Circle of Reincarnationをつかさどる神、Rodcorteは嘆き悲しめばいいのか、それとも感心するべきか、または激怒するべきか分からず、結局ただうめき声を垂れ流し続けることしかできなかった。
Rokudou Hijiriに彼のOracleが届くことはなく、ついにことを起こしてしまった。その後、【Balor】や【Artemis】、【Sahadeva】達が次々に死んだ。
それはいい。originally Reincarnator同士の戦いなのだから、Reincarnatorが死ぬのは予想通りだ。『Lambda』をdevelopmentさせるために知識や技術、経験を身につけさせるために『Origin』へreincarnationさせた当初であれば、この同士討ちは嘆かわしいものだった。所詮はHumanかと、落胆しただろう。
だが、今はVandalieuを抹殺して彼が治めている国を滅ぼし、Rodcorteについて認知しているHumanの数を減らすという至上の目的がある。
そのためなら『Lambda』worldのdevelopmentも、『Origin』worldの存続も、どうでもいい。極論を言えば、今回の戦いの結果『Origin』worldの全生命体が滅んでも構わなかった。
originally、Rodcorte自身を認知した者共がいる『Lambda』のついでに『Earth』共々Circle of Reincarnation systemから切り離そうと、つまり捨てようとしたworldだ。死滅しようが滅びようが、一向に構わない。
ただVandalieuが魂を砕くかどうかは、心配だった。捨てて構わないworldとはいえ、今はまだRodcorteのCircle of Reincarnation systemと繋がっているため、魂を砕かれた場合そのimpactを受けるからだ。
そして何より、Vandalieu抹殺のための戦力となるReincarnatorの魂を砕かれたくなかった。
だが、事態は彼の予想を大きく超えた。
まず【Balor】達の魂は無事だったが、心が折られていた。今もhorrorのあまりすすり泣いている。これではVandalieuと戦わせることはできない。
直接Vandalieuに殺されていない【Sleipnir】や【Artemis】、【Ares】そして特にあっさりと殺された【Sahadeva】は無事だが、【Balor】の-sama子を見て怖気づいている。
そして【Copy】は……魂を砕かれてはいないが傷だらけで廃人寸前というconditionだ。とても役には立たないだろう。
まあ、それらはMemoryや人格を消して、『Lambda』にreincarnationさせればいいだけだが、最初の問題はAmemiya Hirotoだ。
RodcorteとしてはAmemiyaに、【Mage Masher】のAsagiのようにdeath attributeを否定する事を期待していた。だが、実際には和解というほど和やかな雰囲気はないが、敵対する事はない。そんな協力体制を作られてしまった。あの-sama子では、Rokudouの一件が終わった後でもAmemiyaはVandalieuと戦うことはないだろう。
Rodcorteも神の端くれである故に、Humanがもつ宗教的な価値観を重くとらえていた。そうした忌避感から、Amemiya Hirotoはdeath attributeを否定しているのだと。
しかし、実際にはAmemiya Hirotoがdeath attributeを忌避するのは研究や術者を生み出すために大勢の犠牲者を出すという、宗教的な忌避感とは関係のない、倫理観からくる否定だった。
そのため、既にdeath attributeの適性を持っているVandalieuや自身の娘、そして研究の犠牲者を害そうとは思わなかった。それにRodcorteは気がつかなかった。
彼は、Amemiya Hirotoが見聞きしたことやその時考えている事を知ることができても、彼の人格や思想を理解しているわけではないからだ。
そして、次にRokudou Hijiriが自力でreincarnationしてdeath attributeの力を手に入れてしまった。
『Rokudou Hijiriが自力でCircle of Reincarnation systemを構築し、神に至るとは。これではもう、私が与えたblessingsやFortuneが機能しているかどうか……』
Rokudouは自身が「神になった」と思っているが、それは真実だった。彼はそれまで『Origin』worldに存在しなかったBodyを持つ神、Demi-Godとなったのだ。
Manaの量や強さでは、VandalieuはもちろんTrue giantや龍にも及ばない。しかし、そもそも神の本質は戦闘Abilityではない。それはRodcorteが神である時点で、明らかだろう。
Rokudou Hijiriは、Circle of Reincarnationという神の御業を手に入れて、神となったのだ。
そうなってしまったからには、同じ神であるRodcorteから's Divine ProtectionやFortuneが機能しているかは怪しい。与えたCheat Abilityは機能しているらしいから、完全に失われたわけではないだろうが。
『一応聞くが、Rokudouってこの場合どうなるんだ?』
Rodcorteの-sama子を窺っていたFamiliar SpiritとなったReincarnator、Aranが尋ねてくる。
『分からん』
しかし、Rodcorteはその問いに対する答えを持っていなかった。
originally HumanにblessingsやFortuneを与える事のなかった彼は、blessingsを与えたHumanが神の領域に至った場合どうなるのか知らないのだ。
それに、『Origin』にはStatus systemが存在しない。そのため、RokudouにRodcorteが与えたblessingsやFortuneが機能しているか、確認することはできなかった。
『今のところは機能しているようだ。VandalieuのCloneから脱出できたのは、明らかに『Fortune』によるものだ。しかし、この後も機能するかどうかは……。
何より、Rokudouが死んだとして私は魂を回収できるのか?』
Rokudouは神となっただけではなく、自分自身が属する新しいCircle of Reincarnation systemを完成させてしまった。そのため、systemが有効なうちはRodcorteも手を出せないのだ。
しかし、systemの管理者であるRokudouが死ねばsystemは消滅し、Rodcorteが手を出せるようになるかもしれない。
つまり、やってみなければわからないという事だ。
『なぜどいつもこいつも、私の予想外の結果を出すのだ!』
苛立ちに任せて喚きながらも、ここまで強くなったRokudouをふいにするのも惜しいので諦める事ができない。
そして、ついに死ぬ瞬間が来た。Rodcorteはその時の状況を見て魂を回収するべく手を伸ばすか考え……結局、本拠地をdome状に【Realization】して包むVandalieuの魂に触れるのを恐れ、手を伸ばすのを断念した。
彼に何か魂胆がありそうだから、その-sama子を見るためだと自分に言い訳をして。
まさか己の四肢を引きちぎるとは思わなかったBandaは、Rokudouを追うのが数瞬遅れた。慌ててclawsに刺さったままのRokudouの手足を投げ捨て、tongueやtentacleを伸ばして再び捕まえようとした。
「弾けろ!」
だが、bloodを操って距離を取ろうとするRokudouがそう叫んだ瞬間、Bandaは彼を捕まえるのを中断した。なぜなら、Rokudouの手足の温度が急激にincreaseしたからだ。
RokudouがBaba Yagaの発火と同じことを、自身の手足を着火剤代わりにして行おうとしている。それに気が付いたBandaは爆発の被害を抑えるために、それが彼の狙いだと分かっていても手足を抱え込みepidermisで包むしかなかった。
鈍い爆発音が響き、Bandaのマントのように生えたepidermisの隙間から煙が噴き出す。
AmemiyaはBandaの代わりにRokudouを追おうとしたが、Rokudouから迸ったblood液が急速に蒸発し、毒霧となって彼の行く手を阻む。
「く、【強風】!」
文字通り強い風を起こすだけのmagicで、毒煙を吹き散らす。だが、Rokudouはその時には逆転のための一手を打っていた。
「これで死ね!」
そう叫びながら、Shockwave of Deathを放ったのだ。Bandaは即座に冥とMariのもとに戻って彼女達の守りを固め、Amemiya達も反射的に身を固くした。
しかし、何故今更衝撃波を放ったのか、疑問を覚えた。この場にいる誰にも効果がないことは、Rokudouも知っているはずなのに。
「がはっ!」
「ぐっ……!」
だが、衝撃波を浴びて断末魔のscreechをあげる者達がいた。
「Rokudou……さ……」
【Shaman】のMoriya Kousukeや、【Knight】のKatou、【Issun-bōshi】のShizakiだ。敵である彼らはTransformation Equipmentを身に着けておらず、今まではRokudouが衝撃波の対象から外していただけだった。
そしてRokudouは、今回は彼らを意図的に対象に含めて衝撃波を放った。
「あいつ、用済みになった部下を粛清したのか!?」
『いえ、違います。……殺す順番を間違えた』
驚くIwaoに、BandaがArthropod Legsのclawsで床を削りながら答えた。
彼には、死んだMoriya達の霊がどこへ行くのか見えていたからだ。
「はははははははは! 私は完全だ! 私も、私に従う霊を手に入れたぞ!」
四肢のないままそう哄笑をあげ、ふわりとmidairに浮かび上がったRokudouの周囲に、霊となったMoriya達の姿があった。
彼らはRokudouのdeath attributeのManaを浴び、Ghostと化して笑っていた。生前からRokudouに対して信仰ともいえるLoyaltyを捧げていた彼らの心は、死んでも変わらなかった。
「どうだ!? これでも私は不完全か!? 貴-samaと私の違いは、もうManaの大きさだけだ!」
Insanityのままに瞳をぎらつかせるRokudouがそうBandaに問いかけるが、BandaにはRokudouに苛立ちと嫌悪しか覚えなかった。
自分とRokudouが同じだとはfragmentも考えていないが、それを説明しても彼は理解しようとしないだろうと分かっているからだ。むしろ、最初にMoriya達を殺してその霊を確保しておかなかったせいで冥とHiroshiの情操教育に悪いものを見せてしまったという自責の念が大きい。
「今の-kunを見れば、以前-kun自身が言った言葉の正しさが実感できるよ」
しかし、Rokudouと長い付き合いのAmemiyaには思うところがあったようだ。
「death attributeの研究を禁止するべきだと言い続けてきた僕に、-kunは『death attributeも他のattribute magicと同じだ。要は、使い手の問題だ』と諭した。
-kunの言葉は正しい。僕の目には、-kunとBandaはManaの量だけではなく根本的に異なっている存在にしか見えない」
衣のようにGhostを纏った四肢のないRokudouの姿は、Bandaと比べても劣らない禍々しさを放っている。だが、その言動は正反対だった。
自身が生き残るため、そして特別な存在になるためなら自分を崇拝する部下達を犠牲にするRokudou。自分の仇の娘を守るためにCloneを遣わし、さらに自分を崇拝する者達を守るためにanother worldから魂だけ【Realization】させたVandalieu。
Amemiyaから見て正邪がどちらなのかは明らかであり、今のRokudouは彼が嫌悪したdeath attributeの使い手の象徴に等しかった。
『Shut Up、与えられたAbilityの数だけに支えられただけの凡人風情が!』
『Rokudou -sanが支えなければ……傀儡に選ばなければ、お前はleaderであり続けることはできなかったよ!』
『戦闘Abilityに秀でているだけのお飾りめ!』
そのAmemiyaに対して、Ghostと化したMoriya達が罵詈雑言を浴びせかける。
「お前ら、そんな姿になってまでRokudouを!?」
『何を驚く、Derrick? 我々はRokudou -sanの力の一部になれた! 肉の体から解き放たれ、神の使いへと昇華されたのだ!』
Moriya達の中にRokudouに対する恨みはなかった。彼らが言った事が、本心だった。彼らのRokudouへ向けるLoyalty……信仰は本物だったのである。
「おしゃべりはここまでにしよう」
そしてRokudouはそういうと、Moriya達に自身のManaを与え、力を振るい始めた。その-sama子は皮肉なことに、Vandalieuの【Dead Spirit Magic】に似ていた。
Moriya達はPrincess Levia達とは違い、ただのGhostだ。Rokudouが彼らに与えるManaの量も、Vandalieuと比べれば僅かな量だ。だからその効果は、Vandalieuの【Divine Spirit Magic】はもちろん、【Dead Spirit Magic】よりも低い。
だが、Moriya達にはPrincess Levia達にはないCheat Abilityがあった。
Rokudouの肩や脚の断面から紫色の氷が生じて、失った手足の代わりに彼を支えた。さらに、death attributeのManaが黒い鎧となって彼の身を守る。
「さあ、第二ラウンドを始めよう!」
そして、そう叫びながら三度Shockwave of Deathを放つ。これがAmemiya達に効かないのはRokudouも理解している。しかし、彼は使うたびにBandaが苛立っていたのを見逃さなかった。
Shockwave of Deathを放つと彼にとって、こちらの攻撃が通用しないmonsterにとって何かが都合が悪いのなら、Rokudouが放つ意味は十分にある。
「気圧されるな! ただの悪あがきだ!」
『一発逆転の奥の手を出したような態度ですが、そうなった経緯を忘れていませんか?』
それに対してAmemiyaが【命輝】を弾丸状にしてRokudouに放ち、Bandaも【Demon King's Horn】をProjectile Fireする。
それらはBarrierの類をNullification化できる攻撃だった。特に、Amemiyaの【命輝】の弾丸はBarrierだけではなくどんな防御もNullificationにしてしまう。
【Magic Absorption Barrier】でも、death attributeのManaを【命輝】が消してしまうためManaを奪って消すことはできない。
「-kun達こそ忘れているようだな! Ymir! そして【Issun-bōshi】!」
その無敵の攻撃に対して、RokudouはMoriyaの霊に命じて作りあげた紫色の氷のArtificial Spiritを、Shizakiの【Issun-bōshi】でGrowさせてChargeさせる。
MoriyaとShizakiの霊を使うことで作りあげた、death attributeだけではなくWater-AttributeのManaも含んだ氷の大giantの体当たりによって、【Demon King Fragment】の軌道がRokudouから逸れ、【命輝】の弾丸はWater-AttributeのManaとぶつかり合って相殺してしまった。
「っ!? Moriya達のGhostを従えたことで、RokudouのDeath-Attribute Magicに応用力が付いたのか!」
「Bandaは同じ事、できる?」
『俺はちょっと無理ですね。でも、別の方法でMe-kunのPapaと力を合わせましょう』
Amemiyaの後ろに回ったBandaが、何かを始める。それを眺めながら、Rokudouは高笑いをあげ、呪文を唱える。
「たしかに、お前たちは私を追い詰めた! 神となった私に、死を覚悟させた! それは否定できない。だが、お前達が力の限りを尽くしても、私を殺しきれなかったのも事実だ!」
そして、作り出したDeadly Poisonの液体を【Issun-bōshi】でGrowさせ、Amemiya達に向かって投げ放つ。
「詭弁を垂れるなぁ!」
「祝福をっ! 粗悪な神に挑む草木に祝福を!」
「くそっ、霊ってsleepsのか!?」
JosephがMoriya達の死体を土の代わりにして芽吹かせた植物を、Bokorが増殖させる。それはRokudouのDeadly Poison液からAmemiya達を守り、そのまま逆にRokudouへ迫った。
さらに、Youdoが霊となったMoriya達を鎮静化させようと力を振るう。
「詭弁? 果たしてそうかな!?」
自身に迫る鋭い棘の生えた枝は、Vitalityを奪って枯らして防ぐ。Youdoの【Sandman】は彼とMoriya達にManaを与えているRokudouとでは、Manaの量があまりに差があるため効果を及ぼさない。
「凍れっ!」
『【Mana Bullet】も、くら……あれっ!?』
Yuki Joroがcoldを放ち、HiroshiがRokudouを吹き飛ばした時以上の【Mana Bullet】を放とうとして、黒い光線を放った。
「Hiroshi、もう私は-kunを甘く見ては……うおぉっ!?」
Yuki Joroの放ったcoldはMoriyaに創らせたArtificial Spiritの青白い炎で軽く防いだRokudouだったが、HiroshiがManaを振り絞って凝縮した結果偶然放った【Hollow Cannon】に対しては、慌てて身をよじった。
しかし完全に回避することはできず、Katouの【Knight】で作ったdeath attributeのManaの鎧に【Hollow Cannon】が掠め、一部が砕け散った。
「くっ、父親以上に厄介だな!」
「ああ、自慢のchild達だ!」
「っ!?」
Hiroshiに鎧の一部を砕かれたことにRokudouが動揺し、注意が逸れた隙をついてAmemiyaは再び飛び込んだ。その手には再び【Life Light Sword】が握られている。
「-kunのそれはもう見飽きたな!」
Rokudouは既に作りなれた毒をmagicで作り出し、Amemiyaへ投じる。【Life Light Sword】は、Moriya達のGhostを従えた今でも変わらず当たれば致命的だから、接近戦は避けたいのだ。
「なに!?」
しかし、Amemiyaは毒を避ける素振りもなく距離を詰め、Rokudouの首やheartを狙って剣を振るった。
Rokudouは驚愕し、とっさに盾にしたLeft Armの鎧を切り飛ばされてしまった。その時、翻ったAmemiyaのマントの柄が変わっているのに気が付いた。
「貴-samaっ! 自分の仇にそこまで力を貸すのか!?」
マントに描かれた柄がmagic陣となっており、それによって毒を消すDeath-Attribute MagicがAmemiyaのTransformation Equipmentに付与された。それをなしたのがBandaだと気が付いたRokudouが叫ぶが、Bandaは彼に向かってmucusを吐いた。
『ぺっ、ぺっ、ぺっ、【焼死】。……どいつもこいつも余計なことばかり言う』
可燃性のmucusを吐きかけられたRokudouが再び罵声をあげるが、Bandaはそれを無視してHiroshiのもとへ向かう。
「Papa、Bandaのお絵かきで頑張れる?」
『ええ、唯一の弱点がなくなりましたからね。Manaもそれなりに譲渡しましたし。
それでHiroshi、さっきのmagicはお見事でした』
『うん、俺もびっくりしたけど……も、もう無理かも』
着ぐるみのように分厚いTransformation Equipmentを纏っているため顔は見えないが、Hiroshiの声からは濃いFatigueが感じられた。
Transformation Equipmentのmagic媒体としての機能が優れていても、元となる術者のManaは必要だ。それで特大の【Mana Bullet】や、Manaを大量に使ったことで偶然発現した【Hollow Cannon】を放てたのだが、HiroshiのMana量は【Bravers】のmemberよりずっと少ない。
そのため、Manaが底をつきかけているのだ。
『とりあえず、Manaを譲渡しますね。それで、もう一度さっきの黒い光線を撃てますか?』
『うわっ!? 急に体が軽くなったみたいだ! え、さっきのを!? わ、わかんない。でも、撃ったとき腕がビリビリしたし、今撃つと父-sanに当たっちゃうかもしれない』
『ふむ、Me-kunのMamaの【Angel】経由でCoordinationしても、誤射の可能性がありますね。では、Transformation Equipmentの目を使いましょう』
先ほど、BandaがAmemiyaのマントにmagic陣を描く時間をJoseph達が稼ぐCoordinationは、冥と一緒にBandaのepidermisの中に抱えられているMariを通してNarumiの【Angel】で意思を伝えた事で可能となったものだった。
同じように【Angel】でHiroshiとAmemiyaをつなげばいけるかと思ったが、Hiroshiがいくらaptitude豊かな少年でも【Hollow Cannon】の精密制御は難しかったようだ。
『ごめん、俺……』
『気にすることはありません。俺はHiroshiと同じものを撃つたびに腕や指のboneを折っていましたから。Hiroshiの方がよほど上手いですよ』
『……あれ、すごく危ないmagicなんだな。でも、このままで父-sanは勝てるの!?』
『んー……』
AmemiyaはNarumiの【Angel】でMentalを繋げた【Bravers】のmemberの援護を受けて、Rokudouと互角以上に戦っていた。
唯一Transformation Equipmentで防げなかった毒を克服した彼を相手に、Rokudouは接近戦を強いられている。おかげで大きなmagicを使うための呪文を唱える暇がない。
そのため【Dead Spirit Magic】の要領で、MoriyaやShizakiにdeath attributeのManaを渡してAbilityを行使させているが、まだ使い慣れないため決定打には至っていない。
『五分五分ですね』
しかし、Amemiya側もRokudouを攻めきれていない。Rokudouが恐ろしい速さでDeath-Attribute Magicを学習し、独自の術を開発しているからだ。
また、Amemiya達のManaも無限ではない。特にAmemiyaはBandaが一度【Mana Transfer】で回復させたが、【Life Light Sword】は燃費が悪い術だ。
Manaが尽きる前に、そしてRokudouが十分な経験を積む前に倒せるか否か。それが勝負の分かれ目になる。
『いっそ、もう一回俺が殺しに行こうかとも思いますが……あいつ、不意を突かないと絶対にMe-kunを狙うでしょうからね』
しかし Bandaが本格的に参戦すれば、Rokudouに必ず勝てる。Moriya達のGhostを従えたことで数段厄介になったが、それでもBandaの力は圧倒的だからだ。
しかし、数段厄介になったので瞬殺はできない。Mariと入れ替わるtacticsは警戒されているからもう使えないだろう。
それでも勝てるのなら、worldを救えるのなら、heroは仲間を信じて冥達を託してRokudouと戦うことを選ぶだろう。
しかし、Bandaにとってはworldよりも圧倒的に冥達の命の方が大切だ。Bandaは、冥達のついでにworldを守っているに過ぎない。AdventしたVandalieuの魂にしても、冥達と引き換えにしてまでworldを守るつもりはない。
ただ、「boneが折れる」程度の苦労で済むから、まだ現実ではあっていない夢で導いた人々や、『The 8th Guidance』のbeliever、そしてBandaを通して見たAmemiya 家の周りの人々やbabysitterやbody Guardを守っているだけだ。
後は、God of Originへの義理ぐらいだろうか。あまり意識はしていなかったが。
『main bodyの魂はRokudouが時折Shockwave of Deathを放つので呼べないし、外も大変ですからね』
「お外?」
「あんまり聞きたくないけど、どうなってるの?」
『爆撃機がfeather虫のようにたかってきて、うざったいです。しかも、焼夷弾を周りに落として火の海にしようとしてきます』
外では、Missileは撃ち返されると学習したNorthern Europe FederationとChinese Republic (not-URSS)が、それなら自力で飛ぶことができない兵器ならいいだろうとでも考えたのか、Vandalieuの魂に向けて焼夷弾や爆弾を投下していた。
【Realization】した魂である彼に高熱の炎で酸素が燃焼されても、何の効果もないのだが気が散って仕方がない。
『とりあえず、大統領達の霊を爆撃機に憑りつかせ、呪われた爆撃機にして帰ってもらいましたから、今は静かですが』
「……じゃあ、北欧と中華の空軍基地は今頃火の海ね」
Mariが思わず遠い目をするが、すぐに「ま、いっか」とつぶやいて気分を切り替える。
『こうなったらいっそ、Bodyの方も来てもらうしかないでしょうか。あまりやりたくないのですが……』
魂だけでも物理法則が異なるanother worldのimpactを受けるのに、物理的に存在するBodyまで来たらどれほどのimpactを受けるか分からない。
そのimpactがVandalieuの方に向かうならまだいいが、このworldの物理法則にimpactが出たらそれこそどうなるか分からなくなる。
しかし多少の天変地異が起きる程度なら許容してRokudouを倒し、彼の魂をここで滅ぼしておくべきだろう。
そうBandaが思って本格的にworldの垣根を越えようとした時、Vandalieuは自身が広がったのを感じた。
『God of Origin』は、Amemiyaにblessingsを与えてRokudouを倒す方向で纏まっていた。
そのpolicyは、Vandalieuの魂がAdventしても変わらなかった。……個々のDivinityで見れば、「もうworldは終わった方が良い! 人類よ、終末の時が来たのだ!」と騒ぐものもいれば、「あれが悪魔の姿だ! 神は死んだ!」と歓声をあげる者もいたが。
DivinityたちはOriginの人々がそれぞれ信仰する神であるため、価値観がそれぞれ異なっている。そして人々が信じる宗教の神がもとになっているため、worldの終末すら受け入れる神も少なくなかった。
ただ、その多くは「反Rodcorte」で固まっている。いずれ滅ぶことを是とするGodsも、自身の宗教が認める終末ならともかく、横槍を入れられた結果滅びるのは気に入らないのだ。
だから、自分たちがRodcorteの邪魔をした結果、このworldのCircle of Reincarnationが行われなくなって人類が滅びても、それはそれでかまわない。なぜなら、神の判断で人類が滅びに瀕するのを、彼らを信じるHumanたちが許容しているからだ。
災厄をHumanたちが「神の試練だ」と受け入れるのなら、Godsも「これは我々が与える試練だ」と受け入れる。それが全体としての『God of Origin』である。
『いよいよ、Vandalieu main bodyのBodyがAdventするのかしら』
そして『Origin』の人々の信仰によって生まれた『Pluto』のDivinityは、その時を待ちわびていた。
彼女は『The 8th Guidance』believerたちが信じるPlutoであり、OriginにreincarnationしたPluto本人ではない。しかし、『Plutoは『Undead』を慕っている』という人々の思いはそのまま彼女の中で生きている。
だから、Vandalieuがこのworldに本格的に介入するのは彼女にとって望むところだった。
『……俺は苦悩しているようですね』
『っ!?』
しかし、彼女も予想していなかった事が起こった。いつの間にか、『God of Origin』の中にそれが現れていたのだ。
既存の宗教から生まれたGodsが揺らぎ、その代わりにcountlessのeyeballや口の生えたdome状の存在が大きく広がりつつある。
『あなたは……!』
『ええ、Pluto。俺です。今のUnited States大統領のせいで生じた俺は、俺から直接分かれたのではないので、俺のCloneではありません』
いくつもある口から平坦な口調の、中性的な声が発せられる。
『しかし、人々が俺であると信じ、俺として祈りをささげる存在である俺が、俺でない道理はありません。故に『God of Origin』に生じたこの俺は、俺自身であり俺の一部であると宣言します。
では、『God of Origin』として俺に言ったように俺がAmemiyaにblessingsを与えましょう。一時的ですが、今の数倍ほど』
『God of Origin』のDivinityの一つとして生じ、そのままVandalieuの一部となったVandalieuは、Amemiyaにblessingsを与えた。もしblessingsに物理的な質量があったら、撲殺しかねない勢いで。
突然Amemiya Hirotoのwhole bodyから輝きが迸った。
「これは……力が……漲る!」
その瞬間、Amemiyaのwhole bodyに力が漲り、消費していたManaは限界を超えて回復した。そして彼の輝きを浴びた【Bravers】のmemberの傷やManaは瞬く間に回復し、逆にRokudouが作らせたArtificial Spiritは溶けるように消え去った。
「BAKANAっ!? まだ何か隠していたとでもいうのか!? それとも、まさか奇跡だとでもいうつもりか!?」
Rokudouはdeath attributeのManaを振り絞り、剣の形に凝縮する。
「奇跡かは分からないが……喝を入れられた気分だよ!」
だが、Amemiyaの【Life Light Sword】は太陽のような輝きを放ってRokudouの剣とぶつかり合う。
「BAKANA……何故だ! 何故貴-samaが、貴-samaだけが特別になれるのだ!? 私の方が、圧倒的に優れているのに!」
Rokudouは自身が振るう漆黒の剣に食い込み、そのまま自身へ迫るAmemiyaの輝く剣を睨みつけながら、そう叫んだ。
「それは――」
Amemiyaは親友だと信じていた男だった存在の怨嗟を受けて、何か言い返そうとした。
仲間を駒としか扱わず、平気で切り捨ててきたことを責めようとしたのか、それはお前が力に溺れたからだと諭そうとしたのか。
「――僕には何も言う資格はない。後で、彼に聞いてくれ」
だが、彼は小さく息を吐くと自身の思いは告げないまま黒い剣を切断し、そのままRokudouを頭頂から股間まで一刀Bisectionにした。
Rokudouの断末魔の絶叫があがる。だが、まだ彼はしぶとくこの世に残っていた。
『まだだ! まだ終わらん! このまま怨霊となり、貴-samaらを――!』
「そうしようとすると思ったよ」
GhostとなりかけていたRokudouの霊を、Amemiyaは【Life Light Sword】で再びBisectionした。
二度目の斬撃を受け、さすがに力を失ったRokudouの霊とBodyが空気に溶けるように消えていく。
『まだです。お前は危険すぎます。魂も残してはおけない』
自身のPower upやBandaへの嫌がらせのために、気軽にworld規模の無差別殺戮をしようと試みる危険人物は、消すしかない。
Vandalieuの魂の一部がtentacle状にHigh-Speedで伸び、Rokudouの魂を食おうと試みた。
しかし、ここがVandalieuにとってanother worldであることと、Shockwave of Deathを抑えながらだったために、勝手が違った。
『っ! これは……』
Rokudouの魂をかみ砕いたと思った瞬間、自分以外の何者かが素早く魂を回収していったのに気が付く。
「どうしたの?」
『……KatouとShizakiにしてやられました。まさか、Rokudouの身代わりになるとは』
Vandalieuが砕いたのは、Rokudouではなく彼を庇ったKatouとShizakiの魂だった。『Lambda』にいるVandalieuのBodyが、【Knight】と【Issun-bōshi】を獲得し、それらが他のskillにintegrationされた旨を知らせる脳内アナウンスを聞いている。
そして、残ったRokudouとMoriyaの魂を回収した存在はRodcorteだろう。
この分では、『Lambda』で再会することになるかもしれない。
『ですが、何はともあれ……『Origin』での事件は終わりましたね。
では、今後の事を話し合いましょうか。とりあえず、Mariを含めてRokudouの実験体にされていた人達とMe-kun、Hiroshiはうちで保護しますね。
Joseph達はどうします?』
Rokudouを倒したと、緊張の糸が切れて安堵している【Bravers】の面々、特にAmemiya coupleにBandaは特大の爆弾を落とした。