Vandalieuが、というよりZakkart Honorary Earl 家がElected King領、通称CenterのOrbaumに長期滞在する予定である事を、Katieは早い段階で知っていた。
originally Vandalieu達はこの予定を隠さなかったし、Hero Preparatory Schoolに入学する以上隠せる事ではないからだ。だからKatieも父達の会話を【Urðr】……指定したspaceで過去にあった出来事を見聞きするCheat Abilityで把握する事ができた。
そのため、彼女は父にVandalieu達がいる時期に合うようにCenterへ行きたいとねだったのだ。名目は勉強のため。前世の人格とMemoryを取り戻した彼女に、以前と同じただの幼女として過ごすことは不可能だった。そのため、彼女は周囲からGenius児だと思われている。それを今回は利用したのだ。
もちろん、Vandalieuを警戒しているKatieの父、Lucas Hartnerが簡単に了承するはずがない。そのため、KatieはHartner Duchyの新Mage Guild Masterに、OrbaumのMage Guild Master宛てに推薦状を書いてもらい、自筆のletterと一緒に出してもらったのだ。
清廉潔白だが政治に疎い新Guild MasterはKatieの狙い通り、彼女のaptitudeを熱烈に称えた推薦状を書いてくれた。そして、OrbaumのGuild Masterから「Katie嬢の留学を歓迎する」と返事が来たため、Lucasも娘のselfishnessを許すしかなくなった。
もちろん留学には保護者であるGeneral Officerや護衛がついてきて、Hartner Duke 家の別邸で暮らす事になったが、彼女は構わなかった。Duke令嬢である自分が自由に行動できるとは、最初から考えていなかったからだ。
Katieは辛抱強くchanceを待ち、そしてAlcrem Duke 家が開いたpartyに出席し、そして発見したVandalieuに向かってPierceしたのである。
なまじ前世で身につけたmagicや戦闘技術の腕があるため、Eleonora達から美しさ以外にも圧倒的強者としてのプレッシャーを覚えるが、それに足がすくむ前に前に出た。
「……初めまして。Vandalieu Zakkartです。お噂はかねがね」
一方、VandalieuにとってKatieの行動は完全な不意打ちだった。Hartner Duke 家の令嬢で、幼いながらGenius of Magicだとreputationになっている彼女のnameは知っていた。
だが、知っていただけで今までは警戒に値するとは思っていなかった。Geniusであるというreputationも、「そのageにしては」という枕詞が付く程度であるし。何より、今Vandalieu達が最も警戒しているのはRokudou Hijiriやその直属の部下だったReincarnator達である。
六ageになるKatie・Hartnerが彼らである可能性はZeroだ。だから、ほぼ無警戒だった。
「あなたが【Urðr】と呼ばれていたとは驚きましたが」
そう言いながら、Vandalieuは驚きから立ち直り、【Telepathy】でEleonoraやBellmond、そして姿を消したままVenueに潜んでいるGhost達に『大丈夫』だと伝える。
「ええ、できれば今度お話しする機会を作ってくれれば幸いです。magicとか、昔の事とか」
「それはいいですね。歴史についてなど、興味深いお話ができると思います」
実際、Katieを厳重に警戒する必要はなかった。彼女はEleonoraがわずかに伸ばした爪や、Bellmondがわずかに膨らませたtail、Eisenが小さく軋ませた枝の一振りで、容易く刈り取られる程度の力しか持っていない。
そして、これまでの短い会話で彼女に敵意がない事と、この場で重要な会話をする気がない事が分かった。ここは他の招待客の目や耳があるから当然だが、【Urðr】の接触を予期していなかったVandalieuとしてはありがたい。
「それでは、ごきげんよう」
そう言って一礼すると、Katieは離れていった。彼女はVandalieuと接触して彼女個人は敵意を持っていない事を伝え、重要な話ができるよう後で時間を作ってくれるように頼めれば、それでよかった。
ちなみに、Katieが撒いた保護者と護衛はしばらく前から彼女を発見していたが、既にVandalieuと会話を交わしていたため、近づくことができなかった。
「ええ、また近いうちに」
そしてVandalieuも彼女を追わない。ただ、近いうちに……できれば今日中に話ができるよう、生前scoutだったKimberlyに尾行してもらうが。
そしてKatieが離れた後、その-sama子をただ見ていただけだった令嬢達ははっと我に返った。相手がDuke 家の令嬢だったため、その行動を妨害する事はもちろん倣う事も出来なかった彼女達だが、今なら自由に動ける。
KatieがPierceした後の-sama子を見て、Vandalieuに話しかけさえすれば会話が成立すると考えた彼女達は、お互いに牽制しあい、それを制した者から話しかけようとした。
「ただいま、皆。大変だったわ、本当に目が回るかと思った」
だが、その前にDarciaが戻ってきてしまった。社交界では親同伴の相手と交流し、親交を深めるのは普通の事だ。というか、そもそも親か保護者が同伴していない未成年者(このworldの場合は十五age未満)は、ほぼいない。
だが、Darciaが着ているdress……dressのようにアレンジしたTransformation Equipmentを前にして二の足を踏まない者はいなかった。
Transformation EquipmentをActivateさせた後、Vandalieuが編んだ液体金属のLacesやFrillsを加えて露出を抑えているので、印象も華やかだ。そして液体金属の生地であるため光沢があり、このpartyに出席している令嬢やLadyが着ているdressとは明らかに格が異なっていた。
「お疲れ-samaです、kaa-san。変な人はいませんでしたか?」
「大丈夫よ、タッカー……Alcrem DukeのGeneral Officer -sanが招待する人を厳選してくれたから。それに、Vandalieuが手直ししてくれたこのEquipmentの事を皆褒めてくれたのよ。Orbaumでもreputationになるわよ、きっと」
「それは、着ているのがkaa-sanだからでしょう」
「そうじゃな。儂らはそんな事は言われておらぬし」
「うん、皆遠巻きに見ているだけだったよ」
ちなみに、Transformation Equipmentにアレンジを加えてdressとして着ているのはDarciaだけではなく、ZadirisやPauvina、Eisenもだった。
『それは無理もないと思うけどねぇ』
招待客からしてみれば、ZadirisやEisenは客ではなくTamed Monsterだ。そして、人とほぼ同じappearanceで知能もHuman同-samaであるTamed Monsterに、どう接すればいいのか招待客達は分からなかったのである。
社交界ではfemaleを褒めるのがmannerだ。しかし、その褒め方にも相手の立場によって違いがある。婚約者がまだいない若いfemaleを熱心に称賛するのは構わないが、婚約済みのfemaleや既婚のfemaleを情熱的に褒めるのは口説いていると誤解されかねないのでmanner違反である。
逆に、婚約者のいないfemaleを、婚約済みのfemaleや既婚者と同じように言葉少なく応対するのは、「自分は貴女に対して関心がない」と言っているのと同然と見なされ、失礼となる。
ここに相手の家と自分の家の力関係や、政治的な立ち位置なども関係してくる。
そんなややこしい社交界を生きるNoble達にとって、Tamed Monsterのfemaleというのはどんなカテゴリーになるのか分からなかったのである。フリーのfemaleではないのは確実だが、婚約済みや既婚者のfemaleと同-samaに扱って失礼に当たらないのか?
これでは、どんなに可憐だったり艶やかだったりしても、直接声をかけて称賛するのは躊躇われる。
「そもそも、私達はVan -samaに面倒なのが近づいてこないようGuardしているのよ。その私達が面倒なのを呼び寄せてどうするのよ」
Transformation Equipmentの形状がちょっとしたアレンジでは隠せない程度には鎧っぽいため、dressを着ているEleonoraがそう言う。
「私ではNobleの方の顔の判別が……妙な言質を取られたらご迷惑をかけてしまうので、今の扱いの方が気が楽です」
そしてEleonoraと同じ理由でTransformation Equipmentを着ていないBellmondは、いつもと同じ燕尾服のButler姿だった。社交の場での男装は目立つが、彼女はTamed Monsterとしてこの場にいるため咎められることはない。
「そういえば、Vandalieu達の方こそ、変な人が来たりしなかった? Pauvina -chanやBellmond -sanも大丈夫?」
「うん、Alex -kunはこういう所にいないから大丈夫だよ」
「あの、お気持ちは嬉しいのですが、何故私も?」
しかも、和気あいあいと身内だけの会話を始めるものだから間に割って入る事ははばかられた。originally Vandalieuと接触して調べるようにと言われただけで、彼自体に興味や関心があった訳ではない令嬢達は、これは無理だと諦めて、退散する事にした。
親から命じられ、それに応えるつもりもあった令嬢達だが、さすがに本物の工作員程高い士気や、missionの実行Abilityは持たなかった。
「え、でもMoksiの町ではtailを……」
「kaa-san、Bellmondのtailに近づく人はいませんでしたよ」
「Darcia -sama、旦那-sama、私のtailはそこまで注目を集めるとは思えないのですが。それとMoksiの町での件は、私の油断です。不徳の致すところです、忘れてください」
「「ごめんなさい」」
頬を赤らめてそういうBellmondに、声を揃えて謝るDarciaとVandalieu。しかし、「他人にtailを触られたことがtraumaになっているから触れられたくないのだ」と誤解していた。
「ああ、それと変な人ではありませんがKatie・Hartner嬢が来ましたよ。彼女は【Urðr】なのだそうです」
「まあっ! それは大変……だけど、慌てる必要はないみたいね。カナ-chan達みたいに、仲良くできるといいのだけど」
Vandalieu達の-sama子から、ReincarnatorだったらしいKatieが敵意を持っていない事を察して安堵の溜め息を吐くDarcia。彼女にとってReincarnatorはVandalieuの仇だが、Inui・Hajimeのように明確に敵対してくる相手以外に思うところはない。
KanakoやDoug、Melissaのようにfamily同然の付き合いができる者もいるし、そうでない者もいる。そんなものである。
「でも、Hartner Duchyは……どうするの?」
「maybe、その話をしたくて彼女は俺に接触してきたのでしょう。とりあえず話をしてみます」
「そう、じゃあ……danceが始まるまでここにいていい? Chipuras -sanが手伝ってくれたから何とかなったけれど、もう本当に目が回りそう」
次から次に話しかけてくるNoble達に挨拶を交わし、社交辞令を言い合って当たり障りのない応対に成功していたDarciaだが、それは彼女一人の実力によるものではなかった。
「ご苦労-sama、Chipuras」
『身に余る光栄です、Vandalieu -sama』
Chipurasは元Vampires serving Evil Godsの工作員であるため、多くのRoyal Nobilityの顔とnameを憶えている。また、商人としてHuman社会に潜入していたため、人の顔とnameを覚えるのは得意だった。
さらに、Nobleと交流した経験も豊富である。
そんな彼がDarciaの後ろにつき、彼女にNobleのnameとreputationなどを囁いて教えていたのである。
「そうですね、danceが始まったらみんな交代で踊って時間を潰しましょう」
変なNobleに強引にdanceを迫られるよりは、身内で相手を決め交代を繰り返して時間を潰した方が良いだろう。そう思っていたVandalieuだったが、実際にdanceが始まると、DarciaやPauvinaと繰り返し踊る事になるのだった。
その日のnight、General Officerから長めのお説教を受けたKatieはようやく解放されて、寝室として使っているroomに入った。
「あの人たちの気持ちも分かるけれど、長すぎよね」
「彼らにとってあなたは未成年者ですからね」
「っ!?」
ずるりと、Vandalieuがclosetと壁の隙間から這い出てきたのを見てKatieは思わずscreechをあげかけた。
「ど、どうやってそんな狭い隙間に?」
「いえ、この隙間に隠れていた訳ではなく、この隙間に【Teleportation Gate】を開いてもらっただけです」
Kimberlyに尾行してもらい、報告を受けたVandalieuは、Gufadgarnに目立たない場所に【Teleportation Gate】を開いてもらったのだ。……家具と壁の隙間に開くとは思わなかったので、若干驚いたが。
「それで、お話というのは?」
「あ、はい。Hartner Duke 家の事なのですが――」
口調をDuke令嬢のものから、普段の自分自身のものにしてKatieはVandalieuに【Urðr】のAbilityで自分の家と父が何をしたのか見た事を話し、それについて自分が必ずHartner Duke 家として公にして謝罪させ、できる限りの賠償を行うので、それまで待ってほしいと頼み込んだ。
それに対するVandalieuの答えは、簡潔だった。
「分かりました。待ちます」
罵声やKilling Intentを浴びる事も覚悟していたKatieに対して、Vandalieuは向けたのはその言葉だけだった。
だが、それに対してKatieが覚えたのは背筋が凍るような悪寒だった。
何故なら、Vandalieuはoriginally Hartner Duchyを諦めている……見放していると言ってもいい。だから、彼が自分からHartner Duke 家やその領地に何かすることはない。
害を与える事もない。その点では安心してもいいかもしれないが……同時に、救いもしない。
もしKatieの父であるLucasや、叔父であるBeltonが崖から落ちかけているところにVandalieuが通りかかったとしても、彼は何もしない。
だから、VandalieuはKatieの頼みに簡単にnodことができるのだ。何もするつもりが無いのだから、当然だ。
そして、言った通り待つだろう。十年でも百年でも千年でも、永遠に。
「あ、あのっ! 必ず、必ず父達を説得しますっ! どうしてもダメなら、私がDuke 家を乗っ取って謝罪と賠償を行います! だから――」
「落ち着いてください、Katie -san……でいいですよね? Katie -sanの人格と行動には、好感を覚えています。Hartner Duke 家はともかく、あなた個人は応援したいとも思っています」
父であるLucas Hartnerを排除ではなく、説得するというKatieの考えにVandalieuは好感を覚えていた。
bloodと愛情で繋がっているfamilyを捨てられない。それは当然だとVandalieuは考えている。
bloodと愛情で繋がっているfamilyを簡単に捨て、裏切る事ができる者をVandalieuは信じない。いつ自分が裏切られるか分からないからだ。そんな者を信じるには、殺して死者にする以外にない。
「だから、あなたが『説得』するのを応援しましょう。……基本的には応援するだけですが。
Lucas Hartnerが父親として不適格で、だけど父親以外のfamilyを助けたいから来た、という訳ではないのでしょう?」
「もちろんよ。父-sanは私を愛してくれている。kaa-sanも。叔父-sanは……ちょっと良く分からないけど」
「まあ、叔父-sanは別にどうでもいいのではないでしょうか」
「ええ、まあ……そうね」
Katieの父であるLucasと、彼の腹違いの弟であるBeltonは数年前にHartner Duke 家のSuccessor争いをしており、当時はお互いに陰謀を企み合う関係だった。
Lucasに公peerageを譲った今も、自分の息子を次代のDukeにするために色々と企んでいるはずだ。
Katieとの会談はお互いに納得できる、実のあるものになりそうだった。
「それはともかく、Rokudou Hijiriとその部下について何か知りませんか? このworldにreincarnationできなかったのなら、それでいいのですが」
「Rokudou Hijiri……? いえ、『Origin』で死んだのは聞いたけれど、その後は何も言っていなかった。だから魂が傷つきすぎたかどうかして、reincarnationする事ができなくなったのか、RodcorteはRokudouをreincarnationさせないつもりなのかと……」
だが、話題がRokudou Hijiriの事に及ぶと、途端にきな臭くなった。
「それはおかしいですね」
Rokudou Hijiriの魂は、傷ついていない。Vandalieuは魂を食らおうとしたが、失敗してしまったからだ。無傷ではないかもしれないが、reincarnationできないような傷……人格やMemoryに大きなimpactが出るには程遠いはずだ。
それよりおかしいのが、KatieにRokudouの処遇についてはっきりと教えない事だ。Rodcorteが彼をreincarnationさせないつもりなら……何らかの形で手元に置くなり、監視するなり、どうにかするのならRokudouの犠牲者の一人でもあるKatieに教えない理由はない。
「Rokudouがこのworldにreincarnationするか否かは、既にこのworldで生きているあなたにとって他人事ではありません。奴がreincarnationしてDeath-Attribute MagicでHartner Duchyに甚大な被害を与えるかもしれない。
その可能性が無いのなら、はっきりとそう伝えるでしょう。Kanakoから聞いたAran達の性格なら、そうするはず」
VandalieuはRodcorteのFamiliar SpiritとなっているAranや泉、そしてKouyaと親しかったわけではないが、Kanako達からどんな-sama子だったのかは聞いている。
彼らはKanakoや今は亡きMurakamiのように、一度裏切っている仲間には冷たかったが、Asagi達には好意的でVandalieuと戦わないよう誘導しようとしていた。
MurakamiはAran達を殺した張本人であるし、彼と組んでいた当時のKanako達も距離を置かれるのは、Vandalieuも分かる。
しかし、KatieはAran達を裏切っていない。彼らの感覚では仲間のままであるはずだ。Aran達ならRokudouの処遇について、仲間である彼女に伝えようとするはずだ。
「じゃあ、私の口からあなたに情報が伝わる事を恐れたRodcorteが、口止めしたとか……Rokudouに注意を向けさせ続けるために」
「その可能性もありますね。実際、俺達は警戒して情報を集めていますし」
Rokudou HijiriにVandalieu達の注意を向けさせ、その間に何かを企んでいる。それは、Vandalieu達からすれば十分考えられる事だ。RodcorteのminionsとなるReincarnatorはRokudouとその部下以外はAsagi達ぐらいだが、『God of Law and Life』AldaとそのSubordinate God達が選んだHero Candidateを使っている可能性もある。
……RodcorteとAldaが会談している-sama子を見ていれば、そのひび割れだらけの協力関係から、その可能性も低そうだと思ったかもしれないが。
「しかし、最悪の可能性を想定するべきだと俺は思います」
「それって……まさかRodcorteがRokudouをreincarnationさせたって事!?」
そんなBAKANAと、Katieは驚いた。Death-Attribute MageであるVandalieuを葬るために、Death-Attribute Mageとなって『Origin』に致命的な被害を出しかけたというRokudou Hijiriを送り込んでどうするのか。
worldを支配しようとするGreat Demon Kingを倒すためにworldごと滅ぼすような事は、対応手段として破綻しているとしか思えない。
「Rokudouが俺と同じように魂を砕いたり、喰らったりして滅ぼす事ができるかはわかりません。もしできなかったとしたら、Rodcorteとしてはそれで問題ないのかもしれません。
同じattributeのmagicが使えるからといって、同じことができるとは限りませんし」
理論上は、同じattribute magicが使えるなら同じことが可能だ。しかし、個人ごとに違いがあるため現実ではそうとは限らない。実際、RokudouはVandalieuや冥のように霊を魅了して操る事はできなかった。
だからVandalieuは、実はRokudouは魂を砕く事ができなかったため、Rodcorteは戦力として利用する事にしたのかもしれないと考えた。
「でも、それで大勢の人が死んだら――」
「worldが存続……このworldがAldaやRodcorteにとって望ましい形で存続するなら、人が大勢死んでも百年後、千年後には数も戻るだろうから問題ない。そう考えているのかもしれませんよ。
もしくは、俺に与するHumanはHumanではないと思っているのかも」
Vandalieuがそう言うと、Katieは絶句してしまった。
「じゃあ、Aran達がRokudouの事を私に教えなかったのは……!」
「いえ、それはAran達なりにあなたに対するmessageだったのかもしれませんよ」
真っ青になって信頼していた仲間に見捨てられたとshockを受けるKatieに、Vandalieuはそう言って落ち着くよう宥めた。
「Familiar Spiritは仕える神に逆らえないそうですから、RodcorteにRokudouに関する情報を流すなと命じられたらAran達は何も言えなくなります。
でも、Rokudouの処遇について何も言わないのは不自然ですから、Rodcorteに上手く誤魔化すように言われたけれど故意に何も言わなかったことで、貴女に気が付いてほしかったのかもしれません」
実際にRodcorteとAran達の間にどんなやり取りがあったのかは分からないが、そんなところではないだろうかとVandalieuは思った。
Aran達が『RodcorteはRokudouをreincarnationさせずに、sealedする事にしたらしい』とKatieに偽情報を伝えていたら彼女は信じただろう。そして、それを彼女から聞かされていた自分も完全には信じなかっただろうが、警戒を緩めたかもしれない。
そんな簡単な偽装工作をしなかったのだから、それがAran達のmessageだったと考えられる。
(俺は、何故Aran達を弁護しているのでしょうか?)
そう思わないでもなかったが。
(……まあ、Katieに『応援します』といったばかりですし、彼女がpsychological shockを受けて落ち込んでfamilyへの説得にimpactが出るかもしれませんし)
そうVandalieuがSelf正当化を済ませた頃には、Katieは立ち直っていた。
「たしかに、そうかもしれない。でも、これからどうすれば……」
「まあ、俺としてはRokudouがreincarnationしてくる可能性が高くなったので、引き続き警戒しますが、新しくすることは……特にないですね」
Adventurer’s Guildのnet workを利用した情報収集や、Vidal Magic EmpireやAlcrem Duchy内、Orbaumに攻撃を受けないように警戒している。
これ以上の警戒は難しい。
Amid Empireがある Bahn Gaia continentの西側の警戒は、Dark Elfが非常用に維持している集落やSchneider達が頼りだが……別にVandalieu達は『Lambda』world全体の守護者ではない。Amid Empireで大きな被害が出ても、それがSchneiderの関係者でもなければ気にもしないだろう。
Amid Empireの安全を守るのはAmid Empireを治める政府の義務であり、Vandalieuには何の関係もない事である。
それは同盟を結んでいないHartner Duchyにも言える事だが……応援すると言ったばかりなので、何もしないのは心苦しいと思ったVandalieuは、仲間達の意見を求めた。
「どうしたらいいと思います?」
『Goblin通信機を渡してはどうでしょう? または、何人か連絡用のGhostをつけるとか。そうすれば、緊急事態でもすぐ連絡を取る事ができると思います』
Vandalieuが呼びかけると、Princess Leviaが現れそう提案した。
「っ!?」
太腿の半ばから先の無い、炎を纏っているかのような褐色の肌をしたGiant raceの美女の出現に驚くKatieに、Princess Leviaは微笑みかけた。
『初めまして。私の事は分かるかしら?』
「は、はい。Princess Levia -sama、ですよね?」
【Urðr】で彼女が火炙りにされた過去の映像を見ていたKatieは、その迫力にbloodの気が引くのを感じていた。
Killing Intentや怒気は感じないが、ただただ圧倒的な力の差を……Manaを感じる。Vandalieuの時は差が圧倒的過ぎて気づくことができないのだが……EleonoraやBellmond、Eisenと同じ、圧倒的強者だとKatieは認識した。
『そう……私も陛下と同じで、貴女の事を応援しているわ。頑張ってね』
紅い炎に黒を混ぜたPrincess Leviaは、そうKatieを激励した。その口調はとても穏やかで、浮かべたSmiling Faceには親しみさえ込められているように感じられた。しかし、細められた瞳の奥には何かが燃え盛っているようにKatieには思えた。
「は、はい。頑張ります」
紙のように白い顔をしているKatieに渡すためのGoblin通信機……Goblinの干し首を利用したmagic itemをshadowから取り出しながら、Vandalieuは彼女が焦って性急すぎる手段を取らないように言葉をかけた。
「大丈夫ですよ。何年でも、何十年でも待ちますし、もし仮に説得が失敗してもあなたやあなたのbrothers sistersの責任を問うつもりはありませんから」
そう保証したつもりだったが、Katieは「説得できなければ、両親の命はない」と暗に言われたと解釈して慌てて頷きながら、「頑張ります!」と返事をした。
こうしてVandalieuとKatie・Hartnerの間にhotlineが置かれる事になったのだった。