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Chapter 327: 対峙する二人

 この日、Orbaumではちょっとした事件が起きた。


「火事だっ! 下Class Noble街で火事だ! mansionが燃えてるぞ!」

「消火隊を呼べ! 燃えているのは空き……『cursed mansion』だ! 更地にしても構わないから、消火するんだ!」

 ある下Class Noblemansionだった『cursed mansion』が、突然炎に包まれたのだ。


 近所のmansionに務めるMagemagicで作り出した水や砂をかけ、駆けつけた消火活動を専門に行うGuardの部隊も尽力したが、『cursed mansion』は焼け焦げた木材を幾つか残して焼失してしまった。近所のmansionに延焼するどころか、庭木を焦がす事もなく。


「おかしい……ここに建っていたmansionはそれ程大きくなかったが、あんな短時間で崩れるか?」

 そう不審に思う者もいたが、深く調査されることはなかった。

「さあな。炎が中々消えなかったし、怨霊のCurseとか悪霊の祟りとか、そういう何かじゃないか?」


「なんにせよ、不動産屋とCarpentryは大喜びだな。これで更地に新しいmansionを建てられるんだから。Alda templeは、布施を受け取り損ねたって、地団駄を踏むかもしれないが」

templeだったら布施は前金代わりに受け取っているだろうぜ。地団駄を踏むのは、無駄な金を使ったおNoble -sama達さ」


 焼失したとされる『cursed mansion』は、何事も無ければ数日後にAlda templeCleric達が浄化のために派遣される予定だった。


 他にも、他の『cursed mansion』を浄化するためにClericたちが踏み込むと、『おおおおおおん』と呻き声をあげるSkeletonの群れに襲われ、激戦の後に何とか浄化した(と、思い込んでいるだけ)という事件や、踏み込んでみたらUndeadが一匹もおらず、後日Zuruwarn templeTemple Headが「むしゃくしゃしていたので、stress解消を兼ねて浄化した。勝手にやってすまなかった」と連絡してきたという事件もあった。


 なお、Alcrem Duke 家と縁のあるNobleの『cursed mansion』は、DarciaZakkart Honorary Countessに浄化の依頼が行き、Alda templeが手出しする前に浄化されてしまったらしい。目撃者によると、彼女がmansionに入ってしばらくすると、mansionの内側から激しいFlashが瞬いたそうだから難易度の高いmagicを使用したのだろう。


 こうしてOrbaumからcursed mansionは、Silkie Zakkart Mansionを残して消えたのだった。……一軒、焼失したはずのmansionVandalieuの【Body World】に移築されたが、それを知るのは関係者のみである。




 書類にmembernameを書き、事務室に提出する。Hero Preparatory Schoolにおけるpartyへ所属するための手続きは、これだけだ。


 Adventurer’s Guildでの手続きも同じようなもので、その目的はachievementを評価する際や、依頼失敗でのpenaltyを課す際に誰と行動を共にしていたのかすぐに判明するのが、便利だからだ。

 もちろん、partyを登録せずに他のadventurerと協力し合うのも構わないが、その場合は依頼達成のachievement等が正しく評価されない場合もある。


 Hero Preparatory Schoolの場合は、単位取得に関係する。


「これで俺もElizabeth -sama teamですね」

 書類を提出したVandalieuは、そのままElizabethの背後に戻った。

「ええ、そうよ。改めてよろしく頼むわね……ところで、何でいつも私の後ろについて回るの?」


 学校内では実習のtactics会議や放課後に行う特訓の打ち合わせのために、会うたびにVandalieuElizabethの背後に立ち、そのまま適度な距離を保ってついて行く。

 Elizabethから見れば子鴨のようだが、Vandalieuの存在感の薄さと足音を立てず重心のぶれないstabilityした歩き方のせいで、離れた所から見ると背後霊に見える。


 尚、party memberleaderの後ろをついて歩かなければならないというruleは無い。

「それはcertainlywaist purseだからです」

 ならなぜElizabethの後ろについて歩くのかというと、Vandalieuのいわゆる「取り巻き」や「waist purse」といったpositionに対するimageが乏しかったからである。


waist purseではなく腹心とか、親衛隊と呼んでほしいな」

「だけどまあ、分かっているじゃないか」

「こうして我々の結束を周りにappealするのも、重要だからね」

 そして、その乏しいimageはほぼ正解だったらしい。waist pursesenpaiであるMactTaurusJozéfの三人が何度も頷いて、Vandalieuの行動を肯定する。


「あ、あんた達ねぇ……人を親鴨みたいに言わないでくれる!? いつも皆を引き連れて歩いている訳じゃないでしょう!?」

 Elizabethはそう言って怒るが、横のMaheriaZohnaは苦笑いを浮かべて首を横に振る。


「お嬢-sama……学校では最低でも一日三回は皆-sanを引き連れて歩いています」

Alex -kunの勧誘を止めた分、最近は回数は減ったけどね」

「言われて見れば、そんな気も……でも、別に引き連れて見せびらかしている訳じゃないのよ! 単に、打ち合わせとかするのに集まった後、ばらばらに移動するのは効率が悪いから、それだけよ!」


 MaheriaZohnaに指摘され、はっとなるElizabethだったがすぐに言い訳を口走った。自分が無意識に周囲に対する見栄を張っていた事に気が付いたが、それを素直に認められる性格なら、そもそも見栄を張らない。


「別に構わないと思いますよ。adventurerという商売は、周囲から舐められたら不利になる職業ですから。実力を過小評価されて依頼料を値切られたり、guildからの評価が低くなったりしたら困ります。

 今から周囲にappealする癖をつけておくのは良い事かと」


 そしてVandalieuは見栄を張る事に理解があったりする。人気者が取り巻きを連れて行動するのは、一種の示威行為だと彼は分析している。そうする事でcommunity内での権力をappealしているのだと。

 そのため、Elizabethが自分達を引き連れる事に何の違和感も覚えていなかった。


「うぅ、冷静に理解されると気恥ずかしいというか、自分がchildっぽい事をしているような気がしてくるわね……。

 でもまあ、実際あんたが加わった事が知れ渡ったお陰で、Alexの勧誘に失敗した事を噂されなくて済んでるし……まあ、いいわ。これからも、しっかり私についてきなさい」


「はい。憑いて……ついて行きます」

 実はElizabeth達にそれぞれGhostを憑けるべきか否か、Vandalieuは悩んでいた。nerve質になりすぎかもしれないが、不測の事態というのはあり得るからだ。


 今は、とりあえず彼らのmansionの前と裏、そして通学に使っている道にこっそり小型のDemon King Familiarを設置して、もしもの時に備えている。……今のところ、成果はElizabeth達とは無関係な軽犯罪者……かっぱらいや置き引き、Pickpocket等の犯行を見つけ、数名を逮捕しただけだが。


「なんで言い直したの? それよりも、早速実習に参加するわよ。Maheria、ちょうどいい実習はある?」

 Vandalieuの言葉を深く考えず、Maheriaに今日の予定を尋ねるElizabeth

 Hero Preparatory Schoolは他のAdventurer's School校と同じで……通常のAdventurer's School校はそれほど細かく単位を管理していないが……単位制である。それも、授業への出席回数は殆ど成績に考慮されず、実習と試験の結果で審査される。


 そのため、自信があるのなら実習を一度も受けず、試験を受けるだけでも構わない。……実習の成績が無いので、余程の高成績を出さなければ、それで単位を貰うのは難しいが。


「はい、今日これから参加できる実習科目は、Alchemyと工作、それに実践Cookingです。Alchemyは野外での即席の杖作り、工作は野外での武具の修繕、実践Cookingは野外でのCooking実習になります」

「今に始まった事じゃないけど、野外ばっかりね……じゃあ、Alchemyにしましょう。皆、Alchemyの単位はまだとっていなかったはずだし……」


 こうしてVandalieuElizabeth partyで受ける初の実習は、野外でmagic媒体として機能する即席の杖づくり……木の枝にmagic陣を刻んで加工し、monstersからとったMagic Stoneを組み合わせる実習に決まった。


Elizabeth -sama! あたしは実践Cookingが良いと思うのっ!」

 しかし、突然Zohnaが強く実践Cookingを勧め出した。

「えっ? そう?」


「そうですよ、Elizabeth -sama! Alchemyは参加人数が多いので材料の取り合いになります! それよりもいつも人が少ない実践Cookingの方が良いですよ!」

 Zohnaの意見を、partyの中でElizabethの次にmagicに関する授業の成績が良く、Alchemyにも興味があるはずのJozéfが支持する。


「そう、なら実践Cookingにしましょうか。たしかに、実践Cookingの単位もみんな持っていないし、Vandalieuがいるなら良い結果を出せそうね。

 Vandalieuも実践Cookingでいいわね?」


「構いませんが……今日はうちのChefを連れてきていないのですが、良いですか?」

「いや、あのChefは実践じゃなくて、実際に戦った相手をCookingする人でしょ」

「実習内容によっては頼りになりますが……」


 Giantな包丁や肉叩きで武装したChef達は、今日はSilkie Zakkart Mansionで新入り達と顔合わせをしていた。




「今日の実習の課題は、『人里離れた野外に長期間のfield workに出た学者Nobleの護衛依頼中、雇い主が偶には保存食ではなくもっと美味いCookingが食べたいとselfishnessを言い出した時のCooking』だ」

 臨時で――Vandalieuが本当に普通に実習を受けるか不安がった講師達の意見を受けて、Meorilithが要請した――実践Cookingの担当になったDandolip……Randolphは死んだ魚のような瞳で、課題を読みあげた。


 場所はOrbaumの外……ではなく、実習Dungeonの内部にある荒野の階層である。『野外実習』と銘打っているが、さすがに課題にあった土地に移動するのに何日も旅をするのは不可能だ。そのため、こういう時は実習用Dungeonの一部の階層が使われる事が多い。


Dandolip senseiadventurerは毎日が非常事態という言葉があるのは知っていますが、そんな課題が役立つ事があるんですか?」

 実習を受ける生徒の一人、Alexが半信半疑といった-sama子で尋ねる。その質問にDandolipは力の無い笑みを浮かべて答えた。


Alex。お前はそんなBAKANA Nobleはいないと思っているのだろう。だが、現実にはそんなBAKANA Nobleがいる。nameは明かせないが、俺はBAKANA事を言い出すNobleの依頼人に当たったことが十回以上ある。Meorilith校長も同じくらいあるだろう」


 答えを聞いたAlexの顔が、「マジか!?」と言うように驚愕に引きつる。他の生徒達も一名を除いて程度の差はあれ驚いている。しかし、事実である。

 「暇だから-kunThief団の一つを潰すところを見物させてくれないか」と、護衛依頼なのに危険に自ら突っ込めと言う依頼主や、雇ったadventurer同士をgameの駒のように戦わせようとする依頼主等、BAKANA Nobleに雇われた経験がRandolphにはあった。


 中には、依頼失敗のpenaltyを受けてもいいから、謀殺してやろうかと本気で検討した事もあったほどだ。

 ちなみに、そのidiot Noble名を言わないのは、idiot Nobleの子孫に罪はない事と、名からAdventurer’s GuildrecordNoble達の情報を調べられたら、当時依頼を受けたadventurerDandolipではなくRandolphだとばれる可能性があるからである。


「それと、勘違いをするなよ。Nobleの中にidiotがいるのではない。Nobleの中にも、idiotがいるだけだ。

 平民、Noble、王族、adventurer、どんな集団の中にも賢しい者がいるように、愚かな者もいる。BAKANA事をして失敗した連中の実例が、図書館に行けばいくらでも読める」


 生徒達の内、平民や商人出身の生徒に、調子に乗らないよう「idiotはどこにでもいる」とRandolphは釘を刺した。

 実際、Randolphの人生経験でidiotが一人もいなかった職業やraceElfを含めて存在しない。

(尤も、俺自身も賢しいとは言えないが)


「ただ、お前達はそうした愚か者ではないし、将来も愚か者にはならない事を期待させてもらう。では、質問が無ければ課題を開始してもらう。時間は二時間だ」

「はい、質問があります」

「……だいたい予想はつくが、なんだ、Vandalieu?」


「はい、今持ってきている食材は使っても良いのですか?」

「……基本的には却下だ。課題にある通り、お前達は人里離れた土地を、長期間の護衛依頼を受けて旅をしている最中だ。保存の利かない食料は食べた後だと思え。

 水、塩や砂糖などの調味料、干し肉、breadはこちらで支給する。Cooking器具も同-samaだ」


 常識的なVandalieuの質問にも、警戒を崩さないRandolph。何故なら、本命の質問が控えている事が分かり切っているからだ。


「では、食材にTamed Monsterの一部を利用しても構わないですか?」

 何故なら、今日Vandalieuが連れているTamed MonsterEisenだったからだ。

『保存食より、美味しいよぅ』

「……だろうな」


 誇らしげに、たわわに実っているFruitを揺らすEisenRandolphは彼女の胸ではなく、枝に実っている方のFruitを半眼で見つめた。

 普通なら食用にできるraceだったとしても、Tamed Monsterを食材にするTamerはいない。しかし、植物型のmonstersであるEisenは取ってもDamageにならないFruitを実らせ、Sapを取る事もできる。


 それはRandolphの目から見ても、食材として最上Classの素材だ。どんなselfishness Nobleもそれだけで満足するだろう。

「許可する。Tamed Monsterだから、長旅でも問題ないだろうしな」

 Randolphがそう言った瞬間、複数の生徒達が溜め息を吐いたり、天を仰いだり、それぞれの方法で失望を露にした。


 何故なら、EisenFruitSapという食材に勝てる見込みがないからである。


 それを知っているElizabethは勝ち誇っており、他のmemberも……何故かZohnaは浮かない表情をしていた。


「では、課題を開始する」

 Randolphの号令に従って、生徒達が動き出した。成績topは無理だと分かっていても、自暴自棄にならない姿勢には好感が持てる。

 Alexも、party memberと共に食材を探しに離れていった。


「私達はこのままEisen -sanFruitSapCookingすればいいわね」

 そう勝ち誇るElizabethの後ろで、Zohnaは当てが外れたと内心頭を抱えていた。

(この授業ならVandalieuと二人きりになる機会があると思ったのに、動く必要すら無いなんて。失敗した!最初にVandalieuが連れているTamed Monsterの人を確認すればよかった!)


 Zohnaが実践Cookingの実習を受ける事を主張したのは、昨日Mact達に宣言した通りVandalieuを誘惑するためだった。

 そのためには彼と二人きりになる必要があるが、Alchemyや工作の授業ではその可能性は低い。しかし、実践Cookingなら食材探しやCookingのために手分けをするはずだと思ったのだ。


 実習を行うのはDungeonの中だが、自分達とVandalieuの実力なら問題なくmonstersを蹴散らせる。だから、もしElizabethが纏まって行動しようとしても、効率や制限時間を口実に分かれる事を提案するつもりだった。

 しかし、このままではElizabethMaheria……そして何より、Eisenの見ている前でVandalieuを誘惑しなければならなくなる。


HELLとしか言いようがないわ。面の皮は厚い方だと自分でも思うあたしだけど、それは耐えられない。だって……)

 Zohnaは自分の胸を見下ろした。もちろん実習中なので鎧を着ているが、その下には年の割には発育良好な膨らみが詰まっている。


 胸だけではなく、Zohnaは自分のルックスとstyleに自信があった。顔はやや童顔だが、背の低いDwarfには似合っている。瞳を隠し持った水で潤ませて、上目遣いに見てやれば大抵の男子は引っかかる。

 しかし、チラリと視線を走らせた先にあるEisenの双は凄まじい。圧倒的に凌駕されている。戦力差は明らかで、戦うのもバカバカしくなる。しかもZohnaには無い大人の色気まで放っている。


 もちろん、この実習中に誘惑する事に拘らず、次の授業や昼休み、そして午後の授業や放課後に賭けてもいいだろう。


 しかしTamed MonsterであるEisenは実習には必ずついてくる。そして昼休みにはPauvina達も一緒に昼ご飯を食べようとやってくる。そして、よりにもよって今日の放課後は特訓が休みなのだ。……休みでなかったとしても、誘惑できるtimingがあるとは思えないが。


(やっぱり今しかない!)

Elizabeth -sama、あたしはもっとチャレンジするべきだと思うなー。他の食材を探すとか、monstersを倒すとかして」

 意を決して異を唱えると、Zohnaの言葉に最も早く反応したのはEisenだった。


『あたしの方が美味しいよ、お試しよぅ』

 食材としてのprideを傷つけられたと思ったのか、枝から千切ったFruitを手にZohnaの口元に近づけようとする。

「待ってっ! 美味しいのは分かってるのっ! Eisen -sanが美味しいのは分かってるんだけど――」


「なるほど。Eisenの実とSapがあれば、一位になるのは決まっている。とは言え、二時間もの時間をただCookingで潰すのは勿体ない。少しでも経験を積むために、自分達でも食材を集めるべきだ。

 そういう事ですね?」

 なんと、他ならぬVandalieu本人がそうZohnaの言葉の真意を解釈した。


 もちろんVandalieuZohnafollowしたつもりはない。本当に彼女がそう考えているのだと思って、口にしただけである。頭の中では「さすがsenpai。向上心があるなぁ」としか考えていない。


「そ、そうですよ、Elizabeth -sama! 後輩に頼り切っていると誤解されたくないですし!」

Alex達に、更に差をつけてやりましょうよ!」

 MactTaurusがすかさずZohnaの後押しに加わる。その-sama子にMaheriaは何か妙だなと思ったが、それを言葉にする前にElizabethが口を開いた。


「……それもそうね。じゃあ、手分けして食材を探しましょう。Eisen -sanは一人でいいわよね?」

 後輩に、つまりVandalieuに頼り切っていると誤解される。そのMactの言葉が、見栄っ張りな性格のElizabethを動かした。


『それが良いだろうねぇ』

 そういう理由なら良しと、納得したEisenは元の位置に戻った。高RankmonstersであるEisenは、この階層の……というか、この実習用Dungeonに出現する全てのmonstersよりも圧倒的に格上である。

 Elizabeth達もEisenの真の実力にまでは気付いていなかったが、このDungeonで彼女に護衛がいらない事は察していた。


「じゃあ――」

Elizabeth -samaMaheria、私達三人、ZohnaVandalieuで別れると良いかと。前衛とrearguardbalanceもいいですし」

「じゃあ、そうしましょうか。行くわよ、Maheria

 Jozéfの提案に、深く考えずElizabethは同意した。Maheriaはやはり-sama子がおかしいと思いながらも、危機感を覚える類の予感ではなかったので、先に歩き出したElizabethについて行くことを優先した。


「じゃあ、俺達はこっちに行きましょう。Eisen、この鍋にSapを貯めておいてください」

『あいよぉ~』

「ええ。じゃあ、後はよろしくっ!」


 そうZohnaEisenに……そして後押ししてくれたMact達に声をかけてVandalieuと歩き出した。必ず誘惑して、糸口――情報を手に入れるためのものか、それとも安心して自分達の身を任せられるという根拠を得るためのものかはさておいて――を手に入れてやると、心に決めて。


 ちなみに、Zohnaは二人きりだと思っているが、Vandalieuの周囲にはcountlessの霊が、そして強力なGhostが漂っている。

『うふふふ、今日も陛下は楽しそうね』

 今朝、偽の『cursed mansion』を火事を起こして燃やし尽くしたご褒美として、Princess Leviaがいる事をもしZohnaが知ったら、羞恥心のあまり失神するかもしれない。


 彼女もEisenに負けず劣らず豊かだからだ。


monstersはいませんね。もっとEisenから離れないとだめかもしれません」

 そしてZohnatargetであるVandalieuは、彼女の事を異性として認識してはいなかった。よりaccurateに述べるなら、恋愛の対象にはしていなかったのだ。


 Vandalieuも健全……かどうか意見が分かれるかもしれないが、三度目の思春期を経験している少年である。異性に興味が無いわけではない。

 しかし、彼には既に婚約者が複数……それこそ一国のEmperorでもなければ多すぎるほどいる。しかも、一児の父である。そのため、婚約者以外の異性を恋愛の対象に見る事はないのだ。


 ……Zohnamuscle的な意味でBody美溢れるShoujoだった場合は、誘蛾灯に誘われる虫のようにフラフラと近づいたかもしれないが。


「ねえ、あたし達、二人きりだね」

 Eisenから離れるために歩き続けた結果、Elizabeth達や他の生徒からも離れた段階でZohnaは動き出した。


「……? そうですね」

 しかしZohna以外にもcountlessの霊やPrincess LeviaDarockBellquertが周りにいる事が見えているVandalieuの反応は、鈍い。


「ねえ、手を握ってくれないかな?」

「実習中に片手を塞ぐのは危険ですよ」

「あたし、前からVandalieu -kunの事頼りになるって思ってたの、他の男の子とは違うっていうか……」

「ありがとうございます。senpaiにそう言われると鼻が高いです」


「……ヴァ、Vandalieu -kunはどんな女の子が好みなの? Dwarfの女の子は嫌い?」

muscleのある女の子は好ましいと思います。Dwarfの人は背が低い分muscleの密度がHumanより高いので、素晴らしいと思いますよ」


 Vandalieuはそう受け答えしつつも、Zohna-sama子がおかしい事を察していた。いくら彼の目が人物眼的な意味で節穴でも、Zohnaが普段とは異なる-sama子で、普段は話題にしない話を振り続けていればさすがに気が付く。

(これはもしや、彼女は自分達に対して俺がどんなemotionsを持っているのか、不安に思っているのでは?)

 ただ、気が付いた後のconjectureはやはり間違っていたが。


(俺は無表情ですからね……常に『Smiling Faceでいる』と意識すれば、Smiling Faceも浮かべられますが……『Smiling Faceでいる』以外の事が難しくなりますからね)

 自分のemotions表現が乏しいせいで、partyの関係に問題が生じている。そう思ったVandalieuは、ひとまず誤解を解こうとした。


「き、muscle? じゃあ、あたしの事は――」

「大切な仲間だと思っています。memberに加わったばかりの俺を気遣って、話を振ってくれた事は忘れていません」


 突然饒tongueに話し出したVandalieuZohnaは驚き、目を瞬かせる。

「斧捌きの鋭さも中々で、このまま鍛えればadventurerとして大成するでしょう。それはcertainly、他の皆も同-samaですが……そうした戦力としての魅力だけではなく、俺は皆に感謝を覚えており、魅力を感じています。

 例えば、あなたは――」


 しかしVandalieuはそのまま話し続け、疑問を抱かせる間もなく誤解を解くために言葉を紡ごうとする。誤解は気が付いた段階で、早めに解かなくてはならない。後でもいいとか、今はそんな場合ではないとか、後回しにすると往々にして面倒な事になり、場合によっては悲劇、もしくは喜劇に繋がる。


「適度に皆の緊張を解し、熱くなった時に落ち着かせることができます。Elizabeth -samaと、Mact senpai達の橋渡しを……おや?」

 しかし、その途中でVandalieuの視界に、妙なものが現れた。


 それは誰かの【Status】である。Vandalieu自身のStatusでないのは、内容から明らかだ。もちろん、従えているUndeadや仲間のものではない。

 nameの欄には、Alexとあったからだ。


「どうしたの?」

 何故自分の視界に、あのAlexStatusらしきものが見えるのか。Zohnaには何も見えていないらしいので、midairに映された幻の類でもない。


 しかし、すぐAlexStatusが見える理由が分かった。彼のStatusUnique skillの欄に、【Magic Eye of Great Appraisal】とあったのに気がついたからだ。


『非常事態! どこからかAlexが、俺のStatusを見ています! 探してください』

 AlexStatusを見る事ができたのは、Magic Eyeの効果を跳ね返す、【Abyss】がAwakeningしたskillである【Root】の効果によるものだと気がついたVandalieuから、普段の穏やかさが消える。


 Telepathyで仲間達に指示を出したことで、彼の周りに漂っていたPrincess Levia達が、Alexがどこから見ているのか探すためにbloodthirst立って飛び立つ。


「えっ? なにっ? 何なの!?」

 戸惑うZohnaに説明している時間はない。Vandalieuは【Detect Life】のDeath-Attribute MagicActivateする。この階層にいる生徒達、そしてmonstersの生命反応を感知するがAlexかどうかは判別できない。場所と数からconjectureするしかない。


『陛下、Gufadgarn -sanが見つけました! 陛下の右です! Light-Attribute Magicを使って、岩の陰でこっちを見ているみたいです!』

 Princess Leviaの素早い報告を聞いたVandalieuは、「分かりました」というと、伏兵がいた場合一人で残すと危険なため、Zohnaを抱き上げた。


「い、いきなり!? 待ってっ! 誘っといてなんだけど心の準備が――」

「失礼しました。ですが、非常事態です。後で謝るので、今は勘弁してください」

 そう言いながら、TelepathyPrincess Levia達を分かれて行動しているElizabeth達の護衛に向かわせる。


 そしてVandalieu自身は、Zohnaを両手で抱き上げたままAlex達に向かって走り出した。

「ひゃぁぁぁぁぁ!?」




 Alexは普通に食材を探す……と見せかけて、二手に分かれていた。片方は食材探しだが、もう片方はAlexと共にVandalieuStatusを確認するのが目的だ。


「ごmaster -sama、やっぱり駄目でしたか?」

 Rabbit-species Beast raceShoujoであるTowaは、masterであるAlexに心配そうに声をかけた。彼は、Light-Attribute Magicで光を歪曲させて映したVandalieuの姿を見たまま黙り込んでいる。


 TowaHero Preparatory Schoolの生徒ではないが、Alexの所有物として実習に参加している。今は、彼がVandalieuStatusを確認している間の護衛が、彼女の役目だ。

「……ああ、ダメだった」

 AlexTowaに、冷や汗が出るのを自覚しながら成果を告げた。


 事前の予想通り、VandalieuStatusmosaicだらけで一文字も読み取れなかった。義理のImoutoPauvinaや、Tamed MonsterEisenVampire達のように。……Chefself-proclaimedしているUndeadは読み取れたが。

 それはいい。【Magic Eye of Great Appraisal】でも、実力が圧倒的に上回る相手のStatusが読めないのは知っている。


 PauvinaTamed Monsterがそうだったのだから、Vandalieuがそうだったとしてもそれは想定内だ。

「もしかしたら、手を出したら、ダメな相手なのかもしれない」

 だが、想定外だったのはそのmosaicの量だ。


 【Magic Eye of Great Appraisal】でも、実力がAlexを圧倒的に上回る相手のStatusは読めない。文字も数字も、すべてmosaicとしか彼の目には映らない。

 だが、mosaicの量から相手が持っているskillの量はconjectureする事はできる。


Ability Valuesの桁が……Manaが明らかにおかしい。それにPassive skillsActive skillsも……そしてUnique skillの数が尋常じゃない。

 俺は彼がAClass adventurer以上の実力だろうと思っていたけど、それでも足りないかも……ぐっ!?」


 止まらない冷や汗と大きくなるhorrorから、口を動かし続けていたAlexだったが突然whole bodyが何かに圧迫されるのを感じて呻き声をあげた。


(なんだっ!? 見えない何かに、whole bodyが圧迫されて動けない!?)

 唯一自由が利くeyeballを動かしてTowaを見ると、彼女も同じらしい。懸命に『何か』から脱出しようと力んでいるが、動けないままのようだ。


(偉大なるVandalieufangsを向けながら、我がmagicに抵抗する術も無いとは、何たる身の程知らず。愚鈍にして矮小、そして虚弱)

 Alexの動きを封じている『何か』は、Gufadgarnmagicで操るspaceそのものだった。


 彼女が作り出したものではないが、ここはDungeonの内部。そして彼女は『Evil God of Labyrinths』。いくらaptitudeがあったとしても、今のAlexTowaに勝ち目があるはずがない。

 このまま圧力を強め、圧殺する事もできる。だが、Gufadgarnはそれをしなかった。


 偉大なるVandalieuとその友人達を愚弄し、更に楽しんでいる学校生活に水を差し、Statusを覗き見るような真似をしたAlexと彼をmasterと呼ぶTowaは、Gufadgarnにとっては害虫以下の存在でしかない。

 偉大なるVandalieuのために存在するworldから、消すべきではないか。そう思う。


 しかしVandalieuがそれを望まない以上、GufadgarnAlex達を捕まえるだけで殺しはしない。

 後はVandalieuが駆けつける数秒を……【Labyrinth Creationskillの事を隠さないでいいなら、一瞬で移動できるのだが……待てばいいだけだ。


(……! 申し訳ありません、邪魔が入ります)


 そうGufadgarnが伝えた次の瞬間、AlexTowaの前に目を回したZohnaを抱きかかえたVandalieuが現れた。


「っ!?」


 そして、Alexの背後には、GufadgarnSpace-Attribute Magicを力技で破って駆けつけた、険しい顔をした赤毛に無精ひげの生えたmale Elf……DandolipことRandolphが現れた。

Alex、今から質問をします」

「できるだけ正直に、そしてaccurateVandalieuの質問に答えてやれ」

 そして動けないAlex達を挟んで、VandalieuRandolphは睨み合いながら口を開いた。


「でなければ、俺はお前達を始末するためにsenseiと戦う事になります」

「でなければ、俺はお前達を守るために生徒と戦うfeather目になる」



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