「ほぎゃーっ、ほぎゃーっ」
赤ん坊らしい泣き声で泣いているのは、しかしただの赤ん坊では無かった。
黄金をそのまま使ったかのような金の髪に、このTalosheimの王城に使われている石材の-samaに白い肌。そして頭の上にpink色で三角形の耳と、お尻の上には短いtailが生えている。
因みに、Lambdaには豚のBeastmenは存在しないらしい。
「気がつくとLife-deadが灰になっていて、この子が泣いていたと」
「そうなんだ」
Doran’s Aquatic Cavernから戻り、Life-deadの-sama子を見に来たVandalieuを出迎えたのはBasdiaの腕に抱かれた赤-chanだった。
どうやら、Doran’s Aquatic Cavernに行っている間に胎児が十分に育ち、同時にLife-deadのManaが切れてしまったらしい。
「まあ、Life-deadの方は別にいいです。originally、用が済んだら葬るつもりでしたし」
遺灰をGolemにして纏める。あのLife-deadは魂も無く、heartが動いているだけの存在だったのだ。胎の中の、自分の生まれ変わりを育てるための。
「それで、この子が無事産まれた訳だが……泣き止んでくれなくて困っていたんだ」
「ほぎゃーっ! ほぎゃーっ!」
「ちょっと見せてもらって良いですか?」
「certainlyだ」
よっこいしょと彼女を受け取る。するとその途端泣き止んだかと思うと、彼女はじっとVandalieuを見つめた。
彼女の視線を受けながら、彼女を観察する。
「……うん、vestigesがある」
顔はLife-deadと霊のvestigesがあるし、鼻の形はHumanだ。あと、しっかり彼女である。男しかいないNoble Orcでは無い。
「今から詳しく調べるから、ちょっとenduranceして」
「うっ」
【Spirit Form Transformation】でbody partの一部をSpirit Formにして、彼女のbody partの中を調べる。内臓の数、boneの形、それ等もOrcとは違い人に近い。
流石に機能がHumanと同じかどうかは、今は分からない。でも明らかにOrcやNoble Orcでは無い。
しかし完全にHumanとは言えないようだ。Noble Orcと同じ金の髪に、瞳も青い。それに耳とtailを見れば一目瞭然。
今はただの赤ん坊だが、育てば他にも色々人離れした事が出来るようになるかもしれない。
raceはHalf-Noble Orcだろうか?
「Status、見られますか?」
「あむ~」
とりあえず、彼女は想像しなかった異形の姿に「話が違う!」と怒っている訳ではないようだ。Vandalieuの髪を引っ張ってあむあむと咥えている。
「あのー、もしかしてお腹が空いています?」
「Van、赤ん坊に話しかけても分からないと思うが……?」
それまで見守っていたBasdiaに聞かれて、彼女に視線を――向けようとして彼女に「あうっ!」っとHead Rockされた。
赤ん坊とは思えない程力が強い。両手で抱え込むようにして固定された頭から離れそうにない。
「俺は産まれた後、結構早くからMemoryがありましたから。もしかして彼女にも通じると思って」
「そうだったのか。だが、この子には通じていないと思うぞ。言葉が分かるなら、私の話を聞いて泣き止んでもいいはずだ。しかし全く聞くそぶりも見せず、Vanが来るまで泣き続けていた」
「じゃあ、Memoryが戻るまで時間がかかるのかもしれませんね」
Vandalieuは産まれてから、割とすぐMemoryが戻った。しかしそれはRodcorte、一応は神の手によるもので彼女はVandalieuが初めて行った術でreincarnationしたのだ。
Memoryが戻るまで数か月か、数年の時間がかかるのかもしれない。
まあ、originally死後数か月経っていた霊だったし、Memoryや意思に欠落が生じて上手く戻らない可能性も十分あるのだが。
「とりあえず、母乳はBilde達に前もって頼んであるのでそっちに行きましょうか。Basdiaはまだ出ないでしょう?」
「私?」
「はい、妊娠してますよ。-chanと胎児を守るmagic itemを付けてくださいね」
「本当か、Van!?」
「本当です、おめでとうございます。定期的に経過を見せに来るように」
「あーっ」
こうしておめでたい事が一度に二つ分かったのだった。
冬の清んだ空気とややweak太陽の光の中、VandalieuはLife-deadから生まれた彼女の生まれ変わりと一緒に、昆布を干していた。
「では実験を始めます」
「あいっ」
干し始めたばかりの昆布に、水分を抜く【Wither】をゆっくりかけながら【Aging】を緩やかにかける。
この時加減を間違えるとDryingしすぎてパラパラと崩れたり、時間が経ちすぎて塵になったりするので要注意だ。
頭痛と発熱に耐えながら術を制御する事一分少々。丁度良くなったので術を解いてDryingした昆布を回収する。
「では実食準備」
「あいっ」
廃墟の中から見つけたMagic Stoveの上の鍋に昆布を投入。そして着火。
すると、徐々に出汁が出て来た。
充分に出汁が出たらお湯が沸騰する前に昆布を取り、Blacksmith師のDataraに作ってもらったお玉で汁を一掬い。小皿によそって、冷まして一口。
「うん、良い出汁が出てる」
満足して具のワカメや山菜を入れて、味噌を溶いて味噌汁にする。
「美味しくできた」
「うー、うー」
「Pauvinaにはまだ味噌汁は早いかな」
「あうー……」
しょぼんとするPauvina……Half-Noble Orcに生まれ変わったLife-deadの彼女を「よしよし」と慰めながら、Vandalieuは昆布出汁の成功と新発見に満足していた。
本来なら生物をAgingさせ、最終的に老衰で殺すための【Aging】の術を使いながら昆布を干すと、一分ほどで二十五年程干した高Class干し昆布になる。画期的な発見だ。
通常なら二十五年かかる物が一分で出来上がるのだから。因みに、何故二十五年なのかというと、確かそれぐらいの時間干してMaturationさせた昆布は、通常の干し昆布より高Class品であるとEarthでは扱われていたようなMemoryがあったからだ。確か、旨み成分がどうにかなるのだったと思う。
本当に旨み成分が増えているか確かめる術がないし、Vandalieuも高Class昆布から出汁を取った味噌汁を飲んだ事は無いので、全て思い込みである可能性も否定できないが。
「あうー」
尚、最初はMemoryがまだ戻っていないと思われていたPauvinaだったが、実は産まれた直後からある程度Memoryを思い出していた。
しかしそれはVandalieuが危惧した通り、とても断片的で自分のnameも思い出せない-sama子だった。
覚えていたのは死体をLife-deadにされた事と、Vandalieuに助けられた事。後半については「利用された」でもいいと思うが、彼女はVandalieuに恩を感じ、更にとても懐いていた。
「んむ……」
ただ、Memoryはある程度戻ってもMental ageはほぼchildだった。Pauvinaの場合はVandalieuの-samaなReincarnatorと違い、前世の事を少し覚えているだけのchildだ。
これから再び育って、大人になって行くのだろう。
……きっと大きくなるだろう。生後三か月目にして、身長が三ageのVandalieuに迫っている。彼が小柄である事を差し引いても、凄い成長速度だ。
これもNoble Orcのbloodが混じっているせいか。
Pauvinaに高い高いをされながら、Vandalieuは、「俺は新raceを創り出すMad Scientistでも気取っているのだろうか?」と自嘲した。
Nuaza達からは「まさに我々を生み出したGoddess Vidaの如き御業!」と喜ばれているのだが。これはいよいよ予言のMikoの看板が下ろせなくなりそうだ。
違うのなら、今の内にOracleか何かでいってくれると嬉しいです女Kami-sama。
「今のところ全て順調に進んでいる」
「うー?」
「うん、鰹節以外はね」
Pauvinaの成長は順調だ。大人になるまでどれくらいかかるか分からないが長くて十数年ぐらいだろう。健康面も問題無いし、こうして仲良くやれている。
彼女を利用して生まれ変わらせた以上、Vandalieuは彼女の新しい人生に責任があるのでしっかり面倒を見る予定だ。
Pauvinaの誕生と同時に判明したBasdiaの妊娠だが、こちらも経過は順調だ。まだ妊娠三か月を過ぎていないから慎重に診ているが、magic itemの効果は問題無く発揮されている。
piercingも気に入ってもらえて何よりだ。
PauvinaとBasdiaの-sama子を見るために現在はDungeon攻略を再び中止しているが、日帰りできる距離のDevil Nestsに皆と行って、訓練も続けている。皆の【Chant Revocation】skill習得のための修行に付き合ったり、ReversiやJenga、魚醤や味噌を作ったり。全て順調だ。
唯一躓いているのは、鰹節作りだった。なんと、このLambdaには燻製の概念が存在しなかったのである。
干し肉等があるからてっきり燻製もあるだろうと思い込んでいたが、無かったらしい。ローストビーフはcertainly、Baconやハム、ソーセージにウィンナーもこのworldには存在しないのだ。
Katia達から聞いたが、このworldの干し肉は塩漬けにした肉を天日に干した物らしい。
お蔭でVandalieuは鰹節を作るための燻製施設を、独学で作らなければならなくなったのだった。
やっと火を使う許可がDarciaから出たVandalieuだったが、初めて自分の手で行うCookingらしいCookingが、「聞きかじった程度の知識で燻製器から作る鰹節」とは難易度が高い。
「Originで和食に詳しい西洋人の霊からは話を聞いたけど、鰹節作りの専門家じゃなかったからなぁ」
干して、炭を作って、燻製にする。その過程でただの燃えカスになったり、中が生だったり、失敗作ばかりが出来上がっている。
発酵食品なら、材料をセットして【Fermentation】を唱えるだけで終わるのだが。
この分だとBaconやウィンナー作りの時も苦労しそうだ。Orcという格好の材料があるのに。いや、まだspyスが足りないか。
「とりあえず、そろそろ降ろして」
「うーっ」
いや、まだするの。そんな-sama子のPauvinaに高い高いをされつつ、Vandalieuは三度目の人生で迎える四度目の冬を過ごしていた。
探索は難航を極めていた。
何とか比較的安全にMountain Rangeを越えるルートを割り出したが、結局手下のSubordinate-bornの内三分の一が途中でやられた。
そして越えた後の探索でも難航を極めた。
「ここまで面倒とは思わなかったわ」
そうため息混じりに言うEleonora達の目的はDhampirの殺害だが、別に【Dhampir Radar】とか【Dhampir探知】だとか、そんなmagic itemやmagicが存在する訳ではない。
だからまずDhampirが率いて行った数百匹のGhoulが作る集落を探す事にした。Mountain Rangeを越える途中で半分程になっているかもしれないが、それでも二百匹は生き残っているだろうとconjectureして。
二百匹が生活する集落を造るとしたらそれなりの規模だ。しかも Ghoulは高所に適応している訳でも無ければ、切り立った崖が得意な訳でも無い。平地だ、それも今は開拓地になっている密林Devil Nestsに環境が近い平地を選ぶに違いない。
そうconjectureして使い魔を放って探した結果……一匹も見つからなかった。
「全く、何処に行ったのかしらね。まさか霞のように消えた訳でもあるまいし」
足元で倒れたまま動かないSubordinate Vampireに持ってきた聖水をかけながら、Eleonoraは溜め息をついた。本当に使えない。masterも使えないが、そのSubordinate-bornも使えない者で揃っているのは、本当にどういう事なのか。
「地下に潜ったのかもしれんぞ。洞窟も探してみるか」
Sercrentの顔にも憔悴が浮かんでいた。使えない手下が何人死のうが構わないが、この使命を果たさないと出世どころか命が無いので必死なのだ。
「それにしてもGhoulの食料が必要だから、出入りは多いはずよ。それともまさか……Mountain Rangeを越えた時点で用済みだから始末でもしたのかしら?」
可能か不可能かはさて置いて、それなら使い魔や、連れてきたSubordinate Vampireの三分の一が命を落とすような懸命の捜索でも見つからないのも納得だ。あのDhampirは生後一年未満であの名高きfanatic、Gordanの捜索から隠れきったのだから。
一人なら必要な食料の量も知れるし、それこそ地に潜るのも容易いだろう。
「それよりも死んだこいつ等の霊がDhampirに俺達の情報を漏らしている可能性は無いのか?」
SpiritualistらしいDhampirへの対策として、出来るだけ殺さず死なずpolicyでEleonoraもSercrentも捜索しているが、それでもBoundary Mountain Rangeの合間に在るDevil Nestsは一筋縄ではいかない。
運悪くDragonに遭遇する等して、既に残りのSubordinate-bornの数は三分の一に減っていた。そうして死んだ場合は、死体に聖水をかけ霊が地上に残らない-samaにしているが、何分彼らは霊を見る事は出来ない。
Undead Transformationしていないただの霊を見る事が出来るのは、Spiritualist Jobの持ち主だけなのだ。
そのため霊が本当に死体の周囲にいるのか分からない。とっくに霊がDhampirの元に馳せ参じた後だったとしても、気が付けないのだ。
「幾らDhampirがSpiritualistでも、顔もnameも知らない相手の霊を召喚できるものではないわ。可能性は低い……そう思いたいわね」
「そうか……だがどうする? これ以上何処を探せばいい?」
「そうね、だったらTalosheimの跡地に行くのはどうかしら」
二百年前、Amid EmpireがMirg Shield Nationの軍を使って滅ぼさせたGiant raceの国。彼らの派閥を仕切る三人のPure-breed Vampireの内Gubamonが利用し、Terneciaも一部関わっていた。
今ではきっと、Giant raceのUndeadが出現するDevil Nestsとなっている事だろう。
「廃墟とはいえ使える建物も残っているかもしれないし、開けた場所に一から作るよりも集落を興しやすいかもしれない」
Dhampirが知っているとは思えないが、Talosheimの近くにはDungeonもある。それを使えば効率よく食料を得る事も出来るはずだ。
しかし Sercrentは良い顔をしない。
「いや、だがTalosheimはUndeadで溢れているはずだ。とても集落を作る事などできはしない」
その顔を見て、EleonoraはSercrentを今すぐ殺したい衝動に駆られた。
何故SercrentがTalosheimに行くのを嫌がるのかというと、至極つまらない理由だった。
Eleonoraに主導権を握られたくないのだ。
Sercrentが失態を拭い、以前の立場に戻るためには「Dhampirの抹殺に成功する事」はcertainlyだが、更に「Eleonoraでは無く、それが自分の手柄」で無くてはならないのだ。
使命を果たしても、Eleonoraの言う事を聞いて果たしたのでは、それはSercrentが彼女の犬に成り下がったという事であり、更に言えば「いちいち指図されなければDhampir一匹始末できない無能」と言う事の証明になりかねない。
Evil God (M)派のVampireの社会は、上る者には媚び、落ち目の者には徹底的に叩く事が常なのだから。
使命の達成を優先するなら、Sercrentを立てて動くしかない。
しかし、Eleonoraにはそれが解っていても出来ない理由がある。Birkyneの親衛隊である彼女がSercrentの下に着く事を是としたという事になり、それにあのPure-bornは耐えられないのだ。
beyond descriptionに尽くしがたい仕置きを受け、また治らない傷を増やされる。それは御免だ。だからEleonoraは、この哀れな男に堕ちるところまで堕ちてもらおうと決めた。
「そう、なら私だけで偵察して来るわ」
今までEleonoraがSercrentと共に行動していたのは、手数が必要だったからだ。Subordinate Vampireを作る許可をBirkyneから与えられていない彼女は、手足になる存在が使い魔しかいなかったから。
しかし、ここまで役に立たず数も減った手足なら無くても変わらない。だからSercrentから離れて動いても構わない。
「なんだとっ!?」
しかし Sercrentは大いに慌てた。別れている間にEleonoraがDhampirを始末してしまったら、彼にとっては使命失敗と一緒だ。
逆に自分が手柄を独り占めするchanceでもあるが、Ability的にはSercrentよりもEleonoraの方が高く、Subordinate Vampire達が役に立っていないのに今更優位に立てるとは思えない。
「……いいだろう、Talosheimを調べようじゃないか」
俺が許可を出すのだからなと、意味の無い体裁を繕うこの自分より何倍も生きているVampireに構わず、Eleonoraはnight空に舞い上がった。
しかし、二百年前のMirg Shield Nation軍のrecordから割り出したTalosheimの跡地に着くと、Eleonoraは思わず目を丸くし、口を開けたまま立ち尽くした。
こんな間抜け面をしたまま立ち尽くすなんて、Vampireになる前からそうそう無かった。
「ば、BAKANA」
「これは、幻ではないのか?」
しかし、今のEleonoraの姿をSercrentとその手下に見られる心配は無かった。彼らも間抜け面をして呆然と立ち尽くしているからだ。
彼らの度肝を抜いたのは、月と星の明かりに照らされたGiantな城壁だ。VampireであるEleonora達にはその威容を真昼のように視る事が出来た。
白い石材を積み上げた壁には蔦の一本も張っておらず、崩れた場所どころか亀裂の一つも見られない。
「どう言う事、城壁はMirg Shield Nationの軍が、Mikhailが崩したはずよね?」
「そうだ、確かに……あの時は、門は砕かれ、城壁も二箇所がDecayしていたはずだ。例えそれが間違いだったとしても、手入れも補修もする者がいないのに何故ここまで……」
愕然としたままSercrentはぶつぶつと呟いていたが、次第に冷静さを取り戻したようだ。
「そうか、Undeadだ。TalosheimのUndeadがこの城壁を補修したのだ。Undeadは疲れ知らずだからな、二百年もあれば出来るだろう」
しかし、彼がGuidance出した答えはEleonoraにはとても正しいとは思えないものだった。
「Undeadが、城壁の修理と維持を?」
Undeadには基本的にProduction性と社会性に乏しい。単に強い者に従っている場合や、生前の上下関係を引きずっている場合はorganization的に動くが、多くの場合はただ群れているだけの烏合の衆だ。
そのUndeadが二百年の時間があったとしても、掃き掃除や皿磨きならin any case、城壁の修理という高度で大規模な一大事業をここまで完璧にやり遂げられるだろうか?
とても可能だとは思えない。もし可能なら、世の全ての幽霊mansionや幽霊船はピカピカに輝いている事だろう。
彼女がSercrentに「あんた正気? 気でも狂ったの?」とでも言う-samaな目を向けるのも無理も無い。
「それ以外に何だと言うのだ?」
しかし、その質問にEleonoraも答える事は出来ない。
この城壁はmonstersの手によるものでないのは明らかだし、Talosheimの跡地をOrbaum Elective Kingdomが占領し、新しく町を作ったという情報も無い。
いや、私達の目的はTalosheimの奪取でも占領でも無い。Dhampirの抹殺だ。
「……中を探るわよ」
幸い、城壁には見張りは立っていないようだった。門には何匹かGiant raceのUndeadが居るようだが、空を飛ぶことが出来るNoble-born Vampireには関係無い。城壁を飛び越えればいいだけの話だ。Subordinate-born達はclawsでよじ登ればいい。
しかし、城壁を越えた後もEleonora達の驚きは続いた。
明かりと音に乏しいTalosheimの町は、Ghostタウンを思わせる侘しさを漂わせている。しかし、一目見ればその異常さに気が付くのは充分だ。
「崩れている建物が、無い?」
Talosheimの建物は、綺麗に並んでいた。大きく頑丈に設計された石造りの物ばかりとはいえ、二百年……それも酷い戦争で滅ぼされた後、放置されていたのに。
「まさか、これもUndeadの仕業だとでも言うの?」
「な、なら何者の仕業だと……そうだっ! きっとDhampirだっ、奴が手下のGhoulに……!」
「GhoulがGiant raceのSizeに合わせて石造りの家をそのまま修繕した、と?」
「…………」
Sercrentを黙らせたEleonoraだが、彼女自身も誰がこの町を整えたのかconjectureも出来なかった。
頭によぎったのは、実は二百年前のMirg Shield Nation軍から逃げ延びたGiant raceが数百人存在していて、若しくはHartner Duchyを頼って逃げ出した連中が戻ってきて、彼等が二百年かけてTalosheimを復興させたというconjectureだが、それも考えづらい。
もしそうだったとしたら、何故この町はこんなに静かなのか。
「Sercrent -sama、微かですが明かりが見えます」
「何っ!? 王城の方向か。よし、行くぞ」
度々thrustつけられる異-samaさに動揺し考えずにはいられないが、それでも使命が優先だ。
そう思考を切り替える彼女達だったが、王城の前のOpen Plazaに近づくと三度愕然としてしまった。
『中々進まないのね』
『でも、流石にこれはBocchanに作ってもらう訳にも行かないだろうし』
『ぢゅぅ、Nuaza -dono達も春までには完成すると言っていました、それまで楽しみに待ちましょう』
造りかけの石像らしきものを見ている、妙な形のLiving ArmorやSkeleton。
『今度こそ俺が勝つぞ』
『いやいや、まだまだ若いもんには負けんわい』
パチンパチンと見た事も無い盤上遊戯に興じながら、焼き菓子を齧るGiant raceのUndead達。
「フゴー、旨そうに焼けた」
「俺の、ミソで」
「俺は魚醤」
串焼きにした肉をフライbreadでCookingし、食べている黒いOrcと黒いGoblin。
「このフカヒレって、味が無いな」
「でも美容には良いって聞いたわよ。soupの具にすると美味しいし」
腕を組んで歩くGhoulの男女。
「ジャンケン、ポン!」
「あっち向いて、ホイ!」
やはり見た事も無い遊びか何かをしている、犬の頭をしたHumanの-samaなmonsters。
「これは、一体どういう事なの? Ghoulは分かるけど……見た事も無い色のOrcやGoblin、犬頭のmonsters。それにUndeadが同じspaceで、まるでHumanの町のように呑気に過ごしているだなんて」
Sercrentから真面な答えが返って来ない事は解っていたが、口に出さずにはいられなかった。
目の前の光景は、Eleonoraの常識からそれほどかけ離れたものだった。
異なるraceで社会を営むのはHumanだけでは無く、monstersも同-samaだがその場合は強者が支配し弱者がSubordinateするという形以外には殆どない。
特に、Undeadの場合それすら不可能だ。
基本的に生前の人格を保っている-samaな高位か、下位でも稀有なUndead以外は命ある者なら人だろうがmonstersだろうが無差別に殺し喰おうとするのがUndeadだ。
それが大人しく、穏やかに過ごしている。
全てのUndeadが高位Undeadなのか? それにしてもあり得ない! 人格が残っていても、凶暴で無い訳ではないはずだ。
「わ、分からん。どういう事だ? まさか誰かにTamerされているのか? BAKANA、UndeadはTamer出来ないはずだっ!」
小声で怒鳴るSercrentの言う通り、UndeadはTamerできない。それはVampireだろうが、Humanだろうが変わらない。
過去優れたTamer系Jobを持つ者達が何度もUndeadをTamerしようと試みたが、Elder Lichの-samaな上位Undeadはcertainly、Living BoneやLiving-DeadといったRank1の最下Class UndeadすらTamerできなかった。
そして成果の出ない幾多の試みの結果、Undeadは虫系のmonstersと同-samaにTamerできないmonstersである事はこのworldの常識になったのだった。
ただ、例外がある事をEleonora達は知っていた。
「まさか、ここにEvil God (M)……いや、Goddess 's Divine Protectionを得ている者がいるの?」
ZakkartをUndeadにして蘇らせたGoddess Vidaや、Eleonora達が奉じるEvil God of Joyful Life Hihiryushukakaの-samaなEvil God (M) Evil God (P)の類's Divine Protectionを受ける者は、UndeadをCreationし支配する事が出来る可能性がある。
「他のEvil God (M)派のVampireが……いいえ、Vidaよ。Goddess Vida’s Divine Protectionを得ている者がいるわ」
Eleonoraの目には、修復されたVidaのtempleが映っていた。Evil God (M)やEvil God (P) 's Divine Protectionを得ているならGoddessのtempleを修復する事等あり得ない。
「BAKANAっ」
Sercrentは目を剥いて戦いた。Goddess Vida’s Divine Protectionを受ける者、それがもし彼らが恐れるGoddess Vidaを奉じるPure-breed Vampireだったら……。
「Sercrent -samaっ、今の内に逃げるべきですっ」
「まだ誰も我々に気がついていません、撤退しましょう!」
隠れ潜んだままSubordinate Vampire達が口々に撤退を訴える。もしここにVida's FactionのPure-breed Vampireが居るなら、彼らが見つかった時何が起きるのか。それは明らかだ。
圧倒的な力による、一方的な殲滅。
Noble-bornであるSercrentや、Eleonoraが居ても関係無い。それほどまでにPure-bornとNoble-bornの間には圧倒的な差が存在する。
そうで無ければBirkyneやTerneciaの-samaな敵を内外に作りやすい人格の持ち主が、何百人ものNoble-born Vampireを十万年以上支配できるはずが無い。
それはBirkyneからTortureを受けたSercrentや、直接取り立てられたEleonoraの方がSubordinate-born達よりも解っている。
二人とも今すぐ撤退したかったが、それが出来ない事情も同時に見つけてしまっている。
「待ちなさい、UndeadやGoblinに混じってGhoulが居るわ。きっと、ここにDhampirが居るのよ」
Talosheim以外の場所をいくら探しても見つけられなかったGhoulが、何匹も居る。それから考えれば、ここに居るGhoul達がMirg Shield NationからDhampirに率いられてMountain Rangeを越えて来た者達に違いない。
なら、当然Dhampirもここに居るはずだ。
「Dhampirを始末せずに逃げたらどうなるか、分っているわね?」
撤退を提案したSubordinate Vampire達が、originally bloodの気の薄い顔を更に白くして押し黙る。
「Dhampirを探すぞ。確か、奴の名はVandalieuと言ったはずだ。Eleonora、適当なGhoulを捕まえて聞き出せ」
「言われるまでも無いわ」
Vida’s Divine Protectionを得ている自分達より格上の存在にばれる前に、速やかにDhampirを始末して逃げる。
Sercrentに対する呆れも嫌気も捨てて、Eleonoraはその困難な目標を達成するために動き出した。