Hiroshiと冥を保護する。そのBandaの前触れのない発言に、Narumiは反射的に声をあげようとした。母親として当然の反応だ。
だが、それをAmemiyaが制止した。そして、Bandaに静かに尋ねる。
「それほど外の状況は悪いのか?」
『ええ、この施設の適当な端末を使えば、少しはわかると思いますが、何かありませんか?』
「それなら、Moriya達の持っていた端末を使おう。奴らも、自分達の通信は妨害しなかったはずだ。……あったぞ」
IwaoがMoriya達の死体から、携帯端末を取り出して操作する。奇跡的に戦闘での破壊を免れた端末で、netにaccessしてnewsを画面に映す。
「な、なんだ、こりゃ……Rokudouがまた何かしたのか?」
画面に映し出されたのは、この地下施設の地上部分だ。しかし、Iwao達が侵入した時とはずいぶん-sama相が変わっている。
辺り一面が焼け焦げ、煙が上がる中心にはGiantな白いdomeが建っている。そのdomeの表面にはcountlessのeyeballや口が開き、不気味に脈打っていた。
newsではそれを、Coup d'étatを起こしUnited States政府を掌握し自分が新大統領であると宣言するSergei Dallant大統領が、「これこそが神である!」と高らかにintroductionしたと報じている。
そしてworld中に点在し、近年は【Bravers】への抗議活動を控えていた『The 8th Guidance』believer団体のleader達が、揃って声明を発表。「Sergei Dallant大統領の発言は正しい。彼こそ、我らのGoddess Plutoが崇める死の神。『Undead』である」と宣言した。
だが、「Northern Europe Federationのmagic実験、もしくはChinese Republic (not-URSS)が開発した新型兵器のrunawayや失敗によって発生したMonstrosity」、「space (UCHUU)から飛来したalienの『Johnny Yamaoka』」として報道されている場合も少なくない。民主主義国家でCoup d'étatを起こして大統領になったばかりのSergeiと、世間的にはcult扱いの『The 8th Guidance』believer達の宣言なので、完全には信用されていないようだ。
だが、政府として正式見解を発表しているのはUnited Statesのみである事と、報じる側のmass mediaにも不思議と纏まりがないため、誤った情報も真実と一緒に広がっている。
……このworldに独力で真実を見抜ける調査機関やjournalistが存在するとは思えないので、誤った情報ばかりが広がるのも無理はないのだが。
それにVandalieuの魂の映像を見ただけで失神したり、幻覚や幻聴を見聞きしたり、突然騒ぎ出したりと、-sama々な症状を起こしている。そのため、混乱は静かに広がっていた。
大きなpanicに陥っていないのは、Vandalieuの魂がただそこにいるだけで、攻撃を仕掛けてくるNorthern Europe FederationとChinese Republic (not-URSS)以外には何の脅威ももたらしていない事が大きい。
それに、Vandalieuとは別の要因で国家やorganizationの機能は麻痺しているので、これ以上混乱しようもないという点もある。
……行方不明になっていた大統領や大物政治家、organizationのボスや大手mass mediaの社長等が、Vandalieuの魂の真下にある地下施設で発見されたと知られたら、改めて騒がれる事になるだろう。
「これは、どうすればいいんだ? Chinese Republic (not-URSS)とNorthern Europe Federationが軍事行動に出るらしいなんて報じられているが」
「俺達、今度はこれと戦うのか?」
「待て、Iwao、Derrick。彼はきっとBandaのmain body、Vandalieuだ。夢の中で見た覚えがある」
「「マジかっ!?」」
『マジです。RokudouのShockwave of Deathを抑えるために、この施設を包むように展開しているので、戦うのは勘弁してください。穴が開くと、そこから残っているShockwave of Deathが漏れだしてしまいます』
Bandaの言葉に、IwaoとDerrickは慌てて頷いた。
『やっぱりBandaなんだ。俺が見た時よりキラキラしてないけど、似てるもんな』
「Banda、おっきな方はまん丸? 口がいっぱいで歯磨き大変そう」
そしてchildたちは落ち着いている。
やはり、既にVandalieuにimpactを受けている者とそうでない者とで反応や受けるpsychological衝撃の有無が異なるようだ。
「たしかに、これはどう事態を収拾すればいいのか分からないな。行方不明の大統領達が生きていれば……」
『残念ながら、全員死んでいます』
「オジサン達なら、周りにいるよ?」
「……そうか。霊になったおじ-san達を証言台に立たせるわけにはいかないな」
Amemiyaは苦笑いを浮かべながら、まいったなと内心で頭を抱えた。事態は、彼と残った【Bravers】の力で収拾できる限界を超えていた。
【Bravers】はworld的に知られ、heroとして人望も厚いorganizationだが、特定の国に属さない国際organizationだ。各国から要請を受けて、それをmissionとして動いている。
そのため、権限がない。
もちろん、国際organizationなので各国の大物政治家や軍関係者にconnectionを持っているが……そのconnectionをまとめていたのが今回の首謀者であるRokudou Hijiriで、コネがあった大物政治家や軍関係者のほとんどが彼の協力者だ。
普段なら【Bravers】のleaderであるAmemiyaの発言力は大きいが、今回は身内が首謀者であるため事態を収拾するのは難しい。
「せめて、信用できる伝手があればいいんだが」
「この状況じゃあ、無理じゃないか? なにせ、主だった国のtopが軒並み死んじまったんだぞ。相手も俺達を信用しないだろうし……」
『Sergei Dallant大統領は力になってくれるでしょう。Coup d'étatでできた政権ですから、多少は強権的な事もしてくれるでしょうし』
BandaがSergeiのnameを出すと、AmemiyaだけではなくJosephやNanamoriも驚いた顔をした。当然だろう、誰もSergeiが隠れ『The 8th Guidance』believerとは知らなかったし、知っていたとしてもこの状況で信用できる人物かどうか、以前からの知り合いでもない限り分かるはずがない。
そして冥に憑いているBandaと、United Statesの軍人だったSergeiでは、接点があるはずがないのだ。
だが、このとき、BandaはSergeiの事を昔からの友人のように語っていた。
「もしかして……私達と同じように夢で会ったことがあるとか?」
『まあ、その通りではありますが……』
Mariの質問に、Bandaは言葉を濁した。認めたくなかったのだ。自分の一部が『God of Origin』になった事を。
自分の一部が『God of Origin』となった事で、BandaはSergei Dallant大統領が今何を考えているのか、そして彼が今見聞きしていることを知る事ができるようになっていた。
他の事は分からないが、Bandaが……Vandalieuが言えば彼は【Bravers】の力になってくれるだろう。
「そうか……なら、新大統領の力を借りることにしよう。それに、この施設を調べればRokudou達が行ってきたことのrecordや、あいつの研究のdataも出てくるだろう。
負けた時の証拠隠滅は考えていなかっただろうし、その暇もなかったはずだ」
『accurateには、施設ごと自爆させ一切合切葬ることをNorthern Europe FederationやChinese Republic (not-URSS)は考えていたようですが、失敗したそうです。
それで今度は軍をここに派遣して攻撃を行おうとしているようです』
「ええ!? それじゃあ、早くここを脱出しないと――」
『ああ、それは気にしないでください。外で俺が適当にあしらっておきますから。それよりも、話を元に戻しましょう』
二大大国による軍事攻撃が迫っているのに、気にするなと言われたNarumiが目を瞬かせた。しかし、実際気にしなくていいほどAdventしたVandalieuの魂は存在感を増していた。
ただ【Realization】した魂だけだった時は、『Origin』の中で動くことだけでpsychological Fatigueを覚えていた。
しかし、今は自分の一部が『God of Origin』の一部になっている。そのためVandalieuはanother worldの存在であると同時に、このworldの存在でもある。そのため、以前よりも強く【Realization】する事ができるようになっていた。
Bodyと魂が揃っているconditionには及ばないが、Bandaと同じくらいには自由に力を振るえるだろう。
「冥とHiroshi、それにBokor達実験体や拉致されていた被害者を保護する、か。具体的には、何処で保護するつもりなんだ?」
「待って、なんで冥とHiroshiを預ける話になるの!? 事件はもう解決したし、事態の収拾も――」
「Narumi、大統領と協力できても事態の収拾にはいつまでかかるか分からない。一か月や二か月では終わらないだろう。それまでHiroshiと冥を僕達だけで守り切るのは難しい」
AmemiyaがBandaにchild達を預けることに前向きな態度を見せた事に驚き、声を荒げたNarumiを彼は冷静に諭した。
「United Statesの力は大きいが、United States以外の国を圧倒できるほどじゃない。Northern Europe FederationとChinese Republic (not-URSS)が穏便に済ませるか分からないし、ほかの国がどう出るかも不明だ。ほとんどの先進国のtopがRokudouとグルで、既に死んでいるのだから」
各国の国民に真実が知らされても、知らされなくても長く混乱が続くだろう。もしかしたら、今回の一件がきっかけになって『Origin』で二度目のworld大戦が勃発するかもしれない。
「そもそも、僕達【Bravers】も危うい立場になるだろう。普通の軍人や政治家なら辞めるなり刑務所に入るなりして責任を取って終わりだが……僕達の場合は特殊だからね」
そして今回の黒幕を倒して事態を解決した【Bravers】だが、そもそも黒幕も【Bravers】だ。もちろん、それでRokudouに与した政治家達の罪や責任が軽くなるわけではない。
しかし、Self保身や正当化のために【Bravers】を過剰に攻撃する国が出る可能性もある。その場合、普通の国際organizationなら責任者のAmemiyaが責任を取ればいいのだが……ただ辞めるだけでは、大国も警戒する力の持ち主であるAmemiyaを野放しにするだけで、むしろ都合が悪い。それに、『Origin』ではmagicを封じる方法はあってもCheat Abilityを封じる方法はない。
「それに……冥がdeath attributeのManaを持っていることは、遅かれ早かれworld中に知れ渡るだろう。そうなれば、world中に冥を狙う連中が出てくるはずだ。death attributeの力を手に入れようとする者や、逆にdeath attributeを危険視するあまり関わる者は全て消そうとする者が」
Amemiyaは知らないが、既にUnited Statesの中枢には冥の事がばれている。Sergeiは冥を保護するための施設を作るつもりだが……既に冥は普通に生活することは不可能なのだ。
だから、冥達が安全に暮らせる場所をBandaが用意できるのなら、検討するべきだ。
「でも、だからって……」
Amemiyaが言いたいことを理解しつつも、Narumiはemotions的に納得しにくいようだ。
「Mama……」
そのNarumiの態度に感化されたのか、冥が不安そうにつぶやき、Hiroshiも迷っているような雰囲気を漂わせる。
『Me-kunのMamaは何か誤解しているようですが、俺はHiroshiとMe-kunをもらうわけではありません。保護するだけです。-chanと面会もできるようにしますよ』
その二人に、Bandaは仕方なく口を出した。
「本当に?」
『ええ、本当に。両親から引き離すのは、Me-kunとHiroshiにとって良くないですからね。……さすがに毎日は無理ですが……毎月一回ぐらいはboneを折りましょう。
それにこっちが落ち着けば、Me-kunが安全に暮らせる状況になれば返しますよ』
Bandaが冥達をどこか遠くに連れて行こうとしていると思っていたらしいNarumiは、月に一回の面会を保証されて見て分かるほど肩から力を抜いた。
「本当なのか? world中の国やorganizationの手も届かない、しかし一か月に一回は会える場所なんて存在するのか?」
『そんな都合の良い場所は存在しません。ただ単に、俺が頑張って面会できるようにするだけです。
しかし、これ以上は実際に見せたほうが良いでしょう。……行きますよ』
Bandaがそう言うと、glassにヒビが入るような音が辺りに響き、虚空が砕けた。
現実では刹那、そして神にとっては数分の間、Banda……Vandalieuは新しい自分と対面した。
『初めまして、認めがたいですが俺よ』
『初めまして、俺よ。しかし、Self否定はいかがなものかと思いますが? Mentalを健常に保つ障害になりますよ』
その光景は、常人には邪悪な存在の対面にしか見えなかっただろう。Bandaの前にいる存在は、表面にcountlessの目や口が生えたdome状のformをしており、隣に儚げな雰囲気のBishoujoが寄り添っている。
それは、大きさ以外はRokudouの本拠地を包むようにRealizationしたVandalieuの魂そのものだった。
『俺が俺なら、俺の気持ちは分かるでしょう?』
『もちろんです、俺よ。俺も好き好んで神になったわけではありません。ですが、なってしまったのだから仕方ないでしょう』
『……それはそうですが』
『それに、俺ならこうなったのは俺自身の行動の結果だと分かっているはずです。納得しがたいですが』
『ええ、わかっています。自業自得とは納得しかねますが』
『God of Origin』の一部にVandalieuが生じた理由は、基本的にはVandalieu自身の判断と行動の結果である。
『God of Origin』はGroup Bodyであり、このworldの人々がreligionや畏怖を向ける対象が増減するのに合わせてDivinityも増減するという存在だ。
そうしたworldで、人工Satelliteの存在を忘れて魂をGiantなdome状にRealizationさせて姿を現したのだ。それだけでDivinityに加わってもおかしくはない。
ただ、あの異形がVandalieu……『The 8th Guidance』が崇めた『Undead』と同一の存在であると人々が知ったのは、Sergei Dallant大統領が大々的に発表したからだが。
もし彼が沈黙を守っていたら、Vandalieuではない異形のDivinityが新たに『God of Origin』に加わっただけだっただろう。
『つまり、全てRokudouが悪い』
そもそもRokudouが広範囲の無差別攻撃なんて放つから悪いのだ。だからSergei Dallant大統領は悪くないとBandaは思った。
『その通りです。もし奴が『Lambda』にreincarnationしたら、今度こそ入念に滅っしてくださいね』
『任せてください。とはいっても、実行するのは俺ではなくmain bodyになるでしょうが』
頷きあうVandalieu達。
『私はVandalieuが加わってくれて嬉しいわ。それに、神になったからこそ出来る事もあるはずよ』
God of Originの一部であるPlutoにそう言われて、Vandalieu達は頷いた。
『Origin』の人類の内大半がVandalieuを認識し、崇め畏れている事で『God of Origin格』の力の大半をVandalieuは振るうことができる。それによって、本来よりも多く's Divine ProtectionをAmemiya Hirotoに割り振り、Rokudou Hijiriを倒すことに成功した。
そしてSergeiにOracleを下して【Bravers】に力を貸すよう頼む事や、『Origin』と『Lambda』を……自分が想定していたよりもずっと楽に繋げられるようになった。
神になった事で失ったものはなく、得たものの方が多い。
『それはたしかに。main bodyや別の俺の仕事が増えるわけではないですからね。『Origin』の事は、『Origin』の神の一部でもある俺の仕事ですから。
それに、このconditionが長く続くとも限りません。所詮は一時の流行。百年も経てば、俺も人々から忘れ去られるかもしれません』
『God of Origin』のDivinityは、人々からの思いによって数やinfluenceが増減する。今でこそ『God of Origin』のDivinityの中でも大きなinfluenceを持つVandalieuだが、時とともに廃れて力を失い最後は消えるだろうと彼自身は予想していた。
『……百年や二百年で消えるとは思えないけれど。特に、Northern Europe FederationとChinese Republic (not-URSS)の人達が覚えたhorrorは、拭い難いはずよ』
Plutoには、別の意見があるようだが。
『まあ、百年後の事は数十年後にでも考えましょう。そのころには、事態は収拾されているか、どうしようもなくなって泥沼になっているかのどちらかでしょうし』
『できれば前者のほうになる事を祈りたいものですね』
glassが砕けるような音が響いた次の瞬間、Amemiya達は目の前に広がる光景に驚きを隠せなかった。
「これは、どこの町だ?」
Derrickは、さっきまでコンクリートの壁があったはずのspaceに足を踏み入れた。彼の目には、色鮮やかな花々が咲く花壇や青々と茂る木が植えられ、いくつも遊具が設置された公園が映っている。そして、公園の向こうに立ち並ぶ二階建ての住宅や、三階から五階建ての集合住宅やビルを見下ろすことができた。
「……Japanに【Teleportation】したのか? Center公園とあるが……」
Josephが驚いて公園に建てられたmapを見る。そこには複数の言語が並んでいたが、一番上はJapan語だった。
「いや、Japanではないな」
だが、Amemiyaは周囲を見回してそう断言した。
「鳥や虫が一匹もいないし、人や車の立てる音もない……それに、from here見渡せる街には信号がない」
「っ! 本当だわ……ここはどこなの、Banda?」
『俺がMe-kunとHiroshi、みんなのために作ったShelterです。場所は、『Origin』ではないworld……Reincarnatorが次に生まれ変わるはずのanother worldにいる、俺のmain bodyの【Body World】です』
「それは、いったいどういう事なんだ?」
自分達が死後、もう一度another worldにreincarnationする予定であることをまだ知らないAmemiyaがそう尋ねるが、Bandaは答えなかった。
「こういう事です」
代わりに応えたのは、Vandalieuだった。
突然現れた見覚えのない少年に、とっさに身構えてしまうAmemiyaだったが、その横をBandaから飛び出した冥が走りぬけ、Vandalieuに駆け寄る。
「Bandaッ!」
「こうして会うのは初めてですね、Me-kun」
駆け寄ってきた冥をVandalieuはすっと抱き上げる。AmemiyaやDerrickは、BandaとVandalieuが同一の存在であることがとっさに信じられなかったのか、二人を交互に見て目を丸くした。
「Banda、NYORONYOROがないからみんな驚いてるよ?はい、出して」
だが、冥がVandalieuの口に手を突っ込み、tongueを掴んで引っ張り出したのを見て納得したようだ。
「Me-kun、人のtongueを掴んで伸ばすのは感心しませんよ。それに、俺の口にはfangsが生えているから危ないです。今antennaを伸ばすのでそれでenduranceしてください」
「おまえがBandaのmain bodyなのか?」
「そうですよ、Hiroshi。ちょっと待っていてくださいね、今生やすので」
「いや、俺の分のNYORONYOROはいいから」
Transformation Equipmentを解除したHiroshiは、tongueとantennaを伸ばしている事以外は普通の少年に見えるVandalieuをじっと見つめる。
「あ、本当だ。同じ魚みたいな目してる。それに今気がついたけど、声も同じだ。……お前、俺と同い年くらいだったんだなぁ」
「……俺は今年で十三になるのですが」
「えっ? そうなの!? でも背はちょっとしか変わらないぞっ!?」
「Hiroshi、それはあなたが同世代の少年と比べて背が高い方で、俺はその逆というだけです」
Hiroshiより少ししか背が高くないVandalieuは、肩を落として答えた。
「ただ、一時的に大きくなることはできますよ。今も、antennaを入れればかなりの高さになるはずです」
「うんうん、目の数も増やせるんだろ? わかってる、わかってるって」
child同士(?)の交流の横で、BandaがAmemiya達に『Lambda』や来世の事を説明する。
「教えられてはいたけど、『Shelter』がこれほどとは思わなかった」
事情を知っていたJoseph達も、そう言いながらしきりに驚いていた。だが、同時に納得もしていた。
同じReincarnatorでありながらVandalieuと自分達の間にある、圧倒的な力の差。そして、冥達を保護するという彼の言葉。
たしかに、いくら大国でも異なるworldまで冥達を追う事はできないだろう。
『物理法則が異なるworldなので、【Body World】の内一つの環境を合わせました。とはいえ、ここは俺のmain bodyの【Body World】なので、main bodyに何かあればimpactが出る恐れがあります』
「-kunのmain bodyに、何か……か。考えにくいが、Rokudou達ももう一度reincarnationするなら万が一という事もあり得るのか」
「ところで、どれくらいでimpactが出るんだ? 体内のworldってことは、走ったり飛んだり跳ねたりしたらここも揺れるのか?」
『いいえ。main bodyが飛ぼうが跳ねようが、体に風穴が空こうが【Body World】には何のimpactもありませんでした。ただ、さすがに一刀Bisectionにされたり、whole bodyを焼かれたり、潰されたら、maybe impactが出るのではないかと思われます』
そう答えるBandaに、Amemiya達は思わず胡乱気な顔をした。
「……下手に外のworldに出すより、-kunの【Body World】にずっといた方が安全かもしれないな」
「そうだな。どんなに治安が良い国でも、隕石が落ちてくる可能性はあるわけだし」
body part AbilityはBandaとほぼ同じで、magicに関してはBandaよりもさらに圧倒的なManaを持つVandalieu。
そんな彼は【Body World】の危険性を説明するが、Amemiya達はBandaをどうにかできる存在がいるとは考えにくかった。
「『Lambda』には、そんな事ができる存在もいるのか?」
『ええ、いますよ。俺は無敵ではありません。Rokudouがreincarnationするかはわかりませんが』
「……恐ろしいworldだな。だけど、今の僕達のworldよりは余程安全か」
「そうね。でも、物理法則が異なるって言っていたけれど、それは大丈夫なの? もしかして、二人の体にimpactが出るんじゃない?」
『それも対策は考えてあります』
Bandaがそう言うと、Rokudouが『Ark Avalon』を培養するのに使っていたカプセルと偶然だがよく似ているカプセルや培養装置にtentacleやArthropod Legsが生えているという、不気味な形状のDemon King Familiar達が集まってきた。
そしてカプセルの中に漂うchunk of meatや黄金の塊を指さして続ける。
『あれは俺が用意した装置で、あの素材を使えば『Lambda』にも適応できるBodyに体を作り変えることができます。
ああ、もちろんRokudouのようにスキンHeadになる事はありませんし、頭以外も著しく姿が変わることはないはずです。変化したとしても、髪や瞳の色が変わるとかそれぐらいです』
具体的な仕組みは、カプセルに入った者は魂が一時的にBodyから離れ、life goldやspirit silver、base form of life等によってBodyが変化させられた後戻るというものだ。
Rokudouが『Ark Avalon』にreincarnationするために作った装置とやる事は似ている。だがVandalieu(Demon King Familiar)の手作業による、ずっとマイルドなBody改造と原始的な仕組みでのPseudo- reincarnationだ。
(ただ、Rokudouと被ったせいでimageが悪いでしょうか? やはりGuidanceが効かない相手への説明は上手くいきませんね……賄賂としてVCreamやBlood potionを出したら逆効果でしょうし。どうしたもの――)
そうBandaとDemon King Familiarが悩んでいると、熱心に話を聞いていたMariがおもむろにカプセルの中に入った。
「えっ?」
「お、おいっ?」
NarumiとIwaoが驚いて止めようとした時には、カプセルが閉まり、Mariの体を包んでいた汎用Transformation Equipmentが解除されると同時に内側に培養液が満ち、Mariの姿は蠢く金塊とchunk of meatに包まれてしまう。
「だ、大丈夫なのか?」
『大丈夫でなければ見せません。何度も実験を繰り返しました……俺自身で』
【Body World】の一つで『Origin』と酷似した環境のworldを作ろうとした時に、大きな問題が発生した。BandaがいるのでVandalieu自身忘れていたが、『Lambda』worldの生物である彼にとって『Origin』worldの環境は体に合わなかったのだ。
そこでVandalieuは、まず自身の体を使って『Origin』の環境に適合できるよう実験と研究を始めた。自分で成功すれば、自身から生やした植物で。植物で成功したら、Braga達に顔を剥がされた『Lambda』のHumanたちで。そして検証した結果、実用化可能と判断したため用意したのだ。
「Mari -san、どんな気分ですか?」
『んー、whole body massageを受けてるような気分。なんだか体が蕩けそうぅ』
狼狽しているAmemiya達と違い落ち着いているYuki Joroが尋ねると、Mariの上機嫌な返事が返ってきた。それでようやくAmemiya達も安心したようだ。
「……分かった。冥とHiroshi達をよろしく頼む。後、被害者と実験体達も。僕達では、『The 8th Guidance』の二の舞になるかもしれない」
「何故あなたが私たちの事をお願いするの?」
「我々の事はお気になさらず」
「……二人の言う通りだが、お願いするよ」
Amemiyaが頭を下げても、Yuki JoroとBokorがそう言うが、彼は改めてそうBandaに頼んだ。
『二人とも、内心でどう思っていてもこういう時は黙っていた方が上手く行く事もあるのよ』
『大丈夫ですよ、originally Yuki Joroたちの事はあなた達が何を言っても保護すると決めていましたから』
だが、MariとBandaの返事にはさすがに苦笑いを浮かべたが。
「……Rokudouも『Lambda』にreincarnationするのか?」
そしてこれ以上話しても無駄だと悟ったため、ほかの話題を振る。
『さあ。death attributeの力を手に入れたRokudouは、Rodcorteにとって歓迎できる存在ではないでしょうから、どうなるか分かりません。奴が何を考えているのか、俺にはわかりませんが。
ああ、AsagiやTendou、Akagiはこっちのworldに来ていますよ。伝言があっても、承りませんが』
「……Asagiが生まれ変わっているのか。ただ、もう何かあったみたいだな。彼からは、友達だったと聞いていたが?」
Amemiyaとしても、Narumiが気にしていた自分とnameと容姿が似ている少年の事は気になったらしく、Reincarnator仲間にどんな人物か聞いて回った事があった。その時、最もAmamiya Hirotoの事を詳しく証言したのが【Mage Masher】のMinami Asagiである。
逆に言うと、Minami Asagi以外はAmamiya Hirotoについてほとんど覚えていなかった。
『……凄まじい風評被害ですね。断固として抗議します』
だが、Asagiの証言も正しくはなかったようだ。
「そういえば、KouyaがAsagiのいう事はあまり信用するなと言っていたな。KouyaやMaoもreincarnationしているのか?」
『Kouya……Endou -sanならたしか、RodcorteのFamiliar Spirit……天使のような存在になっているようです。Machida -sanやShimada -sanと、Reincarnatorのfollowをするのだとか。
【Noah】のMao Smith -sanと【Super Sense】のGotouda -sanは、reincarnationしているはずですが会ったことはありません。
後、【Chronos】と【Odin】、【Sylphid】、【Marionette】、【Gungnir】、【Death Scythe】は滅ぼしました』
「……reincarnationした先でも色々あるんだな。俺もあの時一緒に死んでいれば、Asagiを止め……いや、止まらないか。Asagiだしなぁ」
「あの強引さを頼もしく感じたこともあったが……それがまずかったかな」
「Emotionalに参っていた時、結構頼っちゃったから……」
「俺は忠告したんだがな。いつまでも前世の関係を引きずるなって。まあ、Murakami達については弁護の言葉もないが」
Iwao、Joseph、Nanamoriが頭を押さえる。そして、ふとDerrickが顔を上げた。
「そういえば、【Venus】……TsuchiyaやDoug、Saotomeのnameがなかったな。それに、TanakaやSamejima、Mackenzieも。奴らとは会っていないのか?」
「あと、【Gazer】の見沼はどうなったか知っているか?」
『Mackenzieという人には会っていません。Samejima -sanは部下の甥っ子に、Tanaka -sanは俺の師の息子にreincarnationしました』
Samejima Yuriは、General兼Prime MinisterのChezareと、その弟で副GeneralのKurtの甥っ子、Sallua Legstonに。Tanaka Jinは、【Muscle Technique】のPure-breed Vampire Zorcodrioの義理の息子にreincarnationしている。
『Kanako達に関しては……俺の仲間に加わったとだけ。他は口止めされているので話せません』
KanakoはAmemiya達と話す機会があっても、自分達については話さないでほしいとVandalieuに口止めしていた。なぜなら、「Vanと婚約したとか、Idolしているとか話したら、混乱して話がまとまらないかもしれませんし。それに、驚くあいつらの顔を直接見たいので別の機会にしたいです」と。
Legionの人格の一つになっている瞳からも、『今の姿やconditionをあの人達が知ったら、変な勘繰りをしてあなたを疑うかもしれないから、仲間になったとだけ言っておいて』と言われている。
「瞳はともかく、Tsuchiya達がMurakamiを裏切って仲間に!? ……世渡りが上手いのか、Murakamiが見限られるほどヘマをしたのかは分からんが、大丈夫なのか?」
『大丈夫です』
Derrick達にとってKanakoはMurakamiと同じ裏切り者の一人という印象しかないため、彼女が仲間として加わっていることに疑問を覚えたようだが、Bandaがきっぱりと答えると、これ以上何を尋ねても無駄だと悟って「そうか、わかった。お前の判断を信じよう」と言って引き下がった。
ここにいたのがAsagiなら、さらに質問を重ねて何か聞き出そうとしたかもしれない。だがDerrickは自分達がBandaからある程度信用はされていても、信頼はそれほどされていない事を忘れていなかった。
そしてDerrickが引き下がるのに合わせたように、Demon King Familiarがハンドベルを鳴らし処置が終わった事を知らせる。
「はぁ……爽快な気分だけど、どう? 変わったように見える?」
そういいながらカプセルから出てきたMariの姿は、再びTransformation Equipmentを纏っていたがそれを差し引いても変化しているようには見えなかった。
『いえ、髪も瞳の色も変わっていませんよ』
「それじゃあ成功って事ね。じゃあ、みんなそろそろどうするか決める時よ。私はもちろん、Banda……Vandalieu達のworldに行くけど。
向こうのworldにもう居場所はないし、今更独房に戻るのもね」
MariはAmemiya達に決断を促すと、自分が出した答えを口にした。それに異を唱える者も、引き留める者もいなかった。彼女が言った通り、『Origin』には彼女の居場所がないからだ。
それどころか、Rokudouのshadow武者をさせられていたMariが『Origin』に残れば、情報を隠蔽するために各国から命を狙われかねない。
originally死んだことになっているのだから、そのままanother worldに移住してしまうのが、彼女にも『Origin』にとっても都合がいいのだ。
そこにBandaとHiroshiが作った安全地帯から出てきたのか、GabrielやUlrikaが他の被害者や実験体、そしてUndead達を連れて現れた。
「わぁ、外だ!」
「あの子もいるぞ! 行こう、みんな!」
実験体にするためにRokudouに監禁されていたchild達は、another worldに行く事をあまり理解していない-sama子だが、表情を輝かせて冥達のところに駆け出していく。
彼らは孤児など、最初から身寄りのない境遇であるため『Origin』に残しても帰る家がない。そして、下手に残せばRokudouの研究を継ごうとする者が現れた時に狙われるかもしれない。
「Gabriel! 俺、大活躍だったんだぜ!」
「……本当か?」
「本当だって! 父-sanを助けたし、氷でできた怪人をボコボコにしたし、Bandaにも褒められたんだからな!」
「彼の言う事は本当ですよ、Gabriel」
Gabriel達実験体も、当然のようにanother worldに渡る。『The 8th Guidance』の悲劇を繰り返すことは、避けなければならないからだ。
そしてUndead達も同-samaである。彼らは冥の制御下にあるので、冥からあまり引きはがしておけないのだ。
「話は、Ghost達から聞かせてもらっていた。私は、『Lambda』に行こうと思う。すまないが……Bandaや冥-chan、Hiroshiがいないworldは、耐えられそうにない」
Ulrikaもanother worldに行く事を選んだ。彼女のMentalは、Banda達の支えがあって正気を保っているconditionだ。それがなくなれば、今度はもう立ち直れなくなるかもしれない。
「冥-chan達も知り合いがいた方が安心するだろうし、頼むよ」
「俺達はもうしばらく残ろうと思う。冥とHiroshiのPapaとMamaを助けてやらないとな。Baker達だけじゃ、頼りないし」
「無理だったらすぐに泣きを入れるから、助けに来てね」
一方、JosephやYoudo、Nanamoriは残る事を選んだ。
「あ、でもこのTransformation Equipmentはもらっていっていいかな?」
Joseph達のTransformation EquipmentはHelmetやマント等、DerrickやIwaoに渡されたwhole bodyを覆うrubbersuit状にしかならない粗製Transformation Equipmentよりもずっと作り込まれている。そのdesignがJosephにとってはネックだったが、機能はすさまじいものだったので手放しがたいようだ。
『構いませんよ。後で貴方達のEquipmentの機能とdesignをバージョンupしましょう。金属鎧みたいになりますけど』
「……今のままじゃダメかな?」
『ダメです。バージョンupしなかったせいで貴方達がinjureをしたら、俺は悔しさのあまりAdventし、その場で七転八倒しますよ』
Josephは自分の敵の頭上に、GiantなVandalieuの魂がAdventしてそのまま跳ね回る-sama子を想像した。山も丘も敵とその周辺の町や村も、無差別にflatにされそうだ。
「……お願いします」
『分かればよろしい』
Brave Warrior、Joseph、Youdo、Nanamoriが誕生することが決まった瞬間であった。UlrikaはJoseph達に悪いと思いつつほっとしていた。だが、彼女は彼女で後でより大変な目に遭う事になるのだが、まだ彼女はそれを知らなかった。
そして、BandaはAmemiya coupleに視線を向けた。
「僕は当然だが、残る。何年かかるか分からないが、今回の事件を収拾するのがRokudouを野放しにし続けた僕の責任だと思うから。だが、-kunは……」
「いいえ、私もあなたと一緒に残ります」
Amemiya Hirotoが単身赴任するのかと思ったVandalieu達だったが、Narumiも夫とともに『Origin』へ残ることを選んだようだ。
「二度と会えないのならchild達と一緒に行ったかもしれないけれど……会わせてくれるのね?」
『ええ、一か月に一回、絶対に会えると確約はできませんが。俺にもいろいろ都合があるので。ですが、努力することは誓いましょう』
「ありがとう。でも、それはいいの。予定が立てられない生活は私も経験しているから。それに、あなたが努力すると約束したら、努力以上の事をする人なのは分かったから」
『……一応言っておきますが、俺はMe-kunとHiroshiの幸福を優先してきました。だから、あなた達を排除するつもりはありません』
本当は、Amemiya coupleが冥の親としてふさわしくない態度……death attributeの適性を持って生まれた娘を否定する、それどころか攻撃する態度を見せれば、二度と会わないですむようにするつもりだった。
childにとって親の存在は大きいが、親にとってchildはどうでもいい存在である場合がある事を、Vandalieuは『Origin』で知っている。childにとって存在しないほうが幸福な親もいるのだ。
だが、Amemiya coupleは冥とHiroshiにとってそんな親ではなかった。なら、VandalieuがAmemiya coupleをどう思っていようが、関係ない。
「ありがとう。その方があなたもanother worldを何度もつなげる苦労をしなくていいから、楽なのかもしれないけれど……今の私達じゃあ、あなたのいるworldに行ってもtroubleを起こしてしまうと思うの。maybe、私たちの常識が通用しないworldだろうし……」
『まあ、それは否定しません』
「それに、色々知ってからまだ一日も経っていないのよ。まだ意識がついてきていない気がするから、落ち着いて考えたいの。
あと、ほかのみんなを放り出すわけにはいかないし」
そう言うNarumiに、Bandaは困ったように首をぐるぐると回して見せた。以前の彼なら、ここで『Origin』の事はどうでもいいと言えたのだ。しかし、今はとてもそうは言えない。
今の『Origin』には彼が夢で導いたSergei達『The 8th Guidance』believerがいるし、Joseph達も残ると言っている。そして何より、今のVandalieuの一部は『God of Origin』の一部なのだ。
「父-san! kaa-san! 俺と冥なら大丈夫!」
その時、Hiroshiが冥を抱えて両親のもとに駆け寄ってきた。
「前も、しばらくtelevisionやnetでしか父-sanたちの顔が見られない事があっただろ! それと同じだって! こんなの、ちょっと外国にhome stayするようなもんだよ!」
『……反面Instructorにしますね』
「すまなかった」
この一件が終わって入学式が済んだら、Bakunawaに会いに行こう。Vandalieuはそう心に決めた。
「ともかく……すまないがHiroshi、Ulrikaおば-san達のいう事をよく聞くんだぞ。冥の事を頼む」
「必ず会いに来るから。おkaa-sanたちも、また一緒に暮らせるように頑張るからね」
「うんっ……うんっ!」
「大丈夫、夢で会いに行くもん!」
『あー……そういえば、夢での面会はできるのか試していませんでしたね』
こうして繋がった二つのworldは、再び別れた……のだが、実際は繋がったままである。
『これからは、believerでもないのにAmemiya coupleも見守らなければならないのですか。……仕方ない、これもMe-kunとHiroshiのためです』
なぜなら、『God of Origin』にはVandalieuが含まれたままなのだから。