軍用輸送機での空の旅は、それなりに快適になるはずだった。
「嫌な予感がする。具体的には、この顔ぶれで同じFlight機に乗るのが不吉過ぎる」
だが、【Druid】のJoseph Smithは同じFlight機に乗り込む【Bravers】の面々を見てそう呟いた。
「Joseph、復帰して初めて顔を合わせたってのに随分な物言いだな。babysitterに転職したらどうだ？」
苛立ちを隠そうとせずにJosephに言い返したのは、Derrick Sander。【Chiron】のCodenameを持つ、『Earth』ではVandalieuがいたclassとは別のclassの担任InstructorだったReincarnatorだ。
【Chronos】のMurakamiと同じ修学旅行で引率をしていたInstructorだった男だが、彼はMurakamiとは逆にsenseiと呼ばれる事に頓着しなかった。逆に元生徒を生徒として扱う事もしなかった。しかし、『Earth』と同-samaの熱意を持って他のReincarnatorに接してきた人物だ。
頼られれば面倒を見るし、距離をとろうとする相手にはその距離で接しながらお節介を焼く事がある。Bandaに言わせると、『距離感を掴めるAsagi』という人物だ。
今もJosephに対して憎まれ口を叩いているが、それは【Bravers】になってから軍人や警察、rescue隊などの教官役を務める事が多くなったせいだ。本音は、向かないmissionでMentalをDiseaseんでいたJosephを心配しているのである。
……それにしても口が悪いが。
「いや、あんたはいいんだ、Derrick。私が言ったのは、他の二人だよ」
「何？ お前等、最近よくつるんでいる筈じゃなかったのか？」
JosephとDerrickが視線を向けたのは、残りの二人。【Asclepius】のNanamori Misatoと、【Sandman】のYoudo Masakiだった。
「お互い-samaだよ、Joseph。私もこの顔ぶれは不吉だと思っていた」
「ああ、全くだよ」
二人とも『Earth』ではVandalieu、Amamiya Hirotoとは別のclassの生徒だった人物だ。そしてJoseph同-samaに夢でVandalieuに遭遇している。
NanamoriはJoseph程ではないがstressを抱えて、【Bravers】を引退する事を考えていた。Youdoは順調にmissionをこなしていたが……privateでは自殺願望に苛まれていた。
そこを夢で出会ったVandalieuからsoul fragmentを貰い、導かれてからJoseph達の仲間になり冥とHiroshiの護衛をかって出るようになった者達だ。
「この人選が、おかしい」
そして、この三人の共通点はそれだけだ。Cheat Abilityやそれまでこなしたmissionの傾向、そして個人が持つ技術や知識までばらばらなのだ。
Josephの【Druid】は植物を操るAbilityだ。Nanamori Misatoの【Asclepius】は、回復magicの効果を2x Augment MultiplierさせるAbility。そしてYoudo Masakiの【Sandman】は生物を眠らせる、活動不能にするAbilityである。
【Asclepius】はNanamori本人のmagicの腕もあって、致命傷でも助かる可能性が一percentでもあるなら治癒する事が出来る。さすがに障害を負う事もなく元通りにとは、ならないが。
Youdoの【Sandman】は約百meter範囲内で対象との間に障害物がなければ、対象がHumanでも植物でも動物でも、さらに言えば肉眼では見えない菌やvirusでも、活動不能にする事が出来る。
JosephもNanamoriもYoudoも、戦闘向きとは言い難いAbilityだ。駆り出される事もあるが、そんな事は滅多にない。
そしてDerrickの【Chiron】は、彼が教える人物を対象にしたCheat Abilityだ。【対象の学習Ability向上】と【対象のAccelerated Growth】の二つのAbilityである。
彼が家庭Instructorをすれば、生徒にやる気があれば有名大学にまず合格して首席で卒業する事も夢ではない。スポーツ選手を育てれば、worldで戦える選手を量産する事が出来る。
【Bravers】が結成される前は自身のAbilityが及ぼすimpactとその結果を考え、ジムでDietの成功者を増やすだけに留めていたほどだ。……【Bravers】のmemberが、数か月の軍事訓練で高い技量を身に付ける事が出来たのも、彼が途中から教官の一人だったからだ。
今では【Bravers】というorganizationに守られているため、各国で優秀な軍人や警察、rescue隊員、Mageを育てている。
つまり、Derrickはその厳ついappearanceに関わらずAbility的には非戦闘向きなのだ。別に戦えない訳ではないが……戦力的には優れたSoldier一人分でしかない。
Nanamori以上に前線に出す意義の薄い人物なのである。
「まあ、言いたい事も分かる。俺も危険性のあるmissionに就くのは久しぶりだからな。だが、今回はたまたま他のmemberがmissionで空いていないから集められただけだろう。
それに、このmissionは重要だがあくまでも護送だ。そう硬くなるな」
そう言ってJosephの肩を叩いて、DerrickはFlight機に乗り込んでいった。
彼の言い分には、たしかに一理も二理もある。しかし……
(Rokudouが敵だと知っているとな……)
(だが、今の段階ではmissionを放棄するのは拙いか)
Joseph達はアイContactを交わすと、Derrickに続いてFlight機に搭乗した。
そして、輸送機が離陸してUnited Statesの領空から出て数分後、操縦席が騒がしくなる。
「何かあったのか？」
「Radarに友軍機の反応が！ 当機がRockされました！ Missileが来ます！」
「ああ、United Statesの戦闘機がこっちに向けてMissileを撃ったと。それは予想以上に厳しい事態だ」
輸送機が離陸してから何が起きても対応できるように……それこそ機内に爆発物が仕掛けられていたり、pilotがRokudouの手先で勝手に脱出して輸送機が操縦不能になったり、Derrickが襲い掛かってきたり、そうした危険に備えていたYoudoは顔を顰めた。
「どうした、何があった！？」
「一分後にこの輸送機にMissileが当たる」
「それは厳しいな」
「何だと！？ デコイは出せないのか！？ 脱出用のパラシュートは！？」
「パラシュートは壊されていると見ていいな。デコイの方も信用できない」
「脱出できたとしても、身動きが取れないmidairで銃弾の餌食にされるわね」
「……銃弾は嫌いだなぁ。それならMissileの方が好きだ」
狼狽えるpilot二名と焦るDerrick。そして、落ち着いて言葉を交わすJosephとNanamori、そしてYoudo。
magicが存在する『Origin』worldでも、近代軍事兵器の殺傷力は恐ろしい。生身で-sama々なmagicを行使する敵を倒す性能を求められる分、『Earth』の軍事兵器よりも優れているかもしれない。
そんな軍事兵器の一つであるMissileで武装が全くない輸送機で移動中に狙われたとしても、戦闘経験豊かな【Bravers】なら生き延びる事が出来るだろう。
「くっ、なら脱出するしかない！ 自由落下して海面が近づいたらmagicで減速か滑空し、敵の戦闘機から逃れるぞ！」
しかし、この場にいるのは戦闘経験豊かとはいえない【Bravers】が三名と、優れた教官だが実戦ではそれ程でもないDerrickだ。Missileから輸送機を守る事は出来ない。
無論、普通なら何も出来ず輸送機とDestinyを共にするしかないので、生き延びる目があるだけでもたいしたものだが。
「pilotは俺がどうにかするから、お前等babysitterは自分の面倒だけ見ていろ！ でしゃばるんじゃないぞ！」
Derrickはそう言うと、pilot二名をパラシュートnoneで脱出させるために行動を開始しようとした。それが自分とpilot、そしてEmotionalに不stabilityな筈のJoseph達が生き残る可能性が最も大きい策だと確信していたからだ。
「それよりもしっかりシートbeltを締めて、衝撃に備えてくれ」
だがJoseph達は動こうとせず、それどころかDerrickの肩を掴んで引き留めた。
「貴-sama！？ 何を言って――」
「いや、Derrick、あんたはpilotを励ましてくれ。気休めだが、【Chiron】の効果があるかもしれない」
「Missile、来ます！」
怒鳴り返そうとしたDerrickの言葉を遮って、pilotがdespair的な報告を叫ぶ。Derrickは思わず目を固く閉じ、瞼の裏にこのmissionが終わった後プロポーズするはずだったloverの顔を思い浮かべた。
そして機内に響く鈍い衝突音と、立っていると思わずよろけるような衝撃が走った。
「ミ、Missileが不発だった……？」
pilotの戸惑うような声にはっとしたDerrickが目を開くと、自分達は生きており輸送機もFlightを続けていた。
「不発だったんじゃない、不発にしたんだ。俺の【Sandman】で、火薬とか化学燃料とか、そうしたものを『眠らせて』ね」
そうYoudoが言う頃、輸送機の外では彼のAbilityで不発弾にされたMissileが海に落ちて行くところだった。
「何だと！？ お前のAbilityは無生物には効かないんじゃなかったのか！？」
「babysitterをする前まではね。だが、射程距離はそのままだからMissileは助かる。自分から向かってきてくれるからな。まあ、爆発は止められても慣性の法則のせいで衝突は止められない」
「それで、壊れた輸送機を【Asclepius】で効果を2x Augment Multiplierさせたmagicで修復したの。ちなみに、私のAbilityもbabysitterをするようになってから変化したわ」
そう話すYoudoとNanamoriを、Derrickは目を丸くして見つめた。
彼等Reincarnatorに与えられたAbilityには、成長の余地がある。与えられたAbilityや、本人の努力によって成長できるかは変わるが……だが無生物には効果がなかったAbilityを無生物にも効果が及ぶようにするのは、生半可なことではない。
そこまで大きくAbilityを成長させた【Bravers】のmemberを、Derrickは知らなかった。
実際、YoudoとNanamoriも自分達にそんな事が可能だとは以前は考えていなかった。実際、不可能だっただろう。だが、彼等は夢でVandalieuに出会ったのだ。
馬車のUndeadが空を走れるようにGuiding事が出来るVandalieuに遭遇し、soul fragmentを授けられたのだ。これぐらいの成長や変化は、十分にあり得る事である。
「だが、Missileをやり過ごしただけだ。戦闘機のengineは、距離があり過ぎて俺の【Sandman】じゃ手が出ない。相手が諦めてくれるならいいが……」
「友軍……敵機、接近してきます！ 奴等、機関銃を使うつもりだ！」
「ああ、参ったな。銃弾は苦手なのに」
「何ぃーっ！？ Missileはどうにか出来ただろ！？ なんで銃弾はダメなんだ！？」
そう怒鳴るDerrickに、Youdoは顔を顰めて答えた。
「『眠らせる』ものが銃弾にはないからだよ。銃口から出た時には火薬はもう爆発した後で、こっちに向かってくるのはただの金属塊だ。眠らせるも何もない。
俺の【Sandman】は【Balor】と違ってenergyを奪うんじゃなくて、発生しないようにするだけだから」
Missileを爆発しないようにする事は出来るが、既に爆発した火薬の勢いで飛んでくる銃弾はどうにもならない。それが【Sandman】の弱点である。
「なら、輸送機の装甲を修理し続ければ――」
「期待してもらって悪いけど、さすがに一分間に何百発も撃たれちゃManaが足りない」
NanamoriはEarth-Attribute MagicでFlight機の外壁の形を変えてMissileが衝突した際の損傷を修理する事を、治癒だと無理矢理誤魔化して【Asclepius】の効果をActivateさせている。
やっている事はSelf催眠に近く、余計な手間がかかる分Mental力と何よりもManaの消耗が激しい。
「くっ、なら何とか脱出するしかない。着地できるbarelyの高さでパラシュート開けば、逃げられるかもしれん」
「いや、私がどうにかしよう。相手が距離を詰めてくれたのなら、どうにかなる。ただ、脱出の準備はしておいてくれ」
Josephはそう言うと、機内に持ち込んできたBandaと冥から貰ったお守り袋を開き、【Druid】の力をActivateさせた。
Joseph達は知らなかったが、戦闘機のpilotはReincarnatorだった。
Rokudouに与した【Bravers】の裏切り者の一人で、【Sleipnir】のMurakaga Yoshihiko。彼のAbilityは自身が操縦する乗り物や生物の性能やAbilityを向上させ、そしてそれを引き出す事が出来るというものだった。
自転車に乗れば、競技用自転車に乗るプロ選手にも負けない。競走馬に乗れば、まず間違いなく一位を取る事が出来る。
そんな彼が最新の戦闘機を操縦するという事は、それは空では彼に敵う者は存在しない事を意味する。
だというのに、Missileは不発だった。しかし、Murakagaはそれに驚きはしても動揺はしなかった。
「整備不良や偶然はない。【Sandman】……奴め、Abilityを隠していたな」
彼は当然だが、輸送機に搭乗しているJoseph達のAbilityを知っていた。だから、Missileが不発だったのはYoudoの【Sandman】だと見当をつける。
無生物には効かなかったはずだとか、そうした情報は特に気にしない。再びMissileを撃って検証してもいいが、彼は自分のIntuitionを信じるTypeだった。
「いいだろう、なら機銃で沈めてやる」
【Sandman】が無生物にも有効になったとしても、機銃から放たれる弾丸ならAbilityの対象外のはずだ。そうconjectureした彼は輸送機との距離を詰めた。certainly、【Sandman】の射程距離に入らないよう、距離を測って。
Murakagaには余裕があった。そもそも彼が出張っているのは、Reincarnator達の身を守るFortune対策のためだ。このworldのHumanに止めを任せたら、Joseph達がFortuneにも生き延びてしまうかもしれない。それを防ぐためだけに、彼はここにいるのだ。
ただ飛んで、Missileの発射ボタンを一度押すだけのつまらない仕事。そう思っていた彼はtargetの思わぬ抵抗に、苛立ちではなく高揚感を覚えていた。
「だが、それもこれで終わりだ。【Druid】と組んだのが運のつきだ。死ね、【Sandman】と【Asclepius】。ついでに【Chiron】！」
そして輸送機に向かって機銃を放つ。だがcountlessの弾丸は輸送機を貫かず、止まってしまった。
「何だ！？ まさか【Sandman】は弾にも効くのか！？ それとも【Asclepius】も隠し玉を……な、何だあれは！？」
戦闘機の操縦席から見える輸送機の表面から、草のようなものが生えて来た。それが機銃から吐き出されるcountlessの弾丸を受け止め、弾いているのだ。
「あれは植物なのか！？ そんなBAKANA、いくら【Druid】でもこの高さを飛ぶ輸送機の背に植物を生やす事なんて……！」
機体の異常を知らせるアラームが、Murakagaの驚愕の叫びを遮った。
瞬く間に機体のcontrolが失われ、engineの出力も低下していく。そして、操縦席から見える機体に草のようなものが生えはじめた。
「これは草じゃない、苔……いや、カビだ！ 【Druid】のbastard、俺の機体にカビの胞子をかけやがったなぁ！」
Josephが輸送機に生やしたのは特殊なカビを【Druid】のAbilityでEnhanced (1)したものだった。
何故カビがこの高度で増殖する事が出来るのか、そもそも機銃に耐えられたのか、それはMurakagaには分からない。考える暇もない。
「ダメだっ、空港まで持たない。脱出するしかない！」
missionの達成を諦めた彼は、脱出装置を作動させた。操縦席が機体からProjectile Fireされ、パラシュートが開……かない。
「っ！？」
操縦席がProjectile Fireされた瞬間から、カビが生え始めたためだ。それは恐ろしい速さで金属やパラシュートを栄養にして成長していく。
Murakagaはシートbeltを外し、magicを唱えて自力で空を飛んで助かろうとした。『Origin』では、戦闘機のpilotの適性を評価する際、magicで空を飛ぶか浮遊する事が出来るか否かは大きな判断材料とされている。彼も、Fire-Attribute Magicでrocketのように空を飛ぶ事が出来た。
Wind-Attribute Magicよりも難易度は高いが、それでも生還できるはずだった。
「ぐああああああ！？」
生きたままカビの養分にされるような事がなければ。
「あああああああぁぁぁ……！」
MurakagaはJoseph達に存在を気がつかれる事もなく、カビの養分になりながら海に落ちていった。
輸送機のpilotが、Radarから戦闘機の反応が途絶えた事を歓声と共に報告する。それを聞いたJosephは、ほっと安堵しながら【Druid】のActivateを止めた。
「何をしたんだ？ お前の植物を操るAbilityはこの高度では無力だと思っていたが……それとも、何かのmagicを使ったのか？」
戸惑うDerrickに、Josephはお守り袋を見せた。
「この中に、知り合いがmagicで作った特殊なカビの胞子を入れて持ち歩いていたんだ。成層圏でも育ち、鋼鉄以上に硬くなって鉛のように放射線も防ぎ、最新の対magic加工をされたShieldのようにmagicにも耐えられるようになる。
それを輸送機の空調から外に出し、【Druid】で増殖させた」
BandaからDeath-Attribute Magicを習っている冥が作った物だ。原料はただの黒カビである。
「それで機関銃の弾丸を防いだのか。でも、そんなカビをばら撒いてよかったのか？ 戦闘機が落ちたのも、そのカビが移ったからだろう？」
「あと、それならMissileの時から使ってくれてもよかったと思うけど？」
カビの事を知らなかったYoudoとNanamoriも、Derrickに続いて問いかける。だが、Josephも考えもなく使った訳ではない。
「このカビは自然界では生存する事が出来ない、かweakカビなんだ。私の【Druid】がなければ一分と耐えられずに死滅する。だから、外に出たカビは今頃胞子も残さず消えているはずだ。
それに、このカビは放射線やmagicには耐えられてもただのMissileの熱には耐えられない。それに戦闘機がある程度近づいてくれないと、胞子も届かなかった。
何よりも……そろそろ脱出した方がいいな」
Josephの説明が終わると同時に、歓声をあげていたはずのpilot達が今度はscreechをあげた。機体の異常を知らせるアラームの大合唱が始まったからだ。
「お、おい、まさかカビのせいか！？」
「そうだ。機関銃から守るためにこのFlight機にカビを植えたから、養分を吸われた機体が脆くなってFlightに耐えられなくなったんだ。……やっぱりこうなるよなぁ」
「落ち着いている場合か！？ 脱出するぞ！ Nanamori、パラシュートを【Asclepius】で修理しろ！ 覚悟はいいな！？ 降下訓練を思い出せ！」
戦闘機から遅れる事五分ほど、輸送機はmidair分解しながら海に落ちていった。しかし、恐ろしいカビは死滅していたので、pilotと乗員達は無事に脱出を果たしたのだった。
Africaのある国の都市で発生した震災の被害者を、仲間と共にrescueしていた【Angel】のAmemiya Narumiは危機に見舞われていた。突然、武装勢力が襲って来たからだ。
【Bravers】だけではなく、地元政府の軍や各国から派遣された救隊が活動しているのに、何故と思ったが武装勢力は鎮圧されず攻勢は激しくなっていった。
何故なら彼等は、武装勢力に偽装したRokudouの手下だったからだ。最新の装備を身に付け高度なmagicを行使し、さらに地元政府の軍やrescue隊の装備や配置について知り尽くしている。
その上地元政府の高官もRokudouの協力者だったため、援軍の到着も遅れていた。
そんな中をNarumi達はrescueしたinjure人やrescue隊、軍の負傷者を守りながら防戦に徹していた。
ここにいたのは他者と思考を繋げる【Angel】や、物質をCreationする【ヘルメス】のBakerのようにAbilityが戦闘には向かない者ばかりが十人程だったが、それでも持ち堪える事が出来た。
しかし、保護すべき人々を大勢抱えたconditionでは攻勢に出る事が出来ず、援軍が到着しなければ動くに動けない。このまま劣勢が続き、地元政府の軍と各国から派遣されたrescue隊が疲弊したtimingを見計らって、Rokudouが送り込んだReincarnatorとLimited Death-Attribute Magic使いがNarumi達を始末するはずだった。
そんな時、空飛ぶ車が現れた。
「あれは、何？」
「【Sleipnir】が妙な乗り物に乗って来たのか！？」
地上から見ると、それは黒塗りのバンに見えた。頑丈そうだが、それだけで翼やrocket engineなどはついてはいない。しかし、黒い何かが天井についていた。
「ジ、ジーザス……！」
六本のArthropod Legsに生やしたsuction cupsで車をくっつけ、翼で空を飛ぶBandaの姿を見たBakerは、思わず神に祈っていた。何故なら、援軍ではなく武装勢力より恐ろしい悪魔的な何かが現れたとしか思えなかったからだ。
武装勢力に扮しているRokudouの手下達も同じ事を思ったらしい。Amemiya邸襲撃から一時間ほど過ぎているが、Narumi達が外部と連絡が取れないようにするために、彼ら自身も外部と情報のやり取りが出来ないconditionになっていたのが仇となった。
知っていたら一目散に逃げるか、即座にWeapon Equipmentを投げ捨てて降伏しただろう。しかし、知らない彼等は銃口をBandaと彼が運んでいる車に向けて引き金を引いた。
「うわわわわわ！？ 本当に大丈夫！？」
銃弾がぶつかりけたたましい音が響く車内で、HiroshiがUlrikaに縋りついていた。
『大丈夫ですよ。この車はoriginally防弾仕-samaですし……今は俺のbloodとexoskeletonでコーティングしてあります。glassも、実は俺のeyeballのlensを薄く伸ばした物に入れ替えてありますから、対戦車Rifleでも傷一つつきません』
「たいせんしゃRifle？」
『一番大きな音を立てて車にぶつかっている弾を撃っているてっぽうの事ですよ、Me-kun』
Bandaに改造された車の車内では、三人がBandaのtentacle製シートbeltを締めて乗っている。
「車じゃなくて、おば-sanがだよ！ さっきからfaintedしてるぞ！」
どうやらHiroshiはUlrikaに縋りついているのではなく、彼女を呼び戻そうとしていたらしい。
『……それは失念していました。Ulrika、すみませんが起きてください』
「っ！？ わ、私はいったい！？」
『すみませんが、【Echo】をお願いします。こちらを攻撃しているのが、武装勢力だけの内に』
「りょ、了解！ 【Echo】！」
その瞬間、車に集中していた銃撃が百八十度向きを変えて射手に跳ね返る。
それでRokudouの手下達は沈黙した。certainly、Rokudouの手下は震災で都市機能が麻痺している街を半ば包囲しているため、この場に居ない手下達がまだまだいる。しかし――。
「敵の援軍だ！」
「……そろそろ潮時だな。撤退するぞ！」
originally mercenary達が命じられていたのは、【Bravers】の相手ではない。ましてや、monster退治では断じてない。彼等はorganizationだって撤退を開始した。
そうなると、timingを見計らってNarumi達を始末するはずだったRokudou側のReincarnatorやLimited Death-Attribute Magic使いは、表に出るわけにはいかない。地元政府の軍と各国から派遣されたrescue隊、そしてmonsterまで同時に敵に回して勝ち目があるはずがないからだ。
彼らもmercenary達に紛れて撤退していった。
地元政府の軍は、Bandaに対して困惑しながらも銃口を向けて警戒を続けていた。それを止めたのは、Narumi達だった。
「あの車には仲間の【Echo】のUlrikaが乗っています！ あの車はallyです！」
「そ、そうなのか？ じゃあ、あの車の上にいるのもあんた達の仲間の特殊Abilityなのか？」
「おそらくそうです。私がUlrikaと交信して確認します。それまで攻撃しないでください」
軍の司令官はそう訴えるNarumiに従い、部下に攻撃を控えるよう命じた。各国に反感や不信感を持つ者もいる【Bravers】だが、rescue活動中だった事と共通の敵と戦った直後だったことが幸いした。
rescue活動で目覚ましい成果をあげたNarumi達への感謝と、共闘した事で生まれた仲間意識が、Bandaの異形さに勝ったのである。
そして【Angel】でUlrikaと交信し、大まかな事情を理解したNarumiが説明したためにBandaは「【Bravers】のAbility」としてとりあえず受け入れられたのだった。
『複雑な気分ですね』
Hiroshiと冥が、無事再会できた母親に駆け寄って行くのを眺めながら、Bandaは呟いた。
「まあ、親子だ。仕方ない事だと――」
『俺が【Bravers】のAbilityの一部扱いとは……』
「そっちなのか」
『ええ。UlrikaやJoseph、YoudoやNanamoriの力の一部という事ならいいのですが……Ulrika、とりあえず『マイMaster』とか呼んでいいですか？』
「止めてください。荷が重すぎて圧死します」
Bandaは冥やHiroshiが両親を愛する事に、何の疑問も持ってはいない。それはとても健全な事だからだ。彼の目的が冥とHiroshiの幸福である以上、家庭が円満であるのは歓迎すべき事なのだから。
「あの、あなたがBandaなの？ 冥の友達で……UlrikaやJoseph -kunを助けてくれた……人？」
そう話していると、Narumiが冥とHiroshiを伴って近づいて話しかけてきた。
『はい。Me-kunとHiroshiのおkaa-san。俺はBandaです。Me-kunの守護霊のようなものだと思っていただければ幸いです』
Narumiと会話する事に対して自分が何も感じない事に、若干驚きながらもBandaは事務的な挨拶を交わした。
『ところで、今後の事ですがどうします？ 俺としてはこのまま安全な場所で負傷者の治療をしながら、事が解決するまで待機するのが良いと思いますが』
Bandaは自分の正体についてNarumiに明かすつもりは、全く無かった。Me-kunの母親が自分で気がつく分にはどうでもいいが、そうでないのに態々打ち明ける意味が見いだせないからだ。
「いいえ、Rokudou -kunが……Rokudouが私達を裏切って危険な事をしようとしているのなら、止めるのが私達の責任です。あなたの正体はよく分からないけれど……冥達を守ってくれたことは本当だから信じます。child達をよろしくお願いします」
そしてNarumiも、Bandaの正体には気がつかなかった。当然だろう。彼女が知っているかつてのclassmate、Amamiya HirotoとBandaはappearanceに何の共通点もないのだ。
声と口調すら異なっている。もしこれで気が付けるなら、『Undead』がAmamiya Hirotoだと気がついていたはずだ。
『なるほど。……まあ、そうなると思っていました。分かりました、Me-kunとHiroshiとUlrikaは責任を持って俺が守りましょう。
では、Mari -chanのところに行きましょうか、Me-kun』
「え、Ulrikaも守ってくれるんですか？ それは嬉しいですが、Mari -chanって、それにどこへ行くつもりですか？ それに冥も！？」
「うんっ！ Mari -chan達の所に行くの、ガブ-chanとボー-kun、ユッキーもいるの！」
「kaa-san、コイツ普段は良い奴だけど人の言う事を全然聞いてくれないから、気を付けた方が良いよ」
『ハ、ハ、ハ、ハ、ハ、Hiroshi、痛いところをthrustますね』
そう会話しながらも、冥とHiroshiは再び車に乗ろうとする。Ulrikaも「ああ、また！」と言いながらも車に乗り込んだ。
「お、おいっ！ 勝手な事をするな！ そんな事が許されるとでも思うのか！？」
思わずBakerが叫ぶが、Bandaは他人でしかない彼の言葉では止らない。
『許されなかったからと言って、何かありますか？』
逆に聞き返されたBakerは、咄嗟に言い返す事が出来ず立ち止まった。
銃弾の雨を浴びても傷一つつかないmonster相手に、どうすればいいのか思いつかなかったからだ。隠れるのを止めたmonsterに、恐れるものは何もない。
「待ってください！ 私も行きます！」
だが、Narumiが車に乗り込んで来た時は思わず『えぇ？』と声を出していた。
「MamaもMari -chan達のところについて来てくれるの！？ わ～いっ！」
しかも、冥は当然歓迎するので断りようがない。
『仕方ない。まあ、Me-kunのお父-san達もいるでしょうから、事情の説明や説得をよろしくお願いします』
「説明は分かりますけど……説得は？」
『それについては、車内で話しましょう。各国の軍人やrescue隊に聞かれたくない、delicateな話になるので』
「Banda、それも良いけど腹減った」
『ああ、そう言えばそろそろご飯の時間ですね。じゃあ、superにでも寄って行きましょうか』
「superに寄る！？ 本気ですか！？」
『ええ、支払いならご心配なく。暗証番号を聞き出してある【Balor】のCardが……Africaのsuperでも使えますかね？ ダメだったらEuropeや中東のsuperまで待ってくださいね』
Bandaはそう言いながら、乗客が一人増えた車を掴んで再び空に飛びあがった。