「ギギャアアアア!」
「ギヒイ!?」
Goblin Soldierの剣を避けて、そのまま脇腹をclawsで抉り、その後ろにいたもう一匹のGoblinが狼狽している間にbody partを駆け上がるようにして、頭を掴んで首のboneを捻って折る。
そしてそのまま更に後方にいたGoblin Archer達に襲い掛かる。ちょっと矢が頬を掠るが、死にはしない。無視して突っ込む。
「……っ!」
慌てて弓から短剣に持ち替えるGoblin Archerを、Unarmed Fighting TechniqueのMartial Arts【拳打】で打つ。鎧代わりのfur越しにゴキベキと肋boneが折れてlung腑にめり込む感触が気持ち良い。
するとBlind Spotから他のGoblin Archerからの接射。それを【Danger Sense: Death】で感知して、今度は【Kicking Strike】をActivateし、地面を蹴って飛び退く。
「ぎっ!?」
そして再び【Kicking Strike】を使って、Goblinが二の矢を番える前に突っ込む。今に成って短剣を抜こうと滑稽な足掻きを見せるが、VandalieuはGoblinの足を蹴り折り、もんどり打って倒れたGoblinの首を踏み折った。
「……ふぅ」
-chanと止めを刺したか、他に敵がいないかを確認して、Vandalieuは息を吐いた。
そうして呼吸を整えながら、改めて思う。
「skillって凄い」
magic関係のskillは実感が湧かなかったが、【Unarmed Fighting Technique】skillや【Carpentry】、【Cooking】等を習得する度にその凄さが実感できた。
VandalieuはEarthとOrigin、二つの人生で戦闘に関する訓練を受けた事が無い。精々体育の授業で受けた柔道ぐらいだろうか。実戦でもmagicを使わず戦った事はほぼ無かった。
そんな彼が訓練を受けて三か月でこれだ。
敵はGoblin SoldierとGoblin Archer。共にRank2で、そう強い相手では無い。
しかし、skillこそ獲得していないがWeapon Equipmentを活かした戦い方が出来、平均的な一般人よりもbody part Abilityに優れた存在だ。
それを頬に掠り傷を一つ負っただけで、一方的に皆殺しに出来る。昨日は腕を盾にして、一匹殺すだけでやっとだったのに。
これがskillの効果だった。
skillを獲得したからといって、不思議なPowerで摩訶不思議に強くなる訳では無い。他の【Carpentry】や【Cooking】もそうだ。意識していないのに、いい加減に作っているのに、何故か上手く作れるという訳では無い。
例えば、【Unarmed Fighting Technique】の場合。拳を繰り出す時、どうすれば速く強い拳を打てるか分かり、その通りにbody partを動かせる。
蹴りを出す時、どうすれば相手の足を折れるか分かり、その通りにbody partを動かせる。
相手からの攻撃をどうすれば捌けるのか、回避の方法は、どうすればCounterを打てる体勢に持って行けるのか。
それが分かり、その通りにbody partを動かす事が出来る。
【Carpentry】の場合はどうすればより良い物が建てられるか、荷重を支えるためには何処に柱をどれくらい立てれば良いのかが、【Cooking】の場合はより美味い物を作るにはどうすれば良いのかが感覚的、Intuition的に分かるのである。
流石はGodsが作ったsystemだ。仕事をするKami-samaは実に素晴らしい。
特に素晴らしいのは、技量を数値に出来る事だ。EarthやOriginならその人物の有用性を計るのに過去の業績やらなんやらを見なければならないが、Lambdaなら自分のStatusを見せれば……その分野に関するskillだけでも見せれば、一瞬で事足りる。
……まあ、逆に今現在持っているskillだけでその人の価値が決められる危険性もあるが。
『お疲れ-sama、Bocchan』
『お見事です、主』
SalireとBone Manが水を持って来てくれる。
「八十点だ、Van」
そしてBasdiaの無慈悲な採点。
「えーっと、減点の理由は?」
「頬の傷で十点減点、Martial Artsを多用しすぎるから更に十点減点だ。
VanならMana切れを気にする必要は無いだろうが、あまりMartial Artsを連続して使うと頭の処理が追いつかなくなる事がある。magicを使い過ぎた時と同じだな」
「なるほど」
これまで幾度か経験した急激な発熱。あれが戦っている最中に起こったら、禄に抵抗も出来ず殺されてしまうだろう事は想像に難くない。
Mental力がどうのという問題では無く、人が脳で思考する生物である以上避けられない事なのだ。
VandalieuのManaは一億を超えるが、Intelligenceは百を超える程度だ。【-Surpass Limits-】を使っても、Martial Artsを多用するのは悪手かもしれない。
「じゃあ、後はmagicと組み合わせて戦う事を覚えましょう」
originally Vandalieuが数ある武術の中から【Unarmed Fighting Technique】を選んだのは、今の自分にあっている事とclawsの利便性を活かす為だった。
Vandalieuのbody partは小さく、手足は短い。どれ程力があっても、こればかりは仕方がない。
略奪してきたWeapon Equipmentの多くが大きすぎる。使えそうなのは短剣、短弓、短槍、そして自前のclawsだ。
短剣は携帯性に優れ、暗器としても良く、いざとなったら飛び道具にもなる。しかし Attack Powerに乏しく、使いこなすにはMuscular Strengthよりも素早さが必要とされる。VandalieuのAbility Valuesの中でも低い方である素早さが。
短弓は、きっぱりと悪手だ。短弓程度の射程距離と殺傷力なら、【Mana Bullet】で簡単に代用できる。
短槍は前の二つとは逆に魅力的だった。短いながらも扱うのは【Spear Technique】skillなので、今の内にskillを獲得して置いて、body partが大きくなったら長い物に持ち替える事が出来る。
隠し持つのには向かないが、別にAssassinに成る訳じゃないのでそれだけを見て決める必要は無い。
しかし Vandalieuはclawsを選んだ。
何故ならclawsは両手足に生えている自前のWeapon Equipmentで、猫のように出し入れ自由。リーチは短いし飛び道具にもならないが、手足を切り落とされでもしない限り無くなる事は無い。
それに父親からclawsを使ったUnarmed Fighting Techniqueのaptitudeが遺伝しているかもしれないという理由もある。
後、Darciaも喜ぶしBasdia達Ghoulからの受けも良いし。
『だんだんBocchanがGhoulっぽくなって行くわね』
『その内【白いGhoul】なんて呼ばれたりして』
『ヂュヂュヂュ、clawsに【Deadly Poison】をかけたら正にそれですな』
新しい称号の予感がする。いや、下手をするとAdventurer’s Guildが討伐対象に付ける通称に成るかもしれない。
Mirg Shield Nationのguildで指名手配されていたら面倒だな。
「それはin any case、基礎訓練は終了だ。後はlevelを上げながらDungeonを攻略して行こう。
そろそろこの階層のmonstersも狩り尽くしたようだし」
そして進む事暫く、地下への階段を通って地下二階へと降りた。
隊列はVandalieuを中心に、前にBone ManとBasdia。両サイドをBone Wolf、Bone Bear、Bone Monkey。rearguardに長物から弓に持ち替えたSalireとRita。Bone Birdは上空で警戒だ。
Garan’s Valleyは、自然の谷の-samaな形状をした階層が地下一階から最下層まで続く構造をしている。
そのため、岩等で分かれ道になっている箇所もあるが、それを考えても一本道と言っても過言ではない単純な作りに成っていて、Trapも殆ど無い。初心者向けと評価される理由の一つでもある。
「お、Kingだ!」
「よぉ、King!」
そして初心者用なので、Black Goblin達がUndead Giantの教官役と一緒に実戦訓練に勤しんでいた。
「調子どうだ、King」
生まれて半年以上過ぎ、すっかり大人になったBragaを見上げてVandalieuは答えた。
「skillを身に付けて、八十点貰った」
どうだと胸を張ると、Bragaは口の両端を釣り上げて言った。
「まだ小さいのに凄い! 偉いぞ、King!」
わしわしと頭を撫でられた。……褒められたのに何か腑に落ちないのは、何故だろう。
「これが、幼馴染が大人になって行く中、自分だけchildのままなのを自覚すると言う事か。なんという虚しさと切なさと焦燥感」
「無理言うな、King。俺Goblin、お前Dhampir」
はっとして自分の心理conditionに気が付くVandalieuだったが、Bragaの言う通りraceと成長のSpeedが違う。
それに今はBragaの方が背が高いが、Black Goblinである彼の身長は大人の胸までしかない。将来はまたVandalieuがBragaを見下ろす事になるだろう。……なるよね?
「そういえば、Bragaの訓練の方は?」
「沢山 skillを覚えたぞ。Dagger Technique、Silent Steps、Detect Presence……俺もうlevel80超えた!」
「うわ、凄い。あっという間に越されそう」
エッヘンと胸を張るBragaの頭を、【Flight】で飛んでまでお返しだと撫でるVandalieu。
「BragaはBlack Goblinだからな。普通のGoblinやKoboldと同じで、早熟なのだろう。成長期が纏めてくるようなものだから、今が伸び盛りだ」
生まれて一年経たずに大人になるBlack Goblin等のmonstersは、成長期が短い期間に纏めて来る。だからその期間に鍛えれば鍛えるだけ強くなるらしい。
「頑張ってRank upするんだぞ。でないと、この辺りでmonstersを狩って生計を立てるのが難しくなるからな」
Black GoblinのRankは2。そしてTalosheim周辺に出現するmonstersの多くがRank3以上。狩りをする仲間の数や武装にもよるが、stabilityして獲物を狩るのは今のままだと難しい。
「き、厳しい。でも本当だから俺頑張る」
それが解っているのでBragaも真剣に訓練を熟しているのだ。今のままでもUndead GiantやGhoul達の下働き、若しくは難しいがFarmingにでも挑戦すれば食っていく事が出来るかもしれないが彼もmonstersだ、強くなりたいというInstinctがある。
「じゃあ、King。ここ攻略したら、Adventure!」
「うん、Adventure」
Vandalieuと固い握手を交わし、Bragaは訓練に戻って行った。
因みに、Braga達Black GoblinはDungeonに出現するGoblinを殺す事に躊躇いは感じないらしい。
「あれ、敵」
その一言が全てを表しているらしい。
地下二階から三階はBlack Goblin達の実戦訓練が行われている為、Vandalieu達はほぼ敵に遭遇しなかった。originallyこのDungeonの浅い階層ではRank2程度のmonstersしか出て来ないので、あまりExperience Point的には美味しくない階層なので気にしないが。
そして地下四階は、Black Goblinでは無くAnubis達が実戦訓練を受けていた。
「ガアアアアア!」
「ガアアアアア!」
どっちがどっちの吠え声か分からないが、Human大の狒々といった感じのRank3のmonsters、大狒々に槍を持ったAnubisの青年が対峙している。
お互いにfangsを剥き出しにして威嚇し合うと、戦いは避けられないと判断したのか大狒々はそそり立つ崖に四肢を使って駆け上がり、上を取ろうとする。
「ウォン!」
対するAnubisの青年も、何と二本の足で崖を駆け上り、大狒々を片手に持った槍で迎え撃った。
「ギャアアアアアア!」
金切り声のようなscreechを上げて大狒々が地面に背中から落ち、それを追って落ちてきたAnubisの青年が着地と同時に大狒々の首を踏み折る。
見事な勝利だった。
「ウォゥン! King、どうだった? 私の狩りは」
「強くなったな。Zemedoならもう同じ3Rankなら何でも狩れるだろう」
Anubisの青年は、Bragaと同じ時期に生まれたAnubisのZemedoだった。その姿は幼年期とはすっかり変わっている。
頭は凛々しく精悍なシェパードに似た犬の物で、首から下は引き締まったmuscleが格好良い褐色の肌をした男の物だ。背も高く、この姿だけを見ると彼がVandalieuより年下だとはとても思えない。
「いや、まだまだだ。それにこの辺りではRank3のままだと、やはりweak。皆と力を合わせて狩りをするにしても、もっと強くなっておきたい」
力のweak者が団結によって力を合わせれば、強い獲物でも狩れる。
しかし、出来るなら力の強い者同士で協力してもっと強い獲物を狩れた方が良いのは当然だ。Zemedoの目標意識は高いようだ。
「それより、相談したい事がある。Memedigaの事で」
「彼女に何かあったんですか?」
ZemedoやBragaと同-samaに、すっかり大人になった彼の双子のImouto、Memedigaの事で悩んでいるらしい。何でも、最近-sama子がおかしいのだとか。
「誰に貰ったのかmonstersのboneやfangsで作った首飾りを付けていたり、休憩時間に話をしようとしたら先に何処かに消えていたり……最近ではBergの奴とばかりいる」
「……お年頃なんじゃないですか?」
どうやら、Memedigaは同じAnubisのBerg -kunと交際を始めたらしい。年下の男の子相手にやりますな、まあ実際には一か月ぐらいしか違わないのだけど。
女の子の方がマセているというのは、本当のようだ。おめでとうございます。
「何っ!? MemedigaはBergの子を産むつもりなのか!?」
交際イコール子作りはちょっと思考が飛躍しすぎているような……いや、そうでもないか。このworldで、monstersだし。
「まだ早い! 俺達は半人前なんだぞ!」
Vandalieuも、Earthで育ったJapan人としての感覚ではZemedoと同感なのだが――。
『そんな事ありませんよ。成人即結婚なんて、Human社会じゃ珍しくありませんよ』
『それにまだ早いって言っても、childじゃないんだし。そんな事言ってると、婚期を逃すのよ』
っと、Living Armor sisters。
このworldの結婚観は、若い内に結婚して早くchildを産むに尽きる。医療が未発達で、代わりにmagicがあるがNobleか裕福な商人や高位のadventurerでもなければMageに代金が払えないから。
昔のJapanや外国でも似たようなものだったらしいし、これぐらいは普通だろう。
「そうだぞ。女にとって重要なのは、誰の子を産みたいかだ。MemedigaがBergの子を産みたいと思うのなら、お前は彼女の力になるべきだ」
そしてBasdiaの語るGhoulの男女観はこの調子である。子は女が産み、集落で育てる。現代Japanの常識で考えると重いのか軽いのか。
父親としての責任はdemandされないが、集落の一員である限り自分の食い扶持以上に獲物を狩らなければならないので、ヒモにはなれないのがGhoulの社会である。
……戦えないと厳しいかもしれない。
『ぢゅぅ……』
『アオーン』
尚、Bone Man達は関係無いとばかりに周囲を警戒していた。まあ、助言を求めても動物の常識で答えそうなので、そのままにするのが吉だろう。
「そ、そうなのか……」
「まあ、Bergが獲物を狩れるようになるまで待てって言うのが精々では?」
このworldは生きていく事だけでは無く、シスコンにも厳しいかもしれない。
そんなこんなで地下四階も平和に過ぎた。因みに、大狒々はliverやkidneyがpotionの材料になるらしい。……残念な事に、薬剤師Jobの人がいないので活用できないが。
そして地下五階では、残りのAnubisとまだRank3のGhoulが合同訓練を行っていた。
「ガアアア!」
「グルルルル!」
戦闘言語が飛び交い、瞬く間に岩を数珠繋ぎにしたような姿のRock Pythonを傷つけて行く。
岩のようなDefense Powerを誇るGiantなヘビも、彼らのCoordinationの前にはただの獲物に過ぎない。magicで作りだされた粘着力の強い泥で動きを止めた隙に、表皮の隙間に槍や剣、爪が捻じ込まれて止めになった。
尚、岩のような見た目にも関わらず肉は熱を通すと柔らかく、ササミに似た味がする。
「King! どう、私のEarth-Attribute Magic!」
っと、首から上がシェパードの女Anubis、Memedigaが杖を振りながらやって来た。Rock Pythonの動きを止めた粘着性の泥は、彼女のmagicによるものだった。
「うん、とても上手だった」
地味だけど堅実に戦いの役に立つmagic。土attributeにはそういうmagicが多い。火山を噴火させたり、溶岩を手足の如く操ったり、地割れを起して敵を飲み込んだりする大magicを使えるのは極一部で、多くの術者は落とし穴を掘ったり、地面に硬い棘を生やしたりと、そういう術を得意としている。
なのでMemedigaのmagicは、土attributeの特性を考慮すると良い使い方をしているという事になる。大体の生き物は大地と無関係ではいられないのだから、とても有効な術だ。
それとは別にVandalieuは彼女を見上げて思う。
輝く瞳、ピンと伸びた耳、湿った鼻、白いfangs、艶やかな毛並み、それと同じくらい綺麗な肌、膨らんだ胸にしまった腰と、嬉しそうに左右に振っているtail。
小さかった頃も可愛かったが、美人になったものだ。幼馴染に美人が居ると何となく誇らしい気分になると聞いた事があったが、Memedigaを見ると覚えるemotionsはそれだろうとconjectureできる。
boyfriendが出来るのも納得だ。
「どうしたの、King?」
「いや、何でも。そういえば地下四階でZemedoにあったけど、最近上手く行ってないの?」
「そうなのよ。聞いて、兄-sanったらいちいちウルサイのよっ」
その後、「あー、それ思春期には良くあるよねー」な愚痴を聞かされる事十分。
「でも、兄-sanが心配してくれてるっていうのは分かるのよ。だけどもう少し信頼してくれても良いんじゃないって思うの」
「あー……うん……一度話し合ってみたらいいんじゃないかな。二人だけだと熱くなるかもしれないから、誰か間に入れて」
「そうね、じゃあBergに――」
「Berg以外で」
それはただの修羅場です。
尚、普通のGoblinやKoboldが人の言葉を話さないのに、MemedigaやBraga達がペラペラと話せるのは、GhoulやVandalieuから言葉を教わったからである。
これは特別な事では無く、他にもTamerにTamerされているある程度知能が高いmonstersは、言葉を覚える事が多い。流石に会話できるのは人型のmonstersを除けば極限られるようだが。
そしてMemedigaの相談への応対を終えたら、地下五階もあまり戦闘せずに階段を下る。
そして地下六階、from hereがGaran’s Valleyの本番だ……産業的な意味で。
『切り出せーっ!』
「うおおおっ! 【Rock Cutter】!」
Undead Giant達が、生き生きと白い岸壁から四角く石を切り出していた。彼らはTalosheimのStonemason職人である。
Garan’s Valleyの地下六階の壁や岩からは、白い石材が取れる。それはEarthの大理石に似ていて、Dungeonから取れる為かManaを含み、通常よりも高Classな石材になるらしい。
何でも加工する時秘伝の技法を施す事で、通常の大理石よりも硬く丈夫で摩耗にも強い品が出来上がるのだとか。
Orbaum Elective KingdomのHartner Duchyと交易を始めた時、想像以上の高値で売れて当時のGiant race達は驚いたらしい。
しかし、今はその交易もとっくに途絶えているし、王城も街も城壁も全てVandalieuが元通り修理し終えている。だから石材の需要はあまり無いはずなのだが。
「これはこれは、Dungeonでの修練ですかMikoよ」
そこに、金属鎧に円形の盾を持ち、人の頭を卵のように叩き潰せそうなMaceを下げたLichにあるまじき恰好をしたNuazaが居た。
「はい。Nuaza達はどうしたんですか?」
「少々石材が要りようになりまして」
Vandalieuの【Golem Transmutation】は砕けた破片を合成して石材を作る等、recycleは出来る。しかし、何も無いところから新しい石材を作る事は出来ない。
しかし、新しい石材が何故必要なのだろうか?
「まさか、俺がReversiを作りすぎたから?」
皆喜ぶから、調子に乗って百セット作ったのはやりすぎだっただろうか?
「いえ、流石にそこまでではありませんMikoよ。でも出来たら後百セット、都合の良い時にお願いします」
現在TalosheimではVandalieuが作ったReversiとJenga、Frisbeeが流行している。皆娯楽に飢えている事に気がつかない程、娯楽が無い事が日常になっていた事も要因の一つだが、どれもruleが単純で、すぐに遊べる気軽さがウケているのだ。
なので現在ReversiやJengaを持っている事は、ちょっとしたStatusになっていた。ブームがやや過熱しすぎなのではないかと、心配になるぐらいだ。
別に代金を貰っている訳でも無いし作る手間もかからないので、考えてみれば問題無いかとVandalieuは放置しているが。
「後、出来ましたらJengaとFrisbeeもお願いします」
「……それは俺に頼まなくてもいいのでは?」
どちらも作ろうと思えば、出来るはずだ。
「いえ、Mikoの手によって作られる事に意味があるのです」
どうやらVandalieu手製の玩具には、Undead達にとって勲章に似た意味があるらしい。そこまで大した品じゃないのに。
いつの間にかブRand的な価値が出来上がっていたのだろうか。
「分かりました」
でもそんなに喜んでもらえるなら沢山作ろう。考えてみれば、Undead GiantやGhoulの皆に給料を払っている訳でも無いので、これぐらいserviceしても良いだろう。
「それで、その石材は何に使うんですか?」
「これは王城の前のOpen Plazaがガランとしているでしょう? そこに石像を建てようという話になりまして」
「石像を。それは良いですね」
芸術は心を豊かにする。特にUndeadはBodyよりもMentalに比重が傾いている場合が多いので、Mentalのstabilityは重要だ。
「はい、次の春までにはMikoの石像が完成する予定です」
「……マジですか」
「マジです。MikoはOracleだけでなく、予言のMikoなのですから。我々のようにGoddess Vidaの復権を望む者達にとって、Mikoは信仰の対象なのです」
「……やや外に出るのが嫌になりました」
好意的に接してもらって悪い気はcertainlyしないが、それをすっ飛ばして信仰の対象まで行くとどうすればいいのやら。
まあ、顔に「OracleのMikoです」と文字が浮き出ている訳でも無いのだから、Elective Kingdomに出たら黙っておけばいいか。
『Bocchan、楽しみですね』
『Nobleは自分の自画像や石像を一つは持っているものだから、そんなに嫌がらなくても』
「王城の前のOpen Plazaに石像を建てられるNobleって、居るんですか?」
RitaとSalireが、そういわれた途端視線をあさっての方向に反らしたのが、何となくsignでわかった。頭部も何も無いのに、表情豊かなsistersである。
『おおおっ、っと言う事は居ないのですな? つまりこの世で主のみ! ぢゅううっ、おめでとうございます!』
Bone Manが全力で祝ってくれた。
まあ、良いか。別にTalosheimに誰か来る訳でも無いし。見るのはUndead GiantとGhoul、新種のみんなぐらいだろう。
「では、我々はあの石材を運び出しますので失礼します」
そう言ってNuaza達は石材を運び出す作業に取り掛かり始めた。これからトン単位の石材を襲い掛かって来るmonstersに破壊されない-sama護衛しながら、地上を目指すのだ。
monstersは別に石材を狙う訳ではないが、偶然攻撃が当たって石材に罅が入る事もあるからだ。
「フゴフゴ」
「Kingの石像の材料、守る」
「だから俺達にもReversi」
そしてその護衛をGorba達Orcusが担当している。彼らはAnubisやBlack Goblinと違って、まだ大人になっている訳ではないが、Rank3ぐらいの敵なら既にどうにかなるskillとbody part Abilityを身に付けている。これくらい丁度良い訓練と言う事だ。
「ここを出たら作りますね。そういえば石材を階段で運ぶのは大変なのでは?」
『安心しな! Knowkowってもんがあるからよ!』
何でも階段をslowプにするためのmagic itemだとか、色々な物があるらしい。それにUndead TransformationしてFatigueの概念が無くなったGiant raceに、まだchildだがOrcusにと、Mysterious Strength揃いだ。心配するだけ無駄だろう。
Nuaza達と別れて進むが、きっと石材を切り出す邪魔をされないようにと前もってmonstersを狩ったのだろう、地下六階には殆どmonstersが出現しなかった。
「俺達、何でここに潜ったんでしたっけ? 視察の為だったかな」
「気持ちは分かるが、きっと下にはまだまだmonstersが居るはずだ。進むぞ、Van」