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Chapter 34: 初めての就職、でもDungeonにはまだ行かない

 TyranosaurusTriceratopsの串焼きにtongue鼓を打ち、先日見つかった二百年物のTalosheim産古酒をVandalieu以外が飲み、Vandalieuは代わりに恐竜のbloodを飲んだり、プレゼントされた恐竜の死体をZombieにして、動く恐竜展conditionにしたりと、三ageの誕生日はCakeが無くても楽しく過ぎて行った。


 Darciaや元adventurerKatiaに聞いたら、VandalieuimageするCakeはまだこのLambdaには存在しないらしい。牛乳は在るが生Creamは無く、breadは在るがふわふわのスポンジCakeは存在しない。

 LambdaCakeとは、小麦粉で作ったbreadButterや砂糖、ジャムや蜂蜜をたっぷりかけた物らしい。


 できれば次の誕生日はホイップCreamをたっぷり使ったCakeを作って、皆も喜ばせたいと思ったVandalieuだが、肝心の小麦と牛乳が無かった。

 DungeonTreasure Chestや宝物庫に、小麦の苗や乳牛が入っていたりしないだろうか?


 Talosheimでは牛や馬等の畜は飼育していなかった。肉はmonstersを狩ってとるし、労働力としてもGiant raceは下手な農耕馬や牛よりも力があるからだ。

 唯一飼育していたのはギーガという鳥型のmonstersで、鶏代わりにしていたらしい。


 大きさはGiant racechildぐらい……つまり、Humanの平均身長を若干下回るくらいで、一日一個卵を産むそうだ。ちなみに、嘴もclawsも鋭く、更に肉食だ。Rankは2と、そう強い訳じゃないが。

『生きてた頃は毎朝ギーガの生卵をジョッキに入れて飲んだもんだぜ』

 っと、Borkusは笑っていた。ちなみに卵はダチョウの物と同じくらいらしい。


 飼育されていたギーガは二百年前の戦いで全て死ぬか逃げるかしてしまったが、今もDevil NestsDungeonで生息しているらしいので、今度捕まえて飼育を再開しよう。

 幸い、餌になる肉はほどある。




(あれ? 何を考えてたんだっけ? ……そうだ、Cakeだ。卵はCakeに必要だから、後は――)

Miko、どうなさいました? 先ほどから扉の前をウロウロと」

 Adventurer’s Guildがあった建物の、Job changeの儀式に使うroomの前で現実逃避していたVandalieuは、Nuazaに声をかけられ意識を現実に戻されてしまった。


「いえ、ちょっと将来について考えていただけで……」

「そうですか、それは良い事です。しかし、今日はJob changeするのでは?」

「……心の準備が、まだ出来てなくて」


 Job changeの儀式に必要な物は、無い。

 Adventurer’s Guildが正しく機能している場合は、roomの使用料をguildに支払い、終わった後guildの登録証……guild Cardを受付に提出する必要があるのだが、この廃墟ではそれらを払う必要も、提出する必要も無い。


 ただroomに入って、魔法陣の中心に置かれた水晶球に手をかざす。

 そして頭の中に表示されたJobから、就きたいJobを選ぶ。

 それで終わりだ。


 就職サイトに登録したり、Entリーしたり、履歴書を書いたり、面接を受ける必要は無い。

 まあ、そういう意味でのJob changeでは無いので当然なのだが。

「……Jobは魂に刻み込まれると説明されていますが、痛みはありませんよ」

 Vandalieuの緊張を勘違いからくるものだと誤解したのか、NuazaSmiling Faceを浮かべてそう言う。……maybe Smiling Faceなのだろう。乾いた顔のskinが引きつったようにしか見えなかったが。


 しかし、表情に関してはVandalieuも人の事を言えない。それに扉の前を右往左往していても、時間がただ流れるだけだ。

「……そうですね、では行ってきます」

 っと、Nuazaに扉を開けてもらってroomに入る。


 roomは床に魔法陣が描かれ、そのCenterに台座とそこに安置されたround水晶球があるだけだった。水晶球は常に淡く輝いていて、神秘的な雰囲気である。

「……さて、俺にJobは出るかな?」

 ふわりと【Flight】で宙に浮かび、水晶球に手を伸ばす、こうやって飛ばないと、Giant raceに合せた高さに在る水晶球に手が届かないのだ。


 そういえば、腕の長いVigarofemaleでも背の高いBasdiaは手を伸ばせば届くとしても、Zadirisはどうやってこの水晶に触れたのだろう? やはりWind-Attribute Magicで飛んだのかな。

 そんな益体も無い事を考えながら水晶に触れると、Statusを開く時と同じように脳裏に文字が表示された。


《選択可能Job 【Death-Attribute Mage】 【Golem Transmuter】》


「うわ出た!」

 あっさりJob changeが可能と結果が出て、Vandalieuは驚きのあまりmagicを解除してしまい。床に落下した。

 反射的にのけ反ったため、思いっきり後頭部を打ちつける。地味に【Danger Sense: Death】が警報を発して来る。

 幼児の頭蓋bone脆い。


Miko、何か物音が――Miko!? 大丈夫ですか!?」

 倒れたまま【Rapid HealingskillNo-Attribute Magicの【Fortify Regeneration】で回復を待っていると、物音に驚いたNuazaが入って来て、密室殺人事件のFirst発見者のようなreactionを取るが、彼が駆け寄って来る前にVandalieuは倒れたまま、手で「大丈夫だ、そっとして置いて」と合図を送った。


 頭を打ったので、回復するまで動かされたくなかったのだ。




 -sama々な窮地を乗り越えて、昨日三ageの誕生を迎え生きると誓ったのに、驚いて後頭部を打ち死亡するという間抜けな最期を遂げずに済んだVandalieuは、再び水晶球に触れた。


《選択可能Job 【Death-Attribute Mage】(NEW!) 【Golem Transmuter】(NEW!)》


 やはり表示された。

 CurseのせいでJob change出来る可能性は少ないと思っていたのに、二つも選択可能なJobがある。これは普通なら喜ぶべき事だが……。

「何かのTrapか?」

 しかし、内心では小躍りしたいのをenduranceして、冷静に考えてみる。


 【Cannot learn existing jobs】のCurseをかけたRodcorteは、Vandalieudespairさせて彼が復讐を諦め、suicideする事を望んでいる。なのに、こんなあっさりとJob changeが可能だなんておかしくは無いだろうか?

「そういえば、何でJob changeできるんだ? Unable to gain experience independentlyCurseもそうだけど、俺をdespairさせたいなら最初からlevel up不能とか、Job change不可能のCurseをかければいいのに」


 最初からlevel upできず、Jobにも就けないようにすれば抜け穴だって無い。猿はどんなに頑張っても背中から翼を生やして飛ぶことが出来ないように。

 それをしなかったのは、これ等全てRodcorteが仕組んだ巧妙なTrapなのではないだろうか? 例えば、この表示されたJobを選ぶと、最終的に詰むのではないか?


 Ability Values補正が低く、更に取得すると不利にしかならないPassive skillsを取得してしまうとか。

 あるか分からないが、【短命】とか【不運】とかそんなskillだ。このworldでは一度習得したskillを直接sealedする事は出来ないので、そんなskillを習得してしまったら大変だ。


 だが、逆にRodcorteがそんな迂遠なTrapを仕掛けるだろうか?

 あの神がこれまでしてきたことは、基本的に大雑把でやった後はReincarnatorに全て丸投げにしただけだ。そもそも、奴はあくまでもGod of Reincarnationだ。決して全知全能では無い。


 このLambdaではHumanにはlevelがあり、Jobに就くのが常識だ。逆にいうなら、levelJobも存在しないなら、Humanでは無いという事になる。

 RodcorteVandalieuを含む全てのReincarnatorに、Originで死んだらこのLambdaに生まれ変わるよう仕掛けを施していた。LambdaHumanとして生まれ変わる以上、levelJobが存在するという決まりからVandalieuだけを例外には出来なかったのだろう。


 だから【Unable to gain experience independently】や【Cannot learn existing jobs】のCurseをかけたのではないか? 神でも条理を無視できないから、Curseの内容が無理矢理になって、それで穴が出来たのか。


 それにRodcorteはこのLambdaに存在していない。死者のCircle of Reincarnationを司ってはいるが、奴のnameはこのworldMythに一度も出て来ていない。

 だから奴はもしかしたら、このLambdaを離れて眺めているだけで、それほど詳しい訳では無いのかもしれない。


「つまり、Rodcorteが雑で無知だから俺はこうして大きな抜け道を通る事が出来る訳か」

 時々思い出すように疑心と警戒を覚えるが、神だってそんなものだという結論に至るのだった。


 次に、何故これまで誰も就いた事の無いJobが何か特別な創意工夫をした訳でも、訓練をやり遂げた訳でも無いのに出て来たのか不思議に思うが、少し考えれば不思議でもなんでもない事に気が付いた。

「俺のDeath-Attribute Magicは、このLambdaにこれまで存在しなかったmagic。なら、これまで存在しなかったJobが出ても不思議じゃないか」


 Job systemGodsが創ったものだが、全てのJobGodsが作った訳じゃない。何せ、十万年よりもずっと前からある物なのだから。

 例えば、Age of Gods EraにはNoble制度は無かったから、【Knight】や【Holy Knight】といったJobは存在しなかった。

 未来に、maybe Reincarnatorの誰かが黒色火薬と銃というこのworldに無かったものを発明すれば、maybeCannoneer】や【Gunman】というJobが増えるのだろう。


 ……【Golem Transmutation】もこのworldにとって初めてのskillらしい事には驚いたけれど。このworldGolemはどうやって作られるのだろうか?

 そうLambdaGolemについて詳しくないVandalieuは首を捻ったが、後で調べようと思考を切り替える。


「っで、問題はどちらを選ぶかだけど……」

 【Death-Attribute Mage】と【Golem Transmuter】。どちらもApprenticeと頭についていないから、それなりにlevelが上がり難いJobの筈だ。その分手に入る補正は大きいだろうが、次のJob changeまで早くて数か月、長くて一年以上かかるだろう。


 【Death-Attribute Mage】は、その名の通りDeath-Attribute Magicに重きを置いたJobだとconjectureできる。このattributeMageという名称のJobは他のattributeにもある。

 他のattribute Mageの場合は、Ability Values補正はManaIntelligenceに大きく、他は小さい。特に力は無きに等しい。skill補正は名称のattribute magicに大、【Mana Control】等のmagic関連のskillに中、他のattribute magicskillに小といった感じだ。逆に、武術系のskillは獲得し辛そうだ。


 それと同じだとするなら、やや尖がっているがこれまで使って来たDeath-Attribute Magicの腕を上げるなら、このJobだろう。ただ、magic以外のskillを上げるには時間がかかるだろう。


 【Golem Transmuter】は、類似するJobの知識が無いから分からない。ただ、maybeGolem Transmutationskillに補正がかかるのだろう。Ability Valuesは、どれにかかるのか分からない。maybeIntelligenceにはかかると思うのだが。

 ただ【Golem Transmutation】はこれまでもよく使って来た便利なskillだ。このskillを使わなくなる事は十年後も百年後も無いだろう。


「……【Death-Attribute Mage】を選択」

 考えた末、Vandalieuは【Death-Attribute Mage】の方を選択した。

 今は王城地下の半壊したDragon Golemを倒し、Resurrection Deviceを手に入れるという目標がある。だから直接戦闘に役立ちそうな、Death-Attribute Magicの上達を優先する事にしたのだ。


 それに【Alchemy】もそろそろ手に入れたいし、【Golem Transmutation】もDeath-Attribute Magicから派生したskillなので、もしかしたら【Death-Attribute Mage】のJobでも補正がかかるかもしれない。


 Jobを選択すると、脳裏に浮かびあがった文字から【Golem Transmuter】が消え、代わりに【Death-Attribute Mage】が大きく表示される。

 そして胸の奥が熱くなったような感覚を覚えた。


「これは……思っていたより凄い」

 そして思わず声に出るほど、体中に力が漲っていた。特に頭の冴えが素晴らしく、脳細胞がバージョンupしたような感じだ。


《【Death-Attribute Magic】、【No-Attribute Magic】、【Chant Revocation】、【Mana Control】、【Spirit Formskilllevelが上がりました!》

《【Alchemy】、【Automatic Mana Recoveryskillを獲得しました!》


 しかも脳内アナウンスで一度に大量のskilllevel upと獲得を知る。


 これまで散々使って来たのにlevelが3から上がらなかった【Death-Attribute Magic】や、1のままだったskill、更に修行を始めてもうすぐ二年目だなと思っていたAlchemy skillまで一度に覚えてしまった。

Jobskill補正、凄い」

 Ghoulの皆が夢中になった訳を、体感で理解したVandalieuだった。


 skillAbility Valuesの確認のために【Status】を開くと……




Name: Vandalieu

Race: Dhampir(Dark Elf)

Age: age

Title: Ghoul King

Job: Death-Attribute Mage

Level:

Job History: none

Ability Values

Vitality: 50

Mana: 124,906,320

Strength: 45

Agility :22

Endurance :49

Intelligence :112


Passive skills

Mysterious Strength:1Lv

Rapid Healing:2Lv

Death-Attribute Magic:4Lv(UP!)

Abnormal Condition Resistance:4Lv

Magic Resistance:1Lv

Dark Vision

Mental Corruption:10Lv

Death-Attribute Charm:4Lv(UP!)

Chant Revocation:2Lv(UP!)

Strengthen Follower:5Lv(UP!)

Automatic Mana Recovery:1Lv(NEW!)


Active skills

Bloodsucking:3Lv

-Surpass Limits-:3Lv

Golem Transmutation:3Lv

No-Attribute Magic:2Lv(UP!)

Mana Control:2Lv(UP!)

Spirit Form:2Lv(UP!)

Carpentry:2Lv(UP!)

Engineering:1Lv

Cooking:1Lv(NEW!)

Alchemy:1Lv(NEW!)


Curse

 Experience gained in previous life not carried over

 Cannot learn existing jobs

 Unable to gain experience independently




「おおぉ……思っていたよりAbility Valuesも上がってるし、-chanskillも手に入ってる」

 聞いた話ではMage系のJobではVitalityや力はあまり上がらないはずなのに、一割程上がっていた。まあ、race的な物やbody partの成長を考慮するとしてもなかなかだ。

 特にIntelligenceは三ケタに突入している。頭が冴えるはずだ。


 そしてoriginally一億あったのでimpactが薄いが、Manaも一千万以上増えていた。凄いな、Job changeJobに就いただけでManaが一千万も増えるよ!

 ……maybe上がるAbility Valuesの数値は、素のconditionの数字×一percentの計算で出しているのだろう。Manaの場合、十percent increaseだったとか。


 skillも上がり、今もActivateしている【Flight】にも手応えがある。今まではフワフワとクラゲのように浮かぶか、Manaに任せて無理にHigh-Speedで飛ぶかの二択だったが、今ならもっと効率よく飛べる気がする。

 これには【Mana Controlskillincreaseも関わっているのだろう。


 喜びのあまりスキップでもしたい気分だったが、どうも自分がスキップしている-sama子は傍から見ると「壊れている」としか思えない物であるらしく、それでまた休養を仰せつかるのは避けたい。

 なので、Vandalieuは静かに床に降りると、そのまま静かにroomを出たのだった。


 さあ、次はlevel上げだ!




 っとはいえ、【Unable to gain experience independently】のCurseを受けているVandalieuが幾らmonstersを倒しても、levelは上がらない。

 なので、配下のUndeadを連れてDevil NestsなりDungeonなりに行く事になる。Zadiris達と行動を共にするようになってから新しい仲間用のUndeadを作っていないので、前と同じmemberでいいかなと思ったが意外な事に同行希望者が殺到した。


『此処のDevil NestsDungeonに行くのは初めてだろ? だったらveteranの俺が先導した方が上手く行くぜ、Dungeonの構造や割の良いExperience Pointの稼ぎ方を、このAClass adventurerSword KingBorkus -samaが伝授してやるから付いて来い!』

『何言ってんだ旦那、あんたじゃMikoの分までmonstersを切り殺しちまう。Mikomonsters狩りならscout職のこの俺、Zranに任せときな!』

『いえいえ、やはり必要なのは回復職でしょう。MikoUndeadを治癒する事は出来ますが、Miko自身のinjureを治すmagicNo-Attribute Magicのみ。ここはまだ半人前とはいえ、Life-Attribute Magicが使えるこのNuazaにお任せください』


 『First印象から決めてました』と言わんばかりに、Undead Giant達が次々に同行を希望する。その数……その場にいた全員だった。


「そういえばVanとは一緒に狩りをした事が無かったな。この機会にどうだ? Unarmed Fighting Techniqueも教えられるぞ」

「いや、ここはSalireRitaの師でもある我だろう」

「ねぇ、adventurerの戦い方に興味無い? 私でよければ教えるけど」

「あ、なら俺も」

「じゃあ、あたしも」


 っと、Ghoul達も次々に同行を希望し……


「俺も行きたい!」

「俺も俺も」

「私も行きたいです」

「フゴフゴ」


 更に新種のBragaZemedoMemedigaGorba達まで手を挙げた。まだLife-deadのお腹の中の胎児まで手を上げているのではないだろうか? そんな妄想まで思い浮かぶほどの大人気だ。

 まだ六月なのに真夏の-samaな情熱だ。


 これはモテ期か? モテ期なのか?


「でもBraga達はもう少し後で。-chanとおと……skillを手に入れてからだ」

 迂闊に「大人になってから」と言うと、「Kingだってまだchildじゃん」と返されるのが確実なので、言い直す。実際、既にBlack GoblinBragaの方がVandalieuよりも体が大きい。


『はーい』

 Braga達は意外な程素直に引き下がった。body partの大きさはin any caseAbility Valuesではまだ彼らよりVandalieuの方が高かったし、skillを獲得しきれていなかったからだ。


 しかし、後はどうやって篩いにかけた物だろう。Undead GiantGhoulも、戦闘ではVandalieuよりも経験豊かだ。彼のようなManaによるゴリ押ししか出来ない初心者よりも、余程上手く戦える。

 これまではゴリ押しで良かっただろうが、あのDragon Golemを倒すなら効率の良い戦い方や、仲間とのCoordinationを学ぶ必要がある。


 そして誰もがそのInstructor役になり得る。

 certainly戦力としても十分だ。まずはDClass Dungeonの攻略に挑戦するつもりなので、BorkusVigaroは過剰戦力だ。maybe VigaroDungeonボスと同格か、上回るだろう。Borkusの実力ならDClass Dungeonに出るmonstersはボスも含めて雑魚だろうし。


「よし、Reversiで決めよう」

『盤と駒持って来い』

「いや、ちょっと待ちましょう。この人数でReversiだと、決まるまで何日もかかるじゃないですか」


 Vandalieuが考え込んでいると、今Talosheimで流行しているReversitournamentで決める流れになっていた。こうなったらさっさと【Golem Transmutation】で即席のクジでも作ろうか。

「坊や!」

 そう思っていると、ばっとZadirisが駈け込んで来た。彼女も同行希望者だろうか。


Bildeが産気づいた!」

 っと、思ったら急報だった。

「それで容態は?」

 Bildeが妊娠したのは去年の九月。そして今は六月下旬の後半。やや十月十日には足りないが、そう致命的な早産では無さそうな時期だ。


 それに定期的に【Spirit Form Transformation】でEcho診断代わりに体内の胎児の-sama子を見ていたので、医療ドラマで見るような厄介な疾患は無いはずなので、Vandalieuは落ち着いていた。

 落ち着いていたが、Ghoulの少子化問題に取り組んでいて、magicで妊娠に流産の予防にと色々してきたBildeがいよいよ出産するというのだ。気にならないはずが無い。


「それは問題無いはずじゃ。まあ、初産じゃから長くなるじゃろうが。っと、いう訳で行くぞ」

「……はい?」

 しかし、まさか連れて行かれるとは予想していなかった。Zadirisにひょいっと持ち上げられ、そのまま連れて行かれる。流石見た目は十代半ばでも【Mysterious Strengthskillを持つGhoulElderだ。


『あっ、まだ決めてねえのに』

「そういう事情なら仕方ないだろう」

 そして見送ってくれる皆。……何が仕方ないのだろうか?


Bocchan、こういう時男が情けない姿を見せますと、尻に敷かれてしまいますので毅然とした態度で臨まれると宜しいかと』

Sam、何故Bildeが俺を尻に敷くんですか?」

 VandalieuBildeは別に結婚している訳でも、お腹の子がVandalieublood縁がある訳でも無いのだが。


Bocchan、頑張ってください!』

「いや、産むのは俺じゃなくてBildeだから」

 SamRitaも、Vandalieuを見送る方向のようだ。Salireも手を振っている。


「あの、俺はどういうpositionで呼ばれているのでしょうか?」

 Bildeの容態に問題が無ければ、産婦人科の専門知識がある訳でも産婆でも無いVandalieuの出る幕は無いはずなのだが。しかし Zadirisは彼を小脇に抱えたまま答えた。

「うむ、突発的な緊急事態が起きたら坊やの手を借りたい。後Bildeが手を握っていて欲しいそうじゃ」


 ……Doctor兼夫position

「分りました」

 Ghoulには結婚という概念が無いし、単に信頼され頼られていると考えよう。それに俺、Ghoul Kingだし。

 そう納得する事にした。


 まあ、これもAdventureといえばAdventureだ。出産は科学が進んだEarthでも命がけなのだし。

 ……Experience Pointは入らないだろうが。


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