Rokudouの本拠地の入り口を守るmercenaryや、mercenaryに扮したNorthern Europe FederationやChinese Republic (not-URSS)の正規兵も、時が来ればmonsterと戦う事になると理解していた。
そう、monsterだ。【Bravers】と名乗る、monsterども。特殊Abilityを持ち、たった数か月訓練を受けただけでveteranの精鋭兵並の実力を手に入れた超人集団だ。
【Balor】は素手で戦車を叩き壊し、【Sleipnir】は旧型機で新型機を操縦するveteranを圧倒し、【Mage Masher】の前にはどんなMageも木偶の坊になり下がり、【Oracle】は諜報organizationの存在意義を否定する勢いで犯罪organizationや国の暗部の情報を予言する。
そんなCheat集団相手にも戦えるよう備えて来たつもりだった。
火薬とManaで特殊合金製の弾頭を撃ちだし戦車の装甲も貫く、Mana充填式対戦車Rifle……通称対戦車Rifle。さらに生身のHumanに向けるにしては火力過剰な三連大型ガトリング砲に、boneまで瞬間凍結出来る攻撃magicが込められたフロストボム。
それを扱うSoldier達全員が着ているのは、最新鋭Powered Suitだ。body part Abilityの引き上げやMana媒体機能はcertainly、対物理防御、対magic防御も装甲車並。毒ガスだろうがvirusだろうが防ぐ事が出来る。
他にも軍用Golemにmagic item、生物兵器、Undead兵器……局地戦ならUnited States軍相手でも圧倒できる戦力が集められている。これならmonster相手でも勝てるのではないか。所詮奴等も、超がついただけの人なのだから。
そんな事を昨日まで思っていたSoldierは、【Chiron】のDerrickが放った攻撃magicによって対戦車Rifleごと炎に飲み込まれ、意識を手放した。
「俺のmagicですらここまでのAttack Powerか、magic媒体としてもかなりの性能だな。これをメーカーに持ち込むだけで、一生食っていけるんじゃないか? まあ、その気はないが」
Derrickはそう言いながら、自身が破壊した戦車の装甲板を蹴りあげて遮蔽物を作り盾にする。
彼は【Bravers】の中では、戦える方だ。しかし、その強さは普通の精鋭よりもちょっと強いという程度でしかない。予算をたっぷり使った最新兵器を操る精鋭相手に、一方的な戦いを展開できる程ではなかった。
それを可能にしたのが、彼が身に付けているmetallicなPowered Suit……Transformation Equipmentの性能だ。
(body part AbilityとDefense Powerのincrease、そしてmagicのAttack Power Augmented (2)がやたらと高すぎる気もする。これはDefense Equipmentではなく、兵器だ。こんな兵器を開発しなければならないBandaが……Amamiya Hirotoがいる『あの世』とは、いったいどんな修羅のworldなんだ)
自分達が渡されたTransformation Equipmentの性能に、そう内心戦きながらDerrickは呪文を唱えた。
「【Lightning】!」
Activateした攻撃magicが、軍用Golemに直撃して火花を上げた。
「持ちこむ気なら、止めておいた方がいい。何でもこのworldには存在しない金属で創られているらしいから」
【Sandman】のYoudoがそう言いながら、Derrickの作った遮蔽物のshadowに転がり込んでくる。
「ああ、疲れる。休憩、休憩」
「そうか、このworldに存在しない金属か。やはり、Death-Attribute Magicが関わっているのか?」
「maybe。詳しくは聞いてないけどね。それに、メーカーのその道のプロたちに悪いだろ、これを見せちゃ」
Youdoのその言葉を、Derrickはこのworldではどうせ再現できないのだから見せても意味はないという意味だと思った。
実際は、「Vandalieuが実益以外にも、ノリと趣味とKanakoのIdol活動を補助するために作っているEquipmentが、自分達が真面目に研究開発したSuitより高性能である事を教えるのは、気が咎める」という意味だったのだが。Transformation Equipmentの材料については知らないが、創作秘話は聞いているYoudoだった。
「ところで、Golemは眠らせられないのか!?」
「悪いけど、地面のtrapと監視cameraを眠らせるので手一杯。このEquipmentはAbilityのMana消費までは抑えてくれないんだよ」
そうDerrickに言い返すYoudoに、なら自分が代わりにと言うように地面から生えた樹木が軍用Golemを絡めとり、装甲の内側に根を伸ばして侵食していく。
その横では、装甲車がgiantに踏まれたかのように潰れ、grenadeランチャーを構えていた敵兵が氷像と化した。
「これであらかた大型兵器は破壊したか?」
Amemiya達が何時までも入り口で戦っているのは、Rokudouの本拠地の内部構造が不明である事もあるが、彼の研究の被害者達の救出に向かったBandaの援護のためだった。
施設が地下にある以上、施設内で激しい戦闘を行えばDecayの危険が高い。無論、Rokudouも施設を提供した大国も頑丈に造っているだろう。しかし、Amemiyaが【Ignore Defense】を使えばどんなに頑丈な建造物でも一気に崩れる可能性がある。
だから戦車や大型の軍用Golemの相手は、地上部分で済ませておきたいのだ。
「私達が内部の構造まで知っていればよかったのだけど……」
「所詮はモルモット。施設の場所は知っていても、研究棟と我々の飼育施設以外は知りようがありませんからね」
Yuki JoroとBokorはそう嘆いてみせながら、適当なSoldierを氷像にしたり、Josephが操る植物を増殖させたりしていた。
Yuki Joroは凍死を操り、Bokorは一見するとLife-Attribute Mageのようだが増殖……Decompositionを操るLimited Death-Attribute Magic師だ。
人が死ぬと体内の微生物が増殖し、Decompositionする。そして死体を糧にして新たな生命が芽吹く。その過程を彼は司っている。runawayした『Undead』が、科学者の体内から蟲に食い破らせて殺したmagic。それが彼には出来るのだ。
「そう言う二人は、Bandaと冥について行かなくて良かったの?」
「「その神とSaintess -samaから、貴方方の援護をするようにと言われましたので」」
Nanamoriの問いに、そうSmiling Faceで答える二人。
「Nanamori、あなた達を助けて欲しいと。他は、死なれると迷惑だと神が」
「Saintess -samaは分け隔てなく助けよと。そうSaintess -samaが望まれるのなら、我等はそれを果たすまで」
その二人の答えに嘘偽りはない事は、この場の全員が理解していた。二人はNarumiの【Angel】で、Mentalを【Bravers】達と接続したconditionにあった。
そうしなければ、接続conditionにある【Bravers】達とのCoordinationに難が出るという理由もあった。だが、そうでもしなければ背中を預ける事に抵抗を覚えるのも確かだ。
それをBokorとYuki Joroは自ら指摘し、【Angel】でMentalを接続したいと申し出た。
驚くNarumiに、「私達のような存在を『普通』の人はfanaticとか狂っていると言うのでしょう? そうした存在に背中を預けるのなら、相応の保険が必要だと思いまして」とYuki Joroは答えた。そしてBokorは「それに、我々も貴方方に背中を預けるのに不安を覚えない訳ではありませんから」とSmiling Faceのまま言い放った。
「……そうか。協力に感謝する。-kun達が僕の礼を求めない事は知っているが、それでも感謝させてもらうよ」
マントを翻して仲間の元に戻ったAmemiyaはそう二人に言ったが、返って来たのはやはりそっけない態度だった。Yuki Joro達は冥をSaintess -samaと呼び信仰するが、その両親であるAmemiya coupleには無関心なのだ。
「その通りですが、あなたが我々に対して誠意を持って接している事は理解しているつもりです」
無視はしないし、質問されれば答える。しかし、そこにemotionsは込められていない。とてもドライな大人の対応だ。それは、BokorがAmemiyaにそう返答した瞬間でも揺るぎがない。
「どうやら、これで戦車や装甲車は終わりみたい。このまま進む? それとも、Mari達がrescueを終えるまで待機する?」
Narumiの【Angel】は他者のMentalを繋ぎ、magicと科学双方の通信妨害がNullificationなリアルタイム通信を可能にするというAbilityだった。
しかし、透視Abilityも持っていた【Clairvoyance】の天道等情報を得る事に特化したmemberを次々に喪ったため、彼女は状況的に【Angel】の成長を促された。
そして、結果的に範囲内に存在するHumanのMentalの位置と数を把握する事が出来るようになったのだ。これにより、彼女は戦車や装甲車に乗った敵を把握する事が可能なのである。
……ちなみにHuman以外のMentalは【Angel】では接続出来ず、存在も感知出来ない。そのせいか、BandaのMentalと繋ぐ事は出来ず、冥の位置は把握出来てもBanda自身の位置を把握する事は出来ていない。
そのためGabrielとMariがBanda達と行動を共にして、状況を知らせていた。
「Banda達はまだ被害者の救出を終えていないのか。……意外だな、てっきり楽勝で終えると思っていたが」
Iwaoの言葉に、思わずうなずく一同。Bandaなら、どんな障害も蹴散らして進みそうな印象が彼等の中にはあった。
しかし、さすがのBandaもこれまで通りのpaceのまま閉鎖spaceで保護対象を増やしながら進むのは難しいようだ。
寧ろ、Bandaの侵攻を止めているRokudouの采配を褒めるべきなのかもしれない。
「しかし、これまで出て来たのは高性能で重武装である事を除けばただのSoldierだけだ。それでは僕達を止められない事くらい、Rokudouなら分かりそうなものだが……」
Rokudouは【Bravers】の中枢にいた男だ。memberの戦闘力の高さは、誰よりも知っている。
BandaのTransformation Equipmentによって戦力が増したとはいえ、それを差し引いたとしても最新の戦車や軍用GolemでDerrickならともかく、Amemiya Hirotoを倒せるとは考えないはずだ。
「まさか時間を稼いでいるのか? なら、先に進むしかないが――」
Amemiyaが先へ進む事を選択しようとした時、彼の声を遮ってけたたましいサイレンが鳴り響いた。
「何だ!? まさか自爆装置でも起動したのか!?」
「自分が裏切ったorganizationの元仲間が仮装をしてMonsterと一緒に攻めて来たら、自棄にもなりたくなるだろうが……違うらしいぞ」
狼狽えるIwaoに、Derrickがbloodの気の失せた顔で通路の先を指差す。そこから、異-samaな姿の生物が群れをなして現れた。
『GAAAAAAA!』
『ヴボアァァァ……」
戦車程にGrowしたfurの無い狼や、片方の前足だけが極端に肥大した熊、目の無い二足歩行するlizard、そしてbody partに機械を埋め込まれたZombieだ。
「これは……RokudouがDeath-Attribute Magicを利用して創りだした生物兵器や、Undead兵か!」
Amemiyaが嫌悪感も露わに叫んだとおり、彼等はRokudouがDeath-Attribute Magicを研究する過程で生み出された失敗作、そしてそれを兵器に転用できないか試したものだ。
動物達は『The 8th Guidance』のBerserkのように、Death-Attribute Magicを一種類だけ使う事に特化した兵器を目指して開発された。だが、戦闘力はEnhanced (1)されたが凶暴性が増し過ぎてcontrol不能のmonsterにしかならなかった。
Zombieの方は一部を機械化する事でHumanを超えた戦闘力を発揮する不死のSoldierとして運用する事が可能になったが、やはり制御に問題があり容易くrunawayしてしまうため失敗作の烙印を押すしかなかった。
だが、使い捨ての戦力として使うために飼育し続けていたのだ。
「あまり良い気分ではないが、やるしかない……のか? それとも、Bandaを待った方がいいのか?」
そう言うIwaoを含めた【Bravers】は、Manaによって獣が変異して誕生する魔獣や自然発生したUndeadを倒した事が数え切れない程ある。
だが、十年以上前に討伐した『Undead』が自分達と同じReincarnatorだった事を知り、しかも当人がBandaとなって存在している今では倒すのに躊躇いを覚える。
しかも、RokudouのDeath-Attribute Magic研究の犠牲者という点ではこの場にいるYuki Joro達と同じなのだ。
Bandaは『向かってくる相手に関しては、気にしないでいい』と言われていたが、それでも戦うべきか二の足を踏んでしまう。
その時、【Angel】で繋がっているMariがこちらの状況に気がついてBandaからの伝言を寄越した。
『向かってくる相手に関しては、気にしないでいいと言ったでしょう。だって』
「え、マジでいいのか?」
『そうみたい』
Iwao達はBandaがLimited Death-Attribute Magic師、つまり実験体を全て救おうとしているように見えたし、全ての実験体はBandaを信仰しているように見えた。
だが、実際はそうではない。BandaはVandalieuがGuiding事が出来た者を助けに来ただけで、それ以外の者を助けようとは考えていない。
Rokudou達は知らないが、実験体にされたHumanの中でも【Decomposition】の男のように導かれないものがいる。彼なら勝てないと分かれば命乞いをして、寝返る事を約束し、知っている情報を全て提供するだろう。そして助かった後で逃げ出すか、殺せないかと隙を突こうとする。
そうした者までBandaもVandalieuも助けようとは思わない。
同じく、攻撃性だけを向けて来るreasonのない存在についても助けようがないので考えない。
「まあ、他ならぬ本人がそう言うなら構わないが……あれ? こっちに向かってこない?」
Rokudouが差し向けて来た使い捨ての戦力達は、姿を現したがAmemiya達に襲いかからずその場に止まっている。
『GIAAAAA!!』
『ア゛ア゛ア゛ア゛!!』
そしてお互いに殺し合いをしていた。
その多くは獣対Undeadの組み合わせで、恐らくRokudouの命令とAmemiya達を無視して争いを始めていた。
「……この場合はどうする? 向かってきてはいないが」
「通り抜ける! こちらに攻撃してくる個体だけ攻撃するんだ!」
Rokudouの計算は、ここでも大幅に狂う事になった。
一方、Banda達は長い地下通路を進んでいた。本来彼等を足止めするべく配置された戦闘要員は、【Bloodshed Enhancement】の男や【Possession】の女のような実験体が裏切る事でDecayしており、殆ど障害にならない。
『GAAAAAAA!!』
『やはり同じ実験体でもダメですか』
ほぼ唯一の障害となったのはRokudouが差し向けた獣だったが、これもBandaはあっさりと屠ってしまう。
「death attributeのmagicで変異させられたといっても、多くはただの獣という事でしょうか」
『みたいですね。『The 8th Guidance』には改造された熊のBerserkがいましたが、彼はIsisに制御されたconditionで何年も仲間と過ごしたため強い絆が出来ていたのか、俺がManaを吹き込んだからか……』
そうBerserkと足元に転がる六目の虎の差を考えるが、すぐにやめる。
『あぁぁぁぁ……め゛い゛い゛……ぐ…………』
『お゛お゛お゛……』
『ぐぅるぉぉぉ……』
「きゃっきゃっ!」
差し向けられた方のUndeadは、冥のUnder Commandに入っているからだ。ちなみに、倒れていた【Bloodshed Enhancement】の男と【Possession】の女もUndead Transformationしてその中に入っている。
「トラ-san、トラ-sanも元気になーれ、良い子になーれっ!」
そして倒れ伏した六目の虎も、冥がそう唱えてステッキを振るうと閉じていた瞼を開き、瞳を濁らせたまま立ち上がり唸り声をあげる。
『Me-kunも立派になって……基本的なDeath-Attribute MagicのMana配分では、既に俺を越えたかもしれませんね』
「さすがMama!」
冥のUndeadを魅了し、作り出す手腕を褒めるBandaとMari。
Rokudouも意図して冥に愉快なお友達やBandaの信奉者を配置していた訳では、certainlyない。実験体の場合は【Metamorph】達と接触していない者を選び、Undeadも刺客のつもりで配置した。
しかし、Vandalieuと冥が夢というRokudouが防ぐ事はcertainly監視する事すら不可能な方法で接触していた事と、Undeadを魅了するという特性まで冥が受け継いでいた事に気がつかなかったため、逆効果となった。
Death-Attribute Magicを発見した軍事国家も、『Undead』が霊を魅了する力を持っている事には気がついていなかった。『The 8th Guidance』のIsisやValkyrieは、自分達が改造して創りだしたUndeadを操っていただけだった。それらを参考に冥とBandaを想定していたRokudouは、自分が創りだしたUndeadが冥のallyになるとは夢にも思わなかったのだ。
「……magicが上手くなるのはいい事だけど……喜んでいいのかな? 見かけがスゲー悪役っぽいんだけど」
Undeadに囲まれているImoutoの姿に苦笑いを浮かべるHiroshi。Bandaについてはすっかり見慣れていた彼だが、他のUndeadに対しての免疫はまだ強くなかったようだ。
「正直、私もどうかとは思う。衛生的な問題は【Sterilization】ってmagicで防げるし、【Deodorization】の術もあるからご近所から悪臭で苦情が来る事も無いらしいが……それに虎は確か、海外から持ち込むのを規制していたはずだ。
後でAmemiya達と話し合った方が良いな」
「Ulrikaおば-san、俺がしているのはこの人達を連れ帰った時起こりそうなご近所troubleとか、Pet的な心配じゃないから」
「ん? そうか? ならきっと大丈夫だろう」
ちなみに、【Angel】でMariと繋がっているAmemiya coupleは、冥については「とりあえず、Rokudouをどうにかしてから考えよう」という意見で一致させていた。
Bandaの正体についてと同じ扱いである。そしてBandaもそれで良いと思っていた。
「そう言えば、Gabrielって女なの? それとも男?」
「どちらでもある。originallyは双子だったが、『二人のHuman integratedする事でMana integratedする』事を目指して、双子の兄とImoutoを一つにしたのが私だからだ」
「そうなの!?」
「そうなの。実験には成功してManaは二倍になった。私以外の被検体は失敗したようだけれど」
「そうなんだ……みんな大変だったんだなー」
「主観的にはそれ程でもない。お前もこれから大変だぞ」
「うん、そんな気がする」
そしてHiroshiは少し年上の少年またはShoujoに見えるGabrielと会話を始めた。緊張感にかけた態度だが、Bandaが凄惨な光景や残酷なものを見せないようにして来たので、無理もない。
そのため、Hiroshiには今自分達がRokudou達裏切り者との戦いの最中にいるという自覚も薄いようだった。
それで今までは問題がなかったのだが……。
『これはHiroshiの出番かもしれません。保護対象が増え過ぎています』
尚も襲い掛かってくる獣を屠りながら、Bandaがそう言った。
Bandaはこのworldでは強力無比な存在だ。しかし、増え続ける保護対象を全て守りながら全ての脅威を叩き潰す事は出来ない。そのため、Hiroshiの力が必要だと。
「えっ? 俺の出番って何だよ!? 俺が出来るのは【No-Attribute Magic】で少し離れた場所の空き缶を潰すか、普通のattribute magicだけだぞ。攻撃magicだって、殆ど知らないし」
Cheat Abilityはともかく、body part Abilityとmagicの素質はAmemiya coupleから優れたものを受け継いだHiroshiだが、彼は今年九ageになる少年である。
当然だが、child同士の喧嘩ならともかく殺し合いでは戦力にならない。
『いえ、別に戦ってもらう訳ではない――』
「今だっ!」
Bandaが何か言おうとした瞬間、magicで獣の群れに紛れて姿を隠していた男が現れた。
「お前はっ、【Copy】のIguchi!」
MariがCodenameと名を言って指差した男は、【Bravers】のmemberの一人。【Copy】のIguchi Takeoだった。
彼はmagicによって獣の群れの中に隠れる事で自身の生命反応を紛らわせ、chanceを伺っていたのだ。
攻撃ではなく、その『対象が使っているmagicを、素質に関係無くCopyする』Cheat Abilityを使う機会を。彼は、Abilityの有効範囲内に収めた冥に向かって両掌をthrust出して叫んだ。
「これで互角だ! 出でよ、俺のMonster……あぎゃ?」
だが、姿を現した事でIguchiに気がついた獣達が彼に襲い掛かった。
「ば、BAKANA!? 何故【Copy】できない!? 俺はDeath-Attribute Magicでも、Copyする事が出来るのに……何故そのMonsterを創り出すDeath-Attribute Magicを【Copy】できないんだぁぁぁ!?」
Iguchiと彼を差し向けたRokudouは、正体不明のMonsterであるBandaを「冥が何らかのDeath-Attribute MagicでCreationし、使役している存在」だとconjectureした。
何故そうなるのかと言うと、彼等は『Undead』がAmamiya Hirotoである事を知っていても、彼がこのworldでの死後にreincarnationしてVandalieuとなり、夢を通してこのworldにsoul fragmentから創ったCloneを冥に憑けて送り込んだ事を知らないからだ。
blood縁であってもReincarnatorのCheat Abilityは遺伝しない。そうである以上、冥と関係があるらしいBandaは彼女の【Death-Attribute Magic】で創られた存在だと考えるのが、彼等にとっては当然だったのだ。
だから、Iguchiの【Copy】で同じmagicを使えば一発逆転まではいかなくても、戦況を自分達の側に傾ける事が出来る。そう考えたのだが……。
『そりゃあ、magicじゃありませんからね』
想定が最初から間違っていたため、不発に終わった。それどころか、無防備な姿を自分達が作った獣の前に晒してしまった事で、自爆してしまった。
Bandaは素早く口から吐き出したmucusでIguchiを包むと、白濁したジェル状のmucusの中で身動きが取れない彼をそのままclawsで刺殺した。
そして、ついでに魂を砕けないか少し試す。【Balor】の時は冥とHiroshiに見せずにtraumaを植え付けて心を圧し折る時間があったが、今は無いからだ。
そして数秒試した結果、VandalieuのCloneでしかないBandaには魂は砕けない事が分かった。
(全く砕ける気がしない……やはりmain bodyでないと無理ですか)
そう諦めて、Iguchiの魂を解放する。これではRokudouを滅っするには、main bodyを呼ぶしかないだろうか。
『話を戻しますが、Hiroshiには戦ってもらう訳ではなく皆を守るのを手伝ってほしいのです。このまま進めば、まだ実験台にされる前の戦う力のない人達を大勢連れ出さなければならなくなりますから』
「でも、俺にはそんな力……」
『大丈夫です、これを使えば』
そう言ってBandaが取り出したのは、ステッキや携帯型のTransformation Equipmentとは全く異なる、一抱えほどもある金属塊だった。
『これはHiroshiの為に作った、重装甲型Transformation Equipmentです。使ってみてください」
「俺専用!? やったーっ!」
heroに憧れている思春期に差し掛かりつつある少年は、迷わずBandaが出した新型Transformation Equipmentに手を伸ばした。
Unaging不死という餌によってRokudouに協力していた各国の政財界の大物達は、今になって苛立ちと不信感、そして焦りを覚えていた。
本来なら今日、RokudouはDeath-Attribute Magicを完成させて新worldの神となり、自分達にUnaging不死の恵みを分け与えてくれる予定だった。それまでには何のtroubleも起こらず、邪魔も入らない。安全に人類の夢である永遠の生命を手に入れ、新worldのNobleとしてReignする事が出来るはずだった。
「人生にtroubleはつきものだとは言え……何か説明があってもいいのではないかな? mister Rokudouは何処にいる?」
United States大統領にそう問われた【Shaman】のMoriyaは内心冷や汗を流していた。
「今、Rokudouは最終調整を行っています。申し訳ありませんが、皆-samaにはもう少々お待ちいただきますが、何の問題もありません。
この基地を攻撃している者共も、もうじき鎮圧する予定です」
そう説明するMoriyaだが、彼自身それが嘘である事はよく分かっていた。
始末したかった邪魔者が全員生きていて、始末して戻って来るはずだった仲間は死ぬか消息不明。裏切る筈のないminionsは、裏切って敵側についている。
そして現在、備えは万全だったが実際に攻撃を受ける事はないだろうと考えていたこの基地は、激しい攻撃にあっている。
今は形としては押し止めているが、それは敵がモルモット共のrescueを優先しているからである事をMoriyaは理解していた。幸いな事に、Rokudouがモルモットを人質ではなく敵の動きを封じるための足手まといとして使う事を思いついたため、まだ時間を稼ぐ事は可能だが……それが後数分しか持たないのか、それとも一時間以上稼げるのかは、分からない。
少なくとも、ここを脱出して何処かに潜伏するための時間はないだろう。
彼が司令部を出る時、監視cameraに映っていたのは、Hiroshiが全長二meter強の金属質の何かで出来たMonsterにTransformして『なんだこれぇ!? これじゃ怪人じゃないか!』と咆哮をあげる姿だった。
どう見てもMonster二号である。この戦況を覆すのは、Rokudouでも不可能かもしれない。彼の信奉者であるMoriyaですら、そう考え始めていた。
少なくとも、Divine RealmのRodcorteは『今すぐsuicideして、魂だけでここに来い!』と叫んでいるだろう。
Moriyaがそうなのだから、信仰や信頼ではなく利害関係でRokudouに協力していた大統領達は尚更だ。
彼らは頭の中で、Rokudouに見切りをつけてfrom here脱出するプランや、自分が協力していた事を隠し通すか、できるだけDamageを抑えられるよう情報を操作するプランを考えているのだろう。
……United States大統領や諜報機関の長官は、本国でCoup d'étatが起きているので既に手遅れだが。
『皆-sama、お待たせしました』
その時、壁に設置された大型モニターにRokudouの姿が映しだされた。
「mister Rokudou!?」
『たった今最終調整が終わったところです。忙しい皆-samaをお待たせしてしまい、本当に申し訳ない』
「何だとっ!? では、遂に永遠の命が手に入るのか!?」
「早くしてくれっ、地上から【Bravers】が攻めてきているのだぞ!」
『落ち着いてください。まずは、私がDeath-Attribute Magicの力を手に入れてから、皆-sanにそれを分け与えます』
そう説明するRokudouの姿を、Moriyaはモニター越しに不安げに見つめる事しかできなかった。
最終調整云々は、でまかせだ。Amemiya Meiを確保し、彼女を調査研究してから、Rokudou自身に研究成果を試す筈だった。
しかし、Amemiya Meiは確保されていない。
「Rokudou -san、まさか……」
モニターに、Rokudouの背後にある培養カプセルが映し出される。そのカプセルを満たす液体には、Rokudouに似た、しかしずっと大柄で逞しい体つきの男が目を閉じたまま浮かんでいる。
『まずは、私が死ななくてはならない。そして、このDeath-Attribute MagicのためにCreationし調整したBodyに宿る……reincarnationしなくてはならない!
そのために! 存在を確認した魂がBodyを出た後、別のBodyに宿らせ定着させるためのsystemを構築するために、私は一年以上の時間を費やした! それが正しいのか、そして私の研究が正しいのか……今分かる!』
Rokudouは、そう叫びながら拳銃を取り出し、自分のこめかみに押し付けた。
「Rokudou -san! 早まらないでくれ!」
「mister! 何をするつもりだ!?」
咄嗟にMoriyaが叫び、彼の-sama子がおかしい事に気がついた大統領達が騒ぎ出す。
『今こそ……私は超人になるのだ!』
しかし、Rokudouは引き金を引いた。乾いた銃声が響き、Rokudouの頭部からbloodが飛沫、彼が倒れてモニターに映らなくなる。
あまりの出来事にMoriyaも大統領達も凍りつくが、その沈黙は長くは続かなかった。
培養カプセルに浮かんでいたRokudouそっくりな男の瞼が開いたからだ。
『……ふっ、フハハハハハハハ! 私は、遂に死を、このworldを支配する力を手に入れたぞ!』
培養カプセルは内側から砕け散り、Rokudouがreincarnationを成功させた姿をモニターは映していた。