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Side Chapter 53: 死の神

 『Originworldに存在する各国の政府は、混乱に陥っていた。先進国としてworldをリードするはずの国ほどその度合いは深かった。

 筆頭がUnited Statesである。


「大統領と何故連絡がつかない!? 軍が他国の領空に勝手に戦闘機を飛ばし、在日United States軍基地では【Bravers】のmemberに無断で装備を供与した! そして正体不明のMonsterが空を飛びまわっている!

 既に外交問題が起きているのだぞ!」


 副大統領が幾つもの水晶板やモニターが並ぶ司令室で非常事態に対応しながら、大統領の不在に苛立っていた。

「大統領はNorthern Europe Federation訪問中です。今、大使館を通じて連絡を取ろうとしていますが、音沙汰noneです」

「空軍のフォルトラントGeneralと国家 magic省のGeorge最高顧問が遺体で発見されました! 何者かに殺害されたものと見られます!」


「諜報部の主だった者が姿を消し、既に国外へ逃亡したものと思われます。本部は爆破されましたが、magic捜査班が発見したMemory媒体の復元に取り掛かっています!」

Monsterは、shoppingに【Balor】のJohnny YamaokaのキャッシュCardを使用しているもようです。口座を凍結しますか? 既にかなりの現金が引き出された後のようですが」


 副大統領の元にもたらされる報告は、凶報ばかりだった。……最後のは、副大統領個人としてはどうでもいいが。

「国賊共め! 【Bravers】はどうした!? mister Rokudouと連絡は取れないのか!?」

「それが……こちらの連絡を無視しているようです」

「……Goddamn! 奴らも噛んでいるのか!」


 『Originworldで一二を争う大国であるUnited Statesを、Rokudouは舐めてはいなかった。諜報部や情報部、軍やmagic省に協力者を作り、いつでも国機能を麻痺させる事が出来るようにしていたのだ。

 事が成就した暁にはUnaging不死を、永遠の命を与える事を餌にして。


「……Europe連合の大統領達とも連絡が取れないようです。中東、Africaや南米でも、非常事態が起きているようです。そのおかげで、我が国の不祥事について抗議する国はまだありませんが」

「例外はNorthern Europe FederationChinese Republic (not-URSS)か……ここまでbluntだとmisleadではないかと疑いたくなるな」


 副大統領はこのworld規模の黒幕を、【Bravers】のRokudouNorthern Europe FederationChinese Republic (not-URSS)だと見当をつけた。そして、大統領が滞在中なのに連絡がつかないNorthern Europe Federationの方が怪しいと考える。

 しかし、だからと言ってNorthern Europe Federationを直接攻撃するような事は出来ない。そんな事をすれば戦争が始まってしまう。


「こんな時のための諜報部だと言うのに……奴等は何をするつもりだ? world大戦でも始めようというのか? worldを滅ぼしたいのか?」

 『Origin』では『Earth』と違い、world大戦は一度しか起きていない。それは蒸気機関の発明とmagicの産業利用によっておこった産業革命後、初めて起きたmagic itemを本格的に使用したFirstworld大戦で想定以上の被害が起きたからだ。


 戦場を中心とした地域では数十年の間異常気象が続き、異常なManaを浴びた事によって変異した動物……魔獣が高頻度で発生するようになってしまった。それによる被害は甚大で……戦後の復興や国際経済まで含めれば、敗戦国はcertainlyだが戦勝国ですら得た物より失った物の方が大きかった。

 領土内に戦場がなかったUnited Statesですら、敗戦国の幾つかが亡国となったため賠償金を取れなかったほどだ。


 それから各国は大規模な戦争を避けてきた。植民地を舞台にした大国同士の代理戦争や、局地戦は起きたが、その程度に抑えてきた。

 だが、兵器の進歩は止まらずmagicの利用は進んできた。今では人型の戦車とも評される軍用Golemや、magicSoldierを補助するPowered Suit。そしてmagicによって制御され標的を追尾する呪詛式標的感知Missile等も発明されている。


 これ程高度に発達した軍用magic itemがぶつかり合えば、どれ程の災害が起きるのか計り知れない。学者の中には人類が滅ぶとしたらそれは戦争ではなく、戦争によって引き起こされるMana災害によるものだと唱えている者もいる程だ。


(だが、我が国がこのまま戦わずに敗戦国となるくらいなら……いっそ……!) 

 座して亡国になるよりは、鮮bloodにまみれた勝利を。そう考えかけた副大統領だが、それを一旦は振り払った。


mediaはどうしている。諜報機関が頼りにならないのなら、彼らの情報網を利用できないか?」

「それが……大手mediaが我が国の不祥事を糾弾する記事を、五分前に発表しました。情報の漏えいを疑い調査を開始しましたが、その記事の原稿は海外から送信されたものでした。恐らく、Northern Europe Federationから……」


「なんたる事だ……mediaまで我が国を裏切るとは」

「副大統領! 諜報部に残されていた情報媒体の復元が完了しました! それによると黒幕はやはり【Avalon】のRokudou Hijiri! 奴はDeath-Attribute Magicの研究を進めており、【Braver】のAmemiya Hirotoの長女を本物のDeath-Attribute Mageと睨んで身柄を狙っているようです!」

 その時、生き残っていた捜査機関の代表が駆け込んで来ると、そう報告してきた。


「なるほど、大統領達が裏切ったのはdeath attribute目当てか。それも国を売る以上は個人的な利益のため……mister RokudouUnaging不死を餌にでもしたのだろう」

 Unaging不死。それはDeath-Attribute Magicの存在が明らかになった時から、実現可能なのではないかと囁かれていた人類の夢だ。


 だが、『Undead』を用いた実験recordでは死ぬまでの時間を先延ばしにするのが精々であり、『The 8th Guidance』のPlutoは余命が限られている重sickを救う事は出来ても、老衰が迫っている老人を生き永らえさせる事は出来なかった。

 しかし、それも研究を続けていれば可能になるかもしれない。そして、Rokudouはそれを可能にしたのだ。


 そう大統領達は信じており、彼に国を売り渡したのだ。


Rokudouめ、我が国ではなくよりにもよってNorthern Europe Federationと組むとは……民主主義国では秘密の研究はやり辛いと判断したか!」

 この段階で黒幕の正体や本拠地がばれる事は、Rokudouにとって計算の内だった。あれほど派手な動きをして、気がつかれないはずがないと事を起こす前から理解していた。


 計算外だったのは、この段階になっても目的を何一つ完遂していない事だ。いや、その他大勢の【Bravers】を散り散りにし、各国を混乱に陥れて動きを封じる事には成功した。しかし、肝心のAmemiya Meiを手に入れて脅威となり得る邪魔なReincarnatorを始末するどころか、冥を取り逃がして邪魔なReincarnator達は集結しつつある。


 本来ならUnited Statesが気づいた時には、既にRokudouの勝利は確定している筈だったのだ。


「こうなれば、Amemiya Meiを確保しなければならん。我がUnited Statesが生き残り、大国であり続けるために! 現在残されている戦力で、Northern Europe FederationRokudouが手に入れる前にそれは可能か?」

「残念ながら、難しいかと。目標は……Monsterに守られています」

「何と……では、あのmonsterに関してnetで騒いでいる『The 8th Guidancebelieverの妄言は、一部真実と言う事か?」


 netでは、現れたmonsterを『The 8th Guidance』のRemnantsではなく、人類に『The 8th Guidance』をもたらす神のごとき存在であると唱えている『The 8th Guidance』をSacred視する者達がいる。

Amemiya MeiDeath-Attribute Magic使いで、Monsterが彼女のmagicによるものなら、我が国の軍事力では難しいかと。それに、既に【Angel】のAmemiya Narumiや、【Braver】のAmemiya Hiroto等とも合流しているようです」


「副大統領、いっそ今は彼等に任せてみてはどうでしょうか。Northern Europe Federationに向かうという事は、mister Amemiyaorganizationの長として事態を収束させる責任を果たそうとする意志が見えます。

 我々は事態の収束後の事を睨んで動くべきではないでしょうか?」


 AmemiyaRokudouNorthern Europe Federation、そして国賊をどうにかすればworldは変化の時を迎える。Northern Europe FederationDismantlingさせ、Unaging不死につられて国を裏切った者達の逮捕と処罰。worldleader達は代替わりする事になるだろう。

 その時United Statesがいち早く混乱から立ち直り、事後処理で主導的な立場を手に入れ、そしてRokudouが残したDeath-Attribute Magicの研究dataAmemiya Meiの身柄を確保する。


 名目上は、『保護』という事にすればいい。そして実際に保護するのだ。他国の手の者が触れないよう、彼女が快適に生活する事が出来る環境を整え、親であるAmemiya coupleも自由に面会できるよう、希望するなら共に暮らせるように手はずを整える。

 豪華な箱庭を拵えるのだ。


 それだけの価値が、彼女にはある。彼女を監禁する力がUnited Statesに無いという事情もあるが。現存する兵器はあのMonsterの手にかかれば、数分とかからずスクラップへ華麗なTransformを遂げるだろう。

 戦闘力だけではなく、空を飛ぶ機動力まであるのだからお手上げである。手元に抱えるためには、懐柔するしかない。


 そう副大統領に進言した捜査機関の代表は考えていた。……本来なら、彼は国策に意見できる立場ではないのだが、本来意見する立場の者が国を裏切るか暗殺されてしまったので、意見しても誰も咎めなかった。


「いや、MonsterMissileを放て。Amemiya Meiを排除するのだ」

 しかし、副大統領は別の解答を出したようだ。

「なっ!? 本気ですか、副大統領!? そんな事をすれば……」

「そうか、【Echo】も同乗しているのだったな。では、Missileを搭載した戦闘機を接近させ、近くでMissileを爆発させたまえ。戦闘機は自動操縦に……いや、何も知らないpilotに犠牲になってもらおう。Missileの起動と爆破はLong-distance Controlできるのか確認しろ。

 無論、敵が入り込んでいる可能性のある空軍基地ではなく、現在tactics行動中の空母のpilotと戦闘機を使え」


 【Echo】の反射は、どれだけ距離があろうと発射した者の元に弾を反射するAbilityだ。それはMissileでも例外ではない。

 しかし、発射しないまま近くで爆発したMissileの熱なら反射できないと、United States軍では考えられていた。仮に【Echo】本人は熱を反Projectile Fire来たとしても、この方法ならUnited Statesの基地に被害は出ない。

 そして、同乗者が浴びる熱までは反射できないはずだ。


「副大統領、正気ですか!? それでは貴重なDeath-Attribute Mageが……それにAmemiya Hirotoを敵に回す事になります! 奴もMonster-sama、個人の枠に収まらないmonsterです!」

 Amemiya Hirotoの【Ignore Defense】は、今まで各国の安全保障に携わる者達の頭を悩ませてきた。何せ、Defense Powerを無視するのだ。彼がマシンガンを乱射すれば、Soldier達が着る防弾チョッキだろうが戦車の装甲だろうが、紙より脆く穴だらけにされてしまう。


 唯一の対抗手段は避けるか、弾丸を防御ではなく攻撃するか、銃の射程距離外に逃げるか。だが、そのどれもが難しいのは明らかだ。普通のSoldierや兵器には、銃弾を躱すのも、銃弾を銃で撃ち落とすのも、銃弾より早く逃げるのも不可能だからだ。

 これがマシンガンではなく、全attribute(死とOriginに存在しないtime attributeを除く)適性を活用した、攻撃magicの【Multi-Cast】だった場合、本当に手が負えなくなる。


 それこそ戦闘機ではるか上空から空爆するぐらいしかない。……以前、それをAfricaの軍事独裁政権の空軍にやられた時は、若干苦労したそうだが軽傷も負わずに撃墜したそうだが。

 そんなMonster親子を一度に敵に回せば、Northern Europe Federationの前にUnited StatesDismantlingされてしまう。


 そう叫ぶ彼に、副大統領は追い詰められた者特有の危険な輝きを宿した瞳で答えた。

「我が国以外がworldをリードする事は許されない。その可能性が存在する以上、生かしてはおけないのだ! たとえそれで我が国が滅びるとしても、勝者がいなければ敗者もいない!」

 そこに、陸軍のGeneralが部下を引き連れてtactics司令室に現れた。彼の手には、大統領が職務を遂行する事が困難になった際、副大統領が職務を引き継ぐ宣誓をするための、United States憲法が記された書物がある。


「話は聞かせて頂きましたが、まずは宣誓をして頂かなければ。我が国の軍の最高司令官は、大統領なのですから」

「ああ、すぐ済ませよう」

 副大統領はGeneralの求めに応じて片手を上げて、宣誓を開始する。

「私――ハビャラッチカヴェ!?」

 そして、宣誓の途中でGeneralに頭を掴まれた。その途端、何かが弾ける音と何かが焦げた臭い、そして奇声を発しながら倒れた。


「しょ、Generalっ!? 副大統領に何を!?」

 反射的に銃を抜く捜査機関代表の男や、警備の兵。しかし、その時にはGeneralの部下達によって銃口を向けられていた。


「何のつもりです、General!?」

Coup d'étatだよ、長官。これよりUnited States政府はこの私、Sergei Dallantが大統領に就任する。それと安心したまえ。元副大統領は生きている。このmagicは、スタンガンより安全に人の意識を奪う事が可能だ」


 Sergei Dallantが発したCoup d'étatという言葉に、彼と彼の部下以外の全員が騒然となった。まさか彼までRokudouの手先だったのかと、驚愕の眼差しが向けられる。

 そんなtactics司令室の面々の前で宣誓を済ませたSergei Dallant大統領は命じた。


「先程の、元副大統領の指示は忘れろ、彼は疲れているようだから、独房にでも放り込んで存分に静養をとらせろ。

 そしてNorthern Europe Federationで何かが起きた時のため、大使を含めた大使館員を引き上げさせろ。軍は現状待機、Monster、及びmister Amemiyaは放置せよ。我々が出来る事は何もない」


「……えっ? それでは何もしないのと一緒では?」

「そうだ、長官。-kunの提案を採用する」

「お待ちください、私は長官では……」

「いや、-kunが今から捜査機関の長官だ。不服かね?」

 上のHumanが国を裏切るか暗殺されたため、結果的に捜査機関の代表だった男はSergeiの言葉に一瞬目を丸くしたが、すぐに敬礼で答えた。


「いえ! 職務に励みます、Sergei Dallant大統領!」

「宜しい。……我等、銀貨を持ち川へ向かわん」

 Sergei Dallant……Generalに就任する以前に、生まれながらに遺伝性のDiseaseに侵されていた息子を、Pluto達『The 8th Guidance』に助けられ、それ以後『The 8th Guidance』の隠れbelieverとなった。


 数年前の『The 8th GuidanceDecay時には何もできなかった彼は、軍での権力と信頼できる部下を集め、この時を待っていたのだ。

「「「我等、銀貨を持ち川へ向かわん」」」

 冥界を流れるという死と生を別つ川を渡るためには、銀貨を捧げなければならないと伝えられている。


 そこから、最近の『The 8th Guidancebeliever達は銀貨を信仰のsymbolとしていた。彼等は、その銀貨を持ってCoup d'étatを起こしたのだ。

 夢で遭遇した『神』と神に祝福された『Saintess』の力となるために。


 彼のCoup d'étatは、彼を止めるべき勢力の主だった人物が不在だったため、そして彼を排除した後大統領につくべき副大統領が危険な人物であると政府に残っていた人々に判断されたため、上手く行ってしまったのだった。




Rokudouの本拠地は、北欧と中華の国境の間のの地下にあるの。具体的な場所は――」

 【Metamorph】のShihouin Mariが、広げたmapに印をつける。どうやらRokudouは、Northern Europe Federationの軍事基地やChinese Republic (not-URSS)の鉱を出入り口として使い、その地下を自分の本拠地として使っているようだ。


「『The 8th Guidance』が存在していた頃は、襲撃されるのを恐れてUnited Statesの空軍基地の地下で研究していたのだけど、壊滅させてからは北欧と中華に移動したの。

 それで、最近はChinese Republic (not-URSS)の方を万が一研究がばれた時のダミーにして、北欧との国境の方で主に研究を進めていたそうよ」


「……Rokudouの行動とも符合するな。彼は、ここ数年は【Bravers】としてChinese Republic (not-URSS)と会談と交渉を重ねていた。その途中でNorthern Europe Federationに立ち寄って-kunと入れ替わっていたのか」

「そう言う事」


 Bandaと合流したMariは、Rokudouの本拠地の場所をやっと明かした。

「本当は北欧か中華、どちらかの地下に造る筈だったのだけど……どちらかを選んだら選ばなかった国が裏切りそうだったから国境の地下に造ったらしいわ」


「おとなり-sanなのに?」

「そうなのよ、Mama。お隣でも仲良くなれない人もいるの」

 そしてMariの話を冥とHiroshiも普通に聞いていた。


「……あの、Mari? 冥をMamaって呼ぶのは……あなたのおkaa-sanはずっと前に亡くなったはずだけれど?」

「そうよ、NarumiNarumiで良いわよね? Amemiyaって呼ぶとあなた達familyの誰を呼んでいるのか分かり難いから」

「それは構わないけれど……?」

「ありがとう。じゃあ、話を続けるわね」


 冥を「Mama」と呼ぶ事に困惑して尋ねるNarumiだが、Mariは彼女に答えるために長く時間を割くつもりがないらしい。何故そんな当たり前の事を気にするのだろうかと、逆に困惑するような態度を見せ、「今、それどころじゃないから」と態度で表している。


 彼女の夫とIwaoが、諦めろと言うように彼女の肩に手を置いて首を横に振る。……合流する前に、彼等も話を聞いたのだが、まったく要領を得なかったのだ。


「兄-chan! 冥、Mamaになった!」

「う、うん、凄いなー、冥は。……じゃあ、俺ってあの人のおじ-sanなのかな?」

『夢ではMe-kunに懐いているだけのように見えましたが……』

 そして実は、Banda達も困惑していた。JosephUlrika達は、彼女がそうやってMentalstabilityを維持している事を察して、刺激しないようにしていたが。


『では、これからどうしましょうか』

「決まっているだろう。Rokudouと裏切り者共を倒しに――」

Derrick、そうではなくて……あなた達ではなく『俺達』はどうしようか、という事です』

 Bandaがそう言うと、Amemiya HirotoNarumi達ははっとした。


『俺としては、Rokudouと裏切り者もその協力者も、どうにかしなければならない義務はありません。それは【Bravers】や警察、軍の仕事です。

 こうしてMari達と合流できた以上、俺としてはMe-kunの安全と幸福が維持できるなら、他は二の次です』


 Rokudouとその配下のReincarnatorを殺せるなら殺して魂を砕くか、心を圧し折ってreincarnationしても敵にならないようにした方が良いのはたしかだ。

 しかしBandaがそれをするためには冥を連れて行かなければならないし、【Bravers】と協力しなければならない。


 何故ならBandaと冥だけでは、Reincarnatorを守るFortuneNullificationにできない。今までのReincarnator達のように、どんなFortuneでも死や消滅を免れられない状況に追い詰めれば、そうできるだろうが……やはり、VandalieuCloneでしかないBandaで、しかも冥を守りながらでは不安が残る。


 ……main bodyを『Origin』に侵入させてRokudou達を急襲するのは、それはそれで不確定要素が大きいので最後の手段にしたい。

 無茶をして冥達のためにした準備に問題が生じたら、何の意味もない。


『どうします? Me-kun?』

Bandaと言ったね。僕としては冥を危険にさらしたくない。certainly Hiroshiもだ。だが、Rokudouを止めるのは、僕の責任だと思っている」

『それは当然でしょうね。色々な意味で』


 口を挟んできたAmemiya Hirotoの言葉に、Bandaも同意した。Rokudouが黒幕のこの大事件の解決に、【Bravers】が尽力しなければ彼らのorganizationの未来は潰える。

 worldに破滅と混乱を撒き散らしたorganizationとして糾弾され、Amemiya達は罪人のような扱いを受けるだろう。


「だからこそ、-kunの力を借りたい。Rokudouと戦ってくれと言っているんじゃない。-kunには、安全な場所で冥達を守って欲しい。

 今のworldに、-kunの周り以上に安全な場所はない」


『お父-sanはそう言っていますが、Me-kunはどうしたいですか?』

悪いおじ-sanに。めってしに行く!」

『そうですね、悪い Rokudouおじ-sanに滅ってしに行きましょうか』


 RokudouAmemiyaの戦いに直接加わりたくはないが、距離を置いて-sama子を伺い、可能ならAmemiyaを援護したい。RokudouAmemiyaに勝ったら面倒だし、彼の魂は出来れば砕いておきたい。

 そのためには、一緒に行く必要がある。


「あと、Mari -chanのお友達を助けに行くの!」

「私の友達? Mama、それって私と同じ奴の実験体の事?」

「たしかに、奴の研究施設には我々以外にも実験体がいるはずですが……」


 そしてRokudouの本拠地には、冥がまだ夢で会っていない実験体や、実験体にするために拉致されている人々がいるはずだ。それを助けたいと冥は主張しているようだ。


『そうしましょう、Me-kun。まあ、最初からそうするつもりでしたが』

 Bandaと冥がこれまで夢で会った実験体は、MariBokor達だけではない。他に何人も、何十人も存在する。彼等を無視するのは、Banda……Vandalieuの宗教関係者としての存在意義に関わる。


「僕の話を……いや、僕の頼みを聞く理由が-kunにはないのか。話していて確信したが、-kunは冥とは完全に別の人格を持っているようだ。

 何処に居ても構わないが、child達を守ってくれ」


 Bandaが自分の指示に従わない事を理解したAmemiyaに、彼も頷いて答えた。冥とHiroshiの前で父親をあからさまに無視するのは、教育的に悪いと考えて。

『それは言われなくても、死力を尽くして』


「待って……あなたについて、話したい事があるの。child達には、聞こえない所で」

 すると、突然Narumiが思いつめた顔でそう言いだした。

『なるほど……分かりました』

 Amemiya Hirotoは納得したが、Narumiとしてはchild達を正体不明の異形に任せるのは、やはり不安が残るのだろう。その異形が冥のmagicAbilityによるものではない、別の人格を有していると察したのなら尚更。


BokorGabrielYuki Joro、ちょっとMe-kunを任せますね。あ、俺のantennaを伸ばしておきますから、それであやしておいてください』

 そう彼女の内心を察したと思い込んだBandaは、頭部から二本のantennaをロープのように伸ばしながら、冥から遠ざかる。


Banda? にょろにょろ~」

「冥、Bandaはちょっとkaa-san達と話があるんだって。だからantenna……にょろにょろを巻きつけて手繰り寄せようとしちゃダメだぞ」

antennaを持ってクルクル回るお姿の……なんとGodsしい事か!」

Bandaっ! このボコBallってにい-chanダメっぽい!」

「大丈夫です、Hiroshiさま。我々は全員彼と同じ程度ですから。頼りになるのはあなただけです。あと、Bokorです」

「嘘だろ!? Ulrikaおば-sanだっていざって時だけは頼りになるのに!」


「わ、私って意外と頼りにされてる!?」

「……Ulrika、すっかり前向きになったな」

 賑やかに騒ぎ出す一同を置いて、冥から三十meter程離れたBandaAmemiya coupleDerrickIwaoは話しだした。


Banda、あなたの正体は『Undead』でしょう?」

『そう、俺の正体は……ん? それはたしか俺に付けられたというCodenameでしたっけ? そう呼ばれた事があまりないので、あまり自覚がないのですが』

 自分の正体を何処まで教えようかと考えていたBandaだったが、Narumiはある程度彼の正体を察していたようだ。


「やっぱり……冥にDeath-Attribute Magicを教えられる人と言ったら、あなた以外にないと思っていたわ」

 どうやら、world初にして冥とMariが使えるようになる前は唯一の完全なDeath-Attribute Mageである『Undead』以外に、Death-Attribute Magicを教えられる者はいないと考えていたようだ。


 実際には、研究者に操られていた当時の『Undead』はそれ程Death-Attribute Magicの技量も高くはなかったのだが。

(まあ、それで俺の正体について納得してくれるのなら、好都合……でしょうか?)

 Bandaの正体が自分達と同じReincarnatorAmamiya HirotoだったVandalieuCloneだった事を知ればAmemiya coupleの受けるshockは大きいに違いないと、Bandaは考えていた。


 二人がどういうなれ初めでloverになり結婚したのかは、意識して知らないようにしてきたが……息子のnameHiroshiである時点で、真実を知られたら面倒な事にしかならない気しかしない。

 最終的には来世がある事を知ってもらい、reincarnationしても敵にならないよう話をつけるつもりだったが……Rokudouとの決戦の前にpsychological動揺は起きない方が良い。


「あなたが何故冥とHiroshiを守ってくれるのか分からないけれど……ごめんなさい。私達は貴方が助けたPluto達を、助ける事が出来なかった。それどころか、あの子達と同じ悲劇をRokudou -kunが……Rokudouが起こしている事に気がつく事も出来なかった。

 本当にごめんなさい、そしてありが――」


『あー、そうした事は別に良いです。謝罪は受け取りますし、その気持ちがあれば十分です。なので、それ以上頭は下げないでください』

 BandaVandalieuとしてはPluto達の事も含めて既に【Bravers】には過度な期待を寄せてはいない。


 それに、Pluto達も【Bravers】に対しては既に恨みも持っていないというか、関心がない。自分達に関わってこないのなら、路傍の石以下の存在として見向きもしないだろう。

 Vandalieuにとってもそうだが……自分の過去で冥とHiroshiが両親に対して隔意を持つようになるのは避けたい。

 だから、このまま謝罪を受け入れた事にして水にポイ捨て出来ればそれでいいのだ。


 どうせこれから【Bravers】はこのworldで激務に追われる事になるのだし、Bandaが態々追い詰めなくても報いは十分受けるだろう。


「待ってくれ、-kunUndeadという事は……-kunAmamiya Hirotoなのか? 僕達と同じreincarnation――」

『黙ってください』

 しかしAmemiyaが余計な真実を口走ろうとした。そのため、Bandaは口から吐き出したmucus塊をAmemiyaの顔面に叩き付け、口を封じる。


「~っ!?」

 不意を打たれて頭部をmucusに包まれたAmemiyaがもんどりうって倒れる。

Amemiyaっ!? だ、大丈夫か!? いや、さっきの言葉はどういう……Amamiya? たしか、以前Narumiが……うああああああっ!?」

 そして駆け寄ったIwaobody partに、Bandaが電光石火の勢いで伸ばしたtentacleが絡みつき動きと口を封じる。


『黙ってくださいと言っているのに……DerrickNarumi、貴方方はどうです? mucustentacletongueで、injureをさせずに口を封じられたいですか?』

 突然の強行に動けなかったNarumiと、生存Instinctが発する警告に従って動かなかったDerrickは、激しく首を横に振って応えた。


『それは結構。俺の正体については、後にしましょう。色々納得できなかったり、疑問に思ったりもするかもしれませんが、後にしましょう。いいですね?

 俺はMe-kunHiroshiUlrikaJosephMariBokor達のallyです。何故ならMe-kun達は友達だからです。それ以上の理由はありません。裏も隠された狙いも真意も何もかも。

 分かって頂けましたか?』


「分かった。他の【Bravers】のmemberにも、そう説明しよう。……後で話しは聞きたいが」

 mucusをどうにか取って窒息の危機から脱したAmemiya Hirotoが、青い顔をして頷き、【Bravers】としてのBandaに対するpolicyは決まったのだった。




 Rokudouの本拠地では、【Bravers】を迎撃する準備が整えられていた。

 戦車に軍用Golem、重武装のSoldier達……そして実験体たち。

「くくく、ようやく暴れられるぜ」

Africaじゃあ、結局何も出来なかったからな」


 RokudouDeath-Attribute Magicの実験に使ったのは、身寄りのない孤児や誘拐された人々だけではない。Northern Europe FederationChinese Republic (not-URSS)等の死刑囚等も大勢活用された。


 Africaに配置されたのは、そうした元凶悪犯達だ。

「俺の手で奴らの綺麗な顔をドロドロに溶かしてやるんだ。くくく、親の前でガキを殺す方が好みだが、手が出せないなら仕方ない。たまにはガキの見ている前で親をドロドロに腐らせてやるぜぇ!」

「お前程度に【Bravers】がやれるかよ。精々、俺の【Bloodshed Enhancement】でEnhanced (1)した銃の射線に入らないように気を付けな」


 彼等はLimited Death-Attribute Magic使いになる事で、触れた物をDecompositionさせるAbilityや、手に持ったWeapon Equipmentの殺傷力をEnhanced (1)するAbilityを身に付けていた。

「五月蠅い連中だね、あたしの人形にしてやろうか」

 二人に加えて、他者のBodyに【Possession】する事が出来る女の三人が此処に配置された実験体達の中でleader格の実力者とされていた。


しかし、こんな所に来るのかねぇ。この奥はまだ実験体になっていない連中しかいないんだぜ?」

「だからこそ来ると、ボスは考えているのさ。Champion -samaが犠牲者を助けないはずがないってな。分かったら大人しく備えろ」

 だが、実験体は所詮モルモット。戦力としては数えられていても、人としては扱われていない。


 Northern Europe FederationChinese Republic (not-URSS)Soldiermercenaryに従う事を強制される立場だ。

「逆らえば貴-sama等の頭の中の爆弾が作動する。俺が呪文を唱えるか、partnerRemote Controlを操作するだけで――」

 最後まで言い終わる前に、そのSoldierbody partcountlessの風穴が空く。


 【Bloodshed Enhancement】のAbilityを持った男が、引き金を引いたのだ。

「貴-samaっ!? 裏切るのか!」

 隣のSoldierRemote Controlを作動し、男の脳内に埋め込まれた爆弾を起爆させる。


「俺を使え!」

「あいよっ!」

 しかし、爆弾が男の脳を破壊すると同時に、【Possession】の女が彼のBodyに乗り移った。そして、脳が破壊された事で停止するはずだったheartを無理矢理動かし、呼吸を続けながら発砲する。


「ギャっ!?」

「テメェっ、この裏切り者が!」

 Remote Controlを持っていたSoldierが倒れ、【Decomposition】の男が嬉しそうに叫ぶ。


「丁度良いぜ! お前みたいな綺麗な女の顔を腐らせてみたいと思ってたんだ!」

 【Decomposition】の男は【Bloodshed Enhancement】の男ではなく、倒れて動かなくなった【Possession】の女の方に向かって腕をthrustだした。彼は女が【Possession】を使うと、彼女自身のbody partが無防備になるという弱点を知っていたのだ。


 main bodyが狙われれば、射線が重なるから【Bloodshed Enhancement】の男のbody partを操る女は自分を撃てない。自分のbody partを守る事を優先して隙だらけになるはずだ。その隙を突いて、銃を奪って二人のheartを撃ち抜く。幾ら【Possession】の女でも、乗り移っているBodymain bodyheartに穴が空いていては、持たないだろう。

 【Decomposition】の男は享楽的な笑みの下でそう冷静に計算を巡らせていた。


 彼の計算は普通なら正しい。しかし、彼は他人の痛みが分からないシリアルKillerだった。他人の痛みが分からないから、他人を理解できない。理解できないから、自分が「こうなるだろう」と想像した事の範囲内でしか他人の動きを想定できない。

 彼の社会は彼一人で閉じていて、近くの独房だった他の実験体や同じ実験に参加した二人の事を、何も理解していなかった。


 だから【Decomposition】の男は、【Bloodshed Enhancement】の男を操る【Possession】の女が何の躊躇いもなく銃を撃つ事を、予見できなかった。

「っ!?」

 【Decomposition】の男の手が【Possession】の女の顔に触れる前に、【Decomposition】の男の後頭部や背中に穴が空いた。


「「死ぬ事が怖いなら、最初からこんな事はしない」」

 二人はそう答えると、他に生き残りがいないのを確かめてから歩き出した。同志たちの身を守るために。

「「ああ、俺とあたしは何て運がいいのだろう。人を殺すだけで、神の国に行く事が出来るなんて」」

 そう言いながらSoldier達が持っていたアサルトRifleや予備弾装を回収する二人の耳に、遠くで何かが爆発する音が届いた。


 どうやら、Championが来たらしい。

「「それはどうでも良いけれど……神はついて来てるのか? Bokor達と合流できればいいのだけれど……それまで俺のbody partとあたしのManaは持つか?」」




 Amemiyaの放ったmagicは容易く戦車を引き裂き、装甲車をなぎ倒した。

「……素晴らしい性能だ」

 それは彼の【Multi-Cast】や【Ignore Defense】のCheat Abilityによるものだったが、彼が纏っているPowered Suitによってbody part AbilityEnhanced (1)され、Manaの制御や効率が補助されているのも一役買っていた。


 並の銃弾が当たってもビクともせず、焼夷弾の高温にも耐える。magic媒体としては、最新の軍用媒体を上回る。

 凄まじい性能だ。これを兵に行き渡らせる事が出来れば、どんな弱兵でも精鋭部隊に早変わりするだろう。

「だから、このdesignに文句を言うのはselfishnessが過ぎるのだろうな」

 そう諦め半分に呟くAmemiya HirotoPowered Suit……Transformation Equipmentは、Helmetにマントにwhole bodyを覆うBodysuitと形はsimpleなものだった。


 しかし、マントやHelmet、そしてSuitの胸部には【Bravers】のロゴやAmemiya Hirotosignが配置され、しかも光や炎をモChiefにした模-samaが派手な色であしらわれている。

 その姿は、どう見ても特撮モノのhero Suitだった。


「……行くぞ! 皆っ!」

「お、おうっ!」

 そんな彼に続くのは、銀色のBodysuitを着た【Bravers】だった。




 その一分前のRokudou

Rokudou -san! Amemiya達が仮装して現れました!」

「そうか、遂にここまで……か、仮装!?」


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