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Chapter 320: 学校生活の陰で蠢く者達

 VandalieuEndurance向上訓練を受けて(?)いる頃、Pauvinaは打たれていた。

「たあぁぁ!」

 classmateが振るった木に何重にも布を巻いた、訓練用のMacePauvinaの構える盾にぶつかった。


「えいっ」

「あああああああぁ!?」

 だが、次の瞬間Pauvinaが盾をthrust出したため、そのclassmateは後ろに吹っ飛び転倒してしまった。


「勢いは良いけど、もっと体勢をしっかりしないとダメだよ。隙も多いし。次!」

「は、はい!」

 今度は先を丸めた木製の槍を持った生徒がPauvinaにかかっていく。彼はthrustを素早く繰り出すが、全てPauvinaの盾によって防がれてしまう。


「ならっ!」

 Pauvinaの顔に向かって素早く、しかし軽いthrustを出し、彼女が顔を守るために盾を上げた次の瞬間、彼女の脚に向かって槍をthrust出す。

 それなりに重そうな音を立てて、槍はPauvinaの足の甲に当たった。


「やったわばっ!?」

 しかし、次の瞬間Pauvinaの盾の一振りで吹っ飛んだ。

「いいよっ、あたしみたいに体格差のある相手には、足を狙うのは有効だから! でも、足の甲じゃなくて指を狙うべきだったと思う! とっさに槍で防御したのは凄く良い!」


「は、はひっ」

 よろよろと起き上がるSpear Userの生徒。そして、彼の代わりに木製の剣と盾を構えた女子生徒が前に出て、Pauvinaの相手をしに向かう。

 生徒同士のはずなのに、まるで教官と生徒のようだ。


「……教官が一人増えたおかげで、訓練が楽になったな」

「俺達、彼女から授業料を取っていいんだろうか?」

 そして、本来Pauvinaに訓練を施す教官達は、別の生徒のgroupに訓練を施していた。


 Pauvina達の教室、新入生の中でも受験でtop classの成績を修めた生徒達でも、最初に受ける訓練はやはり基礎Enduranceを伸ばす事を目的とした訓練だ。

 levelが上がればEnduranceも増える。しかし、やはり素のbody part Abilityが高い場合は、低い場合よりAbility Valuesの伸びが良い。


 同じ【Apprentice WarriorJob100level同士でも、"muscle and bones"逞しいmachoとあばらが浮いて見えるガリガリで力比べをすれば、machoの方が勝率は高い。


 それに、こうした訓練で各生徒の実力をInstructor、そして生徒同士に明らかにするのも目的の一つだ。実習でpartyを組む相手を選ぶ時や、その後の実習でのtacticsの参考に役立てるのである。


 しかしVandalieuほどではないがPauvinaは他の生徒と力量に差がありすぎる。そして、彼女はVandalieuほど手加減が上手くない。

 殺さない自信はあるが、加減を間違えてboneを何本かへし折ってしまうかもしれない。特に、彼女の得意な得物は棍棒だ。頭に当たって頭蓋boneが折れたら大事である。


 ……当然学校側も訓練中の事故に備えてHealing Mageが常駐しているし、そもそも生徒達もDefense Equipmentをつけている。さらに、Pauvinaの教室の生徒達は既にJob changeを二回以上経験している者ばかりだ。

 十代前半の少年Shoujoだが、実際にはそこらのGuardより強い者ばかりである。当然そのBodyは一般人よりもずっと強靭で打たれ強い。


 しかしPauvinaからするとそんな生徒達もweak部類に入る。そのため、彼女はWeapon Equipmentを選ばず【Shield Technique】のみで、攻撃もMartial Artsを使用せず盾を軽くぶつけるだけに済ませる事にした。

 それでも彼女が生徒から教官役になったのは、妥当な流れと言えるだろう。


「気まずいが、仕方ないだろう。彼女は生徒なんだし」

「それはそうだが……俺達は彼女に何か教えられるのか? あの動きを見ろ、明らかに俺達より強いぞ」

「たしかに。それに、疲れを見せるどころか、息を乱しもしない……これは十年どころか、百年……いや、千年に一人のGeniusかもな」


 Vandalieuと違い教官たちまで生徒に混じって挑戦していないのは、Pauvinaの教室の訓練を担当する教官達の技量が、Vandalieuの教室の訓練を担当していた教官達よりも高いからだ。


 通常のAdventurer's School校の教官は、adventurerの中で最も数が多いDClass adventurerの内、普段の素行や人格の良い者が再就職する事が多い。

 しかし、ここはHero Preparatory School。卒業生はただadventurerとして生き延びる事だけではなく、到達するのに一定以上のaptitudeか人並外れた努力が必要とされるCClass adventurer以上になる事を期待されている。


 そのため、Hero Preparatory Schoolに教官として採用されるのは基本的にCClass以上のadventurerか、相当する実力があると評価された元KnightMage guildMage等だ。

 その中でもPauvinaのような優秀な成績で入学してきた生徒を担当する教官には、元BClass adventurerが少なくない。


 そのため、Pauvinaの動きから彼女の実力をある程度察し、彼女を生徒の側にしたままでは不味いと迅速に判断する事ができたのだ。


「ふ、ふふふ、さすがPauvina -samaだ」

 ちなみに、同じ教室に所属するReinhardtは既に息も絶え絶えのconditionで地面を這っていた。




 新入生に、教官よりも強い生徒が二人いる。そのnewsは昼休みには学校中に知れ渡った。「教官より強い生徒」はEven now時折存在していた。しかし、そのほとんどは在学中に成長して教官を追い越した生徒であり、入学したばかりなのに教官より強い生徒は、数えるほどしかない。


 そして複数の教官と生徒達に代わる代わる模擬戦を行い、その全員のEnduranceが尽きるまで無傷で立ち続けたVandalieuや、教官が戦う前に実力を認めて訓練を受けるのではなく課す側にしたPauvinaのような生徒は初めてだった。


「元AClass adventurerInstructorとしては、生徒に負けた元CClassや元BClassの教官達の事を『我が校の面汚しめ』と罵るべきだろうか?」

 報告をするため校長室に赴いたRandolphに、腕を組んだMeorilithがそう尋ねた。


「思ってもない事を聞くな。Pauvinaの方はともかく、Vandalieuの方は単に実力の一端を見せただけだ」

「たしかに。Vandalieuの方はAlcrem Duchyで起きたmonstersrunawayで活躍したと聞いていたが、お前が警戒する程だ。それ以上の何かがあって当然だったな。

 しかし、今の状況が続くのは良くないな」


 優秀な生徒が活躍するのは、校長としても喜ばしい。しかし、学校で雇っている教官がweakなんて噂が流れるのはよろしくない。Meorilithにとっても、彼らにとっても。

curriculumを練り直すか。当分は自主学習という扱いにして、訓練を受けたい生徒は自由に受けさせるが、問題の二人には事情を話して配慮してもらう」


「つまり、VandalieuPauvinaが他の生徒の訓練を見ても、それは生徒同士切磋琢磨しているだけだという体裁を整える訳か。……これはこれで教育者としてどうなんだろうな?」

「情けないのは分かっているさ。だが、どうしようもない。より腕利きの教官が地面から生えてきでもしない限り」


 教官達の水準を、これ以上高めるのは難しい。生徒に教える教官である以上、純粋な戦闘Abilityよりも指導力を優先しなければならないからだ。それに、上Class adventurerの中にはadventurerとして現役から一線を退いても、Nobleの指南役や護衛、中にはNobleと婚姻関係を結ぶ者や、商売を始める者もいる。そのため、後進の指導をすることに価値を見出す者でなければ、Hero Preparatory Schoolに就職しないのだ。


 それに、Hero Preparatory Schoolの教官の給料は通常のAdventurer's School校の教員よりは高いが、それでも現役のCClass adventurerの平均収入よりは安いのだ。


「前歴不明の凄腕Instructorは、二人の相手をしてはくれないのだろう?」

「勘弁してくれ」

 Meorilithの言葉に、Dandolipの偽名で働いているRandolphは首を横に振った。


Pauvinaの方は何とかなる。しかしVandalieuの方は底が知れない。ひ弱そうな見た目をしているが、中身はmonsterだ」

 普段と訓練での-sama子から二人の実力をconjectureしたRandolphは、そう判断した。Pauvinaの方は、まだ彼からすれば常識の範囲内だ。自分自身が本気で相手をすれば、一対一なら勝てる。模擬戦で、教官として教えられることもあるだろう。


 しかしVandalieuの方は予想もできない。

「そんなにか。……例えるとしたら?」

「恐ろしく得体の知れない、演技力だけが下手糞なmonsterが、玩具のWeapon Equipmentを持ってHumanのふりをしてごっこ遊びに興じている。そんな感じだ」


「……生徒の相手をさせていいのか、不安になる評価だな。同じ教室の生徒達の-sama子はどうだ?」

 あまりに恐れられているようなら、Vandalieuだけ別の教室、もしくはせめて上の学年にねじ込むべきかもしれない。そう考えて尋ねたMeorilithだが、Randolphの答えは意外なものだった。


「訓練が終わる頃には、俺以外の教官も含めて全員尊敬の眼差しを向けていた。奴を恐れている者は一人もいない」

「お前の評価からは、想像できない態度だな」


「生徒や他の教官の眼には、奴はただの『Genius』に見えているはずだ。教官でも相手にならない生徒は、奴が初めてって訳じゃないだろう?

 それに、Vandalieuの場合は前reputationがある。腕利きのTamerで、Alcrem DuchyDungeonrunawayから救った一人で、母親はEvil God (P)sealedしたHeroだ。それに、Kanako senseiが認めている奴だ。普通の新入生とは違う」


 普通の新入生達はHero Preparatory Schoolに入学する以前は優秀であっても、Heroではない。しかしVandalieuHeroになってからHero Preparatory Schoolに入学してきた生徒だ。

 たしかに、それを考えれば同じ教室の生徒達が自分達とは違う尺度で彼を測るのも当然かと、Meorilithは思った。


「なるほど……Kanako sensei云々はともかく、お前の意見は分かった」

「それにPauvinaもそうだったらしいが、奴は教えるのが上手かった。ただ倒すのではなく、相手を慰めてからどうすればいいのか助言を与えている。……それはそれで教官達のprideは傷ついただろうが」


「……今すぐ教官として雇いたいぐらいだな」

「ぜひ考え直してくれ。逃げ出さなきゃならなくなる」

「それはそれとして一週間後、いや六日後の実習はどうするかだな。彼だと、我が校が管理するDungeonでは、あっさり攻略してしまう気がするのだが」


 Hero Preparatory Schoolが実習用に所有し管理しているDungeonは、生徒達にとっては上層階ならともかく下層以下は攻略の難しいDungeonだ。しかしVandalieuPauvinaなら野に散策に行くような感覚で攻略しかねない。


「それは、とりあえずはないだろう」

 しかしRandolphはそう言い切った。なぜなら――


「新入生が受ける一回目の実習は、教官の監視下で三層まで下りて、monstersDismantlingDungeonでの野営や休憩の仕方を体験するだけだからな。

 今のところあいつらは授業や訓練の枠からはみ出していない。なら、四層以下に降りることはないだろう」




 その頃、昼休みになったのでPauvinaVandalieuを片手に持ってAlexに昨日のアレ……こちらをしばらく凝視した後何も言わず去ったのは、なんだったのか尋ねに向かった。

 遭遇したAlexはやはり冷や汗をかきながら、もっともらしい言い訳を口にした。


「噂の新入生を見に行ったら、-kunの立ち振る舞いから予想以上の実力だと分かって、気圧されてしまったんだよ。挙動不審に見えたのなら、ごめん。そんなつもりはなかったんだ」


 それをPauvinaの腕の中で聞いていたVandalieuは、怪しいと思った。春なのに冷や汗をかくなど、ひどく動揺した態度。こちらからできるだけ視線を逸らそうとしているし、声も上ずっている。

 周りには彼のparty memberの内、二人がこちらを唖然とした-sama子で見上げているのに。


 黒髪の少年が二槍流のRobinで、栗色の髪のHalf-ElfShoujoMageAnnabelだと、Chipurasが耳打ちして教えた。


「そうだったんだ。変な-sama子だったから驚いちゃった」

「ああ、本当にごめん」

「うん、それならいいよ。じゃあね」


 Alexの言い訳が普通で、更にPauvinaも見られただけで特に何もされていないため、VandalieuAlexの二度目の接触も何事もなく終わった。


「ところで、やはり俺に視線を向けようともしませんでしたね。やはりMagic Eye系のUnique skillを所有していて、俺に【Root】で返されるのを警戒していたのでしょうか? だとしたら、何者かから情報を得ている事になりますが」

 のっしのっしと軽快な足取りで廊下を進むPauvinaの腕の中で、Vandalieuはそう言って首を逆方向に傾げる。


「そう言えばそうだったね。うーん、でもそれってVanの事に気が付いていなかったからじゃないかな?」

「それはないでしょう。こうして正面から訪ねて行ったし、話している間俺はずっと彼を睨んでいましたし」

「……人形か何かに見えちゃったんじゃないかなぁ?」


 Pauvinaにそう言われたVandalieuは、自分が客観的にどう見えるか顧みた。そして、身長三meterGiant Shoujoの腕の中で、誰かに持たれている時の癖でwhole bodyから力を抜いてぐったりとして無言のままの自分の姿を想像する。


「……Self introductionくらいはするべきだったかもしれません」

 同じ頃、Robinから以前と同じような事を指摘されたAlexは再び頭を抱えていた。




 学校の授業が終わった後、VandalieuElizabeth達を鍛えるため、そして彼女達との友情を育むために学校の外で会って特訓をしませんかと持ち掛けた。

 自分が本気を出せば実習も課題も楽に達成できるが、それではElizabeth達自身のためにならない。そのため、Alexの鼻を明かすには、彼女たち自身の実力を高める必要があると考えたのだ。


「特訓と言ってもどうするの? 私達は学校が管理しているDungeon以外には入れないのよ」

「それに、お嬢-samaにはおmansionに帰ってからも-sama々な予定がございます。あまりEnduranceや時間を使っては、支障が出てしまうのですが」

 Vandalieuが提案する特訓の効果に懐疑的な-sama子のElizabethに、予定を気にするMaheria


「まあまあ、Elizabeth -samaMaheria -chanも、彼の話も聞いてあげようよ。今日の訓練では凄かったみたいだし、ね?」

「噂の『Genius Tamer』の意見に興味がありますし……」

Alexに追いつき、追い越さなければならないのですから、特訓は必要ですよ、Elizabeth -sama!」

「ええ、その通りです! 何せ特訓ですから!」


 逆に、特訓に乗り気なZohnaと男子三人。ちなみに、nameは三人の中でのっぽなSpear UserMact Hamiltonbuckler職がTaurus Zets。眼鏡をかけたMageJozéf Catalonis。それぞれHamilton Baron 家の三男、Zets Baron 家の三男、Catalonis Viscount 家の四男であるそうだ。


「ありがとうございます。senpai方」

 Zohnaはともかく、昨日から言動に関して激しく不安を覚えていたMact達の反応に対して、Vandalieuは意外だなと思うと同時に、三人はもしかしたら良い人なのかもしれないと感じた。


 ただNobleとして生まれた事で受けた教育が原因で平民に対する差別意識が強くなっただけで、根はそう悪くはないのかもしれないと。だとしたら、偶然最初に短所を見聞きする事になっただけで彼らの全てを知った気になるなんて、自分は気づかぬ間に随分とarroganceになっていたようだ。そう反省した。


 ……Mact達の態度がVandalieuに極めて友好的になっているのは、仲間に入ったVandalieuの動向を探り、情報を少しでも得るようにとそれぞれの親から命じられたからなのだが。


「では、特訓の方法を説明します。まずOrbaumの外に出ます。そこに、俺の友人達が生け捕りにしたmonstersを追い立ててくるので、それと戦ってExperience Pointを得るというsimpleな方法です」

 Vandalieuが考えた特訓は、「DungeonDevil Nestsに入れないなら、monstersDungeonDevil Nestsの外に追い立てればいい」という単純なものだった。


 追い立ててきた手頃なmonstersElizabeth達を戦わせて実戦経験を積ませると同時に、彼女達の今の実力を把握して今後の特訓に役立てる事ができる。

 正に一石二鳥。


「なるほど、それなら……でも、そんな事でAlexに追いつけるのかしら」

 しかしElizabeth達は勘違いしてしまった。Vandalieuの友人や仲間があらかじめ『弱らせ』、追い立ててきたmonstersに止めを刺させるだけの特訓だと。


「いいじゃないですか、Elizabeth -sama! 最近levelがなかなか上がらないって悩んでいたし、ここで楽にガツンとExperience Pointを稼いでlevelを上げましょうよ!」

「そうですよ、Elizabeth -sama! せっかく彼がお膳立てをしてくれるのですから!」

 しかしZohna達は乗り気だ。


「お嬢-sama、成長の壁を乗り越えてから技を磨く、という考え方もあるかと思います」

 そしてMaheriaも控えめにそう主張したため、Elizabethは皆に背を押される形で「分かったわ」と特訓を受ける事を了承した。




「うわああああっ!?」

「ちょっ、Taurus -sama、盾職が逃げないでよ!?」

「聞いてないぞ! 数が多いし、全然弱ってないじゃないかぁぁぁ!」

「……弱らせておくなんて言いましたっけ?」


「「「ぶぎゃるおおおおおおおおっ!!」」」


 Vandalieuの友人……Arthur達がDevil Nestsから追い立ててきた豚頭人体のmonstersOrc達はElizabeth達を元気に追いかけ回していた。

「ふむ……手頃な群れだと思ったのですが、彼女達には荷が重かったでしょうか?」

「なあに、驚いて逃げているだけじゃろう。落ち着けば持ち直すはずじゃ」

「そうですよね。ただのOrcで、数もたった七匹だけ。Vandalieu -sanを抜いても、一匹多いだけですし」


 Arthur達はVandalieuから連絡を受け、手近なDevil NestsからOrcを七匹追い詰め、Gufadgarnの【Teleportation Gate】をくぐらせた。そして自分達も【Teleportation Gate】でVandalieu達の近くの物陰にTeleportationし、そのままOrc達が彼らに向かっていくよう誘導したのである。


 Elizabeth達からすると、物陰から突然Orcの大群が現れ襲い掛かってきたという非常事態なので、動揺して当然だ。

 しかしArthur達からするとRank3のただのOrcの集団である。それに慌てるElizabeth達を、微笑ましいものを見るような目で見守っても、助けが必要だとは思わない。


Orcだったのが悪かったかもしれないわね、年頃の女の子の訓練相手としては、刺激が強すぎたのかもしれないわ」

「あ、そうですね! じゃあ、次の機会があったらOgreを探しましょうか」


 Kariniaと朗らかに会話するMiriamも、だいぶ彼らに染まってきているようだ。


「たしかに、弱らせるとは言っていなかったわね! 【Vine Trap】!」

 しかし、逃げながら呪文を唱えていたElizabethが、Life-Attribute MagicActivate。先頭を走っていたOrcの脚に伸びた草が蛇のように絡まり、「ぶぎゃっ!?」と転倒する。その後ろを走っていたOrc達も巻き込まれて転倒するか、それを避けるために慌てて立ち止まる。


「今のうちに陣形を立て直すわよ! Taurusっ、MactZohnaは前に! ユーゼスとMaheriaは援護! あなたは――」

「まあ、ほどほどに援護するので頑張ってください」

 先ほどまで最後尾を走っていたはずのVandalieuが、いつの間にか自分の横に居た事にElizabethは驚くが、すぐにそんな場合じゃないと意識を戦いへと向けた。


 勘違いと油断が無ければ、さすがにHero Preparatory Schoolに入学して一年以上過ぎているだけあって、TaurusZohnaOrc相手にそう負けはしない。

 ユーゼスが呪文を唱え間違えたり、Mactが【Martial Arts】をActivateしてOrcを倒したが、その隙を別のOrcに突かれて棍棒代わりの丸太で殴られそうになったりしたが。しかしMaheriaが放った矢とVandalieuがぶん投げた小石がそのOrcの肩と目をそれぞれ直撃し、難を逃れる事に成功した。


 どうにかこうにかElizabeth達は勝利した。そして討伐証明部位や素材のDismantling等は、Arthur達も手伝って手早く終わらせ、その日は解散となったのだった。




 その頃、どうしたものかと思い悩む者達がOrbaumには複数いた。


「どうしたものか……」

 その一人が、Draze Rimsand Earlである。でっぷりと太った腹に、豊かな口髭。Nobleというより、悪徳商人と言われた方が納得できる容姿の人物だが、彼がElizabeth Sauronの後ろ盾であり、patronである人物だ。


「まさか、Elizabethの仲間にあのVandalieu Zakkartが入ってしまうとは……何かあれば、儂が責任を取らされかねん。

 それに、もしElizabethを掻っ攫われるようなことになれば……今までの援助が全くの無駄になるではないか。もう少しで、あの小娘を手籠めにできるかもしれないというのに」


 DrazeSauron Duchyから脱出した幼いElizabethの母親を保護し、彼女の後ろ盾になったのは、彼女を傀儡にして自分がSauron Duchyの実権を握れるかもしれない。そんな身の程知らずな妄想を抱いたからだ。

 だが、幼いElizabethSuccessor争いに惨敗。DrazeSuccessor争いに勝利したRudelに彼女を売ろうとしたが、Elizabeth自身がRudelに激しく反発したために頓挫。


 その後、Elizabethとその母親をどう処理したものかと考える頃には、Elizabethは美しく成長していた。まだ十代前半だが、あと五年もあれば見目麗しい美女になるだろう。

 そう思ったDrazeは、彼女を自分の妾にしようと企んだ。無理難題を出して、それを達成できなければ援助を打ち切ると迫ったのも、追い詰めた彼女に「援助を続けてほしかったら……」と迫るつもりだったからだ。


しかしVandalieu Zakkartとその母親の動向を探るために、しばらく協力してほしいとMarshall -donoには言われているし……。母親は押さえているから、Elizabethが逃げ出すことはあるまい。

 だが、念のために母親の見張りを増やすよう命じておこう」


 そう言うと、Drazewineで満たしたglassを呷った。




「どうしたものか……」

 そして、同じ事を言って思い悩んでいる人物がもう一人。


Elected King直属の部隊は、動かすのにElected Kingの許可がいる。しかし、動かしたところで今以上の情報が手に入る見込みもなし

 cursed mansionの浄化を要請したtempleの動きは異-samaに鈍い。反応したのはAlda templeくらいだが……あの生臭共め。全く、神の信徒を名乗るparasitesめが」


 Telkatanis Prime Ministerは自由に動き回るVandalieu達にどう対応するか、難儀していた。会議でpolicyは決まっているが、彼はDolmad Marshall達を信頼していない。

 彼が望むのは、Orbaum Elective Kingdomの秩序が維持される事。そして、より完全な秩序によって国が運営される事だ。


 突然改革を叫びだしたAlcrem Duchyや、恐らくその原因だろうVandalieuは頭痛の種でしかない。問題は、その種が大きすぎて処理できないという事だ。

 敵に回せば秩序を維持するどころではない。下手をするとOrbaumDecayし、各Duchyを纏めていた国の中枢は消滅。Elective Kingdomは元の小国の集まりに戻ってしまうかもしれない。


 そして、自分の地位を盤石にするためには、Zakkart母子対策で後れを取る訳にはいかない。


Adventurer's School校でも、私の息がかかったNobleyoung childは取り入るのに失敗したようだ。こうなれば母親の方を……? それとも、行動を共にしているadventurer達の方に接触するか?

 いっそ、Alcrem Duchyに対する諜報をEnhanced (1)するか?」

 色々と考えるが、答えは出ない。Zakkart親子は今のところOrbaumで大きな事はしていない。だからといって、これからもそうだとは言い切れない。


 既に、Adventurer's School校ではElizabeth Sauronと接触したとの情報が届いている。彼女を利用してSauron Duchyを手に入れようとしているのか、それともより大きな陰謀を企んでいるのかもしれない。


 そう悩むTelkatanisだが、今のところできることは少ない。性急な手に出て、それで逆にZakkart親子を刺激してしまったら、目も当てられない。


 今日も秘策の一つも思いつけず、nightを迎えるのかと思った彼の意識に直接Voice of Godが響いた。


Vandalieu Zakkartをどうにかしたいのか? なら、私と手を組め。私の名は、Rokudou Hijiri-kunの協力が私には必要だ』



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