Randolphは、Vandalieu達を指して「まさか奴等もOrbaumには来ないだろう」と思っていた。
「まさか、奴らが軽々しく我等の膝元にやって来るとは想定しなかった」
彼と同じ事を考えていたのが、Elected King領のNoble達だった。
Bahn Gaia continentの東部を支配する大国、Orbaum Elective KingdomのElected Kingの城にある会議室の一つで、Telkatanis Prime MinisterやDolmad Marshallらが集まって非公式の会議を行っていた。
議題は、正面からやって来たDarcia・Zakkartとその息子に対する対処である。
「普通はもっと警戒するものではないのか!? それとも、我々など恐れるに足らないとでも思っているのか!?」
「Alcrem Dukeのminionsも利用して情報収集を行うとか、我々のminionsへ離反工作を行うとか、もっと他に色々あるだろう!? 正面から堂々とやって来る前に!」
「そうだ! 来るにしてもElected Kingの名で書かれた招待状を受け取るとか、そうした拒否できない理由があるから渋々やって来るものではないのか!?」
Noble達の動揺は大きかった。何故なら彼等は裏の裏の裏を読み合い、誰が敵で誰がallyか刻一刻と変化するような陰謀渦巻く権力闘争に慣れきっており、それが常識と化しているからだ。
Vandalieu達のように、正面から堂々とやって来て居座るような相手は彼等にとって非常識極まる存在なのである。
「そうだ、都にいるAlcrem Duke 家のGeneral Officerや繋がりのあるNobleと結託しているのではないか!?」
Elective Kingdomの首都であるOrbaumには、各Duke 家のmansionが存在する。Elective Kingdom全体の政治について決める大会議やElected King選挙が開催される時や、社交SeasonにDuke本人や名代が滞在するためだ。
また、普段は各Duchyの大使館の役割を果たしている。
そして、都での情報収集や政治工作などを行う拠点であるのは公然の秘密である。
Vandalieu達がAlcrem Dukeのmansionにいる工作員と接触し、協力しているのではないかとそのNobleは疑ったのだ。
「それは調査させたが……そうした動きは無かった。一度、Darcia・Zakkart Honorary CountessがAlcrem Duke 家のmansionに挨拶に向かった後は、何のやり取りも確認できていない」
だが、そうした動きをElected King領のNoble達は掴む事が出来ていなかった。
実際はKimberlyやChipuras達Ghostがletterを運ぶ方法で情報をやり取りしているのだが、彼等が誇る諜報organizationに【Spiritualist】は存在しなかった。
「鳥やmouseを使っているのかもしれん。Vandalieuは腕利きのTamerだ、諜報員の中のTamerに調べさせるべきだ」
「虫も使っているかもしれないな。手に入れたばかりの情報だが、Vandalieuとその義理のImoutoはTamer guildに蟲のmonstersをTamerしたと報告したらしい」
「蟲の!? 本当か? だとしたら本当かどうか早速調査を――」
「それはこの会議の後にしたまえ! Tamer guildに潜り込ませているSpyによれば登録したのは、Rank1の、文字通りwormに過ぎない。それよりも、問題はあの『cursed mansion』だ!」
登録されたPeteとPainは、本当はRank10越えのmonstersなのだが……彼等のSpyはOrlockのように鋭い目を持っていなかったようだ。
「どんな陰謀があるのか憶測する前に、我々は自覚しなければならないはずです! 奴は、我々の喉元で……Upper Class Noble Distructでfangsを研いでいる事を!」
その青年Noble……現在Lord of Foreign Affairsを務めているJetarpo Earlの言葉に、それまで議論を交わしていたNoble達は顔を顰めて押し黙った。
Elective Kingdomの首都であるOrbaumには、多くのNobleがmansionを構えている。その中でも上位のNobleのmansionが集まるdistrictをUpper Class Noble Distructと称するが、Vandalieu達がTamerしたと称して買い取った前Jahan Dukeの弟のmansionもそこにある。
そして当然だがこの会議室に集まっているNoble達のmansionも、Upper Class Noble Distructにある。Vandalieuが従える、何十匹もの強力なUndeadが巣食っているmansionの近くに。
「彼がその気になれば、UndeadをUpper Class Noble Distructに放つ事も出来るのです。不確かな陰謀を恐れて軽はずみな行動に出る事は、避けなければなりません。
追い詰められて自棄を起こせば、奴らは終わりです。Darcia・Zakkart Honorary Countessとその息子も、Orbaum全てのKnightやadventurerに勝てるはずはありません。ですが、その時には我々も終わったと同然の被害を受けているはず」
実際にVandalieu達が本気で戦争を仕掛ければ、Orbaumは全てのKnightやadventurerを集めて態勢を整える前に圧倒的な戦力差に蹂躙されて壊滅するだろうが、そこまではJetarpo Earlが見抜けるはずもない。
「全くですな。正規の手段で都に入り、合法的にmansionを購入し、合法的に戦力を手に入れる……策を用いていないから正攻法では対抗できない。
前もって分かっていればそれでも打てる手もあったが……今となっては全てが遅い」
Dolmad Marshallも、Jetarpo Earlの言葉に同意するしかなかった。
「そもそも、Honorary EarlがUpper Class Noble Distructにmansionを構えるとは常識知らずも甚だしい。introductionしたSenorpa Chamber of Commerceに何らかの意図があったのではないか?」
「いや、それを言うのならcursed mansionを何十年も放置した責任を追及するべきではないか? 最初から浄化しておけば、奴らに戦力と拠点を与える事もなかったのだ」
だが、他のNoble達は現実逃避の次は意味の無い責任追及に話題を変えようとする。しかし、実質的にこの会議を仕切っているTelkatanis Prime Ministerが彼らの言葉を遮った。
「そうした雑事は、後にするべきだろう。それよりも、templeに通じて他の『cursed mansion』の浄化を急がせるのだ。あと、Alcrem DukeとJahan Dukeへそれとなく抗議しておけ」
これ以上Vandalieu達の勢力が広まらないように、他の『cursed mansion』を浄化するのは今彼等が取れる数少ない手段だ。
まだVandalieu達の所有物ではないmansionに巣食う、彼のTamed MonsterではないUndeadを浄化したとしても文句を言われる筋合いはない。彼等はOrbaumの治安を守っているだけだ。
もし仮にVandalieu達が文句を言って来たとしても、粛々と行うよう現場には通達する必要があるだろう。間違っても、「なら、-kun達がUndeadをどうにかしてみせろ」と言い返してはならない。
(分かりましたと、Orbaum中のcursed mansionとUndeadを全てTamerされたら事だからな。そうなればいっそ息子の方もHonorary Nobleに叙して、Orbaumの治安維持に役立てる手もあるが……そこまで簡単にTamer出来るものではないだろうが)
下手に言い返して言質を取られては面倒だ。そしてTelkatanis Prime Ministerの判断は、正解だった。彼が想像しているよりも遥かに簡単に、VandalieuはUndeadを導いているのだから。
「Prime Minister閣下、抗議とはVandalieu ZakkartがUndeadをTamed Monsterにした事に対してでしょうか?」
そう尋ねて来たNobleに、Telkatanis Prime Ministerは顔を顰めて答えた。
「いいや、Darcia・ZakkartがUpper Class Noble Distructにmansionを構えた事だ。間違ってもUndeadに……彼女のchild達のTamed Monsterに関する事で抗議してはいかん」
Upper Class Noble Distructに一代限りのHonorary Earlがmansionを構えることは、法律では禁じられていない。しかし、慣習では「Honorary Nobleがmansionを構える場合は、上ClassではないただのNoble街にする事」となっている。
明文化されていない、破っても罰則の無いただの慣習。しかし、慣習とは社会において無視してはならないruleだ。もし慣習を無視するなら、全てのruleを法律に明記して罰則を設けなくてはならない。そうなると、とても余裕のないギスギスとした社会になってしまうだろう。
それをDarcia・Zakkartに教える事を怠ったか、無視したAlcrem Dukeに抗議するのは当然の事だ。
「しかし、奴がUndeadをTamed Monsterにする事を野放しにして良いのですか?」
「それを判断する権限は、我々には無い。法に何も定められておらず、慣習も何も無いのだから。Tamer guildが認めたのなら、そういう事だ」
Telkatanis Prime Ministerを含めて、Noble達にはTamed Monsterに関する事をどうこう言う法的な権限は無い。
「しかし、相手は所詮Honorary Earlのyoung childです。我々が強く主張すれば、従うほかないのでは?」
だが、Orbaum Elective Kingdomは民主的な法治国家ではない。Elected KingはNobleによる選挙で選ばれるが、Royal Nobilityによって運営される専制Monarchの国家だ。
そのNobleが主張するように、法律に明記されていなくても、権力者は立場のweak者に割りを食わせる事が出来る。
「なるほど、たしかにその通りですな。いやー、勇ましい事だ。あなたこそ、正にElective Kingdom Nobleに相応しい。
では、あなたが先頭に立ってVandalieu ZakkartとTamer guildに『UndeadをTamed Monsterにしてはならない』と命じなさい」
しかし、Dolmad Marshallがそう言った途端そのNobleは冷や汗をかいて慌て始めた。
「っ!? ぐ、Marshall -dono、何故私が先頭に!?」
「当たり前でしょう。先ほど、私が言った事をお忘れですか?」
Jetarpo Earlに質問を返されて、そのNobleは呻き声を漏らした。既にVandalieuはweak立場ではない事を、やっと思い出したようだ。
「それに、私はTamer guildと事を構えたくないのですよ。あなたはTamed Monsterをminionsのように考えているのでしょうが、Tamer達にとってTamed MonsterはKnightにとっての愛馬に相当します。
戦場で『一緒に死んで来い』と命じるならともかく、平時に『愛馬を始末しろ』などと命じたら、終生に渡り恨まれても不思議ではない」
Tamerの多くはTamed Monsterであるmonstersと強い信頼関係や愛情による絆で、強固に結ばれている。そのためTamed Monsterをfamily同然に考えるTamerは多い。
Dolmad MarshallはTamer guildとは関わりはないが、それをKnightと愛馬の絆からconjectureする事が出来た。
「現Guild MasterのOrlockという男ですが、彼は我々の権威に易々とは屈しないでしょう。内心でUndeadのTamed Monster化をどう考えていても、guildとして抗議してくるでしょうな。
場合によっては、竜Knight隊の運営に支障が出るかもしれないのでその時はあなたに責任を取ってもらう事になるでしょう」
「わ、私は何も始末しろとまでは……」
「UndeadをTamed Monsterにした事に抗議するというのは、『始末しろ』と言うのと同じでしょう。彼がmansionとUndeadを野に放ったら、それこそ大惨事ですぞ。
既に札と聖水でmansionの敷地内に封じ込める段階ではないのですから」
そのNobleは自分がどれ程危険な発言をしたのか自覚し、顔色が青を通り越して白くなった。だが、Dolmad Marshallも本当に彼を生贄にしてVandalieuへ抗議しようとは考えていない。
「これで、彼のTamed Monsterに関する抗議をする事の危険性を理解してもらえたでしょう。我々が心配しなくても、Undeadに関してはtempleが抗議してくれるはずです」
「向こうが正攻法に徹している間は、我々も正攻法に徹するとしよう。無論、媚びる訳でも暗黙の了解を与える訳でもない。
状況が変わるまでだ」
Dolmad MarshallとTelkatanis Prime Ministerの言葉に、Jetarpo Earlを含めた他のNoble達は頷いた。
誰もババを引きたくはないのだ。
「Adventurer's School校の方は、どうします? Hero Preparatory Schoolに入学するそうですが……」
「好都合ではないか。我々の息がかかっている者を近づけ、情報収集と懐柔を試みるとしよう」
「校長のMeorilithと、今はDandolipと名乗っている『True』Randolphが我々の干渉を許すでしょうか? もし邪魔されたら……」
「なに、『生徒の自主性』の範囲内なら問題あるまい。Hero Preparatory Schoolでは、生徒同士のconnection作りも推奨されていたはず。それが彼の周りで起きても何の不思議もあるまい」
Telkatanis Prime Minister達にとっては、VandalieuがHero Preparatory Schoolに入学する目的よりも学校で得られるだろう彼に関する情報の方が有用だった。
その頃、Vandalieuと同じReincarnatorである【Urðr】のKei Mackenzieこと、Katie・Hartnerは自室で悩んでいた。
「とりあえず、今のところは大丈夫じゃないけれど、大丈夫ね」
普段なら控えているMaidもいないnightに、自分でも矛盾している言葉を述べて、Katieは幼女にあるまじき重い溜め息を吐いた。
Hartner Duke 家は、北のSauron Duke 家が主導する旧Scylla Autonomous Territory奪還軍に、自分の将兵を送った。
これは問題大ありだ。旧Scylla Autonomous Territoryが既にVandalieuの国の領地である事を、KatieはAran達からFamiliar Spiritを通じた情報提供で知っていた。
慣例では、VandalieuがSauron Duke 家の領地を無断で占有し続けているだけで、領地とは認められない。しかし、慣例とは相手が同じ目線や立場の場合のみ有効なものだ。
VandalieuとSauron Duke 家……両者の差は圧倒的だ。Sauron Duke 家は、寧ろ占有されているのが旧Scylla Autonomous Territoryだけで済んでいる事をFortuneに思うべきなのである。
そうした真実を知らないSauron Duke 家に、Hartner Duke 家は援軍を送ってしまった。これはVandalieuから見れば、明らかな敵対行為だ。
(だけれど、まだ大丈夫。Vandalieuの今までの行動からconjectureすれば、少なくとも、積極的な報復はしてこないはず)
Undeadの大軍を率いて反撃に転じるとか、各Duchyに刺客を送ってDukeを暗殺したり、疫Diseaseを撒き領民を皆殺しにしたり……そうした事はしないはずだ。
今まで通りの彼なら、とりあえず-sama子を見るだろう。
(もちろん、問題が無い訳じゃない。Hartner Duke 家の印象は悪くなっている。マイナス一万がマイナス一万百になっても大きな差は無いように見えるけど、挽回するのが難しくなったのは確かね)
Katieは考える。今、「とりあえず大丈夫」なだけだと。将来は、全然大丈夫ではない。
(約二百年前にやらかした、亡命してきたTalosheim First Princessと護衛のWarrior団の謀殺に、難民の強制労働……恐ろしい事をしてくれたものだわ、現世のご先祖-samaも。しかも、私がreincarnationするほんの少し前まで強制労働を続けているから、『昔の事』なんて言えないし)
それをVandalieuが知った時、よく皆殺しにされなかったものだと現世の父のLucas Hartner Dukeと叔父のBelton Hartnerの顔を思い浮かべる。
恐らく、それは当時Hartner Dukeである祖父が亡くなっており、LucasとBeltonがSuccessor争いの最中で正式な当主ではなかったからだろう。……そうであってくれと、祈らずにはいられない。
(そうでないと、ただでさえ危ういお父-samaの命がヤバイもの)
Katieの父は、正式にDukeになった後にVandalieuが懇意にしていたcultivation villageにKnight団を差し向けて村人を皆殺しにするよう命じたのだ。
幸い、Vandalieuによって村人に死者は出なかった。Red Wolf Knight団は皆殺しにされ、現在でもRed Wolf Knight団は再編されていないが……それがHartner Duchyにとって最良の結果だ。
もし、村人側に死者が出ていたら、Lucasはとっくに殺されていただろう。
そうなっていたら、Katieの心労は軽くなっていたかもしれない。物心つく前に亡くなった親のために思い悩む事にはならなかったろうし、Duke 家当主は叔父のBeltonが継ぐ事になっただろうから。
「でも、過去は視る事は出来ても変える事は出来ない」
正直に言えば、父がcultivation villageの村人を皆殺しにしようとした事を【Urðr】で見た時は引いた。
しかし彼女は『Earth』だけではなく『Origin』で-sama々な事を経験し、見聞きしてきた。綺麗事だけでは世の中は回らない事も知っている。【Bravers】だった自分自身も、綺麗だったとは言えない。
積極的に関与した訳ではないが、【Bravers】の一員として【Gazer】のMinuma HitomiをEmotionalに追い詰めた責任がある。それに『The 8th Guidance』がterroristと化したのも、【Bravers】に責任がある。……後者は過失なので、性質が異なる気もするが。
そのためMemoryと人格を取り戻す前のように無evilに父親を尊敬する事は出来なくなったが、それで情が完全に消える事もなかった。
「まあ、もっとやりようはあったと思うけれど……後からはどうでも言えるしね」
そう言いながらベッドから出たKatieは、【Urðr】のAbilityを使った。
これから一時間の間、彼女以外にはベッドの上で穏やかにsleeps Katieの幻が……過去が見えるようにしたのだ。
「必要は発明の母と言うけれど……言ったわよね? ともかく、特訓のお蔭で楽になったわ」
KatieのCheat Abilityである【Urðr】は、originallyは過去を見るだけのAbilityだ。彼女の視界内にある場所で、過去に何が起きたのか視る事が出来る。
『Origin』での訓練のお蔭で過去の音も聞く事が出来るようになったが、それだけだ。自分以外に過去を見せる事は出来ないし、映像を録画する事も出来なかった。
しかし、『Lambda』にreincarnationしてからKatieが人知れず行った訓練によって過去の映像を幻のように映しだす事に成功したのだ。
「このworldのStatus systemのお蔭ね。お蔭で、普段は加減して動かないといけないけど」
Katieはそう言いながらroomの窓を開け、幼女にあるまじき身のこなしで外に出て城の壁を這い上がる。
「【Fatigue Resistance】のお蔭で、訓練を長時間続けられるのは助かるけど……このworldの幼児の平均的なbody part Abilityってどのくらいなのかしらね」
そして城で最も高い塔の屋根まで登ると、そこで再び【Urðr】を使いながら、【Familiar Spirit Advent】をActivateさせる。
night空から光の柱が降って来るが、その光景は柱に包まれたKatie以外には見えない。光の柱を過去の幻で隠したのだ。
こうして彼女はDuke令嬢として生活し続けながら、不自然に思われる事もなくAran達と頻繁に情報を交換していた。
「……奪還軍は敗退。死者は殆どなく、Alcrem DuchyのFive Knightsの内『Knight of Roaring Flames』が討死。『Thousand BladesのKnight』が再起不能になってもおかしくない重傷。
これはもう間違いないわね。Alcrem Duke 家はVandalieu達と組んでいる」
RodcorteのFamiliar SpiritとなったAran達では『視る』事が出来ないHumanが、Alcrem Duchyでは去年から爆発的に増えていると聞いていた。
だからconjectureはしていたが、どうやら実際にはKatieの想像以上に深く組んでいるようだ。便宜を図る関係ではなく、既に共犯者か同盟者といった関係なのだろう。
そうでなければ、Hartner Dukeや彼の仇であるHeinz達『Five-colored blades』と関係の深いDuke Farzonが送った援軍より、Alcrem Dukeが送った援軍が大きな被害を受けている理由が思い浮かばない。
「被害の大きさは、偽装ね。本当は『Knight of Roaring Flames』は生きていて、『Thousand BladesのKnight』が受けた傷も回復させる手段があるに違いない。
だとすると……送る戦力を絞らせて正解だったわね」
Lucas Hartnerは、当初奪還軍にHartner Duchyの最精鋭として『Hartner's Six Spearmen』から『Hartner九錬槍』に再編成を終えた部隊の内半数を派遣する予定だった。
Niarkiの街で起きたDungeonの発生とrunawayはともかく、Slave鉱山の消滅や物理的に傾いた城の再建で領民には大きな負担を強いている。その結果として離れた人心と落ち込む国威を取り戻すために、そして対Vandalieu用の戦力を充実させる一環として『六Spearman』から人員を増やし、さらに練度を高めた切り札。
その力を、他のDukeが派遣した軍の目に見せようとしたらしい。……もし派遣していたら、『Hartner九錬槍』は無残な最期を見せていたかもしれないとKatieは思った。
Lucasが派遣を思いとどまったのは、Katieの仕業だった。説得ではない。
彼女が【Urðr】で過去の幻を映しだし、Boundary Mountain Rangeの山肌にDragon等の強力なmonstersがいるように見せたのだ。
Lucasは慌てて『Hartner九錬槍』の派遣を中止して、上Class adventurerと共にDuchyの防衛に当たらせた。
何千年も前の過去の映像を映すのは、Katieでも【Familiar Spirit Advent】を使用した上で限界barelyまでManaを消費しなければならなかったが、その甲斐はあった。
「これで一応、『私が出来る範囲の事はした』と言う事は出来るわね。後は……お父-samaや他のNoble達も認める実績を作らないと」
今のKatieは、まだ「幼い割にしっかりした、そしてmagicに明るく優秀なDuke令嬢」でしかない。これでは、政治や軍事に口出ししても誰も耳を傾けない。できるのは、おつきのMaidや護衛のSoldierにselfishnessを聞かせる事ぐらいだ。
だから、実績がいる。Katieが口を出しても、大人達が無視できないような実績が。
それがなければ、父達を説き伏せてAlda教に傾いているHartner DuchyをVidaに寄せる事も、二百年前にTalosheimからの亡命者に行った蛮行を公にして謝罪する事も出来やしない。
「少なくとも、一考してくれるぐらいにならないと暗躍し続けるのも限界があるのよね。ああ、早く大人になりたい」
そう言いながら、悩み多きDuke令嬢はベッドに戻るために塔の屋根から降りるのだった。
王城でそんな会議が行われている頃、Vandalieuは粛々と準備を進めていた。
「頼むっ! 見逃してくれ! 金なら、金ならやるから!」
「嫌だーっ! 顔を剥がされるのは嫌だーっ!」
ずるずると捕まえた犯罪者、それも普通のGuardでは手を出せない裏社会の権力者を運び、一人一人箱に詰めていく。
「Bellmond、こっちもよろしくお願いします」
「はい、旦那-sama。さあ、石になりなさい」
そして、Bellmondの【Petrifying Magic Eye】で石像にしていく。最後に箱にラベルを張って終了だ。
「尋問後労役、人体実験用、人体実験用、労役……人口が多い分、AlcremやMoksiよりも極悪人が多いですね」
箱に詰められている者達は、犯罪者の中でも凶悪な者達だ。しかも、Nobleと-sama々な形で繋がっている。Vandalieuは霊からの情報提供と復讐の代行依頼を受けて、そうした者を狩っていた。
「ええ。特に殺し屋と麻薬売買が多いですね。人身売買は逆に少ないようですが……まだ情報を精査できていないだけかもしれませんが」
霊による情報提供は、断片的なものが少なくない。それに、彼等は最も憎い対象についてだけ述べる事が多い。
誘拐されSlaveとして売り飛ばされ買われた先で殺された霊の場合、自分を殺した買い主については詳細に話しても、攫って売り飛ばしたorganizationについては忘れている事がある。
「まあ、LucilianoとIslaならこいつ等から情報を絞り取れるでしょう」
そのため、捕まえた犯罪者達を尋問するのは重要だ。
「この俺に手を出して、ただで済むと思っているのか!? 貴-samaだけじゃない、貴-samaのfamilyもServantも、貴-samaと少しでも関わった奴全てに産まれてきた事を後悔させてやる!」
その時、Vandalieuが運んでいた男がそう怒鳴って威嚇した。だが、VandalieuもBellmondも特に構わず梱包作業に入る。
「Bellmond、そこの一番小さな箱を」
「はい、旦那-sama」
「ぎゃああああああ!?」
手足を丁寧に折り畳んで、小さな箱にねじ込む。
悪党の、実現性が全くない脅し文句ぐらい聞き流してもかまわないのだが……不快なものは不快なのだ。
「まあ、送った先でもっと酷い目に遭わせますけど。Legion、輸送をお願いします」
『ええ、Lucilianoの所ね』
Bellmondによって前衛芸術風の石像と化した男も含めて、箱詰めにされた石像がLegionと共に消える。
その-sama子を隠す壁や暗闇は何も無い。何故なら、ここはVandalieuの【Body World】の一つだからだ。
「こうしていると、ここが旦那-samaの中だという事を忘れそうになりますね」
青々とした木々が植えられ、まだ芽を出したばかりの農作物が生きている。Bellmondの言う通り、とても生物の内部とは思えない。
「俺も忘れそうになりますが……上を見ればすぐ思い出せますよ」
上を向けば、太陽の代わりに設置された照明用magic itemの向こうにはpink色で脈打っている天井が見える。
やはりここはVandalieuの【Body World】なのだ。
「もっとも、俺自身もこれが俺のbody partの何処にあるのか分かりませんが。Isisに調べてもらった時も、見つかりませんでした」
外科的なSurgeryを行って検査しても、外から【Body World】の場所を見つける事は出来なかった。
「おそらく、ここは通常のspaceとは異なるのでしょう。旦那-samaが刺されても殴られても、この【Body World】にはimpactは出ないかと。さすがにbody partの大部分を損傷するような大injureの場合は、分かりかねますが」
「いちいちinjureをする度に【Body World】にimpactが出たら、運用に問題が出るので助かりますね」
「ですが、だからといってinjureをしていい訳ではありません。手足をSlash飛ばすぐらいはもう諦めましたが、できるだけご自愛ください」
Vandalieuの戦い方は、高い再生Abilityに頼って自身のBodyを切り捨てる事が多い。手足ぐらいならすぐに生えてくるし、首を刎ねられても切断面をくっつければ治るので、戦術的には間違っていない。
しかし、彼はEmperorである。
「無茶や危うい言動があればDarcia -samaに報告します」
釘を刺す事まで止めてはいけないのだ。
「それは勘弁してください。brushingしますから」
「旦那-sama、それは賄賂になりません! それに、tonightはもうsleeps時間のはずです。Darcia -samaと毎日睡眠をとると約束を――」
「Bellmond、あなたの前にいる俺はこの【Body World】の俺です。俺のmain bodyは-chanと眠っていますよ」
「っ!? し、しまった!」
Vandalieuの中に十ある【Body World】には、それぞれ一体Vandalieuが存在している。Demon King Familiarと違い、本物そっくりのappearanceとAbilityを持っており、【Demon King Fragment】もActivateさせる事が可能。しかし、【Body World】の外に出る事は出来ない。
だから、main bodyが休んでいる間も【Body World】で拉致した悪党の梱包作業や、Bellmondにbrushingをしても支障はないのだ。
「では、早速――」
【Demon King Fragment】でブラシを作り出し、Bellmondのふさふさしたtailに狙いを定めたVandalieuだったが、不意に動きを止めた。
「だ、旦那-sama?」
「……『Origin』で、大きな動きがあるようです。立ち入り禁止のworldを使う時が来たのかもしれません」
その頃、『Origin』ではRokudou Hijiriがdeath attributeのManaを手に入れるため、最大にして最後のtacticsに出ようとしていた。