VandalieuとPauvinaが帰る前に、『cursed mansion』……Silkie Zakkart Mansionの前にAlcrem Duke 家の紋章が刻まれた馬車が止まった。
Couch Drivingや馬車から降りてきたServant達は、誰もいないのに開いた門や立木の奥からこちらを伺う何者かのsignに怯え、戸惑った。しかし乗客からの催促に背中を押され、しぶしぶ彼女が乗る車椅子を押して入り、そして彼女を託して去って行った。
Adventurer's School校から帰ったVandalieuとPauvinaの話を聞いた一同は、驚きの声をあげた。
「もう友達ができたなんて、すごいじゃない! 今日はお祝いね!」
『学校生活が不安だと何度もこぼしていたBocchanが……私は嬉しくて、嬉しくて、顔面が崩れそうです!』
「では、さっそく本国に連絡いたしましょう。そういえばお友達は女の子ですか? その場合はKanakoとZadirisがすぐ教えるようにと言っていたのですが」
ただ、驚いた内容はVandalieuに友達ができた事に対してだったが。
「なあ、おめでたいのは分るけど、そこまで騒がなくてもいいんじゃないかな?」
Vandalieuに義肢を与えられてadventurerとして復帰する事ができたWildcat-species Beast raceのNataniaは、感動に涙ぐんでいるDarciaや、tailを嬉しそうにくねらせるBellmond、そして喜びすぎてSpirit Formの輪郭が崩れているSamにそう尋ねる。
「Natania -san、そんな事はありません。私達が故郷で孤立した生活をしていた時、Miriam -sanという生涯の真友を得た時の喜びは、今でも色褪せる事はありません」
「ええ、あの日を境に私達の人生は大きく変わったのよ」
「学校とは閉じられた小さな社会。そこで光当たる場所から弾きだされた者は、孤独であるというだけで侮蔑される恐ろしい場所と聞いておる。そんな場所で友を得られたのはまさしく僥倖と言うほかあるまい」
しかし、強面の巨漢のSwordsman Arthur、そしてそのImoutoの美女だが目つきが怖いKarinia、そしてDwarfだが痩身で髪の薄いBolzofoyが、友達ができた事の重要性を諭す。
「待ってください! 私達の出会いってそんな劇的なものじゃないですから! ただの新米adventurerだった私が道に迷って、Ogreに殺されそうになったところをArthur -sanに保護されただけ……あれ? 思い返すと結構劇的だったかも? それはともかく、いつの間にか『生涯の真友』って、私達の関係がよりすごい事になっていませんか!?」
「そ、そっか。オレも組んだ仲間に裏切られて四肢を失ったけど、Juliana -sanや師Artisanや皆みたいに本当の仲間ができた時は嬉しかった。その嬉しさと同じなんだよな」
Miriam本人は納得してないようだが、Nataniaは信じ合える仲間ができる事の重要性とその喜びを思い出して、涙ぐみながらtailを揺らしている。
『そうなるとお友達を呼んでのお茶会に、勉強会、tactics会議……ああ、どのroomを使うべきかしら? あのroomは三枚のreliefを嵌めないと出入りできないし、あのroomは床のタイルに重しを乗せないと壁が迫ってくるし……それよりもふさわしい茶器はまだ割れていないかしら?』
『庭でgarden partyも良いと思うよぅ?』
そわそわと、約百年ぶりに本来の意味で客を歓迎しようと浮足立つSilkie。彼女に負けまいと、庭でのpartyを提案するEisen。その足下では「ギシャー」「キュィー」と小さくなっているPeteとPainが飛んだり跳ねたりしている。
『とりあえず、今日の晩御飯はどうしましょうか?』
『下拵えはお手伝いできますよ!』
「ありがとう、皆。今日はみんなでご馳走を作りましょう」
そしてVandalieuも、今年十三になるのに友達ができた事を盛大に祝われることに抵抗や疑問を覚えてはいなかった。
今ならVidal Magic EmpireのChurch of Vida長、Nuazaに『今日という日を国家的な祭日にいたしましょう!』と言われても頷いたかもしれない。それぐらい彼にとって、「学校で友達ができた」事は嬉しい出来事だった。
しかし、学校で問題が起きていない訳ではなかった。
「実はそのできた友達が、Elizabeth SauronというSauron Dukeの末のImoutoだったのです」
「まあ、そうなの。世の中って狭いのね」
「本物のOhime-samaという事ですね。これはますますKanako達に連絡しなければ……」
衝撃的なはずの新情報を知っても、穏やかな-sama子のDarciaやBellmond達。Arthur達はSauron Dukeの名に驚いているが、それだけだ。
「そしてAlexというPauvinaをじーっと見つめてくるだけで、何もしない男子生徒がいまして」
「本当なの!? Pauvina -chan、怖くなかった? 平気?」
「うん、怖くなかったけどちょっと気持ち悪かった」
途端に真剣な顔でPauvinaを心配しだすDarcia。彼女達の中で、Vandalieuの友達がSauron Duke 家のbloodを引く事よりも、怪しげな生徒にPauvinaがちょっかいをかけられたことの方が重大な出来事らしい。
「大丈夫? 辛かったらkaa-sanにいつでも言ってね、学校に抗議しに行くから! Vandalieuに聞いたんだけど、『Monster’s Parent』って、そういう事を頻繁にしてもいい人の事を言うみたいだし」
「kaa-san、俺の話を間違えて覚えていませんか?」
「大丈夫! 明日、あたしが直接話を聞きに行くから! Vanも連れていくけど」
「なるほど。師Artisanを放っておくと、AlexってBocchanに何をするか分からないから、目の見える場所におくと。さすがPauvinaの姉-sanだ」
「Simon、自覚があるので今回は言い訳しませんが、Alexという生徒に俺は何もしませんよ。今のところですが」
「ん? そこまで言うってことは、何か訳でもあるんで?」
「ええ。でも、続きは玄関ホールではなくlivingでしましょうか」
「そうだ、ついさっきValdiria -sanが来たの。『義手』の調整をしてくれないかしら?」
「そうですね。ちょうど彼女に聞きたいこともありますし」
賑やかに話しながらmansionのlivingに向かう。そこに『Alcrem Five Knights』の一人、『Thousand BladesのKnight』Valdiriaがいた。
彼女はSauron Duchyの旧Scylla Autonomous Territory奪還tacticsにおいて、両腕を失う重傷を負ったために優れた義肢producerであるVandalieuの元で治療に専念するためにやってきたのだ。
「お久しぶり、というべきでしょうか?」
しかし、彼女には無いはずの両腕があった。
「俺とはDemon King Familiarで会っていますからね」
しかし、Vandalieuも含めて誰もその事を驚かない。なぜなら、Valdiriaが両腕を失ったというのは茶番だったからである。
accurateには、実際に両腕を切断されていた。しかし、その後治療のために後方に運ばれた後すぐに特製のBlood potionで腕をくっつけている。ただ、表向きには両腕を失ったという事にし続けて、Orbaumまで馬車で旅してきたのだ。
ちなみに、戦場にはVandalieuの一番pupils、Lucilianoが制作した彼女の腕そっくりに偽装した偽物を転がしておいたので偽装工作も完璧である。
おかげで奪還tacticsを主導したSauron Duke 家にValdiriaの主-kunであるAlcrem Dukeは大きな貸しを作る事ができ、今後同じようなtacticsが提案されても戦力を出さずに済むだろう。
「話は聞きましたが、Elizabeth Sauronか。もしかしたら、我々Alcrem DuchyのNobleは彼女に嫌われているかもしれない」
「Sauron Duke 家のSuccessor争いに、Alcrem Dukeも噛んでいたの?」
「いえ、噛んでいたというか……当時の我々に選り好みしている余裕は無かったのです、Darciaお姉さま」
Vandalieuがまだ二ageになる前の、今から十年と少々昔。Sauron DuchyはAmid Empireの攻勢を防ぎきれず、Empireに占領された。その際、Elizabethの父親である先代Sauron DukeとSuccessorだったDukeの長男も命を落としている。
その状況で当時既にAlcrem公peerageについていたTakkard・Alcremは、大いに慌てた。なぜなら、Sauron DuchyがAmid Empireに占領されたため、自領が敵国とのForefrontの一つとなってしまったからだ。
もちろん、国境沿いに砦などの軍事拠点はある。だが、彼がDukeになる以前からAlcrem Duchyでは経済に力を入れており、軍事力は二の次にされてきた。
Takkardも口では「常に有事に備えている」と言ってきたが、Amid Empire軍相手に防衛戦を展開して長期間持ち堪える自信は無かった。
それは他のDukeやCenterのNoble達も分かっていたので、Alcrem DuchyやHartner Duchyを援助し、軍を派遣してAmid Empireのそれ以上の侵略を許さないよう手を打った。しかし、TakkardとしてはSauron DuchyがEmpireの手から戻ってこない限り安心はできない。
そのためSauron Duchy奪還の旗印、そして奪還後の復興の総責任者になる人物が早く決まる事をTakkardは望んでいたのだ。
だから現DukeであるRudel・SauronがSuccessor争いに勝つのを止めなかった。当時既に成人しており、bloodlineも良く、それなりに政治や軍事の知識もある彼がDukeになる事に異論がなかったからだ。
当時まだ成人していなかったRudelの弟や、幼く知名度も低い末っ子のElizabeth。そしてSauron Dukeの隠し子であると主張しているResistance organizationのleaderより、stability感があると考えたからだ。
「とは言っても、積極的にRudel・Sauron Dukeの後押しや他のSuccessor Candidateの妨害をした訳ではありませんが。成り行きに任せただけで」
以上の事を説明した後、Valdiriaはそう言って話をまとめた。
「成り行きに? 重大な問題だったんじゃないの?」
「だからです、お姉さま。既にそれぞれのSuccessor CandidateごとにNobleが後ろ盾になっていたため、我々が介入する事でより事態が混迷化し、Successorが決まるまで時間がかかると判断しました」
「なるほど……それにしても、お姉さまって呼ばれるのにはまだ慣れないわね。Valdiria -sanの方が年上だからかしら」
「気にしないでください、お姉さま! 私はDarciaお姉さまの事を心から尊敬しております!」
キラキラと瞳を輝かせてDarciaを見上げるValdiria。彼女が一度は両腕を切断する事を了承したのは、こうしてDarciaと一つ屋根の下で暮らすことができるからでもあった。
「そうすると、Elizabeth自身については何も知らないのですか?」
そう言いながら、VandalieuはValdiriaがつける『義手』を、彼女の腕のSizeに合わせて細かい調整を行っていた。
『義手』といっても、SimonやNataniaの義手と同じなのはappearanceだけ。Valdiriaは腕にしばらくこの偽の義手……小手と手袋を嵌めて生活するのである。
両腕を失ったが、優れた義手のお陰で生活に支障はない。このままDarciaとVandalieuの元でリハビリしながら現場に戻れるよう努力している。……外に対しては、そう説明して。
Alcrem DukeはValdiriaを預ける事でVandalieu達との交流を強め、同時に他のNobleからの干渉がないか見張らせる事ができるという計算もしていただろう。……Darciaに心酔している彼女からの要望、というのが一番だろうが。
「はい、何も知らないに等しいかと。Rudelもですが、Elizabeth Sauronは母親と共にCenterに保護されていたので、知り合う機会もなく、それに――」
「諜報員や工作員を近くに潜り込ませる程、重要度は高くないと判断したと」
「その通りです。同じSauron Duchy出身の者なら、もっと知っているかもしれませんが……age的にあまり期待できないかと」
Elizabethの存在は、Alcrem Dukeにとってはそれほど重要ではなかったようだ。
そしてSauron Duchy出身者にとっても、Elizabethはあまり知られていない存在だ。Amid EmpireにSauron Duchyが占領されたとき、彼女はまだchildというより赤子に近いageだった。partyへの出席どころか、親しい友人すらまだいなかった。
父親である前Dukeに認知されたのも、Amid Empireの攻勢が始まる三日前だ。Sauron Duchyの平民の中には、彼女の存在を知らない者も少なくないだろう。
この場にいない元Sauron DuchyのHeroだったGeorge・Bearheartや、その娘で今はSuccubusに変化しているIrisも、Elizabethについてはnameを憶えているかどうかという程度だろう。
Elizabethの母の父、つまり祖父はKnightだったようだから同じKnightのGeorgeなら覚えているかもしれないが、覚えていても意味のある情報が得られるかは不明だ。
ただ、Valdiriaの口から話を聞いた限りだと、彼女からAlcrem Duke 家が敵視されているとは考え難い。
しかし、これはAlcrem Duke 家側の事情を聞いて考えたconjectureだ。Elizabethには別の意見があるかもしれないし、思わぬところで恨みを買っているかもしれない。彼女の後ろ盾になっているNobleが、良からぬことを吹き込んでいる可能性もある。
「今度、彼女がAlcrem Duke 家をどう思っているか聞いてみますね。maybe、大丈夫だと思いますけど」
「そう願いたいものですが、彼女の事を気に入ったようですね」
「ええ、教室の片隅で一人昼食をとっていた俺を仲間に誘ってくれたというのもありますが、良い事を言っていました。Zohnaも、新入りの俺が孤立しないよう度々話題を振ってくれる、signりのできる良い人です」
Vandalieuは取り巻きの男子達が提案した、校則にも違反する手段をElizabethが却下する時に言った「手段は選ぶもの」という言葉に、好感を抱いていた。そんな彼女が仲間だと言ってくれたから、素直に仲間になったというのもある。
……実際には、Vandalieuの勘違いなのだが。Zohnaについても、彼女がVandalieuに話しかけていたのは、彼女自身が覚えた驚きと困惑を解消し、好奇心を満足させるためである。なので、signりによるものとは言い難い。
「師Artisanはそう言ってますが、Gufadgarnの姉-sanはどう見ます?」
Vandalieuの人を見る目が節穴である事を先人から聞いて知っているSimonがそう尋ねると、Gufadgarnはspaceの裂け目から顔を出した。
「偉大なるVandalieuの言葉通り、誇り高いHumanに見えた。彼女に仕えているMaheriaというShoujoもできた人物であると共感を覚えた。ZohnaというDwarfのShoujoは私にはよく分からない。
三人の少年は言動から考えるに、見込みは薄いかと」
しかし、Gufadgarnの人物眼も大したものではない。彼女は人と価値観が全く異なるEvil God (M)だ。そして、彼女にとってworldの中心はVandalieuである。彼が白と定義したものが白であり、黒と定義したものが黒だ。
……そんな彼女に見込みは薄いと言われる取り巻きの男子三人の残念さは、悪い意味で凄まじい。
『Elizabeth嬢は、成績優秀なようですが、学校内ではVandalieu -sama以外の五人の取り巻きの他は、親しい友人はいないようです。一見、学校の有Adeptに見えますが、実際には遠巻きにされているといったようです。
取り巻きのHumanのShoujo Maheriaは、彼女の母方の実家に仕えていた侍女の娘。DwarfのShoujo Zohnaは、学園に入ってから仲間に加わったようです。
そして残りの三人は、Elizabeth嬢の後ろ盾になっているNobleと縁のあるNoble 家のyoung childだそうです』
そのGufadgarnに続ける形で、情報収集を行ったChipurasからの報告になるほどとnod一同。
「しかし、そうなると男子三人とやらが気になります。あの学校に入れるという事は、ただのidiotではないはず」
「Chipuras -san、あのAlexって人の事は何か知ってる?」
Valdiriaは男子三人についてやや怪しく思ったが、Vandalieuの関心は彼らになかった。そして彼女自身も直接彼らの言動を聞いていた訳ではないので、話題の方向が変わるとそのまま考えるのを止めてしまった。
『はい、Pauvina -sama。あのガキは現在あの学校でtopの成績を誇っている生徒です。なんでも、人の隠れたaptitudeを見抜く事ができるとか』
「aptitudeを……Pauvinaを見ていたことを考えると、Magic Eye系のUnique skillを持っているのかもしれませんね」
『お望みとあらば、とってまいりますが?』
「気持ちだけ受け取っておきます。ありがとう、Darock。でも絶対にやらないように」
VandalieuのAlexに対する認識も、敵ではなく「Elizabethの競争相手」だったのでそれほど高くなかった。Pauvinaに危害を加えようとすれば別だが、そうでなければ殺し合いをする相手ではない。
むしろ、言動が危ういElizabethの取り巻きの男子三人の方が心配だ。校則に違反してElizabeth達や自分まで処分されたらまずい。
「でも、学校の方はVandalieu次第だけど……二人とも楽しそうでよかったわ」
学校で起きた問題に対して真剣に考えるのは、Adventurer's School校に通う事に真剣になったからだと、Darciaは喜んでいた。彼女にはVandalieuが恐れていた学校で起こりえる孤独な日々が、どんなものか想像する事しかできない。
しかし、今のVandalieuもPauvinaも、楽しそうだったので大丈夫だと思ったのだ。
Adventurer's School校に入学した本来の目的は、有用な人物をGuidance Vida's Factionに加える事だったが……そもそもGuiding事ができるか否かは、Vandalieu本人にしか分からない。Vida believerでさえ導かれない人もいるのだから、成り行きに任せるしかないだろう。
「そういえば、Reincarnatorの方は何かありましたか? 我々もAdventurer’s Guildで聞いてみましたが、特に目ぼしい情報はありませんでした」
OrbaumのAdventurer’s Guildで活動を始めたArthur達『[Heart Warriors]』は、「突然現れて活躍しだしたよそ者」や「妙なnameの新人」等の情報を集めていたが、今日は収穫が無かったようだ。
「それもなさそうです。少なくとも、Demon King Familiarがいる地域ではRokudou達がreincarnationした-sama子はなさそうです。Godsにも何か分かったら教えてくださいと頼みましたが、まだ連絡はないですし」
VandalieuはGodsに祈り、捧げ物をしながら、Rokudouの危険性を訴え、彼がreincarnationしたら知らせてくれるように頼みこんでいた。
Colaにポテトチップスにcurry、そしてPizza。『Origin』の人々が見たら、何かの冗談かと思うだろうが、『Lambda』では神(特にZuruwarn)が直接求める聖餐である。
きっと効果は抜群であろう。
『じゃあ、とりあえず報告会は終了ですか? 今日の晩御飯はどうします?』
「そうですね、Hiroshiが恐竜を食べてみたいと言っているので、夕ご飯は皆をcafeteriaに出して、恐竜のsteakやAmmoniteやnautilusの刺身にしましょう」
『another worldじゃあ、恐竜って絶滅しているんですよね。なら、きっとchild達も喜びますね!』
次の日、Adventurer's School校では新入生が実習用のDungeonやOrbaumの外にあるDevil Nestsで実習を行うための準備段階である訓練が行われていた。
Mageも含めたadventurerに共通して必要なものは、当然Enduranceである。
adventurerは武具を纏い、携帯食料や水、そしてmonstersの討伐証明部位や採集した素材を背負って激しい運動をしなければならないのだ。
だから通常のAdventurer's School校で最初に行うのは、Endurance向上のための訓練だ。十分なEnduranceがあると判断されなければ、Weapon Equipmentの扱いを教える訓練は受けられない。
しかし、ここはHero Preparatory School。普通のadventurer志望の生徒ではなく、adventurerになって更にHeroになる事を目指す生徒達が入学する学校だ。Endurance不足の生徒は、受験で既にふるい落とされている。
そのため、この学校で行うEndurance向上の訓練は、長時間繰り返される模擬戦である。
「走れ、走れ、走れ! そして的を撃て! 呼吸を乱すな!」
Mage志望とBow User志望が受けるのは、-sama々な障害物を乗り越えながら設置された的にmagicや弓で遠距離攻撃を行う、変則的な障害物競走だ。
前衛の仲間に守ってもらい、安全な場所から遠距離攻撃や援護を行う事が理想とされるMageやBow Userだが、現実ではそれが不可能なことが多々ある。
そんな最悪の状況で何もできなくなっては、Heroになる事はできない。
「accurateに的の中心を射抜く必要はない! 端を掠めるだけでも十分だ! 今、お前たちがしているのは戦闘じゃない、逃走だ! 敵に牽制を繰り返しながら逃げ回っていると思え! 捕まってmonstersの餌や慰み者にされたくなければ、死んでも走れ! 呪文を唱え、弦を引き絞れ!」
Dandolipこと『True』Randolphは、rearguard志望の生徒達の教官をしていた。Spirit Magicで地面を池に変え、木々を生やして即席の障害物を作り、生徒達がcourseに慣れないよう、頭を使いながら走らなければならないようにしている。
普通の教官ではできない巧みなSpirit Magicに、他のInstructor達も感嘆の視線を向けている。
(何をやっているんだ)
しかし、そのRandolphは前衛志望の生徒達が受けている訓練に視線をチラリと走らせ、内心溜め息を吐いた。
なぜなら、前衛志望の生徒達の中にVandalieuもいるからである。……No-Attribute Magicが使える彼だが、的を破壊しないように注意しながら走り回るのは、さすがに面倒だったようだ。
彼が参加している前衛志望の生徒が受ける訓練は、ひたすら模擬戦を繰り返すという単純なものだ。Defense Equipmentをつけ、訓練用のWeapon Equipmentで教官や自分と同じ生徒を相手に模擬戦を行い、勝敗がどちらでもすぐに再び模擬戦を行う。
それを繰り返し、実践で必要な持久力をつけるための訓練だ。
それはVandalieuも例外ではない。
(思っていた以上に下手糞だ)
訓練用の槍……先を丸めた木の棒を持って生徒や教官と模擬戦を繰り返すVandalieuを、Randolphはそう評した。
「うおおおおっ! せいっ! だりゃあっ! ふんぎゅうううううっ!」
Vandalieuのbody part Abilityは高い。だから、生徒や教官の攻撃は彼に本来なら当たらない。そして、一撃で彼らを倒せる。しかし、それでは大人げないし実力を出しすぎている。
だから、Vandalieuは手加減を行っていた。
わざと接戦を演じたり、避けられる攻撃を回避しなかったり、攻撃の速さを相手が避けられる程度に抑えたり。
そうした手加減が、Vandalieuは得意だった。彼は今までTalosheimでchild達相手に模擬戦をするなどしてきたのだ。こうした模擬戦で手加減するのは造作もない事だ。
得物である槍を使うための【Spear Technique】skillは持っていないが、訓練用の穂先まで木製の槍だ。【Staff Technique】skillで充分扱える。
「うおおおおっ! 何故だ! 何故俺の剣が当たらない!?」
「さすがに頭を狙った攻撃は避けますよ。いくら訓練用の剣でも、injureをするかもしれませんから」
しかし、手加減している事を相手に悟られないようにするための演技力は大根役者どころではなかった。
激しい運動をしても息を切らさず、汗も浮かべず、無表情のまま淡々と模擬戦を続けるVandalieuを見れば、教官達はもちろん生徒達も手加減されている事に気が付く。
そしてprideに傷がつき、がむしゃらにVandalieuに攻撃を仕掛けるが、それでも何も変わらない。
そうしてVandalieu相手に全力を振り絞り、Enduranceが尽きて動けなくなった生徒や教官が横たわっていた。今、彼の相手をしている教官が最後の一人である。
「うおおお……俺の、負けだ……」
いや、たった今全滅したようだ。
Weapon Equipmentを放り出して座り込んだ教官の肩に、Vandalieuは優しく手を置いた。
「なかなかいい筋をしていました。ただ、あなたには敵が大きくWeapon Equipmentを振りかぶると、攻撃を実行する前に仕留めようと突っ込んでしまう癖があるようです。気を付けた方が良いでしょう」
「はい……」
「あと、【-Surpass Limits-】skillをすぐ使うのはどうかと思いますよ。もっと温存するか、小刻みにActivateと解除を繰り返せるようになるといいですね」
「はい……ありがとうございました!」
涙と鼻水で顔をドロドロにした教官は、そう感謝の言葉を述べてから失神した。
Vandalieuは彼を模擬戦場から運んで横に寝かせた後、ふと呟いた。
「ところで、模擬戦の相手がいなくなってしまったのですが……どうしましょうか?」
模擬戦を繰り返すべき生徒もInstructorもいなくなってしまったVandalieuは、そう言って途方に暮れたように周囲を見回すが、Randolphは「知らん」と心の内で答えた後、視線を自分が受け持っている生徒達に戻した。
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Name: Elizabeth Sauron
Race: Human
Age: 13(今年で14)
Title: 【Ohime-sama】 【Illegitimate Child】
Job: Magic Sword User
Level: 49
Job History: Apprentice Mage Warrior Mage
・Passive skills
Fatigue Resistance:1Lv
Mental Resistance:1Lv
Poison Resistance:1Lv
・Active skills
Housework:2Lv
Etiquette:1Lv
Horse Riding:1Lv
Spear Technique:1Lv
-Surpass Limits-:3Lv
No-Attribute Magic:1Lv
Mana Control:3Lv
Earth-Attribute Magic:2Lv
Fire-Attribute Magic:2Lv
Life-Attribute Magic:2Lv
Sword Technique:2Lv
Shield Technique:1Lv
Dismantling:1Lv
Surpass Limits: Magic Sword:1Lv