Elizabeth Sauronの母、Amelia Sauronは、Tohra Knight爵家の長女として生まれた。Tohra Knight爵家は、Sauron DuchyにいくつもあるKnightの家の一つで、Ameliaの父オルソンも真面目な事だけが取り柄の普通のKnightだった。
childが一人娘のIrisだけだったBearheart 家と違って上に兄がいた事と、Ameliaに抜きんでた武術のaptitudeがあったわけではなかったので、普通の娘として育てられた。
Knight爵はNobleではあっても領地はなく、仕える主-kunからの俸給が主な収入源となる。そのため、多くの家は広いmansionに住んで何人ものServantを雇ってHouseworkを任せるという生活は難しい。
Sauron DuchyでHeroと知られていたGeorgeが当主だったBearheart 家なら、貧しいBaron 家よりもずっと裕福な暮らしができる。しかし、辺境の村を治める貧乏Nobleに仕えるKnightは、普段はFarmerに混じって畑仕事している場合もある。
Tohra Knight爵家はSauron Duke 家に仕えているため、Servantを数人雇う余裕はあったが、Nobleらしい優雅な生活ができるほどではなかった。だからAmeliaは年頃になると、Duke 家へと奉公に出された。それはOrbaum Elective KingdomのKnightの娘として、珍しくもない事だ。
娘を主-kunのServantとして仕えさせる。それによって主-kunは身元のしっかりした娘を雇う事が出来、Knight達のLoyalty心を維持する事ができる。また、NobleのMaidとして働くことはStatusであり、良い縁談を得る事に繋がるためKnight達にとっても利がある。
Amelia・Tohraが凡庸なKnightの娘としての人生から外れたのは、その奉公に出た後、前Sauron Duke 家の当主、Bernrust Sauronに目をつけられたからだ。
sickroomで微笑みながら話をする母は、Elizabethには元気そうに見えた。
「そうなの。良かったわ。新しいお友達は面白い子みたいね」
ただ入院生活が長いからだろう。Elizabethが幼かった頃よりも幾分痩せて、肌も白い。だが、その表情と声には何の憂いも無いように思える。
「面白いなんてものじゃないわ。やることなすこと滅茶苦茶なのよ。学校では私の後を子鴨みたいにくっついて来たかと思えば、何故かsenseiと一緒に稽古をつける側に回ってたりするし。
かと思ったら変な歌を歌ったり、Tamed Monsterだって言い張って美人だけど変な女の人を侍らせたり」
「子鴨? うふふ、なんだか想像すると可愛いわね」
「……いいえ、お母さま。なかなか壮観よ、義理のImoutoとTamed Monsterの人達もついてくるから」
「このroomの天井より背が高いっていうImouto -sanね? 友達がたく-san増えたのね、エリ。おkaa-san、嬉しいわ」
Ameliaに与えられたsickroomは貴人用の個室で、広さはElizabethとMaheriaが今暮らしているRimsand Earl 家のmansionの離れ……小屋よりも広い。
上質なベッドに、絨毯。closetに鏡台、それにtableに椅子、teaセットまである。特にポットはmagic itemで、水を注ぐとすぐお湯にしてくれる。
そして窓は高価なglassが嵌められているが……鉄格子で閉ざされている。
「Maheria、あなたも座って。あなたからも、学校の事が聞きたいわ」
Elizabethの後ろで立っていた侍女のMaheriaに、Ameliaは空いている椅子のうち一つ……Elizabethの横の椅子を勧めた。このroomには、四脚の椅子がある。
「奥-sama、私は――」
「あなたはfamilyも同然よ。ここには私達とエリしかいないんだから、いいでしょう?」
そう言いながら、Ameliaはポットに手を伸ばした。
「奥-samaっ」
「気にしないで、お茶を淹れるのは得意なの」
「Maheria、お母さまの言う通りにして。あなたが立ったままだと話しづらいわ」
MaheriaはSauron Duke 家ではなく、Tohra Knight爵家の侍女の娘だ。そのため、彼女はSauron Duke 家に認知される前からElizabethとsistersのように育っていた。
「はぁ……分かりました」
Maheriaが椅子に座ると、Ameliaは微笑みを大きくして空のカップにお茶を注いだ。
tableの上では、四つのカップがそれぞれの席の前で湯気を立てている。
「Vandalieu -samaはElizabeth -samaより小柄な方ですが、sensei達にも頼りにされています。それに、とてもfoodが得意です」
「そういえば、この前お土産に持ってきてくれた串焼きも、その子が焼いてくれたのよね?」
「ええ、私達より上手です。対抗して手作り弁当を作ろうとするElizabeth -samaを、何度止めた事か」
「Maheriaっ! それはVandalieuが皆のstomach袋を掴もうとするから……余計な事は言わないで!」
Ameliaは二人の話を楽しそうに聞きながら、自分の横……誰も座っていないはずの席に微笑みかけた。
「二人が楽しそうで良かったわ。ねえ、あなた?」
あなた? とAmeliaが話しかけた相手は存在しない。椅子には誰も座っておらず、カップに淹れられた紅茶はそのまま冷めていく。
「フフッ、そうね。Cookingの腕でloseも気にすることはないわよね。エリには、もっと素敵な長所がたく-sanあるもの」
だが、Ameliaには見えているのだ。椅子に座り、一緒に談笑している『夫』の姿が。
「うん、ありがとう。お父-sama」
しかし、ElizabethやMaheriaには見えない。Amelia以外の、誰にも見えない。
Amelia Sauronは心をDiseaseんでいた。
最初は、悪夢にうなされたり、極稀に幻覚を見たり、幻聴に悩まされるぐらいだった。Amelia自身もそれが幻だと自覚していた。
それを知ったDraze Rimsandが、専門の施設……このclinicに入院を勧めた。
心のDiseaseについては有効な治療法が確立しておらず、専門家も少ない。それに当時はSauron Duke 家のSuccessor争いの最中で、自分が心のDiseaseを抱えている事をRudel達に知られたら不利になると思ったのか、AmeliaはDrazeに勧められるまま、内密にclinicへ入院した。
ElizabethがAmeliaの見舞いにclinicへ行く事が出来たのは、Successor争いに敗れ、もうAmeliaの事が知られてもimpactがなくなってからだった。
その時には、Ameliaの心には彼女にしか見えず、声を聴くことができない『夫』が存在していた。
その『夫』がBernrust Sauronなのか、Elizabethにはわからない。だが、違うはずだと思っている。
「でも、お母-samaもCookingは得意でしょう?」
「そんなに得意じゃないわよ。お父-sanには褒められたけど……ええ、そうね。あなたも作るたびに『おいしい』って褒めてくれるわよね」
穏やかに微笑む母の手Cookingを、Bhanrustが食べる機会があったとは思えない。彼は大Nobleで、mansionには腕利きのChefが働く大きな厨房があったからだ。
「そうですね。danceはお嬢-samaの方がお得意です。半月ほど前に、お嬢-samaに見てもらっていました」
MaheriaがAlcrem Dukeの別邸でpartyが開かれる前の話を持ち出す。
Orbaum Elective Kingdomの社交danceはKanakoも専門外だったため、【Dancing】skillを持つVandalieuも自信がなかったのか、Elizabethに変なところはないか見てもらった事があった。
「Honorary Nobleの子だから、danceのlessonを受けていなかったのかしら? でも、エリも苦手じゃなかった?」
「それは昔の話よ! -chanとlessonを受けて、踊れるようになったわ」
「そうなの、偉いわ。kaa-sanもdanceは苦手だったのよ。ええ、partyで『あなた』の足を踏んでしまった事もあったわね。
でも、上手くなったのなら安心だわ。Rimsand Earlには感謝しないとね」
Ameliaはそう言うが、彼女がBhanrustと同じpartyに出席したことはない。もちろん、Maidだった彼女がDukeの彼と踊れるはずがない。
手Cookingやdance以外にも、Ameliaは『夫』との思い出を語る事があるが、それはどれもBernrust Sauronとの逢瀬の思い出と考えるには、無理がある内容ばかりだ。
だからElizabethとMaheriaは、AmeliaはBernrust Sauronの幻を見ているのではなく、彼女の『理想の夫』を見ているのだと思っている。
つまり、BhanrustはAmeliaにとって理想の夫では……愛する人ではないのだ。
Ameliaは、少なくともElizabethやMaheriaの聞こえる範囲では、Bhanrustの悪口を言ったことはない。どんな人だったのと幼いElizabethが聞けば、DukeとしてMonarchとして立派な人だったと語って聞かせた。だが、夫として……父親としてどんな人だったのかは語ったことがない。
幼い時はElizabethも疑問を覚えず、父は立派なNobleであり、母と自分を心から愛してくれた良き父だったと思った。
「ええ、そうね。Earlには、私からお礼を言っておくわ」
しかし、思春期になりDraze Rimsand Earlがその視線に本性を現すようになって気が付いた。そんな訳がないと。
Bhanrustは、母を見初めた頃には既に正妻も愛妾もおり、Rudel達は生まれている。何より、当時彼は既に四十代の半ばを過ぎていた。当時成人したばかり、十五ageのAmeliaが父と同年代のBhanrustに心から靡いたとは思えない。
それも母の立場は新しい愛妾ではなく、秘密のLoverだ。関係を公にする事はできず、childを身籠ったら実家に戻され、Elizabethを隠れるように生み育てなければならなかった。贈り物や援助はあったが、苦労に釣り合うとは思えない。
さらに、Elizabethが知ったのは後になってからだが、Bhanrustには彼女と同じような隠し子が過去にもいた。それを考えれば、Bhanrustがfemaleに対してだらしのない男だったとしか思えない。
その腹違いの兄Raymond Parisと違って、Elizabethは女だったためか、認知されることになった。だが、それも母にとっては幸せな事だったとは思えない。
Bhanrustが母を最初から愛妾の一人として囲っていれば、母は十分な護衛に守られてSauron Duchyを安全に脱出できたかもしれない。
Bhanrustが母と自分を認知せず、見向きもしなければ、ただのKnightの娘とその子としてAmid Empire軍から厳しいPursuitを受ける事なく、祖父もMaheriaの母も無事に脱出できたかもしれない。
実際には、BhanrustがElizabethを認知したのはAmid Empireが攻め込んでくる数日前だったため、AmeliaとElizabethには十分な護衛が用意されなかった。護衛の多くはRudelのような正妻、そしてMarquisやEarl等上Class Nobleの家出身の愛妾のchild達に割り当てられた。
AmeliaとElizabethを守ってくれたのは僅かなSoldierと、Knightを引退した祖父。そしてTohra 家に仕えてくれているServant達だけだった。
そしてSauron Duchyから脱出する際には、Amid Empire軍からSauron Duke 家の娘であるElizabethを捕えるために多くの追手がかけられた。その追手からAmelia達を守るために祖父やMaheriaの母は死んだのだ。
その悲劇が残した心の傷によって、母は心をDiseaseんでしまったのだとElizabethは考えているだけに、許しがたい事だった。
「いろいろ言ったけど、Vandalieuのお陰でようやく成長の壁を越えられたみたいなの。MaheriaやZohna達の腕も上がっているし、学校の成績も上げられそうなの」
だから、このままSauron Duke 家にIllegitimate Child扱いされたままでは終われない。それでは、あまりに救われない。
そもそもAmid Empireが攻めて来なければSauron Duchyから脱出する事もなかったし、祖父達の命を奪ったのはAmid Empire軍だという事も分かっている。だが、Empireは建国以来の敵だ。殺しあって当然の相手である。
Elizabethはそれよりも、Bhanrustが父でありながら自分達familyを守ろうとしなかった事が許しがたく、悔しかった。
「それは良かったわ。エリは強い子だけど、弱音を言わない子だから思い悩んでいるんじゃないかって、心配していたのよ。
でも、無理はしないでね。あなた達が無事でいてくれるだけで、私達は幸せよ」
「失礼します。お薬のお時間です」
そこにclinicの職員が入ってくる。彼が押すwagonの上には、水差しと小皿に載った薬が置かれていた。
「まあ、もうそんな時間? もう少し後で――」
「お母さま、私達ならまたお見舞いに来るから大丈夫よ。心配しないで」
「でも……」
薬を後回しにしようとする母を説得し、ElizabethとMaheriaはsickroomから出た。Vandalieuの特訓を受けるようになってから、結果的に倒したmonstersの素材を売る事で隠れて仕事をする必要がなくなり、時間が取れるようになっているから、見舞いにはまたすぐ来ることができる。
「それにしても……実はあいつ、気が付いてるんじゃないかしら?」
「どうでしょう? 何も考えていないように見えて考えている人のようでもあり、本当に何も考えていない人でもあるようですから」
特訓で戦わされるmonstersが、食用に適しているraceばかりなのは、自分達がAdventurer’s Guildに売って収入にしている事を知っているからなのか。そう怪しむElizabethに、Maheriaはどちらの場合もあり得ますと答えた。
明日でVandalieuがElizabethのpartyに加入する。それについて話し合っていたのは、MeorilithとRandolphだけではなかった。
「……どうする? 明日で一か月だけど、結局ろくなことが分かってないぞ」
「……そもそも、僕達はこのままでいいのか? 前はこのままでいいって事で結論が出たけど、あの時と今じゃいろいろ違うし」
「……そうだなぁ。どうしようか。Rimsand Earlの-sama子も変だし」
Elizabethの四人の取り巻き達、背の高いSpear UserのMact Hamilton、眼鏡をかけたMageのJozéf Catalonis、小太りの盾職のTaurus Zets、そしてDwarfの斧使いのZohnaである。
この四人は、Hero Preparatory Schoolに入った後party memberを探すElizabethとMaheriaに甘い汁を吸う目的で集まった生徒だった。
そして、partyを結成した後Rimsand Earlに目を付けられ、彼のspyのようなことをしていた。
「そもそもあのオヤジ、信用してたの? あたしはしてないけど」
そう言ってZohnaは飴玉を口に放り込んで、tongueの上で転がした。口の中に爽やかな香りと甘みが広がる。
Mact達がRimsand Earlのspyになり、Elizabethの学校での動向をEarlに流していたのは無理からぬ事だった。彼ら三人はNobleだが、実家のpeerageは三人ともViscount以下。そして財力でも役職でもRimsand Earlにはかなわない。
Rimsand EarlがElizabethのpartyに入った三人の実家に、「今後ともよろしく」とletterを送ればそれで逆らう事はできなくなる。
もっとも、三人とも今まで逆らうつもりは全くなかった。何故なら、Earlは協力するなら将来当家でKnightやお抱えMageとして雇ってやると約束したからだ。
originally生まれた順が遅かったせいで実家の家督を継ぐ希望のない三人にとって、それはとても魅力的な報酬だった。
Mact達の言動からも分かる通り、彼らのfamilyはNobleの中でも平民を下に見ている者達だ。自分達には高貴な青いbloodが流れていると誇り、平民は自分達とは違う下賤な存在であり自分達に仕えて当然なのだという態度を日頃から崩さない。
そんな環境で育ったMact達にとって、自分自身が平民に落ちるのはhorrorでしかなかった。
他の家への婿入りや、Knightや家臣としてNobleに仕える事ができなければ、生まれた順の遅い自分達は下賤な平民になるしかない。それを回避するために、Mact達は必死に努力してHero Preparatory Schoolに合格したのだ。adventurerとなって一時は平民に落ちても、achievementを挙げてどこかのNobleのKnightやお抱えMageに……あわよくば、peerageを得てNobleになる事を目指して。
しかし、Hero Preparatory Schoolは甘くなく、Mact達は自分の実力ではこの先の実習について行けず、卒業できるか分からなかった。
そんな時に囁かれた誘いは、三人にとってHELLに垂らされた蜘蛛の糸に等しかったのだ。……そもそも、実家のfamilyがEarlに従っている時点で、彼らにEarlの意向に逆らう度胸や力は無かったのだが。
それでいて彼らにEarlが求めたのは情報の提供だけ。Elizabethを陥れ、直接Trapにかけるような危険で罪悪感を覚えるような事を命令されることはなかった。
ElizabethがAlexの勧誘に動いたときは、それとなく邪魔するよう命令されたが、Alexが断ったため邪魔するまでもなかった。
しかし約一年が経って、Vandalieuが現れたその日のうちにMact達には新しいOrderが下された。それがVandalieuに対する情報収集である。
最初はそのOrderを熱心にこなすつもりだった三人だったが……今ではすっかり意欲を失っていた。
「信用って、-kunはEarlを信用してないのか?」
「そりゃそうよ。口約束を信じて痛い目を見た話はいくらでもあるでしょ」
ZohnaもNoble出身だが、その身の上は複雑だ。彼女は書類上Nobleの養女だが、実際は養父の実子である。
Nobleの男がDwarfのProstituteに入れあげてLoverにしたが、妊娠させてしまったからServantの男と結婚させた。そして育った娘にaptitudeがそれなりにあったため、養女にしてHero Preparatory Schoolを受験させた。
それが彼女の身の上である。
「ちなみに、あたしはEarlのspyじゃないから」
「なっ!? 何を言っている!?」
「そうだっ、お前だって――」
「あたしはあんた達が報告してる時、一緒にいたことなかったじゃん」
「「「っ!?」」」
Zohnaの勝手な言い分に声をあげかけたMact達だったが、実際そうだった事に気が付いてはっとした。
ZohnaもRimsand Earlから誘われたし、実家の養父からEarlの意向に従うように言われた。しかし、彼女は返事をしないまま、そして自分自身は何もしなかったのだ。
「そ、そんなの詭弁だ!」
「じゃあ、いざとなったら自分だけElizabeth -samaに取り入るつもりだったのか!?」
「うん、あんた達を売ってね」
「ひ、卑怯者~っ」
Mact達から非難を浴びるZohnaだが、彼女はどこか覇気のない顔つきのまま三人を眺めていた。
「それはともかく、これからどうするの?」
「どうするって、Elizabeth -samaか?」
「ええっと……このままでいいんじゃないかな?」
四人はElizabethに悪意を持っているわけではなかった。最初は彼女の実力と吸わせてくれる甘い汁目当てで集まったが、一年もpartyを組めば情も湧く。それに、Elizabethは四人の人生で出会った人の中でも、上位に輝くほど良い人だったのだ。
彼女は口調と態度は高慢だが、それは四人にとっては気にならない程度であったし、父親のbloodlineを考えれば当然に思えた。それに、面倒見が良い。
そんな彼女の情報をRimsand Earlに流し続けたのは、四人にとって「悪くない将来」だったからだ。
Rimsand Earlの目的を四人は知らされていない。しかし、彼女がHero Preparatory Schoolで優秀な成績を修めてadventurerとして活躍する事を望んでいない事は、察していた。
だから、EarlはElizabethをどこかのNobleへ政略結婚させるつもりだと思っていた。Nobleの家で、femaleが社会に出る事を嫌う理由はだいたい政略結婚のためだからだ。
それはMactやZohnaの常識では、悪い事ではない。寧ろ、現Sauron DukeのRudelを敵視して一泡吹かせようとする無謀な事は、止めさせた方がElizabethは幸せになれると思っていた。
もしElizabethの目標がadventurerとして身を立てる事や、achievementをあげてpeerageを得て新たなNoble 家を立てる事だったら、素直に応援したかもしれない。……そして、もしRimsand Earlの目的がElizabethを妾にすることだと知ったら、やはり掌を返して彼女のallyになっただろう。
Mact達の常識でも、「正妻と複数の愛妾を抱え、既に跡取りになる子もいる、親子程も年の離れたEarlの新しい愛妾」になるのは、良い縁談とは言えないからだ。
しかし、この一か月で「このまま」の意味も変わりつつあった。
「このまま……まあ、このままだと卒業はできそうだよね。Elizabeth -samaだけじゃなくて、僕達も」
「そうだな。Vandalieuのお陰で」
この一か月、Vandalieuの特訓のお陰でElizabethはもちろん、Mact達の力量も格段に上がっていた。最近の実習は課題を達成するのでやっとだったのに、今は余裕をもって達成できるようになっていた。
それはただlevelやAbility Valuesが上がったからでも、Job changeしたからでもない。VandalieuやそのTamed Monster、そして友人が色々と教えてくれたからだ。
「このままなら、Knightなら頑張ればなれるんじゃないかなって気がしてきたんだ。Vandalieuが盾の使い方とか、気構えを教えてくれたし」
「私も……何度か会ったTamed Monster Zombieのミハって人は槍捌きがすごくて、色々教えてくれて、筋が良いって褒めてもらった。生前の事は思い出したくないのか、いくら聞いてもreal nameは教えてくれないけど」
「うん、私もBolzofoy -sanからmagicの手解きを……」
色々Vandalieu達から教えられているうちに自然と「Rimsand Earlのいう事を聞かなくても別にいいのではないか」とMact達は考えるようになっていた。
「……そもそも、どうせ後一年か二年かで出る実家だし、逆らっても別に」
「追い出されても、学校に通っている間は寮があるし」
「それに……平民って思っていたより卑しくなさそうだし。adventurerでも、やっていけそうだし」
この約一か月の間、Mact達はVandalieuの特訓を受け、その友人である『[Heart Warriors]』やSimonやNatania、そしてTamed Monster達と交流するうちに平民に対する認識が変わっていた。
そして実力をつけた事で、自分達なら平民に……実家から追い出されて、ただのadventurerになってもそれなりにやっていけるのではないかと思うようになっていた。
それはZohnaも同感であるし、彼女はoriginally Nobleのbloodは引いていても養女になる前は元Prostituteの母とServantの父の娘なので、平民に対する偏見はほぼなかった。Mact達と衝突するのを避けるため、調子を合わせる事はあったが。
しかし、問題はそれではない。
「Elizabeth -samaじゃなくて、Vandalieuの方よ。最近はあのオヤジもあたしの家の連中も、Vandalieuの事ばっかりでElizabeth -samaはどうでもよくなってる感じなんだけど、あんた達の家は違うの?」
「「「っ!? そ、そうだった!」」」
MactやZohna達が抱えている問題がいかにちっぽけなものか表すように、VandalieuはOrbaumのRoyal Nobility達の関心の中心となっていた。
この一か月、Mact達の実家はRimsand Earlよりも上のNoble、Marshallを務めるDolmad Marquisなどから、Vandalieuについて探るよう要請され、何か有力な情報は入っていないかと催促を受けるようになった。
それは半月前に開かれた、Alcrem Duke 家のpartyをきっかけに激しくなった。
曰く、ある特徴を持っているか、隠しているNoble達の多くがVenueに押しかけ、Venueから出てきた時には熱烈なAlcrem Duke支持派に変わっていた。
曰く、Darcia・Zakkart Honorary Countessは絶世の美女であり、今年の社交界では彼女を狙う紳士達が大勢集まる事だろう。
曰く、長男のVandalieuは大勢の美女を『Tamed Monster』として囲い、侍らせている。その中でも植物型のmonstersであるEisenのSapから作られたsyrupと、Fruitを使ったsweetsは絶品である。
曰く、Hartner Duke 家のKatie・HartnerとVandalieu Zakkartが接触していた。Hartner Duke 家がAlcrem Duke 家のように、Alda贔屓からVidaへ転向するきっかけか?
などなど飛び交う噂は数え切れない。その真偽の確認を彼らは求められているのだ。……Rimsand EarlはElizabethの事をどうでもいいとは考えておらず、最終的には手に入れるつもりなのだが、それはMact達の知らない事だった。
「でもこれ以上情報を手に入れるのは……」
「もう、いっそ私達もAlcrem Duke派になっちゃうのはどうだ?」
「それは僕も考えたけど……お前こそ本気なのか?」
「いや、それは……Zohnaはどうなんだ? 飴玉もらってたし、私達より仲が良いだろ」
「あたし!? あたしは……簡単に決められる訳ないでしょ!?」
Mact達もこの一か月で、Vandalieuとはある程度打ち解けている。それに、彼がどれくらい強いかも……『maybeAClass adventurer並みだろう』という、真実からは程遠いものではあるが、conjectureしていた。
今までは、彼らでなくても調べれば分かる情報しか流していない。 これ以上の情報を探る、そしてそれを流すのは完全なspy、敵対行為だというのは感覚的に分かる。
Vandalieuと敵対するのは気が進まない。スパルタだったが、この一か月の成長は彼の特訓のお陰だ。特訓の最中も、何度も助けられたので恩も感じている。
しかし、ではVandalieuのally、本当の意味で仲間になるという決断は簡単には下せなかった。
Vandalieu……改革を唱えるAlcrem Dukeは、今や完全にVida's New Races贔屓だと見られている。その過激さは政治のworldによくある派閥争いの段階を超えており、OrbaumのChurch of Vidaも驚くほどだ。
代々Prime Ministerを務めてきたTelkatanis Marquis 家など、主だったNobleがAlda templeを重用してきたこのCenterでは、まだAlcrem Dukeが唱える改革は浸透していない。
一か月前までは、多くの下Class Nobleや平民は「Alcrem Dukeが妙な事を言っているらしい」、「来年のElected King選挙に立Candidateするから、話題作りだろう」、「目立ちたがりにも困ったものだ」という程度の認識だった。
しかし、この一か月でAlcrem Dukeは本気らしいという事が、急速に広まりつつある。
そのきっかけは半月前のpartyでAlcrem Dukeの改革を支持するNoble達が増えた事。そして、ほかならぬ彼らがVandalieuの情報を流した事だ。
Noble達に改革の支持者と、Vandalieuの情報が広まるにつれ、改革の認知度は高まっていく。
Mact達もZadirisと何度か会って話をしてみて、「たしかに、人だ」と思わされた。
だが、それだけにVandalieuの仲間になるのは大きな決断になる。他のNobleから、Alcrem Dukeを支持していると判断されるからだ。下手をすると、大多数のNobleから敵視されかねない。Nobleから平民になる覚悟はできていたMactやZohnaも、さすがに二の足を踏む。
人生で大きな決断をした事がないMactやZohnaはKatie・Hartnerにあった決断力を持ち合わせていなかった。
「せめて、もっと取り入ってからじゃないと、安心できないじゃない!」
何故なら、基本的に彼女達は強い者には巻かれる気質の持ち主だからだ。
ZohnaはMact達よりは多少マシだが、ElizabethやMaheriaのように大きな目標や強い信念があるわけではない。
「そうかな? もう十分取り入っているように見えたけど」
「冗談言わないでよ。あんた達みたいにチョロい奴と違って、あいつ全然反応しないんだから。……EisenとかZadiris -sanを侍らせてるんだから、当然だけど。まあ、飴玉はもらったけど。
でもこのままじゃ不味いのはたしかよね」
このままVandalieuの有力情報を流さなければ、実家を含めたNoble達にVandalieuの仲間になったと判断されかねない。本当にVandalieuの仲間になっていないconditionで、その状況に陥るのはかなり危険だ。
Zohnaは口の中の飴玉……EisenのSapから作られたsyrup製の飴玉を噛み砕いて決心した。
「こうなったら仕方ない。無理をしてでも、Vandalieuに取り入ってしっかり懐に入る!」
「自信はあるのか!? あの美人を侍らせているVandalieuにお前が取り入ろうとしても、その……気の毒な結果になるだけじゃ……?」
「あんた達のあたしを見る目が、もう既に、気の毒な存在を見る目になってるじゃない!? そこまで言うなら、あんた達がVandalieuや、Tamed Monsterの人達やPauvina -chan達に取り入ってみなさいよ! 男でしょ!?」
「それこそ無理を言うな! あいつ、この前暗黒がどうとか得体のしれない呪文だか何だかを囁いていたんだぞ!」
「それにあの人たちは、僕達が知っているfemaleとはジャンルが違いすぎる!」
「Pauvina -chanは何故か私達を小さい子扱いするし、Miriam -sanとNatania -sanからは実際に子ども扱いだし……Karinia -sanは、怖い」
「なら、あたしがやるから黙って見て……待った、見ないでいい。報告を待ってなさい」
自分でも成功率は高くないと思っているため、惨めな結果になった場合見られたくないZohnaはそう言いなおしたのだった。
彼らは知らない。Vandalieuはかなりチョロく、出会った頃には「ダメっぽい」と思っていたMact達三人も、今は「見どころがある」と思い直している事を。
そして、とっくに仲間として見られている事に。
さらに言うなら、最近Ability Valuesが上がったのは特訓によってlevelが上がったからだけではなく、Vandalieuに導かれたからでもあるという事に。
その頃Vandalieuは、明日Tamer guildにTamed Monsterに認定してもらうmemberをPauvinaと話し合っていた。
ちなみに、お茶請けは饅頭である。手製の暗黒……ではなく、餡子が詰まっている。
「Van、そろそろLuvezを登録したい。【Shrink】skillは覚えてないけど」
「そうですね。じゃあ、SamとBone Man、それにOniwakaを連れて行きましょうか」
「Van、Oniwakaは幼名だよ」
「そうでした。癖になっているようです」
そう言いながら、Vandalieuは何かの箱詰め作業をしていた。ラッピングをして、messageを書いたCardを添える。
「Van、それは?」
「日ごろからお世話になっているOrlock -sanへの贈り物のVCreamです。pupilsに絞られ、痩せる思いをして作った、心の籠った逸品です」
Tamer guildのMaster、Orlockの心労は増すばかりだが、毛根と肌は守られそうである。