中々levelが上がらない。Vandalieuがそう相談すると、元AClass adventurer【Sword King】Borkusはコツコツと額を指で叩いて答えた。
『そりゃあ仕方ねぇ。お前がなった【Death-Attribute Mage】ってのは専門Jobだろうし、行ったのはGaran’s Valleyで連れてったのはあいつ等だ。ならlevelだって上がり難いだろうぜ』
それは、きちんと段階ごとに計測された知識ではないが、Jobに就いてある程度の段階に達した者は誰もが経験則で知っている事だった。
『Job毎にlevelを上げるのに必要なExperience Pointが違うのは分かるよな。Apprentice Jobが上がり易くて、汎用Jobが並、専門Jobが上がり難いもんだ』
Apprentice Jobは文字通りnameに「Apprentice」と着くJobの事だ。これはBasdiaやZadiris達が数日で100levelに達したように、とてもlevelを上げやすい。
汎用Jobは「Warrior」や「Mage」と言ったskill補正の幅が広いJob。
そして専門Jobは、Sword Technique skillに特化した「Swordsman」や特定のattribute magicに特化した「Fire-Attribute Mage」や「Water-Attribute Mage」と言ったJobだ。
『お前のJobは新発見のJobだから詳しい事は俺にも分からねェ。だがDeath-Attribute Magicに特化したJobだろうってのはnameから分かる。それにしては、他の【Light-Attribute Mage】や【Fire-Attribute Mage】と比べて妙に補正がかかるskillが多いみたいだけどな』
そういうJobはlevelを上げるために必要なExperience Pointが多いのだと言う。
『専門Jobに就くのは、adventurerや一般人でもその道で一流の入り口を目指そうって連中だ。そんなのが新米と同じ速さで強く成れる訳がねぇ』
そういうものらしい。
因みに、同じVida's New RacesであるGhoulにmonstersと同じRankがあるのに対して、DhampirのVandalieuにRankが存在しないのは、raceのrootsによる。
Vida's New Racesの内Ghoulの-samaなGoddessとmonstersの混bloodのrace、Vampire、Lamia、Scylla、Centaur等のraceには、monstersと同じRankが存在し、更にHumanとしてJobに就く事が可能だ。
しかし VandalieuはVampireとDark Elfの間に生まれたDhampirであるため、monstersのbloodは四分の一。そのためよりHumanよりの体質に生まれつき、Rankが存在しない。
今はUndead TransformationしたBorkus達Giant raceも、GoddessとGiant God ZernoのFollowersの間に生まれたため生前はRankが存在しなかったそうだ。
Borkusに相談して、周りよりもlevelが上がり難くても気にしない-samaにしようと考え、Doran’s Aquatic Cavernを進んで行った。
ここに出現するmonstersは主に水棲のraceで、五階以下では大きな魚の胴体から生白い手足を生やした魚人のSahuagin、Talosheimの水路にもいたFlying Shark、人の胴体を挟んで振り回せる程Giantな鋏を持つBig Cancer、Giant octopusのKiller Octopus等が出現した。
SahuaginはRank2の、海のGoblinと評される亜人Typeのmonstersで主に槍で武装していたが雑魚だった。
「これ、食べれませんよね?」
『そうだな、三日くらい飲まず食わずで餓死寸前だったら美味く感じるかもな』
どうやら、素材的な意味でもGoblinと評されているらしい。
Flying SharkはTalosheimの水路で何度も戦っているので、皆さほど苦労せず討伐していた。
「【Quick Slash】っ!」
Flying Sharkの噛みつきを躱すと同時に、BragaがDagger TechniqueのMartial Artsを使ってFlying Sharkの首を深々とSlash裂く。
Bragaは生まれつき身が軽く俊敏だったが、訓練で更にそれを向上させていた。Zranの指導によりscout職の技術を学び、力よりも早さを活かすDagger Techniqueのskillを獲得。その身の軽さは既に野生動物の域だ。
しかも新種たちの中では最もweak Rank2のBlack Goblinに産まれついたため、実戦訓練を積んだGaran’s Valleyでは最低でも同格以上の相手と戦う事になり、大量のExperience Pointを稼いできた。
その結果彼は生後半年を過ぎたばかりなのにRank upし、Black Goblin Scoutに成ったのだ。
『我ながら恐ろしい奴を育てたもんだぜ』
「まあ、確かにFlying Sharkの首が半ば切断されてますけど」
『いや、違う』
土気色の眉間を顰めつつ、しかし口元はにやけているという器用な表情でZranは続けた。
『monstersのscout職だ。Humanよりbody part Abilityに優れ、Human並みのskillを持ったscout職のmonstersだ。monstersの中には恐ろしい特殊Abilityでsignを消して不意を突いてくる魔獣も多い。だが、奴らは頭が良い訳じゃない。Instinctだ、Instinctでやってるだけだ。
だがBragaの奴ならsignを消してadventurer達を尾行して回復役を真っ先に暗殺したり、村や町にstealth込んで女childを攫う-samaな事が出来る』
「なるほど。Braga達は将来有望な工作員に成れる可能性が高いと」
確かにそれは恐ろしい。Vandalieuが苦戦したNoble OrcのBugoganも、戦闘skillを高いlevelで修めていた。だからこそVandalieuは、肉もboneも切らせなければ勝てなかったのだ。もし彼がただの力自慢だったら、boneはcertainly肉だって小指の先ほども切らせずに勝てた。
そんなBugoganの-samaな脅威の存在にBragaは成れる。特に、正面から突っ込んでこないで不意を突いて脾腹を刺して来るのが恐ろしい。
いや、最も恐ろしいのはBragaだけでは無い。Black Goblin全体だ。
彼らの中で最も伸びが早いのはBragaだが、Zranによれば今年中には全員Black Goblin ScoutにRank upするだろうと予想している。つまり、Black Goblin全体がAssassinや工作員としてのaptitudeを持っているのだ。
Humanの防衛力を掻い潜って、村や町にこっそり侵入するmonstersの集団。appearanceがappearanceだから長期間の潜入は不可能でも、見張りを始末し城壁の内側から門を開けて外に待機している仲間を引き入れることくらいは出来る。
「でも最初からそんな恐ろしい存在に成るって解って教えてますよね。あのDagger Techniqueだって教えたのはZranだし」
『はっはっはっはっはっ』
「って、言うかZranもmonstersですよね? Undeadだし」
『はっはっはっはっはっはっはっはっ!』
「本当はちょっと格好を付けながら教え子の自慢がしたかっただけですよね」
『はっはっはっはっ、Mikoは察しが良いな!』
「俺も誇らしいから気持ちが分かるだけです」
あの小さかったBragaがこんな立派に成ってと、Slightly年長者の気分だった。流石に親とは言わないが。
彼が自力でmonstersを討伐できる強者に成り、更にもしまたMirg Shield Nationの連中が討伐隊を派遣して来た時、頼もしい戦力に成ってくれるのなら嬉しい限りだ。
「何の話だ、King?」
スパスパと手早くフカヒレを回収し、肉をSamのcarriageの箱に入れたBragaが戻ってくる。
「BragaはNinjaみたいだなって言っていたんですよ」
正直に言うのも照れ臭いのでそう答えると、Bragaだけでは無くZranまで首を傾げた。
『ninja?』
「えっ、知りませんか? Bragaはin any case Zranまで」
Zakkartがanother worldの知識や技術を広めようとしていたから、Zranなら知っていると思ったのだが。その後、Vandalieuは休憩の度に二人からNinjaの話をせがまれるのだった。
因みに、Big CancerとKiller OctopusはRank3で、それぞれ大きい蟹とoctopusというだけのmonstersだったためそれ程苦戦しなかった。
Doran’s Aquatic Cavernでは、海産物以外にも金属をMiningする事が出来る。金や銀、Mythril等の貴金属は採れないが、錫や銅、鉄などがMiningできる。
そのため鉱夫がピッケルを持ってmonstersを退治しながら壁を掘るのだ。
重い鉱石を大量に背負って外まで持ちだす事は困難を極めるのではないかとVandalieuは思ったが、何とDungeon産の金属は金属塊がそのまま出て来るのだ。純度もそのまま金属製品や武具に加工できる程高いconditionで。
それを聞いた時はVandalieuもanother worldって便利だなと思ったものだ。
TalosheimにBlacksmith場はあっても鉱石から金属塊を作る製錬場が無かったのは、このためだ。
そんな金属塊を背中に背負った鉱夫達と挨拶を交わしたり、一緒に休憩と食事を取ったりしつつ、Vandalieu達はDungeonの攻略を続けた。
六階からはRank3に混じってRank4のmonstersが出るようになった。
体表の色を変えて隠れ潜み不意を突いて襲い掛かるSquidのmonsters、Chameleon Squid。
見かけは一meter半ば程のGiantな伊勢海老やLobsterだが、触覚が鋭利な刃物のようになっているBlade Shrimp。
一見美しいGiantな花の-samaだが、麻痺毒を分泌するtentacleをcountlessに生やした鮫喰いSea Anemone。
それらはちょっとだけ厄介だった。
Bragaの【Intuition】や【Detect Presence】skill、Vandalieuの【Danger Sense: Death】の術で、隠れているmonstersの場所はすぐに分かる。
そして元よりGaran’s Valley程ではないが過剰戦力である。
『ウオオオオオッ! 【クイックゥゥゥゥSlashゥゥゥゥ】!』
叩き割るような勢いで、しかし空を斬るような速さでBlade Shrimpを真っ二つにするZran。その豪快な短剣裁きは、どう見てもBerserkerのそれだった。
「ガアアアアア! 【Axe Whip】!」
くねくねと踊るtentacleを、更に柔軟なVigaroの腕によって振るわれる斧が叩き斬っていく。そして鮫喰いSea Anemoneのmain bodyもかち割ってしまった。
Ghoul BerserkerにRank upしてから、以前より戦闘意欲が増したように見えるのは気のせいだろうが。
『Bocchan、お二人を止めなくても宜しいので? 確かお二人は今回監督役として付いて来たはずですが』
Zranと特にVigaroはRankが高く、今更DClass Dungeonに出るmonstersではボスでもない限り倒しても碌なExperience Pointに成らない。
skillを磨くという点で見ても、相手が自分より格下であるため準備運動以上の意味は無い。実戦訓練としても相手が弱すぎるのだ。
寧ろ、格下相手なのでやり過ぎると腕や感が鈍りかねない。
なら何故二人が前に出て暴れているのかというと――
「まあ、退屈だって言うし」
戦わずに監督に徹するのに飽きたからだった。
『まあ、確かにお二人を暇にさせておくのも気が引けますな』
「それに、二人が戦っている間休憩も出来ますし」
「それはいいんだけど……本当に食べるの、これ?」
Killer Octopusの足やBlade Shrimp、そして捕まえた海の魚や貝類の刺身を前に、Katiaは顔を引きつらせていた。
「それはcertainly。もしかして、Mirg Shield Nationってoctopusやエビを食べないんですか?」
Earthでもoctopusを食べない文化の国は在った。更に古代文明には宗教上の理由で海産物全体を食べ無いとか、忌避する民族が居たとか、本当かは知らないが聞いた事がある。
ならこのLambdaでも同じように、更にエビを食べない文化があるのかもしれない。
「いや、そもそも海が無いからエビはin any case octopusなんて干物でしか見ないし……」
そう思ったが、違うらしい。octopusは干物として流通しているという事は普通に食べるそうだ。じゃあ何故躊躇うのだろう? ただの好き嫌いかな?
「じゃあ、魚の方を食べます?」
「そうじゃなくてっ! だって生なのよ!」
「あっ、そっち」
どうやらKatiaの拒否反応は魚介類の生食に対して出ているらしい。Earthの西洋にはカルパッチョとか生で魚や肉を食べるCookingがあるし、問題無いかと思ったのだが。
Lambdaにはカルパッチョは存在しないのだろうか? それともZakkartが寿司や刺身を広めない-samaに、Bellwoodが先んじて「魚の生食は危険だ」と言い触らしたのか。
「大丈夫ですよ、ほら」
しかし Katiaが嫌がる一方で、Bragaは旨そうに刺身を食べていた。
「ウマイっ! ウマイ!」
エビもSquidも貝も魚も、次々持ってきたワサビと魚醤に付けて食べて行く。本当は魚醤よりも醤油の方がいいのだろうけど、胡桃味噌と団栗味噌から作る醤油は微妙なので魚醤しか持って来ていない。
胡桃と団栗が悪いのか、それとも発酵に使っている菌に問題があるのか。何にしても大豆欲しい。
「ウマイぞっ、Katiaも食え!」
『確かに、このプリプリとした歯ごたえにワサビのツンとした辛さが合わさると絶品ですよ』
straightに喜びを表し勧めるBragaに、食レポをしながら同じく勧めるSam。しかし Katiaは首を横に振った。
「そ、そうは言うけど人は生で魚を食べないのよ!」
「Katia、もうGhoul」
「そうだったっ! でもGhoulだって生じゃ食べないでしょ!?」
GoblinやKobold等のmonstersは、基本Cookingをしない。肉も何も生のまま豪快に食べる。他の亜人系のmonstersでも精々が肉を焼く程度だ。
ただGhoul達はVandalieuが来る前から肉を串に刺して焼いたり、大きな葉に包んで蒸し焼きにしたり、原始的だがCookingをしていた。
やはりGhoulも実際にはGiant raceと同じVida's New Racesであると言う事だろう。
「でも大丈夫ですよ。鮮度は抜群ですし、【Sterilization】に【Bug Killer】、【Disinfect】までしたので害になる物は残って無いから」
菌やparasitesが居ても残らず死滅しているし、それらが毒素を残しているとしても文字通り毒を消す【Disinfect】のDeath-Attribute Magicも使っている。
ここまですれば毒茸だって食べられる。
「そ、そこまで言うなら……ん? 美味しい?」
目を丸くしたKatiaはその後、Bragaと同じようにガツガツと刺身を貪ったのだった。そこまで喜ばれると作った甲斐があると、Vandalieuも喜んだ。
因みに、monstersを倒し終えて戻ってきた二人の内、Zranは『Undeadになってから生肉が美味く感じて仕方ねぇ』と嬉々として刺身を食べ、逆にVigaroは「生っ!? 腹を壊すぞ!」とKatiaと同じように一旦拒否した後、安全性を説明されてから食べ始めた。
因みに十階に出現した中ボスはRank4のSahuagin Berserkerと、手下のRank3、Sahuagin Pirateだった。素材的には価値が無いため、Vandalieuの【Unarmed Fighting Technique】の練習台になってもらった。
Doran’s Aquatic Cavernの十一階からは、Rank4のmonstersがRank3のmonstersを率いて現れるようになる。更にTrapが仕掛けられている頻度も高くなる。
落とし穴の底には毒の塗られた棘があり、天井から鍾乳石に混じって槍が仕掛けられており、壁から斧が飛び出してくる事もあった。
「Kingっ、ここにTrapがある!」
「正解。解除できる?」
「やってみるっ! ……あっ」
ぷしゅーっと毒ガスが噴き出してきたので、Vandalieuは【Disinfect】で毒性を消した。
「すまん、失敗した」
「はい、次は頑張ろう」
『……何でrearguard職のMikoがTrapの場所を真っ先に言い当てるんだ』
Trapは仕掛けられている種類によってはmonstersよりも厄介だ。しかし、VandalieuはActivateすると死に繋がるTrapを常にActivateしている【Danger Sense: Death】のmagicで感知する。そのため、実際に調べるBragaよりも早くTrapの存在に気が付く。
その上このDoran’s Aquatic CavernのTrapは毒に関連するものが多く、【Disinfect】ですぐに対処できる。
『Mikoが居ればscout職は必要無いんじゃないか?』
「そう拗ねないで。それにここに来た目的は素材と訓練じゃないですか」
なのでVandalieuもTrapを見つけても報告も解除もせず、まずBragaに調べてもらっている。
「それに、死に関連しないTrapは分りませんから。例えば、落ちにくい油性塗料が噴き出すTrapとか」
『それはTrapと言うより、悪戯ですな』
maybe上から黒板消しが落ちてくる系のTrapは分からないだろう。
『でもそれ、気がつかなくても別にいいんじゃないか? 死なないし』
「まあ、そうなんですけど」
特にDungeonだとTrapは殺傷を目的にしているのが半分。残り半分は行動の自由を奪ったり、Status Effectを起こさせたりして、monstersが侵入者を殺しやすくするために仕掛けられているので、ほぼ感知できる。
「でもほら、俺が何時もいる訳じゃないですし」
『それもそうか』
そう言いながら進み、野営を挟んで次の日。遂に最下層まで辿り着いた。
二百年前は十四階までしかなかったそうだが、Garan’s Valleyと同じように放置されている間に階層が増えて十八階まで潜らなければならなかった。
お蔭で十五階の大地底湖から目的だった海藻類の他に、鰹まで手に入ったのは嬉しい誤算だった。
Talosheimに戻ったら燻製室を作って、鰹節を作ろう。それが難しいなら、干した後燻製にせずそのまま使う戦国時代式にしてもいいかもしれない。
「ところでこのカメ、火を吐いたりします?」
「『しないっ!』」
緊張感の無いVandalieuの質問に、VigaroとZranは半ばscreech混じりの声で答えた。
Vandalieu達を待ち受けていたDoran’s Aquatic Cavernのボスは、Rank4のBullet Turtle六匹を従えた、Rank5のクラッシャーTurtleだった。
Bullet Turtleは一見carapaceの大きさが一meter程の亀なのだが、手足を引っ込めるとWind-AttributeのManaで回転しながら宙をHigh-Speedで飛び回り、体当たりしてくると言う厄介なmonstersだ。
carapaceの硬さは鉄以上で、体当たりを受けるとHeavyweight Warriorだって危ない。
そしてクラッシャーTurtleはBullet Turtleの大きさをそのまま五倍程にしたmonstersで、体当たりのAttack Powerは五倍では済まない。歴史上、このGiantな亀の体当たりで城壁を崩された町が幾つかあるらしいのだから、生半可なDefense Powerなど無いのも一緒だ。
それぞれRank4、Rank5の内では討伐難易度が高いmonstersである。
実際、BragaやKatiaだけでは無くZranとVigaroまで手こずっているし。
「ぬぅっ! 早い!」
『しかも Coordinationが取れてやがる!』
頭をcarapaceの中に引っ込めて回転しながらギュンギュンとHigh-Speedで飛び回っているのに、亀達の動きはCoordinationが取れていた。Vigaroがまず数を減らそうと狙いを付けると、途端に他の亀が横から上から突っ込んできて邪魔をする。
かと言って生半可な攻撃では回転する鉄より硬いcarapaceに弾かれてしまう。
こういう時にはmagicの出番だが、Vigaroはcertainly ZranやKatiaもmagicは使えない。
「任せてっ!」
しかし Katiaは剣を構えると前に出た。
「Katiaっ、無理!」
「無理じゃないっ! 【Instant Response!】」
止めるBragaに構わず、KatiaはMartial Artsで反応速度を上げ、最低限の動きでBullet Turtleの攻撃を避けるとcarapaceの側面に必殺のthrustを放った。
「【Pierce】!」
刺突の速度とAttack Powerを上げるSword TechniqueのMartial Arts。ここにGhoul化した事でadventurer時代よりも格段にincreaseしたMuscular Strengthが加われば、Bullet Turtleの側面を貫ける。
ぱきぃぃぃん。
「えっ!?」
Katiaの目算は、彼女の剣と共に砕け散った。
目を見開き、呆然とする彼女に他のBullet Turtleが迫る。【Instant Response】のお蔭でそれに気が付くが、【Pierce】はAttack Powerと速度は高くなるが、使用後の隙が大きい。意識は気がついても、body partが付いてこない。
「やらっ――」
「せないので大丈夫」
もうダメだと思ったKatiaの前で、Bullet Turtleがゴンっと地面に落ちた。
「まあ、Manaを消せばただのでかい亀ですし」
Wind-AttributeのManaで空を弾丸のように飛ぶBullet Turtleは、ManaをAbsorptionする【Magic Absorption Barrier】に包まれるとFlight Abilityを失い、勢いそのままに地面や壁に激突してしまう。
翼でも生えていれば滑空ぐらい出来ただろうが、彼らに在るのはヒレ状の足だけだ。
「俺が手を出すと、手に入るExperience Pointが減るけど仕方ないと言う事で。あ、皆止め宜しく」
「おー」
『ワリィな、Miko』
carapaceの隙間に短剣やclawsをthrust入れて始末して行く。クラッシャーTurtleは噛みつきで若干の抵抗を見せたが、Vigaroが斧を一振りすれば手下の後を追うしかない。
「帰ったら新しい剣を貰いましょう。宝物庫によさそうな物があれば、それをそのまま使っても……どうしました?」
折れた剣を握ったまま、ぺたんと座り込んでしまったKatiaに声をかけると、何と彼女は涙ぐんでいた。
もしかして、もっと早く助けた方が良かったかな? -sama子を見ていた時間長過ぎ?
そう思いつつ狼狽していると、遂に彼女はポロポロと涙を零した。
「ごっ……ごべんなざいぃ……」
何故俺に謝るの?
そう聞きたかったが、Vandalieuは泣きだしてしまったKatiaをとりあえず慰める事にした。
「私っ、Orcに捕まる前からっ、限界を感じててっ……うっ、それで、Ghoulに成ったんだけど、それでもっ……」
「うんうん、つまり焦っていたと」
Katiaは早熟だった。adventurerに成ってからメキメキと力を付け、同期と差をつけsenpaiに追いつき……壁にぶち当たった。
それは強固な鉄の壁では無く、泥のように柔らかい壁だった。徐々にlevelが上がり難くなって、どんなに訓練や実戦を繰り返しても技術の向上は亀どころかsnailの歩みのよう。skillは何時levelが上がるのか、予想も出来ない。
気にする必要は無い、私は強さの成長期が過ぎただけだ。これからは一歩一歩強くなればいいだけだ。
そう自分に言い聞かせても、追いついたはずのsenpaiはもう背中しか見えず、同期の仲間は彼女を抜き去って行った。後輩達には今にも追いつかれそう。
Adventurer’s Guildに居ると耳に入ってくる、引退した女adventurerの話題が急に現実味を持って感じられた。
もしKatiaが十分なpropertyを貯めていたなら、同じように引退していたかもしれない。しかし彼女はまだDClassに上がったばかりで、今までの稼ぎは全て装備と生活費、そして親が残した借金を返す事で使い切っている。
luxuryをした訳でも無いのに、数か月分の生活費しかない。
専属の護衛として雇ってもらえるコネもないし、彼女が活動していたMirg Shield Nationでは事務方ならin any case前線に出るSoldierに女は採用されない。
だから何時実を結ぶともしれない努力をしながらadventurerを続けるしかなかった。
Katiaは弱くなったわけではない。しかし周りのadventurer達は彼女を置いて強くなる。割の良い依頼は中々取れず、Devil Nestsでも素材が高く売れるmonstersは彼女の手に余り、腕の良いadventurerが先に狩っている事が多い。
もういっそ、適当な男でも落して結婚に逃げようか。
そう思っている内にOrcに捕まり、彼女はdespairした。このまま死ぬまでNoble Orcの仔を産むだけの生活なんだ。こんな事なら、Adventureの途中で死んだ方がマシだった。あの、まだ夢を持てていた時に。
しかし KatiaはGhoul達に助けられ、Vandalieuに誘われて人からGhoul化する事を決める。
Ghoul化したKatiaは、自分は生まれ変わったのだと思った。
【Mysterious Strength】や【Pain Resistance】と言ったskillを獲得し、Ability Valuesも上がった。明らかにHumanだった時よりも強くなっている。
これで自分はもっと強くなれる。prideを、夢を取り戻せる。そう思った。
「でも周りの皆が自分より早く強くなるので、焦りが募ったと」
それで焦って自分なら出来るとあの行動をしたわけだ。
「え゛う゛~……」
泣きべそをかくKatiaの事情は概ねこんな感じである。
それを聞いていたVigaroやZranは、ここでVandalieuの説教が始まるのだろうと思っていた。
あの後、Vigaro達は宝物庫から財宝やitemを回収した。そしてDungeonを出て今はTalosheimに帰る最中だ。
KatiaはVandalieuが作ったGolemの上に、彼と一緒に乗っている。Samのcarriageが収穫で一杯だからだ。それをBragaが羨ましそうに見上げていた。
VigaroにとってHumanの事情は分からないが、伸び悩んでいる事に焦る気持ちは分かる。しかし、それで無謀な行動をするのはダメだ。自分の死は集落の戦力低下に繋がるからだ。
だから気持ちが分かったとしても、叱らなければならない。しっかり叱りつけて、教えて、焦らないようにしなければならない。それが集落の長と言うものだ。
「気持ちはわかります。本当に分ります」
しかし Vandalieuの言葉は中々続かない。
「ヴァ、Vandalieu?」
続きはどうしたとnameを呼ぶが、Vandalieuの口から出たのは説教でも叱責でも無かった。
「俺にも、散々覚えがありますから」
何と共感である。しかし、VandalieuにはKatiaの持っていた焦りは分り過ぎるほど分かるものだった。
Earthではいくら努力しても成績は平均点をやや超える程度だったし、バイトではいつまでもsenpaiに叱られたし、友達は出来ないし。やっとの思いで貯めた金で修学旅行に参加してみれば、周りはリア充ばかりで疎外感を景色を見る事で誤魔化さなければならなかった。
自分の位置は変わらないはずなのに、周りがどんどん上に行くから相対的に自分が落ちて行く感覚。
それはとても恐ろしい。誰が悪い訳でも無いのに。……Vandalieuの場合悪いのは伯父だろうが。
「今でも焦ります。kaa-sanの仇の内、老人のGordanはin any case Heinzはまだ声からして若かったので、今頃もっと強くなっているだろうし、それに比べて自分はと」
当時のHeinzはBClass。あれから三年経つ、今頃はAClassに成っているかもしれない。こうしている間にも、更に強くなっているに違いない。
更にAmemiya Hiroto達Reincarnatorは、今頃Originで高いlevelの訓練やら実戦やらを重ね、経験を積んでいる事だろう。彼らにはVandalieuが受けた【Experience gained in previous life not carried over】のCurseをかけないだろうから、このLambdaにreincarnationした時そっくりそのまま活かされる事になる。
軍人なのかエージェントなのか、Reincarnator達がOriginでどういう立場なのかaccurateには分からないからどんな経験を積んでいるのかあやふやなconjectureしか出来ないが、Cheat Ability なしでも一流のskillを持っている可能性が高い。
「じゃあ、何でそんなに落ち着いて居られるの?」
「俺の場合は、手段を選ぶつもりが無いので。あいつが幾ら強くなっていても、Unaging不死にはならないでしょうし」
毒を盛り、Diseaseをばら撒き、不意をthrust騙してでも、殺す。何ならUndeadやGolemを何千と作って囲み、数の力で圧殺しても構わない。
卑怯卑劣と言われても気にしない。最終的に勝てばいいのだ。
Reincarnatorの場合は……まあ、向こうがどうしてもVandalieuを殺すと言うのなら同じように対応するしかないだろう。実際、彼らもUnaging不死では無いのは一緒だ。
だが、できれば百人全員と戦うような展開は避けたい。彼らの事は気に入らない、emotions的に許す事は出来ない。しかし最終的に自分が勝てなければ意味が無いのだ。
話し合い、謝罪の一言でも引き出したら適当に距離を置き、Reincarnator達がこの厄介なworldをdevelopmentさせるために四苦八苦するのを横目に、美食でも楽しみながら皆と安楽に暮らせれば充分復讐だろう。
「じゃあ、私の場合はどうすればいいの?」
落ち着いてきたKatiaに、Vandalieuは少し考えてから答えた。
「剣は一先ず置いて、magicの修行もしてみたらどうでしょう? Ghoulの女はmagicに対する適性が高いはずですから」
単なる器用貧乏になるかもしれないが、現在進行形で伸び悩んでいるのだから手数を増やすのは悪い事ではないだろう。
「……うん、やってみるけど、もしダメだったら?」
「ダメだったらですか? その時はまた相談に乗りますよ」
VandalieuはKatiaに対して責任があると考えている。何故なら彼女達をGhoulにならないかと誘ったのは自分だからだ。文字通り人生を変えた訳だ、元に戻れない一方通行である事を知っていて。なら、その後も世話をするのは人として、人でありたいと願うのなら当然だと考えている。
そもそも人が困っていたら力に成りたいと思うのが、人の在り方ではないだろうか。人という字は支え合っている姿だと、誰かも言っていたような気がするし。
「そう、相談乗ってくれるんだ」
「magicもダメなら魚醤や味噌作り専属になるとか、色々ありますし」
「んー、もう一声」
「じゃあ、Salire達と一緒にMaid -sanですか?」
「Maidか……まあ、今はそうよね」
何故「今は」と着くのだろうか? それとも彼女は実はMaidに憧れていた過去があるとか。childの頃の夢はMaid長なのか。
「うん、やる気出て来たっ。どれくらい出来るか分からないけど、帰ったら早速magicを頑張ってみるわね!」
それはin any case、立ち直ったようなので何よりだ。
「Basdiaの競争相手が増えたな」
『良いじゃねぇか、Heroってのはモテるもんだぜ』
「俺もモテたいな、Bergみたいに」
……何かフラグを立てたのかな?
今は昆布や鰹出汁で味噌汁を作るのが楽しみだから、別にいいか。
・Name: Katia
・Rank: 3
・Race: Ghoul
・Level: 24
・Job: Warrior
・Job Level: 77
・Job History: Apprentice Warrior
・Age: 19
・Passive skills
Night Vision
Pain Resistance:1Lv
Mysterious Strength:1Lv
Paralyzing Venom Secretion (Claws):1Lv
・Active skills
Sword Technique:3Lv
Armor Technique:1Lv
Shield Technique:1Lv
Dismantling:1Lv
KatiaはHumanだった頃からDClass adventurerとしては中堅の実力を持っていた。ただ剣以外に特出したskillが無く、潰しが効きにくいという欠点があり、更に壁にぶつかった事で伸び悩んでいた。
Ghoul化した事でPassive skillsを獲得し、Vandalieuの【Strengthen Follower】skillのimpactもありAbility Valuesもincreaseしたが、Humanだった頃の戦い方がそれに追いついておらず、今は力を発揮しきれていない。