利くし、いざって時は助けになるはずよ。
それにTamer guildのMasterとも、仲良いんでしょ?」
当人たちが聞いていれば、眉間に皺を刻みそうな事を言うElizabeth。事態が事態なので知らないままでいるよりは大分マシなはずなのだが……。それと、Orlockは『仲が良い』という言葉に、「いや、仕事上の付き合いだけじゃから」と全力で否定するだろう。
「そうですね。sensei達には話しておいた方が良いかもしれません。特に、Dandolip senseiはかなりの腕利きです。おそらく、今現在俺達やRokudouを除けばOrbaumで最も強いのはDandolip senseiでしょう」
「そうね、あの男……かなりの腕前だわ。AClass adventurerじゃないのが不思議なくらい」
VandalieuのTamed Monsterとして実習について行ったEleonoraの目から見ても、Dandolipの実力は高かった。
Dandolipの名がAdventurer’s Guildに残っていないのが、不思議なくらいだ。
「『True』Randolphでも出てくれば話は別だろうけど」
「……そういえば、何処にいるんでしょうね。『True』Randolph」
Telkatanis Prime Ministerに雇われている形跡がないので、Vandalieuは『True』Randolphについて放置していた。興味がない訳ではないが、今は探している場合ではないと思ったのである。
見つけ出してもallyになるとは限らないし、自分を探すVandalieu達に対して危機感を抱いて拠点を移すだけならともかく、こちらに敵対する事を選んだりしたら藪蛇を突くことになる。
それに、Alcrem DukeとJahan Dukeがconnectionを通じて連絡を取ってみたが、連絡がつかず、どうやら長期の依頼を受けている事が分かっている。
「後はRokudouの居場所が分かれば無問題ですが……しかし、ついに来てしまいました。奴らが来ます」
「奴らって……『Five-colored blades』?」
「いえ、Asagi達です」
「……うげぇ」
「Kanako、Idolが出してはならん声が口から出ておるぞ」
「今はprivateだから良いんです。fanの前でもないですし。それに、こうして普段見せない面を垣間見せると心の距離が近づくんですよ」
『いや、でもうげぇじゃ距離は縮まらないと思いますよ』
『それでBocchanとの距離が近づくなら、Vidal Magic Empireはうげぇが流行語になってしまいますね』
「Kanako、我が国のためにちょっと心の距離を遠ざけますね」
「ええぇっ!?」
「それはいいから! そのAsagiって連中や『Five-colored blades』はどうするのっ!?」
話を強引に元に戻したElizabethに、Vandalieuは答えた。
「とりあえず、『Five-colored blades』にはMessengerを送りました。それで警告するつもりです。RodcorteがAldaと組んでいる以上、AsagiやHeinzがRokudouと組んでいる可能性は、低いけれどありますからね」
「ん? Asagi達には送ってないんですか? まあ、交渉が無駄に終わりそうって印象はありますけど」
Kanakoの言葉に「俺も同感ですが」と頷いてから、Vandalieuは答えた。
「Asagi達がOrbaumに来るのは、sponsorであるBirgit Dukeの意向です。移動中も彼等だけではなかったので、別口の使者を送っています」
対【Demon King Fragment】研究の意義を試す機会がやってきたとして、ReincarnatorのAsagiとTendou、そしてShoukoは研究責任者であるDwarfのZeanの研究協力者としてOrbaumの街に向かっていた。
【Clairvoyance】のTendouと【Ifritah】のShoukoとしては気の重い旅だが、雇い主であるBirgit Dukeに対して説得力のある口実も無いのに断る訳にはいかない。
それに、Orbaum Elective Kingdom全体に関わる話となれば、知らぬ振りはできない。
そのため、彼ら三人はZeanと共にBirgit Duke 家が用意した馬車に乗ってOrbaumを目指して旅をしている。そして、今は宿でZean達とは別のroomに集まって意見交換をしていた。
「しかし、VandalieuはPrime Ministerと組んで何をするつもりなんだ? やはり、Elective Kingdomを動かしてAmid Empireと対決するつもりなのか?」
そして【Mage Masher】のAsagiは、VandalieuがTelkatanis Prime Ministerと組んで何かを企んでいるに違いないと思い込んでいた。
何故なら、彼の中に「Vandalieu=【Demon King Fragment】」という公式が刻み込まれていたからである。
Infestされた犠牲者が暴れ回っているような、今までにもあった事件ならともかく、【Demon King Fragment】製の武具を将兵に配備させようとするなんて前代未聞の事は、Vandalieu絡みに違いない。そう考えているのだ。
「いや、そうと決まった訳じゃないだろう」
「Demon King ArmyのRemnantsの邪悪な神が糸を引いているって可能性も……残っているとは思う」
「あと、Prime Ministerが実は危険な思想の持ち主で、独自に企んでいるだけという事もあり得るかもしれない」
TendouとShoukoも、内心ではVandalieuの関与を疑っているが、それ以外の可能性も考えていた。
「それに、Rokudouが何か企んでいるのかも」
「……Rokudouか。確かに、奴ならあり得るかもしれない」
Asagi達は、Rokudou HijiriがTelkatanis Prime Ministerを唆して【Demon King Fragment】を集めさせたことも、【Demon King Fragment】で創りあげたBodyにreincarnationした事も、そして今どこで何をしているかも、何も知らなかった。
それはRodcorteが彼らや、 Bahn Gaia continentから離れているMao達に情報が渡らないようにしたためだ。彼らがVandalieuに情報を漏らすとまでは考えていなかったが、しばらく前に会った【Five-colored blades】等のAlda's FactionのGodsのbelieverに話す恐れがあったからだ。
いくら自分以外の存在の心情が理解できないRodcorteでも、Demon Kingのsoul fragmentをRokudou Hijiriの魂に埋め込み、【Demon King Fragment】でBodyを創ってreincarnationさせるなどという真似をしたとAldaが聞けば、激怒するという事は分かった。
激怒するだけではなく、Rokudou HijiriをVandalieuよりも優先して攻撃するようHeinzに命じる可能性も高い。Vandalieuは『Lambda』worldを滅ぼさないが、Demon King Guduranisは『Lambda』worldを滅ぼすのだから当然だ。
場合によっては、Vandalieu達と一時的な共闘も辞さないだろう。……Vandalieuが受け入れるかは、ともかくとしてだが。
なので、RodcorteはAsagi達に何も教えていなかった。……Rokudouが死んだ時点では【Demon King Fragment】を利用する事は思いついていなかったので、「Rokudou HijiriがDeath-Attribute Magicを習得したが、『Origin』worldでVandalieuによって殺され死亡した」事はFamiliar SpiritのAran達によって伝えられてしまったけれど。
「でも、いくらRokudouの奴がDeath-Attribute Magicを習得したとしても、【Demon King Fragment】をVandalieuのように扱う事ができるとは考えにくい。そう思わないか? もちろん、Rokudouを庇う訳じゃないが」
AsagiにとってRokudou Hijiriは、かつては仲間だったが今はKanako同-samaに【Bravers】を裏切り、更にはworld中に大きな災禍をばら撒こうとした悪だ。
そしてRokudou Hijiriを狂わせ、多くの人々に非道な人体実験を行って手に入れたdeath attributeは、やはりこのworldにはあってはならないものだと信念を新たにしたのだった。
だが、Rokudou Hijiriが【Demon King Fragment】をVandalieuと同じように扱う事ができるか否かについては、TendouとShoukoも同意見だった。
しかし、それ以外には異議があった。
「だけど、この件にVandalieuが関わっていたとして……狙いは何だ? Telkatanis Prime Ministerをallyに引き込むのは分かる。どうやってやったのかは分からないが、できればElective Kingdom全体にinfluenceを及ぼせるようになるからな」
「だけど、【Demon King Fragment】製の武具を軍で採用させる必要があるのかって話よね。確かに実現できれば、Amid Empireに対する軍事力をAugmented (2)する事ができるけど、実現するまでに時間がかかるのは目に見えているし……そこまでしてOrbaum Elective Kingdomの軍を使って、Amid Empireと戦う必要があるとも考え難いはずよ」
「Vandalieuなら、並みのSoldierはStone Golemの群れでも作れば簡単に対抗できるし……そもそも、あいつが抱えている戦力なら、並みのSoldierはcertainly、Knightだって一掃できる。武具を作ってElective Kingdom軍に配備するよりも、その方が早いし手間も少ない。
窓の外にいるあんたが、そのあたりの事を説明してくれると助かるんだが?」
前世では【Clairvoyance】のCodenameをつけられたTendouは、見る事に関する複数のCheat Abilityを持っていた。透視Abilityもその一つで、『Lambda』にreincarnationしてからはStatus systemの補正も活用して、そのAbilityに磨きをかけている。
そのTendouの目は、窓の外にいる黒づくめの男の姿を捉えていた。普段なら殺し屋か泥棒だと考え、わざわざ声をかけたりせずに捕縛するのだが……その男が懐に『Vandalieuより』と書かれた封筒をendureばせている事に透視で気がつき、近づいてくるのを待っていたのだ。
「……説明はできない」
黒づくめの男は、窓を開けると外からそう言った。
「詳しくは、そのletterに書かれている」
「お前は、Vandalieuの仲間なのか?」
「違う。俺はあの方に仕える奉仕者……罪を償うために生きている」
「身のこなしはどう見てもプロのAssassinだけど?」
「元殺し屋だ。尤も、あの方に命じられれば殺しもするだろうが……俺如きに声がかかる事はあるまい」
そう言いながら元殺し屋の男は、懐からVandalieuと差出人の名が大きく書かれた封筒を取り出し、roomの中にいるTendou達に向かって投げ渡した。
「俺の使命は、そのletterを渡す事。それを読んで、判断するがいい」
「待てっ! お前は罪を償うと言ったが、Vandalieuに従う事で償いになると思ってんのか!?」
身を翻そうとした男に向かって、Asagiがそう問いただすと男は意外な事に振り返って答えた。
「Asagi・Minami……お前は考え違いをしている」
覆面の間から見える目は、虚無を抱えていた。
「俺はSlumの孤児を攫い、薬を投与してorganizationのためのAssassin……人形に仕立てていた。それを罪だと思い、悔い改めるために償おうとしている訳ではない」
「な、なんだとっ!?」
男が告白した、想像以上に悍ましい悪事とそれを犯した事への言葉に、思わずAsagiは拳を握って気色ばむ。
だが、男が覆面を脱いで口を開くと顔色を変えた。
「俺が罪を償うのは、あのお方の傍にいるため。あのお方が罪と定義する行いを犯していたから、それをあのお方が示す償いへの道を歩むのだ。
人形である俺には、それ以外の存在の仕方が分からない。organizationにいた人形でない者は、もう人の形をしていないから、あのお方以外指示を出せない」
覆面を脱いだ男の顔つきは、Asagi達が想像していた以上に幼かった。
素顔を見せた後、改めて身を翻した男が去って行った後、立ち尽くしているAsagiの後ろでShoukoはletterを無言のまま拾い上げた。
そこにはTelkatanisの背後にいるのは、自分ではない事。そして、黒幕はおそらくRokudou Hijiriである事が書かれており、それでも自分達の邪魔をする場合は敵として排除する。ただ、できればお互いに不干渉でいる事を望む。そう情報と警告が記されていた。
そして、このletterを持った者を傷つけた場合も、敵対の意志ありとみなす、と最後に書き添えられていた。
Edgarの提案もあって、Heinz達『Five-colored blades』とSelen、そして数名の協力者はDuke Farzon領の『AldaのTrial's Dungeon』を出てOrbaumに向かっていた。
Prime Ministerが【Demon King Fragment】製の武具を軍に正式配備しようと提案したという、前代未聞の事態に対応するためだ。
彼らは、VandalieuやVida's FactionのGodsが自分達を警戒するのと同じくらい、Vandalieu達の襲撃を警戒していた。
Bellwoodの力を得たHeinzでも、不意を突かれればあっさり殺されてしまうかもしれない。その危機感は凄まじく、本来なら何の危険もない道程が途方もなく長く感じられた。
「……そこにいるのは誰だ!?」
だからこそ、signを消して隠れ潜む何者かに気がつく事ができたのだ。
『ばれましたか』
平坦な声が響くと、彼らが進んでいた街道の脇にある草原の一部が突然動いた。
「monstersかっ!?」
「草原にCamouflageしていたのか!」
現れたのは、Giantな蟹のような存在だった。背中に草を生やし、exoskeletonで覆われた脚やscissorを体の下に隠してCamouflageしていたのだ。
協力者のAClass adventurer partyは、剣を抜き、呪文を唱えてmonstersと戦おうとした。
「待てっ!」
しかし、Heinzはそれを止めた。そして、驚く協力者やpartyの仲間達の見ている前で、蟹のような存在に話しかけた。
「何の目的で姿を現した? 殺し合いとは思えないが?」
『messageを伝えに来ました。もっとも、殺し合いになっても俺は別に構わないのですが』
蟹のような存在……Demon King Familiarは、瞳に宿る憎悪を隠そうともせずHeinzの質問に答えた。