ZadirisがBildeの出産のために用意したroomは、Talosheimに幾らでもある廃墟の一室だった。
綺麗に掃除した後床にNeedle Wolfの柔らかい腹のfurを敷き、そこにBildeを寝かしている。
「まず【Sterilization】っと。Bilde、大丈夫ですか?」
roomの中にはBilde以外にも三人の女Ghoulがいた。maybe彼女達は出産経験のある、産婆-sanの役なのだろう。
「ヴァ、Vanっ」
陣痛の為だろう、荒い呼吸を繰り返し額に汗を浮かべているBildeがVandalieuに気がついて手を伸ばす。その小さな……しかし自分よりは大きな手を彼は取り、握られる。
「あ、あたしっ、頑張って元気な赤-chanを産むからねっ」
こう言われた時、男はどう答えるべきだろう? Vandalieuのpositionだと悩ましい事だ。特に、彼は自分の無表情さと声の平坦さを自覚しているので、普通に「頑張れ」と言った場合冷たく感じるかもしれないと思い、躊躇われる。出来るだけ頼もしく聞こえるように……。
「大丈夫、俺が付いているから安心して」
医師免許none、出産に立ち会った経験noneの自分が居て何が大丈夫なのか、何処に安心材料があるのか分からないが、今はBildeを励ますのが最優先だ。
こういう時、逆に無表情は便利だ。自信の無さが顔に出ない。
「うんっ!」
励ます事に成功したようだ。やはり苦しそうだが、Smiling Faceを見せてくれた。
その成果が得られた事を考えれば、彼女が握りしめている右手にclawsが当たってちょっと痛い事なんて些末な事に過ぎない。あ、ザクって刺さった気がする。
……でもその顔に若干死相が見える。
「息を整えてっ、短く吸って、長く吐きながらいきむのよ」
「余裕があったらStatusを見て、Vitalityは減っていない?」
「ん、-chanと儂が取り上げてやる。安心するのじゃ」
他の皆の-sama子を見ると、Bildeに目に見える異常や不調は起きていないらしい。彼女は疾患にかかっている-sama子も無かったし、胎児にも異常は無かったはずだ。
「ちょっと調べますね」
しかし死相が見えるのは確かなので、Vandalieuは【Spirit Form Transformation】で自由な方のLeft ArmをSpirit Formにし、Bildeのお腹に入れる。
すると、どうやらuterusの中で胎児の首に臍の緒が絡まっているらしい事が分かった。このままだと胎児の首が絞まってしまう。
『Zadirisが呼びに来てくれてよかった』
そう思いながら胎児の首から臍の緒を外す。……右手でやった方が簡単なのだが。
「坊や、どうじゃった?」
「大丈夫です、解決しました」
Vandalieuの右手のboneがミシミシ軋んでいて、Bildeのclawsが遂に食い込んで麻痺毒が入って来ているが、母子ともにno problem。
「よしっ! 後はお主の頑張り次第じゃ、Bilde!」
この後、概ねZadirisが言ったように彼女の頑張りによって出産は進んで行き、Vandalieuは彼女に右手を握り絞められながら励ますだけだった。
ただ出産まで六時間かかり、世の母親の偉大さをVandalieuは思い知ったのだった。
くしゃくしゃの顔をした、灰褐色の赤-chan。彼女がこのGhoul communityに久々に産まれた、新しいGhoulだ。
「見て、女の子よ。Vandalieuのnameをそのまま貰う事は出来ないけど、この子に半分貰って良い?」
我が子を抱くBildeは、憔悴が見て取れたが本当に幸せそうだった。
いいですけど、その子の実の父親は良いの? そう聞くのが躊躇われるぐらい。
「いいですよ」
なのでそう答えた。
後で聞いたが、結婚制度の無いGhoulの新生児のnameは基本的に母親が決めるか、それとも部族のElderと相談して決めるらしい。なので、母親のBildeがchildにVandalieuのnameから半分貰うと決めれば、外野がとやかくいう事では無いそうだ。
「この子を抱いてくれる?」
「喜んで」
今はすやすやと眠っている赤-chanを両腕で……Right Armはまだbone折が治ってない上に長時間麻痺毒を分泌する爪がthrust刺さっていたので、まだ動きが悪い。そのためLeft Armで受け取り、膝の上に座らせるようにした。
「軽くて、とても温かい」
赤-chanのbody partはとても軽く感じた。しかし、この赤-chanはこれから成長し、三百年生きるのだ。そう考えると、生命の神秘を感じる。
新しい命の誕生は、感動的だ。それをVandalieuは三度目の人生で、初めて実感した。
Earthで生きていた頃は、その手のドキュメンタリーで「新しい命の誕生です」と言われても「ふーん」としか思わなかった。所詮、画面越しの自分とは無関係の他人や、動物の誕生であって、感動は全く覚えなかった。
しかし二度の死を経験し……Undead Transformationした後も含めると、三度か。そしてDarciaを生き返す事を目標にしている今では、感動を実感できる。
この子を守るために、出来る事をしよう。俺は父では無いけどGhoul Kingなのだし。
「そういう訳で、Dungeonに行くのは延期します」
そう伝えるとBorkusやVigaroは寂しそうな顔をしたが、「仕方ないな」と納得してくれた。
これから残り九人の妊婦が次々に出産する事になる。その時不測の事態が起きたら、VandalieuがDevil NestsやDungeonの中に居たら対応できない。
「久しぶりに赤ん坊の泣き声を聞いたぞ!」
『落ち着いたらでいいから、産まれた赤ん坊を俺達にも見せてくれ』
「塵に還るのを待つばかりだったこの廃墟で、新しい命が産まれるのは喜ばしい事です」
『目出度い、酒が飲める』
『酒があればな』
「あるぞ、あまり美味くないけどな!」
少子化問題に悩まされていたVigaro達Ghoulはcertainly、Borkus達Undead Giantも赤ん坊の誕生を心から祝福していた。
因みに、赤ん坊にUndeadを近づけて衛生問題は大丈夫かと思うかもしれないが、問題無い。Undead Giantは既に全員Vandalieuの手により、【Sterilization】と【Bug Killer】、【Deodorization】、【Preservation】のmagicをかけられているからだ。
後は下水道の整備が終われば、TalosheimはAmid Empireの都市並みに衛生的な城塞都市になるだろう。町の広さに対して人が少ないので、どうしてもGhostタウン感が拭えないが。
「後、先にこのTalosheimの防衛力をEnhanced (1)したいし、【Alchemy】で少子化対策のitemを作っておきたい。
Adventureや訓練はその合間にしようかと」
真剣に武の道やmagicの道を究めんとする人達からすれば、片手間でやるなと言われそうだが今回は誰もVandalieuにそう言わなかった。
「分かった! じゃあ順番はこっちで決めておくぞ!」
『丁度良いぜ。何せ二百年間誰も入ってねえから、Dungeonの中がどうなってるか分からねぇからな。中のmonstersも増えてるだろうから、丁度良く間引いておいてやるぜ!』
『もしかしたら、放置しすぎて未知の階層が増えているかもしれませんからね』
「格闘技の方はどうする? とりあえず、基礎だけやっておくか」
『ヂュ! 主、ではその間私はlevelを上げて仲間に追いつけるよう、努力してまいります!』
「俺達も今の内にskillを取るぞー」
三度目の人生は皆の優しさに包まれているなぁと、改めて思う今日この頃。
そして早速始めたのは、Ghoulの少子化対策のためのmagic item作りだ。町の防衛力を整えるのは、Talosheimの中から森のDevil Nestsを駆逐出来てからでなければ、逆にRaptorやNeedle Wolfを懐に抱え込む事になるからだ。
「Mikoよ、後数日お待ちください」
との事だった。やはり強さよりも数の多さが問題のようだ。凶暴なNeedle Wolfならin any case、頭の良いRaptorは勝てないと思ったら逃げ出すから、駆逐するのは大変なのだろう。
「っで、問題のmagic itemですけど二種類作ろうと思います」
「精子や卵子の活動時間を伸ばすitemと、胎児がある程度大きくなるまで死なないようにするためのitemじゃな。二つ以上の機能を持つmagic itemを作るのは難しいからの」
分娩室(仮)がある建物の、隣の建物でVandalieuはZadirisとTarea、Basdia、他数名の女Ghoulとmagic item作りの相談をしていた。
「その内、精子や卵子の活動時間を伸ばすitemは着け外しがし易い装身具にしようかと」
「確かに、常につけている物だと……際限なくchildが産まれそうですわね」
「そうだな、皆いきなり変わるのは難しいだろう」
今までGhoulは妊娠し難く、したとしても殆どchildが産まれないという生態だった。そのため結婚制度が無く、子作りに励むのが当然という社会だった。Bilde達が妊娠した頃から抑え気味にはなったが。
それでVandalieuがmagic itemを作ったからといって、突然「じゃあ、これからはfamily計画をしっかり考えよう」とはならないだろう。
Earthのように便利な避妊具や避妊薬がある訳じゃないのだから、尚更だ。
まあ、多少子沢山になるぐらいなら問題無い。寧ろ良い事だ、このTalosheimにはまだまだspaceがあるし、食料は幾らでもある。
しかし、だからといって地に満ちよとばかりに増えると大変だ。Braga達と違って、Ghoulは一年以内に大人になるという訳では無いのだから。
「絶対苦労しますわ。一人でも大変なのに、一度に二人三人とchildを抱えたら……」
「しかも、Bildeも含めて初めて子育てを経験する者が多いからの」
Earthのように保育園もないし、子育てに関する情報が得られる本やtelevision番組、internetも無い。育児経験のあるTareaやZadirisが心配するように、絶対育児ノイローゼになる母親が出て来るだろう。
まあ、一人っ子ならノイローゼにならないという訳じゃないが。
「っと、いう訳でitemを作りながら避妊について説明するのがよいかと」
「そうだな。Humanならin any case、私達は寿命が長い。childは多い方が良いが、産むのは五年毎、十年毎でいいはずだ」
Humanの場合は、特に農村等の場合は「子育てが大変だから、間隔を置いて」と言っていられない事情があるだろうし、そもそもfamily計画の概念が希薄だろう。
そもそも医療が発達していないので、「若くEnduranceのある内に、産んでおく」という考え方が強いはずだ。その点では、Basdiaのいう通り寿命が長いGhoul達は説得するのが楽だった。
これがHumanだったら反発も大きかっただろうし。
「でも男はenduranceできるの? 五年毎十年毎なんて、とても無理だと思うけど」
「そのために着け外しが出来る装身具なのですわ。childが欲しい時だけ着ければいいのです」
逆避妊具という訳だ。
「それで、どんな装身具にするんだ?」
「とりあえず、pendantか太腿に巻くアンクレットにしようかと」
magic itemの形状や装着部位は、とても重要だ。【Alchemy】で作る時の難易度、材料費、そして完成した時の効果の強弱に関わってくる。
例えば、「空を地面のように歩ける」という効果のmagic itemと聞いたら、大体の人は「靴」の形をしていると思うのではないだろうか?
少なくとも、「メガネ」だとは誰も思わないだろう。
逆に、「身に着けると透視できるようになる」magic itemと聞いたら、「メガネ」だと思っても「靴」だとは思わない。
このように込めるmagicと発揮させたい効果によって、作りやすく効果を発揮しやすい形状や装着部位があるのだ。
「腕力をEnhanced (1)する」のなら指輪か腕輪。何かを「視る」のなら「メガネ」、次点で「サークレット」。「速く走れるようになる」だったら「靴」か「アンクレット」というように。
certainly、世の中には何らかの理由で「身に着けると暗闇を昼間のように視る事が出来る靴下」なんてmagic itemも存在するらしいが、作るには高い【Alchemy】skillと、高額な材料が必要になる。
現在、材料は食料以上に余っている。何せ、monstersを狩りまくっているのに手に入る素材を自分達で利用する以外で使えない状況だ。
Magic Stoneを持ちこむAdventurer’s Guildも無いので、Braga達が今より小さかった頃はお弾き代わりにして遊んでいたぐらいだ。
しかし、death attributeのmagic itemを唯一作れるVandalieuの【Alchemy】skill levelは1。なので、下腹部に近い太腿に巻くアンクレットか、同じ胴体という事でpendant topをmagic itemにした物ぐらいが限界だ。
beltという手もあるが、Ghoulにbeltを締める文化が無いため不評かもしれない。
……流石にそれ以上近い場所に身に着けるitemは、作るのにも勧めるにも抵抗がある。
「それで、好きな色や好まれそうなdesignってあります?」
これを聞くためにBasdia達も相談に加わってもらったのだ。身に着けてもらうのだから、好みの色や形の方がいいだろう。
……用途の関係上、情事の最中はずっと身に着けてもらうのだし。
「そうだな……白か黒、銀色や金色も皆好きだぞ」
「赤は戦い以外だと好かれないかも」
「形はfeatherっぽいのが皆好きね。後はheartとか」
口々にGhoul femaleのトレンドを教えてくれるBasdia達。Vandalieuはfashionセンスに自信が無いので、とても助かる。
因みに、heart型はこのLambdaではGoddess Vidaのsymbolであるらしい。流石生命attributeのGoddessだ。
しかし、黒のheartは縁起が悪そうだから、銀色の方がいいかな?
「とりあえず、幾つか作ってみますわ」
「よろしくお願いします」
そして実際に物を作るのがTarea達Ghoulの職人部隊だ。magic itemを作るのは【Alchemy】skillだが、それは物品にmagicを込める時だけで、物品そのものは別の職人が作るのが一般的である。
世の中には素材集めから物品の作成まで全て自分一人でやるalchemistも居るが、そんな物は例外中の例外だ。
「それで、胎児の生命維持のitemはどうするのじゃ? こちらは逆に簡単に着け外しが出来る物ではちと問題じゃろう」
さっきまで「金に銀? 最近の若い者は派手好きじゃの」とか呟いていたZadirisがそう聞くと、Vandalieuも「少し悩んでまして」と答えた。
こっちはZadirisがいう通り簡単に外れ無い方がいい。うっかり外したまま無くしたり、付け忘れたりしている間に胎児が死んでしまったら一大事だからだ。
しかしまさか体内に埋め込む訳にもいかないし……。
周囲に見守られる中、うーんと二人して唸り……。
「刺青はどうじゃ?」
「やっぱりpiercing?」
『えっ?』
全く別の答えを出して顔を見合わせた。
「坊や、piercingでは胎から離れ過ぎじゃろう。刺青なら消えんし、何処にでも彫れるぞ」
「piercingは耳や鼻やlipsでは無くて、臍にするんですよ。刺青って、そもそも誰が彫るんですか?」
Ghoulには、臍にpiercingをするという発想が無かったようだ。そして刺青をmagic itemにしてbody partに刻むという発想も、Vandalieuには無かった。
そして話し合った結果、臍piercingに落ち着いた。
「刺青だと、腹が大きくなった時に変に歪んでしまわないか? その頃には胎児も大きくなっているだろうが、次の妊娠の時に彫り直すという訳にもいかないだろう。
ならpiercingの方が良いと思う」
っと、言うBasdiaの意見が採用された。
因みに、piercingは首から上にする物だという固定観念があったのはGhoulだけでは無くLambda全体であり、このTalosheimから臍piercingブームが広がって行く事になるのだが、それはずっと先の話である。
それからVandalieuはそれまでよりは緩い、しかし三age児には過酷な日常を送った。
基本的に週休一日、しかしその一日に産気づいた妊婦が出たら出勤。代わりに次の日三時間の休養を取る。これを基本的な生活リズムとして、まずTarea達がmagic itemにするための試作品を作るまでの間、Talosheimの修理と整備、格闘技の修行をした。
修理と整備の方は、簡単だった。
「起きろ、一つになれ、抜けろ」
【Golem Transmutation】を活用するので、これだけでいい。地面に転がる瓦礫が自ら手足を生やして動き回り、合体し、形を変えて元通りに直っていく。
流石に一から建物を建てるのは難しいが、ちょっと崩れているのを元通りにするぐらいなら簡単だった。【Carpentry】skillのお蔭か、大体どうすればいいのか何となく分かる。
このLambdaではGhoul用の竪穴式住居も、Giant race用の石造りの家も、同じskillで作れるらしい。
更に建物だけでは無く、【Engineering】skillも生かして下水道や道の修理と整備も行っていく。
このTalosheimには、上水道は無いが下水道が存在する。浄水のmagic itemで使用した水を浄化し、糞尿は一箇所に溜めて発酵させ、肥料にしている。
certainly二百年経っているので、手を加えないと使えない。
地面をGolemにして下水管を露出させ、その下水管もGolemにして罅割れを修理して詰まりを取って、skill levelが上がって使えるようになった【Anti-Degradation】の術をかけてから地中に戻す。
浄水のmagic itemにManaを供給する。
糞尿を発酵させる処理槽に発生していたヘドロ状の正体不明のmonstersを、Bone Man達に討伐してもらう。
以上の過程を経てやっと下水道は使えるようになった。
使う分の水は井戸や水路から汲んでこなければならないが、使った分はそのまま流して捨てる事が出来るのはとても楽だ。
Lambdaに生まれて早三年、つくづくEarthの下水設備は偉大だったと思い知った。特にVandalieuはJapan人だったので尚更そう感じる。
一度すべて直して使えるようにしたら、maintenanceはGolemで自動化する予定だ。
一方、格闘技の修行ではBasdiaに基礎からしっかりと教えてもらった。
「Vanのbody part Abilityは大人のGhoulと殆ど変りない。実戦形式でやって行こう」
いくつかの型を習い、防御や回避の方法を習った。……体で。
Basdiaに足を払われ、蹴られ、投げられ、踏まれ……驚くほど一方的にやられた。幾らmagicを一切使ってないとはいえ、body part Abilityは大人と殆ど変らないという言葉は本当なのかと疑ったくらいだ。
「Vanは筋が良いしbloodthirstにも敏感だけれど、攻めが強引で単調になりやすい。もっと素早く動いて、フェイントも使った方が強くなれる。
後、相手の次の動きを予測しないとな」
BasdiaはVandalieuが厳しく叱られるとpanicに陥る事と、Mental論中心の教え方が嫌いなのを知っていたので、訓練自体は手を抜かなかったが、教える時はゆっくりと優しい口調で話すように心がけた。
そのためVandalieuは冷静に訓練を受ける事が出来た。
彼は今まで防御を全てmagicに頼っていて、攻撃も圧倒的なManaによるゴリ押しで単調だった。これまではbody partの幼さ故仕方ない部分があったし、彼自身も「仕方ない」と思っていた。彼はoriginally喧嘩もした事が無いJapan人で、その次は獣同然に暴れる事しか出来ないOriginの実験動物。格闘技や武術は自分から遠いところに在ると思い込んでいた。
しかし現世の父のお蔭か、意外と筋は良いらしい。
「特に凄いのは目を瞑らない事だ。私が顔を攻撃されても目を瞑らないようになるまで三か月かかったのに、Vanは最初から瞼を閉じない。凄いaptitudeだぞ」
「ありがとうございます」
額や頬を軽くだが打たれて、いつもより顔色が良いVandalieuはやはり目を開いていた。
「まあ、目が潰れても顔を【Spirit Form Transformation】すればSpirit Formの目で見えるからいいか」そんな認識がInstinctや反射nerveにまでimpactを与えているらしい。
そして妊婦達が数日毎に産気づき、Vandalieuはその全ての出産に立ち会った。
流石に毎回胎児の首に臍の緒が絡まるような事は無く、これ自体は普通に――つまり人並みの苦労とドラマと感動を経て、無事赤ん坊が産まれた。
Bildeも含めて産後の経過も順調で、やはりBody的にHumanよりRobust HealthなGhoulである事とここが半ばDevil Nestsである事が関係しているのだろう。
産後に関してはZadirisやTarea等育児経験のあるveteranが色々教えているので、上手く行きそうだ。
magic item作りが本格的に忙しくなったのは、七月の中旬頃だった。
Tareaが作った品にmagicを込めて行く作業は、中々難しかった。これなら城壁を元通り修理する方がよっぽど簡単だった。
「このpaceだと一日に三つが限度か……」
「いや、坊やはまだskill levelは1じゃろう? 十分なpaceじゃよ」
「あまり速くても、作る私のpaceが間に合いませんわ。本当なら装飾品作りは専門外ですのよ」
magic itemを必要とするGhoulは約六百体。このpaceでは全員分作るのに、三百日以上かかる事になる。
しかし Ghoul達全員が今すぐchildをと望んでいる訳では無かったので、急ぐ必要は無いそうだ。
「それに、坊やの計算だと儂やTareaにまで作る事になるぞ。それとも何じゃ、遠まわしな告白かの? ん?」
「まぁっ、いけませんわ、私、若く見えてももう二百六十と一になりますのに。でも、Van -samaがお望みなら……」
「三age児をからかっちゃいけません。あんまりいうと十数年後に実行しますよ」
そんな風に楽しく話しながらmagic itemを作って行く。これまで倒したmonstersの内臓やMagic Stoneの粉を使って。
あっ、今砕いたMagic StoneってNoble Orcのだったかな?
そして余暇を利用して色々試みた。
「魚を詰めて……【Fermentation】」
大豆が無いので代わりに魚で魚醤を作ってみた。Originでは魚醤を態々開発する事は無かったが、三回試しただけで成功した。
魚醤は臭いがややきついが、香草等で大分軽くする事が出来る。
次に大豆の代わりに胡桃やドングリを使った胡桃味噌やドングリ味噌に挑戦して、若干苦戦した。magicを使った発酵は成功するのだが、味が納得いかなかったのだ。
味噌作りはVandalieuからManaを搾り取った研究者が何度もやっていたのでお手の物だったが、流石に胡桃やドングリで作ったのは初めてだった。
「Earthで聞いた胡桃味噌のreputationほど美味くないような? でも胡桃の風味やドングリの香ばしさが残っているから、これはこれでいいのか?」
Earthで聞いた胡桃味噌は、実際には大豆の代わりに胡桃と塩を発酵させた物では無く、既に出来ている味噌と胡桃を合わせて作った物であると知らなかったVandalieuだった。
しかし味的に納得できるものが出来たので、【Maturation】もかけて味に深みを増した後皆に振る舞った。
後ワサビやsugarを準Devil Nests化していたTalosheimで発見したので、早速栽培。まあ、sugarは生えていた場所をそのまま畑にして、肥料を時々やるだけだが。……これだけでsugarを毎週収穫できるのだから、Devil Nestsは素晴らしい。
ワサビの栽培には一手間かけた。ワサビはSterilization成分を出して周囲に他の植物が生えないようにするが、そのSterilization成分のせいでワサビ自身の生育にもimpactを受けてしまい、そのままでは大きくならない。
そこで【Detoxification】を込めた杭を作り、その杭を挿した周囲のワサビのSterilization成分を抑える工夫をして見た。
……かなり失敗したが、何とか成功。もう少しで新しいワサビを探しにDevil Nestsを巡らなければならないところだった。
後Jengaを作ってみた。適当な木材をWood Golemにして同じ形にばらけさせるだけなので、Reversi以上に簡単だった。
「このGyoshoは、もしやlegendの醤油では? あのChampion Zakkartが創り出そうと試み、遂に叶わなかったという、あのlegendの……」
『何であれ美味いな』
醤油は味噌以上に作るのが難しいので、ChampionでもZakkartが再現するのは難しかったのだろう。
味噌の再現には成功していたらしいが、それが広まる前にBellwoodが味噌蔵に火を放ったらしい。そのため今では味噌の存在も知らない者が大多数なのだとか。……Bellwood許すまじ。
sugarやワサビはoriginally食用に使われていたらしい。しかし栽培した事でstability的に手に入るようになった事で喜ばれた。
そしてJengaはReversiと同じようにTalosheim中で流行する事になった。木工職人だった人がUndead Transformationしなかったので、Undead GiantやGhoul達は「これとJengaを交換してくれ」とmonstersの肉を持ってVandalieuを訪ねたという。
「俺、ここで調味料や玩具を作っていれば、それだけで一生安泰なのでは?」
原始的な物々交換だが、生活は豊かになりそうだ。
そんなこんなでmagic item作りが一段落して、Talosheimが元の白い堅牢な城塞都市に戻った頃には夏は過ぎ、秋の足音が聞こえる九月になっていた。
「じゃあ、今日からDungeonに行ってきます」
そして、やっとExperience Pointを稼ぐためにAdventureを始めるのだった。
《【Alchemy】、【Carpentry】、【Engineering】、【Cooking】skillのlevelが上がりました!》
何処とも知れぬ闇の中、長大な食卓が用意されていた。
wine glassには赤い液体が注がれ、集まった者達に供される。
彼等は、一-samaに品が良く、売ればそれだけで平民がfamily全員一年は楽に暮らせる衣服に身を包み、宝飾品で飾り立てていた。
Nobleの晩餐会かと思うかもしれないが、ここに集まったのは普通の意味でのNobleでは無い。
彼らは気品や高貴さを漂わせているように見える。
彼女達は美しく、いっそ儚げかもしれない。
この場に居る誰もが、深い知性を兼ね揃えているかもしれない。
しかしその本質は冷酷で、無慈悲で、残endureな、bloodを欲する鬼。
「では、会合を始めよう。最初の議題は……例のDhampirについてだ」
紅い瞳を愉悦に輝かせ、進行役のPure-breed Vampireはglassに注がれた新鮮な生きbloodで喉を潤した。