Balchesse Viscount領は、降って湧いた好景気に賑わっていた。

　町から三日行った所に在った密林Devil Nestsの開拓事業が順調に進んでいるからだ。

　既に強いmonstersはほぼ狩り尽くされ、偶に出ても太い木の枝を棍棒代わりに振り回すOrcが一匹か二匹程度で、雇われたadventurer達が大して苦戦もせずに討伐してしまう。

　Soldier達が木をDeforestationし、Mage達のEarth-Attribute Magicで大地が平坦に成り、岩が砕かれ運びやすい大きさに成って行く。

　まだ開拓が始まって半年も経たないのに、密林の大きさは元の四分の一も残っていなかった。

　このまま雪が降るまで開拓は進められ、豊かな土壌は耕され、井戸や溜池や用水路が掘られ、そして幾つもの農村を建てるための準備が終わる。

　春と共に移住希望者が集まり、家が建てられ、畑に種が撒かれる。Devil Nestsの土なら一年目からある程度の収穫が見込めるため、開拓民への援助も少なくて済む。

　そして税の免除期間が終わる頃には十分な税がBalchesse Viscountの懐に入り、そして十年もしないで開拓費用を取り返すどころか、黒字に成るはずだ。

　開拓地を治めるためのGeneral Officerも、Viscountの三男が就任する予定だ。

　certainly得をするのはViscountとその家臣だけでは無い。これから作られる農村に移り住む移住者は、職にあぶれたslumsの住人や、産まれた順番のせいで畑を親から継げない農家の次男三男四男、injureやageなどで引退を余儀なくされたが-sama々な理由でまだ働かなければならないadventurer等だ。

　彼らはこの開拓事業のお蔭で自分の家と畑を持ち、結婚して一家を構える事が出来るのだ。

　そして農村が出来るという事は村を守るための守備隊をorganizationする必要があり、軍の予算とポストが増える。God of Law and Life Aldaのtempleも作るので、temple関係者のポストも増える。

　それまで他の領からの交易に頼っていた農作物が町に供給されるようになれば、人々は今までよりも安い価格で新鮮な農作物を手に入れる事が出来る。

　更に開拓地に一番近い町から暫くの間生活必需品などの物資が村々に供給されるため、懐も潤う。

　こうしてあらゆる人々がこの好景気の恩恵に預かるのだ。

　Balchesse Viscount領以外の人々でさえ、貧民問題の緩和策として移住者を募集しているので助かっている。

　例外はadventurer達とPalpapek Marshall位だろう。しかし、それにしても利益が少なかっただけで不利益を被った訳ではない。

　adventurer達は密林Devil Nestsという稼ぎ場所を失ったが、originally Balchesse Viscount領の町にはもっと近くに、大きなDevil Nestsが存在している。Dungeonも無く、町から徒歩で三日も離れたやや小さいDevil Nestsが一つ無くなってもそう困る訳ではない。

　Thomas Palpapek MarshallはFinance Lordにやり込められ、開拓事業に何らかの不正や裏取引が存在するかもしれないという疑惑を払拭するため、Marshallの職を自ら辞す事に成った。

　ただ、幾ら経緯の問題で盾国政府も大っぴらに賞賛できないとはいえ、国に利益を齎した事は事実だ。それに彼の失敗は前代未聞の事態が起きたためであり、更にそれで犠牲が出た訳でも無い。

　だから開拓事業が落ち着くか、そうで無くとも十年もせずに復職するだろうと見られていた。

　originally Marshallの職はPalpapek Earl 家が占有している訳では無く、三つのEarl 家が数年から十数年の期間で代わる代わる務めていた。一つの家で占有すると、その家の当主や跡取り息子が暗殺されるといきなり軍の最高責任者が不在に成るからだ。

　他にもMarshallを代々務める家があれば、そんな時にもKnowkowを蓄積した家臣に支えられたMarshallを用意できる。

　冷淡かもしれないが、隣国と建国当時から戦争を繰り返しているのだ。甘い事を言っていられない。

　その三Earl 家の中でもPalpapek Earl 家は代々優秀なMarshallを輩出しており、特に当代のThomasは国のPatron Godとしての名を欲しいままにしている。

　それに、実際には新しい農村を守る守備隊にはPalpapek Earl 家に仕える家臣の係累が何人も入隊する予定だ。彼にも利益は供与されている。

　だからこの開拓事業で損をした者は存在せず、誰も彼もが得をしている。

　表向きには。

「まだMountain Rangeを越えるためのルートの割り出しは終わらないの？」

　この町では上等な部類に入る宿屋の一室で、椅子に腰かけた赤毛のNoble-born Vampire、Eleonoraの見下すような……いや、明らかに見下している視線を向けられて、Sercrentは苦虫を噛み潰したような顔をした。

　その顔やbody partから、Birkyneから受けた仕置きによって付けられた惨い傷は痕跡も残さず完治している。しかし彼にはあのTortureによる痛みよりも、今目前の女が紡ぐ言葉によって齎される怒りの方がenduranceならないらしい。

「貴-samaはっ、自分がどれ程難しいdemandをしているか分かっているのかっ」

　しかし、Sercrentは最大限のpatienceを持って激高する事を自制した。ここはそれなりに高Classではあるがただの宿で、Vampireが所有する城や館では無い。隣のroomや廊下にまで響く大声を出す訳にはいかないのだ。

「あら、Human達もほんの二百年前に見つけたじゃないの」

「二百年前とは違うのだっ、そもそも何故monstersを出来るだけ避けてMountain Rangeを越えなければならないっ、それこそ我々はHumanとは違うのだぞ！」

　SercrentとEleonoraは共にNoble-born Vampireだ。その戦闘Abilityは下Classの竜種を上回り、火竜や氷竜に並ぶとも劣らない。

　更に竜種には無い-sama々な特殊Abilityを持ち、Humanと同じ姿形を持つ事で器用に立ち回る事が出来る。

　certainly弱点は在る。太陽、銀、Light Attributeの攻撃magic、Alda神とその信徒共が創りだした対Vampire用magic item。だがMountain Rangeを越えるのに注意しなければならないのは、太陽の光ぐらいだ。Light Attribute魔法を使うmonstersもいるが、大抵はFlashによる目潰しや幻shadowによる目晦まし、一定spaceから光を取り除いて暗闇を作っての奇襲ぐらいでVampireにとっては脅威ではない。

　態々monstersに襲われないルートを探さなくても、Mountain Rangeを越える途中でSubordinate-bornが数人欠けるだろうが、最悪でもその程度で済むだろう。

　しかし、Eleonoraは呆れたようなため息をついた。

「Sercrent……あんた度し難い愚か者だわ」

「何だとっ！？」

「小声で怒鳴れるなんて器用ね。でも、それより頭を使ってくれないと困るわ」

　Birkyne達の前で見せていたLadyらしい態度では無く、素の態度でEleonoraはSercrentに対する。

　お前には取り繕う価値は無いと示すためだ。

「あなた、自分が報告した情報も忘れた？　targetのDhampirはSpiritualistなのよね？　だったら私達が殺したmonstersの霊から情報を引き出せるのではないの？」

「そ、それは……可能だろうが、通常では難しいはずだ。貴-samaの調査結果でも、大した事は出来ないとあったではないかっ」

　SpiritualistのJobを持つ者は少ない。戦闘には全く向かず、何かのitemや商品をProductionできる訳でも無い。出来るのは死者の霊と交信し、占いをする事とちょっとした除霊程度だ。

　そのためSpiritualist自身の数も知名度も地を這う-samaな水準だった。だからEleonoraがSpiritualist Jobに付いてAdventurer’s GuildやSpiritualist本人から彼女固有のあるskillを使って情報を聞きだし、その間SercrentがBoundary Mountain Rangeを越える道を調べる予定だったのだ。

「それにmonstersの霊がDhampirの元に自分から向かって行くと思うのか？」

　Spiritualist Jobが出来るのは「霊の視認と会話」、「死者の霊を召喚するSpirit Communication術」、「残留思念の読み取り」等だ。

　死人に口なしの原則が当てはまらないのは大したものだが、全ての霊がSpiritualistに好意的な訳ではないし、UndeadをTamer出来る訳でも無い。

　警戒すれば大した脅威にはならないとSercrentは考えたようだが、Eleonoraの意見は違った。

「大した事が出来たらどうするの？　私が調べたのは普通のSpiritualistの情報よ。そのDhampirは今まで前例が無い事ばかりしてきたのよね？　だったら普通のSpiritualistじゃないかも知れないとは思わないの？」

　そう言われるとSercrentは唸るしかなくなる。

　例えば、広範囲に発生した霊の内、一定の条件に当てはまる霊だけを選別して召喚する事が可能ならどうか。

　もしDhampirが自分に害意を持っている存在に殺されたmonstersの霊等をそれで召喚出来れば、Boundary Mountain Rangeは堅牢な城壁であると同時に忠実なGuardになる。

　流石にそんな事は不可能だろうとEleonoraも思うが、今まで何度もその『流石にそんな事』をあのDhampirは起こし、結果目の前の男は崖っ縁に立たされている。

　甘く見て事を進めれば、今度は自分が崖っ縁に立たされる。

「だからルートの割り出しをしっかりなさい。こんな事を言われないと分からないなんて……分からないなら分からなくても従う素直さぐらいは持ったら？」

　はっきり無能と言われるよりも酷く詰められ、Sercrentがbarelyとfangsを噛み合せる。

　だがこの程度のやり取りは【Evil God of Joyful Life】を奉じるVampire達の間では、極普通の事だ。

　彼らの対人関係は、基本的に上か下かしかない。口では同等、仲間、同胞、brothersと言うが、実際には自分から見て格上か格下かで判断し、思考する。

　Pure-bornとNoble-born、Noble-bornとSubordinate-bornといったraceで上下関係がはっきり分かる場合は単純だ。しかし、Pure-born同士Noble-born同士の場合は、途端に生臭くなる。

　そして相手が格上なら従いつつも、相手を引きずり降ろし自分が上に立つ機会を伺う。

　相手が格下なら、常に自分の方が上位者であると主張して従わせ、足の下で妙な事を考えない-samaに踏み続ける。

　そしてまだ上下関係が決まっていないなら、どちらが上か-sama々な形で争う。

　そしてGeniusではあってもVampireに成って僅か数年のEleonoraと、それなりの年月を生きてきたSercrentでは、力量ではEleonoraがやや勝っているが大きな差では無い。

　しかし Sercrentは失態をBirkyneに咎められcommunityの幹部ほぼ全員の前で無残な姿を晒し、「親」であるGubamonからの弁護も支援も無く、失敗したら死に直結する命令を受けている。そのため、立場は圧倒的に下であった。

　下である以上、EleonoraはSercrentを足蹴にしなければならない。そうで無ければ、自分はこの落ち目の男よりも上では無い、つまり下だと認める事になるからだ。

「……分かった。Subordinate-born共に急がせる」

「時間がかかるようなら、Gubamon老に助言を頼みなさいな。二百年前の事にはあの方も一枚噛んでいたのでしょう？　何か知っているかも」

「……考慮する」

　そう言い捨ててroomから去って行く後ろ姿がドアに遮られてから、Eleonoraは呟いた。

「悪いわね。でも、私まで道連れにされたくは無いのよ」

　飢える事は無くなり、body partを汚される事も無く、竜種とすら戦える力を得た。しかし、Eleonoraの瞳には怯えの色があった。

　何か失敗すれば、次は自分がSercrentの立場になる事が解っていたからだ。

　【Chant Revocation】skill獲得のための修行も最終日の七日目。

「おおっ！　遂に【Chant Revocation】skillを獲得しましたぞ、これもMikoの温かな施しの賜物！」

　Nuazaがboneと皮になっているはずなのに太い腕を、歓声と共に振り上げた。

「むぅ、先を越されたか」

「はっはっは、一応私もLesserとはいえLichですからね」

「それをいうなら儂もGhoul Mageなのじゃがな。しかも Mage Jobじゃ」

　得意げなNuazaと羨ましげなZadiris。彼女はまだskillのコツが掴めていなかった。

　一応、monstersにもraceごとにskill補正が存在する。ただそれはHumanがJobに就いて得られるskill補正程顕著な物では無く、精々向き不向き程度の物だ。

　Orcが力自慢で、KoboldがAgility、そんな程度だ。

　だからZadirisよりもNuazaの方が先に【Chant Revocation】skillを習得できたのは、彼女よりNuazaの方が【Chant Revocation】に適性があったとか、素養が大きかったというだけの話だ。

　因みに、このworldではaptitudeの有無でlevelが上がり易かったり、すぐRank up出来たり、skillを平均より早く獲得し、成長させる事が出来る事は事実だ。しかし、努力が否定される訳ではない。

　Humanでもmonstersでも、鍛錬と研鑽を積み重ねる努力をすればlevelは上がるし、条件を満たせばRank upも出来る。skillだって獲得できる。

　ただし、何時か、その内、きっと。そんな話だが。

　剣のGeniusが一年で、特に苦労もせずSword Technique skillを５levelにしたとしても、凡人はbloodの滲むような努力を何年も、何十年も続けなければ同じlevelに成れないかも知れない。

　頭が悪くbody part的にも優れていないGoblinが、Goblin Kingに成るには寿命barelyまで努力が必要だが、成れる。

　超人的なaptitudeを持つadventurerは研鑽と経験を積んだ果てに、竜種を倒し高難易度のDungeonを完全攻略し、ＡClass adventurerの称号を得る。

　aptitudeに乏しいadventurerは、同じ期間研鑽と経験を積んでもＤClass止まりかもしれない。しかし超人の十倍、百倍の研鑽と経験を積めば、努力と執念の果てにＡClassに辿りつくかもしれない。

　そして大抵の場合、努力が報われる前に中断される。

　一流を頑固に目指してそれ以外の人生を全て犠牲に出来る者は少ないし、諦めて他の分野に転向する場合も多いだろう。

　特にadventurerとmonstersは、努力が実を結ぶ前に死ぬか、重傷を負ってretiredする事が多い。立場は違っても弱肉強食なのは同じなのだ。

(Earthに居た時は好きだったんですけどねー、努力でGeniusに勝つTypeのprotagonist)

　のんびりドングリ粉を作りながら皆にManaを供給していたVandalieuは、そんな自分も周りから見ると凡人では無く才人なのだろうなと思った。

　Manaが多いとは、それだけで十分な才人だからだ。

　Earthでは凡人だったし、Originでは報われた事が無いので中々自覚できないのだが。

「じゃあ、後は【Chant Revocation】でmagicを使っていればskillのlevelは上がって行くと思うので、通常の訓練に戻ってください」

「むっ、そうなるとやや名残惜しい……」

「ふふふ、さっさとDungeonなりDevil Nestsなりに行くとよいぞ」

　残念そうにするNuazaに、意地悪く笑うZadiris。どうやらVandalieuのManaは【Death-Attribute Charm】のimpact下にある者には、とても心地良く感じるらしい。

「いや、今日で一週間の休みが終わったので早速明日からDungeonに潜ろうと思うんですけど」

「何じゃと！？」

　驚くZadiris、そして「ククク」と意地悪く笑うNuaza。さっきまでと逆転している。

「ぼ、坊や、もう少し休んだ方がよいのではないかの！？」

「俺、休みでは無くExperience Pointが欲しいです。それに欲しい素材もあるので」

　次にVandalieuが攻略する予定なのは、Doran’s Aquatic Cavern。Garan’s Valleyと同じＤClass Dungeonだが、こちらの方が階層も深く、出現するmonstersの討伐難易度もTrapの危険度と頻度も上とされるDungeonだ。

　そして、このTalosheimに海産物を齎すDungeonでもある。

　Doran’s Aquatic Cavernは大小さまざまなShimadaが浮かぶ地底湖や、横に地下河川が流れる洞窟といった形状の階層が多いのだが、その地底湖や地下河川を流れる水は海水で水の中には海の魚介類が生息している。

　VandalieuはEarthで生きていた時から特別海産物が好きではなかったが、今どうしても欲しい素材があった。

　それは昆布やワカメ、若しくはその代用として使える海藻であった。

(胡桃やドングリで味噌を作ってから、味噌汁に挑戦してみたけれど何故か美味しくできない。それは、出汁が無いからだ！)

　Earthで学生をしていた時は自炊して味噌汁を作った事のあるVandalieuだが、その時は出汁を取った事が無かった。それで同じようにLambdaで味噌汁に挑戦してみたら、何故かEarthで作った時より明らかに不味い。

　具の問題か、それとも胡桃やドングリで作った味噌は汁物には向かないのか。悩み考えていると、はっと気が付いた。

　Earthで使っていた味噌は、出汁入り味噌だったのだと！

　最初から味噌に出汁が含まれている味噌だったのだ。それに対してVandalieuが使ったのは、手製の出汁none味噌。そのまま使って美味しい味噌汁が出来るはずが無い。

　美味しい味噌汁を作るには、出汁から取らなければならないと思い至ったのだった。

　出汁と言えば鰹節、煮干し、昆布。これらをDoran’s Aquatic Cavernで手に入れなければならない。特に、昆布だ。

　何故なら、この Bahn Gaia continentには海藻を食べる文化が存在しない可能性がある。Amid Empire側には無かった。

　DarciaやSam達は海藻を食べるなんて聞いた事が無いと言っていたから、少なくとも流通はしてない。

　Earthでも海藻を食べる文化があるのはJapanを含めても限られた地域や民族だけだったので、こちらのworldならより少ないはずだ。

　Orbaum Elective Kingdomに行っても手に入る可能性が少ないなら、早い内に手に入れ試すべし。

鰹節は燻すのに準備がいるから、ますます昆布が欲しい。後ワカメと……海苔！　海苔は必要だ、寿司やramen、蕎麦、ソーメン、お握りを作るために。

　後、天草も欲しい。寒天が作れる。

「Zadiris、俺には昆布が必要なんです。美味しい味噌汁を作るために」

「いや、儂は今のままでも十分旨いと思うのじゃが」

「私もそう思いますが、Mikoはincrease志向が強いのですね」

「increase志向と言うか、坊やも結構な食道楽じゃからな」

　どうやらVandalieuの食に関する情熱は、あまり伝わらないらしい。

　しかしこれも出汁の効いた味噌汁を飲めば、皆の意見も変わるだろう。実際、初めて味噌を作る前の反応もそんな物だったし。

(あ、具の事考えるの、忘れてた)

　翌日、VandalieuはDoran’s Aquatic Cavernに入った。

　今回のmemberはSam、Braga、Zran、Katia、そしてVigaroだ。

　Samは輸送力と新装備を試す為、Black GoblinのBragaはこの前Rank upしたので力を試す為、Undead Giantの中でも珍しい元scout職ZranはそのBragaの監督。Katiaは前衛戦力としてだ。

　そしてＤRank Dungeonには明らかに過剰戦力であるVigaroは、万が一のための保険である。

　そして入った一階では……。

「魚だっ、魚を取れぇええええっ！」

『魚醤っ、魚醤お゛おおおおおっ！』

　Undead Giant達が網で小魚を取りまくっていた。

「何処かで見た光景だ」

『仕方ねぇよ、Miko。魚醤の為だからよ』

「作るの、俺なんですけど」

　originally TalosheimのHunter達は小魚を無視していた。体長五十センチ以下の魚はGiant raceにとってあまりに小さく、食べる所も少なくて食いでも無く、売値も安い。そんな物を態々獲るくらいなら、二meter越えの大物を狙った方が稼げる。

　そんな考えだったそうだ。

　その大型魚至上主義を覆したのが、Vandalieuが作った魚醤である。その味に味噌同-sama魅了されるUndead Giant達が続出し、生前は農家だったのにUndead TransformationしてからFishing師に転向する者まで現れたという。

　因みに塩はGaran’s Valleyから出る岩塩に頼っている。

　このDoran’s Aquatic Cavernの水は海水なので、海塩も作れなくも無い。しかし Miningした後は持って帰れば良い岩塩と違って、海塩は作るのに手間がかかる。

　そのまま乾かせば不純物が抜けないし、幾らなんでもDungeon内に塩田は作れない。そもそもここに太陽の光が届かない。

　では海水を外に持ちだせばいいかというと、それは当然難しい。水袋数個分ならin any case、纏まった量の海水を運ぶためには樽のような容器が必要で、そんな容器を背負うなりしているconditionでmonstersに襲われれば一溜りも無く、更に容器が破損して海水が流れれば苦労も水の泡。

　なのでTalosheimでは滅多にここの海水で塩は作られない。以前は第二Princess Zandiaがspace magicで海水を運び出し、塩を作った事もあるらしいが。

「そんな訳で攻略の前に海水を回収します」

『はぁ……』

　岩塩があるのに何故態々？　そんな顔をする一同の前で、VandalieuはひょいひょいとSamのcarriageに載せて来た樽を転がす。

「起きろ、入れ」

　道の横を流れる清んだ海水をアクアGolemにして、樽の中に入らせる。形を維持するのが難しい液体製のGolemでも、横に置いた樽の中に移動する事は可能だった。

　後は運ぶだけだが……。

「起きろ」

　ボゴン！　通路の壁が動きだし、海水の入った樽を取り込みながらRock Golemに成る。

「じゃあ、Talosheimに向かってください」

　そしてノシノシと歩いて行った。つくづく【Golem Transmutation】は便利なskillだ。

「Vandalieu、海水をどうするんだ？」

「岩塩と海塩だと味が違うんですよ」

「そうなのか？」

　俺には分からんと首を傾げるVigaroに、Vandalieuは「比べれば分かりますよ」と言った。

　何故態々Dungeonを流れる海水から塩を作ろうとするのかというと、味の違いだけでは無く、塩は重要な調味料なのでドランの谷だけでは無く、複数の入手方法があった方が良いと思ったからだ。

　何せ味噌や魚醤のaddictsがUndead Giantに出ている。材料である塩のstability供給は重要だ。

　しかし……そろそろ大豆と甘い調味料が、せめてどちらかだけでも欲しい所なのだが。

「Sugarcaneとか、何処かに生えていませんかね」

　まあ、このDungeonでは望むべくもないが。

・Name: Braga

・Rank: ３

・Race: Black Goblin Scout

・Level: ７

・Passive skills

Dark Vision

Abnormal Condition Resistance：２Ｌｖ

Enhanced Agility：３Ｌｖ

Intuition：１Ｌｖ

Detect Presence：２Ｌｖ

・Active skills

Dagger Technique：２Ｌｖ

Throwing Technique：１Ｌｖ

Silent Steps：２Ｌｖ

Trap：１Ｌｖ

Dismantling：１Ｌｖ

Lockpicking：１Ｌｖ