「coffee牛乳が欲しい」
湯上がりのVandalieuは、ふとEarthの銭湯でのお約束を思い出してそう呟いた。
このLambdaにもcoffeeは在るらしいが、あまりメジャーな飲み物ではなく、一部の金持ち専用の飲み物という認識らしい。
金持ち、つまりcelebrity、bourgeois。
そう思うと無性に飲みたくなるのだった。何処かにcoffeeの木でも生えていないだろうか?
自作した扇風機型Golemの風に当たりながら、そういえばタンポポで代用出来たなと思いだした。
「こっちのタンポポでも出来るかな? まあ、見つけたら試してみよう」
Earthでは一時期伯父が「coffeeはluxuryだ!」と言い出して飲めなかったので、中学の図書室に在った『食べられる都会の野草』を読んで、試していたのだ。
美味しかったら皆に勧めてみよう。
「さて、じゃあそろそろ行くか。回転中止」
扇風機型Golemに命令して回転を止めると、VandalieuはBasdiaのbody partを診るために脱衣所から出て行った。
因みに、後日Vandalieuが作ったタンポポcoffeeはSlightly Earthの物と植生が異なったためか、あまり美味しくなく、Talosheimでは流行しなかった。
しかし、代わりに余った木材で作った、『プロペラを回転させる』『回転速度を三段階調節できる』『Headを左右に振る』等限られた命令しか実行できない、扇風機型Golemが流行したのだった。
「では診察を開始します」
「ああ、頼む」
ベッドに横になったBasdiaに、白衣の代わりに白いfurをHaoriったVandalieuは早速【Spirit Form Transformation】でSpirit Formになった腕をずぶりと侵入させる。
Basdiaをこの方法で診断するのは初めてだが、もう何度も他のGhoulで経験しているので慣れたものだ。
『うん、Rank upしたからか、body partのconditionは健康そのものだ』
blood液のcondition、blood vessel、主な内臓の活動、no problem。寧ろ活発ですらある。
uterusもno problem。傷や炎症、疾患は認められない。これは妊娠できないのは偶々か、stressのせいかな? そう思ったが、念のためにovaryもcheckしてみる。
『……ん? おかしい、何だ?』
すると、強い違和感を覚えた。
「ど、どうしたVan? 手が止まったようだが……?」
body partの中を正体不明な異物が這い回る感触に耐えているBasdiaが、-sama子が変わった事に気がついて声を出す。
「んー……もうちょっと調べるから、気持ち悪くなったら言って」
そう言いながら、Vandalieuは彼女の二つあるovaryを重点的に調べる。
普通、ovaryやtesticlesには強い生命のsignがする。そのsignをVandalieuは熱として感知していた。
健康なovaryやtesticlesの場合、Spirit Formが触れると熱湯をかけられたような痛みすら感じるのだが……Basdiaの場合は熱くない。
『ovaryが死んでる? いや、そこまでじゃない。でも正常には機能していない』
さてこれはどういうconditionなのか。繰り返すが、傷はないし疾患でもない。VandalieuはEarthで得た知識と、Originで聞かされた知識を探った。
『そういえば、俺のDeath-Attribute Magicは産婦人科の分野でも役立ったって、あの研究者が言ってたな』
常にwhisperingと聞き取り難い口調で話す癖に、こっちが話を聞き逃すとhistericalに怒鳴り散らす嫌な奴だった。いや、あいつ自身の事はどうでもいい。
『確か堕胎、避妊、性Disease予防……ああ、Infertility治療』
全ての症例ではなかったが、OriginではVandalieuのDeath-Attribute MagicによってInfertility治療が上手く行った場合があった。Ghoul達に作ったmagic itemのように、卵子や精子の活動時間を引き延ばしたり、卵子を【Youth Transformation】させたり、色々だ。
ただ逆にDeath-Attribute Magicでは対処し難い症例もあった。
『Basdiaの場合はそれだ。卵子が成熟しないから、受精できない。この場合の治療には生命attributeのmagicを使った方が簡単なんだけれど』
ovaryの働きが不十分で卵子が成熟しない。だったら生命attributeのmagicでovaryの働きを活発にしてやれば良いのだが、Vandalieuに生命attributeの適性は無い。
Talosheimには幸いNuazaのようにLife-Attribute Magicの使い手も居る。彼に頼むという手段もある。しかし、彼がどれくらい生理学について知っているのかという問題もあった。
magicは使い手の知識とimageに強いimpactを受ける。常夏の国しか知らないMageと極寒の雪国しか知らないMageがそれぞれmagicで氷を作ったら、極寒の雪国出身のMageの方が巧みに氷を作る事が出来る。
それと同じで、内臓の働きを知らないで漠然と術を使ったのでは効果が低い。
NuazaにVandalieuが持っている知識を教えるのも手だが、算数ならin any case生理学となると理解してもらうのに時間がかかるかもしれない。
「じゃあ、とりあえず俺がやってみて、それでダメだったらNuazaに頼むと言う事で」
「ん? Nuazaがどうかしっ……くっ、あっ、うぅぅっ」
方法は迂遠で、踏まなければならない手順は多い。ざっくり言えば、ovaryから負の要素を吸い取って、VandalieuのVitalityを譲渡してovaryが通常通り働くようにするというものだ。
生命attributeなら制御こそ難しいが一回で済む工程を、death attributeで何十もの工程に分けて行う。【Chant Revocation】skillが無ければ、一時間以上かかるだろう。
『【-Surpass Limits-】を起動。ああ、脳がもう三つ……せめて後二つ欲しい』
【-Surpass Limits-】を使用しても、すぐに熱くなる頭に愚痴が浮かぶがそれも頭の隅に追いやる。
「なんだか、暖かい?」
「俺の【Rapid Healing】skillと、【Fortify Regeneration】のせいです」
Vitalityを譲渡するのにも、【Spirit Form Transformation】した腕をBasdiaの体と同一化させて彼女を自分の一部だとbody partに誤解させ、【Rapid Healing】skillを起動し、同時にNo-Attribute Magicの【Fortify Regeneration】をActivateさせなければならない。
そして十分ほど経って、起動していた【Rapid Healing】skillが止まった。どうやら、とりあえず治ったらしい。
ovaryは右も左もVandalieuのSpirit Formを焼きそうな程Vitalityに溢れている。
完治したのか、それとも一時的なものかは分からないが暫く……一ヶ月は大丈夫だろう。
「とりあえず治療終了です。これで-sama子を見ましょう」
「終わったのか……あ、ありがとう」
汗の浮いた顔のBasdiaが安堵の溜め息を吐く。Zadirisを【Youth Transformation】した時もだが、やはりSpirit Formにbody partの中を這い回られるのは気分の良い経験ではないようだ。
「とりあえず、一月後にまた診ましょう。それまでに何かあったら相談を」
こんな事を言っていると、なんだかDoctorになったような気がする。そう思ったら、ぐーっと腹が鳴いた。どうやらManaだけではなく、Enduranceも大分使ったらしい。
「私も腹が減ったな。よし、何か作ろう、材料はDungeonから沢山持ってきたからな」
「お願いします」
三ageになって数か月、まだDarciaから火を使ったCookingは許されないVandalieuだった。……【Cooking】skillは持っているのだが。
木の蓋を開けて、Vandalieuは彼女をそっと持ち上げた。
【Disinfect】の術でDisinfectし、湿らせた布で彼女のきめ細かい肌を傷つけないように注意しながら拭く。【Sterilization】では雑菌は消せても、埃を払う事は出来ない。
『Bocchan、何をやっているんですか?』
「見ての通り、Zandiaのハンドケアですが」
何ともいえない微妙な表情をしたSamに、Left WristだけのZandiaをケアしながらVandalieuは答えた。
「そういえば、Samも随分表情豊かになったなぁ」
以前のSamは……Couch Driving台に座るSamのSpirit Formは、白い人型の靄で、馬も馬型の靄程度でしかなく、表情を見分ける事は不可能だった。
しかし【Spirit Form】skillのlevelが上がった今では、肌が蒼白で目が紅く輝いているが、パッと見た限りではHumanにしか見えない。髭の一本一本までリアルに再現されていて、帽子を目深にかぶれば顔色の悪い人で通りそうだ。
馬も同-samaで、瞳の赤い輝きさえ目を瞑れば普通の馬に……いや普通と言うには不気味かもしれないけど、とりあえず馬には見える。
『はぁ、ありがとうございます。それよりも、何故そんなに甲斐甲斐しくお世話を? Undeadなら分かりますが、それはただの手首だと思いますが』
SamにはUndeadでもない、ただ【Preservation】でDecompositionを止めただけの手首を手入れをするのが奇妙に見えるらしい。
「雑な扱いをしたら、彼女に会った時に怒られそうじゃないですか」
もしZandiaが知性あるUndeadになっていた場合、自分の手首が粗末な扱いをされていたと知ったら気分を害するだろう。だからVandalieuは-chanと彼女の手首を管理し、ケアしていた。
それを聞くと、Samはほっと息を吐いた。
『そうでしたか。私はてっきり、Bocchanが異性の特定の部位に強い関心を持つTypeの方なのかと……』
「いや、俺は手フェチじゃないので」
とんでもない誤解だ。そんな趣味嗜好は無いのに。
『そうでしたか。高貴な方には特殊な趣味を嗜む方も多いと聞きましたので、もしかしたらと……』
『父-san、Bocchanはどちらかといえばmuscleの方が好きよ』
『問題はどっちも私達には無い事よね。手首は手甲だし』
どうやらNobleはこのworldでも業が深い存在らしい。
『Nobleといえば、確認したい事があるのよ』
っと、Darciaがゆらりと現れ会話に加わった。
「kaa-san、kaa-sanにこの方面の事を相談するのは、流石に抵抗が――」
『そっちじゃなくて、あなたが将来成りたいって考えているNobleについてよ』
そっちの事か。良かったとVandalieuはほっとした。
『Basdia -sanと大人になったらchildを作るって言っていたけど、本気なの?』
ほっとするのは早かった。
「そうなるんじゃないかと」
何分三age児のbody partなのでlibidoやら恋愛emotionsやらはまだ実感できないので歯切れは良くないが、十数年後にはそうなるだろうとVandalieuは思っていた。
Basdiaには好意を持っているし、美人だし、そんな相手に求められて悪い気はしない。
異raceだけどそもそもVandalieu自身異raceの混blood児なのだ。-chanとchildも出来るらしいので、特に拒否する理由は思い当たらなかった。
originally、暖かい家庭に関して憧れもあった事だし。
『誤解しないでね、kaa-sanもBasdia -sanは良い人だと思うのよ。逞しいし、彼女ならVandalieuを守ってくれるって信じられるもの』
「……はい」
Slightly異議を挟みたかったが、幼子の姿のVandalieuとGhoul AmazonessのBasdiaでは、そう思っても仕方がないと納得する。
『でも、Nobleになろうとするとそういう事を煩く言ってくる人も多いと思うの。Orbaum Elective KingdomはAmid Empireよりもずっとマシだと思うけど、Dhampirが嫌いな人もいるだろうし……』
どうやらDarciaが心配しているのは、VandalieuがNobleになる前後の事のようだ。
確かに考えてみれば、Human社会でmonsters扱いのGhoulとの間にchildが居るとなれば面倒な事になるかもしれない。
Earthでも火の無い所に態々煙を立てに行く輩は居たし、DhampirがNobleになる事が気に入らない者も存在するだろう。
『あと、相続の問題もあるわね』
Salireが言うように、childが居るという事は相続の問題に直結する。Nobleとは代々家を継ぐ者なのだから当然だ。
そしてVandalieuの次の代がGhoulとの混blood児になる可能性がある事を、Elective Kingdomが認めるかは、大いに疑問だった。
certainly VandalieuがNobleになれたとしても、彼もBasdiaも生まれて来たchildをHuman社会のNobleにしようとは思わないが、「可能性がある」だけで本人も関係者も望んでいないのに騒ぎ出す輩は出て来る。
それを真剣に考えて検討した訳ではないが、Vandalieuにはちょっと考えがあった。
「それなんですが、ちょっと軌道修正してNobleではなくHonorary Nobleになろうと思うんですよ」
『Honorary Nobleって、確か一代限りの、世襲できないNobleの事よね?』
『ええ、確かachievementを上げたNobleや、Nobleでも家督を継げない次男以下の内優秀な者に与える称号ですな』
Honorary NobleはDarciaやSamの言う通り、世襲できないNoble位の事だ。基本的に治める領地も無く、生涯年金は出るがほぼ名ばかりのNobleだ。
しかし、そんな名ばかりのNoble位がVandalieuには都合が良い。
『それで良いんですか、Bocchan? まあ、普通の人には十分立身出世ですけど』
『受け取れる年金も、普通の人の収入の数年分だって聞くけど……』
っと、言うように世間一般でのHonorary Nobleの扱いはこんなものだ。Nobleになりたくて頑張ったけど、Honorary Nobleにしかなれなかったという話は、幾らでもあるらしい。
「はい、領地も役職も世襲も無い、年金があるだけで一代限りのNoble位の方がとても都合が良いから」
まず領地だが、これは当然要らない。何故ならVandalieuには領地経営のKnowkowが無いからだ。信用できる家臣を探して雇えばいいのだろうが、それは独力では難しそうだ。どう考えても持て余す未来しか見えない。
領民noneで良いなら、【Golem Transmutation】で色々出来ると思うのだが。
次に役職だが、これも身に余る。合計で四十年程生きているVandalieuだが、社会人経験は無い。教えて貰えば出来るだろうが、あまり楽しい作業だとは思えない。
そして世襲だが、これは以前Adventurer’s GuildでDhampirの寿命を見た瞬間に「あ、無理だ」と思った。推定だが殺されない限り三千年以上生きるのに、世襲するNoble位につけるはずがない。
なので、目を付けたのがHonorary Noble位だ。領地も役職も世襲も最初からnone。でもNoble位ではあるから周囲からはNobleとして敬われる。
なるのも領地と世襲可能なpeerageを求めるよりはずっとhurdleが低いだろう。
「俺がNobleに成りたかったのは、Originからreincarnationしてくる奴らが俺を殺す事を躊躇う立場とluxuryが出来る資金力が欲しいからだったので、名声があればNobleでもHonorary Nobleでもどっちでも良いんだ」
『資金力の方はどうするんです?』
「それは普通にadventurerとして稼げばいいかと。皆、頑張りましょう」
今日攻略したGaran’s Valleyで剥ぎ取って来た素材だけ見ても、Adventurer’s Guildに売ればかなりの額になる。三ageの段階でそれだけ稼げるのだから、このまま努力を続けて行けば下手なNobleよりも稼げるようになるはずだという目算がVandalieuにはあった。
「それに、Honorary NobleならNoble位の返上も簡単でしょうし」
『ええっ!? 返上するの!?』
「はい。俺以外のReincarnatorと話が付いたら、それも視野に入れようかと」
そしてVandalieuにとってNoble位とは目的を達成するための道具でしかない。
確かにNobleの位は便利だろう。権力や特権を振るうのはさぞ気分が良いだろうし、Nobleしか口に出来ない美食やNobleしか入れない高Class店、目に出来ない芸術品の数々が存在するに違いない。
しかし、それらの特典よりも負担の方が大きくなったら? Basdia達GhoulやSam達Undeadとの交流を妨げられ、面倒な権力闘争に巻き込まれるとしたら、どうすれば良い?
簡単だ。役目を終えた道具は返してしまえば良い。
「下手に領地が在って領民が居ると責任があるので返上できませんけど、Honorary Nobleなら責任も何も無い。返上して百年ぐらい隠居して、ほとぼりが冷めるのを待てば良い」
Vandalieuがそう言うと、Sam達は思わず絶句していた。
このworldではNobleという存在はそれだけ特別であり、同じHumanの筈なのに平民とは別の生き物であるかのように扱われ、Nobleの中には実際自分と平民は別の生き物であると言って憚らない者も少なくない。
『確かにその通りだわ。凄いわ、Vandalieu。そんなに考えていたなんて、kaa-san見直しちゃった♪』
Darciaはそう言うが、それは彼女がNoble制度と縁遠いDark Elfの集落で育ったからだ。
Sam達のようにNobleに仕えるServantだった者には、Vandalieuの意見は衝撃的だった。
彼がEarthの近代Japanの価値観を持っているからこそ言える台詞だ。人類皆brothersとまで言うつもりはないが、Nobleと平民は別の生き物だと言われても失笑しか出て来ない。
まだ硬直しているSam達に、Vandalieuはその価値観に基づいての発言が不快にさせたかなと不安になった。
『なるほど……流石はBocchan』
しかし、そんな事は無かったらしい。暫しの硬直の後口を開いたSamの表情は、何故か感動が浮かんでいた。
『Nobleの位などBocchanにとっては足掛けに過ぎないと言う事ですな!』
「……え?」
『女Kami-samaのOracleで予言されるような、非凡な方は野望も非凡なんですね!』
「ちょっ――」
『しかも、我こそが予言のMikoなりってBorkus -sanに宣言したとか! やっぱりこのTalosheimを足掛かりにContinent統一とか目指すんですか?』
「それは冗談というか、からかってますよね?」
なんだか色々と一人歩きしている噂や誇張されている事実があるらしい。そこまで大それたことをするつもりはないんだけどなと、Vandalieuは頭を掻いた。
やっても、精々Talosheimの再興ぐらいだと思うのだが。
『大丈夫よ、Vandalieuは褒められると伸びるTypeだから。きっと千年後にはContinentだって統一出来るわ』
「それはちょっと気が長すぎだと思う」
流石に千年かけられる程、Continent統一に対して情熱は無いのだが。それにContinentだって易々と統一される訳がないだろうし。
人生は望んだからといって、その通りになるとは限らない。しかし、目標としては妥当だと思うのだ、Honorary Nobleは。
翌日、Borkusがまだ戻って来ないのでJobについて聞くのは後にして、VandalieuはZadiris達の修行に付き合う事にした。
「今日は坊やが付き合ってくれるからの、特別な修業を行う」
場所はTalosheimの城壁の外。そこにZadirisを初めとしたGhoulのMage達や、Black Goblin、Memedigaを含めたAnubisが集まっていた。
「では、【Chant Revocation】skill獲得を目指した修業を開始する」
おーっ! そう歓声が上がる。【Chant Revocation】skillは、magicを行使する上で必要な呪文の詠唱をせずにmagicをActivateできるようになるskillだ。
その効果は絶大の一言に尽きる。
準equipped, then間も予備動作も無く、ManaとIntelligenceの限界こそあるもののmagicをBarrageでき、更に呪文詠唱から敵にmagicの内容を知られる事も、妨害されて術が不発に終わる事も無くなる。
呪文詠唱にかかる時間を短縮する【Chant Reduction】skillよりも習得難易度は格段に高いが、効果も段違いだ。
ただ習得の方法は単純極まる。呪文を詠唱せずにmagicを使い続ければ良いだけだ。
尤も、呪文を唱えずにmagicをActivateさせるのに必要なManaは最低でも数倍で、術のAttack Powerは十分の一以下。熟練のMageでもそう何度も出来る事ではない。
それに挑戦するため、Zadiris達は無言でmagicをActivateさせる。
Zadirisの指先に蛍の光のような太陽の光に紛れてしまう程度の光が灯る。他のGhoulやUndead Giant達の指先やすぐ近くで水滴が滴ったり、小指の先程度の大きさの火が付いて消えたり、微風が吹いたりした。
それを数回繰り返すと、Manaが切れた者達が続出する。
「坊や、頼む」
「はーい」
それまで見ているだけだったVandalieuが返事をすると同時に、彼の腕が【Spirit Form Transformation】し、管の束のような形に代わる。そして、管がZadiris達に触れるとそのまま【Mana Transfer】で彼の一億を超えるManaが注がれる。
これがこの修業の胆だ。Zadiris達はManaが足らないので【Chant Revocation】skillの修行をしても、目標達成まで時間がかかりすぎる。VandalieuはManaを増やす修行をしようにも、一億以上あるManaを使い切るまでに普通だと一日が終わってしまう。
そこでVandalieuがZadiris達に必要なManaを供給する。するとVandalieuも楽に速くManaを使い切る事が出来るのだった。
「うむっ、修行を続けるぞ!」
こうしてZadiris達は、一日で十日分の修行が出来る環境で【Chant Revocation】skill獲得のために励むのだった。
問題は……。
「意外と暇だなー」
Manaの供給源が修業をしている実感を得られず、暇そうにしている事だろうか。座禅でも組んで、瞑想すればそれらしく見えるかもしれない。
・Name: Basdia
・Rank: 5
・Race: Ghoul Amazoness
・Level: 0
・Job: Warrior
・Job Level: 24
・Job History: Apprentice Warrior
・Age: 27age
・Passive skills
Night Vision
Mysterious Strength:4Lv(UP!)
Pain Resistance:2Lv
Paralyzing Venom Secretion (Claws):3Lv
Magic Resistance:1Lv(NEW!)
Intuition:1Lv(NEW!)
・Active skills
Axe Technique:4Lv(UP!)
Shield Technique:3Lv(UP!)
Archery:3Lv(UP!)
Throwing Technique:2Lv(UP!)
Silent Steps:2Lv(UP!)
Coordination:3Lv(UP!)
・Status Effect
Infertility→完治
・Ghoul Amazoness
magicの素質があるGhoulのfemaleが、magicではなく武術を習得し研鑽を磨きGhoul WarriorにRank upした後もそれを継続すると、このraceにRank upする事が出来る。
姿形はあまり変わらないが、whole bodyに刺青のような文-samaが浮き出る。body part Abilityが大きく上がり、更に文-samaの効果で【Magic Resistance】skillを獲得し、更にmagicに関する素質がincreaseする。
かなりの希少種で、まず同じ集落に二体以上のGhoul Amazonessは存在しない。群れではleaderになる事が多く、Ghoul Amazonessが存在する群れでは女Ghoulの立場が強くなる傾向がある。
また、真偽は不明だがGhoul Amazonessに率いられた女だけの群れが、Devil Nestsの奥深くには存在すると言われている。
Ghoul AmazonessのRank up先は不明であり、今まで確認されていない。しかし今までのように武術だけではなく、magicも極めた個体が更なる上位種にRank upするのではないかとconjectureされている。