<- Previous | TOC | Next ->
Special thanks to MBA and the Users from the LBN #spoilers Discord. Without them this would not be possible.

Chapter 36: 褒めて伸ばすスパルタ修行

 このLambda worldが最も平和で、最も栄えていたAge of Gods Era。それを終わらせたDemon King Guduranisと、Demon Kingが率いてきたcountlessEvil God (M) Evil God (P)


 水も大地も空気でさえもCurse、生ある物を蝕む毒とした【Evil God of Cursed Poison】。

 狩猟か腕比べしか知らなかった人々bloodの快楽を教えた、殺戮のArtisan、【Evil God of Mad Slaughter】。

 あらゆる生命を弄び、数多の邪悪な合成獣を創りだした【Evil God of Distortion】。

 それまでLambdaに存在しなかった悪徳を以て人々を惑わし、堕落させた【Evil God of Ruinous Greed】。


 それ等主だった存在はGodsChampion達によって滅ぼされたが、未だ数多の邪悪なGodsがこのworldには潜んでいる。


 その内の一柱、【Evil God of Distortion】の元Subordinate God、【Evil God of Joyful LifeHihiryushukakaを奉じ、そ's Divine Protectionを受けるVampire達のcommunityが存在した。

 Hihiryushukakaは、命を弄ぶ事こそが最大の快楽であり、自らがより優れた存在である事の証明であると教えるEvil God (M)である。


 命乞いする者がいるなら、弄び希望を持たせ従うように強制し、最後にはdespairの縁に落として命を奪え。

 力が欲しいと嘆く虫がいるなら、望まぬ力を与えて破滅するように誘導し、力など要らないと悔恨の叫びを上げさせよ。

 自らの武勇を誇る者がいるなら、その力を奪え。四肢を捥ぎ取り、目を潰し、tongueを裂け。地べたを這いまわる虫に等しい弱者に堕とせ。


 それを成してこそ、汝らはより優れた存在に成る事が出来る。自らの足の下に弱者を積み上げ、踏み躙ってこそ高みに至る事が出来るのだ。


 そんな教えを説くHihiryushukakaにとって、『Goddess of Life and LoveVidaを失ったVampire達をbelieverに加えたのも一つの快楽なのかもしれない。


 しかし、十万年後邪悪なGodsに鞍替えしたVampire達の中でも、【Evil God of Joyful Life】派は指折りの勢力に成長した。

 強大な力を持った三名のPure-breed Vampireによって支配された、百名を超えるNoble-born Vampire。その下に存在するSubordinate Vampireや、永遠の命を望むVampireの信奉者の数は数え切れない。その下のUndeadmonsters、自分がminionsとなっている事すら気づいていないmercenary団やmountain bandit団まで行くと、数えるのも愚かしい。


 その戦力は大国に並び、influenceなら大国すら操る事が出来る。


「さて、最初の議題は例のDhampirについてだ」

 そう言ったのは、communityReignする三名のPure-breed Vampireの一人、Birkyne。その見かけは二十age前後の、線の細い優男といった-sama子で、Noble制度が無い時代の生まれながらNoble的な雰囲気で、名の子息子女を集めて茶会やDancing会を催すのが似合いそうな人物だ。


Dhampir? ああ、あんたの所のSubordinate-bornと警備兵の間に生まれた奴だっけ?」

 それに応えたのは、二十age過ぎの女だ。男好きする体つきに、輝かせればどんな男も落とせそうな美貌を何処か怠そうな眼差で曇らせている。

 大きく胸元が開き背中を露出したdressは豪華だが、品が無い。Nobleのご婦人というよりも、Noble御用達の高Class Prostituteのように見えてしまう。


「だったらアタシの城で母子仲良く働いてるよ、背中と背中をくっつけて、八本の手足でね」

Ternecia、それは百年前の事だろう」

「じゃあ、あのBeast raceの胎から生まれた奴かい? それだったらあんたが殺したんじゃなかったっけ? 一族ごと」


「それは五百年前だね」

 Birkyneと漫才のようなやり取りをするTerneciaの正体もまた、Pure-breed Vampireだ。

 このcommunityの実質的なNo3であり、実力的にはNo1だとされている女Vampireだ。


「私が言っているのは、Gubamonの所のずっと下のSubordinate Vampireと、Dark Elfの間に生まれたDhampirの事だよ」

「ああ、Gubamonの爺-sanの所のか! そういえばあったね、そんな事も。

 っで、そのGubamonの爺-sanは何処だ? 姿が見えないね」


 BirkyneTernecianameを出したGubamon。彼がこのcommunityを支配するPure-breed Vampireの最後の一人だ。

 しかし Terneciaが探しても、その姿はfragmentも見当たらない。


「ぐ、Gubamon卿は所用があり今回は欠席すると……」

 青い顔をして口を開いたNoble-born Vampireは、Gubamonの下に居るのだろう。Terneciaに睨まれ、堪らず震え上がっている。

「何だって!? 今回も欠席かい!? アタシだって十回に九回しか休まないのに、あの爺-sanもう二十回も休んでるじゃないのさ!

 さっさとあのクソジジイを連れてきな!」


「お許しをっ、Gubamon卿から今手が離せない、Ternecia -samaBirkyne -samaにはすまないという伝言を預かっておりますっ」

「つべこべ言うんじゃないよ! アタシの作品の材料になりたいのかい!?」


 恐れおののくNoble-born Vampireに、今にもfangsthrust立てそうなTernecia。その-sama子をクスクスと嘲笑う他のNoble-born Vampireと、Birkyne

 彼らにとって、同胞といえど同情の対象では無い。


「その辺りにしておきたまえ。事の経緯は既に報告を受けているからね」

 しかし Subordinate-bornならin any caseNoble-bornは作るのに手間がかかるし、Gubamon派とTernecia派で抗争でも起こされたら、とても愉快だろうがcommunitymidair分解しかねない。

 Birkyneはやや愉しんでから止めに入った。


「そうなのかい?」

「ああ、-kunも知っての通り、Gubamonの手の者によりValenの処刑は完了。死体は間違っても蘇らないように処理した。

 母親のDark Elfも、Amidfanaticを使って火炙りの刑にかけたそうだ」


「へぇ、あのcollectionを集める事しか頭に無いクソジジイの手下にしては手際が良いじゃないか。それで、肝心のDhampirはどうしたんだい?」

「取り逃がしたそうだ」

「はぁっ!?」


 顔を歪めるTerneciaに、Birkyneは愉快そうに目尻を下げてlipsの端を釣り上げ、説明を続ける。

「見つからなかったがまだ乳飲み子だったので一人では生き残れないだろうと思って放置したら、三ageに満たないageでどうやったのか分からないけれど数百匹のGhoulを支配下に置いていたそうだ。

 しかもHumanに大規模な討伐隊を組ませて派遣させたら、その前にGhoulを連れてBoundary Mountain Rangeを越えたらしい。何をどうやったのか、全くの謎だそうだ」


 そうBirkyneが言うと、Terneciaだけでは無く他のVampire達も-sama々な反応を見せた。

 何かの冗談だと思って、半笑いの表情を作る者。

 驚いて唖然とする者。

 聞き間違いかと困惑する者。


「フザケンナ!」

 激怒したのはTernecia一人だった。

「つまりそいつはこれで死んだだろって手を抜いて、そのDhampirが数百匹の手下を手に入れるのも、Boundary Mountain Rangeを越えるのも、むざむざ見逃したって事だろ!

 何考えてんだ!? いや、考えるだけの脳味噌があるのか!? 今すぐそいつをぶち殺せ!」


 fangsを剥き出しにして激怒するTerneciaは、Dhampirを恐れてはいない。ただ知っているのだ。自分達が十万年もの長きに渡って闇のworldReignしてきたのはEvil God (M) 's Divine Protectionがあったから、そして自分達が勝てる状況を整えてから戦って来たからだと。


 相手がDhampirHumanだけなら、ここまで危機感を覚えない。しかしBoundary Mountain Rangeの向こうにはVida's FactionPure-breed Vampire達がいるのだ。自分達と互の存在が。

 十万年の間殆ど動きを見せていない奴等だが、それが動き出せば存亡をかけた脅威となるのは確実だ。


「その通りですBirkyne -samaっ、そのような者は今すぐ処刑し、Dhampirの件は我々にお任せください!」

「いえ、是非このCarmineにお任せください!」

「私ならばBirkyne -samaTernecia -samaのご期待に応えてご覧に入れます!」


 そして次々に追従するVampire達は、手柄を上げる機会だと求められてもいないのに、我先にと手を上げる。別に手柄を上げてもNoble-bornPure-bornに至る事は不可能だが、Hihiryushukakaに認められれば【blessings】を得る事が出来る。

 blessingsを得れば、他のNoble-bornたちよりも一段、二段上の力と権力が手に入る。


「いやいや、まずは失態を犯した本人に働いてもらおうと思っている」

「何だって!? 二度失敗した奴にお情けをくれてやろうってのかっ? どうせ三度目の失敗を犯すに決まってるよ!」

「まあ、私もそう思うが、彼の熱意に胸を打たれてね。そうだ、皆にintroductionしよう」

 そう言いながら、Birkyneがすっと白く細い手を上げた。


 どしゃあっ!

 そんな音を立てて、whole body bloodだらけの男が何処からともなく落ちてきた。

introductionしよう、Gubamonの配下、SercrentOzba -kunだ」

 優しげなSmiling FaceのままBirkyneが指し示した男……Thomas Palpapek Earlと繋がっていたNoble-born VampireSercrentOzbaは「う゛ぅ」と小さい呻き声を上げた。


 その姿は凄惨の一言に尽きた。両手の指全てに銀の串がthrust刺さり、脚はローストされたかのように焦げ目が付いており、背中はcountlessの肉のbumpに覆われている。

 背中のbumpが脈打ち弾けたかと思うと、そこから毛とskinの無い鼠のようなものが這い出て来て、周りの肉を食い千切る。そして自分のbody part程も肉を喰うと、出来た穴に頭を突っ込んでSercrentの肉に戻って行く。


 HihiryushukakaCurseだ。


「おゆ、る、じ、……こ、こん……かな……らず……」

 力を振り絞って顔を上げたSercrentを見たVampire達は、思わず息を飲んだ。そこに顔が無かったからだ。

 eyeballをくり抜かれ、鼻を削がれ、頬を抉られ、lipsを引き千切られ、まるでbloodで汚れた髑髏のようだった。


 何よりも惨いのは、Curseも含めてどれもこれも致命傷では無い事だ。Noble-born VampireVitalityRegenerative Powerは凄まじく、ここまでされても死ぬ事は出来ない。


 高貴な、寿命を超越した存在であるNoble-born Vampireですらも、Birkyneにとっては玩具に過ぎない。それを再確認し、Vampire達は押し黙った。


 Terneciaは席を立ち、再生する度に肉鼠に肉を喰われているSercrentに歩み寄ると、その顔を思い切りけり上げた!

「げう゛!」

Birkyne、この死にぞこないに何をさせるつもりなのさ。こんな奴じゃ芋虫一匹殺せやしないよ」


 chinを蹴り砕かれて悶絶するSercrentは、確かに刺客というよりも処刑を待つ哀れな死刑囚にしか見えない。

「僭越ながら、Ternecia -samaの言う通りかと。あの者にBoundary Mountain Rangeを越え、標的を探しだし、数百匹のGhoulを突破してDhampirを始末するのは不可能かと思われます」

 Terneciaに同意した女Vampireが発言する。他のVampireも、概ね同意見のようだ。


 個体差は在るが、Vampireは強力なraceだ。Pure-bornに限るなら、Vida's New Races中最強のraceであると言っても過言では無い。

 竜種を易々と屠り、一人で一国を滅ぼす事も可能。彼らの前に立ちはだかる事が出来るのは、legend Classmagic itemを持ったAClass以上のadventurer partyだけだ。


 しかしSercrentPure-bornよりも何段も落ちるNoble-bornだ。それでも並のKnightadventurerから見れば脅威以外の何ものでもないが、Boundary Mountain Rangeにはその程度のmonstersは掃いて捨てるほど居る。

 空高く舞ってMountain Rangeを越えようと試みる者は、空のDevil Nests……Demon's Skyに住まうmonsters達と空の支配権を争う挑戦者と見なされ、引き裂かれる。


 かといって険しい肌を人のように這いまわって越えようとすれば時間がかかり、更にそれでも無事に済む保証はない。

 未知のDevil Nestsや未発見のDungeonから、余所者を喰おうとmonstersが溢れて来るからだ。


 それを避けるならmonstersをものともしない、その上垂直の崖を登りながら自在に動き戦闘が行える猛者を数百人揃えて、その大所帯で周囲を威嚇しながら進むしかない。

 どう考えても無理な話だ。それこそ神とそのFollowersが直接動くか、余程のtricksでもしなければ。


 しかもMountain Rangeを越えるだけでは無く、その後Dhampirの足跡を追い、数百の内生き残っているGhoulの目を掻い潜って殺さなければならないのだ。使命さえ果たしてくれればこの場の大多数のVampireにとってはSercrentの生死はどうでもいいのだが、果たす前に死なれては困る。


「問題無いさ。Sercrent -kunはこの使命をやり遂げる為に命を懸けてくれるそうだからね。そうだろう、Sercrent -kun?」

「あ゛、あ゛い゛! お゛まがぜっ、お゛ま゛がぜぐだぢゃいっ!」


 Birkyneの問いかけにSercrentが即座に、裂かれたtongueと砕けたchinで返答する。よく耳も無いのに聞こえたなと、場違いな思いをVampire達は抱いた。


「だからそいつの意地とか、やる気とか、そんなのはどうでもいいんだよ。実力が信用できないってアタシは言ってんだよ」

-kunの言う事も尤もだ、Ternecia。だから、今回は私のlover達から一人派遣しようかと思ってね」


「あ゛あっ? あんたの情婦を?」

 ざわりと、Vampire達がざわめいた。その顔には抑えがたい畏怖と嫌悪が滲み出ている。


 Vampire達は総じてprideが高く、同じ階Classの者を自らの上に置く事は無い。

 Subordinate-born同士、Noble-born同士で上下関係が決まるという事は、下に堕ちたVampireにとってSlaveにされたも同然という認識だからだ。


 少なくとも、Evil God (M)Evil God (P)に鞍替えしたVampire達にとってはそうだった。


 そしてBirkyneはそれを見るのが大好きだった。趣味と言っていい、Torture等それに比べれば暇潰しの手慰みだ。

 自らNoble-born VampireSubordinate Vampireに仕立てた手下同士で競い合わせ、争わせる。潰し合わせbloodを流させて、勝った方に寵愛を、負けた方に苛烈な罰を与える。


 それを自分のlover達……自らの親衛隊と、Gubamonの配下であるSercrentで行わせようというのだ。

Eleonora、やってくれるね?」

 すっとBirkyneshadowから現れたのは、赤毛を腰まで伸ばした美女だった。Dancing会に出たなら、お世辞に慣れたNoble達も語彙の限りを尽くして心から彼女を褒め称えるだろう美貌に、見惚れてしまいそうな微笑を浮かべている。


「はい、お任せください」

「フフ、Sercrent -kun達と仲良くするんだよ。

 後、近くにTalosheimの廃墟があるから、Sword King Borkusboneがまだ残っていたら拾って来てもらえると助かるな。Gubamonに二個目の貸しが作れる」


「畏まりました、beloved我が-kun


 EleonoraBirkyneの配下の中でも最も年若く、数年前にNoble-born Vampireになったばかりでありながら頭を現してきた才媛であり、後数百年で【Evil God of Joyful Life】に仕える者の中でもPure-bornを除けば最強のVampireになるだろうと目されている。

 Ternecia本人も、彼女には敵わないと嘆いた配下を何人か苛立ちのあまり殺している。


「ふん、精々油断して痛い目を見ないように気をつけるんだね」

 どうせならDhampirと刺し違えてくれればいいんだけどね。そういう本音を押し隠したTerneciaの言葉で、この議題は終わった。


 後は何時も通りの定例会……闇guildがどうとか、最近のAmid templeの動きがあれやこれや、Hartner Duke 家で跡継ぎ争いが激化しそうだとか、Vampire達の長いnightの暇潰しに役立つ情報を交換し、それぞれの事業の報告を行い、最後にSubordinate Vampire Candidateintroductionと、Vampire化を行う事の承認が行われて、お開きとなった。




 Talosheimの近辺に存在するDevil Nestsには、四つのDungeonが存在する。

 Garan’s ValleyDoran’s Aquatic CavernBorkus’s Sub-Dragon SavannahBarigen減命だ。何れも自然環境を模したTypeDungeonで、from here手に入る産物がTalosheimの繁栄を支えてきたのだ。


 Vandalieuは、そのDungeonの内最も攻略難易度が低いDClass DungeonGaran’s Valleyに挑む事となった。

 以前Mirg Shield Nationで入ったDungeonと同じくらいの難易度(だとVandalieuは思っている)だろうが、ここがTalosheimにおける新米の訓練場であり、そして繁栄を支える糧だった。


 Garan’s Valleyでは、岩塩や石材が取れる階層がある。特に岩塩が無ければ、Mountain Rangeに閉じ込められた内陸に位置するTalosheimは、小さな村以上にdevelopmentする事は無かっただろう。


 今Vandalieuが居るのは、そのGaran’s Valleyの一階だ。memberは何時もの顔ぶれからSamを抜き、代わりにBasdiaを加えた編成になった。

「ギッ! ガッ!」

 そして、短槍で武装したGoblin Soldierと一対一で戦っていた。


 ヒュッヒュと、Basdiaの目には拙いが一応形はSpear Techniqueになっている動きで、Goblin SoldierVandalieuに向かって何度も槍をthrust出す。

「…………」

 それをVandalieuは、やはり何とか形になっている程度の体術で避け、clawsで反撃を試みる。


「ギャギャ!」

 それを避けられ、また槍が繰り出される。

 三agechildmonstersと戦っていると見ればハラハラするが、WarriorWarriorの戦いと見るなら欠伸を噛み殺さずにはいられない、拙い応酬が続く。


 その周りには、十数匹のGoblin Soldierの死体が転がっている。それをなしたのは、Vandalieu……では無く、Bone ManBasdia達である。

 襲い掛かって来たGoblin Soldierの群を一匹だけを除いて皆殺しにし、Vandalieuの実戦相手に宛がったのだ。


BocchanUnarmed Fighting Techniqueaptitudeはどうですか?』

 Halberdに付いたbloodを拭ったSalireBasdiaに聞くと、彼女は「どう言っていいか分からない」と答えた。

Vanにも言ったが、筋は良い。良すぎてハラハラするぐらいだ。だが、Geniusと言うのも違う気がする」


『ええっと、それはaptitudeがあるって事ですか?』

『あたし達よりも覚えは良いし、すぐ追い越されそうだよね、姉-san

 Basdiaの言葉に存在しない首を捻るSalireRitaの言う通り、Vandalieuの覚えは良いように彼女には見えた。


 彼女達は今でこそLiving High-Leg ArmorBikini ArmorUndeadだ。しかし生前はただのMaidで、箒で掃除をしても、槍斧や薙刀を振り回し弓矢でmonstersを射殺すような事はした事が無かった。

 そのため、monstersとなった事でincreaseしたAbility Values頼りにWeapon Equipmentを振り回し、Vigaroに「新米臭い動きだ」と言われながら教わり、Fatigueや睡魔と無縁のUndeadとしての特性を活かしてnight中も訓練を行い、やっとskillを身に着けたのだ。


 それに比べれば、Vandalieuの覚えは早いように彼女達には見えた。nightはしっかり眠り、週に一日の休日は一時間程練習するだけなのに。

 ちょっとGoblin Soldierの反撃を受けて傷ついているが、それは仕方ないだろう。鎧だけの私達とは違って、Bocchanには肉があるのだから。


Vanには躊躇いが無い、怖がりもしない、焦りも今は無いらしい」

『ヂュゥ? それは良い事なのでは?』

 剣の切っ先でGoblinの死体にMagic Stoneが発生していないか探っていたBone Manの言葉に、Basdiaも「そうだ」と答えた。


「良い事だ。私も昔はVigaroに散々怒られたからな。目を瞑るな、怖がるな、焦るなと」

 しみじみと自分が半人前だった時を思い出す。今でこそRank4のGhoul WarriorになったBasdiaだが、certainly最初から強かった訳じゃない。

 childの頃は過酷なDevil Nestsで生きていくため、厳しい訓練を課され乗り越えてきた。


 練兵術も何も無いGhoulの実践重視のスパルタ式訓練で、今Vandalieuに彼女がしているように生け捕りにしたGoblin等のweak monstersと戦わされた。

 しかし、実戦と訓練は違う。


 自分を殺そうとしている相手に、この攻撃でいいのか、避けられたらどうしようと躊躇う。

 Killing Intentの載った視線と攻撃に晒され、傷つき殺される事を怖がる。

 訓練通りの実力を発揮できず、どうすればいいのかと焦る。


『そういうものですか?』

『あー、焦るのは分かるかも』

『うん、躊躇うのと怖がるのは分からないけど、焦るのは分かるわ』

 Undead達にはあまり共感を得られなかったようだが。彼らは感覚が生物とは異なるので、それが普通だろう。


「だが、Vanにはそれが無い」

 Vandalieuは躊躇わずに攻撃し、怖がりも痛がりもせず攻撃を受け、焦らず反撃する。

 また無表情に誤魔化されているだけかと思って聞いてみると、本当に躊躇いも何も感じていないらしい。


「最悪でも、俺が傷つくだけですし。これぐらいじゃ、死なないし」

 Vandalieuは常に【Danger Sense: Death】のmagicActivateしているので、自分が死ぬ可能性に敏感だ。敵からのbloodthirstも、数ある危険の一つでしかない。


 痛みも無視する事が出来るらしい。感覚が鈍い訳ではない、後回しにするのだ。

「もっと痛い目に前世であっているので」

 どうやら前世で痛みから意識を逸らす方法を身に着けていたらしい。更にDhampirの高い治癒力とNo-Attribute Magicの【Fortify Regeneration】が拍車をかけている。


 そして失敗しても、ちょっと痛い目を見るだけと割り切っているので焦らない。指が落ちても足が落ちても、拾ってくっ付けさえすれば大丈夫。目はちょっと困るから、気を付けよう。


「だから、ああいう事をしてしまう」

 そう言うBasdiaの前で、Vandalieuの腕にGoblin Soldierの短槍がthrust刺さっている。

『ああっ!』

『ちょっ、Bocchanっ!』

『グルルル!?』


 Rita達が慌てるが、Vandalieuは平然としている。当然だろう、避けられないと判断した一撃に腕を盾にして凌いだのだから。

 Goblin Soldiergrinningと笑って槍を引き抜こうとするが、それが彼の敗因だった。


「ふっ!」

 三ageの矮躯からは考えられない力で、槍が刺さったままの腕を動かして、Goblin Soldierの体勢を崩す。

「ギャギヒ!?」

 そしてclawsでつんのめったGoblin Soldierの脇を抉った。bloodを傷口と口から吐き出して、Goblin Soldierは地面に転がる死体の一つになった。


「ふぅ……失敗」

 そんな事を言いながら傷口から槍を引っこ抜き、【Sterilization】した後治癒させる。

『失敗じゃありませんよ! 死んだらどうするんですか!』

『確か人ってbloodを流し過ぎると死んじゃいましたよね!?』


『ゲエエエ!? グエエエエ!?』

「落ち着いて、死なないから、ごめんごめん」

 慌てるSalire達を宥めながら謝るVandalieu。だからハラハラさせられるのだ、しかも怒り難い。Basdiaはそう思った。


「すみません、攻めきれずにいる間に足元に転がる死体に足を取られて相手の攻撃を避けられなくなり、このままだと重傷を負うので腕を盾にしました。

 次はclawsで槍を逸らすか、そもそもその前に倒せるようにしたいと思います」


 本人としては腕を盾にしたのは最悪の事態を避けるための行動であり、仕方の無い事だったという感覚なのだろうが、それでもそれを親しい者が見たら良い気分はしないだろうなと気がついている。……しかも強く叱るとpanicに陥る。

「よし、次は気を付けるんだぞ」

 なので、Basdiaとしてはそう言った後、あの時こうすればいいとか指導するに止めるのだった。


 本人が技量不足を自覚しているので、不足している技量が手に入ればあんな無茶をする必要は無くなるだろうとBasdiaも、そして話を聞いたZadirisVigaroもそう考えていた。

 誰も好き好んで自分の身を削ったりはしない。Vandalieuだって痛覚が無いわけではないのだ。削らずに生き残れるなら、勝てるなら、痛くない方法を選ぶはずだ。


 実際、自分の力以上のものが生き残るのに必要な状況に陥ったら、ZadirisVigaroも無理や無茶をして何とか修羅場を潜り抜けて来た。特にZadirisは、その無茶をしてVandalieuに助けられたのだし。


「っと、いう訳でVan。お前には早く技量を上げてもらうぞ。休憩したら次だ」

 なので、すぐ対処できる程度の無理無茶で済む今の段階で、Vandalieuにはしっかりとした技量を身に着けてもらいたい。


「……ちょっとpaceが速くないですか?」

「速くない」

「じゃあ、magicを使ってもいいですか?」

「強い腕っぷしが欲しいんだろう? 頑張れVan♪」

「せめて正面からじゃなくて、普通に不意打ちとか奇襲とかしていいですか?」

「それじゃあ技量が身につかないだろう、ファイトだ♪」


 magicを使ったら武術の訓練にならないし、magicと武術を組み合わせて戦えるほど今のVandalieuは器用じゃない。

 高いAbility Valuesで翻弄し、不意を打てばGoblin Soldierくらい一撃で殺せるが、それでは肝心の技量が身につかない。


 そして何よりも、男は強くなくては。

Katiaから聞いたが、妻はchildだけでは無く夫も育てるという言葉がHumanにはあるらしい。

 安心しろ、Van。お前は私が育ててやるからな♪」


「……わ、わーい」

 強くなりたいからUnarmed Fighting Techniqueを教えて欲しいと彼女に言ったのは自分だし、このほぼ実戦の訓練が効果的なのは解っている。

「大丈夫だ、Van。お前は出来る!」


「はい」

 そして何より、Vandalieuは褒められるとweak Typeだった。


 この日、VandalieuGoblin Soldier二匹、Kobold一匹、ミニNeedle Wolf二頭、Goblin Knight一匹を一人で倒したのだった。




《【Unarmed Fighting Techniqueskillを獲得しました!》


<- Previous | TOC | Next ->
Special thanks to MBA and the Users from the LBN #spoilers Discord. Without them this would not be possible.