パラシュートによって無事地面に着地する事が出来たJoseph達は、合流した後今後どうするべきか話し合った。
護送missionを受けた南米の国の政府や、United States政府……そして【Bravers】の本部に連絡を取るのは躊躇われる。何故なら、United States政府の戦闘機に襲われた直後だからだ。
過激な思想を持ったpilotのrunaway……などではない。それならあの戦闘機が何処から離陸したのかは不明だが、輸送機に「危険なpilotが操縦する戦闘機が向かっている」と警告する時間ぐらいはあったはずだ。
それに、この護送missionは極秘で進められていた。その情報が洩れていた以上、尋常な事態ではない。
「なるほど……お前達の言う事はだいたい分かった。情報を漏らしたのはtactics部のRokudouの近くにいるHumanかもしれない。だから本部に連絡するのは、状況が分かるまで避けたい。そうだな?」
「ああ、そういう事だ。rescueを頼んで、今度は爆撃機が来たら堪ったものじゃないからな」
【Chiron】のDerrickがそう言ってnodと、【Sandman】のYoudoは説得成功の満足感に笑みを浮かべた。
「ただ、俺達はRokudouの近くにいるHumanじゃなく、Rokudouが怪しいと言ったんだが」
Youdo達Vandalieuに導かれ、blessingsを受けた三人のReincarnatorは、そうではないDerrickと輸送機のpilotが勝手な行動をしないように説得する事から始めた。そうした理由は、Youdoが言った通りだ。
彼等がRokudou側のHumanだとは思わなかった。特に乗り合わせたDerrickは、あの状況でもpilotとYoudo達の生存を優先した指示を出している。
「たしかにRokudou本人が情報を漏らした、もしくはこの一件を仕組んだ本人である疑いは捨てきれない。論理的に考えればそうなるのは理解できる。しかし、Rokudouだけを殊更疑う理由はないだろう」
ただ、DerrickはRokudou側についていないだけだ。Amemiyaと同じようにRokudouを頼れる仲間として信頼している。
実は戦闘機のpilotが同じReincarnatorである【Sleipnir】のMurakaga Yoshihikoだった事を知れば、DerrickもRokudouが関与している事を信じただろう。だが、Murakagaが戦闘機のpilotだった事は撃退したJosephも知らない。しかも、本人は今頃海か地面に墜落しているので証拠が何もない。
もしくは、これから向かうはずだった空港に護送missionで護送するはずの「犯罪organizationの幹部」がいなければ、そもそも最初から存在していなければ、このmissionを自分達に割り振ったRokudouが怪しいという説得材料になったかもしれない。
しかし、極秘missionであるため「犯罪organizationの幹部」のnameと顔もJoseph達は知らない。それに、連絡する事が出来ない以上存在するか否かを確認する事も出来ない。
「まあ、そう思うよな。証拠は何もないし」
「しかも、私達の話じゃねぇ。薬の飲み過ぎか、薬を飲むのを忘れたのかって思われても仕方ない」
EmotionalにDiseaseんでmissionから遠ざかっていたYoudoやNanamori達と、失われたmemberの分もVigor的に働き【Bravers】のvice-leader的な立場にまでなり皆を纏めてきたRokudou。
Rokudouが裏で何をしていたのか知らないDerrickが、どちらを信じるのかは明らかだ。
「おいおい、俺もそこまでは言うつもりはないぞ。お前達がAbilityを成長させられたのは、お前達自身の努力によるものだろう。そんな事が出来るお前達を信用できないとは、俺は思わない。
だが、Rokudouが黒とは断定できないというだけだ」
どちらを信じるのかは明らかだが、だからといってDerrickはYoudo達の言葉を軽く受け取る気はなかった。彼等なりの根拠やconjectureがあって、Rokudouを疑っているのだと考えている。だから、彼らの主張通り連絡を取ろうとはしない。
「だが、これからどうする? どことも連絡しないままとはいかんぞ。俺達を探す捜索隊もその内来るだろうし」
「まあ、輸送機の反応が消えたのはUnited Statesもここの国も気がついているだろうし、そうだろうな。とりあえず、信頼できる相手……Ulrikaに連絡が取れればいいんだが」
「Amemiyaじゃないのか? たしかに俺達のmissionについて知っている人物であるのは、彼もRokudouと同じだが」
DerrickがAmemiyaも容疑者の一人として数えているが、それは違うという事を説明できないYoudoは黙っている事にした。
「どうだ、繋がるか?」
代わりに、輸送機から持ち出した無線機でUlrikaに連絡が取れないか試していたpilot達に声をかける。
「……無理ですね。どうやら、落下の衝撃でどこか壊れてしまったようです」
最新式のmagicと科学のcrystalである無線機は、ノイズを出すだけの箱と化していた。それを聞いたJosephが、溜め息を吐きながら言った。
ちなみに、Derrick達の携帯は使えない。電波を探知される恐れがあるからだ。
「Derrick、それにあんた達もこれから私がする事を見て見ぬふりをしてくれるか?」
そう言いながら彼が懐から取り出したのは、Derrickが見た事もないdesignの携Electrify話だった。
「なんだ、その携帯。それに見て見ぬふりって……その携帯の事か?」
「そうだ。この携帯で、信頼できる人物と連絡を取る事が出来る。電波を探知される恐れもない。だが、これは秘密の装備だ。輸送機が落されそうなときにも、最後まで使うまいと決めていた。
だから、見て見ぬふりをして欲しい。……最悪の場合、見て見ぬふりをしなくても構わない状況にworldがなっているかもしれないが、念のためだ」
「Josephっ、まさかあれを使うつもりなのか!?」
「たしかに、使い時であるけれど……私達の内二人がDerrick達を引きつけて、その間に使うって手もあっただろうに……」
Josephの説明に、驚き息を飲むYoudoとNanamori。それにDerrickは、ただ事ではない事を悟った。
「分かった。あんた達も、了解してくれ」
「certainlyです」
「命の恩人を信じます」
Derrick達からの了解を得たJosephは、懐から取り出した、普段使いとは別の携帯を握ると短く言った。
「Transform!」
すると、携帯が液体状に変化して彼の腕を這いあがってwhole bodyに広がり、ボディSuitに変化する。
「が、Goddamn! 何だ、それは!? 最新のPowered Suitか!?」
magicが存在する『Origin』では、軍用のPowered Suitが実用化されている。ただ鎧のように見るからに重厚なものではなく、軍服の下に着るインナーのような物だが。
軽量で柔軟、それでいて少量のMana消費で防弾チョッキ並のDefense Powerとある程度の耐熱性、そしてbody part Abilityを引き上げる効果のあるmagic itemだ。
その性能は、今は亡き【Balor】のJohnnyとその部下達、そして【Sleipnir】のMurakagaも着ていたといえば想像できるだろう。
しかし、携帯出来るTypeの物はDerrickが知る限り存在しない。
「しかし何だ、そのdesignは? まるでchild向けの特撮番組だ」
「ああ、参考にしたらしいよ」
派手なマントに飾りのついたHelmet姿になったJosephは、苦笑いを浮かべて答えた。Bandaから与えられたこのTransformation Equipmentの性能は、このworldで流通している並の軍用Powered Suitの性能を大きく越えている。
それを知っていても今まで使わなかったのはこのdesign……派手で目立つからだった。certainly、このworldではオーバーテクノロジーである事が最も大きな理由だが。
「だが、性能はたしかだ。通信機能もある……こちらJoseph、今話せますか?」
そしてJosephはDerrickの前でBandaと通信を始めた。
「っ!? そんな事になっていたのか……」
そしてAmemiya邸やNarumi達が襲撃された事を、初めて知った。自分達だけが秘密裏に始末されかけたのだろうと考えていたJosephは、Rokudouがなりふり構わず大胆な手に出ている事を知って事態が深刻である事に改めて気がついた。
これは何も考えずUnited Statesや【Bravers】本部に連絡していたら、本当に爆撃機が飛んで来たかもしれない。
「それで……えっ? 食べたい物? あー、て、適当にお願いし……それが一番困る? そんな事を言われても……」
そして暫く話した後、通信を終えてDerrick達に告げた。
「迎えに来てくれるそうだ。……飯もついでに買ってきてくれるらしい」
「おっ、そいつは助かるな」
通信した相手を、Josephの個人的な知り合いの地元政府か何かのHumanだと思っているDerrickはそう言って頷いた。しかし、YoudoとNanamoriは「どうやって!?」と思わず聞き返した。
【Sleipnir】のMurakagaが操縦する戦闘機がRadarから消え、本人と連絡もつかないという報告を受けたRokudouは手を額に当てて呻いた。
「全てを把握し、何もかも掌の上だと思い込んでいたが……あまりにも想定外過ぎる。このmonsterは何なんだ? 最近のimaginary friendは銃弾や攻撃magicの雨を浴びても平気で、バンを掴んでHigh-Speedで長距離をFlightし、私のtacticsを潰して回るのか?」
現れたmonsterがAmemiya Meiの絵に描かれていたBandaである事に、Rokudouは気がついた。
気がついたが、だからといってBandaの正体にはまだ思い至っていなかった。Bandaが冥にDeath-Attribute Magicを教えている事を知っていれば、Bandaと『Undead』が同一人物である事に気がついただろうが……。
現状彼がBandaについて分かっているのは、monsterである事とfoot workが軽い事だけだ。
「目標は、各国の防空網を我が物顔で飛び回っています。スクランブルを受けて発進した戦闘機の通信も無視して……いや、単に通信を受ける事が出来ないだけかもしれませんが。
少なくとも、Radarに映る存在ではあるようです」
「それはバンを吊り下げているからかもしれないぞ。Banda自体は、Mana sensor以外には反応がありません。なので生命体ではなく、Manaで構成されたAnimaの類だとconjectureされます。それを裏付けるように、回収した【Balor】の死体の検死では本人以外の痕跡は発見されませんでした。ただ、それにしては【Balor】がManaを奪わなかったのが疑問ですが」
「映像から分析したところ……現存する重火器ではBandaを傷つけるのはほぼ不可能です。Amemiya Meiが乗っているバンも、どうやったのかは不明ですが同-samaの装甲によって守られています。
あと、動画投稿サイトでは次々に動画がupされています。superの次は、fast food店でドlive performanceスルーを利用したようです。
支払いには【Balor】のCardを使用したようです」
次々にもたらされる報告に耳を通しても、有効な対策を思いつく材料にはならない。分かるのは、Bandaに対抗するにはCheat Abilityを使うか、Death-Attribute Magicしかないだろうという事だけだ。
いや、相手がBandaと冥だけならRokudou達はこの危機に対処できたかもしれない。Rokudou達Reincarnatorは、Fortuneに守られているのだから。
だが、Banda達には【Echo】のUlrikaというReincarnatorの仲間がいる。そして、今は【Angel】のAmemiya Narumiも加わり、【Druid】のJoseph達も合流する予定だ。
それだけでRokudou達を守るはずのFortuneはNullificationになってしまう。何故ならReincarnator同士の衝突では、その数の違いに関わらずFortuneが打ち消し合ってしまうからだ。
それは、それを利用してUlrikaやJoseph、Narumi達を始末しようとしたRokudouもよく知っている。Fortuneが打ち消された後生き残るのは、準備を整えて仕掛けた方だ。そしてRokudou達のした準備をBandaやそのimpactを受けたJoseph達が凌駕したため、【Balor】や【Sleipnir】はあっさり返り討ちに遭ったのだ。
「……戦闘機に乗った【Sleipnir】ならmidairで撃ち落とす事も……いや、死んだ者を当てにしても意味はないか」
「……これはconjectureですが、このBandaがAmemiya Meiによって創りだされた存在、もしくは彼女に憑いている悪霊や守護霊等に類する存在であるなら、Amemiya Meiを直接狙えば対抗できるのではないでしょうか?」
RokudouがAmemiya Meiを貴重なSampleとして重要視しているのを知ったうえで、そう提案する部下に彼は怒りや苛立ちを見せる事はなかった。しかし、その提案を受け入れる事もなかった。
「たしかにその可能性はある。だが、それはmonsterも分かっているようだ。【Balor】を殺す時は【Echo】等と共にfurの内側に、Africaでは自身と同じ強度の装甲のバンの中に入れて守っている。
Amemiya Meiを直接狙うのも難しいだろう」
そして、受け入れない理由も論理的なものだったので部下達も納得して引き下がった。だが続いてRokudouが口にした言葉に彼等は驚く事になる。
「Africaで撤退した部下とLimited Death-Attribute Magic師を戻し、奴らの反撃に備えるしかないな」
「っ! 奴らがここに来るのですか!?」
Rokudouの言葉にMoriya達に戦慄が走る。彼等の本拠地の存在はtopシークレット。協力者達の中でも大統領や諜報機関の長等、特に高い地位を持つ者以外は知らされていない。
それは普段はRokudouから距離を置いていた【Balor】のJohnnyや【Sleipnir】のMurakagaも同-samaで、彼等が知っているのはRokudouからのOrderを受ける端末に表示されるアdressだけだ。
しかし、そうしたRokudou達の情報保持には大きな穴があった。
「来るだろう。【Black Maria】が我々の想定しなかった方法で【Metamorph】に戻り、実験体と共にAmemiyaに合流したのだから。
彼女は、ここで改造や実験を受けたのだからね」
【Metamorph】のShihouin Mariだ。Limited Death-Attribute Magic使いにした実験体はまだ機密は守られていたが、彼女を完全に支配しているとRokudou達は思い込んでいたため、彼女から情報が渡る可能性を誰も考えていなかった。そのため彼女の前でこの本拠地の場所や、内部構造について話題にしていた可能性がある。
「しかし、【Metamorph】がそれをMemoryしているかは不明です! それに、【Metamorph】とmonsterが繋がっているとは限らない!」
「いや、最悪の事態を想定するべきだ。あのmonsterが、この後child達とピクニックをして帰るとは思えない。
Rokudou -san、予定通り協力者達を本拠地に集めましょう。異常事態が起きているのは奴等も気がついている筈ですが、まだ深刻な事態だとは気がついていないはずです。
……今更掌を返されちゃ堪らない」
【Shaman】のMoriya Kousukeの進言に、Rokudouは頷いて答えた。
「ああ、そのつもりだ。それに、奥の手の準備も進めよう。想定外の脅威が出現した以上、当初の安全策は捨てなければならないだろう」
Africa某国のsuperで惣菜やお菓子を買い込み、Hamburgerやフライドチキン、Pizza等をドlive performanceスルーで購入したBanda一行は、海を越えて南米Continentに飛来した。
途中寄って来た戦闘機に威嚇されても、Speedと圧倒的な機動力で撒き、Joseph達が待っているpointに着陸。
Derrickとpilot二名はその姿を見て、驚愕とhorrorのあまり硬直したが、Joseph達の説得で大人しくなった。
「……ジーザス。まさかRokudouが本当に裏切り者で、Murakami達を背後で操り、【Balor】や【Shaman】も与しているとは……信じられない。Narumiの娘がDeath-Attribute Magicを使える事にも驚いたが、それがどうでもよくなるほどの衝撃だ」
「Derrick、私も同じ気持ちだけど……真実なの。冥のmagicの事はどうでもよくならないけど」
そしてDerrickとNarumiは、Ulrikaから明かされた真実に驚愕し打ちひしがれていた。Joseph達の主張にも半信半疑だったDerrickも、さすがに否定できなかった。
【Avalon】のRokudou Hijiriは、Amemiya Hirotoが【Bravers】を結成した時から彼を支えた、今は亡きEndou KouyaやMinami Asagi同-samaに主導的なmemberの一人だった。
当時は目立つmemberではなかったが、『The 8th Guidance』との戦いを通じてAmemiyaのRight Arm的な人物になっていった。今では【Bravers】のtacticsを仕切り、国連や各国の政治家、捜査機関や諜報機関とのCoordination、mediaへの対応等彼の働きは多岐に渡る。
彼が【Bravers】を裏切っていたとなると、致命的だ。誰も疑わず彼が出したmissionに従って、Amemiya達は分散し殺されるところだった。
そして、世間的にも致命的である。
「【Bravers】も終わりか。今回の不祥事は……不祥事の枠に入らない大犯罪は、隠しようがない」
『まあ、それを言うなら【Bravers】以外も終わりだと思いますけどね。主犯がRokudouだとしても、協力して軍を動かしている訳ですから』
落ち込むDerrickに、バンのスピーカーから響いたBandaの声が慰めのつもりなのかそんな事を告げる。
「……もしRokudou達を鎮圧出来たとしても、だからこそ事態の収拾のためにRokudouを、そして【Bravers】の怠慢と過失を責めてくるだろう。自分達に世論の追及が少しでも向かないよう、生贄にするために。
実際、主犯だしな」
Rokudouの協力者は、各国の政財界やmass mediaの大物に及んでいる。逆に言えば、彼等が我が身を守るため結託して情報操作に動けば、DerrickやNarumi達にはどうしようもないという事になってしまう。
『その場合は、少なくともUnited Statesの人に関しては俺がお仕置きしましょう』
Amemiya邸を襲撃するために人員と軍用Golemを出し、Joseph達を撃ち落とすために戦闘機を出撃させたUnited StatesのRokudouの協力者。彼らの進退はここに窮まったのだった。
情報操作や政治工作で我が身を守る事が出来てしまった場合、Bandaによる「お仕置き」が待っている。
「めって、するの?」
『ええ、Me-kunのお家を滅茶苦茶にし、Josephおじ-san達に怖い事をしようとした悪い人たちに、滅ってします』
魂まで滅ぼすつもりは無いが、Body的には滅するので嘘ではない。
「めーも、Bandaと一緒にめってする!」
『うーん、Me-kunにはまだ早いかもしれません。それにmaybe night遅くにする事になるので、朝ご飯に起きられませんよ?』
「う~、じゃあ、enduranceする」
『偉いですね、Me-kun』
お菓子を食べていた冥が「お仕置き」に反応して口を挟むと、BandaはDerrickとの会話を止めて彼女の相手に集中する。そして、納得して引き下がった彼女の頭を車内に突然生えたtentacleが撫でる。
「……頭がどうにかなりそうだ。お前等、よく平気だな」
きゃっきゃと喜んでいる冥から目を逸らしたDerrickが、UlrikaやJoseph達を眺めた。ちなみに、一緒に乗っているpilot二名は、自分達が所属するorganizationのお偉い-sanがどんな目に遭うのか想像してしまい、震え上がっている。
「平気だなと言われても……まあ、平気だからな。いや、Rokudouが裏切り者だと知った時は俺達もshockを受けたが」
「Bandaに関する事なら、Bandaだからな。彼の口調について気になるなら、あれは冥-chanに合わせたものだ。小さな子の前で殺すだのなんだの口にするのは憚られるだろう?」
「それとDerrick、ちょっと前まであんたも平気な顔で飯を食ってたじゃないか」
話を振られたJoseph達にとって、Bandaのappearanceと言動は既に慣れたものだ。さすがにsuperやfast food店で食料を堂々と調達するとは思わなかったので驚いたが、それぐらいである。
「おじ-san、思ったより皆の事叩かれてないよ。っていうか……Bandaの事ばっかりだ」
家から持ち出した携帯端末でnetを見ていたHiroshiが、そう言いながら画面を見せる。そこでは、Bandaをphotographingした動画や画像が幾つも投稿され、その正体を考察するスレッドが幾つも並んでいた。
『謎のMonsterをクルーザーからphotographing!』、『高Class住宅街に人の脳を啜るalien現る!』、『遂にThe 8th Guidance revivalか!?』、『Monster、AfricaでフライドチキンやPizzaを山ほど購入!』、『alienのnameはJohnny Yamaoka』等々だ。
「大騒ぎだな……まさか、お前-sanはこれを狙って!?」
『いえ。ただ俺が姿を消すとバンを改造するのに使った俺の一部も消えてしまうので、姿を消せないだけですが』
「……そうか」
『あなた達をfollowする気持ちが、全くない訳ではありません。JosephやUlrikaは仲間ですし、Me-kunとHiroshiと無関係ではないので』
Bandaにとって、Rokudouのせいで【Bravers】がバッシングを受ける事自体は自業自得にしか思えない。だが、それでJosephやUlrikaが叩かれるのは理屈抜きで腹立たしい。冥やHiroshiの生活にimpactが出るなら尚更だ。
そして【Bravers】だけが悪者にされ、Rokudouに協力した共犯者たちがのうのうと生き延びるなんて許せる事ではない。
『特にMe-kunのおkaa-san、あなたはこの一件が済むまでは非常事態なので良しとしますが、終わったら家庭に仕事の苦労をあまり持ちこまないようにお願いします。
それを約束してくれるなら…………力を貸しましょう』
大好きな両親が悲惨な状況に置かれているのに、childだけが幸福を謳歌するのは難しいだろう。
そう考えるBandaにとって、Amemiya coupleの幸福は「義務」だ。少なくとも、child相手に隠せない程の悲惨さや不幸ではない状況になければならない。
だから、そのためならAmemiya coupleに関わり力を貸す事も厭わない。
「言われなくても、Hiroshiと冥を守るためなら何でもするわ。私は、二人の母親だもの」
冥がDeath-Attribute Magicを使える事を知ったNarumiだったが、彼女はその事自体を問題視しなかった。originally彼女はdeath attribute自体が悪だと考えているのではない。
問題は新たなDeath-Attribute Mageをこのworldの人々がどうしようとするかだが……それを踏まえてchild達を守るためなら何でもすると彼女は覚悟を決めたのだ。
「Hirotoもきっとそう考えてくれる。もしそうでなかったとしても、私が絶対に説得するわ」
『それを聞いて安心しました』
最悪の場合は脳改造も視野に入れていたので、Bandaは心から安堵した。そして、ゴトリとNarumiとDerrickの前に棒状の金属を落す。
『それはJosephに渡したPowered Suitの試作品です。design性は皆無ですし、body part Abilityのincrease率やmagic媒体としての性能は数段下がりますが、現行のPowered Suitとは比べ物にならないはずです。
貸し出すので、使ってください』
「design性が皆無だと!? それはありがたい!」
「あ、ありがとう」
Powered Suit……粗製Transformation Equipmentを受け取ったNarumiは、Bandaの正体に思いを巡らせた。Death-Attribute Magicを冥に教えているという事は…Bandaはもしかして彼なのではないかと。
その頃、Amemiya達は【Metamorph】のShihouin Mari達と共に廃墟から移動していた。
Amemiya達にとってもRokudouが自分達を裏切り、あろうことか非人道的なDeath-Attribute Magic研究を行っていた事は信じ難かった。しかし、Rokudouに拉致され洗脳を受けていたMariの言葉は説得力があり否定できるものではなかった。
彼女は実際にRokudouにTransformし、自分がshadow武者として何をしたのか事細かに説明してみせた。その言葉を証言とするなら、十分な証拠Abilityがある。物的な証拠としては【Ares】のSugiuraが目の前で彼女を殺そうとしたのが、何よりの証拠だ。
それに、terroristがいるとされた建物の中には、この場に居ないはずの【Sahadeva】のダーや、【Artemis】のCatherineの死体が残っている。
そしてMari達の言葉を信じてAmemiya達が廃墟から移動したのは、tacticsの失敗を知ったRokudouやその協力者が廃墟を爆撃する等して証拠の隠滅や、自分達の抹殺を図る可能性があったからだ。
……実際、Amemiya達が離れてしばらくした後、廃墟がある方角から爆音が響き、煙が上がっているのが見えた。
「maybe、地元政府だな。人が住んでいないからって、派手にやるもんだぜ」
【Titan】のIwaoがジープを運転しながらそう吐き捨てる。
「ところで、これから何処に向かうんだ? Rokudou達の本拠地は何処にある? やっぱりUnited Statesか? それとも南極や北極?」
「たしか、RokudouはChinese Republic (not-URSS)からGhostタウン化した住宅地を一つ買い上げて、演習場として使用していたが、そこか?」
ジープの運転席と助手席でIwaoとAmemiyaが後部座席にいるMariに問いかける。
「んっぐむぐむ~んおんうお」
「……すまない、食事中だったな」
MariはCatherine達が持ちこんでいた携帯食料で、食事をとっていた。
【Ares】に頭部を破壊された時、魂で思考する事が可能な彼女はあらかじめ予備の頭部を作り、すぐに交換する事で難なく生き延びて見せた。
その光景を見たAmemiya達は、彼女が限りなく不死に近い存在だと思い込み、その後の彼女の説明を聞いた。【Bravers】と共同でmissionにあたるはずだった特殊部隊の隊員も、彼女が不死身だと思い込んだから大人しく説明を聞き、結果的に彼女の言葉を信じるに至った。
しかし、Mariは彼等が思う程不死に近くない。【Metamorph】の応用で自分の脳やheartの予備を作る事は出来るが、それらの材料は彼女自身のflesh and bloodなのだ。bloodやbone、blubberやmuscleの一部を【Metamorph】で変化させて作っているのである。
誰かが新しい頭部を作って交換してくれたわけではない。
【Ares】に首から上を破壊され新しい頭部と交換したMariは、appearanceは傷一つないように見える。しかし、実際には破壊された頭部の分、体重が軽くなっているのだ。
当然、同じ事を二度三度と繰り返せば予備の臓器を作る余裕のなくなったMariはそのまま死んでしまう。
それを隠して平気な顔をしていたのは、Amemiya達が信用できなかったからだ。少なくとも、自分達の言葉を聞いて信じてくれるまでは。
そして、信じてくれた今は信用して弱点を明かし、失った分を取り戻すために食事をとっているのである。
「Rokudouの本拠地は、United Statesでも南極でも北極でもありませんよ。研究所はあったようですが、既に放棄されています」
「Chinese Republic (not-URSS)のGhostタウンは、万が一疑われた際の擬装だそうです」
後部座席にMariと一緒に座っているYuki JoroとGabrielが、彼女の代わりに答えた。彼女達は一貫してAmemiya達を警戒しており、Mariから離れようとしない。離れたら分断されて別々に拉致されるのではないかと疑っているのだ。
そのため、ジープの後部座席はかなり窮屈な事になっている。
「それじゃあ、何処に向かえばいい? 言っておくが、このジープは海を渡る事は出来ないからな」
「ハハハハ、そんな事は知っていますよ」
朗らかに笑いながらBokorが答える。
「今は、奴らに捕捉されないように移動しながら、神とSaintessのAdventの時を待っているのです。あなた方も、時が来れば分かるでしょう」
「神とSaintess……-kun達に力を与えたというBandaと、僕の娘の冥か」
「そう、神とSaintessです」
Bokor達は、Bandaと冥についても説明していた。夢の中にBandaと冥が現れ、自分達を救ってくれたと。Amemiya達にとってRokudouの裏切り程ではないが、驚愕に値する証言だった。しかし、ある意味では納得できる言葉だった。
夢という防ぎようもない接触なら、巧みに正体を隠し続けたRokudouが裏をかかれても仕方がないと思えたのだ。
「-kun達が冥をSacred視するのは自由だが、僕は冥の父親である事を辞めるつもりはない。それは理解して欲しい」
「ハハハハハハ! 当然でしょう。別に我々はあなたがSaintessの親である事を否定したい訳でも、あなたからSaintessを引き離したい訳でもないのですから!」
「-kunは随分と楽しそうだが、何故だ?」
「そう見えますか? 不快でしたら申し訳ない。奴らに脳を弄られた副作用で、つい笑ってしまうのです」
「……すまない、悪い事を聞いた」
「いえいえ、お気になさらず。僕もあなたの事を気にしていませんから」
Bokorが常に微笑んでいたのでAmemiyaは、彼は自分達に対して警戒を緩めたのかMari達を代表して会話を交わす役割なのかと思っていたが、そうではなかったようだ。
「あー、この三人は結構delicateな所があるから、あまり踏み込んだ質問はしない方が良いわよ。まあ、私が食事に夢中だったせいだけど」
「いや、気にしないでくれ。僕が無nerveだった。
それより、冥達はどうやってここまで来るつもりなんだ?」
「場所は連絡したから大丈夫。通信機の周波数を調整して、Bandaに連絡したから」
「……彼にはアンテナも生えているのか?」
「電波じゃなくてmagicの通信の方だけどね。夢で聞いたの」
「彼が、何故冥についているのか、知っているか?」
「それは知らない。会話は夢でしかした事ないから」
「そうか……」
冥がBandaのnameを口にするようになってから一年以上。正体不明の存在が娘と共におり、私生活を見られていたかと思うとAmemiyaの心労は大きかった。
「ところで、-kunのその姿は? 随分と若作りなようだけれど」
「【Metamorph】で若い時の姿にしただけ。態々老けた顔を作る理由もないでしょう?」
そのため少し現実逃避をして、二十age前後程の姿になっているMariにそう質問したとしても無理もないだろう。
「私としては、あなたが私達を思ったよりすんなり受け入れた事に驚いたけど。あなたが『death attributeは存在してはいけない』みたいな事を何度か言ったのを、Rokudouのshadow武者をしている時に聞いた覚えがあるから」
「その時も-kunだったのか……僕の親友は本当に幻だったようだね。
death attributeについては、今もそう思っているよ。ただ、それはdeath attributeの力を使うための非人道的な人体実験等、悲劇を繰り返したくないからだ。
既に存在するDeath-Attribute Mageの-kunや、Bokor達の存在を認めないとか、そういうつもりで言った訳じゃない」
これ以上の悲劇を繰り返さないためにdeath attributeは存在しない方が良いとAmemiya Hirotoは考えている。だが、既に存在するDeath-Attribute Mageに対して、存在しない方が良いと主張している訳ではない。
悲劇を繰り返さないために冤罪は存在してはならないと主張したからといっても、冤罪を生み出した警察官や被害者を物理的に抹殺し、情報を隠蔽して冤罪を存在しないようにしようと主張している訳ではないのと同じだ。
「-kun達も、悲惨な悲劇を繰り返してDeath-Attribute Mageを増やしたいとは考えている訳ではない……あれは何だ!?」
Amemiyaは言葉を途中で切ると、空を指差した。そこには、こちらにHigh-Speedで近づいてくる黒い翼を広げた何かの姿があった。
次第に見えてきたそれは、青空に目立つ黒いbody partをしており、六本の脚で黒塗りのバンを吊り下げていた。航空力学を完全に無視している。
他の【Bravers】や特殊部隊の隊員たちも気がつき、このまま逃げるか迎撃を試みるべきかで迷った。
「あ、あれはもしかしてBanda、か?」
「もしかしなくてもBandaよ! 皆、Bandaやあのバンを撃つんじゃないわよ!」
「おお、神が! 神がAdventされた!」
こうしてRokudouに対しての脅威は集結したのだった。